(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】走行車システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20231108BHJP
B61B 3/02 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
B65G1/04 551Z
B61B3/02
(21)【出願番号】P 2021546541
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030037
(87)【国際公開番号】W WO2021053989
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2019169527
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】小合 玄己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖久
(72)【発明者】
【氏名】北村 亘
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193223(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056677(WO,A1)
【文献】特許第7235059(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/090288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B61B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車システムであって、
格子状の軌道と、
前記軌道を走行する走行車と、
前記走行車と通信可能であり、前記走行車を制御するコントローラと、
現在位置を示す特定情報を前記コントローラに送信する作業用端末と、
前記軌道の下方に前記軌道から垂下して設けられ、前記作業用端末を所有する作業者が前記軌道の下方を通行するための足場部と、を備え、
前記走行車は、
前記軌道を走行する走行部と、前記走行部から吊り下げられた本体部と、を備え、前記コントローラから前記軌道における1以上のマス目に対応する通過許可が得られた場合には前記1以上のマス目に進入し、前記コントローラから前記通過許可が得られない場合には前記1以上のマス目に進入せず、
前記コントローラは、前記足場部への進入部から目的地までの作業者による通行経路に対応する複数のマス目のうち、少なくとも前記作業用端末から送信された前記特定情報によって示される現在位置に対応するマス目について、前記走行車に対して前記通過許可を与えないブロッキングを行う、走行車システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記通行経路に対応する前記複数のマス目の全部について同時又はほぼ同時にブロッキングを行う、請求項1に記載の走行車システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記作業用端末から送信された前記特定情報に応じて、ブロッキングを行うマス目を変更する、請求項1に記載の走行車システム。
【請求項4】
前記軌道は、各マス目のそれぞれを識別するためのコードを有し、
前記作業用端末は、前記コードに基づいて前記特定情報を前記コントローラに送信する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の走行車システム。
【請求項5】
前記作業用端末は、ブロッキングが行われている複数のマス目のうち、前記現在位置に対応するマス目以外の少なくとも1つのマス目に対するブロッキングを解除する解除要求を前記コントローラに送信し、
前記コントローラは、前記作業用端末から送信された前記解除要求に基づいて、前記少なくとも1つのマス目に対するブロッキングを解除する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の走行車システム。
【請求項6】
前記作業用端末は、前記通行経路に対応する前記複数のマス目のうち、ブロッキングが行われているマス目に関する情報を出力する出力部を備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の走行車システム。
【請求項7】
前記出力部は、前記通行経路においてブロッキングが行われている前記マス目を表示可能な表示部である、請求項6に記載の走行車システム。
【請求項8】
作業者により前記軌道を走行可能な作業用補助具をさらに備え、
前記作業用端末は、前記作業用補助具に取り付け可能である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の走行車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場等の製造工場では、例えば、半導体ウエハ又はレチクルを収容する搬送容器(FOUP、レチクルPod)等の物品を走行車により搬送する走行車システムが用いられている。この走行車システムとして、物品を保持する走行車が、天井に敷設された格子状の軌道に沿って走行する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。格子状の軌道は、一方向の複数の軌道と、この一方向に交差する交差方向の複数の軌道とにより形成され、水平方向に拡がって敷設されている。この格子状の軌道では、複数のマス目が一方向及び交差方向に並んで配置されており、各マス目が軌道における交差部分となる。従って、上記の走行車システムでは、走行車同士の干渉を防止するため、各マス目をブロッキング区間に設定できるようにして、マス目を占有可能とする排他制御を行っている。走行車は、コントローラからブロッキング区間の通過許可を得た場合に通過許可を得たブロッキング区間に進入可能であるが、通過許可が得られない場合にはブロッキング区間に進入しないように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した走行車システムにおいて、走行車によって物品を載置可能な棚部を軌道の下方に作業者が歩行する足場部を設けることを想定する。このような足場部は、故障等により走行車が軌道において停止している場合、又は軌道の一部をメンテナンスする場合等において、作業者が目的地まで向かう通路として利用可能である。ただし、足場部の上方は走行車の走行エリアであるため、作業者が足場部上を歩行して目的地に向かうまでの間、走行車の走行を停止させる必要があるが、全ての走行車を停止させたのでは物品の搬送効率を低下させることになる。
【0005】
本発明は、作業者の通行経路を確保しつつ、物品の搬送効率が低下するのを抑制することが可能な走行車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る走行車システムは、走行車システムであって、格子状の軌道と、軌道を走行する走行車と、走行車と通信可能であり、走行車を制御するコントローラと、現在位置を示す特定情報をコントローラに送信する作業用端末と、軌道の下方に軌道から垂下して設けられ、作業用端末を所有する作業者が軌道の下方を通行するための足場部と、を備え、走行車は、軌道を走行する走行部と、走行部から吊り下げられた本体部と、を備え、コントローラから軌道における1以上のマス目に対応する通過許可が得られた場合には前記1以上のマス目に進入し、前記コントローラから前記通過許可が得られない場合には前記1以上のマス目に進入せず、コントローラは、足場部への進入部から目的地までの作業者による通行経路に対応する複数のマス目のうち、少なくとも作業用端末から送信された特定情報によって示される現在位置に対応するマス目について、走行車に対して通過許可を与えないブロッキングを行う。
【0007】
また、コントローラは、通行経路に対応する複数のマス目の全部について同時又はほぼ同時にブロッキングを行ってもよい。また、コントローラは、作業用端末から送信された特定情報に応じて、ブロッキングを行うマス目を変更してもよい。また、軌道は、各マス目のそれぞれを識別するためのコードを有し、作業用端末は、コードに基づいて特定情報をコントローラに送信してもよい。
【0008】
また、作業用端末は、ブロッキングが行われている複数のマス目のうち、現在位置に対応するマス目以外の少なくとも1つのマス目に対するブロッキングを解除する解除要求をコントローラに送信し、コントローラは、作業用端末から送信された前記解除要求に基づいて、前記少なくとも1つのマス目に対するブロッキングを解除してもよい。
【0009】
また、作業用端末は、通行経路に対応する複数のマス目のうち、ブロッキングが行われているマス目に関する情報を出力する出力部を備えてもよい。また、出力部は、通行経路においてブロッキングが行われているマス目を表示可能な表示部であってもよい。また、作業者により軌道を走行可能な作業用補助具をさらに備え、作業用端末は、作業用補助具に取り付け可能であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記した走行車システムによれば、コントローラが取得した作業用端末の現在位置に基づいて、その作業用端末を所持する作業者が存在するマス目をブロッキング区間に設定するので、このマス目に走行車が進入すること規制しつつ、他のマス目については走行車の進入を許容することができる。その結果、作業者による通行経路を確保しつつ、全ての走行車を停止させる必要がないので物品の搬送効率が低下するのを抑制することができる。
【0011】
また、コントローラが、通行経路に対応する複数のマス目の全部について同時又はほぼ同時にブロッキングを行う構成では、作業者の通行経路の全部に対して走行車の進入を規制するため、確実に作業者の通行経路を確保できる。また、コントローラが、作業用端末から送信された特定情報に応じて、ブロッキングを行うマス目を変更する構成では、同時にブロッキング区間に設定するマス目を少なくして、走行車が進入できないマス目を減らすことができる。また、軌道が、各マス目のそれぞれを識別するためのコードを有し、作業用端末が、コードに基づいて特定情報をコントローラに送信する構成では、コントローラが作業用端末の位置情報を正確に取得することができる。
【0012】
また、作業用端末が、ブロッキングが行われている複数のマス目のうち、現在位置に対応するマス目以外の少なくとも1つのマス目に対するブロッキングを解除する解除要求をコントローラに送信可能である構成では、走行車の進入を規制する必要がないマス目について、早期に走行車の進入を可能とすることができる。また、コントローラが、作業用端末から送信された特定情報に基づいて、通行経路に対応する複数のマス目のうち、作業者が通行した後の少なくとも1つのマス目に対するブロッキングを解除する構成では、走行車の進入を規制する必要がないマス目についてコントローラにより自動的に走行車の進入を可能とすることができる。また、コントローラが、作業用端末から送信された現在位置から遠い順に、マス目に対するブロッキングを解除する構成では、作業用端末を所持する作業者から離れたマス目について走行車の進入を可能とすることができる。
【0013】
また、作業用端末が、通行経路に対応する複数のマス目のうち、ブロッキングが行われているマス目に関する情報を出力する出力部を備える構成では、出力部からの出力によってブロッキング区間に設定されているマス目を作業者に通知することができる。また、出力部が、通行経路においてブロッキングが行われているマス目を表示可能な表示部である構成では、作業者は、表示部を見ることによりブロッキング区間に設定されているマス目を容易に認識できる。また、作業者により軌道を走行可能な作業用補助具をさらに備え、作業用端末が、作業用補助具に取り付け可能である構成では、作業用端末を作業用補助具に取り付けることにより、作業者が作業用端末を手で持つ必要がなく、容易に作業用端末を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る走行車システムの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す走行車システムで用いられる走行車の一例を示す斜視図である。
