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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】伸縮ブーム及び作業機
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/693 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B66C23/693 N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021524922
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022272
(87)【国際公開番号】W WO2020246577
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019107397
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 正裕
(72)【発明者】
【氏名】樫原 征男
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 翔一
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126465(JP,A)
【文献】特開2010-116232(JP,A)
【文献】特開2013-112437(JP,A)
【文献】特開2012-1321(JP,A)
【文献】米国特許第04257201(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外側ブームと、
前記外側ブームの内側に、前記外側ブームに対する軸方向の移動可能に設けられた内側ブームと、
前記内側ブームの上端部且つ幅方向における両端部に設けられた一対のガイド装置と、を備え、
一対の前記ガイド装置はそれぞれ、
内側ブームに設けられ、所定角度をなす第一保持面及び第二保持面を有する保持部と、
外面に第一傾斜面を有し、前記第一保持面及び前記第二保持面により保持される中間支持部材と、
前記第一傾斜面に当接する第二傾斜面、及び、前記外側ブームの内面に摺接可能なガイド面を有するガイド部材と、を備える、
伸縮ブーム。
【請求項2】
前記保持部は、前記軸方向に直交する平面で切断した場合の断面形状が、L字状であり、
前記断面形状における第一辺に対応する面が第一保持面を構成し、前記断面形状における第二辺に対応する面が前記第二保持面を構成する、請求項1に記載の伸縮ブーム。
【請求項3】
前記中間支持部材は、外面に、前記第一保持面に当接する第一被保持面と、前記第二保持面に当接する第二被保持面と、を有する、請求項1又は2に記載の伸縮ブーム。
【請求項4】
前記第一保持面は、前記内側ブームの幅方向における外側を向いており、
前記第二保持面は、前記幅方向及び前記軸方向に直交する前記内側ブームの上下方向における上側を向いている、請求項1~3の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項5】
前記保持部は、
前記第一保持面及び前記第二保持面を有する基部と、
前記基部において前記軸方向に離間した2箇所に設けられ、前記中間支持部材及び前記ガイド部材の軸方向の移動を規制する一対の移動規制部と、を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項6】
前記中間支持部材は、前記保持部により二方向の面が画定され且つ断面形状が矩形状の保持空間から突出しない状態で、前記保持部に保持されている、請求項1~5の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項7】
前記第一傾斜面は、前記幅方向における外側ほど下方に位置するように傾斜している、請求項1~6の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項8】
前記中間支持部材は、前記軸方向に直交する平面で切断した場合の断面形状が略直角三角形であり、前記略直角三角形における斜辺に対応する面が前記第一傾斜面を構成し、前記略直角三角形において直交する二辺に対応する面が前記保持部の外面に当接する第一被保持面及び第二被保持面を構成している、請求項1~7の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項9】
前記ガイド面は、前記外側ブームの上板の内面に摺接する第一ガイド面と、前記外側ブームの側板の内面に摺接する第二ガイド面と、を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項10】
