(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】山形複合架設材
(51)【国際特許分類】
E04C 3/46 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
E04C3/46
(21)【出願番号】P 2021075607
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義仁
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-014155(JP,A)
【文献】特開2006-316454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 - 3/46
E04C 1/00 - 1/42
E04B 1/00 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と該稜線木製材に嵌装された稜線鋼板とを主構成材とし、前記山形架構の稜線部を構成する稜線複合部材と、前記山形架構の中間部にあって、山形に形成された山形木製材と該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に前記稜線複合部材を接合して前記山形架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さの稜線木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本設けられると共に、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって所定の長さの稜線木製材の第2の溝が形成され、
前記稜線鋼板は前記山形複合部材と接合される側の端部を突出させないで前記稜線木製材の第1の溝に嵌装されており、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、稜線複合部材との接合状態で、前記稜線木製材の第2の溝に対向する位置に、その幅と深さを該稜線木製材の第2の溝と同じくする山形木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本形成され、
前記山形鋼板は、前記山形木製材の材長より長く、前記稜線木製材の第2の溝の幅と深さに相当する板厚と幅を有し、該山形木製材の両端から前記稜線木製材の第2の溝と同一長さ突出させて前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の第2の溝に前記山形鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と前記稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されていることを特徴とする山形複合架設材。
【請求項2】
山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と該稜線木製材に嵌装された稜線鋼板とを主構成材とし、前記山形架構の稜線部を構成する稜線複合部材と、前記山形架構の中間部にあって、山形に形成された山形木製材と該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に前記稜線複合部材を接合して前記山形架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さの稜線木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本設けられると共に、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって前記山形鋼板の突出長さと同じ長さの稜線木製材の第2の溝が形成され、
前記稜線鋼板は前記山形複合部材と接合される側の端部から所定の長さ突出させて前記稜線木製材の第1の溝に嵌装されており、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、稜線複合部材との接合状態で、前記稜線木製材の第2の溝に対向する位置に、その幅と深さを該稜線木製材の第2の溝と同じくする山形木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本形成されると共に、前記稜線木製材の第1の溝に対向する位置で、前記山形木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって前記稜線鋼板の突出長さと同じ長さの山形木製材の第2の溝が形成され、
前記山形鋼板は前記山形木製材の材長より長く、前記稜線木製材の第2の溝の幅と深さに相当する板厚と幅を有し、該山形木製材の両端から前記稜線木製材の第2の溝と同一長さ突出させて前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の第2の溝に前記山形鋼板の突出部が嵌装されると共に前記山形木製材の第2の溝に前記稜線鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されていることを特徴とする山形複合架設材。
【請求項3】
山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と該稜線木製材に嵌装された稜線鋼板とを主構成材とし、前記山形架構の稜線部を構成する稜線複合部材と、山形架構の中間部にあって、山形に形成された山形木製材と該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に前記稜線複合部材を接合して前記山形架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さの稜線木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本設けられ、
前記稜線鋼板は前記山形複合部材と接合される側の端部を所定の長さ突出させて前記稜線木製材の第1の溝に嵌装されており、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、前記山形鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さを有し、該山形木製材の全長に亘る山形木製材の第1の溝と、該第1の溝の一方の側面とその側面を同じくして、該山形木製材の第1の溝と同じ幅と深さを有し、該山形木製材の両端部から材軸方向中心に向かって、前記稜線鋼板の突出部と同じ長さの一対の山形木製材の第2の溝が、稜線複合部材との接合状態で前記稜線木製材の第1の溝に対向する位置に設けられ、
前記山形木製材の材長と同じ長さを有する山形鋼板が、前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、前記山形木製材の第2の溝に前記稜線鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されていることを特徴とする山形複合架設材。
【請求項4】
