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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】有軌道台車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20231108BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B65G49/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021067596
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162674
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】阿竹 秀和
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221687(JP,A)
【文献】特開2006-298565(JP,A)
【文献】特開2007-209064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って走行する有軌道台車であって、
台車本体と、
前記台車本体に設けられ、レール周辺設備の位置を検出する検出装置と、
前記検出装置による前記レール周辺設備の検出時の前記台車本体の挙動を測定する測定装置と、
前記検出装置の検出結果を前記測定装置の測定結果に基づき評価する評価部と、を備える、有軌道台車。
【請求項2】
前記測定装置は、前記台車本体に設けられ前記レールとの距離を測定する測長センサを含む、請求項1に記載の有軌道台車。
【請求項3】
前記測長センサは、前記台車本体における走行方向前側及び走行方向後側の少なくとも何れかに配置されている、請求項2に記載の有軌道台車。
【請求項4】
前記レール周辺設備は、前記レールに沿って敷設された給電線を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の有軌道台車。
【請求項5】
前記レール周辺設備は、前記レールの上部に配置された磁気プレートを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の有軌道台車。
【請求項6】
前記レール周辺設備は、前記レールの下部に配置された誘導線プレートを含む、請求項1~5の何れか一項に記載の有軌道台車。
【請求項7】
前記検出装置は、投受光センサを含む、請求項1~6の何れか一項に記載の有軌道台車。
【請求項8】
前記検出装置は、接触式センサを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の有軌道台車。
【請求項9】
前記評価部は、
前記測定装置の測定結果の変動が閾値よりも大きい場合、前記検出装置の検出結果の要因を第1要因とし、
前記測定装置の測定結果の変動が前記閾値以下の場合、前記検出装置の検出結果の要因を第2要因とする、請求項1~8の何れか一項に記載の有軌道台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有軌道台車に関する。
【背景技術】
【0002】
有軌道台車に関する技術として、特許文献1には、レールに沿って走行する軌道検査台車が開示されている。特許文献1の軌道検査台車は、レールに沿って敷設された給電線(レール周辺設備)の位置を検出するための位置検出ユニット(検出装置)を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-209064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、検出装置の検出結果に基づいて、レール周辺設備の位置が異常であるかどうかを判断(正規位置かどうかを判断)することが図られる。しかし、検出装置は有軌道台車の台車本体に設けられることから、例えば台車本体の挙動(姿勢の変化など)によっては、レール周辺設備の台車本体に対する相対位置が変化するため、実際には問題ないにも関わらず、レール周辺設備の位置が異常であると、誤った判断をしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、レール周辺設備の位置の異常を正確に判断することが可能な有軌道台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る有軌道台車は、レールに沿って走行する有軌道台車であって、台車本体と、台車本体に設けられ、レール周辺設備の位置を検出する検出装置と、検出装置によるレール周辺設備の検出時の台車本体の挙動を測定する測定装置と、を備える。
【0007】