前記中間支持部材の材質は、前記ガイド部材の材質と同じである、請求項1~9の何れか一項に記載の伸縮ブーム。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の伸縮ブームを備えた、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブーム及び作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業時の高揚程化や大作業半径化の要請から、作業車の伸縮ブームの長尺化が進んでいる。それに伴い、ブームを構成する鋼板の更なる高張力化及び薄肉化が図られている。
【0003】
周知のように、伸縮ブームは、外側ブームに内側ブームが伸縮自在となるよう嵌装された基本構造を有している。伸縮ブームが最も伸長した状態において作業に必要なブーム長さとなるよう、伸縮ブームは、上記基本構造が何段かに重ね合わせられて構成されている。
【0004】
外側ブームと内側ブームとの摺動部には、スライドプレートが配置されている。主要なスライドプレートとして、外側ブームの先端部における下部に配置され、内側ブームの下面を摺接支持するスライドプレートが知られている(以下、このスライドプレートを「先端スライドプレート」という。)。もう一つの主要なスライドプレートとして、内側ブームの後端部における上部に配置され、外側ブームの上面を摺接支持するスライドプレートが知られている(以下、このスライドプレートを「後端スライドプレート」という)。
【0005】
スライドプレートの摺接面と外側ブームの内面との隙間は、所定の寸法範囲にする必要がある。即ち、隙間が大きすぎると伸縮ブームが伸長した状態における外側ブームと内側ブームとのラップ間におけるガタツキが発生し、作業性の悪化につながるからである。
【0006】
従来から、スライドプレートの摺接面と外側ブームの内面との隙間は、スライドプレートを保持するリテーナーとスライドプレートとの間に配置されるシムの枚数を増減することにより調整される。このシムによる調整では、外側ブームに内側ブームを組み込んだ状態で隙間を測定し、シム枚数を決定する。そして、外側ブームから内側ブームを抜き出し、この状態において、必要枚数のシムをリテーナーとスライドプレートとの間に配置する。その後、外側ブームに内側ブームを再度組み込む。このため、シムによる調整は、大変手間が掛かる作業である。
【0007】
ところで、作業中に伸長状態にある伸縮ブームの先端部に垂直荷重が作用すると、外側ブームと内側ブームとのラップ間において後端スライドプレートに上向きの力が作用する。そして、後端スライドプレートから力を受けた外側ブームを構成する鋼板には変形及び応力が生じる。
【0008】
上述したようにブームを構成する鋼板の薄肉化しつつ、変形と応力を抑えるためには、より合理的なスライドプレート構造が望まれる。外側ブームを構成する鋼板の変形及び応力をできるだけ抑えるためには、後端スライドプレートから、外側ブームの横断面における上部且つ左右のコーナー部(以下、外側ブームの上部における両隅部と称する。)に向けて荷重が作用することが有効である。
【0009】
そこで、シムによる調整が不要であり且つ外側ブームの上部における両隅部に向け荷重を作用させることができる後端スライドプレート装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された後端スライドプレート装置は、内側ブームの後端部における上部の左右のコーナー部に略45度の角度で外側に向いて傾斜した状態で設けられたリテーナーと、このリテーナーに保持され、外側ブームの上板及び側板の内面に摺接するスライドプレートと、を備えている。
【0010】
特許文献1の後端スライドプレート装置は、スライドプレートに荷重が作用すると、スライドプレートが、略45度に傾斜したリテーナー上を左右外側に向け滑ることで自動的な調心作用が発生する。即ち、スライドプレートに荷重が作用すると、外側ブームの左右中心に対し、内側ブームの左右中心が自動的に調心されるという作用が働く。従って、スライドプレートと外側ブームとの隙間が多少大きくとも作業時にガタ等が発生しにくい。そのため、面倒なシムによる調整が不要となる。
【0011】
又、特許文献1の後端スライドプレート装置は、スライドプレートに荷重が作用すると、スライドプレートが、略45度に傾斜したリテーナー上を左右外側に向け滑ることにより、後端スライドプレート装置から外側ブームの側板に対して荷重が作用する。即ち、外側ブームの上部における両隅部に向けて後端スライドプレート装置から荷重が作用する。そのため、外側ブームに発生する変形及び応力を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】実開平7-9887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