山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と、該稜線木製材に嵌装される稜線鋼板とを主構成材とし、山形架構の稜線部を形成する一対の稜線複合部材と、前記山形架構の中間部にあって、前記稜線木製材と同一断面で山形に形成された山形木製材と、前記稜線鋼板と同一板厚で該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に稜線複合部材を接合して架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さを有し、前記稜線木製材の全長に亘る少なくとも一つの稜線木製材の第1の溝と、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面に隣接して、前記山形複合部材と接合する側の端部から材軸方向中心に向かって、前記稜線木製材の第1の溝と同じ幅と深さを有する所定の長さの稜線木製材の第2の溝が形成され、
前記稜線鋼板は、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の端部から突出させないで前記稜線木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、前記稜線複合部材との接合時に前記稜線木製材の第1の溝と対向する位置に、前記山形鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さを有する山形木製材の第1の溝がその全長に亘って設けられると共に、該山形木製材の両端部において、前記稜線複合部材と接合される際に、前記山形木製材の第1の溝の両側面で前記稜線木製材の第2の溝と対向し、該山形木製材の第1の溝を挟むように隣接一体化した材軸方向中心に向かって前記稜線木製材の第2の溝と同じ幅と深さを有する所定の長さの山形木製材の第2の溝が形成され、
前記山形鋼板は、該山形木製材の両端から突出させないで前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、対向する前記稜線木製材の第2の溝と前記山形木製材の第2の溝の両方に跨るように接合用鋼板を嵌装し、該嵌装した接合用鋼板と前記山形鋼板及び前記稜線鋼板とを互いに接触状態として機械的手段によって接合したことを特徴とする山形複合架設材。
【請求項5】
前記稜線鋼板または/および前記山形鋼板を前記稜線木製材または/および前記山形木製材に設置した状態で、前記稜線鋼板または/および前記山形鋼板における高さ方向の中心よりも下方に、前記稜線木製材または/および前記山形木製材にせん断力を伝達するせん断力伝達機構を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の山形複合架設材。
【請求項6】
前記せん断力伝達機構の設置位置を、前記稜線鋼板または/および前記山形鋼板の上端面から次式で求めた距離hの位置としたことを特徴とする請求項5に記載の山形複合架設材。
h=(BH
1
2+αtH
2
2)/(2(BH
1+αtH
2))
ただし、B:稜線木製材または/および山形木製材の幅
H
1:稜線木製材または/および山形木製材の高さ
t:稜線鋼板または/および山形鋼板の厚さ
H
2:稜線鋼板または/および山形鋼板の高さ
α:稜線複合部材または/および山形複合部材を構成する部材間の剛性にかかる係数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造構造物の山形の架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される架設材であって、特に木製材と鋼材とを主構成材とする山形複合架設材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築で、大スパン架構を構築する場合、木製部材を大断面化するほか、鋼材を組み合わせた複合部材が提案されている。木製部材と鋼材を一体化して応力伝達する手段としては、ボルト、ドリフトピン、接着などが用いられるのが一般的である。
【0003】
特許文献1では、木製材の全長に亘って鋼材が不可視状態で埋め込み一体化されたものが開示されている。また、内部に配置した鋼材が延長されて接合に供することが示されている。製造方法の一例として、接着による方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、補強鋼板を梁部材に接着して半割体を構成し、両半割体の補強鋼板同士を接合して一体化した梁材が開示されている。
梁材同士を長手方向に接合するにあたり、接合すべき一方の梁材1の端部には、一方の半割体3aの端部に凸部と凹部とを上下方向に交互に複数形成し、他方の半割体4aの端部には一方の半割体3aの凸部に対応する位置に凹部が位置し、半割体3aの凹部に対応する位置に凸部が位置するように形成し、接合すべき他方の梁材2における一方の梁半割体3bの端部には一方の梁材1の半割体3aの凸部及び凹部に凹凸係合する凹部と凸部とを、また他方の梁半割体4bの端部には一方の梁材1の半割体4aの凸部及び凹部に凹凸係合する凹部と凸部とを形成し、双方の梁材1,2の一方の梁半割体3a,3bの端部同士及び他方の梁半割体4a,4bの端部同士を夫々凹凸係合させると共に、一方の梁材1における梁半割体3aの補強鋼板側の凸部と他方の梁材2における梁半割体4bの補強鋼板側凸部とを、また一方の梁材1における梁半割体4aの補強鋼板側の凸部と他方の梁材2における梁半割体3bの補強鋼板側の凸部とを夫々重ね合わせて結合手段により結合する接合構造が示されている(特許文献2の
図3参照)。
【0005】
また、接合すべき一方の梁材1の端部は、両半割体3a,4aの補強鋼板を梁材1の先端から所要長さ突出させ、接合すべき他方の梁材2の端部は、両半割体3b,4bの補強鋼板の先端を、梁材1側の補強鋼板の突出長さに略相当する長さ分だけ梁部材の先端から切除した状態とし、一方の梁材1の先端から突出する補強鋼板部分を他方の梁材2の梁部材の先端側凹入部に突入させる前記接合構造も開示されている(特許文献2の
図5参照)。
【0006】
特許文献3には、それぞれ複数の木質部材と鋼板等の強化部材とが交互となるようにして互いに積層されるとともに、少なくともその積層方向の両外側部は集成構造の木質部材で構成されている複合強化集成木材が開示されている。ここで、前記強化部材は、一端部より突出する突出片を備えている。
【0007】
特許文献4には、少なくとも1枚の鋼製部材に複数の木製部材又は集成材を締結ボルトで固定し、前記木製部材又は集成材が表面側に配置するようにし、鋼製部材に少なくとも1個のシア部材を固定し、前記シア部材を前記木製部材又は集成部材中に噛み込ませる木製部材と鋼製部材からなる複合部材が開示されている。
シア部材は、リング状、中実などバリエーションがあり、前記木製部材又は集成材に前記シア部材の噛み込みを容易にするための嵌合凹部又は噛み込み状溝を形成したり、前記木製部材又は集成材に形成した嵌合凹部又は噛み込み溝とシア部材との間に一定の隙間を設け、前記隙間に接着剤を充填する方法も開示されている。また、前記シア部材を前記複合部材の両端部近傍に集中的に配したものも開示されている。
【0008】
特許文献5では、特許文献4と類似の構造で、シア部材を各木製部材又は集成材に、少なくともシア部材を配置する部分の孔を孔軸方向に同内径とした円形の貫通孔を少なくとも1つ設け、その貫通孔に、その内径と同径か僅かに大きくした外径で軸方向全長にわたり同外径としたシア部材を配置すると共に前記鋼製部材に当接配置し、表面側に配置された木製部材又は集成材における前記貫通孔に配置されたシア部材の外側に押え部材が配置され、前記鋼製部材と各シア部材と各押え部材のボルト挿通孔に挿通配置した締結ボルトの締付け力により各シア部材を鋼製部材に圧着して摩擦接合すると共に、前記各押え部材により表面側の木製部材又は集成材のはずれ止めを図るようにした木製部材と鋼製部材からなる複合部材が開示されている。前記締結ボルトおよび前記シア部材の配置方法として、複合部材全長に渡って等間隔に配する構成と、両端部近傍または中間部に集中的に配する構成が開示されている。
