(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】マルチチップモジュール(MCM)アセンブリ及び印刷バー
(51)【国際特許分類】
H01L 25/04 20230101AFI20231108BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231108BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20231108BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
H01L25/04 Z
H01L23/14 Z
H05K1/03 610B
(21)【出願番号】P 2021504291
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069426
(87)【国際公開番号】W WO2020025348
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】トリ, シルヴァノ
(72)【発明者】
【氏名】サンドリ, タジオ
(72)【発明者】
【氏名】サルティ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバノーラ, ルチア
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157444(JP,A)
【文献】特開2009-149057(JP,A)
【文献】特開2007-301729(JP,A)
【文献】特開2012-000838(JP,A)
【文献】特開2007-283502(JP,A)
【文献】特開2005-169628(JP,A)
【文献】特開2010-023341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/04
H01L 23/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチップモジュール(MCM)アセンブリ(19)において、
グラファイト基板(4)であって、該グラファイト基板(4)に直接に取り付けられる複数のシリコンチップ(5)を備える、グラファイト基板(4)を備え、
前記MCMアセンブリが、耐溶剤性接着剤(15)によって前記グラファイト基板(4)に取り付けられるとともに前記複数のシリコンチップ(5)の外周を取り囲む複数の開口(11)を備えるプリント配線基板(PWB)(10)を更に備え、
前記グラファイト基板(4)が突出リム(32)を備え、該突出リム(32)上に前記シリコンチップ(5)が搭載され
、
前記PWBが凹領域(33)を備え、
前記複数のシリコンチップのボンディングパッドに対応する前記PWBの少なくとも1つのボンディングパッドが、前記凹領域(33)上に配置される、マルチチップモジュール(MCM)アセンブリ(19)。
【請求項2】
前記PWBが、前記複数のシリコンチップ(5)のボンディングパッド(9)に対応する前記PWB(10)のボンディングパッド(13)を取り込む凹部を備える、請求項1に記載のMCMアセンブリ。
【請求項3】
前記PWB(10)が可撓性ケーブル(34)を備え、該可撓性ケーブル(34)の外部が一連の接触パッド(35)で終端する、請求項1又は2に記載のMCMアセンブリ。
【請求項4】
前記PWB(10)の長さが、前記グラファイト基板(4)を越えて延びる、又は、前記グラファイト基板(4)の縁部の直前で終端する、請求項3に記載のMCMアセンブリ。
【請求項5】
前記耐溶剤性接着剤(15)が、前記複数のシリコンチップ(5)と前記PWB(10)の前記複数の開口(11)の縁部との両方を包囲する、請求項1~4のいずれか一項に記載のMCMアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のシリコンチップ(5)及び前記PWB(10)が、接続ワイヤ(14)によって互いに接触するボンディングパッド(9,13)をそれぞれ備え、前記耐溶剤性接着剤(15)が、前記ボンディングパッド(13)と該ボンディングパッド間の前記接続ワイヤ(14)とを包囲する、請求項1~5のいずれか一項に記載のMCMアセンブリ。
【請求項7】