この有軌道台車では、測定装置により、検出装置によるレール周辺設備の検出時の台車本体の挙動が測定される。よって、検出装置の検出結果について、測定装置の測定結果を考慮することで、それが台車本体の挙動に主に起因するものか否かで区別することができる。すなわち、台車本体の挙動によって当該台車本体に対するレール周辺設備の相対位置が変化する場合でも、レール周辺設備の位置の異常を正確に判断することが可能となる。
【0008】
本発明に係る有軌道台車では、測定装置は、台車本体に設けられレールとの距離を測定する測長センサを含んでいてもよい。この場合、簡単な構成で、台車本体の挙動を測定することができる。
【0009】
本発明に係る有軌道台車では、測長センサは、台車本体における走行方向前側及び走行方向後側の少なくとも何れかに配置されていてもよい。この場合、例えば台車本体の前傾及び後傾が測長センサでの検出値に現れやすい。よって、台車本体の挙動として、台車本体の前傾及び後傾を効率的に考慮することが可能となる。
【0010】
本発明に係る有軌道台車では、レール周辺設備は、レールに沿って敷設された給電線を含んでいてもよい。この場合、レール周辺設備の位置の異常として給電線の弛みなどを正確に判断することが可能となる。
【0011】
本発明に係る有軌道台車では、レール周辺設備は、レールの上部に配置された磁気プレートを含んでいてもよい。この場合、レール周辺設備の位置の異常として磁気プレートの垂れ等を正確に判断することが可能となる。
【0012】
本発明に係る有軌道台車では、レール周辺設備は、レールの下部に配置された誘導線プレートを含んでいてもよい。この場合、レール周辺設備の位置の異常として誘導線プレートの垂れ等を正確に判断することが可能となる。
【0013】
本発明に係る有軌道台車では、検出装置は、投受光センサを含んでいてもよい。この場合、投受光センサを利用してレール周辺設備の位置を検出することができる。
【0014】
本発明に係る有軌道台車では、検出装置は、接触式センサを含んでいてもよい。この場合、接触式センサを利用してレール周辺設備の位置を検出することができる。
【0015】
本発明に係る有軌道台車は、検出装置の検出結果を測定装置の測定結果に基づき評価する評価部を備えていてもよい。これにより、検出装置の検出結果を台車本体の挙動に応じて評価することができる。
【0016】
本発明に係る有軌道台車では、評価部は、測定装置の測定結果の変動が閾値よりも大きい場合、検出装置の検出結果の要因を第1要因とし、測定装置の測定結果の変動が閾値以下の場合、検出装置の検出結果の要因を第2要因としてもよい。この場合、測定装置の測定結果について、台車本体の挙動に主に起因する場合にはその要因を第1要因として評価し、それ以外の場合にはその要因を第2要因として評価することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レール周辺設備の位置異常を正確に検知することが可能な有軌道台車を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る有軌道台車を含む搬送車システムを示す概略正面図である。
図2図2は、図1の有軌道台車の走行部を示す斜視図である。
図3図3は、図1の有軌道台車の走行部及びその周辺構成を示す正面図である。
図4図4(a)は、給電線の位置異常を判断する場合の一例を説明する走行部及びその周辺構成の概略側面図である。図4(b)は、図4(a)の状況における給電線及びその周辺構成を示す概略正面図である。
図5図5(a)は、給電線の位置異常を判断する場合の一例を説明する走行部及びその周辺構成の概略側面図である。図5(b)は、図5(a)の状況における給電線及びその周辺構成を示す概略正面図である。
図6図6(a)は、給電線の位置異常を判断する場合の一例を説明する走行部及びその周辺構成の概略側面図である。図6(b)は、図6(a)の状況における給電線及びその周辺構成を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、一実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、有軌道台車6を含む搬送車システム1を示す概略正面図である。図2は、有軌道台車6の走行部50を示す斜視図である。図3は、有軌道台車6の走行部50及びその周辺構成を示す正面図である。図1は、有軌道台車6の走行方向から見た場合の搬送車システム1の概略構成を示す。図3では、図の一部を断面化して示す。以下、説明の便宜上、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」及び「後」方向を定義する。
【0021】
