(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】手持ち式動力機器
(51)【国際特許分類】
E04G 21/08 20060101AFI20231108BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20231108BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20231108BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20231108BHJP
B06B 1/16 20060101ALI20231108BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/247 20210101ALI20231108BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
E04G21/08
B25F5/00 H
B25F5/00 G
B25F5/02
B06B1/04 Z
B06B1/16
H01M50/244 Z
H01M50/247
H05K5/03 D
(21)【出願番号】P 2021554841
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036450
(87)【国際公開番号】W WO2021090605
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2019202086
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020041620
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 伴義
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 なつ美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 高史
(72)【発明者】
【氏名】平塚 翔太
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010835(JP,A)
【文献】特開2001-269874(JP,A)
【文献】特開2003-266334(JP,A)
【文献】特開平11-333763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/06-21/08
B25F 1/00- 5/02
B06B 1/04
B23B 45/02
B23D 45/16
B24B 23/00-23/08
B25B 21/00-21/02
B25D 11/00-11/12
B25D 17/00-17/32
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷部と、
前記負荷部の動作を切り替えるために作業者に操作される操作部と、
前記負荷部を収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記負荷部の駆動源となる電池パックを着脱可能な電池パック装着部と、
前記操作部及び前記電池パック装着部に装着された電池パックを覆うことが可能なカバーと、を備え、
前記操作部は、前記電池パック装着部に電池パックを装着した状態で操作可能に構成され、
前記カバーは、前記ハウジングに対して開閉可能に支持され、前記カバーの閉状態において、前記カバーは前記操作部及び前記電池パック装着部に装着された電池パックを覆うよう構成されている、手持ち式動力機器。
【請求項2】
前記カバーは、前記カバーを前記ハウジングに対して閉状態で係止するラッチ機構により、前記ハウジングに対して開閉可能に構成される、請求項1に記載の手持ち式動力機器。
【請求項3】
前記カバーの形状を矯正することの可能な矯正部を有し、
前記矯正部は、前記カバー、前記
電池パック装着部、前記電池パック、又は、前記電池パック
装着部に装着したアダプタと接触することで前記カバーの形状を矯正する、請求項1又は2に記載の手持ち式動力機器。
【請求項4】
前記
矯正部の矯正力は、前記カバーを外側方向に向けて押圧する方向に作用する力である、請求項3に記載の手持ち式動力機器。
【請求項5】
前記カバーに、開閉可能な可動部が設けられ、
前記電池パック装着部に前記電池パックを装着する場合、前記可動部は閉状態で使用可能であり、
前記可動部の開状態において、前記電池パック装着部に装着し
たアダプタから延びるコードを前記カバー外に延出させる開口部が形成される、又は、前記可動部の装着状態において、前記電池パック装着部に装着したアダプタから延びるコードを前記カバー外に延出させる開口部が形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の手持ち式動力機器。
【請求項6】
前記コードと前記可動部及び前記カバーの少なくとも一方との係合部がインロー構造を成す、請求項5に記載の手持ち式動力機器。
【請求項7】
前記
ハウジングは、前記電池パック装着部から上方に延びるハンドル部を有し、
前記可動部の開状態において、前記可動部の上端が、前記ハンドル部の下端と同じ高さかそれよりも下に位置する、請求項5又は6に記載の手持ち式動力機器。
【請求項8】
前記負荷部は、ブラシレスモータであり、ステータと、前記ステータに対して回転可能なロータと、前記ステータに設けられたコイルと、を有し、