前記PWB(10)がソルダーレジスト層を備え、前記耐溶剤性接着剤(15)が前記ソルダーレジスト層の少なくとも一部を包囲する、請求項1~6のいずれか一項に記載のMCMアセンブリ。
【請求項8】
前記耐溶剤性接着剤(15)がエポキシ系接着剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載のMCMアセンブリ。
【請求項9】
支持部材(18)上に配置される請求項1~8のいずれか一項に記載の複数のMCMアセンブリ(19)を備える印刷バー。
【請求項10】
前記複数のMCMアセンブリ(19)上にわたって配置されるカバーシールド(21)を更に備える、請求項9に記載の印刷バー。
【請求項11】
前記カバーシールド(21)が、前記複数のMCMアセンブリ(19)の複数のシリコンチップ(5)の外周に一致する複数の窓(24)を備え、前記複数の窓(24)の縁部がシール接着剤(29)でシールされる、請求項10に記載の印刷バー。
【請求項12】
前記カバーシールド(21)が、接着剤層(31)を介して前記複数のMCMアセンブリ(19)の前記PWB(10)に取り付けられる、請求項10又は11に記載の印刷バー。
【請求項13】
前記複数のMCMアセンブリ(19)が、前記複数のMCMアセンブリ(19)の前面を除いてシール組成物(37)によって密閉シールされる、請求項9に記載の印刷バー。
【請求項14】
前記支持部材(18)上に配置されて前記MCMアセンブリ(19)の数に等しい数の金属フレームによって構成されるシールブロック(38)を更に備え、前記金属フレームが、前記MCMアセンブリ(19)を取り囲むとともに、前記MCMアセンブリ(19)の周囲の前記シール組成物(37)を囲む、請求項13に記載の印刷バー。
【請求項15】
隣接するMCMアセンブリ(19)を取り囲む前記金属フレームが金属アーム(40)と一緒に接合される、請求項14に記載の印刷バー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本発明は、サーマルインク印刷技術の技術分野に関し、殊にワイドページ印刷技術、特にマルチチップモジュールアセンブリに関し、また、複数のマルチチップモジュールアセンブリを備える印刷バーに関する。
【背景技術】
【0002】
[02]マルチチップモジュール(MCM)の概念は、長い間にわたり良く知られてきた。技術的及び経済的な理由が、シリコンチップの長さを長くすることを製造業者に思いとどまらせている。したがって、硬質基板上に適切に配置されることによってMCMを形成する複数のシリコンチップを介してのみ、より長く且つより効果的な印刷スワスを合理的に得ることができる。単一のMCMの外輪郭を適切な方法で成形すると、幾つかのMCMの単純な並置により、より一層長い印刷バーを構築できる。
【0003】
[03]米国特許第5016023号は、印字ヘッドの幅寸法に少なくとも等しい量だけ隣接する印字ヘッドに対してオフセットされる印字ヘッドを備える構造を開示する。開示された構造は、特定の高温に耐えるのに適した基板としてのセラミック材料の使用を伴う。しかしながら、セラミック基板の製造プロセスは、所望の形状を一度に得るために特定の金型を必要とするため、或いは、そのような硬質材料を機械加工するために何らかの硬質工具機器の使用を要するため、かなり高価である。更に、米国特許第5016023号に開示されるバスライン及びICパッケージのセットも、かなり複雑であり、したがって、技術的に効率的でなく、信頼性及び費用効率が高いわけではない。
【0004】
[04]米国特許第5939206号は、基板上に搭載される少なくとも1つの半導体チップを備える装置について記載し、前記基板は、ポリマー材料のコーティングがその上に電気泳動的に堆積された多孔質導電部材を備え、この場合、前記多孔質導電部材はグラファイト又は焼結金属を備える。しかしながら、電気泳動堆積ラインの構築及びメンテナンスはかなり高価であるため、装置の製造プロセスが複雑でコストがかかる。
【0005】
[05]したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服して、電気的接触を実現するための技術的に効率的で費用効果が高く、安全で簡単な方法を提供することにより、マルチチップモジュールアセンブリの電気的及び機械的な信頼性を高めるとともに、マルチチップモジュールアセンブリを使用して印刷機器の高い印刷品質を確保することである。
【0006】
