(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、電子メールの制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 51/21 20220101AFI20231108BHJP
H04L 51/48 20220101ALI20231108BHJP
【FI】
H04L51/21
H04L51/48
(21)【出願番号】P 2021566915
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042921
(87)【国際公開番号】W WO2021131412
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019237850
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】江上 健一
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-107486(JP,A)
【文献】特開2013-219480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 51/21
H04L 51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して前記同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて前記同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
前記同報メール受信予測期限設定手段が設定した前記同報メールを受信する予測期限に基づいて、前記同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、
を含み、
受信した電子メールの宛先を示すToヘッダ、Ccヘッダにある全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、前記同報メールの受信待ち受けを終了する
、
情報処理装置。
【請求項2】
前記同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持する、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持し、
先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスに基づいて、
前記同報メールの受信待ち受けを終了し、
取得した全エンベロープ宛先を指定して電子メールを送信する、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して前記同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて前記同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
前記同報メール受信予測期限設定手段が設定した前記同報メールを受信する予測期限に基づいて、前記同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、
を含み、
受信した電子メールの送信元のアドレスと返信先のアドレスが異なるときに、
前記同報メール受信予測期限設定手段は所定の期限を設定する
、
情報処理装置。
【請求項5】
前記同報メールを受信する予測期限として、現在時刻に、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差の所定倍を足した時刻が設定される、
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
受信した電子メールの特定のヘッダとボディとを合わせて所定ルールに基づいてデータが生成され、こうして生成されたデータ同士の一致性に基づいて前記同報メール判定手段は
前記同報メールを判定する、
請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
受信した電子メールの中から、同報メールを判定し、
先に受信した電子メールに対して
前記同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて
前記同報メールを受信する予測期限を設定し
、
設定した
前記同報メールを受信する予測期限に基づいて、
前記同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定
し、
受信した電子メールの宛先を示すToヘッダ、Ccヘッダにある全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、前記同報メールの受信待ち受けを終了する、
電子メールの制御方法。
【請求項8】
受信した電子メールの中から、同報メールを判定し、
先に受信した電子メールに対して
前記同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて
前記同報メールを受信する予測期限を設定し
、
設定した
前記同報メールを受信する予測期限に基づいて、
前記同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定
し、
受信した電子メールの送信元のアドレスと返信先のアドレスが異なるときに、同報メール受信予測期限設定手段は所定の期限を設定する、
電子メールの制御方法。