【
図6】コントローラ及び作業用端末の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】走行車システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図8】走行車システムの動作の一例を示す図である。
【
図9】走行車システムの動作の一例を示す図である。
【
図10】走行車システムの動作の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る作業用補助具の一例を示す図である。
【
図12】走行車システムの動作の他の例を示すシーケンス図である。
【
図13】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図14】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図15】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図16】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図17】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図18】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図19】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【
図20】作業用補助具を用いた走行車システムの動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載する等適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系により図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に沿った一方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。なお、走行車Vの走行方向は、以下の図に示された状態から他の方向に変化可能であり、例えば曲線方向に走行する場合もある。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向と反対の方向が-方向であるとして説明する。また、垂直軸まわり又はZ軸まわりの旋回方向をθZ方向と表記する。
【0016】
図1は、実施形態に係る走行車システムSYSの一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す走行車システムSYSで用いられる走行車Vの斜視図である。
図3は、走行車Vの一例を示す側面図である。
【0017】
走行車システムSYSは、例えば半導体製造工場のクリーンルームにおいて、物品Mを走行車Vにより搬送するためのシステムである。走行車システムSYSは、複数の走行車Vと、複数の走行車Vを制御するコントローラ(搬送コントローラFC、ブロッキングコントローラBC)TCと、を備える。本実施形態では、走行車Vが天井走行車である例を説明する。走行車Vは、走行車システムSYSの軌道Rに沿って移動する。軌道Rは、走行車Vの走行領域である。走行車Vは、走行車システムSYSの軌道Rに沿って移動し、半導体ウエハを収容するFOUP、あるいはレチクルを収容するレチクルPod等の物品Mを搬送する。走行車Vは、物品Mを搬送するため、搬送車と称する場合がある。
【0018】
軌道Rは、クリーンルーム等の建屋の天井又は天井付近に敷設されている。軌道Rは、処理装置AP(
図5参照)、ストッカ(自動倉庫、図示せず)、保管部60(バッファ)等に隣接して設けられる。処理装置APは、例えば、露光装置、コータディベロッパ、製膜装置、エッチング装置等であり、走行車Vが搬送する容器内の半導体ウエハに各種処理を施す。上記のストッカは、走行車Vが搬送する物品Mを保管する。保管部60は、走行車Vが搬送する物品Mを一時的に保管する。保管部60については、後に説明する。
【0019】
軌道Rは、軌道の形態の一例である。軌道Rは、複数の第1軌道R1と、複数の第2軌道R2と、複数の交差部R3と、を有する格子状軌道である。以下、軌道Rを格子状軌道Rと称する場合もある。複数の第1軌道R1は、それぞれ、X方向(第1方向D1)に沿って延在する。複数の第1軌道R1は、それぞれ、Y方向(第2方向D2)における第1軌道R1同士の間隔GA1(軌間)が略一定になるように配置される。複数の第2軌道R2は、それぞれ、Y方向(第1方向D1とは異なる第2方向D2)に沿って延在する。複数の第2軌道R2は、それぞれ、第1方向D1における第2軌道R2同士の間隔GA2(軌間)が略一定になるように配置される。複数の第2軌道R2は、それぞれ、第1軌道R1と交差する。軌道Rは、複数の第1軌道R1と複数の第2軌道R2により、平面視において格子状に形成されている。軌道Rは、複数の第1軌道R1と複数の第2軌道R2により複数のマス目Cを形成する。軌道Rは、マス目Cのそれぞれを識別するためのコードを有する。コードは、マス目Cのそれぞれを識別する識別情報を含む。コードは、例えば、所定の装置により非接触で読み取り可能な情報である。コードは、例えば、バーコード、2次元コード、RFIDタグ等である。本実施形態では、第1方向D1と第2方向D2とが直交しており、複数の第1軌道R1と複数の第2軌道R2とは、互いに直交する方向に沿って設けられるが、互いに直接交差しないように設けられている。交差部R3は、第1軌道R1と第2軌道R2とが交差する部分に配置される。交差部R3は、第1軌道R1に対して第1方向D1に隣り合うとともに、第2軌道R2に対して第2方向D2に隣り合っている。交差部R3は、第1軌道R1と第2軌道R2との接続、第1軌道R1同士の接続、第2軌道R2同士の接続をする接続軌道である。交差部R3は、走行車Vが第1軌道R1に沿って走行する際と、走行車Vが第2軌道R2に沿って走行する際と、走行車Vが第1軌道R1から第2軌道R2に走行する際と、第2軌道R2から第1軌道R1に走行する際と、のいずれの際にも用いられる軌道である。交差部R3は、+Z方向から見た時に(平面視において)、矩形状の板状の部材により形成されており、矩形状の板状の部材における4つの角部(コーナー部)のそれぞれに設定されている(
図11に示すハッチング部分)。軌道Rは、複数の第1軌道R1と複数の第2軌道R2とが直交する方向に設けられることで、平面視で複数のマス目C(セル)が隣り合う状態となっている。1つのマス目Cは、1つのマス目に相当し、平面視において、第2方向D2において隣り合った2つの第1軌道R1と、第1方向D1において隣り合った2つの第2軌道R2と、に囲まれた部分である。なお、
図1では軌道Rの一部について示しており、軌道Rは、
図1に示している構成から第1方向D1(X方向)及び第2方向D2(Y方向)に同様の構成が連続して形成されている。
【0020】
第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差部R3は、吊り下げ部材H(
図1参照)によって不図示の天井に吊り下げられている。吊り下げ部材Hは、第1軌道R1を吊り下げるための第1部分H1と、第2軌道R2を吊り下げるための第2部分H2と、交差部R3を吊り下げるための第3部分H3と、を有する。第1部分H1及び第2部分H2は、それぞれ第3部分H3を挟んだ二か所に設けられている。
【0021】
第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差部R3は、それぞれ、走行車Vの後述する走行車輪21が走行する走行面R1a、R2a、R3aを有する。1つの第1軌道R1には、第1方向D1に沿った走行面R1aが第2方向D2に並んで2つ設けられている。1つの第2軌道R2には、第2方向D2に沿った走行面R2aが第1方向D1に並んで2つ設けられている。走行車Vが第1方向D1に走行する際、走行車輪21は、第2方向D2において隣接して配置される一対の第1軌道R1の走行面R1aを走行する。走行車Vが第2方向D2に走行する際、走行車輪21は、第1方向D1において隣接して配置される一対の第2軌道R2の走行面R2aを走行する。隣接して配置される一対の第1軌道R1の軌間GA1、及び、隣接して配置される一対の第2軌道R2の軌間GA2は、略同一に設定される。第1軌道R1と交差部R3との間には第1間隙GP1が形成される。また、第2軌道R2と交差部R3との間には、第2間隙GP2が形成される。第1間隙GP1は、走行車Vが第2軌道R2を走行して第1軌道R1を横切る際に、走行車Vの一部である後述の連結部30が通過する部分である。第2間隙GP2は、走行車Vが第1軌道R1を走行して第2軌道R2を横切る際に走行車Vの連結部30が通過する部分である。従って、第1間隙GP1及び第2間隙GP2(これらを総称して間隙GPと称す)は、連結部30が通過可能な幅に設けられている。第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差部R3は、同一又はほぼ同一の水平面に沿って設けられる。本実施形態において、第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差部R3は、走行面R1a、R2a、R3aが同一又はほぼ同一の水平面上に配置される。
【0022】
図2及び
図3に示すように、走行車Vは、本体部10と、走行部20と、連結部30と、車載コントローラVC(制御部)と、を有する。本体部10は、軌道Rの下方(-Z側)に配置される。走行車Vは、本体部10が軌道Rから垂下された状態で走行する。本体部10は、平面視で例えば矩形状に形成される。本体部10は、平面視で軌道Rにおける1つのマス目C(
図1参照)に収まる寸法に形成される。このため、隣り合う第1軌道R1又は第2軌道R2を走行する他の走行車Vとすれ違うスペースが確保される。本体部10は、上部ユニット17と、移載装置18とを備える。上部ユニット17は、連結部30を介して走行部20から吊り下げられる。上部ユニット17は、例えば平面視で矩形状であり、上面17aに4つのコーナー部を有する。
【0023】
本体部10は、4つのコーナー部のそれぞれに走行車輪21、連結部30、方向転換機構34を有する。この構成において、本体部10の4つのコーナー部に配置された走行車輪21により、本体部10を安定して吊り下げることができ、かつ、本体部10を安定して走行させることができる。
【0024】
移載装置18は、上部ユニット17の下方に設けられる。移載装置18は、Z方向(鉛直方向)の回転軸AX1まわりに回転可能である。移載装置18は、物品Mを保持する物品保持部13と、物品保持部13を鉛直方向に昇降させる昇降駆動部14と、昇降駆動部14を水平方向にスライド移動させる横出し機構11と、横出し機構11を保持する回動部12とを有する。物品保持部13は、物品Mのフランジ部Maを把持することにより、物品Mを吊り下げて保持する。物品保持部13は、例えば、水平方向に移動可能な爪部13aを有するチャックであり、爪部13aを物品Mのフランジ部Maの下方に進入させ、物品保持部13を上昇させることで、物品Mを保持する。物品保持部13は、ワイヤ又はベルト等の吊り下げ部材13bに接続されている。
【0025】
昇降駆動部14は、例えばホイストであり、吊り下げ部材13bを繰り出すことにより物品保持部13を下降させ、吊り下げ部材13bを巻き取ることにより物品保持部13を上昇させる。昇降駆動部14は、車載コントローラVCに制御され、所定の速度で物品保持部13を下降又は上昇させる。また、昇降駆動部14は、車載コントローラVCに制御され、物品保持部13を目標の高さに保持する。
【0026】
横出し機構11は、例えばZ方向に重ねて配置された複数の可動板を有する。可動板は、X方向に相対的に移動可能である。最下層の可動板には、昇降駆動部14が取り付けられている。横出し機構11は、不図示の駆動装置により可動板を移動させ、最下層の可動板に取り付けられた昇降駆動部14及び物品保持部13を例えば、走行車Vの走行方向に対して直交する水平方向に横出しさせる(スライド移動させる)ことができる。
【0027】