[06]本発明の他の目的は、前述の好適な効果を達成するようにする複数のマルチチップモジュールアセンブリを備えるそれぞれの印刷バーを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
[07]1つの態様によれば、本発明は、マルチチップモジュール(MCM)アセンブリにおいて、
グラファイト基板であって、該グラファイト基板に直接に取り付けられる複数のシリコンチップを備える、グラファイト基板を備え、MCMアセンブリが、耐溶剤性接着剤によってグラファイト基板に取り付けられるとともに複数のシリコンチップの外周を取り囲む複数の開口を備えるプリント配線基板(PWB)を更に備える、
マルチチップモジュールアセンブリに関する。
【0008】
[08]MCMのシリコンチップを取り囲む開口を備える単純なPWBの使用は、ボンディングパッドがチップの両側に沿って分散される場合であっても、電気的接触を実現する簡単な方法をもたらす。耐溶剤性接着剤の使用は、2つの部分をシールして、これらの部分間への想定し得るインクの侵入を防止できるようにする。更に、接着剤は、溶剤に対して、特に有機溶剤に足して耐性があるため、マルチチップモジュールを溶剤系インクと共に使用するのに適したものにする。一般的に使用される両面粘着テープの代わりに耐溶剤性接着剤を採用してPWBをグラファイト基板に結合することにより、組み立て中にPWB表面の高さを正確に調整することもできる。
【0009】
[09]本発明の更なる態様によれば、グラファイト基板が突出リムを備え、該突出リム上にシリコンチップが搭載される。突出リムは、シリコンチップの位置を平らにし、それにより、平坦な印刷バー表面を達成するとともに、デバイスの密閉シール、拭き取り、及び、キャッピングを容易にする。
【0010】
[010]本発明の更なる態様によれば、PWBは、複数のシリコンチップのボンディングパッドに対応するPWBのボンディングパッドを取り込む凹部を備える。このようにすると、PWBボンディングパッドがPWB上面で実現される場合と比べて、ワイヤボンディングプロセスにより実現される接続ワイヤのMCMアセンブリの表面に対する最大高さが減少される。この特徴は、印字ヘッド表面と印刷媒体との間の最小距離における制約を更に一層減らし、印刷品質にとって最適な値に近づくことができるようにする。
【0011】
[011]好ましくは、PWBが可撓性ケーブルを備え、該可撓性ケーブルの外部が一連の接触パッドで終端する。この解決策は、MCMアセンブリが密閉導電体に依存できるようにし、外部コネクタに差し込まれるこの導電体の端部は、適切な長さの可撓性ケーブルを介して、インクと接触している部分から遠くに至らされ得る。このようにして、インクと導電体との間の接触の想定し得る悪影響が防止される。
【0012】
[012]本明細書中で使用される「可撓性」という用語は、曲げること又は屈曲することができる(柔軟である)ことを意味し、更に、障害又は損傷を伴わずに繰り返し曲げることができることとして規定される。これについては、The American Heritage(登録商標) Dictionary of the English Language(4th ed.,Boston,Houghton Mifflin,2000)を参照されたい。
【0013】
[013]1つの実施形態では、PWBの長さがグラファイト基板を越えて延びる。或いは、PWBの長さは、グラファイト基板の縁部の直前で終端し得る。これにより、よりコンパクトな配置で、可撓性ケーブルを曲げて、可撓性ケーブルをMCMの縁部の近傍に保つことができる。他の実施態様において、PWBの硬質部は、MCMグラファイト基板の正に縁部で終端することができ、或いは、可撓性ケーブルの曲げを容易にするべくグラファイト基板を丸めることができる。
【0014】
[014]本発明の更なる態様によれば、耐溶剤性接着剤が、複数のシリコンチップとPWBの複数の開口の縁部との両方を包囲する。複数のシリコンチップ及びPWBは、接続ワイヤによって互いに接触するボンディングパッドをそれぞれ備え、また、耐溶剤性接着剤は、前記ボンディングパッドと該ボンディングパッド間の接続ワイヤとを包囲することもできる。PWBがソルダーレジスト層を含む場合、耐溶剤性接着剤はその少なくとも一部を包囲するべきである。これらの全ての実施形態で耐溶剤性接着剤を組み込むことにより、電気的保護及び機械的保護の両方がもたらされる。