前記ブラシレスモータの回転を制御する制御部を備え、
前記操作部は、ユーザの操作により前記ブラシレスモータの回転速度を切替えるスイッチを有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の手持ち式動力機器。
【請求項9】
前記制御部は、前記ブラシレスモータに加わる負荷が所定範囲の場合に前記負荷に関わらず前記ブラシレスモータの回転速度を維持する定速度制御を行う、請求項8に記載の手持ち式動力機器。
【請求項10】
生コンクリート内に挿入されて前記負荷部によって振動する先端工具を有する、コンクリートバイブレータであって、
前記制御部は、外部操作に応じて前記ブラシレスモータの回転速度を変更可能である、請求項8または9に記載の手持ち式動力機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートバイブレータ等の手持ち式動力機器に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等における生コンクリートの打込み作業や締固め作業に、コンクリートバイブレータが用いられる。下記特許文献1は、バッテリ式のコンクリートバイブレータを開示する。このコンクリートバイブレータは、ハンドルハウジングの下部に充電式のバッテリパッケージを着脱可能に装着する。バッテリパッケージの外側には、バッテリカバーが取り付けられる。バッテリカバーは、ハンドルハウジングの前下端部に回動可能に支持される。バッテリカバーは、ハンドルハウジングの後下端部の鍔部に引っかかる爪を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンクリートバイブレータは、使いやすさの観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、使い勝手の良い手持ち式動力機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、手持ち式動力機器である。この手持ち式動力機器は、
負荷部と、
前記負荷部の動作を切り替えるために作業者に操作される操作部と、
前記負荷部を収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記負荷部の駆動源となる電池パックを着脱可能な電池パック装着部と、
前記操作部及び前記電池パック装着部に装着された電池パックを覆うことが可能なカバーと、を備え、
前記操作部は、前記電池パック装着部に電池パックを装着した状態で操作可能に構成され、
前記カバーは、前記ハウジングに対して開閉可能に支持され、前記カバーの閉状態において、前記カバーは前記操作部及び前記電池パック装着部に装着された電池パックを覆うよう構成されている。
【0007】
前記カバーは、前記カバーを前記ハウジングに対して閉状態で係止するラッチ機構により、前記ハウジングに対して開閉可能に構成されてもよい。
【0008】
前記カバーの形状を矯正することの可能な矯正部を有し、
前記矯正部は、前記カバー、前記電池パック装着部、前記電池パック、又は、前記電池パック装着部に装着したアダプタと接触することで前記カバーの形状を矯正してもよい。
【0009】
前記矯正部の矯正力は、前記カバーを外側方向に向けて押圧する方向に作用する力であってもよい。
【0010】
前記カバーに、開閉可能な可動部が設けられ、
前記電池パック装着部に前記電池パックを装着する場合、前記可動部は閉状態で使用可能であり、
前記可動部の開状態において、前記電池パック装着部に装着したアダプタから延びるコードを前記カバー外に延出させる開口部が形成される、又は、前記可動部の装着状態において、前記電池パック装着部に装着したアダプタから延びるコードを前記カバー外に延出させる開口部が形成されてもよい。
【0011】
前記コードと前記可動部及び前記カバーの少なくとも一方との係合部がインロー構造を成してもよい。
【0012】
前記ハウジングは、前記電池パック装着部から上方に延びるハンドル部を有し、
前記可動部の開状態において、前記可動部の上端が、前記ハンドル部の下端と同じ高さかそれよりも下に位置してもよい。
【0013】
前記負荷部は、ブラシレスモータであり、ステータと、前記ステータに対して回転可能なロータと、前記ステータに設けられたコイルと、を有し、
前記ブラシレスモータの回転を制御する制御部を備え、
前記操作部は、ユーザの操作により前記ブラシレスモータの回転速度を切替えるスイッチを有してもよい。
【0014】
前記制御部は、前記ブラシレスモータに加わる負荷が所定範囲の場合に前記負荷に関わらず前記ブラシレスモータの回転速度を維持する定速度制御を行ってもよい。
【0015】
生コンクリート内に挿入されて前記負荷部によって振動する先端工具を有する、コンクリートバイブレータであって、
前記制御部は、外部操作に応じて前記ブラシレスモータの回転速度を変更可能であってもよい。
【0036】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、使い勝手の良い手持ち式動力機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気機器1の側断面図。
【
図6】
図4の状態からカバー17を開けた電気機器1の上方斜視図。
【
図8】
図6の状態から電池パック4を分離した電気機器1の上方斜視図。
【
図15】カバー17の、可動部25を分離した状態の斜視図。
【
図18】カバー17の、可動部25を閉じた状態の背面図。
【