回動部12は、横出し機構11と上部ユニット17との間に設けられる。回動部12は、回動部材12aと、回動駆動部12bとを有する。回動部材12aは、鉛直方向の軸周り方向に回動可能に設けられる。回動部材12aは、横出し機構11を支持する。回動駆動部12bは、例えば電動モータ等が用いられ、回動部材12aを回転軸AX1の軸周り方向に回動させる。回動部12は、回動駆動部12bからの駆動力によって回動部材12aを回動させ、横出し機構11(昇降駆動部14及び物品保持部13)を回転軸AX1の軸周り方向に回転させることができる。
【0028】
また、
図2に示すように、移載装置18及び移載装置18に保持している物品Mを囲むようにカバーWが設けられてもよい。カバーWは、下端を開放した筒状であって、かつ、横出し機構11の可動板が突出する部分を切り欠いた形状を有している。カバーWは、上端が回動部12の回動部材12aに取り付けられており、回動部材12aの回動に伴って回転軸AX1の軸まわりに回動する。
【0029】
走行部20は、走行車輪21と、補助車輪22とを有する。走行車輪21は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ配置される。走行車輪21のそれぞれは、連結部30に設けられた車軸に取り付けられている。車軸は、XY平面に沿って平行又は略平行に設けられている。走行車輪21のそれぞれは、後述する走行駆動部33の駆動力により回転駆動する。走行車輪21のそれぞれは、軌道Rにおいて、第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差部R3の走行面R1a、R2a、R3aを転動し、走行車Vを走行させる。なお、4つの走行車輪21の全てが走行駆動部33の駆動力により回転駆動することに限定されず、4つの走行車輪21のうち一部について回転駆動させる構成であってもよい。
【0030】
走行車輪21は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。走行車輪21は、後述する方向転換機構34によってθZ方向に旋回し、その結果、走行車Vの走行方向を変更することができる。補助車輪22は、走行車輪21の走行方向の前後にそれぞれ1つずつ配置される。補助車輪22のそれぞれは、走行車輪21と同様に、XY平面に沿って平行又は略平行な車軸の軸周りに回転可能となっている。補助車輪22の下端は、走行車輪21の下端より高くなるように設定されている。従って、走行車輪21が走行面R1a、R2a、R3aを走行しているときは、補助車輪22は、走行面R1a、R2a、R3aに接触しない。また、走行車輪21が間隙GP(
図1参照)を通過する際には、補助車輪22が走行面R1a、R2a、R3aに接触して、走行車輪21の落ち込みを抑制している。なお、1つの走行車輪21に2つの補助車輪22を設けることに限定されず、例えば、1つの走行車輪21に1つの補助車輪22が設けられてもよいし、補助車輪22が設けられなくてもよい。
【0031】
図3に示すように、連結部30は、本体部10の上部ユニット17と走行部20とを連結する。連結部30は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ設けられる。この連結部30によって本体部10は、走行部20から吊り下げられた状態となり、軌道Rより下方に配置される。連結部30は、支持部材31と、接続部材32とを有する。支持部材31は、走行車輪21の回転軸及び補助車輪22の回転軸を回転可能に支持する。支持部材31により、走行車輪21と補助車輪22との相対位置を保持する。支持部材31は、例えば板状に形成され、間隙GP(
図1参照)を通過可能な厚さに形成される。
【0032】
接続部材32は、支持部材31から下方に延びて上部ユニット17の上面17aに連結され、上部ユニット17を保持する。接続部材32は、後述する走行駆動部33の駆動力を走行車輪21に伝達する伝達機構を内部に備える。この伝達機構は、チェーン又はベルトが用いられる構成であってもよいし、歯車列が用いられる構成であってもよい。接続部材32は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。この接続部材32が旋回軸AX2を中心として旋回することで、支持部材31を介して走行車輪21を旋回軸AX2まわりのθZ方向に旋回させることができる。
【0033】
連結部30(
図2参照)には、走行駆動部33と、方向転換機構34とが設けられる。走行駆動部33は、接続部材32に装着される。走行駆動部33は、走行車輪21を駆動する駆動源であり、例えば電動モータ等が用いられる。4つの走行車輪21は、それぞれ走行駆動部33によって駆動される駆動輪である。4つの走行車輪21は、同一又は略同一の回転数となるように車載コントローラVCによって制御される。なお、4つの走行車輪21のうちいずれかを駆動輪として用いない場合は、接続部材32に走行駆動部33は装着されない。
【0034】
方向転換機構34は、連結部30の接続部材32を、旋回軸AX2を中心として旋回させることにより、走行車輪21を旋回軸AX2まわりのθZ方向に旋回させる。走行車輪21をθZ方向に旋回させることにより、走行車Vの走行方向を第1方向D1とする第1状態から走行方向を第2方向D2とする第2状態に、又は走行方向を第2方向D2とする第2状態から走行方向を第1方向D1とする第1状態に切り替えることが可能である。
【0035】
方向転換機構34は、駆動源35と、ピニオンギア36と、ラック37とを有する。駆動源35は、走行駆動部33において旋回軸AX2から離れた側面に取り付けられている。駆動源35は、例えば電動モータ等が用いられる。ピニオンギア36は、駆動源35の下面側に取り付けられており、駆動源35で発生した駆動力によりθZ方向に回転駆動する。ピニオンギア36は、平面視で円形状であり、外周の周方向に複数の歯を有する。ラック37は、上部ユニット17の上面17aに固定される。ラック37は、上部ユニット17の上面17aの4つのコーナー部にそれぞれ設けられ、走行車輪21の旋回軸AX2を中心とした円弧状(扇形状)に設けられる。ラック37は、外周の周方向に、ピニオンギア36の歯と噛み合う複数の歯を有する。
【0036】
ピニオンギア36及びラック37は、互いの歯が噛み合った状態で配置される。ピニオンギア36がθZ方向に回転することにより、ラック37の外周に沿うようにピニオンギア36が旋回軸AX2を中心とする円周方向に移動する。このピニオンギア36の移動により、接続部材32が旋回し、走行駆動部33及び方向転換機構34がピニオンギア36と共に旋回軸AX2を中心とする円周方向に旋回する。
【0037】
方向転換機構34の旋回により、上面17aの4つのコーナー部に配置された走行車輪21及び補助車輪22のそれぞれが旋回軸AX2を中心としてθZ方向に90度の範囲で旋回する。方向転換機構34の駆動は、車載コントローラVCによって制御される。車載コントローラVCは、4つの走行車輪21の旋回動作を同一のタイミングで行うように指示してもよいし、異なるタイミングで行うように指示してもよい。走行車輪21及び補助車輪22を旋回させることにより、走行車輪21が第1軌道R1及び第2軌道R2の一方に接触した状態から他方に接触した状態に移行する。換言すれば、走行車輪21の回転軸の方向が第1方向D1及び第2方向D2の一方とされた状態から他方とされる状態に移行する。このため、走行車Vの走行方向を第1方向D1(X方向)とする第1状態と、走行方向を第2方向D2(Y方向)とする第2状態とで切り替えることができる。
【0038】
図4は、実施形態に係る保管ユニット60Uの一例を示す斜視図である。
図5は、保管部60の一例を示す上面図である。走行車システムSYSは、物品Mを保管する保管部60を備える。保管部60は、オーバヘッドバッファ(OHB)である。保管部60は、軌道Rの下方に設けられる。本実施形態では、保管部60が、複数の保管ユニット60Uを備える例を中心に説明する。保管ユニット60Uは、1つの単体である。保管ユニット60U(保管部60)は、吊り部材61と、フレーム単体63U(フレーム63)と、物品Mを載置する載置部64と、足場部65と、を備える。載置部64及び足場部65は、フレーム単体63U(フレーム63)におけるマス目Cの下方に設けられる。保管ユニット60Uは、軌道Rの下方の任意の場所に、1つ以上設けることができる。保管ユニット60Uは、軌道Rに対して着脱可能である。
【0039】
保管ユニット60Uの外周の形状は、平面視において、軌道Rにおける複数のマス目Cの外周の形状と略一致するように設定される。この構成により、走行車Vの走行を阻害せずに、保管ユニット60Uを設けることが可能となる。保管ユニット60Uの形状及び大きさは、図示の構成例では、平面視において、X方向におけるマス目Cの数を3とし、Y方向におけるマス目Cの数を2とした3×2個のマス目Cにおける外周の形状及び大きさと略一致するように設定されている。
【0040】
保管ユニット60Uは、複数の吊り部材61により、軌道Rから吊り下げられて設けられる。各吊り部材61は、接続部61Aと、棒状部61Bと、固定部61Cと、を備える(
図4参照)。各吊り部材61は、同様の構成である。吊り部材61は、交差部R3から垂下して設けられる(
図4参照)。吊り部材61は、走行車Vが走行する際、走行車Vと干渉しない位置に設けられる。接続部61Aは、交差部R3の下部に設けられた接続部材(図示せず)に接続される。
【0041】
棒状部61Bは、真っすぐに延びる棒状の部材である。棒状部61Bの上端は、接続部61Aの下端に接続される。棒状部61Bの下端には、固定部61Cが設けられる(
図4参照)。固定部61Cは、フレーム単体63Uを固定する。1つの固定部61Cには、4つのフレーム単体63Uそれぞれにおける1つのコーナー(角)部を固定することができる。この構成によれば、1つの吊り部材61により最大4つの保管ユニット60Uのフレーム単体63Uを取り付けることができる。
【0042】
上述のように、吊り部材61を交差部R3から垂下して設ける構成の場合、吊り部材61が走行車Vの走行を妨げることなく吊り部材61を配置して、保管ユニット60Uを設置することができる。本実施形態では、走行車Vが吊り部材61と吊り部材61との間を通過することができるように構成されている。
【0043】
吊り部材61の位置及び数は、フレーム単体63U、載置部64等の保管ユニット60Uの各部の形状、大きさ、重量等の構成に応じて、適宜設定される。吊り部材61は、フレーム単体63Uを均等に支持するように設けられる。吊り部材61は、平面視において、保管ユニット60Uの外周を形成する部分等に複数設けられる。吊り部材61は、平面視において、保管ユニット60Uの角部等に設けられている。
【0044】
載置部64(
図4、
図5参照)について説明する。保管ユニット60Uは、1つの物品Mを載置可能な載置部64を複数備えている。各載置部64には、走行車Vにより物品Mが載置される。各載置部64は、フレーム単体63Uの内側の領域に設けられる。
【0045】
複数の載置部64は、水平に配置され且つ互いに平行な位置関係で配置された複数の棒状部材(図示せず)等により形成される。各棒状部材の上面は、平面状であり、物品Mを載置する載置面となる。
図4に示す例では、各物品Mは、各物品Mにおける中心から+Y方向にずれた部分及び-Y方向にずれた部分が2つの棒状部材によって下方から支持されることにより、載置部64に載置される。また、各棒状部材の上面には、物品Mを位置決め可能なキネマティックピン等の位置決め機構(図示せず)が設けられている。位置決め機構は、1つの載置部64毎に設けられている。各載置部64は、位置決め機構により物品Mを位置決めして載置することができる。
【0046】
隣り合う載置部64相互間には、所定の間隔が設けられている。この間隔は、走行車Vにより物品Mを載置部64に搬送する際に、物品Mが衝突しないように設けられる間隔である。複数の載置部64は、平面視においてフレーム単体63Uの内側における所定の領域に寄せてまとめて設けられている。この領域は、載置部64の数が最大数となるように設定されている。なお、平面視における1つの載置部64の中心とマス目Cの中心とがずれて配置される場合においても、各載置部64には、走行車Vの横出し機構11により物品Mを載置することができる。
【0047】
足場部65(
図4、