【請求項9】
受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して
前記同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて
前記同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
前記同報メール受信予測期限設定手段が設定した
前記同報メールを受信する予測期限に基づいて、
前記同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、
してコンピュータを機能させ
、
受信した電子メールの宛先を示すToヘッダ、Ccヘッダにある全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、前記同報メールの受信待ち受けを終了させる、
プログラム。
【請求項10】
受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して
前記同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて
前記同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
前記同報メール受信予測期限設定手段が設定した
前記同報メールを受信する予測期限に基づいて、
前記同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、
してコンピュータを機能させ
、
受信した電子メールの送信元のアドレスと返信先のアドレスが異なるときに、前記同報メール受信予測期限設定手段は所定の期限を設定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関し、特に電子メールの送信制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子メールが広く使用されている。電子メールの誤送信などを防止するため、電子メールデータの送信制御を行うためのサーバ装置を設けることがある。このサーバ装置では、電子メールの宛先やその組み合わせ、電子メールの件名や本文に含まれるキーワード、添付ファイルの内容等の項目を条件とし、これらの条件を組み合わせるなどして電子メールの中継制御を行うためのルールを設定し、そのルールに従って、電子メールの送信制御を行うことが知られている。
【0003】
電子メールサーバや、電子メールクライアントには、複数の宛先に対して電子メールを送付する場合に、それぞれの宛先に個別のエンベロープを作成して別々に電子メールを送信するものがある。この形態でエンベロープ情報が作成されると、宛先同士の組み合わせを送信制御ルールの条件とした場合には、ルールを作成したシステム管理者の意図した送信制御が行われない可能性がある。これは、宛先ごとにエンベロープが別々に作成されてしまうと、エンベロープに電子メールに設定された全ての宛先が設定されない場合が出てくるからである。このような問題を解決するためサーバ装置において、それぞれの宛先ごとに作成された電子メールを結合してルールを適用させることで送信制御を行うことが提案されている。
【0004】
特許文献1はメールシステムに関するものであり、同一の送信者が複数の宛先を指定した同じ内容の電子メールを配送する場合に、エンベロープ宛先の異なる複数の同報メールを一元化して処理することが提案されている。
【0005】
特許文献2は電子メールの送信制御に関するものであり、宛先ごとにエンベロープが生成される電子メールシステムにおいても、宛先分割される前のエンベロープ情報を用いて電子メールの送信制御を行えるようにすることが提案されている。特許文献2では、受信した電子メールデータの受信時刻と当該他の電子メールの受信時刻が結合待機時間以内であれば、エンベロープ情報の統合を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-219480号公報
【文献】特開2018-107486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した背景技術の電子メールの送信制御には以下のような課題がある。
【0008】
同一の送信者が複数の宛先を指定した同じ内容の電子メールを配送する場合に、分割して生成されたエンベロープ宛先の異なる複数の同報メールを、外部MTA(External Mail Transfer Agent)に対して1回の配送処理で配送させるにあたり、どの電子メールが同一であるかをまず判定する必要がある。
【0009】
さらに、宛先ごとにエンベロープが別々に作成されてしまった電子メールを結合してルールを適用させて送信制御を行うためには、エンベロープ宛先の異なる複数の同報メールが揃うのを待つ必要がある。待つ時間を長くすればするほど、エンベロープ宛先の異なる複数の同報メールから同一の送信者が複数の宛先を指定した同じ内容の電子メールに復元する精度が高まるが、実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間(配送遅延時間)が増大する。
【0010】
特許文献2では電子メールの受信時刻と結合待機時間とに基づいてエンベロープ情報の統合を行うことや、結合待機時間の更新を行うことが提案されているが、適切なエンベロープ情報の統合を実現するためには結合待機時間の経過を待った後、エンベロープ情報を統合する必要がある。このため、実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間(配送遅延時間)が増大する、という上述した課題を解決することができない。