図20】カバー17の、可動部25を開いた状態の背面図。
【
図22】電気機器1の、電池パック装着部2cにアダプタ27を装着した状態の要部側面図。
【
図27】締固め作業における動力機器1の動作の一例を示すタイムチャート。
【
図28】動力機器1の先端工具10の振動周波数とモータ6のトルクとの関係を示すグラフ。
【
図29】動力機器1におけるトリガスイッチ5の引き量(操作量)に応じた動作の一例を示すタイムチャート。
【
図30】本発明の実施の形態2に係る電気機器のカバー17Aの、可動部25を分離した状態の斜視図。
【
図31】カバー17Aの、可動部25を取り付けた状態の斜視図。
【
図33】実施の形態2に係る電気機器の、電池パック装着部2cにアダプタを装着した状態の要部斜視図。
【
図34】本発明の実施の形態3に係る電気機器のカバー17Bの、可動部25を分離した状態の斜視図。
【
図35】カバー17Bの、可動部25を取り付けた状態の斜視図。
【
図37】実施の形態3に係る電気機器の、電池パック装着部2cにアダプタを装着した状態の要部斜視図。
【
図38】本発明の実施の形態4に係る電気機器のカバー17Cの、可動部25を分離した状態の背面図。
【
図39】実施の形態4に係る電気機器の、電池パック装着部2cにアダプタ27を装着した状態の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0040】
(実施の形態1)
図1~
図25を参照し、本発明の実施の形態1を説明する。本実施の形態は、電気機器1に関する。電気機器1は、コンクリートバイブレータである。
図1及び
図4により、電気機器1における互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。前後方向は、
図3に示すモータ6の回転軸6aの延出方向である。左右方向は、前方向を見た場合を基準に定義する。電気機器1の本体の外殻は、ハウジング2によって構成される。ハウジング2は、例えば左右二分割構造の樹脂成形体である。
【0041】
ハウジング2は、モータ収容部2aと、把持部(ハンドル部)2bと、電池パック装着部2cと、接続部2dと、を含む。ハウジング2は、略D型形状である。把持部2bは、略L字形状であり、前後及び上下方向に延びる。把持部2bのうち上下方向に延びる部分を、作業者が把持する。把持部2bの一端(前端)は、モータ収容部2aに接続される。把持部2bの他端(下端)は、電池パック装着部2cに接続される。接続部2dの一端(上端)は、モータ収容部2aに接続される。接続部2dの他端(下端)は、電池パック装着部2cに接続される。
【0042】
モータ収容部2aは、モータ(電動モータ)6を収容する。把持部2bには、トリガスイッチ5が設けられる。トリガスイッチ5により、作業者はモータ6の駆動、停止を指示可能である。接続部2dの前面には、複数の吸気口2eが設けられる。モータ収容部2aの下面には、複数の排気口2fが設けられる。
図3に示すように、接続部2dの下端部と電池パック装着部2cとの境界付近の内部に、制御基板8が設けられる。電池パック装着部2cには、モータ6の駆動源(電源)となる電池パック4が着脱可能に装着(スライド接続)される。電池パック4は、電動工具に着脱可能なものであることが望ましい。
【0043】
図11に示すように、電池パック装着部2cには、電池パック4の端子部と電気的に接続される端子部3と、電池パック4の装着をガイドするレール部23bと、が設けられる。電池パック装着部2cの下面には、当該下面の左部、前部、右部に跨がるように、U字状の壁部23が設けられる。壁部23は、電池パック装着部2cの下面から下方に延びる。壁部23の左部及び右部の内面(相互対向面)に、内側に向けて突出するレール部23bがそれぞれ設けられる。壁部23の左部及び右部の外面には、矯正部23aがそれぞれ設けられる。矯正部23aは、上下方向に延びるガイド(リブ)である。電池パック装着部2cの下面及び電池パック装着部2cに装着された電池パック4は、後述の開閉可能なカバー17により覆われる。
【0044】
図10及び
図11に示すように、電池パック装着部2cの下面の後端部付近に、操作パネル20が設けられる。操作パネル20もカバー17により覆われる。操作パネル20は、電池パック4と前後方向において重複する位置にある。操作パネル20は、電池パック4の後端部上面と隙間を持って対面する。この隙間を通して、作業者は操作パネル20に対する操作が可能である。電池パック4の後端部上面は、後方ほど下に行くように傾斜している。このため、電池パック4を装着した状態でも、操作パネル20を後方斜め下から見やすく、また操作パネル20に対する操作も行いやすい。
図14に示すように、操作パネル20には、速度(周波数)切替ボタン21と、速度(周波数)表示LED22と、が設けられる。速度切替ボタン21は、作業者がモータ6の定速度制御の回転数、すなわち先端工具10の振動周波数を切り替えるための操作部である。なお、単位時間あたりの回転数、すなわち回転速度を単に「回転数」とも表記する。速度表示LED22は、速度切替ボタン21によって選択されている回転数を表示(作業者に報知)する速度表示部である。速度切替ボタン21により、モータ6の定速度制御の実行有無を切替え可能としてもよい。
【0045】
