(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車載温調システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231108BHJP
B60H 1/08 20060101ALI20231108BHJP
B60H 3/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/08 621C
B60H1/22 651A
B60H1/08 621B
B60H3/00 B
(21)【出願番号】P 2021084865
(22)【出願日】2021-05-19
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】三好 悠司
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168950(JP,A)
【文献】特開2014-218237(JP,A)
【文献】特開2020-172178(JP,A)
【文献】特開2017-081530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0351739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒から熱媒体に放熱させて前記冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器と車室内に供給する空気から前記冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる蒸発器とを有すると共に、これらを通って冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
車室内の暖房に用いられるヒータコアと、前記媒体間熱交換器と、機関熱回路と、外気中に放熱して熱媒体を冷却するラジエータとを有すると共に、これらを通って前記熱媒体を循環させ得る熱回路と、
前記熱回路における熱媒体の流通状態を制御する制御装置と、を有し、
前記機関熱回路は、前記ヒータコアと前記媒体間熱交換器を通らずに、内燃機関と熱交換する機関熱交換器を通って熱媒体を流通させ、
前記熱回路は、前記機関熱回路から流出した熱媒体と前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体とが合流する合流部と、該合流部において合流した熱媒体が前記ヒータコアに流入する熱媒体と前記ラジエータに流入する熱媒体とに分かれる第1分岐部と、前記ヒータコアから流出した熱媒体が前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体と前記機関熱回路に流入する熱媒体とに分かれる第2分岐部と、該第1分岐部から前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量と前記第1分岐部から前記ラジエータに流入する熱媒体の流量との割合を調整する第1調整弁と、該第2分岐部から前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の流量と前記第2分岐部から前記機関熱回路に流入する熱媒体の流量との割合を調整する第2調整弁とを有し、
前記制御装置は、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御する、車載温調システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合、前記ヒータコアに流入する熱媒体の温度と、前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の温度とに基づいて、前記第1調整弁及び前記第2調整弁とを制御する、請求項1に記載の車載温調システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合、前記ヒータコアに流入する熱媒体の温度が所定の基準温度未満である場合には、前記第1分岐部に流入した熱媒体が前記ラジエータに流入せずに前記ヒータコアに流入するように前記第1調整弁を制御し、前記ヒータコアに流入する熱媒体の温度が前記基準温度以上であるときには、前記第1分岐部に流入した熱媒体を前記ヒータコアと前記ラジエータとの両方に流入するように前記第1調整弁を制御する、請求項2に記載の車載温調システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体が前記ラジエータに流入せずに前記ヒータコアに流入するように前記第1調整弁を制御している場合には、前記第2分岐部に流入した熱媒体が前記媒体間熱交換器と前記機関熱回路との両方に流入するように前記第2調整弁を制御する、請求項2又は3に記載の車載温調システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体が前記ラジエータに流入せずに前記ヒータコアに流入するように前記第1調整弁を制御している場合には、前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の温度が高いときには低いときに比べて前記機関熱回路に流入する熱媒体の流量に対する前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の流量が多くなるように前記第2調整弁を制御する、請求項4に記載の車載温調システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記車室内の除湿
暖房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体を前記ヒータコアと前記ラジエータとの両方に流入するように前記第1調整弁を制御しているときには、前記第2分岐部に流入した熱媒体が前記媒体間熱交換器に流入せずに前記機関熱回路に流入するように前記第2調整弁を制御する、請求項2~5のいずれか1項に記載の車載温調システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記車室内の除湿
暖房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体を前記ヒータコアと前記ラジエータとの両方に流入するように前記第1調整弁を制御しているときには、前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の温度が高いときには低いときに比べて、前記ラジエータに流入する熱媒体の流量に対する前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量が少なくなるように前記第1調整弁を制御する、請求項6に記載の車載温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排熱によりヒータコアに流入する冷却水を加熱することによって行う暖房(排熱暖房)と、ヒートポンプを利用して斯かる冷却水を加熱することによって行う暖房(HP暖房)との、二つの態様の暖房を行うことができる車載温調システムが知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特に、特許文献1に記載の車載温調システムは、ヒートポンプの冷媒と熱交換する媒体間熱交換器とヒータコアとを通って冷却水が循環するように構成された熱回路を有する。また、この車載温調システムでは、内燃機関と熱交換する機関熱交換器の出口が、ヒータコアの下流であって媒体間熱交換器上流の上記熱回路の流路と、媒体間熱交換器の下流であってヒータコアの上流の上記熱回路の流路とに連通すると共に、切換弁により機関熱交換器の出口がこれら二つの流路のいずれかに選択的に連通せしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-168950号公報
【文献】特開2016-130045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車載温調システムは、機関熱交換器の出口がヒータコアの上流側及び下流側に選択的に連通することができるように構成されており、複雑な構成を有している。
【0006】