【0011】
したがって本発明の目的は、実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間を極力増大させずに、宛先ごとにエンベロープが別々に作成されてしまった電子メールを結合してルールを適用させて送信制御を行うことができる、情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明に係る情報処理装置は、
受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して同報メールと判定されたときに、上記先に受信した電子メールの受信時刻と上記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
上記同報メール受信予測期限設定手段が設定した同報メールを受信する予測期限に基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間を極力増大させずに、宛先ごとにエンベロープが別々に作成されてしまった電子メールを結合してルールを適用させて送信制御を行うことができる、情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の上位概念の実施形態の情報処理装置を説明するためのブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の情報処理装置を説明するためのブロック図である。
【
図3】メール情報DBが保持するデータの一例である。
【
図4A】本発明の第1実施形態の情報処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4B】本発明の第1実施形態の情報処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4C】本発明の第1実施形態の情報処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(実施形態の概要)
本発明の実施形態では、配送の過程でエンベロープ宛先ごとに複数に分割されたメールについて、配送遅延時間を抑制しつつ同報メールであると判定することを実現する。そして本発明の実施形態では、受信待ち期限を以下とすることで課題を解決する。
1. 同報メールを待ち受ける期限は、前に同報メールと判定したメールの受信時刻との差分を利用し、動的に設定する同報メール受信予測期限を用いる。
2. 宛先を示すヘッダTo、ヘッダCcにあるすべてのメールアドレス宛のメールを受信した時点で、同報メール受信予測期限を現在時刻に設定し、これを以ってメールの待ち受けを終了とする。
【0017】
このような受信待ち期限の設定により、実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間を極力増大させずに管理して、宛先ごとにエンベロープが別々に作成されてしまった電子メールを結合してルールを適用させて送信制御を行うことができる。
【0018】
図1は、本発明の上位概念の実施形態による情報処理装置を説明するためのブロック図である。
図1の情報処理装置は、同報メール判定手段11と、同報メール受信予測期限設定手段12と、同報メール受信待ち受け終了判定手段13と、を含む。
【0019】
同報メール判定手段11は受信した電子メールの中から、同報メールを判定する。同報メールの判定は例えば、電子メールの特定のヘッダとボディとを合わせて所定ルールに基づいてデータを生成し、こうして生成されたデータ同士の一致性に基づいて行うことができる。同報メール受信予測期限設定手段12は、同報メール判定手段11による、同報メールの判定結果に応じて同報メールを受信する予測期限を設定する。この同報メールを受信する予測期限は例えば、電子メール受信の時間差を用いて動的に設定される。なお同報メール判定手段11が同報メールと判定しなかった場合には、同報メール受信予測期限設定手段12は簡易に所定期限を設定するものとする。同報メール受信待ち受け終了判定手段13は、同報メール受信予測期限設定手段12が設定した同報メールを受信する予測期限に基づいて、電子メールの受信について同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する。
【0020】
図1の情報処理装置では、受信した電子メールの中から同報メールを判定し、電子メール受信の時間差を用いて同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定している。これにより実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間を極力増大させずに、受信した電子メールの中から同報メールを結合して送信することができる。以下、より具体的な実施形態について説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態による情報処理装置、及び電子メールの制御方法について、説明する。
図2は、本発明の第1実施形態の情報処理装置を説明するためのブロック図である。
図2の情報処理装置は、メール受信部101、メールキュー102、メール情報取得部103、同報メール判定手段の一例としての同報メール判定部104、を含む。さらに
図2の情報処理装置は、同報メール受信待ち受け終了判定手段の一例としての同報メール受信予測期限判定部105、メール情報データベース106(メール情報DB106)、メール配送部107、エラーメール生成部108などを含む。
