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特許7380715近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20231108BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231108BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H01F38/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021569721
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020028969
(87)【国際公開番号】W WO2021140692
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2020002311
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
(72)【発明者】
【氏名】長井 崇浩
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-110154(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167881(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に沿って配置された、近距離無線通信用の通信アンテナと、
前記通信アンテナに接続され、前記近距離無線通信の信号を通過させるインターフェイス回路と、
前記インターフェイス回路に接続され前記近距離無線通信の信号を処理する無線通信ICと、
前記平面に配置された受電コイルと、
前記受電コイルと共に受電共振回路を構成する共振キャパシタと、
前記受電共振回路に接続された整流平滑回路と、
を備え、
前記受電コイルは、前記通信アンテナよりも大きく、
前記受電共振回路を構成する共振キャパシタは、前記近距離無線通信の周波数で共振するように設定され、
前記近距離無線通信の周波数での前記受電共振回路のインピーダンスは、前記近距離無線通信の周波数での前記インターフェイス回路のインピーダンスよりも小さく、
前記受電共振回路に流れる共振電流により前記受電コイルに電流が流れて、当該受電コイルの近傍に発生する主磁束の磁路は、前記近距離無線通信用の磁束が前記通信アンテナに鎖交する磁路から分離されている、
ことを特徴とする、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項2】
前記近距離無線通信の周波数での前記受電共振回路のインピーダンスは、前記近距離無線通信の周波数での前記インターフェイス回路のインピーダンスの1/2以下である、
請求項1に記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項3】
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは同一平面上に配置され、
前記通信アンテナは前記受電コイルの巻回領域の外側に配置された、
請求項1又は2に記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項4】
前記通信アンテナは、前記受電コイルと、当該受電コイルに結合する送電コイルとの距離以上、前記受電コイルから離れた位置に配置された、
請求項1から3のいずれかに記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項5】
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは、それぞれ複数の辺を有し、前記通信アンテナは前記受電コイルに対して辺が並行しない関係に配置される、
請求項1から4のいずれかに記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項6】
前記受電コイルに近接して配置されて前記主磁束の磁路を形成する受電用磁性シートを備える、
請求項1から5のいずれかに記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項7】
前記通信アンテナに近接して配置されて、前記主磁束の磁路とは分離された磁路を形成する通信用磁性シートを備える、
請求項1から6のいずれかに記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項8】
前記無線通信ICに対する電源として作用する二次電池と、
前記整流平滑回路の電圧により前記二次電池を充電する充電回路と、を備える、
請求項1から7のいずれかに記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【請求項9】
前記受電コイルと前記通信アンテナとの結合係数k12は、前記受電コイルと当該受電コイルに結合する送電コイルとの結合係数k1より小さく、
前記受電コイルと前記通信アンテナとの結合係数k12は、前記通信アンテナと当該通信アンテナに結合する他の通信アンテナとの結合係数k2より小さい、
請求項1から8のいずれかに記載の近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信機能を有するワイヤレス受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触充電コイルとNFCアンテナと磁性シートとを備える一つのモジュールを構成し、通信及び電力伝送が可能な、小型の非接触充電モジュールに関して特許文献1が開示されている。この特許文献1には、充電コイルと、この充電コイルを囲むように配置されたNFCコイルと、充電コイルを支持する第1の磁性シートと、第1の磁性シートに載置され、NFCコイルを支持する第2の磁性シートと、を備える非接触充電モジュールが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5013019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の非接触充電モジュールは、非接触充電用のコイル、非接触充電用の磁性体、NFC用のコイル、及びNFC用の磁性体が一体化されたものであるため、携帯端末に組み込む際に小型化が容易である。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の非接触充電モジュールでは、非接触充電のためのコイル及び磁性体と、NFC通信のためのコイル及び磁性体とが実質的に独立していて、構造上の小型化以外に電気的特性上及び磁気的特性上の有機的な関連がない。
【0006】