作業車を構成する伸縮ブーム等の構造物は、切断された鋼板を必要に応じ曲げ加工したうえで溶接して構成される。そのため、鋼板が基本的に水平と垂直に配置されていると、寸法精度が出易く組み立てが容易である。
【0014】
ところが、特許文献1の後端スライドプレート装置は、スライドプレート取り付け面を構成する鋼板を、45度に傾けた状態でリテーナーの内部に取り付ける必要がある。そのため、特許文献1に記載された後端スライドプレート装置は、リテーナー構造が複雑となり、取付け精度の確保の点で問題がある。
【0015】
又、45度斜めになった鋼板をブームの基本箱に溶接する際の溶接強度を確保するためには溶接代が大きくなり、全体として大きいスペースが必要である。このような事情に鑑み、外側ブームと内側ブームとを調心する機能(以下、調心機能と称する)を有する新規な構造を備える伸縮ブームが望まれている。
【0016】
本発明の目的は、調心機能を有する新規な伸縮ブーム及び作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る伸縮ブームの一態様は、
筒状の外側ブームと、
外側ブームの内側に、外側ブームに対する軸方向の移動可能に設けられた内側ブームと、
内側ブームの上端部且つ幅方向における両端部に設けられた一対のガイド装置と、を備え、
一対のガイド装置はそれぞれ、
内側ブームに設けられ、所定角度をなす第一保持面及び第二保持面を有する保持部と、
外面に第一傾斜面を有し、第一保持面及び第二保持面により保持される中間支持部材と、
第一傾斜面に当接する第二傾斜面、及び、外側ブームの内面に摺接可能なガイド面を有するガイド部材と、を備える。
【0018】
本発明に係る作業機の一態様は、上述の伸縮ブームを備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、調心機能を有する新規な伸縮ブーム及び作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る伸縮ブームを搭載した小型クレーンである。
図2】本発明の実施形態に係る伸縮ブームの一部断面図である。
図3図2のA矢視詳細図である。
図4】本発明の実施形態に係る伸縮ブームを構成する内側ブームの後端斜視図である。
図5図4のスライドプレート装置の詳細図である。
図6図5のB矢視断面詳細図である。
図7】本発明の実施形態に係るスライドプレート構造の作用・効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
図1図7を参照して本発明の実施形態に係る伸縮ブーム1及び小型クレーン2について説明する。図1は、伸縮ブーム1を搭載した小型クレーン2を示す。小型クレーン2は、作業機の一例に該当し、アウトリガ3を備えた基台4に旋回ポスト5が旋回自在に搭載されている。
【0022】
旋回ポスト5には、伸縮ブーム1が起伏自在に設けられている。伸縮ブーム1は、起伏シリンダ6によって起伏駆動される。旋回ポスト5に配置されたウインチ7によって、伸縮ブーム1の先端からフック8を吊り下げるワイヤ9が巻き取られる又は繰り出される。図1に示す小型クレーン2は、トラックの荷台(図示しない)に架装されることで、移動式クレーンとして使用される。
【0023】
図2は、伸縮ブーム1の一部断面図であって、伸縮ブーム1の後端部10の断面図である。伸縮ブーム1は、筒状のベースブーム11に、筒状のセカンドブーム12、サードブーム13、及びトップブーム14が順番に伸縮自在に嵌装された、所謂4段ブームである。伸縮ブーム1は、伸縮シリンダ(不図示)等のアクチュエータの動力に基づいて、伸縮可能である。
【0024】
内側ブームとなるセカンドブーム12、サードブーム13、及びトップブーム14の後端上部には、後端スライドプレート装置15、16、17がそれぞれ配置されている。尚、図示しないが、ベースブーム11、セカンドブーム12、及びサードブーム13の先端部における下部には前端スライドプレート装置が配置されている。
【0025】
図3は、図2のA矢視詳細図であって、ベースブーム11に嵌装されたセカンドブーム12を後端側から見た図である。図3において、ベースブーム11が外側ブームの一例に該当し、セカンドブーム12が内側ブームの一例に該当する。
【0026】
尚、セカンドブーム12が外側ブームの一例に該当する場合、サードブーム13が内側ブームの一例に該当する。又、サードブーム13が外側ブームの一例に該当する場合、トップブーム14が内側ブームの一例に該当する。内側ブームは、外側ブームの内側に、外側ブームに対する軸方向の移動可能に設けられている。