【0009】
特許文献6では、H形鋼梁の両フランジに木材が配された小屋組みの登り梁が開示されており、棟の接合部において、H形鋼梁のウェブ側に接合金物を延伸させ、ボルトにより固定する方法が開示されている。前記接合金物は、その上部に登り梁の上フランジの木材に相当する部材が配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-44044号公報
【文献】特開2005-320761号公報
【文献】特開2004-230621号公報
【文献】特開2004-308329号公報
【文献】特開2006-2556号公報
【文献】特開2002-242354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術は、木製材を大スパン架構に用いるための発明であるが、以下の課題を有している。
(i)特許文献1の発明では、木製材内部に埋め込む方法として、分割して接着する方法以外具体的な開示がない。接合部についての言及はあるが、接合部の具体的相互関係が明示されておらず、単に接合に供する部分が概念的に示されているに過ぎない。本願で意図している、架構中央部での当該複合材同士の接合に関し、特許文献1では当該接合部が露出した状態になるため、木造架構の美観を著しく損なう問題がある。
【0012】
(ii)特許文献2の発明は、架構中央部での部材同士の接合を考慮したものだが、木製材、補強鋼板とも凹凸形状の加工に手間がかかり、さらに、その構造上、対になる部材端面の正面からしか配置することができない問題がある。
さらに、特許文献3の発明も同様であるが、分割した木材と鋼板が接着により一体化され、さらに、鋼材下端面が露出しているため、火災時には内部の鋼材が早期に高温化し、外周面だけでなく、鋼材との接触部の接着剤、木材も炭化が進展して一体性が失われ、当初の補強効果が喪失する問題がある。
【0013】
(iii)特許文献4の発明では、締結ボルトにより木材と内部の鋼材を固定するとともに、シア部材による一体化を行っているが、シア部材を木材に噛み込ませる各種の方法はいずれも手間が多く、シア部材配置について、材軸方向の配置間隔について定義されているが、高さ方向について、一部図示されているが、具体的な位置について記載されていない。長手方向の接続手段については、鋼材を延長して継手部を形成することのみが記載されており、架構中央部で接合する形態では、通常の鉄骨造と同じく、別途スプライスプレートを用いなければ、軸がずれ、接合部材が露出しているため、美観上問題がある。また、特許文献2、3と同様に、鋼材の下端面が露出しているため、耐火上の問題もあるとともに、山形架構を構成するための接合について具体的な開示がない。
【0014】
(iv)特許文献5の発明は、対向配置された木製部材にシア部材を組み込み、ボルトの締め付け力により、シア部材と鋼材とを摩擦接合させており、機構上、大径のドリフトピンを鋼材からずれることなく配置する手段が示されているが、配置方法については、特許文献4と同じであり、鋼板が露出しており、また山形架構に関する具体的な開示がない。
【0015】
(v)特許文献6の発明は、山形架構の接合金物について開示されているが、被接合部材である登り梁との接合に着目すれば、外部に露出した通常のH形鋼のウェブ部分で鋼板同士を接合しており、本発明が解決しようとする山形架構にかかる接合部の技術課題である、木材の外観と耐火性を解決することはできない。
【0016】
本発明は、上記の解決するためになされたものであり、具体的には以下に示す構成からなるものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)本発明に係る山形複合架設材は、山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設されるものであって、
稜線木製材と該稜線木製材に嵌装された稜線鋼板とを主構成材とし、前記山形架構の稜線部を構成する稜線複合部材と、前記山形架構の中間部にあって、山形に形成された山形木製材と該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に前記稜線複合部材を接合して前記山形架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さの稜線木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本設けられると共に、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって所定の長さの稜線木製材の第2の溝が形成され、
前記稜線鋼板は前記山形複合部材と接合される側の端部を突出させないで前記稜線木製材の第1の溝に嵌装されており、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、稜線複合部材との接合状態で、前記稜線木製材の第2の溝に対向する位置に、その幅と深さを該稜線木製材の第2の溝と同じくする山形木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本形成され、
前記山形鋼板は、前記山形木製材の材長より長く、前記稜線木製材の第2の溝の幅と深さに相当する板厚と幅を有し、該山形木製材の両端から前記稜線木製材の第2の溝と同一長さ突出させて前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の第2の溝に前記山形鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と前記稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されていることを特徴とするものである。
【0018】
(2)また、山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と該稜線木製材に嵌装された稜線鋼板とを主構成材とし、前記山形架構の稜線部を構成する稜線複合部材と、前記山形架構の中間部にあって、山形に形成された山形木製材と該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に前記稜線複合部材を接合して前記山形架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さの稜線木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本設けられると共に、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって前記山形鋼板の突出長さと同じ長さの稜線木製材の第2の溝が形成され、
前記稜線鋼板は前記山形複合部材と接合される側の端部から所定の長さ突出させて前記稜線木製材の第1の溝に嵌装されており、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、稜線複合部材との接合状態で、前記稜線木製材の第2の溝に対向する位置に、その幅と深さを該稜線木製材の第2の溝と同じくする山形木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本形成されると共に、前記稜線木製材の第1の溝に対向する位置で、前記山形木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって前記稜線鋼板の突出長さと同じ長さの山形木製材の第2の溝が形成され、