また、除湿暖房を行うときには、暖房を行うためにヒータポンプに流入する冷却水の温度を高く制御する必要がある。また、除湿を行うためには、ヒートポンプを利用して空気の温度を一旦低下させることが必要であり、ヒートポンプおける冷却効率を高めるためには媒体間熱交換器に流入する冷却水の温度を低く制御する必要がある。
【0007】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、適切に除湿暖房を行うことができる簡単な構成の車載温調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)冷媒から熱媒体に放熱させて前記冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器と車室内に供給する空気から前記冷媒に吸熱させて該冷媒を蒸発させる蒸発器とを有すると共に、これらを通って冷媒を循環させることで冷凍サイクルを実現するように構成された冷凍回路と、
車室内の暖房に用いられるヒータコアと、前記媒体間熱交換器と、機関熱回路と、外気中に放熱して熱媒体を冷却するラジエータとを有すると共に、これらを通って前記熱媒体を循環させ得る熱回路と、
前記熱回路における熱媒体の流通状態を制御する制御装置と、を有し、
前記機関熱回路は、前記ヒータコアと前記媒体間熱交換器を通らずに、内燃機関と熱交換する機関熱交換器を通って熱媒体を流通させ、
前記熱回路は、前記機関熱回路から流出した熱媒体と前記媒体間熱交換器から流出した熱媒体とが合流する合流部と、該合流部において合流した熱媒体が前記ヒータコアに流入する熱媒体と前記ラジエータに流入する熱媒体とに分かれる第1分岐部と、前記ヒータコアから流出した熱媒体が前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体と前記機関熱回路に流入する熱媒体とに分かれる第2分岐部と、該第1分岐部から前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量と前記第1分岐部から前記ラジエータに流入する熱媒体の流量との割合を調整する第1調整弁と、該第2分岐部から前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の流量と前記第2分岐部から前記機関熱回路に流入する熱媒体の流量との割合を調整する第2調整弁とを有し、
前記制御装置は、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御する、車載温調システム。
(2)前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合、前記ヒータコアに流入する熱媒体の温度と、前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の温度とに基づいて、前記第1調整弁及び前記第2調整弁とを制御する、上記(1)に記載の車載温調システム。
(3)前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合、前記ヒータコアに流入する熱媒体の温度が所定の基準温度未満である場合には、前記第1分岐部に流入した熱媒体が前記ラジエータに流入せずに前記ヒータコアに流入するように前記第1調整弁を制御し、前記ヒータコアに流入する熱媒体の温度が前記基準温度以上であるときには、前記第1分岐部に流入した熱媒体を前記ヒータコアと前記ラジエータとの両方に流入するように前記第1調整弁を制御する、上記(2)に記載の車載温調システム。
(4)前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体が前記ラジエータに流入せずに前記ヒータコアに流入するように前記第1調整弁を制御している場合には、前記第2分岐部に流入した熱媒体が前記媒体間熱交換器と前記機関熱回路との両方に流入するように前記第2調整弁を制御する、上記(2)又は(3)に記載の車載温調システム。
(5)前記制御装置は、前記車室内の除湿暖房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体が前記ラジエータに流入せずに前記ヒータコアに流入するように前記第1調整弁を制御している場合には、前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の温度が高いときには低いときに比べて前記機関熱回路に流入する熱媒体の流量に対する前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の流量が多くなるように前記第2調整弁を制御する、上記(4)に記載の車載温調システム。
(6)前記制御装置は、前記車室内の除湿冷房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体を前記ヒータコアと前記ラジエータとの両方に流入するように前記第1調整弁を制御しているときには、前記第2分岐部に流入した熱媒体が前記媒体間熱交換器に流入せずに前記機関熱回路に流入するように前記第2調整弁を制御する、上記(2)~(5)のいずれか1つに記載の車載温調システム。
(7)前記制御装置は、前記車室内の除湿冷房を行う場合であって前記第1分岐部に流入した熱媒体を前記ヒータコアと前記ラジエータとの両方に流入するように前記第1調整弁を制御しているときには、前記媒体間熱交換器に流入する熱媒体の温度が高いときには低いときに比べて、前記ラジエータに流入する熱媒体の流量に対する前記ヒータコアに流入する熱媒体の流量が少なくなるように前記第1調整弁を制御する、上記(6)に記載の車載温調システム。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、適切に除湿暖房を行うことができる簡単な構成の車載温調システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る車載温調システムを搭載する車両の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、一つの実施形態に係る車載温調システムを概略的に示す構成図である。
【
図3】
図3は、第4三方弁の異なる作動状態を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、車載温調システムを搭載した車両の空調用の空気通路を概略的に示す構成図である。
【
図5】
図5は、暖房要求があり且つ内燃機関が停止している場合の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態(第1暖房モード)を示している。
【
図6】
図6は、暖房要求があり且つ内燃機関が作動している場合の、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態(第2暖房モード)を示している。
【
図7】
図7は、冷房要求がある場合の、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態(冷房モード)を示している。
【
図8】
図8は、除湿暖房要求があり且つヒータコアに流入する冷却水の温度が必要以上には高くない場合の、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態(第1除湿暖房モード)を示している。
【
図9】
図9は、コンデンサに流入する冷却水の温度と、第4三方弁に流入した冷却水の流量に対するコンデンサ流入通路へ流入させる冷却水の流量の割合を示す図である。
【
図10】
図10は、除湿暖房要求があり且つヒータコアに流入する冷却水の温度が必要以上に高い場合の、車載温調システムにおける熱媒体の流通状態(第2除湿暖房モード)を示している。
【
図11】
図11は、コンデンサに流入する冷却水の温度と、第3三方弁に流入した冷却水の流量に対するコア流入通路へ流入させる冷却水の流量の割合を示す図である。
【
図12】
図12は、除湿暖房要求があるときの第3三方弁及び第4三方弁の切替処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0013】
<車両の構成>
図1は、一つの実施形態に係る車載温調システム1を搭載する車両100の構成を概略的に示す図である。
図1では、左側が車両100の前方、右側が車両100の後方をそれぞれ示している。