【0027】
セカンドブーム12の後端部(基端部)における上部には、後端側のスライドプレート装置21、22が左右一対配置されている。以降、前端スライドプレート装置には触れる必要が無いので、「後端側のスライドプレート装置」を単に「スライドプレート装置」と呼ぶ。
【0028】
スライドプレート装置21、22はそれぞれ、ベースブーム11(外側ブーム)とセカンドブーム12(内側ブーム)との間に設けられている。具体的には、スライドプレート装置21、22は、セカンドブーム12(内側ブーム)の上端部且つ幅方向における両端部(第一隅部及び第二隅部とも称する。)と、ベースブーム11(外側ブーム)との間に設けられている。スライドプレート装置21、22は、一対のガイド装置の一例に該当する。
【0029】
右側のスライドプレート装置21と左側のスライドプレート装置22とは、ブームの中心軸を通る垂直面23に対して左右対称形状である。そのため、以降は右側のスライドプレート装置21に着目して説明する。左側のスライドプレート装置22については、後述の右側のスライドプレート装置21の説明を適宜読み替えればよい。
【0030】
図4は、セカンドブーム12の後端斜視図であって、伸縮ブーム1を構成する内側ブームの後端部を説明するための図である。図4に示されるように、セカンドブーム12の後端部における上部20には、右側のスライドプレート装置21と左側のスライドプレート装置22が左右一対配置されている。この構成は、サードブーム13及びトップブーム14でも全く同じである。
【0031】
図5は、図4に示した右側のスライドプレート装置21の詳細図である。スライドプレート装置21は、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42(図6参照)との摺接面24と、ベースブーム11の側板43(図6参照)との摺接面25とを備えている。
【0032】
具体的には、スライドプレート装置21は、リテーナー26と、スライドプレート27と、中間支持部材40と、を有する。
【0033】
リテーナー26は、保持部の一例に該当し、セカンドブーム12(内側ブーム)の後端部における上部の右端部に配置されている。リテーナー26は、セカンドブーム12(内側ブーム)の上方と側方に向いた面が開放された箱型に構成されている。
【0034】
尚、本明細書において、伸縮ブーム1及び伸縮ブーム1の構成部材の上下方向(以下、まとめて伸縮ブーム1の上下方向と称する。)は、伸縮ブーム1が全倒伏した状態(図1に示す状態)における、垂直方向(天地方向)を意味する。具体的には、伸縮ブーム1の上下方向は、図1における上下方向に一致する。
【0035】
又、伸縮ブーム1及び伸縮ブーム1の構成部材の幅方向(以下、まとめて伸縮ブーム1の幅方向と称する。)は、上下方向及び軸方向に直交する方向を意味する。伸縮ブーム1の幅方向における外側は、幅方向において伸縮ブーム1の中心から離れる方向を意味する。逆に、伸縮ブーム1の幅方向における内側は、幅方向において伸縮ブーム1の中心に向かう方向を意味する。伸縮ブーム1の幅方向を、左右方向又は側方と称することもある。
【0036】
又、伸縮ブーム1及び伸縮ブーム1の構成部材の軸方向(以下、まとめて伸縮ブーム1の軸方向と称する。)は、伸縮ブーム1の前後方向でもある。伸縮ブーム1の前側は伸縮ブーム1の先端側であり、伸縮ブーム1の後側は伸縮ブーム1の基端側である。
【0037】
本実施形態に係るリテーナー26は、図5に示すように、長方形の板材がL字状に90度折り曲げられ前後方向に所定長さを有するL字状部材30と、L字状部材30の前後方向における両端近傍に溶接された一対の板状部材31によって箱型に構成されている。
【0038】
L字状部材30は、基部の一例に該当し、軸方向に延在している。L字状部材30は、保持部において、内側ブームに設けられ、軸方向に直交する平面で切断した場合の断面形状がL字状となる部分を構成している。又、一対の板状部材31はそれぞれ、移動規制部の一例に該当する。このようなリテーナー26は、スライドプレート27及び中間支持部材40を保持している。
【0039】
L字状部材30は、水平部33と垂直部34とを有している。水平部33は、セカンドブーム12(内側ブーム)の側板35に溶接されており、垂直部34はセカンドブーム12(内側ブーム)の上板36に溶接されている。つまり、L字状部材30は、セカンドブーム12(内側ブーム)に固定されている。
【0040】