図5参照)について説明する。足場部65は、フレーム単体63Uの内側に設けられる。足場部65は、平面視において複数のマス目Cを渡るように形成されている。足場部65は、作業者Uが歩行可能な通路である。また、足場部65は、作業者Uの足場として用いられる。足場部65は、例えば、作業者Uによる走行車システムSYSのメンテナンス作業の足場として用いられる。走行車システムSYSのメンテナンスは、例えば走行車Vのメンテナンス、軌道Rのメンテナンス、保管ユニット60U自体のメンテナンス等である。足場部65は、作業用端末UTを所有する作業者Uが軌道Rの下方を通行する際に用いられる。足場部65は、作業者Uを支持可能に構成される。足場部65の耐荷重は、少なくとも人間の重量以上である。足場部65は、例えば、グレーチング、パンチングメタル等のような複数の孔を有する部材である。足場部65は、フレーム単体63Uに固定される。
【0048】
足場部65は、複数の載置部64の領域以外の領域に設けられる。保管ユニット60Uでは、載置部64の数が最大数になるように設定され、載置部64以外の領域に、足場部65が設けられている。この構成の場合、載置部64を設置することができない長手状のスペースを、足場部65として効果的に活用することができる。足場部65は、作業者Uが足場部65において、フレーム単体63Uの内側の走行車V、軌道R、及び複数の載置部64等に到達することが可能な位置に配置される。本実施形態の保管ユニット60Uは、足場部65において作業者Uがフレーム単体63Uの内側の走行車V、軌道R、及び、複数の載置部64等に手の届くように、形成されている。足場部65は、第1足場部65Aと、第2足場部65Bと、を備える。第1足場部65Aは、水平方向のうちの第1方向D1(X方向)を長手状としている。第2足場部65Bは、第1方向D1に直交する水平方向のうちの第2方向D2(Y方向)を長手状としている。本実施形態では、第1足場部65Aと第2足場部65Bは、平面視においてL字状に配置されている。
【0049】
保管部60は、
図5に示すように、上記の保管ユニット60Uを複数備えている。保管部60では、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数の保管ユニット60Uが配置されている。保管部60において、各保管ユニット60U同士は、接続又は近接して配置される。隣接して配置される保管ユニット60Uの足場部65同士は、作業者Uが容易に乗り移ることができるように配置される。
【0050】
保管部60において、
図5に示すように、足場部65は、平面視において万遍なく配置される。保管部60では、複数の第1足場部65Aが第1方向D1(X方向)に沿って配置され、複数の第2足場部65Bが第2方向D2(Y方向)に沿って配置される。保管部60において、足場部65(複数の第1足場部65A、複数の第2足場部65B)は、平面視において格子状に配置される。走行車システムSYSでは、保管部60の内部においてメンテナンス作業が必要な場合においても、作業者Uは、足場部65を用いることで、保管部60の内側の領域に位置する走行車V、載置部64、軌道R等に容易に到達することができる。
【0051】
図1の説明に戻り、走行車システムSYSは、走行車Vを制御するコントローラTCを備える。コントローラTCは、搬送コントローラFCと、ブロッキングコントローラBCと、を備える。走行車システムSYSは、通信システム(図示せず)を備える。通信システムは、走行車V、搬送コントローラFC、及びブロッキングコントローラBCの通信に用いられる。走行車V、搬送コントローラFC、及びブロッキングコントローラBCは、それぞれ、通信システムを介して通信可能に接続される。
【0052】
搬送コントローラFCは、各走行車Vを制御する。搬送コントローラFCは、各種指令を走行車Vに送信することにより、走行車Vを制御する。搬送コントローラFCは、例えば、走行車Vに搬送指令を割付けることにより、走行車Vの搬送(走行)を制御する。搬送コントローラFCは、走行車システムSYSに関するシステム情報に基づいて、搬送指令の対象である物品Mを搬送可能な走行車Vを選択し、選択した走行車Vに搬送指令を割付ける。システム情報は、各走行車Vの状態情報、走行車システムSYSに関連する各部(例、処理装置、保管装置、バッファ)の位置を示すマップ情報、物品Mの位置情報等である。搬送指令は、走行車Vに対して所定の経路に沿った走行を実行させる走行指令、走行車Vに対して所定位置に配置された物品Mの荷つかみを実行させる荷つかみ指令、走行車Vに対して保持する物品Mの所定位置への荷下ろしを実行させる荷下ろし指令等である。
【0053】
ブロッキングコントローラBCは、軌道Rの各マス目Cにおける走行車Vの進入を制御する。ブロッキングコントローラBCは、各マス目C毎に、所定の走行車Vに対して通過許可を与えないブロッキング区間Bに設定するブロッキングを行う。ブロッキングは、例えば、1つのマス目Cに複数の走行車Vが進入しないようにする制御、マス目Cにいずれの走行車Vも進入させないようにする制御等である。本実施形態の走行車システムSYSでは、走行車Vがブロッキング区間Bの通過許可要求をブロッキングコントローラBCに要求し、通過許可要求に対してブロッキングコントローラBCが走行車Vに許可(通過許可)を与えることにより、走行車Vは通過許可が与えられたブロッキング区間Bを通過することが可能となる。本実施形態の走行車システムSYSでは、走行車Vは、ブロッキングコントローラBCから軌道Rにおける1以上のマス目Cに対応する通過許可が得られた場合には、1以上のマス目Cに進入し、ブロッキングコントローラBCから通過許可が得られない場合には、1以上のマス目Cに進入しないように制御される。なお、各マス目Cにおける走行車Vの進入を制御するための構成は、上記の例に限定されない。例えば、上記の制御は、コントローラTCが、走行車システムSYS内の走行車Vの走行経路に関する走行経路情報を取得し、取得した走行経路情報に基づいて、搬送指令及び搬送指令に関するブロッキング区間Bの通過許可を一度に走行車Vに与えることにより行う構成でもよい。
【0054】
図6は、ブロッキングコントローラBC及び作業用端末UTの一例を示す機能ブロック図である。走行車Vは、車載コントローラVCにより制御される。車載コントローラVCは、走行車Vを統括的に制御する。車載コントローラVCは、コンピュータである。車載コントローラVCは、本実施形態では本体部10に設けられる例を示すが(
図3参照)、車載コントローラVCは本体部10の外部に設けられてもよい。車載コントローラVCは、外部の装置との間で通信を行う。車載コントローラVCは、無線により、通信システム(図示せず)に接続される。車載コントローラVCは、通信システムを介して、搬送コントローラFC及びブロッキングコントローラBCのそれぞれと通信を行う。走行車Vは、搬送コントローラFC及びブロッキングコントローラBCから受信した各種指令又は各種情報に基づいて走行する。車載コントローラVCは、走行車Vの走行を制御する。車載コントローラVCは、例えば、走行速度、停止に関する動作、方向転換に関する動作を制御する。車載コントローラVCは、搬送コントローラFCから送られる搬送指令に基づいて、走行及び移載動作を制御する。
【0055】
車載コントローラVCは、ブロッキングコントローラBCから与えられるブロッキング区間Bについての通過許可に従って走行車Vが走行するように走行を制御する。走行車Vは、ブロッキングコントローラBCから受信した通過許可を、通過許可情報として記憶部(図示せず)に記憶する。通過許可情報は、通過許可が与えられたブロッキング区間Bを示す情報を含む。車載コントローラVCは、通過許可が与えられたブロッキング区間Bには進入し、通過許可が与えられていないブロッキング区間Bには進入しないように走行車Vの走行を制御する。車載コントローラVCは、通過許可が与えられていないブロッキング区間Bがあった場合、ブロッキング区間Bの手前で待機してブロッキング区間Bに侵入しないように、走行車Vの走行を制御する。
【0056】
ブロッキングコントローラBCは、車載コントローラVC及び作業用端末UTとの間で通信を行う。ブロッキングコントローラBCは、通信部41と、ブロッキング制御部42と、を有する。
【0057】
通信部41は、車載コントローラVC及び作業用端末UTとの間で通信を行う。通信部41は、例えば通過許可要求に対する通過許可要求応答を車載コントローラVC及び作業用端末UTに送信する。
【0058】
ブロッキング制御部42は、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間Bをブロッキングする。この際のブロッキングでは、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間Bについて、全ての走行車Vの進入を禁止するように制御を行う。また、この際のブロッキングでは、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間Bについての通過許可を与えている走行車Vに対しても、ブロッキング区間Bについて進入を禁止するように制御を行う。
【0059】
また、ブロッキング制御部42は、後述する作業用端末UTからの解除要求に基づいて、ブロッキング区間Bに対するブロッキングの解除を決定する。また、ブロッキング制御部42は、作業用端末UTから送信された現在位置に基づいて、ブロッキング区間Bに対するブロッキングの解除を決定する。例えば、ブロッキング制御部42は、作業用端末UTから送信された現在位置に基づいて、通行経路RTに対応するマス目Cのうち、作業者Uが通行した後の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキングを解除することができる。また、ブロッキング制御部42は、作業用端末UTから送信された現在位置から遠い順に、マス目Cに対するブロッキングを解除してもよい。ブロッキング区間Bをブロッキングする制御と、当該ブロッキングを解除する制御と、を総称してブロッキング制御と呼ぶ。ブロッキング制御部42については、後にさらに説明する。
【0060】
作業用端末UTについて説明する。作業用端末UTは、作業者Uにより使用される端末である。作業用端末UTは、入力部46と、通信部47と、出力部48と、位置情報検出部49と、ブロッキング区間決定部52と、通過許可要求部53と、解除要求部54と、を有する。作業用端末UTは、例えば、コンピュータを備え、携帯可能な端末である。作業用端末UTは、例えば、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン等である。なお、作業用端末UTは、バーコードリーダ、RFIDリーダ等のような、コンピュータに接続可能な外部デバイスを含んでもよい。入力部46は、作業者Uにより情報が入力される部分であり、タッチパネル、ボタン等の入力装置が用いられる。
【0061】
通信部47は、コントローラTC(ブロッキングコントローラBC)との間で通信を行う。通信部47は、例えば作業用端末UTの現在位置を示す特定情報(「特定情報」と略す場合もある)をブロッキングコントローラBCに送信可能である。作業用端末UTの現在位置を示す特定情報は、作業用端末UTの現在位置そのものを示す位置情報でもよいし、後述する作業用端末UTからブロッキングコントローラBCに送信される通過許可要求でもよい。位置情報は、例えばマス目Cに設定されるコードに基づく情報である。このコードは、例えばC1~C60(
図8等参照)等と表すことができる。位置情報検出部49は、作業用端末UTの現在位置についての位置情報を検出する。通信部47は、位置情報検出部49が検出した作業用端末UTの現在位置についての位置情報を、ブロッキングコントローラBCに送信可能である。位置情報検出部49は、例えば、上記のコードがバーコード、2次元コード、RFIDタグである場合、バーコードリーダ、撮像装置、RFIDリーダ等のコードを検出することが可能な装置である。また、位置情報検出部49は、GPS、ビーコン等の3点測位装置でもよく、この構成の場合、コードは軌道Rに備えられなくてもよい。作業用端末UTが位置情報検出部49を備える構成の場合、上記の位置情報を容易に取得することができる。なお、位置情報検出部49は、任意の構成であり、備えられなくてもよい。位置情報検出部49を備えない構成の場合、作業用端末UTは、作業者Uが入力部46により入力した位置情報を取得し、通信部47によりブロッキングコントローラBCに送信する。
【0062】
また、通信部47は、ブロッキングコントローラBCからブロッキング情報を受信可能である。ブロッキング情報は、ブロッキングが行われているマス目Cの位置情報を含む。この位置情報は、例えば上記したマス目Cに設定されるコードに基づく情報である。