前記山形鋼板は前記山形木製材の材長より長く、前記稜線木製材の第2の溝の幅と深さに相当する板厚と幅を有し、該山形木製材の両端から前記稜線木製材の第2の溝と同一長さ突出させて前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の第2の溝に前記山形鋼板の突出部が嵌装されると共に前記山形木製材の第2の溝に前記稜線鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されていることを特徴とするものである。
【0019】
(3)また、山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と該稜線木製材に嵌装された稜線鋼板とを主構成材とし、前記山形架構の稜線部を構成する稜線複合部材と、山形架構の中間部にあって、山形に形成された山形木製材と該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に前記稜線複合部材を接合して前記山形架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さの稜線木製材の第1の溝がその全長に亘って少なくとも1本設けられ、
前記稜線鋼板は前記山形複合部材と接合される側の端部を所定の長さ突出させて前記稜線木製材の第1の溝に嵌装されており、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、前記山形鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さを有し、該山形木製材の全長に亘る山形木製材の第1の溝と、該第1の溝の一方の側面とその側面を同じくして、該山形木製材の第1の溝と同じ幅と深さを有し、該山形木製材の両端部から材軸方向中心に向かって、前記稜線鋼板の突出部と同じ長さの一対の山形木製材の第2の溝が、稜線複合部材との接合状態で前記稜線木製材の第1の溝に対向する位置に設けられ、
前記山形木製材の材長と同じ長さを有する山形鋼板が、前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、前記山形木製材の第2の溝に前記稜線鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されていることを特徴とするものである。
【0020】
(4)また、山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設される山形複合架設材であって、
稜線木製材と、該稜線木製材に嵌装される稜線鋼板とを主構成材とし、山形架構の稜線部を形成する一対の稜線複合部材と、前記山形架構の中間部にあって、前記稜線木製材と同一断面で山形に形成された山形木製材と、前記稜線鋼板と同一板厚で該山形木製材に嵌装された山形鋼板とを主構成材とし、両端に稜線複合部材を接合して架構の山形部を形成する山形複合部材とを備え、
前記稜線複合部材は、前記稜線木製材の上面側において、前記稜線鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さを有し、前記稜線木製材の全長に亘る少なくとも一つの稜線木製材の第1の溝と、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の第1の溝の少なくとも一方の側面に隣接して、前記山形複合部材と接合する側の端部から材軸方向中心に向かって、前記稜線木製材の第1の溝と同じ幅と深さを有する所定の長さの稜線木製材の第2の溝が形成され、
前記稜線鋼板は、前記山形複合部材と接合される側の端部において、前記稜線木製材の端部から突出させないで前記稜線木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材は、前記山形木製材の上面側において、前記稜線複合部材との接合時に前記稜線木製材の第1の溝と対向する位置に、前記山形鋼板の板厚相当の幅および板幅相当の深さを有する山形木製材の第1の溝がその全長に亘って設けられると共に、該山形木製材の両端部において、前記稜線複合部材と接合される際に、前記山形木製材の第1の溝の両側面で前記稜線木製材の第2の溝と対向し、該山形木製材の第1の溝を挟むように隣接一体化した材軸方向中心に向かって前記稜線木製材の第2の溝と同じ幅と深さを有する所定の長さの山形木製材の第2の溝が形成され、
前記山形鋼板は、該山形木製材の両端から突出させないで前記山形木製材の第1の溝に嵌装され、
前記山形複合部材と前記稜線複合部材は、対向する前記稜線木製材の第2の溝と前記山形木製材の第2の溝の両方に跨るように接合用鋼板を嵌装し、該嵌装した接合用鋼板と前記山形鋼板及び前記稜線鋼板とを互いに接触状態として機械的手段によって接合したことを特徴とするものである。
【0021】
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記稜線鋼板または/および前記山形鋼板を前記稜線木製材または/および前記山形木製材に設置した状態で、前記稜線鋼板または/および前記山形鋼板における高さ方向の中心よりも下方に、前記稜線木製材または/および前記山形木製材にせん断力を伝達するせん断力伝達機構を設けたことを特徴とするものである。
【0022】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記せん断力伝達機構の設置位置を、前記稜線鋼板または/および前記山形鋼板の上端面から次式で求めた距離hの位置としたことを特徴とするものである。
h=(BH1
2+αtH2
2)/(2(BH1+αtH2))
ただし、B:稜線木製材または/および山形木製材の幅
H1:稜線木製材または/および山形木製材の高さ
t:稜線鋼板または/および山形鋼板の厚さ
H2:稜線鋼板または/および山形鋼板の高さ
α:稜線複合部材または/および山形複合部材を構成する部材間の剛性にかかる係数
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る山形複合架設材は、山形木製材と稜線木製材のそれぞれに山形鋼板と稜線鋼板の全断面が嵌装可能な山形木製材の第1の溝と稜線木製材の第1の溝を形成して山形鋼板と稜線鋼板を配置しているので、山形木製材及び稜線木製材が分離する危険がなく、精度よく容易に山形鋼板及び稜線鋼板が嵌装可能になり、また、鋼板下端面が露出しないので、美観および耐火性に優れる。