水平部33は、第二方向である伸縮ブーム1の上下方向を向いた第一面を有する。水平部33は、L字状部材30の断面形状における第二辺に該当する。本実施形態の場合、水平部33の第一面は、伸縮ブーム1の上下方向における上側を向いた面である。よって、本実施形態の場合、第二方向は、伸縮ブーム1の上下方向において上側に向かう方向である。水平部33の第一面は、第二保持面の一例に該当する。
【0041】
垂直部34は、第一方向である伸縮ブーム1の幅方向を向いた第一面を有する。本実施形態の場合、垂直部34の第一面は、伸縮ブーム1の幅方向における外側を向いた面である。よって、本実施形態の場合、第一方向は、伸縮ブーム1の幅方向において外側に向かう方向である。
【0042】
垂直部34の第一面は、第一保持面の一例に該当する。垂直部34は、L字状部材30の断面形状における第一辺に該当する。第一保持面(垂直部34の第一面)と第二保持面(水平部33の第一面)とは、互いに異なる方向を向いている。本実施形態の場合、第一保持面(垂直部34の第一面)が含まれる平面と、第二保持面(水平部33の第一面)が含まれる平面とは、互いに直交する。尚、水平部33と垂直部34とにより、断面形状がL字状(略L字状を含む。)の基部を構成している。水平部33と垂直部34とのなす角は、90°が好ましいが、90°から所定角度ずれた角度であってもよい。
【0043】
又、水平部33の幅方向における長さと、垂直部34の上下方向における長さとは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0044】
このように、スライドプレート装置21は、リテーナー26を構成するL字状部材30の水平部33及び垂直部34が、内側ブームの基本構成である側板35及び上板36に直角に当接した状態で溶接されている。
【0045】
このため、構造が簡単となり、取付け精度の点で有利である。さらに、特許文献1のスライドプレート装置では、斜めになった鋼板をブームの基本箱に溶接する際の溶接強度を確保するためのスペースが必要であったのに対し、本発明のリテーナー26はそのためのスペースが不要なので省スペース化が図れる。
【0046】
一対の板状部材31はそれぞれ、スライドプレート27及び中間支持部材40の軸方向への移動を規制している。尚、一対の板状部材31のうち前側の板状部材31は、スライドプレート27及び中間支持部材40の前方への移動を規制し、一対の板状部材31のうち後側の板状部材31は、スライドプレート27及び中間支持部材40の前方への移動を規制している。一対の板状部材31と、スライドプレート27及び中間支持部材40の前後方向における両端面との間には、僅かな隙間が存在してもよいし、隙間が存在しなくてもよい。
【0047】
図6は、図5のB矢視断面詳細図である。リテーナー26のL字状部材30とスライドプレート27との間には、中間支持部材40が配置され、スライドプレート27を支持している。中間支持部材40は、軸方向に延在しており、図6に示すように横断面が略直角三角形である。
【0048】
中間支持部材40の横断面における直角を挟む二辺(換言すれば、直交する二辺)に対応する面が、リテーナー26のL字状部材30の水平部33と垂直部34と当接している。換言すれば、中間支持部材40は、リテーナー26における垂直部34の第一面(第一保持面)及び水平部33の第一面(第二保持面)により保持されている。中間支持部材40の外面のうち垂直部34に対向する面が、第一被保持面の一例に該当する。中間支持部材40の外面のうち水平部33に対向する面が、第二被保持面の一例に該当する。
【0049】
中間支持部材40は、横断面における斜辺に対応する面は、スライドプレート27と組み合わされる傾斜面41を構成している。傾斜面41は、第一傾斜面の一例に該当する。傾斜面41は、伸縮ブーム1の幅方向における外側ほど下方に位置するように傾斜している。傾斜面41の水平面に対する傾斜角度は、スライドプレート27と中間支持部材40との間の摩擦係数との関係によって増減させることが可能である。
【0050】
中間支持部材40のブーム前後方向の長さは、スライドプレート27とほぼ同じ長さである。尚、中間支持部材40の横断面とは、中間支持部材40の長手方向(本実施形態の場合、伸縮ブーム1の軸方向に平行な方向)に直交する平面によって中間支持部材40を切断した場合の断面図である。
【0051】
本実施形態の場合、中間支持部材40は、リテーナー26の水平部33及び垂直部34により二方向の面が画定され且つ横断面形状が矩形状(略正方形状)の保持空間44(図3参照)から突出しない状態で、リテーナー26に保持されている、
【0052】