【0063】
ブロッキング区間決定部52は、作業用端末UTの位置(作業用端末UTが存在するマス目Cの位置情報)に基づいて、通過許可を要求するブロッキング区間Bを決定する。上記のブロッキング区間Bの決定では、まず、ブロッキング区間決定部52は、目的地Qと目的地Qの周囲のマス目Cとを、ブロッキング区間Bに設定する。続いて、ブロッキング区間決定部52は、取得した上記の位置情報に基づいて、作業者Uの通行経路RTを算出し、算出結果に基づいてブロッキング区間Bを決定する。ブロッキング区間決定部52は、例えば、作業用端末UTの位置(作業用端末UTが存在するマス目Cの位置情報)から目的地Qまでの最短経路を通行経路RTとして算出する。作業用端末UTがブロッキング区間決定部52を備える構成の場合、ブロッキング区間Bの設定をブロッキングコントローラBCではなく作業用端末UTにより行うので、ブロッキングコントローラBCがブロッキング区間Bを設定する構成よりもブロッキングコントローラBCの負荷を軽減することができる。
【0064】
通過許可要求部53は、ブロッキング区間決定部52が決定したブロッキング区間Bについての通過許可要求をブロッキングコントローラBCに要求する。
【0065】
また、作業用端末UTは、ブロッキング区間Bについてのブロッキングの解除要求(以下、「解除要求」と略す。)をブロッキングコントローラBCに送信可能である。解除要求は、例えば、ブロッキングコントローラBCに対して、ブロッキングが行われているマス目Cのうち、現在位置に対応するマス目C以外の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキングを解除する要求等が挙げられる。解除要求は、解除要求部54により生成される。解除要求部54は、予め設定された所定の規則に従って、ブロッキングが行われているマス目Cを選択し、選択したマス目Cに対するブロッキングを解除する解除要求を生成する。上記の解除要求の生成及び送信に関する構成は、例えば、解除要求部54が位置情報検出部49により検出された位置情報に基づいて解除要求を生成して自動的にブロッキングコントローラBCに送信する構成でもよいし、解除要求部54が、作業者Uが入力部46により入力した位置情報に基づいて解除要求を生成して自動的にブロッキングコントローラBCに送信する構成でもよいし、作業者Uが入力部46により入力した解除要求をブロッキングコントローラBCに送信する構成でもよい。
【0066】
出力部48は、情報が出力される部分であり、例えば表示部48a等の画像出力部を有する。表示部48aとしては、液晶装置、有機EL装置等の各種の表示装置を用いることができる。出力部48は、スピーカ等の音声出力部を有してもよい。
【0067】
作業用端末UTは、出力部48(表示部48a)に出力(表示)する各種情報を生成し、生成した情報の出力部48(表示部48a)への出力を制御する出力制御部55(
図6参照)を備える。出力部48(表示部48a)は、出力制御部55の制御により、各種情報を出力する。例えば、出力部48(表示部48a)は、出力制御部55の制御により、走行車システムSYSのマップ、マス目Cに関する情報(画像)を表示部48aに表示する。また、作業用端末UTの現在位置を示す特定情報を出力(表示)する。出力部48(表示部48a)は、出力制御部55の制御により、作業用端末UTの現在位置を示す特定情報を出力(表示)する。また、出力制御部55は、ブロッキングコントローラBCから受信したブロッキング情報に基づく情報を生成し、生成した情報を出力部48(表示部48a)に出力(表示)する。例えば、出力制御部55は、受信したブロッキング情報に基づいて、ブロッキング制御が行われているマス目Cを示す画像を表示部48aに表示する。
【0068】
また、出力制御部55は、作業用端末UTからブロッキングコントローラBCに送信した情報に基づく情報を生成し、生成した情報を出力部48(表示部48a)に出力(表示)する。例えば、出力制御部55は、作業用端末UTからブロッキングコントローラBCに送信した作業用端末UTの現在位置情報、通行経路RTを示す情報、通過許可要求、及び解除要求に基づく情報を生成し、生成した情報を出力部48(表示部48a)に出力(表示)する。
【0069】
また、出力制御部55は、各マス目Cに関するブロッキング制御の状態を示す情報を、表示部48aに表示する。例えば、上記マス目Cにおけるブロッキング制御の状態は、作業用端末UTによるブロッキングコントローラBCへの通過許可要求の送信が完了しているが、ブロッキングコントローラBCによるブロッキングが完了していないことを示す状態(以下「通過許可要求中」と称す場合もある);作業用端末UTによるブロッキングコントローラBCへの通過許可要求の送信が完了し且つブロッキングコントローラBCによるブロッキングが行われている状態(以下「ブロッキング許可済」と称す場合もある);作業用端末UTによるブロッキングコントローラBCへの解除要求の送信が完了しているが、ブロッキングコントローラBCによるブロッキングの解除が完了していないことを示す状態(以下「解除要求中」と称す場合もある);ブロッキングが行われていない状態であり且つ作業用端末UTからの通過許可要求及び解除要求がない状態(以下「通過許可要求・解除要求なし」)等である。
【0070】
作業用端末UTは、作業用端末UTからブロッキングコントローラBCに送信した作業用端末UTの現在位置情報、通行経路RTを示す情報、通過許可要求、及び解除要求、ブロッキングコントローラBCから受信したブロッキング情報等に基づいて、各マス目Cに関するブロッキング制御の状態を示す情報を管理する。
【0071】
出力制御部55は、各マス目Cにおけるブロッキング制御の状態を示す情報に応じて、表示部48aに表示するマス目Cに関する情報を更新する。作業用端末UTは、各マス目Cにおけるブロッキング制御の状態の変更を検知した際に、出力制御部55により上記の表示部48aに表示するマス目Cに関する情報の更新が速やかに実行される。出力制御部55は、各マス目Cにおけるブロッキング制御の状態に応じて、表示部48aに表示するマス目Cの表示形態を、各マス目Cにおけるブロッキング制御の状態に対応した表示形態に変更(更新)する。上記ブロッキング制御の状態に対応する表示形態は、例えば、マス目Cのブロッキング制御の状態に対応するマス目Cを示す画像の色、模様等を変更する。上記のように、表示部48aが各マス目Cにおけるブロッキング制御の状態を示す情報を表示する構成の場合、作業者Uはマス目Cに関するブロッキング制御の状態を容易に把握することができる。表示部48aでの表示例については、後に説明する。なお、作業用端末UTは、上記以外の情報を出力部48(表示部48a)に出力(表示)してもよい。
【0072】
次に、コントローラTCによる走行車Vの制御について説明する。
図7は、走行車システムSYSの動作の一例を示すシーケンス図である。
図8から
図10は、走行車システムSYSの動作の一例を示す図である。なお、図示の軌道Rは、軌道Rの全体の一部を示している。また、
図8から
図10等の図面において、数字「1~60」で示される部分のマス目Cは、それぞれ、マス目C1~C60であるとする。
【0073】
搬送コントローラFCは、走行車Vに搬送指令を割付けることにより、走行車Vの搬送(走行)を制御する。搬送コントローラFCは、システム情報に基づいて、搬送指令の対象である物品Mを搬送可能な走行車Vを選択し、選択した走行車Vに搬送指令を割付ける。
【0074】
本実施形態に対する比較例の走行車システムでは、故障等により走行車Vが軌道Rにおいて停止している場合、又は軌道Rの一部をメンテナンスする場合等、作業者Uが目的地に向かうため、システム内における全ての走行車Vの走行を停止させる。足場部65の上方は走行車Vの走行エリアであるため、作業者Uが足場部65を歩行して目的地に向かうまでの間、走行車Vの走行を停止させる必要があり、その結果、搬送効率が低下する。
【0075】
本実施形態の走行車システムSYSでは、上記の作業者Uが目的地に向かう際に行っていた走行車Vの停止を抑制することができる。本実施形態の走行車システムSYSでは、作業者Uが作業用端末UTを所持して足場部65に進入する際、作業用端末UTは、位置情報を取得する(ステップS01)。本実施形態では、上述のように、軌道Rが、マス目Cのそれぞれを識別するためのコードを有し、作業用端末UT(位置情報検出部49)が、コードに基づいて現在位置を取得する。この構成の場合、作業用端末UTの位置情報を正確に取得することができる。
【0076】
ステップS01に続いて、ブロッキング区間決定部52は、取得した位置情報に基づいて作業者Uの通行経路RTを算出し(ステップS02)、算出結果に基づいてブロッキング区間Bを決定する(ステップS03)。ステップS03において、ブロッキング区間決定部52は、例えば、目的地Qとなるマス目C及び目的地の周囲のマス目Cに対して走行車Vが進入しないようにブロッキング区間Bを決定する。また、ブロッキング区間決定部52は、作業者Uが目的地Qに向かう通行経路RTについても、走行車Vが進入しないようにブロッキング区間Bとして設定する。ブロッキング区間決定部52は、通行経路RTに対応するマス目Cの全部についてブロッキング区間Bに設定する。
図8から
図10に示す例において、ブロッキング区間決定部52は、目的地Qを含む4つのマス目C46、C47、C56、C57について、ブロッキング区間Bとして設定する。また、ブロッキング区間決定部52は、作業者Uの出入口(進入部EP)となるマス目C51から目的地Qまでの最短距離であるマス目C52~C55までの区間について、ブロッキング区間Bとして設定する。
【0077】
上記のようにブロッキング区間決定部52が、目的地Q及び取得した位置情報に基づいて作業者Uの通行経路RTを算出し、算出した結果に基づいてブロッキング区間Bを決定する構成の場合、自動的にブロッキングが行われるので、容易に作業者Uの通行経路RTについてのブロッキングを行うことができる。また、上記のようにブロッキング区間決定部52が、通行経路RTに対応するマス目Cの全部についてブロッキング区間Bに設定する構成では、作業者Uの通行経路RTの全部に対して走行車Vの進入を規制するため、確実に作業者Uの通行経路RTを確保できる。なお、ブロッキング区間決定部52は、作業者Uが目的地Qに向かう通行経路RT及び通行経路RTの周囲のマス目Cをブロッキング区間Bに設定してもよい。例えば、ブロッキング区間決定部52は、作業者Uが目的地Qに向かう通行経路RTがマス目C41~C45である場合、通行経路RTであるマス目C41~C45及び通行経路RTの周囲のマス目C31~C35及びマス目C51~C55について、ブロッキング区間Bとして設定してもよい。
【0078】
ステップS03において、ブロッキング区間決定部52がブロッキング区間Bを決定した後、ステップS04において、通過許可要求部53は、決定したブロッキング区間Bについての通過許可要求(特定情報)をブロッキングコントローラBCに送信する。この際、通過許可要求部53は、通行経路RTを示す情報、作業用端末UTの現在位置情報をブロッキングコントローラBCに送信する。ステップS05において、出力制御部55は、ブロッキングコントローラBCに送信した現在位置情報、通行経路RTを示す情報、通過許可要求等の情報に基づいて、表示部48aの画像を更新する。出力制御部55は、表示部48aに表示する通過許可要求を送信したマス目Cについての画像を、過許可要求中の状態であることを示す画像に更新する。
【0079】
ステップS06において、ブロッキングコントローラBCは、作業用端末UTから送信された作業用端末UTの現在位置情報を受信する。また、ブロッキングコントローラBCは、ステップS07において、作業用端末UTから送信された通行経路RTを示す情報を受信する。なお、ステップS04において作業用端末UTの現在位置情報と、通行経路RTを示す情報と、はブロッキングコントローラBCに送信されなくてもよい。また、ステップS06及びS07は、省略可能である。
【0080】