図1に示したように、車両100は、内燃機関110と、モータジェネレータ(MG)112と、動力分割機構116と、を有する。加えて、車両100は、MG112に電気的に接続されたパワーコントロールユニット(PCU)118と、PCU118に電気的に接続されたバッテリ120と、を備える。
【0014】
内燃機関110は、燃料を機関の内部で燃焼させて、燃焼ガスの熱エネルギを機械的エネルギに変換する原動機である。内燃機関110は動力分割機構116に接続され、内燃機関110の出力は車両100を駆動したりMG112にて発電を行ったりするのに用いられる。
【0015】
MG112は、電動機及び発電機として機能する。MG112は、動力分割機構116に接続され、車両100を駆動したり、車両100を制動する際に回生を行ったりするのに用いられる。なお、本実施形態では、車両100を駆動するモータとして、発電機能を有するMG112が用いられているが、発電機能を有さないモータが用いられてもよい。
【0016】
PCU118は、バッテリ120とMG112との間に接続されて、MG112へ供給される電力を制御する。PCU118は、モータを駆動するインバータ、電圧を制御する昇圧コンバータ、高電圧を降圧するDCDCコンバータ等の発熱部品を有する。バッテリ120は、PCU118及びMG112に接続されて、車両100を駆動するための電力をMG112に供給する。
【0017】
本実施形態では、内燃機関110、MG112及びPCU118は車両100の前方、すなわち車室よりも前方に配置される。一方、バッテリ120は、車両100の中央、すなわち車室の下方に配置される。
【0018】
なお、車両100は、内燃機関110及びMG(又はモータ)112を備える車両であれば如何なる態様の車両であってもよい。したがって、例えば、車両100は、内燃機関が発電のみに用いられてモータのみが車両100の駆動を行うように構成されていてもよい。また、例えば、車両100は、主に車両100の駆動用に用いられるMGと、主に発電用に用いられるMGとの二つのMGを有するように構成されてもよい。
【0019】
<車載温調システムの構成>
図1~
図3を参照して、一つの実施形態に係る車載温調システム1の構成について説明する。
図2は、車載温調システム1を概略的に示す構成図である。車載温調システム1は、冷凍回路2、低温回路3、高温回路4及び制御装置6を備える。冷凍回路2、低温回路3及び高温回路4は、回路の外部との間で熱の授受を行う熱回路として機能する。
【0020】
≪冷凍回路≫
まず、冷凍回路2について説明する。冷凍回路2は、コンプレッサ21、コンデンサ22の冷媒配管22a、レシーバ23、第1膨張弁24、第2膨張弁25、エバポレータ26、チラー27の冷媒配管27a、第1電磁調整弁28及び第2電磁調整弁29を備える。冷凍回路2は、これら構成部品を通って冷媒が循環することで冷凍サイクルを実現するように構成される。冷媒には、例えば、ハイドロフルオロカーボン(例えば、HFC-134a)等、一般的に冷凍サイクルで冷媒として用いられる任意の物質が用いられる。
【0021】
また、冷凍回路2は、冷凍基本流路2aと、エバポレータ流路2bと、チラー流路2cとを有する。エバポレータ流路2bと、チラー流路2cとは互いに並列に設けられ、それぞれ冷凍基本流路2aに接続されている。
【0022】
冷凍基本流路2aには、冷媒の循環方向において、コンプレッサ21、コンデンサ22の冷媒配管22a及びレシーバ23がこの順番に設けられる。エバポレータ流路2bには、冷媒の循環方向において、第1電磁調整弁28、第1膨張弁24及びエバポレータ26がこの順番に設けられる。加えて、チラー流路2cには、第2電磁調整弁29、第2膨張弁25及びチラー27の冷媒配管27aがこの順番に設けられる。
【0023】
コンプレッサ21は、冷媒を圧縮する圧縮機として機能する。本実施形態では、コンプレッサ21は、電動式であり、コンプレッサ21への供給電力が調整されることによりその吐出容量が無段階に変化せしめられるように構成される。コンプレッサ21では、エバポレータ26又はチラー27から流出した低温・低圧であって主にガス状である冷媒が、断熱的に圧縮されることにより、高温・高圧であって主にガス状である冷媒に変化せしめられる。
【0024】
コンデンサ22は、冷媒配管22aと冷却水配管22bとを有する。コンデンサ22は、冷媒から、後述する高温回路4の冷却水配管22bを流れる冷却水に放熱させて冷媒を凝縮させる媒体間熱交換器として機能する。見方を変えると、コンデンサ22は、内燃機関110の排熱以外の熱を利用して高温回路4の冷却水を加熱する加熱部として機能する。コンデンサ22の冷媒配管22aは、冷凍サイクルにおいて冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。また、コンデンサ22の冷媒配管22aでは、コンプレッサ21から流出した高温・高圧であって主にガス状である冷媒が、等圧的に冷却されることにより、高温・高圧の主に液状の冷媒に変化せしめられる。
【0025】
レシーバ23は、コンデンサ22の冷媒配管22aによって凝縮された冷媒を貯留する。また、コンデンサ22では必ずしも全ての冷媒を液化することができないため、レシーバ23は気液の分離を行うように構成される。レシーバ23からはガス状の冷媒が分離された液状の冷媒のみが流出する。
【0026】
第1膨張弁24及び第2膨張弁25は、冷媒を膨張させる膨張器として機能する。これら膨張弁24、25は、細径の通路を備えると共に、この細径の通路から冷媒を噴霧することで冷媒の圧力を急激に低下させる。第1膨張弁24は、レシーバ23から供給された液状の冷媒を、エバポレータ26内に霧状に噴霧する。同様に、第2膨張弁25は、レシーバ23から供給された液状の冷媒を、チラー27の冷媒配管27a内に霧状に噴霧する。これら膨張弁24、25では、レシーバ23から流出した高温・高圧の液状の冷媒が、減圧されて部分的に気化することにより、低温・低圧の霧状の冷媒に変化せしめられる。
【0027】
エバポレータ26は、冷媒に吸熱させて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。具体的には、エバポレータ26は、エバポレータ26周りの空気から冷媒へ吸熱させ、冷媒を蒸発させる。したがって、エバポレータ26では、第1膨張弁24から流出した低温・低圧の霧状の冷媒が、蒸発することにより、低温・低圧のガス状の冷媒に変化せしめられる。この結果、エバポレータ26周りの空気は冷却せしめられ、車室内の冷房を行うことができる。
【0028】
チラー27は、冷媒配管27aと冷却水配管27bとを備える。チラー27は、後述する低温回路3の冷却水配管27bを流れる冷却水から冷媒へ吸熱させ、冷媒を蒸発させる媒体間熱交換器として機能する。チラー27の冷媒配管27aは、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。また、チラー27の冷媒配管27aでは、第2膨張弁25から流出した低温・低圧の霧状の冷媒が、蒸発することにより、低温・低圧のガス状の冷媒に変化せしめられる。この結果、低温回路3の冷却水は冷却せしめられる。
【0029】
第1電磁調整弁28及び第2電磁調整弁29は、冷凍回路2内における冷媒の流通態様を変更するように用いられる。第1電磁調整弁28の開度が大きくなるほどエバポレータ流路2bに流入する冷媒が多くなり、よってエバポレータ26に流入する冷媒が多くなる。また、第2電磁調整弁29の開度が大きくなるほどチラー流路2cに流入する冷媒が多くなり、よってチラー27に流入する冷媒が多くなる。なお、冷凍基本流路2aからエバポレータ流路2b及びチラー流路2cへ流入する流量を調整することができれば、これら電磁調整弁28、29の代わりに如何なる弁が設けられてもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、冷凍回路2は、冷凍回路2内の冷媒から外部へ熱を放出する熱交換器として、コンデンサ22のみを有する。しかしながら、冷凍回路2は、冷媒から外部(例えば、外気)へ熱を放出する他の熱交換器を有していてもよい。
【0031】
≪低温回路≫
次に、低温回路3について説明する。低温回路3は、第1ポンプ31、チラー27の冷却水配管27b、低温ラジエータ32、第1三方弁33及び第2三方弁34を備える。加えて、低温回路3は、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37を備える。低温回路3では、これら構成部品を通って冷却水が循環する。なお、冷却水は第2熱媒体の一例であり、低温回路3内では、冷却水の代わりに任意の他の熱媒体が用いられてもよい。