図3に示すように、負荷部としてのモータ6は、インナーロータ型のブラシレスモータである。モータ6において、回転軸6aの周囲に、回転軸6aと一体に回転する磁性体からなるロータコア6bが設けられる。ロータコア6bには、ロータマグネット(永久磁石)6cが挿入、保持される。ロータマグネット6cは、軸周り方向に等間隔(例えば90度間隔)に複数(例えば4つ)設けられる。ロータコア6bの周囲には、ステータコア6dが設けられる(モータ収容部2aに固定される)。ステータコア6dにステータコイル6eが設けられる。ステータコア6dの後方には、スイッチング素子基板9が設けられる。スイッチング素子基板9は、モータ6に駆動電流を供給するインバータ回路のスイッチング素子を搭載する。ステータコア6dの前方において、ファン7が回転軸6aに取り付けられる。ファン7は、回転軸6aと一体に回転し、モータ6を冷却する冷却風を発生する。冷却風は、吸気口2eからハウジング2内に入り、モータ6を冷却し、排気口2fからハウジング2外に出る。ファン7の発生する冷却風の流れを
図3に示す。
【0046】
先端工具10は、ハウジング2の前端から前方に延びる。先端工具10は、振動部11と、フレキシブルホース12と、フレキシブルシャフト13と、を含む。フレキシブルシャフト13は、モータ6の回転軸6aと直結であり、モータ6と一体に回転する。フレキシブルホース12は、フレキシブルシャフト13の周囲を覆う。振動部11は、フレキシブルホース12の前端部に接続される。振動部11は、内部に偏心錘11aを有する。偏心錘11aは、フレキシブルシャフト13を介してモータ6によって回転駆動される。偏心錘11aの重心は、振動部11の中心軸に対して偏心している。偏心錘11aの回転により、振動部11が振動する。すなわち、振動部11は、モータ6によって振動する。作業者は、振動する振動部11を生コンクリート内に挿入し、打込み作業や締固め作業を実施する。
【0047】
図3に示すように、カバー17は、電池パック装着部2cの前端部において蝶番機構を成す軸部18によりハウジング2に連結される。カバー17は、軸部18の支持により、ハウジング2に対して開閉可能である。カバー17と電池パック装着部2cにより、電池パック4が全体的に覆われる。電池パック装着部2cの外面には、エラストマー等のシール部材(図示省略)が一体成型により設けられる。このシール部材は、カバー17を閉じたとき、カバー17の上端部に押圧される。これにより、電池パック装着部2cとカバー17との境界部の隙間が埋められ、当該隙間からカバー17内への異物の侵入が防止される。なお、シール部材をカバー17の上面に設けた場合にも、電池パック装着部2cとカバー17との境界部の隙間が埋められ、当該隙間からカバー17内への異物の侵入を防止することができる。
【0048】
カバー17は、左右両側面の後部にそれぞれ、ラッチ操作部17aと、ラッチ爪部17bと、を有する。ラッチ操作部17a及びラッチ爪部17bは、カバー17をハウジング2に対して閉状態で係止するラッチ機構を成す。このラッチ機構は、
図10~
図12に示すように、カバー17の後端側の左右両側にそれぞれ設けられる。電池パック装着部2cは、ラッチ爪部17bと係合する爪部2gを左右両側にそれぞれ有する。ラッチ爪部17bと爪部2gとの係合により、カバー17はハウジング2に対して閉状態で係止される。作業者は、ラッチ操作部17aを内側に向けて押すことで、ラッチ爪部17bと爪部2gとの係合を解除し、カバー17を開くことができる。
【0049】
カバー17は、箱型(略直方体)の例えば樹脂成形体である。カバー17のうち後述の可動部25を除く部分は、好ましくは単一の成形体である。カバー17の成形時に、カバー17の側面が内側に反る(変形する)ことがある。四側面のうち、短手方向の側面よりも長手方向の側面、すなわちラッチ操作部17a及びラッチ爪部17bが設けられた側面の方が、反り量が大きくなる。反り量によっては、カバー17のラッチ爪部17bが電池パック装着部2cの爪部2gと係合しなくなり、カバー17を閉状態で係止できなくなる。
図10~
図13に示す、電池パック装着部2cに設けた矯正部23aは、カバー17の左右両側面の内側への反りを矯正(抑制)するために設けられる。
【0050】
矯正部23aは、カバー17の前後方向の中心よりもやや前方に位置する。矯正部23aは、カバー17を閉じる過程及びカバー17を閉じた状態で、カバー17の左右両側面の上端部に接触してカバー17の左右両側面をそれぞれ外側に向けて押圧する。矯正部23aの矯正力の作用する方向と、カバー17のラッチ爪部17bと電池パック装着部2cの爪部2gとの係合力の作用する方向とは、略動方向であり、共に左右方向である。カバー17を閉じる際に加わるラッチ爪部17bと爪部2gとの係合力は、カバー17の左右両側面を内側方向に向けて押圧するように作用する。一方、矯正部23aの矯正力は、カバー17の左右両側面を外側方向に向けて押圧するように作用する。
図13に示すように、矯正部23aの下端部は、R形状とされている。これにより、カバー17を閉じる過程で、左右両側面がスムーズに矯正部23aに乗り上げ、破損や傷つきが抑制される。また、カバー17の破損や傷つきを抑制するため、カバー17が内側への反りを起こしているときのみ、矯正部23aがカバー17と接触するよう構成してもよい。
【0051】
矯正部23aは、ラッチ爪部17bと爪部2gとの係合を解除するのに必要となるラッチ操作部17aへの操作荷重の低減と、ラッチ係合の安定性と、をバランス良く実現する作用もある。以下、具体的に説明する。ラッチ機構をカバー17の背面(短手方向の側面)に設けると、カバー17の背面の幅が狭いために、ラッチ機構の係合を解除するために必要な操作荷重(以下、「必要操作荷重」とも表記)が大きく、使い勝手が悪い。これに対しラッチ機構をカバー17の左右両側面(長手方向の側面)に設けると、必要操作荷重は小さくできるが、作業時の振動等によりカバー17が意図せず開くリスクは高くなる。矯正部23aは、ラッチ機構をカバー17の背面に設ける場合と比較して必要操作荷重を小さくしつつ、矯正部23aが無い場合と比較してカバー17が意図せず開くリスクを抑制するものである。ラッチ機構よりも前側において、矯正部23aを前方に設けるほど、必要操作荷重が小さくなり、矯正部23aを後方に設けるほどカバー17が意図せず開くリスクが抑制される。