図1図2及び図3に示されるように、搬送車システム1は、レール4に沿って走行する有軌道台車6を用いて、物品10を複数の載置部の間で搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納するレチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。載置部には、レール4に沿って配置されたバッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、物品10を一時的に保管するための載置部である。受渡ポートは、例えば半導体の処理装置(図示せず)に対して物品10の受渡を行うための載置部である。
【0022】
ここでは、例えば、工場等において、有軌道台車6が、工場の天井等に敷設された一方通行のレール4に沿って走行する搬送車システム1を例に挙げて説明する。搬送車システム1は、レール4と、複数の有軌道台車6と、を備える。
【0023】
レール4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。レール4は、例えば天井から吊り下げられている。レール4は、有軌道台車6を走行させるための予め定められた走行路である。レール4は、支柱40A,40Aにより支持される。レール4は、一対の下面部40Bと一対の側面部40C,40Cと天面部40Dとからなる筒状のレール本体部40と、給電線40Eと、磁気プレート40Fと、誘導線プレート40Gと、を有している。下面部40Bは、有軌道台車6の走行方向に延在し、レール本体部40の下面を構成する。下面部40Bは、有軌道台車6の走行ローラ51を転動させて走行させる板状部材である。側面部40Cは、有軌道台車6の走行方向に延在し、レール本体部40の側面を構成する。天面部40Dは、有軌道台車6の走行方向に延在し、レール本体部40の上面を構成する。
【0024】
給電線40Eは、有軌道台車6の給電コア57に電力を供給すると共に、有軌道台車6と信号の送受信を行なう部位である。給電線40Eは、一対の側面部40C,40CのそれぞれにブラケットBRを介して固定され、走行方向に沿って延在している。給電部47は、給電コア57に対して非接触の状態で電力を供給する。磁気プレート40Fは、有軌道台車6のLDM(Linear DC Motor)59に走行又は停止のための磁力を発生させる。磁気プレート40Fは、天面部40D(レール4の上部)に固定され、走行方向に沿って延在している。
【0025】
誘導線プレート40Gは、例えば、通信線が内蔵されたプレート状のセンサである。誘導線プレート40Gは、有軌道台車6の後述する誘導コア37と通信する。誘導線プレート40Gは、レール4の合流部で複数の有軌道台車6のどちらが先に進入するかを決めるために用いられる。誘導線プレート40Gは、下面部40B(レール4の下部)に固定されている。給電線40E、磁気プレート40F及び誘導線プレート40Gは、それぞれレール周辺設備を構成する(以下、給電線40E、磁気プレート40F及び誘導線プレート40Gを単に「レール周辺設備」ともいう)。
【0026】
有軌道台車6は、レール4に沿って走行し、物品10を搬送する。有軌道台車6は、物品10を移載可能に構成されている。有軌道台車6は、天井走行式無人搬送車である。搬送車システム1が備える有軌道台車6の台数は、特に限定されない。有軌道台車6は、台車本体2を構成する本体部7及び走行部50と、制御部35と、を有する。
【0027】
図1に示されるように、本体部7は、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、前後フレーム33と、誘導コア37と、を有する。横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括して、レール4の走行方向と直角な方向に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降台30をベルト、ワイヤ及びロープ等の吊持材の巻取りないし繰出しによって昇降させる。昇降台30には、チャックが設けられており、物品10の把持又は解放が自在とされている。
【0028】
センターフレーム22は、本体部7の上部を構成するフレームである。前後フレーム33は、本体部7の前部及び後部を構成するフレームである。前後フレーム33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。誘導コア37は、センターフレーム22に一対設けられている。一対の誘導コア37の一方は誘導線プレート40Gを介して信号の送信を行い、一対の誘導コア37の他方は誘導線プレート40Gを介して信号の受信を行う。
【0029】
走行部50は、有軌道台車6をレール4に沿って走行させる。図2及び図3に示されるように、走行部50は、走行ローラ51、サイドローラ52、分岐ローラ53、補助ローラ54、傾斜ローラ55、給電コア57及びLDM59を有している。図1では、分岐ローラ53、補助ローラ54、及び傾斜ローラ55の図示は省略する。
【0030】