【0032】
低温回路3は、低温基本流路3aと、低温ラジエータ流路3bと、発熱機器流路3cとを有する。低温ラジエータ流路3bと発熱機器流路3cとは互いに並列に設けられ、それぞれ低温基本流路3aに接続されている。
【0033】
低温基本流路3aには、冷却水の循環方向において、第1ポンプ31、チラー27の冷却水配管27b、バッテリ熱交換器35がこの順番に設けられる。また、低温基本流路3aにはバッテリ熱交換器35をバイパスするように設けられたバッテリバイパス流路3dが接続される。低温基本流路3aとバッテリバイパス流路3dとの接続部には第1三方弁33が設けられる。
【0034】
また、低温ラジエータ流路3bには、低温ラジエータ32が設けられる。発熱機器流路3cには、冷却水の循環方向において、PCU熱交換器36及びMG熱交換器37がこの順番に設けられる。発熱機器流路3cには、PCUやMG以外の発熱機器と熱交換する熱交換器が設けられてもよい。低温基本流路3aと低温ラジエータ流路3b及び発熱機器流路3cとの間には第2三方弁34が設けられる。
【0035】
第1ポンプ31は、低温回路3内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第1ポンプ31は、電動式のウォータポンプであり、第1ポンプ31への供給電力が調整されることによりその吐出容量が無段階に変化せしめられるように構成される。
【0036】
低温ラジエータ32は、低温回路3内を循環する冷却水と車両100の外部の空気(外気)との間で熱交換を行う熱交換器である。低温ラジエータ32は、冷却水の温度が外気の温度よりも高いときには冷却水から外気への放熱を行い、冷却水の温度が外気の温度よりも低いときには外気から冷却水への吸熱を行うように構成される。
【0037】
第1三方弁33は、チラー27の冷却水配管27bから流出した冷却水をバッテリ熱交換器35とバッテリバイパス流路3dとの間で選択的に流通させるように構成される。第2三方弁34は、低温基本流路3aから流出した冷却水を、低温ラジエータ流路3bと発熱機器流路3cとの間で選択的に流通させるように構成される。
【0038】
バッテリ熱交換器35は、車両100のバッテリ120と熱交換するように構成される。PCU熱交換器36は、車両100のPCU118と熱交換するように構成される。また、MG熱交換器37は、車両100のMG112と熱交換するように構成される。
【0039】
なお、本実施形態では、冷凍回路2及び低温回路3にチラー27が設けられ、チラー27は低温回路3の冷却水から冷凍回路2の冷媒へ熱を移動させる媒体間熱交換器として機能する。しかしながら、冷凍回路2には、チラー27の代わりに、車外の大気中のガスと熱交換し、大気中のガスから冷凍回路2の冷媒へ熱を移動させる熱交換器が設けられてもよい。この場合、車載温調システム1には低温回路3は設けられず、よってバッテリ120、PCU118及びMG112の冷却は車載温調システム1以外の機構によって行われる。
【0040】
≪高温回路≫
次に、高温回路4について説明する。高温回路4は、第2ポンプ41、コンデンサ22の冷却水配管22b、高温ラジエータ42、ヒータコア43、第3三方弁44、第4三方弁45、及び機関熱回路5を備える。高温回路4でもこれら構成部品を通って冷却水が循環する。なお、この冷却水は第1熱媒体の一例であり、高温回路4内では、冷却水の代わりに任意の他の熱媒体が用いられてもよい。
【0041】
また、高温回路4は、第1連通路4aと第2連通路4bとを有する。
【0042】
第1連通路4aは、後述する機関熱交換器52の下流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の冷却水配管22bの出口に連通すると共に、ヒータコア43の入口及び高温ラジエータ42の入口に連通する。第1連通路4aは、具体的には、コンデンサ22の冷却水配管22bの出口に連通するコンデンサ流出通路4a1と、機関熱回路5に連通する機関流出通路4a2と、コンデンサ流出通路4a1と機関流出通路4a2とが合流する合流部に連通する合流通路4a3と、合流通路4a3が分岐したコア流入通路4a4及びラジエータ流入通路4a5とを有する。コア流入通路4a4はヒータコア43の入口に連通し、ラジエータ流入通路4a5は高温ラジエータ42の入口に連通する。
【0043】
したがって、第1連通路4aは、機関熱回路5から流出した冷却水及びコンデンサ22から流出した冷却水を、ヒータコア43及び/又は高温ラジエータ42に流入させることができる。具体的には、コンデンサ流出通路4a1と機関流出通路4a2との合流部においてコンデンサ22から流出した冷却水と機関熱回路5から流出した冷却水とが合流して合流通路4a3に流入する。そして、合流通路4a3からコア流入通路4a4及びラジエータ流入通路4a5への分岐部において、合流通路4a3を流れてきた冷却水はヒータコア43に流入する冷却水と高温ラジエータ42に流入する冷却水とに分かれる。
【0044】
第2連通路4bは、ヒータコア43の出口及び高温ラジエータ42の出口に連通すると共に、機関熱交換器52の上流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の冷却水配管22bの入口に連通する。第2連通路4bは、具体的には、コンデンサ22の冷却水配管22bの入口に連通するコンデンサ流入通路4b1と、機関熱回路5に連通する機関流入通路4b2と、コンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2に連通すると共にヒータコア43の出口に連通するコア流出通路4b3と、高温ラジエータ42の出口及びコンデンサ流入通路4b1に連通するラジエータ流出通路4b4とを有する。
【0045】
したがって、第2連通路4bは、ヒータコア43から流出した冷却水及び高温ラジエータ42から流出した冷却水を機関熱回路5及び/又はコンデンサ22に流入させることができる。具体的には、コア流出通路4b3からコンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2への分岐部において、コア流出通路4b3を流れてきた冷却水は、コンデンサ22に流入する冷却水と機関熱回路5に流入する冷却水とに分かれる。また、ラジエータ流出通路4b4を流れてきた冷却水は全てコンデンサ流入通路4b1を介してコンデンサ22に流入する。
【0046】
以上より、本実施形態では、高温回路4は、機関熱交換器52の下流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の出口とヒータコア43の入口及び高温ラジエータ42の入口とに連通して機関熱回路5及び/又はコンデンサ22からヒータコア43及び/又は高温ラジエータ42へ冷却水を流通させる第1連通路4aと、機関熱交換器52の上流側における機関熱回路5及びコンデンサ22の入口とヒータコア43の出口及び高温ラジエータ42の出口とに連通してヒータコア43及び/又は高温ラジエータ42から機関熱回路5及び/又はコンデンサ22へ冷却水を流通させる第2連通路4bと、を有する。
【0047】
第2ポンプ41は、高温回路4内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第2ポンプ41は、第1ポンプ31と同様な、電動式のウォータポンプである。特に、本実施形態では、第2ポンプ41はコンデンサ流入通路4b1に設けられる。また、高温ラジエータ42は、低温ラジエータ32と同様に、高温回路4内を循環する冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0048】
ヒータコア43は、高温回路4内の冷却水の熱を利用して車室内を暖房するのに用いられる。すなわち、ヒータコア43は、高温回路4内を循環する冷却水とヒータコア43周りの空気との間で熱交換を行ってヒータコア43周りの空気を暖め、その結果、車室内の暖房を行うように構成される。具体的には、ヒータコア43は、冷却水からヒータコア43周りの空気へ排熱するように構成される。したがって、ヒータコア43に高温の冷却水が流れると、冷却水の温度が低下すると共に、ヒータコア43周りの空気が暖められる。
【0049】
第3三方弁44は、合流通路4a3がコア流入通路4a4とラジエータ流入通路4a5とに分岐する分岐部に設けられる。したがって、第3三方弁44には、コンデンサ22及び機関熱回路5から流出して合流通路4a3において合流した冷却水が流入する。