【0015】
[015]本明細書中で使用されるように、耐溶剤性接着剤は、溶剤に対する耐性を有する成分を結合するのに適した、好ましくは不活性材料の成分を結合するとともに有機溶剤に対する耐性を有するのに適した任意の接着剤、例えば、これに限定されないが、国際公開第2017/198820号に開示されているものなど、エポキシ系接着剤となり得る。
【0016】
[016]本発明の他の態様によれば、印刷バーは、支持部材上に配置される複数のMCMアセンブリを備える。
【0017】
[017]1つの実施形態において、印刷バーは、複数のMCMアセンブリ上にわたって配置されるカバーシールドを更に備える。カバーシールドは、複数のMCMアセンブリの複数のシリコンチップの外周に一致する複数の窓を備え、また、複数の窓の縁部がシール接着剤でシールされる。カバーシールドは、接着剤層を介して複数のMCMアセンブリのPWBに取り付けられる。その窓がシール接着剤でシールされるカバーシールドの使用は、隣接するMCM間でインク溜まりを防ぐための合理的な解決策である。
【0018】
[018]これに加えて又は代えて、インクが複数のMCMアセンブリ間の空間内に侵入するのを防ぐために、複数のMCMアセンブリは、複数のMCMアセンブリの前面を除いてシール組成物により密閉シールされる。
【0019】
[019]本発明の更なる態様によれば、印刷バーは、支持部材上に配置されてMCMアセンブリの数に等しい数の金属フレームにより構成されるシールブロックを備える。これらの金属フレームは、MCMアセンブリを取り囲むとともに、MCMアセンブリの周囲のシール組成物を囲む。金属フレームは金属アームと一緒に接合される。前述のシールブロックは、複数のMCMアセンブリの外周でシール組成物のためのバリアをもたらし、それにより、構造全体が補強されるとともに、シール組成物が支持部材の表面全体にわたって広がることが防止される。更に、アームの材料厚が隣接するMCMアセンブリ間の隙間を部分的に占め、それにより、MCMアセンブリ間の空きスペースを埋めるために必要なシール組成物の量が更に一層減少される。
【0020】
[020]以下、添付図面に関連して本発明をより十分に説明し、図面では、同じ数字が異なる図の全体にわたって同じ要素を表わし、また、本発明の顕著な態様及び特徴が示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】プリント配線基板(PWB)の概略図である。
【
図2】MCM上に組み立てられたPWBの上面図を示す。
【
図3A】シリコンチップのボンディングパッドとPWBの対応するパッドとの接続のより詳細な図を上面図で与える。
【
図3B】シリコンチップのボンディングパッドとPWBの対応するパッドとの接続のより詳細な図を断面図で与える。
【
図4】
図2に描かれたPWBの横断面図の概略図を与える。
【
図5】支持部材上に配置されたMCMアセンブリの概略図を与える。
【
図6】支持部材上に配置されてカバーシールドにより取り囲まれたMCMアセンブリの概略図を与える。
【
図7A】カバーシールドがPWB表面から小空間だけ離間されている、
図6の線A-Aに沿う断面を示す。
【
図7B】カバーシールドがPWBと接触して接着剤層を介して取り付けられている、
図6の線A-Aに沿う断面を示す。
【
図8】突出リムを有するグラファイト支持体を伴うMCMアセンブリを示す。
【
図10】グラファイト基板に対するPWBの配置を示す。
【
図11A】PWBがグラファイト基板を越えて延在する、埋め込み可撓性ケーブルを伴うPWBを示す。
【
図11B】PWBの硬質部がグラファイト基板の縁部の直前で終端する、埋め込み可撓性ケーブルを伴うPWBを示す。
【
図12】複数のMCMアセンブリを取り囲むシール組成物を使用する実施形態を示す。
【
図14】支持部材に組み立てられたシールブロックを使用する実施形態を示す。
【詳細な説明】
【0022】
[021]印字ヘッドのスワス長を長くするための想定し得る解決策は、複数のシリコンチップを単一の基板上に整列させて、マルチチップモジュール(MCM)を形成し、効果的なより大きい印刷スワスを得ることである。
【0023】