スライドプレート27は、ガイド部材の一例に該当し、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42の内面と摺接可能な摺接面24と、ベースブーム11(外側ブーム)の側板43の内面と摺接可能な摺接面25と、を有する。外側ブームの上板42と側板43とは、1枚の板がR形状に曲げて構成されている。摺接面24及び摺接面25はそれぞれ、ガイド面の一例に該当する。又、摺接面24は、第一ガイド面の一例に該当する。又、摺接面25は、第二ガイド面の一例に該当する。
【0053】
スライドプレート27は、摺接面24と摺接面25との接続部に、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42と側板43との接続部である角部44の内側R形状に沿うような角部摺接面45を有する。角部摺接面45もガイド面の一例に該当する。このようなスライドプレート27の摺接面(ガイド面)は、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42の内面、側板43の内面、及び角部44の内面に完全に沿った形状を有する。
【0054】
尚、図6に示すベースブーム11(外側ブーム)における上部且つ左右両端部の角部の曲率半径が、図6に示すベースブーム11よりも更に大きい場合又は小さい場合であっても、同様に本発明を適用可能である。又、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42と側板43とが別部材の鋼板であって、溶接により接合される構造であっても、本発明を適用することが可能である。
【0055】
スライドプレート27は、中間支持部材40の傾斜面41と当接する接合面46を有する。接合面46は、第二傾斜面の一例に該当する。図6に示すように、本実施形態のスライドプレート装置21は、組み立て状態において中間支持部材40の傾斜面41が水平面に対し内側ブームの外側下方に向け45度傾斜している。
【0056】
換言すれば、接合面46は、伸縮ブーム1の幅方向における外側ほど下方に位置するように傾斜している。つまり、接合面46は、傾斜面41に沿うような傾斜角度で水平方向に対して傾斜している。接合面46の水平面に対する傾斜角度は、スライドプレート27と中間支持部材40との間の摩擦係数との関係によって増減させることが可能である。
【0057】
スライドプレート27の材質は、ある程度の強度を有し、且つ、ベースブーム11(外側ブーム)の内周面に対する摩擦係数の低いものが望ましい。具体的には、例えばポリイミド樹脂やナイロン樹脂等が、好適である。中間支持部材40の材質は、スライドプレート27を支える強度を有していればよく、鉄等の金属材料でも良いし、スライドプレート27と同じ樹脂系の材料で構成しても良い。
【0058】
図6に示されるように、中間支持部材40の横断面における左右ほぼ中央部に垂直に明けた穴に丸棒47が嵌入されている。丸棒47の上端は、中間支持部材40の傾斜面41からスライドプレート27側に向け突出している。スライドプレート27には、接合面46から上方に向け、丸棒47の位置に丸棒47の直径よりもやや大きい内径の丸穴48が穿孔されている。
【0059】
図6に示された、中間支持部材40に立設された丸棒47とスライドプレート27に穿孔された丸穴48との組合せによって、伸縮ブーム組み立て途中(図5参照)におけるような外側ブームが存在しない状態での、中間支持部材40からのスライドプレート27の滑落が防止される。
【0060】
尚、スライドプレート27の滑落防止機構は、この例に限られない。即ち、外側ブームが存在しない状態で中間支持部材40に対してスライドプレート27が維持され、且つ、外側ブームが存在する状態で中間支持部材40の傾斜面41に沿ってスライドプレート27の接合面46が必要範囲摺動できればよい。
【0061】
図7は、本発明のスライドプレート装置21の作用・効果を説明する図である。作業中の作業車の伸縮ブームの先端部には垂直荷重が作用するので、図7に示すスライドプレート装置21には、上向きの力50が発生する。
【0062】
このとき、中間支持部材40の傾斜面41は、水平面に対しセカンドブーム12(内側ブーム)の幅方向における外側ほど下に位置するように角度Θで傾斜しているので、スライドプレート27は傾斜面41に沿って矢印51の方向に滑ろうとする。
【0063】
しかし、スライドプレート27は、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42と側板43とによって拘束されているので、力のバランスが取れた状態で停止する。このとき、スライドプレート27では、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42に対し、矢印で示す上向きの分布荷重52が発生し、ベースブーム11(外側ブーム)の側板43に対し、矢印で示す横向きの分布荷重53が発生する。
【0064】