【0050】
図3は、第3三方弁44の異なる作動状態を概略的に示す図である。
図3に示したように、第3三方弁44は、ハウジング44aと、ハウジング44a内で回動する弁体44bとを有する。ハウジング44aは、合流通路4a3に連通する入口Xと、コア流入通路4a4に連通する第1出口Yと、ラジエータ流入通路4a5に連通する第2出口Zとを有する。弁体44bは、ハウジング44a内で回動することにより、入口Xと、第1出口Y、第2出口Zとの連通状態を変更する。
【0051】
第3三方弁44の弁体44bが
図3(A)に示した第1状態にあるときには、入口Xと第1出口Yとが連通せしめられる。したがって、この場合、第3三方弁44に流入した冷却水(すなわち、合流通路4a3から流入した冷却水)は全てコア流入通路4a4を通ってヒータコア43に流入する。
【0052】
また、第3三方弁44が
図3(B)に示した第2状態にあるときには、入口Xと、第1出口Y及び第2出口Zの両方とが連通せしめられる。ただし、入口Xから第1出口Yへの開口面積が、入口Xから第2出口Zへの通路の開口面積よりも大きい。したがって、この場合、第3三方弁44に流入した冷却水は、コア流入通路4a4及びラジエータ流入通路4a5の両方に流入するが、コア流入通路4a4への流入割合が、ラジエータ流入通路4a5への流入割合よりも大きい。
【0053】
さらに、第3三方弁44が
図3(C)に示した第3状態にあるときには、入口Xと、第1出口Y及び第2出口Zの両方とが連通せしめられる。ただし、第4状態では、入口Xから第2出口Zへの開口面積が、入口Xから第1出口Yへの通路の開口面積よりも大きい。したがって、この場合、第3三方弁44に流入した冷却水は、コア流入通路4a4及びラジエータ流入通路4a5の両方に流入するが、ラジエータ流入通路4a5への流入割合は、コア流入通路4a4への流入割合よりも大きい。
【0054】
加えて、第3三方弁44の弁体44bが
図3(D)に示した第4状態にあるときには、入口Xと第2出口Zとが連通せしめられる。したがって、この場合、第3三方弁44に流入した冷却水は全てラジエータ流入通路4a5を通って高温ラジエータ42に流入する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、第3三方弁44は、合流通路4a3の分岐部からコア流入通路4a4へ(したがって、ヒータコア43へ)流入する冷却水の流量と合流通路4a3の分岐部からラジエータ流入通路4a5へ(したがって、高温ラジエータ42へ)流入する冷却水の流量との割合を調整する調整弁として機能する。
【0056】
なお、第3三方弁44は、
図3(A)~
図3(D)に示した4段階よりも多い多段階で、ヒータコア43及び高温ラジエータ42に流入する冷却水の流量の割合を調整する調整弁であってもよいし、連続的に調整する調整弁であってもよい。また、第3三方弁44の代わりに、例えば、コア流入通路4a4及びラジエータ流入通路4a5にそれぞれ設けられた二つの電磁調整弁が、ヒータコア43及び高温ラジエータ42に流入する冷却水の流量の割合を段階的に又は連続的に調整する調整弁として用いられてもよい。
【0057】
第4三方弁45は、コア流出通路4b3がコンデンサ流入通路4b1と機関流入通路4b2とに分岐する分岐部に設けられる。したがって、第4三方弁45には、ヒータコア43からコア流出通路4b3に流出した冷却水が流入する。
【0058】
また、第4三方弁45は、第3三方弁44と同様な構成を有すると共に、第4三方弁45の入口Xはコア流出通路4b3に連通し、第1出口Yは機関流入通路4b2に連通し、第2出口Zはコンデンサ流入通路4b1に連通する。したがって、第4三方弁45は、コア流出通路4b3の分岐部からコンデンサ流入通路4b1へ(したがって、コンデンサ22へ)流入する冷却水の流量と、コア流出通路4b3の分岐部から機関流入通路4b2へ(したがって、機関熱回路5へ)流入する冷却水の流量との割合を調整する調整弁として機能する。なお、コンデンサ22及び機関熱回路5に流入する冷却水の流量の割合を段階的に又は連続的に調整することができれば、第4三方弁45の代わりに他の調整弁が用いられてもよい。
【0059】
≪機関熱回路≫
次に、機関熱回路5について説明する。機関熱回路5は、内燃機関110において生成された熱を放出するために用いられる熱回路である。機関熱回路5は、第3ポンプ51、機関熱交換器52、機関ラジエータ53及びサーモスタッド54を有する。機関熱回路5では、これら構成部品を通って高温回路4と同じ冷却水が循環する。したがって、機関熱回路5は、コンデンサ22の冷却水配管22b、高温ラジエータ42及びヒータコア43を通らずに、機関熱交換器52を通って冷却水を流通させる。
【0060】
また、機関熱回路5は、機関基本流路5aと、機関ラジエータ流路5bと、機関バイパス流路5cとに分けられる。機関ラジエータ流路5bと機関バイパス流路5cとは互いに並列に設けられ、それぞれ機関基本流路5aに接続されている。
【0061】
機関基本流路5aには、冷却水の循環方向において、第3ポンプ51、機関熱交換器52がこの順番に設けられる。機関ラジエータ流路5bには機関ラジエータ53が設けられる。また、機関バイパス流路5cには、機関流出通路4a2及び機関流入通路4b2が連通する。特に、機関流出通路4a2は機関バイパス流路5cの上流側部分に連通する。その結果、機関流出通路4a2は機関熱交換器52の出口近傍に連通する。一方、機関流入通路4b2は機関バイパス流路5cの下流側部分に連通する。その結果、機関流入通路4b2は機関熱交換器52の入口近傍に連通する。したがって、機関熱交換器52は、高温回路4に連通して高温回路4の冷却水が流通するように構成される。機関基本流路5aと機関ラジエータ流路5b及び機関バイパス流路5cとの間にはサーモスタッド54が設けられる。なお、
図2に示した例では、機関流出通路4a2は機関バイパス流路5cに連通しているが、機関基本流路5a等に連通してもよい。
【0062】
第3ポンプ51は、機関熱回路5内を循環する冷却水を圧送する。本実施形態では、第3ポンプ51は、第1ポンプ31と同様な、電動式のウォータポンプである。また、機関ラジエータ53は、低温ラジエータ32と同様に、機関熱回路5内を循環する冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0063】
機関熱交換器52は、内燃機関110の排熱を利用して冷却水を加熱するのに用いられる。すなわち、機関熱交換器52は、内燃機関110から機関熱回路5内の冷却水に排熱して、冷却水を加熱する。機関熱交換器52は、内燃機関110内での燃料の燃焼に伴って生じた熱を冷却水に排出させることにより、内燃機関110が過剰に昇温することを抑制する。機関熱交換器52は、例えば、内燃機関110のシリンダブロックやシリンダヘッド内に設けられた冷却水通路から構成される。
【0064】
サーモスタッド54は、機関ラジエータ流路5bを通る冷却水の流れを遮断する閉弁状態と、機関ラジエータ流路5bを通って冷却水が流れることを許可する開弁状態との間で切り換えられる弁である。サーモスタッド54は、機関バイパス流路5cを通って循環する冷却水の温度が予め設定された温度以上であるときには、機関ラジエータ流路5bに冷却水が流れるように開かれる。一方、サーモスタッド54は、機関バイパス流路5cを通って循環する冷却水の温度が予め設定された温度未満であるときには、機関ラジエータ流路5bに冷却水が流れないように閉じられる。この結果、機関熱交換器52に流通する冷却水の温度がほぼ一定に保たれる。
【0065】
≪空気通路≫
図4は、車載温調システム1を搭載した車両100の空調用の空気通路7を概略的に示す構成図である。空気通路7では、図中に矢印で示した方向に空気が流れる。図
4に示した空気通路7は、車両100の外部又は車室の空気吸い込み口に接続されており、空気通路7には制御装置6による制御状態に応じて外気又は車室内の空気が流入する。また、図
4に示した空気通路7は、車室内へ空気を吹き出す複数の吹き出し口に接続されており、空気通路7からは制御装置6による制御状態に応じてこのうち任意の吹き出し口に空気が供給される。
【0066】
図4に示したように、本実施形態の空調用の空気通路7には、空気の流れ方向において、ブロワ71と、エバポレータ26と、エアミックスドア72と、ヒータコア43とがこの順番に設けられる。
【0067】