走行ローラ51は、外輪51A及び内輪51Bからなるローラ対である。走行ローラ51は、走行部50の前後の左右両端に配置されている。走行ローラ51は、レール4の一対の下面部40B,40Bを転動する。サイドローラ52は、走行ローラ51の外輪51Aのそれぞれを前後方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、レール4の側面部40Cに接触可能に設けられている。分岐ローラ53は、サイドローラ52のそれぞれを上下方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、レール4の接続部又は分岐部等に配置されているガイド(図示せず)に接触可能に設けられている。
【0031】
補助ローラ54は、走行部50の前後に設けられている、三つ一組のローラ群である。補助ローラ54は、走行部50が加減速等により走行中に前後に傾いたときに、LDM59及び給電コア57等がレール4の上面に配置された磁気プレート40Fに接触することを防止するために設けられている。傾斜ローラ55は、LDM59の四隅に設けられている。傾斜ローラ55は、前後方向から傾いた状態で配置されている。傾斜ローラ55は、走行部50がカーブ区間を走行する際の遠心力による傾きを防止するために設けられている。
【0032】
給電コア57は、走行部50の前後のそれぞれにおいて、左右方向にLDM59を挟むように一対配置されている。レール4に配置された給電部47との間で非接触による給電と、非接触による各種信号の送受信を行う。給電コア57は、制御部35(図1参照)との間で信号をやりとりする。給電コア57は、上下方向に延びた基部57Aと、基部57Aから水平方向に延在する三本の脚部57Bと、を有する。給電コア57は、断面形状がE型のコアである。給電コア57は、例えばフェライト等の磁性材料で形成されている。中央の脚部57Bは、例えばエナメル等で被覆された銅線が巻回されることによって受電コイルを構成する。中央の脚部57Bは、受電コイルの抜け止めとして機能するフランジ部57Cを有する。
【0033】
LDM59は、走行部50の前後に設けられている。LDM59は、電磁石によってレール4の上面に配置された磁気プレート40Fとの間で、走行又は停止のための磁力を発生させる。
【0034】
図1に示されるように、制御部35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。制御部35は、有軌道台車6における各種動作を制御する。具体的には、制御部35は、走行部50と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、を制御する。制御部35は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。制御部35は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。制御部35は、例えばセンターフレーム22に配置されている。制御部35は、レール4の給電線40E等を利用して、上位コントローラと通信を行う。上位コントローラは、有軌道台車6に物品10を搬送させる搬送指令を送信する。
【0035】
本実施形態の有軌道台車6の要部について説明する。
【0036】
有軌道台車6は、給電線40Eの位置を検出する投受光センサ3と、磁気プレート40Fの位置を検出する接触式センサ5と、誘導線プレート40Gの位置を検出する接触式センサ8と、台車本体2の挙動を測定する測長センサ9と、を備える。投受光センサ3及び接触式センサ5,8のそれぞれは、検出装置を構成する。
【0037】
投受光センサ3は、給電コア57において、上段の脚部57Bの下側と、中央の脚部57Bの上側及び下側と、下段の脚部57Bの上側と、のそれぞれに設けられている。投受光センサ3は、光を出射する投光部3xと、投光部3xで出射した光を受光する受光部3yを含む。投光部3xは、脚部57Bの先端側に配置され、脚部57Bの基端側に向けて光を出射する。受光部3yは、脚部57Bの基端側に配置されている。
【0038】
投受光センサ3は、投光部3xからの光が給電線40E(検出物体)によって遮られたり反射したりした場合に変化する受光部3yの受光量に基づいて、給電線40Eの位置を検出するセンサである。投受光センサ3は、その光軸が給電コアの脚部57Bに沿うように配置されている。投受光センサ3の光軸は、給電線40Eが脚部57Bに接触又は一定以上接近した場合にその給電線40Eに遮られる位置に設定されている。検出する給電線40Eの位置は、有軌道台車6に対する相対位置である。
【0039】
このような投受光センサ3は、給電線40Eが正規位置(正常な位置)にある場合には、投光部3xからの光が給電線40Eで遮られずに受光部3yで受光された結果、給電線40Eを検出しない(換言すると、給電線40Eが正規位置にあることを検出する)。一方、投受光センサ3は、給電線40Eが異常位置(異常な位置)にある場合、投光部3xからの光が給電線40Eで遮られ、当該光が受光されない又は当該光の一部のみが受光された結果、給電線40Eの位置を検出する(換言すると、給電線40Eが異常位置にあることを検出する)。投受光センサ3は特に限定されず、種々の投受光センサを用いることができる。