また、稜線木製材の第1の溝に隣接して、第2の溝を形成し、山形複合部材と稜線複合部材の接合状態では、稜線木製材の第2の溝に山形鋼板の突出部が嵌装され、該嵌装された山形鋼板と稜線鋼板とが互いに接触状態となって機械的手段によって接合されているので、複合部材相互が摩擦接合により強固に接合可能であり、山形鋼板や稜線鋼板も外部に露出しないので、美観上、耐火上優れた接合部を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る山形複合架設材を説明する(a)平面図及び(b)右側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る山形複合部材を説明する(a)平面図及び(b)右側面図及び(c)正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る稜線複合部材を説明する(a)平面図及び(b)正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る稜線木製材を説明する(a)平面図及び(b)正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る稜線複合部材の応力伝達部材の配置位置を示す(a)側面図および(b)断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る木製材のヤング係数と稜線部材を構成する部材間の剛性にかかる係数αとの関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る山形複合架設材を説明する平面図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る山形複合部材を説明する(a)平面図及び(b)正面図である。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る稜線複合部材を説明する(a)平面図及び(b)正面図である。
【
図10】本発明の実施の形態2に係る稜線木製材を説明する(a)平面図及び(b)正面図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る応力伝達部材の配置状況を示す断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態3に係る山形複合架設材を説明する図であって、山形複合部材と稜線複合部材の接合部の平面図である。
【
図13】本発明の実施の形態4に係る山形複合架設材を説明する図であって、山形複合部材と稜線複合部材の接合部の平面図である。
【
図14】本発明の実施の形態5に係る山形複合架設材を説明する(a)平面図及び(b)側面図である。
【
図15】本発明の実施の形態5に係る山形複合部材を説明する(a)平面図、(b)側面図及び(c)正面図である。
【
図16】本発明の実施の形態5に係る稜線複合部材を説明する(a)平面図及び(b)正面図である。
【
図17】本発明の実施の形態6に係る山形複合部材を説明する(a)平面図及び(b)側面図である。
【
図18】本発明の実施の形態6に係る稜線複合部材を説明する平面図である。
【
図19】本発明の実施の形態7に係る山形複合架設材を説明する図であって、山形複合部材と稜線複合部材の接合部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る山形複合架設材1は、
図1に示すように、山形架構を構成する柱間又は桁行梁間に架設されるものであって、山形架構の稜線部を構成する一対の稜線複合部材5と、山形架構の中間部にあって山形部を構成すると共に一対の稜線複合部材5の接合部となる山形複合部材3とを備えている。以下、本実施の形態の山形複合架設材1の詳細について、スパン12mで中央部に陵角部を有する山形架構に用いる場合を例に挙げ、具体的な寸法を含めて説明する。もっとも、以下に示す寸法は公称寸法による一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。また、同一との表現は、公称値を基準としたもので、寸法形状の公差や製作上必要なクリアランスを許容したものであるのは言うまでもなく、寸法を大きく取って、硬化性の充填材を用いて隙間をなくしたものなど、結果として同一となるものも包含している。
【0026】
<稜線複合部材>
稜線複合部材5は、
図3に示すように、稜線木製材15と稜線木製材15に嵌装された稜線鋼板17を有している。
【0027】
《稜線木製材》
稜線木製材15は、強度区分E120の構造用集成材で、幅120mm、高さ390mm、長さ5.5mである。
稜線木製材15には、
図4に示すように、その上面側において、第1の溝19がその全長に亘って設けられている。第1の溝19の具体的な寸法としては、幅t
w1は12mm、深さH
w1は250mmであり、ここに配置する稜線鋼板17の厚さtと幅H
2と同じである。
また、両端部において、基準線BLを基準として形成された第1の溝19と線対称に、すなわち、第1の溝19の少なくとも一方の側面とその側面部を同じくして隣接一体化されて材軸方向中心に向かって第2の溝21が形成されている。第2の溝21の具体的な寸法は、幅t
w2は12mm、深さH
w2は250mmであり、長さは300mmで、山形鋼板9の突出部9aと同じ幅と厚さと長さである。
なお、第2の溝21は、山形複合部材3と接合される側は必須であるが、もう一方の端部に形成した第2の溝21は柱側との接合に供されるものであり、柱側との接合に用いない場合には当該端部の第2の溝21を設ける必要はない。
【0028】
ここで、第1の溝19の配置の決め方の一例を
図4に基づいて説明する。稜線木製材15の幅方向の中心に基準線BLを設定し、第1の溝19は本例では、図示で基準線BLの右側に設定している。
すなわち、第1の溝19は、その左側の側面が基準線BLと同一線上にあり、第1の溝19の溝幅をt
w1とすれば、第1の溝19の幅方向の中心は、t
w1/2だけ右側にずれて配置されている。
なお、基準線BLは、稜線複合部材5単独についてのものではなく、山形複合部材3と接合して形成したスパン12mの山形複合架設材1としての基準線BLである。
【0029】
基準線BLに対する第1の溝19の配置は上述のものに限定されるものではなく、ロット生産する場合には各ロットで統一すればよく、基準線BLの左側に設けるようにしてもよいし、後述する実施の形態4のごとく基準線BLに第1の溝19の中心を合わせてもよい。
また、基準線BLは稜線木製材15の両側面からそれぞれ幅の中心方向に等距離で設定するので、基準線BLを1本とした場合は、上述の例のように幅方向の中央に設置される。もっとも、基準線BLは1本に限られず、例えば2本とした場合には、左右の側面から等距離にそれぞれ1本ずつ配置され、この基準線BLに従って上述したルールに基づいて第1の溝19を配置する。なお、基準線BLの数は1本、2本に限定されず、それ故に第1の溝19の数も特に限定されない。なお、基準線BLを2本とする場合については、後述の実施の形態2で具体的に説明する。
【0030】
稜線木製材15には、山形複合部材3との接合状態において、後述する山形鋼板9の突出部9aに設けられた山形鋼板の接合用貫通孔13と同じ位置に稜線木製材の接合用貫通孔23が設けられている(
図1(b)参照)。
【0031】
また、稜線木製材15には稜線鋼板17の応力を伝達するドリフトピン等の応力伝達部材25を設置するための孔として、稜線木製材応力伝達部材用孔27が設けられている(
図5参照)。稜線木製材応力伝達部材用孔27は、稜線鋼板17を嵌装した状態で、後述する稜線鋼板17に設ける稜線鋼板応力伝達部材用貫通孔29に対応する位置に設けられている。
稜線木製材応力伝達部材用孔27は、稜線木製材15の一方の側面から少なくとも鋼板までの深さ以上に穿たれている。
なお、設置する応力伝達部材25は、稜線木製材15と稜線鋼板17の応力伝達に供するもので、ドリフトピンの場合は稜線木製材応力伝達部材用孔27を非貫通にしてもよく、また、左右側面で千鳥配置してもよく、上下に複数設けてもよい。また、
図5に示すように、貫通孔である場合にはドリフトピンの他にボルトを用いることができる。