ステップS08において、ブロッキングコントローラBCは、ブロッキング制御部42により、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間Bについてブロッキングを行う。ブロッキング制御部42は、通行経路RTに対応する複数のマス目Cの全部について同時又はほぼ同時にブロッキングを行う。ブロッキング制御部42は、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間Bについて、すべての走行車Vの進入を禁止するブロッキングを行う。この際、ブロッキング制御部42は、上記許可としたブロッキング区間Bについての通過許可を与えている走行車Vに対しても、上記許可としたブロッキング区間Bについて進入を禁止するように制御を行う。上記のようにブロッキングコントローラBC(コントローラTC)が通行経路RTに対応する複数のマス目Cの全部について同時又はほぼ同時にブロッキングを行う構成の場合、作業者Uの通行経路RTの全部に対して走行車Vの進入を規制するため、確実に作業者Uの通行経路RTを確保できる。なお、ブロッキング制御部42は、作業用端末UTによる通過許可要求についてのブロッキングを行うことを示す情報を搬送コントローラFCに送信し、搬送コントローラFCは、作業用端末UTによる通過許可要求についてのブロッキングを行うことを示す情報を考慮した搬送指令を生成する構成としてもよい。
【0081】
ステップS08において、ブロッキングコントローラBCによりブロッキングが行われた後、作業者Uは、
図9に示すように、作業用端末UTを所持した状態で軌道Rの下方に設けられた足場部65に進入し、足場部65上を移動して目的地Qに向かう。この間、作業者Uの上方に走行車Vが走行しないように制御されるため、作業者Uの安全が確保される。例えば、
図7に示すように、走行車VがブロッキングコントローラBCに対してブロッキング区間Bに進入するための通過許可要求を送信した場合(ステップS09)、ブロッキングコントローラBCは、通過許可を出さず、走行車Vはブロッキング区間Bの外側で停止する。また、ブロッキングコントローラBCは、ステップS08に続いて、作業用端末UTに対して、ブロッキング情報を含む通過許可要求応答を送信する(ステップS10)。出力制御部55は、受信した通過許可要求応答に含まれるブロッキング情報に基づいて表示部48aの画像を更新する(ステップS11)。ステップS11において、出力制御部55は、例えば、表示部48aに表示されるブロッキングコントローラBCによるブロッキングが行われたマス目Cについての画像を、ブロッキング許可済みの状態であることを示す画像に更新する(
図23、
図24参照)このように、作業用端末UTが、通行経路RTに対応するマス目Cのうち、ブロッキング区間Bに設定されているマス目Cに関するブロッキング情報を出力する出力部48(表示部48a)を備える構成では、出力部48からの出力によってブロッキング区間Bに設定されているマス目Cを作業者Uに通知することができる。本実施形態の作業用端末UTでは、作業者Uは、表示部48aに表示された画像を見ながら、目的地Qまで容易に到達できる。
【0082】
作業者Uが目的地Qに到達し、修理又はメンテナンスが完了した後、作業者Uは目的地Qから足場部65を経由して軌道Rの外部に戻る。この場合の軌道Rの外部に戻る通行経路RTは、目的地Qに向かう場合と同一の通行経路RTに設定することができる。ブロッキング制御部42は、作業者Uが目的地Qに向かう場合と同様に、マス目C46、C47、C56、C57、C51~C55に対してブロッキングを行う。このブロッキングにより、作業者Uは、往路と同一の通行経路RTで軌道Rの外部に安全に戻ることができる。
【0083】
作業者Uが軌道Rの外部に戻った後、例えば、作業者Uは作業用端末UTの入力部46を操作することにより、ブロッキングコントローラBCに対して解除要求を送信可能である(ステップS12)。
図10に示す例の場合、解除要求は、マス目C46、C47、C56、C57、C51~C55についてのブロッキングを解除する要求である。ステップS13において、出力制御部55は、ブロッキングコントローラBCに送信した解除要求に基づいて、表示部48aの画像を更新する。出力制御部55は、表示部48aに表示される解除要求を送信したマス目Cについての画像を、解除要求中の状態であることを示す画像に更新する。
【0084】
ブロッキングコントローラBCのブロッキング制御部42は、作業用端末UTからの解除要求に基づいて、ブロッキングの解除決定を行う(ステップS14)。ステップS14により、
図10に示すように、マス目C46、C47、C56、C57、C51~C55がブロッキング区間Bではなくなる。ステップS14でのブロッキングの解除の後、ステップS15において、ブロッキングコントローラBCは、ブロッキング解除情報を含む解除要求応答を作業用端末UTに送信する。ブロッキング解除情報は、例えば、ブロッキングが解除されたブロッキング区間B(マス目C)を示す情報を含む、更新されたブロッキング情報である。
【0085】
作業用端末UTは、ブロッキングコントローラBCから解除要求応答を受信すると、ステップS16において、出力制御部55は、ブロッキングコントローラBCから受信した解除要求応答に含まれるブロッキング解除情報に基づいて、表示部48aの画像を更新する。ステップS16において、作業用端末UTは、表示部48aに表示されるブロッキングが解除されたマス目Cについての画像を、通過許可要求・解除要求なしの状態を示す画像に更新する(
図23、
図24参照)。上記のようにブロッキングが解除された際に、作業用端末UTから出力(表示)されるブロッキング情報が更新されるので、作業者Uはブロッキングが行われているブロッキング区間Bを把握することができる。
【0086】
ステップS16の後、ブロッキングコントローラBCは、通過許可要求が許可されずに待機している走行車Vに対して、通過許可を示す通過許可要求応答の送信を行うことができる(ステップS17)。その後、ブロッキングコントローラBCからの通過許可を得た走行車Vは、ブロッキングが解除されたマス目C46、C47、C56、C57、C51~C55に進入可能となる(ステップS18)。
【0087】
なお、仮にステップS09の通過許可要求、ステップS04の通過許可要求の順で要求が受信された場合、ブロッキングコントローラBCは、ステップS10の通過許可要求応答よりも先に、ステップS17の通過許可要求応答を走行車Vに送信する。走行車Vが通過許可の対象であるマス目Cを通過した後に、ブロッキングコントローラBCは、ステップS10の通過許可要求応答を作業用端末UTに送信する。すなわち、作業用端末UTよりも先に走行車Vから通過許可要求が受信された場合、走行車Vの通行が優先される。
【0088】
図11は、本実施形態に係る作業用補助具70の一例を示す図である。
図11において矢印で示す図は、交差部R3を拡大した図である。作業用補助具70は、作業者Uを補助する器具である。作業用補助具70は、作業者Uを支持可能である(
図4参照)。作業用補助具70は、走行車Vが走行する軌道Rに沿って移動可能である。作業用補助具70は、上方部分71と、連結部分72と、下方部分73と、を備える。
【0089】
上方部分71は、作業用補助具70における上方の位置に配置される。上方部分71は、作業用補助具70の使用時に、軌道Rよりも上方に位置する。上方部分71は、軌道Rに支持される車輪76を有する。車輪76は、作業用補助具70における両端部(
図11では+X側の端部及び-X側の端部)に、一対設けられる。車輪76は、一対の第1軌道R1又は一対の第2軌道R2により支持されるように一対設けられる。連結部分72は、上方部分71と下方部分73とを連結する。連結部分72は、間隙GP(
図1参照)を通過可能に設けられる。下方部分73は、作業用補助具70の使用時に、軌道Rの下方に位置する。
【0090】
下方部分73は、本体部77と、作業者Uが把持する把持部78及び作業者Uが装着する安全帯SBを取り付け可能な安全帯取り付け部79と、を備える。本体部77は、作業用補助具70の各部を支持する。本体部77は、X方向に沿って配置される。本体部77において、X方向における両端部は、各連結部分72の下端に接続される。本体部77は、一対の車輪76同士の間に架け渡されている。把持部78は、本体部77の下方に配置される。把持部78は、本体部77を介して、一対の車輪76同士の間に架け渡されている。本実施形態において、作業用端末UTは、作業用補助具70に取り付け可能である。本体部77の-Y側端部には、作業用端末UTを装着する装着部が設けられ、作業用端末UTが装着されている。この構成により、作業者Uは、作業用端末UTを手で持つことなしに、作業用端末UTを確認することが可能となっている。このように、作業者Uにより軌道Rを走行可能な作業用補助具70をさらに備え、作業用端末UTが、作業用補助具70に取り付け可能である構成では、作業用端末UTを作業用補助具70に取り付けることにより、作業者Uが作業用端末UTを手で持つ必要がなく、容易に作業用端末UTを視認することができる。なお、作業用補助具70は、軌道Rを走行(移動)可能であれば、上記の構成に限定されず、他の構成でもよい。例えば、作業用補助具70は、車輪76を備えずに、軌道Rに支持されて軌道R上をスライド移動する構成でもよいし、作業者Uが把持する把持部78及び作業者Uが装着する安全帯SBを取り付け可能な安全帯取り付け部79の少なくとも一方がなくてもよい。
【0091】
作業用補助具70を用いた走行車システムSYSの動作の例を、
図12から
図20に示す例に基づいて説明する。
図12は、走行車システムの動作の他の例を示すシーケンス図である。
図13から
図20は、作業用補助具70を用いた走行車システムSYSの動作の例を示す図である。なお、
図12の説明において、
図7に示した符号と同一の符号を付したステップについては、上述の
図7の説明と同様であるため、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0092】
図12から
図20に示す例では、故障等により走行車Vが軌道Rにおいて停止している場合、又は軌道Rの一部をメンテナンスする場合等、
図13に示すように、ブロッキング区間決定部52は、目的地Qを含む4つのマス目C46、C47、C56、C57、及び、進入部EP(出入口)となるマス目C51について、ブロッキング区間Bを設定する。通過許可要求部53は、設定されたブロッキング区間Bについての通過許可要求をブロッキングコントローラBCに送信する。出力制御部55は、通過許可要求に基づいて、表示部48aに表示される画像を更新する。ブロッキングコントローラBCは、ブロッキング制御部42により、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間B(マス目C51(進入部EP)及びマス目C46、C47、C56、C57(目的地Q))についてブロッキングを行う。ブロッキングコントローラBCは、作業用端末UTに対して、ブロッキング情報を含む通過許可要求応答を送信する。出力制御部55は、受信した通過許可要求応答に含まれるブロッキング情報に基づいて、表示部48aに表示される画像を更新する。
【0093】
その後、作業者Uが軌道Rの下部の足場部65に進入する際、
図13に示すように、作業者Uは、ブロッキングが行われている進入部EPのマス目C51から進入する。作業用端末UTは、位置情報を取得する(
図12のステップS01)。ステップS01において、位置情報検出部49は、作業用端末UTの現在位置情報を取得する。続いて、ブロッキング区間決定部52は、取得した位置情報に基づいて、作業者Uの通行経路RTを算出する(ステップS02)。ステップS03aにおいて、作業用端末UTは、ブロッキング区間Bを決定する。例えば、ブロッキング区間決定部52は、
図14に示すように、作業用端末UTが配置されるマス目C51と、マス目C51よりも進行方向の下流側(進行方向側)の複数のマス目C(例えば、C52、C53)に対してブロッキング区間Bを設定する。
【0094】
通過許可要求部53は、ブロッキング区間決定部52により設定されたブロッキング区間Bについての通過許可要求をブロッキングコントローラBCに送信する(ステップS04)。出力制御部55は、ブロッキングコントローラBCに送信した通過許可要求に基づいて、表示部48aに表示される通過許可要求を送信したマス目Cについての画像を、通過許可要求中の状態であることを示す画像に更新する(ステップS05)。
【0095】