【0040】
接触式センサ5は、走行部50の上部において、磁気プレート40Fの下方に配置される位置に設けられている。接触式センサ5は、レール4に沿って有軌道台車6が走行する際に磁気プレート40Fの下面に対向する。接触式センサ5は、その接触子が磁気プレート40F(検出物体)に直接触れることで、磁気プレート40Fの位置を検出するセンサである。接触式センサ5は、上方に突出するように構成されている。接触式センサ5の接触子と磁気プレート40Fとの間には、所定の隙間が設けられる。ここでの接触式センサ5は、走行部50の前部における補助ローラ54及び傾斜ローラ55の周辺に、左右に一対設けられている。検出する磁気プレート40Fの位置は、有軌道台車6に対する相対位置である。
【0041】
このような接触式センサ5は、磁気プレート40Fが正規位置にある場合には、その接触子が磁気プレート40Fに接触しない結果、磁気プレート40Fを検出しない(換言すると、磁気プレート40Fが正規位置にあることを検出する)。一方、接触式センサ5は、磁気プレート40Fが異常位置(例えば垂れ下がった位置)にある場合、その接触子が磁気プレート40Fに接触した結果、磁気プレート40Fの位置を検出する(換言すると、磁気プレート40Fが異常位置にあることを検出する)。接触式センサ5は特に限定されず、種々のセンサを用いることができる。
【0042】
接触式センサ8は、本体部7の上部において、誘導線プレート40Gの下方に配置される位置に設けられている。接触式センサ8は、レール4に沿って有軌道台車6が走行する際に誘導線プレート40Gの下面に対向する。接触式センサ8は、その接触子が誘導線プレート40G(検出物体)に直接触れることで、誘導線プレート40Gの位置を検出するセンサである。接触式センサ8は、上方に突出するように構成されている。接触式センサ8の接触子と誘導線プレート40Gとの間には、所定の隙間が設けられる。ここでの接触式センサ8は、センターフレーム22上において左右に一対設けられている。検出する誘導線プレート40Gの位置は、有軌道台車6に対する相対位置である。
【0043】
このような接触式センサ8は、誘導線プレート40Gが正規位置にある場合には、その接触子が誘導線プレート40Gに接触しない結果、誘導線プレート40Gを検出しない(換言すると、誘導線プレート40Gが正規位置にあることを検出する)。一方、接触式センサ8は、誘導線プレート40Gが異常位置(例えば垂れ下がった位置)にある場合、その接触子が誘導線プレート40Gに接触した結果、誘導線プレート40Gの位置を検出する(換言すると、誘導線プレート40Gが異常位置にあることを検出する)。接触式センサ8は特に限定されず、種々のセンサを用いることができる。
【0044】
測長センサ9は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8による給電線40E、磁気プレート40F及び誘導線プレート40Gの位置の検出時における台車本体2の挙動を測定する測定装置である。測長センサ9は、走行部50における走行方向の前側と後側とに一対配置されている。測長センサ9は、台車本体2の挙動として、レール4の下面部40Bまでの距離を測定する。測長センサ9は、下方に向けて測定用レーザ光を出射し、それに応じて下面部40Bで反射した反射光を受光することにより、下面部40Bとの間の距離を求める。測長センサ9は特に限定されず、種々のセンサを用いることができる。
【0045】
制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8からこれらの検出結果を取得して記憶する。制御部35は、測長センサ9からその測定結果を取得して記憶する。制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果と測長センサ9の測定結果とを、例えば表示部(不図示)に表示させてもよい。制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果と測長センサ9の測定結果とを、例えば上位コントローラへ送信してもよい。
【0046】
制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を、測長センサ9の測定結果に基づき評価する。具体的には、制御部35は、測長センサ9の測定結果の変動が閾値よりも大きい場合、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果の要因を第1要因とする。制御部35は、測長センサ9の測定結果の変動が閾値以下の場合、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果の要因を第2要因とする。閾値は、予め定められて制御部35に記憶されている。
【0047】