【0052】
図25に示すように、電池パック装着部2cには、アダプタ27を装着することもできる。アダプタ27は、電池パック4と同様のケース形状と端子構造を有するが、内部に電池セルは収容していない。アダプタ27の後下端部からは、図示しない外部の直流電源装置に接続するためのコード28が延びる。当該直流電源装置の出力する直流電力が、コード28及びアダプタ27を介して電気機器1に供給される。電池パック装着部2cにアダプタ27を装着する場合、カバー17がアダプタ27を完全に覆うことしかできないと、コード28を引き出せないという問題がある。そこで本実施の形態では、カバー17の一部を、開閉可能な可動部25としている。
図18は可動部25の閉状態、
図20は可動部25の開状態を示す。可動部25は、例えば略長方形の樹脂成形体からなる板体である。
【0053】
図15及び
図17に示すように、可動部25は、左右両端部にそれぞれレール部25aを有する。左右のレール部25aの各中間部には、後方に突出した係止凸部25bが設けられる。
図19及び
図21に示すように、カバー17は、レール部25aと係合する凹溝17jを有する。凹溝17jの中間部には、係止凸部25bと係合する穴部(係止部)17e、17fが設けられる。
【0054】
図18及び
図19に示すように、可動部25の係止凸部25bがカバー17の下側の穴部17fと係合して可動部25が係止された状態は、可動部25の閉状態である。電池パック装着部2cに電池パック4を装着する場合は、可動部25を閉状態として使用すればよい。
図20及び
図21に示すように、可動部25の係止凸部25bがカバー17の上側の穴部17eと係合して可動部25が係止された状態は、可動部25の開状態である。電池パック装着部2cにアダプタ27を装着する場合は、可動部25を開状態として使用する。
【0055】
図20、
図23及び
図24に示すように、可動部25の開状態において、カバー17の背面下端部中央には、開口部17gが形成される。開口部17gは、アダプタ27から延びるコード28をカバー17の外部に引き出すための出口となる。
図4等に示す電池パック装着部2cの溝部(凹部)2iは、開状態の可動部25の上端部が位置するスペースであり、また可動部25の着脱の際に可動部25が通るスペースである。可動部25は、
図15~
図17に示すようにカバー17から分離する(取り外す)ことができる。可動部25の開状態において、可動部25の上端は、ハンドル2bの下端と同じ高さかそれよりも下に位置する。これにより、開状態の可動部25がハンドル2bを握る作業者の手に当たって使い勝手が悪くなることを抑制できる。
【0056】
電池パック装着部2cにアダプタ27を装着してカバー17を閉じるまでの手順は次のとおりである。カバー17から可動部25を分離しておく。電池パック装着部2cにアダプタ27を装着する。コード28がカバー17の背面の隙間(可動部25が存在した部分)を通るようにカバー17を閉じる。可動部25をカバー17の背面に上方からスライドさせて装着する。これにより
図22~
図25に示す状態になる。
【0057】
図26は、動力機器1のブロック図である。制御部40は、
図3に示す制御基板8に搭載される。制御部40は、インバータ回路43の駆動制御等の各種制御を行う。インバータ回路43は、三相ブリッジ接続されたIGBTやFET等のスイッチング素子Q1~Q6を含む。スイッチング素子Q1~Q6は、制御部40の制御に従ってスイッチング動作し、モータ6のステータコイル6e(U,V,Wの各巻線)に駆動電流を供給する。抵抗Rsは、モータ6の電流(以下「モータ電流」とも表記)の経路に設けられる。制御回路電圧供給回路46は、電池パック4の電圧を制御部40の動作に適した電圧に変換して制御部40に供給する。磁気センサ42は、例えばホール素子又はホールICである。磁気センサ42は、モータ6の回転位置(ロータ回転位置)に応じた信号を出力する。
【0058】
制御部40において、モータ電流検出回路37は、検出抵抗Rsの両端の電圧によりモータ6の駆動電流(負荷)を検出し、演算部34に送信する。スイッチ操作検出回路38は、使用者によるトリガスイッチ5の操作を検出し、演算部34に送信する。回転子位置検出回路35は、磁気センサ42からの信号に基づいてモータ6の回転位置を検出し、演算部34に送信する。演算部34は、マイクロコントローラ等を含む。演算部34は、回転子位置検出回路35で検出したモータ6の回転位置に応じて制御信号出力回路45を駆動し、インバータ回路43のスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング制御(例えばPWM制御)する。演算部34は、回転子位置検出回路35の検出結果に基づいてモータ6の回転数を演算する。
【0059】