[022]基板材料は、シリコンチップを損傷させ得る想定し得る危険な曲げを回避するために剛性が高い必要があり、また、その熱膨張係数(CTE)は、組み立て後に生じる大きな応力を防止するために、シリコンのCTEに近い必要がある。基板材料は、チップ固定のための平らな表面、及び、組み立てのための全ての細部、すなわち、背面からインクを供給するためのインクスロット、外部支持体に対するMCM固定のためのブシュハウジング、液圧接着剤を収容するための溝などをもたらすために容易に機械加工される必要がある。焼結グラファイトはこの目的に適した材料である。すなわち、焼結グラファイトは、前述の全ての要件を満たすことができ、更に安価である。焼結グラファイトのプレートは、例えば、TOYO TANSO-大阪(日本)から入手できる。焼結グラファイトの想定し得る欠点は、特に溶剤インクが使用されるときに材料がインクを吸収できるようにするその多孔性である。しかしながら、国際公開第2017198819号又は国際公開第2017198820号に開示されるものなどであるがこれらに限定されない適切なシール剤及び化学的適合性のある接着剤の実施により、シール剤で処理した後、シリコンチップをグラファイト基板に取り付けることができるようになる。
【0024】
[023]本発明によれば、複数のシリコンチップとの電気的接続をもたらすために、プリント配線基板(PWB)がMCMのグラファイト基板上に固定される。シリコンチップは、その熱機械的安定性が放出要素のそれぞれの位置及び位置合わせを維持できるようにするグラファイト基板上に組み立てられ、一方、PWBは、外部コントローラとの電気的接続をもたらす。シリコンチップがPWB上に直接に組み立てられた場合には、その低い熱機械的安定性が、印刷品質に対する悪影響を伴って、放出要素の安定したそれぞれの位置決めを妨げる。
【0025】
[024]
図1に示されるように、PWB10は、何ら障害なく、シリコンチップの表面を露出させたままにする適切な開口11を有する。
【0026】
[025]MCM上に組み立てられたPWBの上面図を描く
図2では、下に横たわるグラファイト基板4の外輪郭が点線12によって示される。MCM外輪郭は、分かり易くするために完全にPWBの内側領域内に位置しているが、基本的な概念から離れることなく、異なる幾何学的形態を採用することができる。
【0027】
[026]
図3A(上面図)及び
図3B(断面図)に示されるように、シリコンチップ上のボンディングパッド9は、2つの一連のパッド間に導電ワイヤ14を生成するワイヤボンディング技術を使用して、開口の境界を僅かに越えて配置されるPWB上の対応するパッド13と接触する。
【0028】
[027]一実施形態では、基板を電気的及び機械的の両方で保護するために、PWBの上面が適切なソルダーレジスト(図面に示されない)の薄層によってコーティングされてもよい。この場合、パッド13は、導電ワイヤの更なる結合を可能にするために、覆われないままである。
【0029】
[028]PWB10は、2つの部分をシールしてこれらの部分間への想定し得るインクの侵入を防ぐことができる適切な接着剤層を介してグラファイト基板4に取り付けられる。接着剤は、シリコンチップ及びPWB開口の縁部の両方を取り囲んで、各シリコンチップの外周にわたって定量供給され得る。更に、前述したように、接着剤は、溶剤、特に有機溶剤に対して耐性があるように選択して、モジュールを溶剤系インクと共に用いるのに適するようにし得る。
【0030】
[029]また、
図3Bは、シリコンチップ5とPWB10との間のキャビティ内のワイヤボンディング後に塗布される接着剤15の更なるセグメントも示す。接着剤は、電気的及び機械的な保護の両方を与えるために、パッド9,13並びに接続ワイヤ14を組み込む。ソルダーレジストが存在する場合、接着剤15は、ボンディングパッドを越えて、ソルダーレジスト層の一部上にわたっても延在するように定量供給されるべきである。
【0031】
[030]
図2に描かれる対象物の横断面図が
図4に概略的に示される。多層PWB10の底面には、電気信号を外部コントローラに向けるために、硬質コネクタ16が取り付けられる。
図2の上面図では、下に横たわる硬質コネクタ16が点線17によって表わされる。シリコンチップを収容するMCMグラファイト基板4と、シリコンダイに対してワイヤボンディングにより接続されるPWB10とにより構成される要素は、MCMアセンブリを形成する。
【0032】
[031]印刷システムでは、特定の数のMCMアセンブリが適切な支持部材上に配置され、ここでは、全ての電気的接続及び流体的接続が収束する。
【0033】