ブロワ71は、ブロワモータ71aとブロワファン71bとを備える。ブロワ71は、ブロワモータ71aによってブロワファン71bが駆動されると、外気又は車室内の空気が空気通路7に流入して、空気通路7を通って空気が流れるように構成される。車室の暖房や冷房が要求されている場合には、基本的にブロワファン71bが駆動される。
【0068】
エアミックスドア72は、空気通路7を通って流れる空気のうち、ヒータコア43を通って流れる空気の流量を調整する。エアミックスドア72は、空気通路7を流れる全ての空気がヒータコア43を流れる状態と、空気通路7を流れる全ての空気がヒータコア43を流れない状態と、その間の状態との間で調整できるように構成される。
【0069】
このように構成された空気通路7では、ブロワ71が駆動されているときに、エバポレータ26に冷媒が循環されている場合には、空気通路7を通って流れる空気が冷却される。また、ブロワ71が駆動されているときに、ヒータコア43に冷却水が循環されていて且つ空気がヒータコア43を流れるようにエアミックスドア72が制御されている場合には、空気通路7内を通って流れる空気が暖められる。
【0070】
また、
図1に示したように、車両100のフロントグリルの内側に、低温ラジエータ32、高温ラジエータ42及び機関ラジエータ53が配置される。したがって、車両100が走行しているときにはこれらラジエータ32、42、53には走行風が当たる。また、これらラジエータ32、42、53に隣接してファン76が設けられる。ファン76は駆動されるとラジエータ32、42、53に風が当たるように構成される。したがって、車両100が走行していないときでも、ファン76を駆動することにより、ラジエータ32、42、53に風を当てることができる。
【0071】
≪制御装置≫
図2を参照すると、制御装置6は、電子制御ユニット(ECU)61を有する。ECU61は、各種演算を行うプロセッサと、プログラムや各種情報を記憶するメモリと、各種アクチュエータや各種センサと接続されるインタフェースとを備える。
【0072】
また、制御装置6は、コア流入通路4a4に設けられた第1水温センサ62を有する。第1水温センサ62は、ヒータコア43に流入する冷却水の温度を検出する。加えて、制御装置6は、コンデンサ流入通路4b1に設けられた第2水温センサ63を有する。第2水温センサ63は、コンデンサ22に流入する冷却水の温度を検出する。ECU61はこれらセンサ62、63に接続され、ECU61にはこれらセンサからの出力信号が入力される。
【0073】
加えて、制御装置6は、車両100の室内の温度を検出する室内温度センサ66と、車両100の室外の温度を検出する外気温度センサ67と、ユーザによって操作される操作パネル68とを備える。ECU61はこれらセンサ及び操作パネル68に接続され、ECU61にはこれらセンサ及び操作パネル68からの出力信号が入力される。
【0074】
ECU61は、センサ66、67及び操作パネル68からの出力信号に基づいて冷房要求、暖房要求及び除湿要求の有無を判断する。例えば、ユーザが操作パネル68の暖房スイッチをONにしている場合には、ECU61は暖房が要求されていると判断する。また、ユーザが操作パネル68のオートスイッチをONにしている場合には、例えば、ユーザによって設定されている室内温度が室内温度センサ66によって検出された温度よりも高いときにECU61は暖房が要求されている判断する。
【0075】
加えて、ECU61は、車載温調システム1の各種アクチュエータに接続されて、これらアクチュエータを制御する。具体的には、ECU61は、コンプレッサ21、電磁調整弁28、29、ポンプ31、41、51、三方弁33、34、44、45、ブロワモータ71a、エアミックスドア72及びファン76に接続されて、これらを制御する。したがって、ECU61は、冷凍回路2、低温回路3、高温回路4(機関熱回路5を含む)における熱媒体(冷媒及び冷却水)の流通状態を制御する制御装置として機能する。
【0076】
<車載温調システムの動作>
次に、
図5~
図11を参照して、車載温調システム1における、熱媒体(冷媒及び冷却水)の流通状態について説明する。
図5~
図8及び
図10では、冷媒や冷却水が流れている流路が実線で、冷媒や冷却水が流れていない流路が破線でそれぞれ示されている。また、図中の細い矢印は冷媒や冷却水が流れる方向を、図中の太い矢印は熱の移動方向をそれぞれ示している。
【0077】
≪暖房モード≫
まず、暖房要求がある場合の熱媒体の流通状態について説明する。
図5は、暖房要求があり且つ内燃機関110が停止している場合の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(第1暖房モード)。第1暖房モードでは、冷凍回路2から得られた熱を用いてヒータコア43による暖房が行われる。
【0078】
図5に示したように、第1暖房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動せしめられると共に、第1電磁調整弁28が閉じられ且つ第2電磁調整弁29が開かれる。したがって、冷凍回路2では、エバポレータ26を通らずにチラー27を通って冷媒が循環する。
【0079】
また、第1暖房モードでは、低温回路3の第1ポンプ31が作動せしめられる。また、第1暖房モードでは、第1三方弁33は冷却水がバッテリ熱交換器35に流通するように設定され、第2三方弁34は冷却水が低温ラジエータ流路3b及び発熱機器流路3cの両方に流通するように設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、チラー27の冷却水配管27b、低温ラジエータ32、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36、MG熱交換器37を通って循環する。
【0080】
さらに、第1暖房モードでは、高温回路4の第2ポンプ41が作動せしめられる。また、第1暖房モードでは、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43に流入するように第1状態(
図3(A))に設定され、第4三方弁45は、冷却水がコンデンサ流入通路4b1に流入するように第4状態(
図3(D))に設定される。この結果、高温回路4では、冷却水がヒータコア43とコンデンサ22の冷却水配管22bとを通って循環する。
【0081】
以上より、第1暖房モードでは、低温回路3において、低温ラジエータ32にて外気又は発熱機器から冷却水に熱が吸収され、チラー27にて低温回路3の冷却水から冷媒へ熱が移動される。冷凍回路2では、チラー27にて冷媒に熱が吸収され、コンデンサ22にて冷媒から高温回路4の冷却水へ熱が移動される。したがって、冷凍回路2は、チラー27等で吸収した熱をコンデンサ22で放出するヒートポンプとして機能する。そして、高温回路4では、コンデンサ22にて冷却水に吸収された熱がヒータコア43にて放出される。したがって、第1暖房モードでは、低温ラジエータ32にて外気から又は発熱機器から熱が吸収され、ヒータコア43にてその熱が放出される。
【0082】
図6は、暖房要求があり且つ内燃機関110が作動している場合の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(第2暖房モード)。特に、第2暖房モードでは、内燃機関110から得られた熱を用いてヒータコア43による暖房が行われる。この場合、車両100の駆動は基本的に内燃機関110によって行われるため、
図6に示した例ではMG112等の冷却は行われていない。
【0083】
図6に示したように、第2暖房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21及び第1ポンプ31は停止される。したがって、冷凍回路2内で冷媒は循環せず、また、低温回路3内で冷却水は循環しない。
【0084】
また、第2暖房モードでは、高温回路4の第2ポンプ41は停止され、機関熱回路5の第3ポンプ51は作動せしめられる。そして、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43に流入するように第1状態(
図3(A))に設定され、第4三方弁45は、冷却水が機関熱回路5に流入するように第1状態(
図3(A))に設定される。この結果、高温回路4では、第3ポンプ51により、冷却水が機関熱回路5とヒータコア43とを通って循環する。この結果、第2暖房モードでは、機関熱交換器52において内燃機関110から熱が吸収されると共に、ヒータコア43にてその熱が放出される。なお、