演算部34は、ソフトスタート制御機能と、定速度制御機能と、ブレーキ制御機能と、過電流保護機能(過負荷保護機能)と、を有する。ソフトスタート制御は、モータ6の起動の際に、デューティ制御により、モータ6の回転数を目標回転数(設定回転数)に向けて緩やかに高めていく制御である。定速度制御は、デューティ制御により、モータ6に加わる負荷に関わらずモータ6の回転数を設定回転数に維持する制御である。定速度制御においても、負荷が上昇してモータ6のPWM制御のデューティ比が最大値になった場合、それ以上の負荷上昇があるとモータ6の回転数は低下する。ブレーキ制御は、トリガスイッチ5がオフになったときにモータ6に電気ブレーキをかけてモータ6を減速、停止する制御である。ブレーキ制御では、例えば、上アーム側のスイッチング素子Q1~Q3をオフに維持しながら下アーム側のスイッチング素子Q4~Q6を継続的にオンする。過電流保護機能は、モータ電流が過電流保護の閾値(以下「過電流閾値」とも表記)を超えるとステータコイル6eへの通電を停止する機能である。
【0060】
図27は、締固め作業における動力機器1の動作の一例を示すタイムチャートである。本図において、比較例として、ソフトスタート制御機能と定速度制御機能とブレーキ制御機能が無い動力機器の動作を併せて示している。まず、実施の形態の動作(実線)を説明する。時刻t1において作業者がトリガスイッチ5をオンすると、演算部34は、ソフトスタート制御によりデューティ比を徐々に増加することで、モータ6の回転数を目標回転数である200Hzに向けて緩やかに高めていく。モータ6の回転数が目標回転数に達したあとの時刻t2において、作業者は先端工具10の振動部11を生コンクリート内に挿入する。すると締付負荷がモータ6に加わるが、定速度制御により、デューティ比を制御することで、モータ6の回転数は目標回転数に維持される。時刻t3において作業者は、振動部11を生コンクリート内から抜き出す。すると締付負荷が無くなるが、定速度制御により、モータ6の回転数は目標回転数に維持される。時刻t4において作業者がトリガスイッチ5をオフすると、演算部34は、ブレーキ制御によりモータ6の回転を減速し停止する。
【0061】
図27に併せて示す比較例(破線)では、ソフトスタート制御機能が無いため、トリガスイッチ5がオンされた時刻t1から、デューティ比100%で制御され、モータ6の回転数が急上昇する。定速度制御機能が無いため、時刻t2以前の無負荷状態においてモータ6の回転数が不要に高い。時刻t2において振動部11を生コンクリート内に挿入すると、締付負荷により、モータ6の回転数が低下する。時刻t3において振動部11を生コンクリート内から抜き出すと、締付負荷が無くなることでモータ6の回転数が上昇する。ブレーキ制御機能が無いため、トリガスイッチ5がオフされた時刻t4からモータ6の停止までに長い時間を要する。
【0062】
図28は、動力機器1の先端工具10の振動周波数、すなわちモータ6の回転数と、モータ6のトルクとの関係を示すグラフである。モータ6の定速度制御の回転数を200Hz(12000rpm)にするか250Hz(15000rpm)にするかは、作業者が速度切替ボタン21を押すことで切替え可能である。演算部34はPWM制御のデューティ比を100%よりも小さい値(例えばデューティ比D1=60%)でモータ6を目標回転数200Hzとなるように駆動する。200Hz(12000rpm)は、締固め作業に適した回転数(振動周波数)である。締固め作業とは、強度、水密性、耐久性の優れたコンクリートにするための作業である。動力工具1は、用いてコンクリート施工する型枠に流し込んだ生コンクリートに含まれる気泡を脱泡するために使用される。また、演算部34はPWM制御のデューティ比を100%よりも小さい値(例えばデューティ比D2=80%)でモータ6を目標回転数250Hzとなるように駆動する。250Hz(15000rpm)は、打ち込み作業に適した回転数(振動周波数)である。打ち込み作業とは、コンクリートミキサー車によって運ばれた生コンクリートを、ポンプを使ってコンクリート施工する型枠に流し込む作業である。動力機器1は、生コンクリートに振動を与えることで、生コンクリートを流動させ、生コンクリートの高さが均一となるように均す作業や、型枠の隅々にまで生コンクリートを流し込む作業に使用される。動力機器1の実用負荷領域はおよそ0.06-0.12Nmであり、当該領域では、定速度制御の回転数が維持される。
図28において、モータ6の定速度制御を行わない比較例のグラフを併せて示している。比較例のように、定速度制御を行わず、デューティ比D3=100%でモータ6を駆動した場合、電池容量の低下や、負荷の上昇が発生すると、デューティ比を上昇させることができないため、モータ回転数が低下する。モータ6の回転数が低下し、目標回転数に満たない状態は、締固め時の脱泡不足や作業の効率性の低下につながる。それに対し、本実施の形態は、デューティ比が100%よりも小さい状態で目標回転数となるように制御しているため、電池容量の低下や負荷の上昇が発生しても、デューティ比を上昇させることが可能であるため、目標回転数を維持することができ、締固め時の脱泡不足や作業の効率性の低下を抑制することができる。
【0063】
図29は、動力機器1におけるトリガスイッチ5の引き量(操作量)に応じた動作の一例を示すタイムチャートである。演算部34は、トリガスイッチ5の引き量に応じてモータ6の回転数を調節する変速制御機能を有してもよい。
図29は、変速制御を行う場合のトリガスイッチ5の引き量とモータ6の回転数との関係を示している。トリガスイッチ5の引き量が遊びの分を超えると、モータ6への通電が開始される。そこからトリガスイッチ5の引き量を大きくして行くにつれて、モータ6の回転数は高くなる。モータ6の回転数が定速度制御の目標回転数に到達すると、それ以上トリガスイッチ5の引き量を大きくしてもモータ6の回転数は変わらない。
図29に破線で示すように、変速制御を行わず、かつソフトスタート制御も行わない場合、トリガスイッチ5の引き量が遊びの分を超えると直ちにモータ6の回転数が定速度制御の目標回転数に向けて急上昇する。