ステップS06において、ブロッキングコントローラBCは、作業用端末UTから送信された作業用端末UTの現在位置情報を受信する。ステップS07において、ブロッキングコントローラBCは、作業用端末UTから送信された通行経路RTを示す情報を受信する。なお、上述したとおりステップS06及びS07は、省略可能である。ステップS08において、ブロッキングコントローラBCは、ブロッキング制御部42により、作業用端末UTから通過許可要求を受けたブロッキング区間B(マス目C52、C53)についてブロッキングを行う。走行車Vが、ブロッキング区間Bに進入するための通過許可要求をブロッキングコントローラBCに対して送信した場合(ステップS09)、ブロッキングコントローラBCは通過許可を出さず、その結果、走行車Vは上記のブロッキング区間Bの外側で停止する。ステップS10において、ブロッキングコントローラBCは、作業用端末UTに対して、ブロッキング情報を含む通過許可要求応答を送信する。ステップS11において、作業用端末UTは、受信した通過許可要求応答に含まれるブロッキング情報に基づいて、表示部48aに表示されるブロッキングが行われたマス目Cについての画像を、ブロッキング許可済みの状態であることを示す画像に更新する(ステップS11)。
【0096】
作業用端末UTは、ブロッキングコントローラBCに対して解除要求を送信する(ステップS12a)。ステップS12aにおいて、解除要求部54は、ブロッキング区間Bに設定されているマス目Cのうち、現在位置に対応するマス目C以外の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除する解除要求をブロッキングコントローラBCに送信する。
図12から
図20に示す例において、解除要求部54は、作業用端末UTから送信された現在位置に基づいて、通行経路RTに対応するマス目Cのうち、作業者Uが通行した後の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除する解除要求をブロッキングコントローラBCに送信する。この構成の場合、解除要求部54は、
図13及び
図14に示すシステムの状態では、解除要求の送信を行わず、後に説明する
図15から
図19に示す状態の場合において、解除要求の送信を行う。なお、解除要求部54は、作業用端末UTから送信された現在位置から遠い順に、マス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除する解除要求を送信する構成としてもよい。また、ステップ
S12aにおける上記解除要求の送信は、作業者Uが手動で、解除要求を行うブロッキング区間Bを設定し、ブロッキングコントローラBCに送信する構成でもよい。
【0097】
ステップS12aにおける解除要求の送信後、作業用端末UTは、ブロッキングコントローラBCに送信した解除要求に基づいて、表示部48aに表示される解除要求を送信したマス目Cについての画像を、解除要求中の状態であることを示す画像に更新する(ステップS13)。
【0098】
ステップS14において、ブロッキングコントローラBCのブロッキング制御部42は、作業用端末UTからの解除要求に基づいて、ブロッキングの解除決定を行う。ステップS15において、ブロッキングコントローラBCは、ブロッキング解除情報を含む解除要求応答を作業用端末UTに送信する。
【0099】
ステップS16において、作業用端末UTは、ブロッキングコントローラBCから受信した解除要求応答に含まれるブロッキング解除情報に基づいて、表示部48aに表示する画像を、ブロッキングが解除されたマス目Cについて解除済みの状態であることを示す画像に更新する。
【0100】
ステップS16の後、ブロッキングコントローラBCは、通過許可要求が許可されずに待機している走行車Vに対して、通過許可を示す通過許可要求応答の送信を行う(ステップS17)。ブロッキングコントローラBCからの通過許可を得た走行車Vは、ブロッキングが解除されたマス目Cに進入可能となる(ステップS18)。
【0101】
ステップS19において、作業用端末UTは、取得した現在位置情報に基づいて、作業者Uが目的地Qに到達したか否かを判定する。ステップS19において、作業用端末UTが、目的地Qに到達していないと判定した場合(ステップS19のNO)、ステップS01に戻り、作業用端末UTは、位置情報を取得する。ステップS19において、作業用端末UTが目的地Qに到達したと判定した場合(ステップS19のYES)、
図12に示す一連の処理(ステップS01~S1
9)が完了する。
【0102】
すなわち、
図12に示す一連の処理(ステップS01~S1
9)は、作業者Uが目的地Qに到達するまで繰り返して行われる。
【0103】
作業者Uは、
図13に示した状態の後、作業者Uは、作業用補助具70を把持しつつ、目的地Qまでの通行経路RTとなるマス目C52~C55までを移動する。作業者Uが移動すると、作業用端末UTから送信される位置情報が変化する。作業用端末UTの位置が移動(変化)する場合、ブロッキング区間決定部52は、作業用端末UTが配置されるマス目Cを含む複数のマス目Cに対してブロッキング区間Bを設定する。また、この場合、解除要求部54がブロッキング区間Bに設定されているマス目Cのうち、現在位置に対応するマス目C以外の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除する解除要求をブロッキングコントローラBCに送信し、ブロッキングコントローラBCのブロッキング制御部42は、受信した解除要求に基づいてブロッキングを解除する。
【0104】
なお、上記のブロッキングの解除は、ブロッキングコントローラBCのブロッキング制御部42が、作業用端末UTから送信された現在位置に基づいて、通行経路RTに対応するマス目Cのうち、作業者Uが通行した後の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除することにより行われてもよい。また、この構成の場合、ブロッキング制御部42は、作業用端末UTから送信された現在位置から遠い順に、マス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除するようにしてもよい。
【0105】
作業者Uが移動した場合における
図12に示す動作シークエンスを説明する。作業者Uが移動した場合においても、上記した
図12に示すステップS01からS19を同様に行う。なお、上記した
図12に示すステップS01からS19のうち必要のないステップについては行わなくてもよい。
【0106】
例えば、
図15に示すように、作業者Uが移動して、作業用端末UTがマス目C53に配置された場合、
図12のステップS01において、作業用端末UTは、位置情報を取得する。続いて、ステップS02において、ブロッキング区間決定部52は、取得した位置情報に基づいて、作業者Uの通行経路RTを算出する。なお、通行経路RTの算出がすでに完了している場合、ステップS02は行われない。
【0107】
ステップS03において、ブロッキング区間決定部52は、作業用端末UTの現在位置であるマス目C53と、マス目C53の進行方向の上流側及び下流側のマス目C52、C54と、に対してブロッキング区間Bを設定する。通過許可要求部53は、通過許可要求をブロッキングコントローラBCに送信する(ステップS04)。ステップS04に続いて、上記した
図12のステップS05からS09が同様に行われ、作業用端末UTが通過許可要求を送信したブロッキング区間B(マス目C52、C53、C54)についてブロッキングが行われる。続いて、上記したステップS10、S11が同様に行われる。なお、ステップS02において通行経路RTが算出しない場合、ステップS07の通行経路RTを示す情報の取得は行われない。
【0108】
続いて、ステップS12aにおいて、通行経路RTに対応するマス目Cのうち、作業者Uが通行した後の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキング区間Bの設定を解除する解除要求をブロッキングコントローラBCに送信する。
図15に示すシステムの状態の場合、マス目C51についてのブロッキングを解除する解除要求をブロッキングコントローラBCに送信する。続いて、上記した
図12に示すステップS13からS19が同様に行われる。その結果、マス目C51のブロッキングが解除され、ブロッキングコントローラBCから通過許可を得た走行車Vが進入可能となる(以下「走行車Vが進入可能」と略す)。
【0109】
図15に示すシステムの状態の後、
図16に示すように、作業者Uがさらに移動して、作業用端末UTがマス目C54に配置される。
図16に示すシステムの状態においても、上記した
図12に示すステップS01からS19が同様に行われる。
図16に示すシステムの状態の場合、作業用端末UTが現在位置情報を取得し(ステップS01)、ブロッキング区間決定部52が、マス目C54と、このマス目C54の進行方向の上流側及び下流側のマス目C53、C55と、に対してブロッキング区間Bを設定し(ステップS03a)、ブロッキングコントローラBCによりマス目C53~C54がブロッキングされる(ステップS08)。この場合、マス目C52については解除要求部54からの解除要求により(ステップS12a)、ブロッキングが解除され(ステップS14)、走行車Vが進入可能となる(ステップS18)。
【0110】
図16に示すシステムの状態の後、
図17に示すように、作業者Uがさらに移動して、作業用端末UTが目的地Qの周辺のマス目C56に到達する。
図17に示すシステムの状態の場合においても、上記した
図12に示すステップS01からS19を同様に行うが、必要のないステップについては行わない。
図17に示すシステムの状態の場合、作業用端末UTが現在位置情報を取得し(ステップS01)、ブロッキングコントローラBCに作業用端末UTの位置情報が送信される。ステップS03aのブロッキング区間Bの決定、ステップS04の通過許可要求の送信、ステップS08のブロッキングは行わない。続いて、解除要求部54が、通行経路RTとなったマス目C51~C55についての解除要求をブロッキングコントローラBCに送信することにより(ステップS12a)、マス目C53~C55についてのブロッキングが解除される(ステップS14)。この場合、マス目C53~C55については、走行車Vが進入可能となる(ステップS18)。続いて、ステップS19において、作業用端末UTは、目的地Qに到達したと判定し(ステップS19のYES)、
図12に示すステップS01からS19のフローが終了する。
【0111】
なお、ブロッキング区間決定部52は、
図15及び
図16に示した例等の場合、作業用端末UTが配置されるマス目Cと、作業用端末UTが配置されるマス目Cの進行方向の上流側及び下流側のマス目Cと、作業用端末UTが配置されるマス目Cに対して進行方向と直交する側に隣接するマス目Cと、をブロッキング区間Bに設定してもよい。
【0112】
作業者Uが目的地Qに到達し、修理又はメンテナンスが完了した後、
図18に示すように、作業者Uは、目的地に向かう場合と同一の通行経路RTを経由して軌道Rの外部に戻る。この場合、上記した
図12に示すステップS01からS19を同様に行う。例えば、作業者Uの移動により作業用端末UTが目的地Qの周辺の4つのマス目C46、C47、C56、C57から出た場合、解除要求部54が4つのマス目C46、C47、C56、C57のブロッキングの解除を要求するとともに(ステップS12a)、ブロッキング区間決定部52は、作業用端末UTが存在するマス目Cと、このマス目Cの進行方向の上流側及び下流側のマス目Cに対してブロッキング区間Bを設定する(ステップS03a)。
【0113】
例えば、
図18に示すように、作業用端末UTがマス目C54に配置される場合、ブロッキング区間決定部52は、マス目C54と、このマス目C54の進行方向の上流側及び下流側のマス目C53、C55と、に対してブロッキング区間Bを設定する(ステップS03a)。この場合、目的地Qの周辺のマス目C46、C47、C56、C57については、解除要求部54による解除要求(ステップS12a)により、ブロッキングが解除され(ステップS14)、走行車Vが進入可能となる(ステップS18)。
【0114】
例えば、
図19に示すように、作業用端末UTがマス目C52に配置される場合、ブロッキング区間決定部52は、マス目C52と、このマス目C52の進行方向の上流側及び下流側のマス目C51、C53と、に対してブロッキング区間Bを設定する(ステップS03a)。この場合、マス目C54、C55については、解除要求部54による解除要求により(ステップS12a)、ブロッキングが解除され(ステップS14)、走行車Vが進入可能となる(ステップS18)。
【0115】