第1要因は、検出結果が台車本体2の挙動に主に起因することを示す要因である。第1要因は、検出結果に対する台車本体2の挙動の寄与度が、検出結果に対するレール周辺設備の位置異常の寄与度よりも大きい場合の要因である。第2要因は、検出結果がレール周辺設備の位置異常に主に起因することを示す要因である。第2要因は、検出結果に対する台車本体2の挙動の寄与度が、検出結果に対するレール周辺設備の位置異常の寄与度よりも小さい場合の要因である。測長センサ9の検出結果の変動は、測長センサ9の検出値についての単位時間当たりの変化量である。測長センサ9が複数備えられている場合には、それらで検出した複数の検出値の変動のうちの最大値、最小値及び平均値の何れかに基づいて、測長センサ9の検出結果の変動を求めてもよい。
【0048】
制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を、その要因と関連付けて記憶する。制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を、その要因と関連付けて例えば表示部に表示させてもよい。制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を、その要因と関連付けて例えば上位コントローラへ送信してもよい。
【0049】
次に、実施形態の有軌道台車6において、給電線40Eの位置異常を判断する場合の一例を説明する。
【0050】
図4(a)に示される例では、下面部40Bが水平方向に沿って延びており、走行する有軌道台車6の台車本体2の挙動も安定しており、台車本体2の姿勢も水平方向に沿っている。このとき、図4(b)に示されるように、投受光センサ3の光軸上には給電線40Eが存在せず、投受光センサ3では、給電線40Eの位置が検出されていない。この場合、給電線40Eの位置が正規位置であると判断することができる。
【0051】
図5(a)に示される例では、下面部40Bが水平方向に沿って延びており、走行する有軌道台車6の台車本体2の挙動も安定しており、台車本体2の姿勢も水平方向に沿っている。このとき、図5(b)に示されるように、投受光センサ3の光軸上に給電線40Eが存在し、投受光センサ3では、給電線40Eの位置が検出されている。ここで、台車本体2の挙動が安定しているところ、測長センサ9の測定結果の変動が閾値以下となっており、この場合、投受光センサ3の検出結果の要因は、レール周辺設備の位置異常に主に起因する第2要因と評価される。このように、第2要因とする評価の下において給電線40Eの位置が検出されている場合には、給電線40Eの弛みが生じており、給電線40Eの位置が異常であると判断することができる。
【0052】
図6(a)に示される例では、下面部40Bが水平方向に沿って延びているが、走行する有軌道台車6の台車本体2の挙動は変動しており、前傾となるように姿勢が変化している。このとき、図6(b)に示されるように、投受光センサ3の光軸上に給電線40Eが存在し、投受光センサ3では、給電線40Eの位置が検出されている。ここで、台車本体2の挙動が変動しているところ、測長センサ9の測定結果の変動が閾値よりも大きくなっており、この場合、投受光センサ3の検出結果の要因は、台車本体2の挙動に主に起因する第1要因と評価される。このように、第1要因とする評価の下において給電線40Eの位置が検出されている場合には、給電線40Eの位置が異常であるのではなく、台車本体2の挙動に起因して給電線40Eの位置が検出されたにすぎないと判断することができ、給電線40Eの位置が正規位置であると判断することができる。
【0053】
なお、以上の説明では、給電線40Eの位置異常を判断する場合の一例を説明したが、磁気プレート40Fの位置異常を判断する場合及び誘導線プレート40Gの位置異常を判断する場合においても、これと同様である。制御部35は評価部を構成する。
【0054】
以上、有軌道台車6では、測長センサ9により、投受光センサ3及び接触式センサ5,8によるレール周辺設備の検出時の台車本体2の挙動が測定される。よって、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果について、測長センサ9の測定結果を考慮することで、それが台車本体2の挙動に主に起因するものか否かで区別することができる。すなわち、台車本体2の挙動によって当該台車本体2に対するレール周辺設備の相対位置が変化する場合でも、レール周辺設備の位置の異常を正確に判断することが可能となる。レール周辺設備と台車本体2との接触等を、効率よく未然に防止することが可能となる。
【0055】
有軌道台車6では、測定装置として測長センサ9を含む。この場合、簡単な構成で、台車本体2の挙動を測定することができる。
【0056】
有軌道台車6では、測長センサ9は、台車本体2における走行方向前側及び走行方向後側に配置されている。この場合、例えば台車本体2の前傾及び後傾が測長センサ9での検出値に現れやすい。よって、台車本体2の挙動として、台車本体2の前傾及び後傾を効率的に考慮することが可能となる。