【0064】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0065】
(1) カバー17は、ラッチ操作部17a及びラッチ爪部17bからなるラッチ機構を左右両側に有する。このため、作業者は、カバー17の短手方向である左右方向からラッチ操作部17aを掴むようにしてラッチ操作部17aと爪部2gとの係合を解除してカバー17を開くことができ、使い勝手が良い。
【0066】
(2) 電池パック装着部2cに矯正部23aが設けられ、矯正部23aによりカバー17の左右両側面が外側に向けて押圧される。このため、カバー17の左右両側面が内側に反っていても、その反りが矯正される。よって、反りのためにカバー17のラッチ爪部17bと電池パック装着部2cの爪部2gとが係合できなくなるリスクを抑制し、カバー17を閉状態に係止する確実性を高めることができ、使い勝手が良い。
【0067】
(3) 矯正部23aにより、ラッチ機構の係合を解除するために必要な操作荷重の低減と、ラッチ機構によるカバー17の安定的な係止と、をバランス良く実現でき、使い勝手が良い。
【0068】
(4) カバー17に開閉可能な可動部25が設けられ、アダプタ27から延びるコード28を、可動部25の開状態において形成される開口部17gを通してカバー17の外部に引き出すことができる。よって、電気機器1は、電池パック装着部2cに装着した電池パック4をカバー17によって全体的に覆う構成でありながら、アダプタ27にも好適に対応できる。具体的には、電池パック4に替えてアダプタ27を電池パック装着部2cに装着する場合でも、カバー17を閉じて使用可能であり、アダプタ27への異物(コンクリート等)の付着を抑制でき、使い勝手が良い。
【0069】
(5) 可動部25は、
図22~
図25に示すようにカバー17に開状態で係止できる。このため、可動部25を取り外して別途保管する必要がなく、使い勝手が良い。
【0070】
(6) ラッチ機構をカバー17の左右両側面に設けるため、ラッチ機構をカバー17の背面に設ける場合と比較して、カバー17の背面に設ける可動部25がラッチ機構と干渉することを抑制できる。
【0071】
(7) 操作パネル20をカバー17で覆う構成のため、操作パネル20への異物(コンクリート等)の付着を抑制し、作業性を向上できる。
【0072】
(8) 電池パック4を覆うカバー17で操作パネル20を覆う構成のため、操作パネル20を覆うための別途のカバーが不要であり、部品点数、コスト、及び清掃の手間の増大を抑制できる。
【0073】
(9) 作業者は操作パネル20に設けた速度切替ボタン21によりモータ6の回転数、すなわち振動部11の振動周波数を切替え可能なため、作業内容や材料の粘度に適した振動周波数を選択でき、作業性を向上できる。
【0074】
(10) 負荷部を成すモータ6をブラシレスモータとしているため、ブラシ付きモータの場合と比較して多様な制御が可能となり、作業性を向上できる。また、ブラシ付きモータの場合と異なり、剥き出しの電気接点を無くすことができるため、防水性を高めやすい。
【0075】
(11) 操作パネル20をカバー17で覆う構成のため、操作パネル20への異物(コンクリート等)の付着を抑制し、作業性を向上できる。
【0076】
(12) 電池パック4を覆うカバー17で操作パネル20を覆う構成のため、操作パネル20を覆うための別途のカバーが不要であり、部品点数、コスト、及び清掃の手間の増大を抑制できる。
【0077】
(13) カバー17は、ラッチ操作部17a及びラッチ爪部17bからなるラッチ機構を左右両側に有する。このため、作業者は、カバー17の短手方向である左右方向からラッチ操作部17aを掴むようにしてラッチ操作部17aと爪部2gとの係合を解除してカバー17を開くことができ、作業性が良い。
【0078】
(14) 作業者は操作パネル20に設けた速度切替ボタン21によりモータ6の回転数、すなわち振動部11の振動周波数を切替え可能なため、作業内容や材料の粘度に適した振動周波数を選択でき、作業性を向上できる。
【0079】
(15) 負荷部を成すモータ6をブラシレスモータとしているため、ブラシ付きモータの場合と比較して多様な制御が可能となり、作業性を向上できる。また、ブラシ付きモータの場合と異なり、剥き出しの電気接点を無くすことができるため、防水性を高めやすい。
【0080】
(16) 演算部34がモータ6のソフトスタート制御機能を備えるため、モータ6の起動時の大電流やそれによる回路接点への過負荷を抑制できる。また、振動部11に付着したコンクリートの飛散も抑制できる。
【0081】
(17) 演算部34がモータ6の定速度制御機能を備えるため、実用負荷領域の全体において作業内容に適した振動周波数を維持でき、作業性を向上できる。また、無負荷時にモータ6の回転数が不要に高くならないため、消費電力を抑制できると共に、振動部11に付着したコンクリートの飛散も抑制できる。
【0082】
(18) 演算部34がモータ6のブレーキ制御機能を備えるため、作業者がトリガスイッチ5をオフにするとモータ6を迅速に停止することができ、作業性を向上できる。
【0083】
(実施の形態2)
図30~
図33を参照し、本発明の実施の形態2を説明する。本実施の形態の電気機器は、実施の形態1のものと比較して、カバー17がカバー17Aに替わった点で相違し、その他の点で一致する。カバー17Aは、可動部25の形状を除けばカバー17と同構成である。カバー17Aにおいて、可動部25は、