稜線木製材応力伝達部材用孔27は、応力伝達部材25に、φ16mmのドリフトピンを用いるので、がたつきを生じないようにドリフトピンの径以下の径とし、例えばφ15mmとする。ボルトを用いる場合には、ボルト径以上とすればよく、例えば、M16であれば、17mmとする。
なお、ドリフトピン等の応力伝達部材25は、稜線鋼板17と稜線木製材15の剛比から負担曲げモーメントの割合を算出し、その差を伝達できるように計画するとよい。
【0032】
《稜線鋼板》
稜線鋼板17は、その長さが稜線木製材15と同じであり、
図3に示すように、両端部を稜線木製材15から突出させないで第1の溝19に嵌装されている。
また、
図5に示すように、稜線鋼板17には、長手方向に所定の間隔で、稜線木製材15への配置状態で高さ方向に1箇所以上の稜線鋼板応力伝達部材用貫通孔29が設けられており、稜線鋼板応力伝達部材用貫通孔29は材長方向に複数配置されている。ここで、配置間隔は必要に応じて決定してよく、等間隔でもよいが、山形複合部材3と接合しない側を密にするとよりよい。
稜線鋼板応力伝達部材用貫通孔29はφ17mmである。
【0033】
応力伝達用貫通孔29の配置高さは、稜線鋼板17を稜線木製材15に設置した状態で、稜線鋼板17の高さ方向の中心よりも下方に少なくとも1箇所配置される。より望ましくは、稜線鋼板上端面から次式で求めた距離hの位置とする(
図5参照)。
h=(BH
1
2+αtH
2
2)/(2(BH
1+αtH
2))
ただし、B:稜線木製材の幅
H
1:稜線木製材の高さ
t:稜線鋼板の厚さ
H
2:稜線鋼板の高さ
α:稜線複合部材を構成する部材間の剛性にかかる係数
本例の場合には、B=120mm、H
1=390mm、t=12mm、H
2=250mmである。また、αは稜線複合部材を構成する部材間の剛性にかかる係数であり、稜線木製材15と稜線鋼板17のヤング係数を用いた数式で決定され、
図6に示す分布を呈する。本説明に用いた構造用集成材の場合はα=16.1であり、上記の式によりhを160mmに設定した。
【0034】
稜線鋼板17には、山形複合部材3との接合状態において山形鋼板9の突出部9aに設けられた山形鋼板の接合用貫通孔13と同じ位置に稜線鋼板の接合用貫通孔18が設けられており(
図1(b)参照)、山形複合部材3との接合に供される。
【0035】
<山形複合部材>
山形複合部材3は、
図2に示すように、山形架構の傾斜角に応じて長手方向の中心で陵角部を有する山形木製材7と山形木製材7に嵌装された山形鋼板9を有してなり、一対の稜線複合部材5を接合する部材である。
【0036】
《山形木製材》
山形木製材7は、稜線木製材15と同一断面の木製材からなり、山形鋼板9の板厚相当の幅で山形鋼板9の幅相当の深さを有し、山形木製材7の全長に亘る第1の溝11が形成されている。第1の溝11は、稜線複合部材5に形成された第2の溝21(
図3参照)と同じ幅、同じ深さであり、稜線複合部材5との接合状態において稜線複合部材5の第2の溝21と対向する位置、すなわち基準線BLに隣接する位置に設けられている。
【0037】
山形木製材7の例としては、強度区分E120、幅120mm、高さ390mm、長さ1098mmの構造用集成材を5寸勾配となるように2本組み合わせている。なお、山形木製材7および稜線木製材15には、無垢材やCLT(直交集成板)、LVL(単板積層材)などを用いてもよい。
【0038】
《山形鋼板》
山形鋼板9は、
図2に示すように、山形木製材7の両端から同一長さ突出させて山形木製材の第1の溝11に嵌装されている。
山形鋼板9の突出部9aの長さLは、稜線木製材の第2の溝21と同じ長さであり、例えばL=300mmである。
山形鋼板9の突出部9aには、
図2(b)に示すように、稜線複合部材5の稜線鋼板17とボルト接合するための山形鋼板9の接合用貫通孔13(φ17mm)を上下方向に2箇所、長手方向に2列の計4か所設けている。山形鋼板の接合用貫通孔13の数や配置はこれに限定されるものではなく、作用荷重等に応じて適宜設定すればよいが、上下2箇所以上で2列以上配置して回転を拘束できるようにすることが望ましい。
山形木製材7と山形鋼板9は、必要に応じて、応力伝達部材25により一体化する。配置位置や方法は、稜線複合部材5と同じでよい。
【0039】
《山形複合架設材》
山形複合架設材1は、山形複合部材3と稜線複合部材5が、
図1に示すように、稜線木製材の第2の溝21に山形鋼板の突出部9aが嵌装され、該嵌装された山形鋼板9と稜線鋼板17とが互いに接触状態となって、稜線木製材の接合用貫通孔23、山形鋼板の接合用貫通孔13、稜線鋼板の接合用貫通孔18を介して、ボルト・ナット等の機械的手段(図示せず)によって接合されて構築されている。
ここで、相互の接合部の山形木製材の接合用貫通孔23は、締め付け工具の大きさを考慮した径(例えば、φ40mm)として、鋼板同士のみ、すなわち稜線鋼板17と山形鋼板9をハイテンションボルトで摩擦接合とした。
【0040】
摩擦接合としない場合には、ドリフトピンを用いるとよく、あるいはボルトと併用してもよい。ボルト・ナット部分は、施工後に木栓を打ち込むとよく、内部にロックウールやセラミックウール、モルタルなどの耐火材を充填するとより望ましい。このほか、稜線木製材の接合用貫通孔23、稜線鋼板の接合用貫通孔18及び山形鋼板の接合用貫通孔13の孔径を同じにして稜線木製材15の側面から稜線木製材15とあわせて締め付けてもよく、ボルト頭とナットを埋め込み可能なように拡大した座ぐりを行った段付きとしてもよく、これらの併用でもよい。
【0041】
なお、上記の例では、稜線複合部材5の両端面について稜線鋼板17を突出させない形態とし、山形複合部材3と接合しない端部にも稜線木製材の第2の溝21を形成して、柱等(柱あるいは桁行梁上、あるいはこれらの側面)との接合部とした。この場合、柱等から稜線木製材の第2の溝21と同じ長さのブラケットを突出させて稜線木製材の第2の溝21に嵌装し、ブラケットと稜線鋼板17を互いに接合するようにする。
しかし、柱等との接合はこれに限られず、山形複合部材3と接合しない端部は稜線木製材の第2の溝21を形成せずに、柱等側に設置した金物と接合してもよく、また、稜線鋼板17を突出させて、柱等側との接合用ブラケットとし、柱等に設けたブラケットに接合してもよい。あるいは柱等に第2の溝21に相当する溝を設けて、突出させた稜線鋼板17をこの溝に嵌装するようにしてもよい。また、上述した種々の方法をその場所において任意に選択して組み合わせてもよい。
【0042】
以上のように、本実施の形態の山形複合架設材1において、統一した基準線によって、山形木製材7に第1の溝11を設け、稜線木製材15には第1の溝19と第2の溝21を設けて、それぞれ鋼板の全断面を嵌装させているので、山形木製材7及び稜線木製材15が左右に分離する危険がなく、精度よく容易に鋼板が嵌装可能になり、また、鋼板下端面が露出しないので、美観および耐火性に優れる。
また、山形複合部材3と稜線複合部材5を接合するに際して、山形複合部材3の山形鋼板9を山形木製材7の両端から突出させ、突出させた山形鋼板の突出部9aを稜線木製材15に形成した第2の溝21に嵌装させて、機械的手段により鋼板同士が接合できるようにしているので、複合架設材相互の接合が鋼板同士の摩擦接合により強固に接合可能であり、鋼板も外部に露出しないので、美観上、耐火上優れた接合部を容易に得ることができる。
【0043】
また、本実施の形態の構造では、稜線木製材15が左右に分離されていないので、稜線鋼板17とは純粋にせん断力の伝達のみを考慮してドリフトピンの寸法や配置箇所を決定すればよく、別途開き止めは不要であるが、上部に開き止めを設けるとよりよい。