[032]
図5は、MCMアセンブリ19を収容するとともに、ひいては印刷機器のフレームワークに固定される支持部材18を示す。MCMアセンブリは支持部材に取り付けられ、それにより、ノズルが配置されるそれらの外表面が同じ平面上に位置する。
【0034】
[033]先に示された実施形態は、特に水性インクと共に用いるために開発されてきた。実際に、
図5を参照すると、長期の印刷動作中に、隣接するMCMアセンブリ間の領域20内でのインクの想定し得る蓄積が、液体の停滞を引き起こし、その結果、下に横たわる印刷媒体上にインクが滴るというリスクを引き起こす可能性がある。更に、硬質電気コネクタが配置されるMCMアセンブリの背面にインク溜まりが到達し、このインク溜まりが異なる信号間で短絡を引き起こす可能性がある。
【0035】
[034]
図6に示されるように、1つの解決策は、MCMアセンブリのシリコンチップの外周に一致する適切な窓24を備えたカバーシールド21を付着させることである。カバーシールド窓24の境界は、PWB表面とも接触するシール接着剤でシールされるべきである。点線23は、下に横たわるMCMアセンブリに対応し、一方、シール接着剤29は、
図6のA-A線に沿う断面が示される
図7に例示される。カバーシールドは、PWB表面によって小空間30だけ離間され得る(
図7A)、或いは、PWBと接触して表面全体にわたって又は選択された領域のいずれかで接着剤層31を介して取り付けられ得る(
図7B)。また、
図7は、互いに流体連通している、グラファイト基板4のインク供給スロット26及びシリコンチップ内の対応するインク供給スロット28も示す。
【0036】
[035]
図8に示されるように、グラファイト基板4は、シリコンチップが付着されるベースとしてインク供給スロット26を取り囲む突出リム32が使用されるように成形される。印字ヘッド表面の高さをカバーシールドの表面よりも高くすることができるため、カバーシールドに対する妨害を何ら伴うことなく、印字ヘッドの表面を印刷媒体に対して最適な距離で位置させることができる。グラファイトは機械工具を用いた機械加工が容易であるため、迅速且つ安価なプロセスで突出リムを得ることができる。
【0037】
[036]
図9の断面図に示されるように、多層PWBは、シリコンチップ表面に存在するものに対応するPWBボンディングパッドをPWB表面の凹部で実現できるように実現される。このようにすると、PWBボンディングパッドがPWB上面上で実現される場合と比べて、ワイヤボンディングプロセスにより実現される接続ワイヤのMCMアセンブリの表面に対する最大高さが減少される。
【0038】
[037]
図9Bは、ボンディングパッド13が凹領域33上に配置されるPWB10を示す。ワイヤ14及びシール接着剤15は、凹領域33が存在せずにボンディングパッド13がPWB上面上に位置する
図9Aの場合よりも低い最大高さレベルに達する。この特徴は、印字ヘッド表面と印刷媒体との間の最小距離における制約を更に一層減らし、印刷品質にとって最適な値に近づくことができるようにする。
【0039】
[038]PWB10をグラファイト基板4に結合するのに適した量の接着剤の採用は、前述したように、組み立て中に、PWB表面の高さの正確な調整を可能にする。
【0040】
[039]
図10に示されるように、接着剤39は硬化前にある程度の柔らかさを有するため、PWB10は、その表面の高さを所望の位置に正確に設定するべく、矢印にしたがって、接着剤39の材料中への侵入を制御してグラファイト基板に対して配置され得る。
【0041】
[040]
図11の断面図に記載される更なる実施形態において、PWB10は、可撓性ケーブル34がPWBボンディングパッドと電気的に通信して硬質PWB構造中に埋め込まれるように形成され、可撓性ケーブルの外部はPWBの硬質構造から特定の長さにわたって拡張して、一連の接触パッド35で終端し、これらの接触パッドは、印刷機器コントローラに接続される外部ソケット36に差し込まれ得る。この解決策は、
図4のコネクタ16を排除して、MCMアセンブリが密閉導電体に依存できるようにし、外部コネクタに差し込まれるこの導電体の端部は、適切な長さの可撓性ケーブル延在部を介して、インクと接触している部分から遠くに至らされ得る。このようにして、インクと導電体との間の接触の想定し得る悪影響が防止される。
【0042】
[041]