図30に示すように、下端部に切欠部25eを有する。切欠部25eは、可動部25の装着状態において、
図31及び
図32に示すように開口部17gを形成する。切欠部25eの内縁は、U字状であり、コード28の上半分の外周面に沿う曲線状(円弧状)の部分を有し、コード28の上半分の外周面と近接ないし接触する。本実施の形態によれば、実施の形態1と比較してコード28と開口部17gの内縁との隙間の面積が減るため、アダプタ27への異物付着抑制効果が高められる。
【0084】
(実施の形態3)
図34~
図37を参照し、本発明の実施の形態3を説明する。本実施の形態の電気機器は、実施の形態2のものと比較して、カバー17Aがカバー17Bに替わった点で相違し、その他の点で一致する。カバー17Bは、カバー17Aと比較して、可動部25の下端部と対向する縁部17kがコード28の下半分の外周面に沿う曲線状(円弧状)である点と、可動部25の切欠部25eの内縁が縁部17kと連なりコード28の上半分の外周面に沿う曲線状(円弧状)である点で相違し、その他の点で一致する。縁部17kと切欠部25eの内縁とが組み合わされて、コード28の外周面に沿う円周状(閉曲線状)を成し、コード28の外周面に一周に渡って近接ないし接触する。本実施の形態によれば、実施の形態2と比較してコード28と開口部17gの内縁との隙間の面積が更に減るため、アダプタ27への異物付着抑制効果が更に高められる。
【0085】
(実施の形態4)
図38及び
図39を参照し、本発明の実施の形態4を説明する。本実施の形態の電気機器は、実施の形態3のものと比較して、カバー17Bがカバー17Cに替わった点で相違し、その他の点で一致する。カバー17Cは、カバー17Bと比較して、縁部17kとコード28の下半分の外周面との係合部がインロー構造を成し、可動部25の切欠部25eの内縁とコード28の上半分の外周面との係合部がインロー構造を成す点で相違し、その他の点で一致する。縁部17k及び切欠部25eの内縁は、それぞれ凸条となるように形成される。コード28の外周面には、凹条28aが設けられる。凹条28aは、コード28の外周面を一周して閉じる。縁部17k及び切欠部25eの内縁がコード28の凹条28aに嵌まり、インロー構造を成す。本実施の形態によれば、インロー構造の採用により、実施の形態3と比較してアダプタ27への異物付着抑制効果が更に高められる。縁部17kとコード28の下半分の外周面との係合部と、可動部25の切欠部25eの内縁とコード28の上半分の外周面との係合部と、の一方のみがインロー構造であってもよい。
【0086】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0087】
矯正部23aは、カバー17に設けられてもよい。カバー17の左右両側面の内側と、電池パック4あるいはアダプタ27の左右両側面の外側と、の間を埋めるゴムやスポンジ等の弾性体を設け、この弾性体を矯正部としてもよい。この場合、弾性体は、電池パック4あるいはアダプタ27のガタつきを防止する効果も奏する。また、可動部25を透明ないし半透明とし、カバー17の外部から可動部25を通してカバー17の内部が透けて見えるようにしてもよい。そうすることで、カバー17を装着した状態であっても、カバー17の内部に位置する電池パック4に設けられた残容量表示部4eや、電池パック装着部2cの下面の後端部付近に設けられた操作パネル20といった表示部がカバー17を開けることなく視認可能となるため、使い勝手をより向上させることができる。なお、カバー17全体を透明ないし半透明としてもよい。
【0088】
実施の形態1において、電池パック装着部2cにアダプタ27を装着して使用する場合に、可動部25を外した状態で使用してもよい。この場合、アダプタ27への異物付着抑制効果が低下し、また可動部25を別途保管する必要はあるが、その他の点においては同様の作用効果が得られる。カバー17は、ハウジング2の下端部にスライドして着脱可能なスライド式であってもよい。本発明の電気機器は、コンクリートバイブレータ以外の他の種類のものであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…電気機器(コンクリートバイブレータ)、2…ハウジング、2a…モータ収容部、2b…把持部(ハンドル部)、2c…電池パック装着部、2d…接続部、2e…吸気口、2f…排気口、2g…爪部(係止部)、2i…溝部(凹部)、3…端子部、4…電池パック、4a…レール部、4b…ラッチ凸部、4c…ラッチ操作部、4e…残容量表示部、5…トリガスイッチ、6…モータ(電動モータ)、6a…回転軸、6b…ロータコア、6c…ロータマグネット、6d…ステータコア、6e…ステータコイル、7…ファン、8…制御基板、9…スイッチング素子基板、10…先端工具、11…振動部、11a…偏心錘(アンバランサ)、12…フレキシブルホース、13…フレキシブルシャフト、17,17A~17C…カバー、17a…ラッチ操作部、17b…ラッチ爪部
17e,17f…穴部(係止部)、17g…開口部、17i…連結部、17j…凹溝、17k…縁部、18…軸部、20…操作パネル、21…速度切替ボタン(操作部)、22…速度表示LED(速度表示部)、23…壁部、23a…矯正部、23b…レール部、23c…ラッチ凹部、25…可動部(可動片)、25a…レール部、25b…係止凸部、25e…切欠、27…アダプタ、28…コード、28a…凹条、34…演算部、35…回転子位置検出回路、37…モータ電流検出回路、38…スイッチ操作検出回路、40…制御部、42…磁気センサ、43…インバータ回路、45…制御信号出力回路、46…制御回路電圧供給回路。