【0022】
メール受信部101は、外部メールサーバから送信されるメールの受信処理を行う。外部メールサーバとの通信プロトコルは、例えばSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)である。メール受信部101は受信したメールの情報を、メールキュー102に格納する。メールキュー102は、メール受信部101が受信したメール情報の格納先である。メール受信部101は、エンベロープ情報とメッセージ情報(ヘッダ・ボディ)とを保持する。
【0023】
メール情報取得部103は、メールキュー102に格納されたエンベロープ情報及びメッセージ情報から、同報メール判定に必要なメール情報を取得する。メール情報取得部103が取得したメール情報は、メール情報DB106に格納する。
【0024】
同報メール判定部104は、メール情報DB106に格納されたメール情報をもとに、同報メールを判定し、判定結果と待受時間をメール情報DB106に格納する。
【0025】
同報メール受信予測期限判定部105は、メール情報DB106に格納されたメール情報をもとに、同報メールの待ち受けを終了するか否かを判定し、この判定結果をメール情報DB106に格納する。
【0026】
メール情報DB106は、メール情報取得部103、同報メール判定部104、同報メール受信予測期限判定部105で使用する、メール情報や、判定結果を格納するデータベースである。
【0027】
メール配送部107は、メール情報DB106に格納された判定結果をもとに、メールキュー102のメールを外部MTA(外部メール転送エージェント)に配送する。ここで、通信プロトコルはSMTPである。
【0028】
エラーメール生成部108は、メール配送部107が外部MTAにメール送信した際に恒久エラー応答を受信した場合に、送信元に対して送信するエラーメールを生成する。エラーメール生成部108が生成したエラーメールは、メールキュー102に格納する。
【0029】
(メール情報DB106の具体例)
メール情報DB106が格納する、メール情報や判定結果の一例について説明する。
図3は、メール情報DB106が格納する、メール情報や判定結果の一例を説明するためのテーブルである。
【0030】
メール情報DB106のテーブルは受信した電子メール毎に、メールID(メールIdentifier)列、受信日時列、同報メール判定Hash値列、Toアドレス列、Ccアドレス列、Envelope-Toアドレス列、同報メール判定列、同報メール受信予測期限列、残りアドレス列、及び終了判定列といった、メール情報や判定結果を含んで構成されている。ここで各列は、次のものを指すものとする。
・メールID:受信メールごとに採番されるID
・受信日時:メール受信部101が受信した時点の時刻
・同報メール判定Hash値:特定のヘッダとボディを合わせたmd5ハッシュ値(Message Digest algorithm 5ハッシュ値)
・Toアドレス:ヘッダToのアドレス
・Ccアドレス:ヘッダCcのアドレス
・Envelope-Toアドレス:エンベロープ宛先のアドレス
・同報メール判定:同報メールと判定されたメールID
・同報メール受信予測期限:同報メールの待ち受けを終了とする時刻
・残りアドレス:同報メールの待ち受けを終了とする残りのアドレス
・終了判定:同報メールの待ち受け終了の判定結果
図3では、メールID:1101~1107について、それぞれ受信日時、同報メール判定Hash値、Toアドレス、Ccアドレス、Envelope-Toアドレス、同報メール判定、同報メール受信予測期限、残りアドレス、及び終了判定が紐付けされて保持されている状態が示されている。
【0031】
(実施形態の動作)
次に、本実施形態の情報処理装置の動作について、制御方法を説明するフローチャートを参照して説明する。
図4A乃至
図4Cは、本実施形態の情報処理装置の動作、具体的には受信した電子メールの送信制御を説明するためのフローチャートである。
【0032】
まず
図2に示す、情報処理装置のメール受信部101が外部MTAよりメールを受信し、メールキュー102に格納する(ステップS1)。この時、メールキュー102に格納する情報は、電子メールのエンベロープ情報(差出人のアドレス、ToアドレスやCcアドレスの宛先)とメッセージ情報(ヘッダ、ボディ)である。
【0033】
次に、メール情報取得部103が、メールキュー102よりメール情報を取得して、メール情報DB106に格納する(ステップS2)。ここでメール情報取得部103が取得するメール情報は、「メールID」、「受信日時」、「同報メール判定Hash値」、「Toアドレス」、「Ccアドレス」、「Envelope-Toアドレス」の6つである。
【0034】
次に同報メール判定部104が、受信したメールの同一判定を行う(ステップS3)。ここでは、同報メール判定Hash値が同一のメールを、同報メールであると判定する。同報メール判定Hash値は例えば、受信した電子メールの特定のヘッダとボディを合わせて構成されたmd5ハッシュ値であるものとする。
【0035】
図2に示されるメール情報DB106では、メールID:1101、メールID:1104、メールID:1105の同報メール判定Hash値列に同じ値が格納されており、メールID:1103、メールID:1106の同報メール判定Hash値列に同じ値が格納されている。
図2に示されるメール情報DB106では、メールID:1102の同報メール判定Hash値列には他のメールIDの同報メール判定Hash値列と異なる値が格納されている。
【0036】