また、例えば作業用端末UTが出入口のマス目C51に到達した場合、ブロッキング区間決定部52は、マス目C51に対してのみブロッキング区間Bを設定する(ステップS03a)。その後、作業者Uが軌道Rの外部に戻り、作業用端末UTが軌道Rの外部に配置される場合、解除要求部54は、
図20に示すように、マス目C51のブロッキングの解除を要求し(ステップS12a)、ブロッキングは解除される(ステップS14)。この場合、マス目C51については、走行車Vが進入可能となる(ステップS19)。
【0116】
このように、ブロッキングコントローラBCが、作業用端末UTから送信された現在位置を示す特定情報に応じて、ブロッキングを行うマス目Cを変更することにより、ブロッキングを行うマス目Cを少なくして、走行車Vが進入できないマス目Cを減らすことができる。また、上述のように、作業用端末UTが、ブロッキングが行われているマス目Cのうち、現在位置に対応するマス目C以外の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキングを解除する解除要求をブロッキングコントローラBCに送信可能である構成では、走行車Vの進入を規制する必要がないマス目Cについて、早期に走行車Vの進入を可能とすることができる。また、上述のように、ブロッキングコントローラBCが、作業用端末UTから送信された現在位置を示す特定情報に基づいて、通行経路RTに対応するマス目Cのうち、作業者Uが通行した後の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキングを解除する構成では、走行車Vの進入を規制する必要がないマス目Cについてコントローラにより自動的に走行車Vの進入を可能とすることができる。また、上述のように、ブロッキングコントローラBCが、作業用端末UTから送信された現在位置から遠い順に、マス目Cに対するブロッキングを解除する構成では、作業用端末UTを所持する作業者Uから離れたマス目Cについて走行車Vの進入を可能とすることができる。
【0117】
なお、
図12から
図20では、作業用補助具70を用いた走行車システムSYSの動作の例を示したが、
図12から
図20の例は、作業用補助具70を用いずに実施してもよい。
【0118】
図21及び
図22は、作業用補助具の他の例を示す図である。
図21及び
図22に示すように、本実施形態の作業用補助具70Aは、上方部分71Aと、連結部分72Aと、下方部分73Aと、を備えている。上方部分71A、連結部分72A、及び、下方部分73Aは、それぞれ、上記した作業用補助具70の上方部分71、連結部分72、下方部分73に対応し、これらの構成の一部を含む。なお、以下の説明では、上方部分71A、連結部分72A、及び、下方部分73Aにおいて、作業用補助具70の上方部分71、連結部分72、下方部分73と異なる部分を中心に説明するが、作業用補助具70の上方部分71、連結部分72、下方部分73と同様の構成については、その説明を適宜省略又は簡略化する。
【0119】
作業用補助具70Aは、4つの車輪82を備える。各車輪82は、旋回軸AX6を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。各車輪82の走行方向の前後に設けられた補助車輪83も、車輪82と共に旋回軸AX6を中心としてθZ方向に旋回するように設けられる。各車輪82は、方向転換機構85によってθZ方向に旋回し、その結果、作業用補助具70Aの走行方向を変更することができる。方向転換機構85は、手動による機構でもよいし、走行車Vの方向転換機構34と同様の機構でもよい。
【0120】
作業用補助具70Aは、下方部分73Aから垂下され、下方部分73Aより下方の内部空間SPを囲み、水平方向における外側の空間に対して内部空間SPを仕切る仕切り体87を備える。内部空間SPには、作業者Uが入ることが可能である。仕切り体87は、内部空間SPを拡張又は収縮するために水平方向に移動可能である。また、本実施形態の作業用補助具70Aは、仕切り体87が、折り畳み可能であり、平面視において軌道Rにおける1つのマス目Cに収まる収容状態と、平面視において1つのマス目Cよりも大きい領域を囲む展開状態との間で移動可能である。上記の構成により、作業者Uが利用するスペースを容易に変更することができる。
【0121】
下方部分73Aには、作業用端末UTを装着する装着部が設けられ、作業用端末UTが装着される。作業者Uは、作業用端末UTを作業用補助具70Aに取り付けることにより、作業者Uが作業用端末UTを手で持つ必要がなく、容易に作業用端末UTを視認することができる。
【0122】
図23及び
図24は、作業用端末UTの一例を示す図である。作業用端末UTは、出力制御部55の制御により、ブロッキング情報を表示部48aに表示する際、ブロッキング区間Bに設定されているマス目Cを表す表示と、ブロッキング区間Bに設定されていないマス目Cとを表す表示とが異なるように表示させる。作業用端末UTは、ブロッキング情報を表示部48aに表示する際、例えば
図23に示すように、作業用端末UTは、作業用端末UTの現在位置を表す枠F1を表示し、ブロッキング区間Bに設定されているマス目Cについては進入禁止の交通標識を模したマークM1を表示し、ブロッキング区間Bに設定されていないマス目Cについては丸印のマークM2、進行方向を示す矢印のマークM3を表示することができる。
【0123】
また、
図24に示すように、作業用端末UTは、作業用端末UTの現在位置となる枠F2を表示し、ブロッキング区間Bに設定されているマス目Cについては、ハッチングされた枠F3を表示することができる。また、現在位置を表す枠F2の内側に、進行方向を示す矢印のマークM3を表示することができる。
図23及び
図24に示すように、出力部48が通行経路RTにおいてブロッキング区間Bに設定されているマス目Cを表示可能な表示部48aである構成では、作業者Uは、表示部48aを見ることによりブロッキング区間Bに設定されているマス目Cを容易に認識できる。
【0124】
また、作業用端末UTは、出力制御部55の制御により、マス目Cを表す画像を表示部48aに表示する際、マス目Cのブロッキング制御の状態に応じて、表示形態を変更する。作業用端末UTは、マス目Cを表示部48aに表示する際、マス目Cのブロッキング制御の状態を示す表示形態で表示させる。例えば、作業用端末UTは、マス目Cにおけるブロッキング制御の状態に応じて、マス目Cに表示する図形(例、マークM1、M2)が異なるように表示させてもよいし、マス目Cの色、模様が異なるように表示させてもよい。
【0125】
例えば、作業用端末UTにおいて、
図23に示すようにマス目Cにおけるブロッキング制御の状態をマス目Cを示す画像の上に図形(マークM1、M2)で表す構成の場合、マス目Cにおけるブロッキング制御の状態を、通過許可要求・解除要求なしの状態であることを図形の表示なしで表し、通過許可要求中の状態(ステップS05)であることを三角形で表し、ブロッキング許可済の状態(ステップS11)であることを円形で表し、解除要求中の状態(ステップS13)であることを四角形で表してもよい。
【0126】
例えば、作業用端末UTにおいて、
図24に示すようにマス目Cにおけるブロッキング制御の状態をマス目Cを示す画像の形態で表す構成、又は、マス目Cにおけるブロッキング制御の状態をマス目Cを示す画像の色で表す場合、マス目Cにおけるブロッキング制御の状態を、通過許可要求・解除要求なしの状態であることを無色で表し、通過許可要求中の状態(ステップS05)であることを赤色で表し、ブロッキング許可済の状態(ステップS11)であることを青色で表し、解除要求中の状態(ステップS13)であることを黄色で表してもよい。
【0127】
上記のように、作業用端末UTがマス目Cのブロッキング制御の状態に応じて、表示形態を変更する構成を備える場合、作業者Uは、表示部48aを見ることによりマス目Cに関するブロッキング制御の状態を容易に認識できる。
【0128】
以上のように、本実施形態の走行車システムSYSは、格子状の軌道Rと、軌道Rを走行する走行車Vと、走行車Vと通信可能であり、走行車Vを制御するコントローラTCと、現在位置を示す特定情報をコントローラTCに送信する作業用端末UTと、軌道Rの下方に軌道Rから垂下して設けられ、作業用端末UTを所有する作業者Uが軌道Rの下方を通行するための足場部65と、を備え、走行車Vは、コントローラTCから軌道における1以上のマス目Cに対応する進入許可が得られた場合にはマス目Cに進入し、進入許可が得られない場合には1以上のマス目Cに進入せず、コントローラTCは、足場部65への進入部EP(例、マス目C51)から目的地Qまでの作業者Uによる通行経路RTに対応する複数のマス目Cのうち、少なくとも作業用端末UTから送信された特定情報によって示される現在位置に対応するマス目Cについて、走行車Vに対して進入許可を与えないブロッキング区間Bに設定する。
【0129】
この構成によれば、コントローラTCが取得した作業用端末UTの現在位置に基づいて、作業用端末UTを所持する作業者Uが存在するマス目Cをブロッキング区間Bに設定するので、このマス目Cに走行車Vが進入すること規制しつつ、他のマス目Cについては走行車Vの進入を許容することができる。その結果、作業者Uによる通行経路RTを確保しつつ、全ての走行車Vを停止させる必要がないので物品Mの搬送効率が低下するのを抑制することができる。
【0130】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態等で説明した態様に限定されない。上述の実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0131】
上記した実施形態では、第1軌道R1(第1方向D1)と第2軌道R2(第2方向D2)とが交差(直交)する軌道Rを例に挙げて説明しているが、この構成に限定されない。例えば、軌道Rは、第1軌道R1と第2軌道R2とが交差(直交)しない形態であってもよい。また、第1軌道R1と第2軌道R2とが交差する軌道Rである形態に限定されず、軌道Rとしては、例えば、第1軌道R1の端部から折れ曲がった状態で第2軌道R2が配置される形態であってもよい。
【0132】
なお、上記した実施形態では、走行車Vが一対の第1軌道R1又は一対の第2軌道R2を走行する格子状の軌道Rの例を示したが、軌道Rはこの構成に限定されない。例えば、軌道R(第1軌道R1、第2軌道R2)は、走行車Vが1つの軌道により走行するモノレール形式の軌道であってもよい。
【0133】
なお、上記した実施形態では、作業用端末UTがブロッキング区間決定部52を備える例を説明したが、ブロッキング区間決定部52は、ブロッキングコントローラBCに設けられてもよい。この構成の場合、ブロッキング区間決定部52は、作業用端末UTの現在位置を示す特定情報を作業用端末UTから受信し、受信した特定情報に基づいてブロッキング区間Bを決定してもよい。
【0134】
なお、上記した実施形態では、作業用端末UTが解除要求部54を備える例を説明したが、解除要求部54は備えられなくてもよい。例えば、ブロッキングコントローラBCは、作業用端末UTの現在位置を示す特定情報を作業用端末UTから受信し、受信した特定情報に基づいて、ブロッキングが行われているマス目Cのうち、作業用端末UTの現在位置に対応するマス目C以外の少なくとも1つのマス目Cに対するブロッキングを解除してもよい。
【0135】
なお、上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2019-169527、及び、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0136】
B・・・ブロッキング区間
C、C1~C60・・・マス目
M・・・物品
BC・・・ブロッキングコントローラ
FC・・・搬送コントローラ
R・・・軌道
R1・・・第1軌道
R2・・・第2軌道
R3・・・交差部
EP・・・進入部
Q・・・目的地
RT・・・通行経路
TC・・・コントローラ
U・・・作業者
UT・・・作業用端末
V・・・走行車
VC・・・車載コントローラ
SYS・・・走行車システム
41・・・通信部
42・・・ブロッキング制御部
46・・・入力部
47・・・通信部
48・・・出力部
48a・・・表示部
49・・・位置情報検出部
52・・・ブロッキング区間決定部
53・・・通過許可要求部
54・・・解除要求部
55・・・出力制御部
60・・・保管部
65・・・足場部
70、70A・・・作業用補助具