図11Aは、PWB10がグラファイト基板4を越えて延在する実施態様を示す。
図11Bは、PWB10の硬質部がグラファイト基板4の縁部の直前で終端する別の実施態様を示す。これにより、よりコンパクトな配置で、可撓性ケーブル34を曲げて、可撓性ケーブルをグラファイト基板4の縁部の近傍に保つことができる。他の実施態様において、PWB10の硬質部は、グラファイト基板4の正に縁部で終端することができ、或いは、可撓性ケーブル35の曲げを容易にするべくグラファイト基板を丸めることができる。
【0043】
[042]更なる実施形態では、
図6に示されるように、支持部材18上に配置される全てのMCMアセンブリを取り囲むカバーシールド21を排除することができる。
図5に示されるようなMCMアセンブリ間の空間20内へインクが侵入するのを防ぐために、
図12に示すように、空間20内及び複数のMCMアセンブリを取り囲む領域内に適切なシール組成物を注ぐことができる。MCMアセンブリは、印刷用の前面が遮られないままにしつつ、シール組成物37によって密閉シールされる。この目的のために、グラファイト基板及びPWBの両方の外輪郭は、構造全体に密閉性を与えるのに必要なシール組成物の量を最小限に抑えるべく、隣接するMCMアセンブリ間に小さくて、場合により均一な距離を残すように調整されるべきである。
【0044】
[043]
図13は、シールブロック38を概略的に示す。シールブロックは、支持部材18に締結されてMCMアセンブリを取り囲むように形成される金属構造を構成する。シールブロックは、支持部材18上に配置されるMCMアセンブリの数に等しい数のフレームによって構成される。フレームは、複数のMCMアセンブリを内部に収容できるように、外輪郭のみから成って内側領域41内に材料を完全に欠いている。隣接するMCMアセンブリに関連するフレームは、フレームの全体が一体のシールブロック40を一緒に形成するように、金属アーム40と一緒に接合される。MCMアセンブリ間への挿入及び支持部材18への締結の後、シールブロック38は、複数のMCMアセンブリの外周でシール組成物のためのバリアをもたらし、それにより、構造全体が補強されるとともに、シール組成物が支持部材18の表面全体にわたって広がることが防止される。更に、アーム40の材料厚が隣接するモジュール間の隙間を部分的に占め、それにより、全ての空きスペースを埋めるために必要なシール組成物の量が更に一層減少される。
【0045】
[044]
図14は、支持部材18に組み立てられるシールブロック38を示す。シールブロック38は、MCMアセンブリを取り囲んで、隣接するモジュール間の空間内へ侵入する。シール組成物37は、シールブロックの内部領域において囲まれたままであり、利用可能な全ての空間を満たしている。簡単にするために、2つのMCMアセンブリのみを備える支持部材が示されるが、その概念を明らかに任意の数のモジュールアセンブリ、更には単一のモジュールアセンブリに拡張できる。
【0046】
[045]動作条件に関する利便性にしたがって、記載された実施形態の幾つかを代替的に使用することができ、一方、当業者が容易に分かるように、他の幾つかの実施形態を一緒に接合して、非常に高性能な印刷機器を得ることができる。一例として、突出リム32、PWB10の凹領域33に配置されるボンディングパッド13、埋め込み可撓性ケーブル34、シール組成物37、及び、シールブロック38を実際の実現において一緒に使用することができる。接着剤39を介してPWB10をグラファイト基板4に取り付けることができ、また、その上面の高さを印字ヘッドの上面の高さと等しくなるように調整することができ、それにより、印刷品質及び信頼性が高い長スワス印刷システムを形成できる。
【0047】
[046]本発明に係るマルチチップモジュールアセンブリ及びそれぞれの印刷バーのための提案された解決策は、単純で費用効率が高いことが分かる。
【0048】
[047]他の既知のマルチチップモジュールアセンブリと比べて、本発明は、電気的接触を実現するための技術的に効率的で費用効果が高く、安全で簡単な方法を提供して、マルチチップモジュールアセンブリの電気的及び機械的な信頼性を高めるとともに、マルチチップモジュールアセンブリを使用して印刷機器の高い印刷品質を確保する。
【0049】
[048]上記の開示された主題は、例示的であり、限定的ではないと見なされるべきであり、独立請求項によって規定される発明のより良い理解を与えるのに役立つ。