図6に示した例では、冷却水は機関ラジエータ流路5bを通って流れていないが、機関熱回路5内の冷却水の温度に応じてサーモスタッド54が開かれ、機関ラジエータ流路5bにも冷却水が流れるようになる。
【0085】
≪冷房モード≫
次に、冷房要求がある場合の熱媒体の流通状態について説明する。
図7は、冷房要求がある場合の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(冷房モード)。
図7に示した例では、内燃機関110が停止しているが、内燃機関110が作動している場合には機関熱回路5内で冷却水が循環する。
【0086】
図7に示したように、冷房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動せしめられると共に、第1電磁調整弁28が開かれ且つ第2電磁調整弁29が閉じられる。したがって、冷凍回路2では、チラー27を通らずにエバポレータ26を通って冷媒が循環する。なお、冷房モードでは、発熱機器の冷却を促進させるために、第2電磁調整弁29を開いてチラー27にも冷媒を流通させてもよい。
【0087】
また、冷房モードでは、低温回路3の第1ポンプ31が作動せしめられる。また、第1三方弁33は冷却水がバッテリ熱交換器35に流通するように設定され、第2三方弁34は冷却水が低温ラジエータ流路3b及び発熱機器流路3cの両方に流通するように設定される。この結果、低温回路3では、冷却水が、チラー27の冷却水配管27b、低温ラジエータ32、バッテリ熱交換器35、PCU熱交換器36、MG熱交換器37を通って循環する。これにより、発熱機器から冷却水に熱が吸収されると共に、その熱が低温ラジエータ32において大気中に放出される。
【0088】
以上より、冷房モードでは、冷凍回路2において、エバポレータ26にて周囲の空気から冷媒へ熱が吸収され、コンデンサ22にて冷媒から高温回路4の冷却水へ熱が移動される。高温回路4では、コンデンサ22にて冷却水に吸収された熱が高温ラジエータ42にて放出される。したがって、冷房モードでは、エバポレータ26にて空気通路7を通る周囲の空気から熱が吸収されて車室内の冷房が行われ、高温ラジエータ42にてその熱が放出される。
【0089】
≪除湿暖房モード≫
次に、除湿暖房要求がある場合の熱媒体の流通状態について説明する。除湿暖房では、エバポレータ26において空気通路7を通る空気が一旦冷却される。このとき、空気の温度が低下することにより飽和水蒸気量が減少して、空気中の水蒸気の一部が凝結し、その結果、除湿が行われる。その後、この空気をヒータコア43により加熱することにより、車室内の暖房が行われる。ヒータコア43において空気を暖めるために必要な熱量は基本的にエバポレータ26において空気から吸収された熱量よりも大きいため、除湿暖房を行う際には、内燃機関110を作動させることによって高温回路4内の冷却水を加熱することが必要になる。
【0090】
図8は、除湿暖房要求があり且つヒータコア43に流入する冷却水の温度が必要以上には高くない場合(例えば、45℃未満である場合)の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(第1除湿暖房モード)。この場合、車両100の駆動は基本的に内燃機関110によって行われるため、
図6に示した例ではMG112等の冷却は行われていない。
【0091】
図8に示したように、第1除湿暖房モードでは、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動せしめられると共に、第1電磁調整弁28が開かれ且つ第2電磁調整弁29が閉じられる。したがって、冷凍回路2では、チラー27を通らずにエバポレータ26を通って冷媒が循環する。また、第1除湿暖房モードでは、低温回路3の第1ポンプ31は停止され、よって低温回路3内では冷却水は循環しない。なお、MG112によっても車両100を駆動する場合には、
図7に示した冷房モードと同様に低温回路3内の冷却水が循環されてもよい。加えて、第1除湿暖房モードでは、機関熱回路5の第3ポンプ51が作動せしめられる。したがって、機関熱回路5内で冷却水が循環する。
【0092】
また、第1除湿暖房モードでは、高温回路4の第2ポンプ41が作動せしめられる。さらに、第1除湿暖房モードでは、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43に流入するように第1状態(
図3(A))に設定され、第4三方弁45は、冷却水がコンデンサ流入通路4b1及び機関流入通路4b2の両方に流入するように第2状態(
図3(B))又は第3状態(
図3(C))に設定される。この結果、高温回路4では、冷却水が高温ラジエータ42を通らずにヒータコア43を通って循環すると共に、コンデンサ22及び機関熱回路5の両方を通って循環する。
【0093】
特に、本実施形態では、コンデンサ22に流入する冷却水の温度に応じて、第4三方弁45の作動状態が切り替えられる。
図9は、コンデンサ22に流入する冷却水の温度(コンデンサ入口温度)と、第4三方弁45に流入した冷却水の流量に対するコンデンサ流入通路4b1へ流入させる冷却水の流量の割合(以下、「コンデンサ流量割合」という)を示す図である。
図9に実線で示したように、コンデンサ入口温度が第1基準温度Twref1(例えば、45℃)よりも低いときには第4三方弁45は第2状態に設定され、よってコンデンサ流量割合は低くなる。一方、コンデンサ入口温度が第1基準温度Twref1以上であるときには第4三方弁45は第3状態に設定され、よってコンデンサ流量割合は高くなる。
【0094】
なお、
図9の実線は、第4三方弁45を
図3に示したように4段階で切り替えることができる場合における関係を示している。一方、第4三方弁45が4段階よりも多い多段階又は連続的に流量を調整することができる調整弁であれば、
図9に破線で示したようにこの調整弁はコンデンサ入口温度が高くなるほどコンデンサ流量割合が多くなるように制御される。
【0095】
以上より、第1除湿暖房モードでは、合流通路4a3から第3三方弁44に流入した冷却水が高温ラジエータ42に流入せずにヒータコア43に流入するように第3三方弁44が制御される。加えて、第3三方弁44がこのように制御された第1除湿暖房モードでは、コア流出通路4b3から第4三方弁45に流入した冷却水がコンデンサ22と機関熱回路5との両方に流入するように第4三方弁45が制御される。特に、本実施形態では、第4三方弁45は、コンデンサ入口温度が高いときには低いときに比べて、機関熱回路5に流入する冷却水の流量に対するコンデンサ22に流入する冷却水の流量が多くなるように制御される。
【0096】
ところで、除湿暖房を行うにあたって、エバポレータ26における空気の冷却効果を高めるためには、コンデンサ22において冷媒から冷却水に十分に移動させることが必要になる。そして、このためにはコンデンサ22に流入する冷却水の温度を低く制御することが好ましい。
【0097】
一方、第1除湿暖房モードのように第3三方弁44に流入した冷却水の全てがヒータコア43に流入した場合には、コンデンサ22に流入する冷却水の温度は第4三方弁45によって制御される。特に、第4三方弁45において機関熱回路5に流入する冷却水の割合を増やすとヒータコア43に流入する冷却水の温度が上がり、その結果、ヒータコア43から流出する冷却水の温度も上がり、コンデンサ22に流入する冷却水の温度が上がる。逆に、第4三方弁45においてコンデンサ22に流入する冷却水の割合を増やすと、コンデンサ22に流入する冷却水の温度が下がる。したがって、本実施形態によれば、コンデンサ22に流入する冷却水の温度を適切に制御して、冷却効果を高く維持しつつ、除湿暖房を行うことができる。
【0098】
図10は、除湿暖房要求があり且つヒータコア43に流入する冷却水の温度が必要以上に高い場合(例えば、45℃以上である場合)の、車載温調システム1における熱媒体の流通状態を示している(第2除湿暖房モード)。
図10に示した例でもMG112等の冷却は行われていないが、MG112等を冷却すべく、
図7に示した冷房モードと同様に低温回路3内の冷却水が循環されてもよい。
【0099】
図10に示したように、第2除湿暖房モードでは、第1除湿
暖房モードと同様に、冷凍回路2のコンプレッサ21が作動せしめられると共に、第1電磁調整弁28が開かれ且つ第2電磁調整弁29が閉じられる。したがって、冷凍回路2では、チラー27を通らずにエバポレータ26を通って冷媒が循環する。加えて、第
2除湿暖房モードでは、機関熱回路5の第3ポンプ51が作動せしめられる。したがって、機関熱回路5内で冷却水が循環する。