メール判定結果が同一でない場合(ステップS3のNo)は、メール情報DB106の同報メール判定列に、該当メールのメールIDを格納する(ステップS4)。ステップS4に続いて、メール情報DB106の同報メール受信予測期限列に、例えば、90秒後の時刻を格納する(ステップS5)。ステップS5に続いて、Toアドレス、CcアドレスからEnvelope-Toアドレスを除外したアドレスを、残りアドレス列に格納する(ステップS6)。ステップS6において、Toアドレス、CcアドレスからEnvelope-Toアドレスを除外したときに残りアドレスがない場合には、メール情報DB106の同報メール受信予測期限列に現在時刻を格納する。
【0037】
メール判定結果が同一の場合(ステップS3のYes)は、メール情報DB106の同報メール判定列に、同報メールと判定したメールIDを格納する(ステップS7)。
図2に示されるメール情報DB106では、メールID:1104、メールID:1105の同報メール判定列に同報メールと判定したメールIDの”1101”が格納される。またメールID:1106の同報メール判定列に、同報メールと判定したメールIDの”1103”が格納される。同報メールと判定したメールの同報メール判定列にすでに値が入っている場合は、同じ値を格納する。
【0038】
ステップS7に続いて、メール情報DB106の同報メール受信予測期限列に、現在時刻に同報メールと判定したメールと該当メールの受信日時の差分(秒)の2倍を足した時刻を格納する(ステップS8)。ステップS8に続いて、同一判定した前のメールの残りアドレスからEnvelope-Toアドレスを除外したアドレスを、残りアドレスに格納する(ステップS9)。ステップS9において、同一判定した前のメールの残りアドレスからEnvelope-Toアドレスを除外したときに残りアドレスがない場合は、メール情報DB106の同報メール受信予測期限列に現在時刻を格納する。
【0039】
ステップS6やステップS9に続いて、同報メール受信予測期限判定部105はメール情報DB106に格納された情報を走査(ステップS10)して、同報メール待ち受けの終了判定を行う。
【0040】
メール情報DB106の待受時間が経過している場合は、終了と判定する。すなわち、同報メール受信予測期限を経過した場合(ステップS11のYes)には、メール情報DB106の終了判定列に”終了”と格納する(ステップS12)。
【0041】
メール情報DB106の待受時間が経過していない場合、すなわち同報メール受信予測期限を経過していない場合(ステップS11のNo)、同報メール受信予測期限判定部105はメール情報DB106に格納された情報を走査する(ステップS13)。同報メール受信予測期限判定部105は、メール情報DB106の終了判定列に”終了”と格納されていない場合(ステップS15のNo)は、メール情報DB106に格納された情報の走査を続ける。
【0042】
メール情報DB106の終了判定列に”終了”と格納されているとき(ステップS15のYes)には、メール配送部107はメール情報DB106の同報メール判定列が同じ値の電子メールのメールIDを取得する(ステップS16)。ステップS16に続いてメール配送部107はメールキュー102より、同報メールと判定されたメールIDのエンベロープ情報を取得する(ステップS17)。ステップS17に続いてメール配送部107はメールキュー102より、メール情報DB106の同報メール判定列のメールIDのメールのメッセージ情報を取得する(ステップS18)。ステップS18に続いてメール配送部107は外部MTAに対して、取得した全エンベロープ宛先を指定した、メッセージ情報を配送する(ステップS19)。
【0043】
メール配送を全ての宛先について成功して、恒久エラー応答がない場合(ステップS20のNo)、終了とする。恒久エラー応答があった場合(ステップS20のYes)には、エラーメール生成部108が電子メールの送信元に対して送信するエラーメールを生成し、生成したエラーメールをメールキュー102に格納する(ステップS21)。ステップS21に続いて、メール配送部107が外部MTAに対してエラーメールを配送する(ステップS22)。
【0044】
(実施形態の効果)
本実施形態の情報処理装置、電子メールの制御方法によれば、受信した電子メールの中から同報メールを判定し、電子メールの受信時刻の差を用いて同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定している。ここで本実施形態では、同報メールを待ち受ける期限は、前に同報メールと判定したメールの受信時刻との差分を利用し、動的に同報メール受信予測期限を設定している。これにより、配送の過程でエンベロープ宛先ごとに複数に分割されたメールについて、配送遅延時間を抑制しつつ同報メールであると判定することができる。
【0045】
また本実施形態では、受信した電子メールの中から同報メールを判定した後、電子メールの宛先を示すヘッダToやヘッダCcにある例えば全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、同報メールの待ち受けを終了としている。
【0046】
これにより実際に電子メールが送信されるまでの遅延時間を極力増大させずに、受信した電子メールの中から同報メールを結合して送信することができる。その結果、同報メールと判定できない場合を軽減し、かつ配送遅延時間を抑制できる。また同報メールの到着が見込まれないのに、むやみに待ち受けることに起因する配送遅延時間を抑制できる。
【0047】
これにより、宛先ごとにエンベロープが別々に作成されてしまったような、同一の送信者が複数の宛先を指定した同じ内容の電子メールについて、全てのToアドレス、Ccアドレスを網羅して同一の送信者による同じ内容の電子メールを徒に遅延させることなく送信することができる。