このように、スライドプレート装置21は、スライドプレート27からベースブーム11(外側ブーム)の上板42と側板43との角部44に向けて力が作用することにより、ベースブーム11(外側ブーム)を構成する上板42の剛性と側板43の剛性とのバランスが図られるので、ほぼ均一な分布荷重を発生させることができる。
【0065】
換言すれば、ベースブーム11(外側ブーム)の上板42と側板43とに局部的な曲げ変形を起こさせるのではなく、断面内での引っ張り応力状態(上板42では左右方向の引っ張り応力、側板43では上下方向の引っ張り応力)とすることができる。
【0066】
これによって、ベースブーム11(外側ブーム)に発生する変形及び応力を最小化することが可能となる。即ち、ベースブーム11(外側ブーム)を構成する鋼板の厚さを最小化することが可能となる。
【0067】
この時、図4で示した左側のスライドプレート装置22では、図7で示した状態に対し左右が反転した状態となっている。即ち、左側の側板43に対しても同じ大きさの分布荷重53が発生している。そのため、分布荷重53の反力がセカンドブーム12(内側ブーム)の中心向きに左右のスライドプレート装置21、22に対し作用するので、ベースブーム11(外側ブーム)に対するセカンドブーム12(内側ブーム)の調心作用が働く。
【0068】
又、上述した調心作用によって図3に示したセカンドブーム12(内側ブーム)のスライドプレート装置21、22とベースブーム11(外側ブーム)との隙間が最小となるので、作業中の伸縮ブームのベースブーム11(外側ブーム)とセカンドブーム12(内側ブーム)とのラップ間のガタが抑えられる。
【0069】
又、スライドプレート装置21、22での隙間が小さく抑えられることは、伸縮ブームのなめらかな伸縮動作にもつながる。このような作用及び効果は、外側ブームがセカンドブーム12であり、内側ブームがサードブーム13である場合、及び、外側ブームがサードブーム13であり、内側ブームがトップブーム14である場合も同様である。
【0070】
又、中間支持部材40の材質を、スライドプレート27と同じ材質で構成することも可能である。具体的には、中間支持部材40の材質として例えばポリイミド樹脂やナイロン樹脂等を使用することができる。この場合は、中間支持部材40の材質が鉄である場合に比べ、中間支持部材40とスライドプレート27との間の摩擦係数μをより小さくできる。
【0071】
摩擦係数μを小さくできると、中間支持部材40の傾斜面の水平面に対する角度Θを小さくできる。図7に示した実施の形態における傾斜面41の水平面に対する角度Θは45度であるが、これを例えば30度とすることも可能である。
【0072】
調心機能を発揮できる中間支持部材40の傾斜面41の傾斜角度Θを小さくできると、調心前後のリテーナーに対するスライドプレート27の上下方向の変化量が少なくなる。即ち、調心前後における、外側ブームに対する内側ブームの全高の変化量が少なくなるので、外側ブーム又は内側ブームに対して組み付けられる伸縮シリンダ等に無理な外力が加わり難くすることが可能となる。
【0073】
本実施形態では、作業車として小型クレーンに本発明の伸縮ブームを適用する例を説明したが、他の移動式クレーンにも本発明が適用できることは勿論である。即ち、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、又はトラッククレーン等にも適用可能である。更に、移動式クレーン以外の作業車、即ち、伸縮ブームを有する高所作業車等の作業車にも本発明を適用することができる。
【0074】
2019年6月7日出願の特願2019-107397の日本出願に含まれる明細書、図面、及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、伸縮ブームを備える種々の作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 伸縮ブーム
10 後端部
11 ベースブーム
12 セカンドブーム
13 サードブーム
14 トップブーム
15、16、17 後端スライドプレート装置
2 小型クレーン
20 上部
21、22 スライドプレート装置
23 垂直面
24、25 摺接面
26 リテーナー
27 スライドプレート
3 アウトリガ
30 L字状部材
31 板状部材
33 水平部
34 垂直部
35 側板
36 上板
4 基台
40 中間支持部材
41 傾斜面
42 上板
43 側板
44 保持空間
46 接合面
47 丸棒
48 丸穴
5 旋回ポスト
50 力
51 矢印
52、53 分布荷重
6 起伏シリンダ
7 ウインチ
8 フック
9 ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7