【0100】
また、第2除湿暖房モードでは、高温回路4の第2ポンプ41が作動せしめられる。さらに、第2除湿暖房モードでは、第3三方弁44は、冷却水がヒータコア43及び高温ラジエータ42の両方に流入するように第2状態(
図3(B))又は第3状態(
図3(C))に設定される。第4三方弁45は、ヒータコア43から流出した冷却水が機関流入通路4b2に流入するように第1状態(
図3(A))に設定される。この結果、高温回路4では、冷却水が、ヒータコア43及び高温ラジエータ42の両方を通って循環すると共に、ヒータコア43から流出した冷却水が機関熱回路5を通り且つ高温ラジエータ42から流出した冷却水がコンデンサ22を通るように循環する。
【0101】
特に、本実施形態では、コンデンサ22に流入する冷却水の温度に応じて、第3三方弁44の作動状態が切り替えられる。
図11は、コンデンサ22に流入する冷却水の温度(コンデンサ入口温度)と、第3三方弁44に流入した冷却水の流量に対するコア流入通路4a4へ流入させる冷却水の流量の割合(以下、「ヒータコア流量割合」という)を示す図である。
図11に実線で示したように、コンデンサ入口温度が第2基準温度Twref2(例えば、45℃)よりも低いときには第3三方弁44は第2状態に設定され、よってヒータコア流量割合は高くなる。一方、コンデンサ入口温度が第2基準温度Twref2以上であるときには第3三方弁44は第3状態に設定され、よってヒータコア流量割合は低くなる。
【0102】
なお、
図11の実線は、第3三方弁44を
図3に示したように4段階で切り替えることができる場合における関係を示している。一方、第3三方弁44が4段階よりも多い多段階又は連続的に流量を調整することができる調整弁であれば、
図11に破線で示したようにこの調整弁はコンデンサ入口温度が高くなるほどヒータコア流量割合が少なくなるように制御される。
【0103】
以上より、第2除湿暖房モードでは、合流通路4a3から第3三方弁44に流入した冷却水はヒータコア43及び高温ラジエータ42の両方に流入するように第3三方弁44が制御される。加えて、第3三方弁44がこのように制御された第2除湿暖房モードでは、コア流出通路4b3から第4三方弁45に流入した冷却水がコンデンサ22に流入せずに機関熱回路5に流入するように第4三方弁45が制御される。特に、本実施形態では、第3三方弁44は、コンデンサ入口温度が高いときには低いときに比べて、高温ラジエータ42に流入する冷却水の流量に対するヒータコア43に流入する冷却水の流量が少なくなるように制御される。
【0104】
第2除湿暖房モードのように第3三方弁44に流入した冷却水がヒータコア43及び高温ラジエータ42の両方に流入した場合には、コンデンサ22に流入する冷却水の温度は第3三方弁44によって制御される。特に、第3三方弁44においてヒータコア43に流入する冷却水の割合が増すと、機関熱回路5に流入する冷却水の割合が増える。その結果、合流通路4a3に流入する冷却水の温度が上がり、高温ラジエータ42を介してコンデンサ22に流入する冷却水の温度が上がる。逆に、第3三方弁44において高温ラジエータ42に流入する冷却水の割合を増やすと、コンデンサ22に流入する冷却水の温度が下がる。したがって、本実施形態によれば、コンデンサ22に流入する冷却水の温度を適切に制御して、冷却効果を高く維持しつつ、除湿暖房を行うことができる。
【0105】
また、本実施形態では、車室内の除湿暖房を行う場合、ヒータコア43に流入する冷却水の温度が低いときには、冷却水が高温ラジエータ42に流入せずにヒータコア43に流入するように第3三方弁44が制御される。一方、ヒータコア43に流入する冷却水の温度が高いときには、冷却水がヒータコア43と高温ラジエータ42との両方に流入するように第3三方弁44が制御される。この結果、ヒータコア43に流入する冷却水の温度が高いときには冷却水の一部は高温ラジエータ42を介してコンデンサ22に流入することになり、その結果、コンデンサ22に流入する冷却水の温度を低く維持することができる。一方、ヒータコア43に流入する冷却水の温度が低いときには冷却水が高温ラジエータ42に流入しないことにより、高温ラジエータ42において熱が外気に放出されることが抑制され、よってヒータコア43に流入する冷却水の温度が過剰に低下してしまうことが抑制される。したがって、このことによっても、コンデンサ22に流入する冷却水の温度を適切に制御して冷却効果を高く維持しつつ、除湿暖房を行うことができる。
【0106】
以上より、本実施形態では、車室内の除湿暖房を行う場合、ヒータコア43に流入する冷却水の温度と、コンデンサ22に流入する冷却水の温度とに基づいて、第3三方弁44及び第4三方弁45が制御される。この結果、本実施形態によれば、コンデンサ22に流入する冷却水の温度を適切に制御して冷却効果を高く維持しつつ、除湿暖房を行うことができる。
【0107】
<三方弁の制御>
上述したように、第3三方弁44及び第4三方弁45の制御は、ECU61によって行われる。ECU61は、除湿暖房要求があるときには、基本的に内燃機関110を作動させると共にコンプレッサ21を作動させて冷凍回路2内で冷媒を循環させる。以下、
図12を参照して、除湿暖房要求があるときの第3三方弁44及び第4三方弁45の切替制御について説明する。
図12は、除湿暖房要求があるときの第3三方弁44及び第4三方弁45の切替処理の流れを示すフローチャートである。図示した切替処理は、一定時間間隔毎に実行される。
【0108】
まず、ECU61は、除湿暖房要求があるか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において、除湿暖房要求がないと判定された場合には、
図12に示したフローとは別の、除湿暖房要求が無いときの三方弁44、45の切替処理が実行される。
【0109】
ステップS11において除湿暖房要求があると判定された場合、ECU61は、ヒータコア43に流入する冷却水の温度Twcoreが第3基準温度Twref3(例えば、45℃)未満であるか否かを判定する。ヒータコア43に流入する冷却水の温度Twcoreは、第1水温センサ62によって検出される。
【0110】
ステップS12においてヒータコア43に流入する冷却水の温度Twcoreが第3基準温度Twref3未満であると判定された場合には、車載温調システム1の作動モードを第1除湿暖房モードに設定すべく、ECU61は第3三方弁44の作動状態を第1状態に設定する(ステップS13)。
【0111】
次いで、ECU61は、コンデンサ22に流入する冷却水の温度Twconが第1基準温度Twref1未満であるか否かを判定する(ステップS14)。コンデンサ22に流入する冷却水の温度Twconは、第2水温センサ63によって検出される。ステップS14において冷却水の温度Twconが第1基準温度Twref1未満であると判定された場合には、第4三方弁45が第2状態に設定される(ステップS15)。一方、ステップS14において冷却水の温度Twconが第1基準温度Twref1以上であると判定された場合には、第4三方弁45が第2状態に設定される(ステップS16)。
【0112】
一方、ステップS12においてヒータコア43に流入する冷却水の温度Twcoreが第3基準温度Twref3以上であると判定された場合には、車載温調システム1の作動モードを第2除湿暖房モードに設定すべく、ECU61は第4三方弁45の作動状態を第1状態に設定する(ステップS17)。
【0113】
次いで、ECU61は、コンデンサ22に流入する冷却水の温度Twconが第2基準温度Twref2未満であるか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18において冷却水の温度Twconが第2基準温度Twref2未満であると判定された場合には、第3三方弁44が第2状態に設定される(ステップS19)。一方、ステップS18において冷却水の温度Twconが第2基準温度Twref2以上であると判定された場合には、第3三方弁44が第3状態に設定される(ステップS20)。
【0114】
以上、一つの実施形態及び変形例を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0115】
1 車載温調システム
2 冷凍回路
3 低温回路
4 高温回路
22 コンデンサ
41 第2ポンプ
43 ヒータコア
44 第3三方弁
45 第4三方弁
51 第3ポンプ
52 機関熱交換器
61 ECU