【0048】
なお、本実施形態の情報処理装置、電子メールの制御方法で同報メールと判定できないことが想定されるのは、以下のケースのみである。
・Toアドレス、Ccアドレス宛の電子メールをすべて受信した後に、Toアドレス、Ccアドレスにはないエンベロープ宛先への電子メールを受信した場合。
・複数の電子メールへとエンベロープ分割された電子メールの一部が、極端に遅延して受信した場合(例えば、1通目の電子メール、2通目の電子メールの受信時刻の差分×2以上遅れて、3通目の電子メールを受信したような場合)。
【0049】
このようなレアケースを除いて、本実施形態によれば、同報メールと判定することができ、かつ同一の送信者が複数の宛先を指定した同じ内容の電子メールの配送遅延時間を抑制することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による情報処理装置、及び電子メールの制御方法について、説明する。本実施形態は、受信した電子メールがメーリングリスト形態のものであった場合への対応に関するものである。本実施形態では、
図2に示される、上述した第1実施形態の情報処理装置と同じ構成で実現され、メール情報DB106へ書き込まれるデータや、これを用いた判定処理が異なるものとする。
【0051】
メーリングリストの場合、Toアドレス、Ccアドレス(メーリングリストのアドレス)はエンベロープ宛先には存在しないことになる。この状態を1通目の電子メールを受信した時点で検知するため、以下の通り判定条件を追加する。
【0052】
一般的にメーリングリストの場合、返信先(Reply-To)にメーリングリストのアドレスが指定されている。これを利用して、Reply-ToとFromのアドレスが異なる場合には、Toアドレス、Ccアドレスによる終了判定を行わずに、待受時間による終了判定のみを行うようにする。こうして1通目の電子メールを受信した時点で、受信した電子メールがメーリングリスト形態のものであることを検知する。
【0053】
本実施形態の動作としては、第1実施形態について説明した、
図4AのステップS6や、ステップS9にて、
図3の残りアドレス列に例えば特殊値”**@**”を格納する。
【0054】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば上述した第1実施形態と同様に、同報メールと判定できない場合を軽減し、かつ配送遅延時間を抑制できる。
【0055】
さらに本実施形態によれば、メーリングリスト形態の電子メールを受信したときには、第1実施形態で説明したようなToアドレス、Ccアドレスによる終了判定を行わずに、待受時間による終了判定のみを行う。これにより、徒に待受時間を延長してしまうことに起因する配送遅延時間を抑制できる。
【0056】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、
図1の同報メール判定手段11、同報メール受信予測期限設定手段12及び同報メール受信待ち受け終了判定手段13、や
図2のメール情報取得部103、同報メール判定部104及び同報メール受信予測期限判定部105などは、中央処理装置(CPU)及びメモリを有する情報処理装置に、これらの機能を実現する電子メール処理プログラムを読み込んで実行することによっても、実現することができる。
【0057】
またこのようなプログラムは、プログラムを記録した記録媒体の形態で、流通され得る。このプログラムは、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記録デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの光学記録媒体などの形態で、流通され得る。本発明は、請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0058】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
前記同報メール受信予測期限設定手段が設定した同報メールを受信する予測期限に基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、
を含む情報処理装置。
(付記2)前記同報メールを受信する予測期限として、現在時刻に、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差の所定倍を足した時刻が設定される、
付記1に記載の情報処理装置。
(付記3)受信した電子メールの宛先を示すToヘッダ、Ccヘッダにある全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、前記同報メールの受信待ち受けを終了する、
付記1又は付記2に記載の情報処理装置。
(付記4)同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持する、
付記3に記載の情報処理装置。
(付記5)同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持し、
先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスに基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了し、
取得した全エンベロープ宛先を指定して電子メールを送信する、
付記3に記載の情報処理装置。