また、稜線木製材15の上部の開き止めは、小屋架構とする場合には、野縁を上面あるいは側面に接合することによって開き止めとすることができる。特に、野縁を上面に配置した場合、稜線木製材15と稜線鋼板17の上端面に同時に荷重が作用するので、応力伝達部材25を一部または全部省略することができる。
また、稜線鋼板17の側面は少ない方で48mmの無垢の木材が配され、稜線鋼板17の下端は、無垢の木材が140mmあるために、45分の火災において燃え残り、火災時に稜線鋼板17の温度を低く保ち、45分準耐火構造の性能を確保することができる。
【0044】
[実施の形態2]
実施の形態1では、山形木製材7には1本の第1の溝11を形成し、稜線木製材15には稜線木製材15の幅方向の中心に基準線BLを1本設けて1本の第1の溝19及び第2の溝21を形成する事例を説明したが、各溝の幅は、加工機械の制限などにより大きくできない場合がある。その場合、所有する工作機械の限度内の幅の山形木製材の第1の溝11、稜線木製材の第1の溝19及び第2の溝21を複数配して、実施の形態1の山形鋼板9及び稜線鋼板17の板厚を分割するようにしてもよい。
本実施の形態では、基準線BLを2本とし、溝加工の利便性を考慮して実施の形態1で示した山形鋼板9及び稜線鋼板17の厚さの1/2(=6mm)に薄くし、山形木製材の第1の溝11、稜線木製材の第1の溝19及び第2の溝21を2本設ける事例について
図7~
図11に基づいて説明する。
ここで、基準線BLは左右対称に、左右の側面から等距離にそれぞれ1本ずつ配置することを原則とし、稜線木製材15の第2の稜線溝21の配置については、左右それぞれの第1の稜線溝19のどちらかに揃えても、対称に配置してもよい。
【0045】
図7~
図11において、実施の形態1を示した
図1~
図5と同一部分及び対応する部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、本実施の形態では、基準線BL、山形木製材の第1の溝11、稜線木製材の第1の溝19及び第2の溝21がそれぞれ2本設けられ、山形鋼板9及び稜線鋼板17も2枚設けられているので、これらについて図中左側、右側のものを示すために符号の後にそれぞれ「L」、「R」を付してある。
【0046】
<稜線複合部材>
稜線複合部材5においては、
図10に示すように、第1の溝19R、19Lはいずれも基準線BLL、BLRの右側に配置する。基準線BLL、BLRは稜線木製材15の左右側面から45mmで設定されている。
よって、左側面から45mmの位置に第1の溝19Lの左側面が配され、右側面から39mmの位置に第1の溝19Rの右側面が配される。第2の溝21R、21Lは、基準線BLL、BLRに対してそれぞれ第1の溝19R、19Lの線対称の位置に設ける。
【0047】
また、
図9に示すように、第1の溝19R、19Lにはそれぞれ、稜線鋼板17R、17Lが嵌装されている。
稜線木製材15に設ける応力伝達部材25は、深さ70mm程度の稜線木製材応力伝達部材用貫通孔27を稜線木製材15の左右側面から配置し、あるいは貫通孔として設け、ドリフトピンを配置してもよい。なおこの配置は千鳥配置としてもよい。あるいは、
図11に示すように、稜線木製材応力伝達部材用貫通孔27を、稜線鋼板17R、17Lが嵌装されている位置まではボルト頭およびナットの径よりも大きくして中間部はボルト軸径とし、応力伝達部材25に、ボルト・ナットを用いて左右の稜線鋼板17で中央部の木材を挟み込んで締め付けるようにするとよい。
【0048】
<山形複合部材>
山形複合部材3は、
図8に示すように、実施の形態1と同様に、山形架構の傾斜角に応じて長手方向の中心で陵角部を有する山形木製材7と山形木製材7に嵌装された2枚の山形鋼板9R、9Lを有してなる。山形木製材7には、稜線複合部材5との接合状態で第2の溝21R、21Lと対向する位置、すなわち、2本の基準線BLL、BLRのそれぞれの左側に第1の溝11R、11Lがそれぞれ設けられ、第1の溝11R、11Lには長さL=300mmの突出部9aR、9aLを形成するように山形鋼板9R、9Lが嵌装される。
【0049】
山形複合部材3と稜線複合部材5により山形複合架設材1を形成するのに際しては、
図7に示すように、山形複合部材3の2枚の山形鋼板9R、9Lを稜線複合部材5における稜線木製材15の2本の第2の溝21R、21Lに嵌装する。接合は、実施の形態1と同様に、稜線木製材の接合用貫通孔23、稜線鋼板の接合用貫通孔18及び山形鋼板の接合用貫通孔13の孔径を同じにして稜線木製材15の側面から稜線木製材15とあわせて締め付けてもよく、ボルト頭とナットを埋め込み可能なように拡大した座ぐりを行った段付きとしてもよく、最も望ましくは、稜線木製材の接合用貫通孔23は、前述の
図11に示した稜線木製材応力伝達部材用貫通孔27と同様に、稜線鋼板17R、17Lが嵌装されている位置まではボルト頭およびナットの径よりも大きくして中間部はボルト軸径とし、左右の山形鋼板9L、9Rで中央部の木材を挟み込んで締め付けるとよい。
【0050】
なお、上記の例では基準線BLL、BLRを2本とした例を説明したが、山形木製材7や稜線木製材15の幅が広くなったような場合には3本以上設定して、第1の山形溝11、第1の稜線溝19、第2の稜線溝21を3本以上としてもよい。
【0051】
[実施の形態3]
実施の形態2では、山形複合部材3及び稜線複合部材5の両方にそれぞれ鋼板を2枚嵌装するものであったが、本実施の形態では山形複合部材3と稜線複合部材5の接合部の合理化のため、
図12に示すように、山形複合部材3は1枚の山形鋼板9として両端部に突出部9aを設けて稜線木製材の第2の溝21に嵌装し、稜線複合部材5に嵌装した2枚の稜線鋼板17R、17Lで、山形鋼板の突出部9aを挟持して固定させるようにしたものである。
稜線木製材15に形成する第2の溝21は、端部から長さLの範囲で左右の第1の溝19R、19Lの間に、その両側面を一致させて配置されている。このため、稜線木製材15の山形複合部材3との接合に供する側の端部において、2枚の稜線鋼板17R,17Lの板厚の合計と山形鋼板9の板厚との合計の幅で、長さLの一つの溝が形成されることになる。
稜線複合部材5と山形複合部材3の接合は、
図12に示されるように、山形鋼板9の突出部9aを稜線木製材の第2の溝21に嵌装し、すなわち、稜線複合部材5の2枚の稜線鋼板17R、17Lの間に嵌装し、前記稜線鋼板17R、17Lと二面せん断形式で接合する形態となる。
【0052】
本実施の形態における中心線の配置と溝の配置の具体例を説明すると以下の通りである。
基準線BLは中心から左右に9mmの位置とし、その基準線BLを中心として、幅6mmの左右の第1の溝19R、19Lが設けられ、第2の溝21は、その両側面が左右の第1の溝19R、19Lに挟まれるように配置されており、幅は12mmである。すなわち、稜線木製材15の接合部材側の端面では、稜線複合部材5の稜線鋼板17R、17Lの板厚の合計12mmと山形鋼板9の板厚12mmとの合計の幅24mmの一つの溝が、長さ300mmの範囲で形成される。山形複合部材3の第1の溝11は、稜線木製材の第2の溝21に対抗する位置に設置されるため、山形木製材7の幅方向の中心に、幅12mmで形成され、山形鋼板9を嵌装する。
【0053】
[実施の形態4]
実施の形態3では、山形複合部材3には1枚の山形鋼板9として両端部に突出部9aを設けて稜線木製材の第2の溝21に嵌装し、稜線複合部材5に嵌装した2枚の稜線鋼板17R、17Lで、山形鋼板の突出部9aを挟持して固定させるようにしたものであるが、本実施の形態では、