【0057】
有軌道台車6では、レール周辺設備は、給電線40Eを含んでいる。この場合、給電線40Eの弛みなどを正確に判断することが可能となる。
【0058】
有軌道台車6では、レール周辺設備は、磁気プレート40Fを含んでいる。この場合、レール周辺設備の位置の異常として磁気プレート40Fの垂れ等を正確に判断することが可能となる。
【0059】
有軌道台車6では、レール周辺設備は、誘導線プレート40Gを含んでいる。この場合、レール周辺設備の位置の異常として誘導線プレート40Gの垂れ等を正確に判断することが可能となる。
【0060】
有軌道台車6は、検出装置として投受光センサ3を含んでいる。この場合、投受光センサ3を利用してレール周辺設備の位置を検出することができる。
【0061】
有軌道台車6は、検出装置として接触式センサ5,8を含んでいる。この場合、接触式センサ5,8を利用してレール周辺設備の位置を検出することができる。
【0062】
有軌道台車6では、制御部35は、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を測長センサ9の測定結果に基づき評価する。これにより、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を台車本体2の挙動に応じて評価することができる。
【0063】
有軌道台車6では、測長センサ9の測定結果の変動が閾値よりも大きい場合、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果の要因を第1要因とし、測長センサ9の測定結果の変動が閾値以下の場合、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果の要因を第2要因とする。この場合、測長センサ9の測定結果について、台車本体2の挙動に主に起因する場合にはその要因を第1要因として評価し、それ以外の場合にはその要因を第2要因として評価することができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
上記実施形態では、レール周辺設備は給電線40E、磁気プレート40F及び誘導線プレート40Gに限定されず、レール4の周辺に設けられたその他の設備であってもよい。上記実施形態では、検出装置は投受光センサ3及び接触式センサ5,8に限られず、レール周辺設備の位置を検出する装置であれば、その他の装置であってもよい。
【0066】
上記実施形態では、測定装置は測長センサ9に限定されず、台車本体2の挙動を測定する装置であれば、その他の装置であってもよい。上記実施形態では、測長センサ9が配置される数は特に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。上記実施形態では、測長センサ9が配置される位置は特に限定されず、有軌道台車6に設けられていればよい。例えば、台車本体2の走行方向左側及び走行方向右側に測長センサ9を配置し、台車本体2の挙動として左右の傾きを検出するようにしてもよい。測長センサ9の数及び配置位置に応じて、台車本体2の様々な挙動を投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果に考慮することができる。
【0067】
上記実施形態では、投受光センサ3の光軸に位置に、台車本体2の挙動にて起こり得る位置ズレを予め盛り込んでもよいし、当該位置ズレを盛り込まなくてもよい。上記実施形態では、有軌道台車6の速度が一定速度以上の場合に、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を測長センサ9の測定結果に基づき評価し、有軌道台車6の速度が一定速度未満の場合には、その挙動によく悪影響は少ないため、投受光センサ3及び接触式センサ5,8の検出結果を測長センサ9の測定結果に基づき評価しなくてもよい。
【0068】
上記実施形態では、有軌道台車6を吊り下げて走行させるためのレール4に適用した例を説明したが、本発明は、地面に配置される軌道を搬送車が走行する搬送車システムにも適用することが可能である。
【0069】
上記実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成の一部は、本発明の一態様の要旨を逸脱しない範囲で適宜に省略可能である。
【符号の説明】
【0070】
2…台車本体、3…投受光センサ(検出装置)、4…レール、5…接触式センサ(検出装置)、6…有軌道台車、8…接触式センサ(検出装置)、9…測長センサ(測定装置)、35…制御部(評価部)、40E…給電線(レール周辺設備)、40F…磁気プレート(レール周辺設備)、40G…誘導線プレート(レール周辺設備)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6