(付記6)受信した電子メールの送信元のアドレスと返信先のアドレスが異なるときに、同報メール受信予測期限設定手段は所定の期限を設定する、
付記1に記載の情報処理装置。
(付記7)受信した電子メールの特定のヘッダとボディとを合わせて所定ルールに基づいてデータが生成され、こうして生成されたデータ同士の一致性に基づいて前記同報メール判定手段は同報メールを判定する、
付記1乃至付記6のいずれか一つに記載の情報処理装置。
(付記8)受信した電子メールの中から、同報メールを判定し、
先に受信した電子メールに対して同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて同報メールを受信する予測期限を設定し、
前記設定した同報メールを受信する予測期限に基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する、
電子メールの制御方法。
(付記9)前記同報メールを受信する予測期限として、現在時刻に、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差の所定倍を足した時刻が設定される、
付記8に記載の電子メールの制御方法。
(付記10)受信した電子メールの宛先を示すToヘッダ、Ccヘッダにある全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、前記同報メールの受信待ち受けを終了する、
付記8又は付記9に記載の電子メールの制御方法。
(付記11)同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持する、
付記10に記載の電子メールの制御方法。
(付記12)同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持し、
先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスに基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了し、
取得した全エンベロープ宛先を指定して電子メールを送信する、
付記10に記載の電子メールの制御方法。
(付記13)受信した電子メールの送信元のアドレスと返信先のアドレスが異なるときに、電子メール受信についての所定の期限を設定する、
付記8に記載の電子メールの制御方法。
(付記14)受信した電子メールの特定のヘッダとボディとを合わせて所定ルールに基づいてデータが生成され、こうして生成されたデータ同士の一致性に基づいて同報メールを判定する、
付記8乃至付記13のいずれか一つに記載の電子メールの制御方法。
(付記15)受信した電子メールの中から、同報メールを判定する同報メール判定手段と、
先に受信した電子メールに対して同報メールと判定されたときに、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差に基づいて同報メールを受信する予測期限を設定する同報メール受信予測期限設定手段と、
前記同報メール受信予測期限設定手段が設定した同報メールを受信する予測期限に基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了するか否かを判定する同報メール受信待ち受け終了判定手段と、
してコンピュータを機能させるプログラム。
(付記16)前記同報メールを受信する予測期限として、現在時刻に、前記先に受信した電子メールの受信時刻と前記同報メールと判定された電子メールの受信時刻との差の所定倍を足した時刻が設定される、
付記15に記載のプログラム。
(付記17)受信した電子メールの宛先を示すToヘッダ、Ccヘッダにある全てのメールアドレス宛のメールを受信した時点を以って、前記同報メールの受信待ち受けを終了する、
付記15又は付記16に記載のプログラム。
(付記18)同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持する、
付記17に記載のプログラム。
(付記19)同報メールと判定された電子メールに対して、先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスを紐付けして保持し、
先に受信した電子メールの識別情報、及びエンベロープ宛先のアドレスとToヘッダのアドレス、及びCcヘッダのアドレスとの差分のアドレスに基づいて、同報メールの受信待ち受けを終了し、
取得した全エンベロープ宛先を指定して電子メールを送信する、
付記17に記載のプログラム。
(付記20)受信した電子メールの送信元のアドレスと返信先のアドレスが異なるときに、同報メール受信予測期限設定手段は所定の期限を設定する、
付記15に記載のプログラム。
(付記21)受信した電子メールの特定のヘッダとボディとを合わせて所定ルールに基づいてデータが生成され、こうして生成されたデータ同士の一致性に基づいて前記同報メール判定手段は同報メールを判定する、
付記15乃至付記20のいずれか一つに記載のプログラム。
【0059】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0060】
この出願は、2019年12月27日に出願された日本出願特願2019-237850を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0061】
101 メール受信部
102 メールキュー
103 メール情報取得部
104 同報メール判定部
105 同報メール受信予測期限判定部
106 メール情報DB
107 メール配送部
108 エラーメール生成部