図13に示すように、山形複合部材3は2枚の山形鋼板9R、9Lの両端部に突出部9aR、9aLを設けて稜線木製材の第2の溝21R、21Lに嵌装し、稜線複合部材5に嵌装した稜線鋼板17を、山形鋼板の突出部9aR、9aLで挟持して固定させるようにしたものである。これにより、山形複合部材3と稜線複合部材5との接合部では、実施の形態3と同様に、二面せん断形式で接合され、強度が向上する。
【0054】
本実施の形態では、基準線BLを稜線木製材15の中心とし、稜線複合部材5の第1の溝19をその中心に合わせて配置し、その両側に第2の溝21R、21Lを設ける。
本実施の形態における中心線の配置と溝の配置の具体例を説明すると以下の通りである。
基準線BLは中心位置とし、その基準線BLを中心として、幅12mmの第1の溝19が設けられ、第2の溝21は、その両側面に、幅6mm、長さ300mmの第2の溝21R、21Lが配置されている。すなわち、稜線木製材15の山形複合部材3との接合に供する側の端面では、稜線複合部材5の稜線鋼板17の板厚12mmと山形鋼板9R、9Lの板厚の合計12mmとの合計の幅24mmの一つの溝が、長さ300mmの範囲で形成される。
また、山形複合部材3には、稜線複合部材5の第2の溝21R、21Lに対向する位置に2本の第1の溝11R、11L設けて山形鋼板9R、9Lを配置する。
山形複合部材3の山形鋼板9R、9Lの突出部9aR、9aLを稜線木製材の第2の溝21R、21Lに嵌装し、稜線複合部材5の稜線鋼板17が山形鋼板9R、9Lの突出部9aR、9aLによって二面せん断形式で接合される。
【0055】
[実施の形態5]
実施の形態1~4においては、山形複合部材3の山形鋼板9を両端から突出させて、その突出部9aを稜線複合部材5の稜線木製材15に設けた第2の溝21に嵌装するようにしたものであった。
これに対して、本実施の形態では、
図14に示すように、山形鋼板9を突出させることに加えて稜線複合部材5の稜線鋼板17も山形複合部材3側に突出させると共に、山形木製材7にも第2の溝31を設けて稜線鋼板17の突出部17aを嵌装させるようにしたものである。
【0056】
《山形複合部材》
山形複合部材3は、
図15に示すように、実施の形態1の構成に加え、稜線木製材の第1の溝19に対向する位置に、長さL2で、幅と深さを稜線木製材の第1の溝19と同じくする第2の溝31が形成されている。
また、稜線複合部材5との接合状態で、後述する稜線鋼板の接合用貫通孔18に対応する位置には、山形木製材の接合用貫通孔35および山形鋼板の接合用貫通孔13が形成されている。
【0057】
《稜線複合部材》
稜線複合部材5は、
図16に示すように、山形複合部材3との接合に供する側の端部から、稜線鋼板17を所定の長さL2だけ突出させた突出部17aを設けている。そして、稜線鋼板17の突出部17aには稜線鋼板の接合用貫通孔18が形成されている。また、山形複合部材3との接合状態で、山形鋼板の突出部9aに配された接合用貫通孔13に対応する位置には、稜線木製材の接合用貫通孔35および稜線鋼板の接合用貫通孔18が形成されている(
図14(b)参照)。
なお、
図16に示す例では、稜線鋼板17を稜線木製材15の両端から同一長さだけ突出させているが、山形複合部材3と接合しない側については、実施の形態1で説明したように種々の対応を取り得る。
【0058】
《山形複合架設材》
山形複合部材3と稜線複合部材5を接合し、山形複合架設材1を形成する際には、稜線木製材15に形成した第2の溝21に山形複合部材3の山形鋼板9の突出部9aが嵌装されるとともに、山形木製材7に形成した第2の溝31に稜線複合部材5の稜線鋼板17の突出部17aが嵌装され、相互に山形鋼板9と稜線鋼板17が接触状態となって、山形鋼板の接合用貫通孔13と稜線鋼板の接合用貫通孔18を介して、ボルト、ナットなど機械的手段(図示せず)によって接合される。
【0059】
[実施の形態6]
本実施の形態は、山形複合部材3は、
図17に示すように、山形鋼板9を山形木製材7の両端から突出させないで山形木製材7の両端に第2の溝31を形成し、稜線複合部材5は、
図18に示すように、稜線鋼板17を稜線木製材15の両端からLだけ突出させるようにしたものである。
山形複合部材3と稜線複合部材5の接合時には、稜線鋼板17の突出部17aを山形木製材の第2の溝31に嵌装させて山形鋼板9と接合するようにする。
【0060】
[実施の形態7]
実施の形態1~6に示したものは、山形鋼板9及び/又は稜線鋼板17を端部から突出させて山形複合部材3と稜線複合部材5の接合に供するものであった。
これに対して、本実施の形態の山形複合架設材1は、
図19に示すように、山形鋼板9及び稜線鋼板17のいずれも端部から突出させないで、スプライスプレート37によって接合するというものである。
【0061】
具体的には、基準線BLを山形複合架設材1の幅方向の中心に配置し、その基準線BLを中心として、山形複合部材3においては、幅12mmの山形木製材の第1の溝11が設けられ、その両端部において、第1の溝11の両側面に長さ300mm、幅6mmの第2の溝31R、31Lを形成する。すなわち、山形木製材7の両端部には、1本の第1の溝11の溝幅12mmと2本の第2の溝31R、31Lの溝幅の合計12mmとの合計の幅24mmの溝幅を有する長さ300mmの溝が形成されている。
稜線複合部材5も同様に、基準線BLを中心として、幅12mmの第1の溝19が設けられ、山形複合部材3との接合に供する端部においては、第1の溝19の両側面に山形木製材の第2の溝31R、31Lと対向する幅6mmの第2の溝21R、21Lが形成され、、すなわち、稜線木製材15における山形複合部材3との接合に供する側の端部には、1本の第1の溝19の溝幅6mmと2本の第2の溝21R、21Lの溝幅の合計12mmの合計24mmの溝幅を有する長さ300mmの溝が形成されている。
【0062】
そして、山形複合部材3と稜線複合部材5の接合に際しては、山形木製材の第2の溝31R、31Lと稜線木製材の第2の溝21R、21Lを対向配置し、山形木製材の第2の溝31R、31Lと稜線木製材の第2の溝21R、21Lに亘る、幅6mm、長さ600mmのスプライスプレート37を嵌装し、ボルト・ナットによって2面せん断形式で接合する。
【0063】
[実施の形態8]
実施の形態7では、山形鋼板9と稜線鋼板17の両側面をスプライスプレート37によって2面せん断形式で接合する例を示したが、山形木製材の第2の溝31R、31Lと山形木製材の第1の溝11R、11Lを読み替え、稜線木製材の第2の溝21R、21Lと稜線木製材の第1の溝19R、19Lと読み替え、山形鋼板9と稜線鋼板17でスプライスプレート37を挟持して機械的手段によって固定してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 山形複合架設材
3 山形複合部材
5 稜線複合部材
7 山形木製材
9、9R、9L 山形鋼板
9a、9aR、9aL 山形鋼板の突出部
11、11R、11L 山形木製材の第1の溝
13 山形鋼板の接合用貫通孔
15 稜線木製材
17、17R、17L 稜線鋼板
17a 稜線鋼板の突出部
18 稜線鋼板の接合用貫通孔
19、19R、19L 稜線木製材の第1の溝
21、21R、21L 稜線木製材の第2の溝
23 稜線木製材の接合用貫通孔
25 応力伝達部材
27 稜線木製材応力伝達部材用孔
29 稜線鋼板応力伝達部材用貫通孔
31、31R、31L 山形木製材の第2の溝
35 山形木製材の接合用貫通孔
37 スプライスプレート(接合用鋼板)
BL、BLR、BLL 基準線