本発明の目的は、近距離無線通信機能とワイヤレス受電機能とを備え、しかも、この両者の干渉を抑制した、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置は、平面に沿って配置された、近距離無線通信用の通信アンテナと、前記通信アンテナに接続され、前記近距離無線通信の信号を通過させるインターフェイス回路と、前記インターフェイス回路に接続され前記近距離無線通信の信号を処理する無線通信ICと、前記平面に沿って配置された受電コイルと、前記受電コイルと共に受電共振回路を構成する共振キャパシタと、前記受電共振回路に接続された整流平滑回路と、を備える。そして、前記受電共振回路は前記近距離無線通信の周波数で共振し、前記受電共振回路に流れる共振電流により前記受電コイルに電流が流れて発生する主磁束の磁路は、前記近距離無線通信用の磁束が前記通信アンテナに鎖交する磁路から分離されている、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、受電共振回路は近距離無線通信の周波数で共振するので、相手側通信アンテナから発生される近距離無線通信用の磁束を受電コイルで受けて受電することができる。そのうえで、近距離無線通信機能とワイヤレス受電機能との干渉が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、近距離無線通信機能とワイヤレス受電機能とを備え、しかも、この両者の電磁干渉が抑制された近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が得られる。また、近距離無線通信機能とワイヤレス受電機能との電磁干渉が抑制できることにより、それぞれ適切なパラメータ設定により互いに独立して設計でき、独立に設計した後に組み合わせて接続することで一体化できる。このことにより、開発や設計のプロセスを大幅に簡略化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す平面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101を含む、ワイヤレス受電システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101を含む、ワイヤレス受電システムの構成を示すブロック図である。
図4図4は、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101のNFC-IC16から通信アンテナ11までの回路構成の例を示す図である。
図5図5は、図3に示した送電回路50の構成例を示す図である。
図6図6は、図5に示した電力変換回路52及び整流平滑回路22の回路構成例を示す図である。
図7図7は整流平滑回路22の別の構成例を示す図である。
図8図8は、送電コイル51L、通信アンテナ11及び受電コイル21Lの結合係数の関係を示す図である。
図9図9(A)、図9(B)は、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係と、その両者の結合係数k12との関係をシミュレーションするための、受電コイル21La,21Lb及び通信アンテナ11の構成を示す図である。
図10図10は、図9(A)、図9(B)に示すように、通信アンテナ11を基材の角部に配置し、受電コイル21La,21Lbを基材の角部から中央へ移動させたときの、結合係数k12の変化を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す平面図である。
図12図12(A)、図12(B)は、第2の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係と、その両者の結合係数k12との関係をシミュレーションするための、受電コイル21La,21Lb及び通信アンテナ11の構成を示す図である。
図13図13は、受電コイル21Lbに流れる電流により発生する磁界の向き及び磁界強度の分布、または受電コイル21Lbのコイル開口に磁束が鎖交する状態における磁界の向き及び磁界強度の分布を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す平面図である。
図15図15は、第4の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す斜視図である。
図16図16は、図15に示す通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す平面図である。図1において、通信アンテナ11はNFCの通信アンテナであり、受電コイル21Lはワイヤレス受電用の受電コイルである。通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、平面に沿って配置されている。通信アンテナ11は複数ターン巻回された方形スパイラル状のコイル導体で構成されている。受電コイル21Lも複数ターン巻回された方形スパイラル状のコイル導体で構成されている。
【0013】
近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置は、通信アンテナ11に近接する磁性体を備えていてもよい。その磁性体は、通信アンテナ11に鎖交する磁束の磁路の一部を構成する。また、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置は、受電コイル21Lに近接する磁性体を備えていてもよい。その磁性体は、受電コイル21Lに鎖交する磁束の磁路の一部を構成する。これらの磁性体については後に例示する。
【0014】
図1に示した通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、例えばクレジットカードサイズ等のカード型電子機器に設けられる。つまり、カード型電子機器として近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が構成される。図1に示した受電コイル21Lはカード型電子機器の外形に沿って(四辺に沿って)設けられるのではなく、受電コイル21Lの二辺のみがカード型電子機器の外形に沿って設けられている。
【0015】
受電コイル21Lに流れる電流(後に示す受電共振回路に流れる共振電流)により受電コイル21Lに電流が流れて、その近傍に発生する主磁束の磁路は、近距離無線通信用の磁束が通信アンテナ11に鎖交する磁路から分離されている、図1に示す例では、通信アンテナ11は受電コイル21Lに隣接しない位置に配置されている。受電共振回路に流れる共振電流により受電コイル21Lに電流が流れて、その近傍に発生する主磁束の磁路は、通信用の磁束が通信アンテナ11に鎖交する磁路から分離されている。
【0016】
このカード型電子機器を利用する場合、後に示すように、NFC通信装置の通信アンテナ(相手側通信アンテナ)にかざすことによりNFC通信を行う。また、送電装置の送電コイルにかざすことによってワイヤレス受電を行う。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101を含む、ワイヤレス受電システムの構成を示すブロック図である。図2に示す状態では、近距離無線通信システムは近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101、相手側通信アンテナ41及びNFC通信回路42で構成される。
【0018】
近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101は、通信アンテナ11と、この通信アンテナ11に接続され、NFC通信の信号を通過させるインターフェイス回路12と、インターフェイス回路12に接続され、NFC通信の信号を処理するNFC-ICと、を備える。
【0019】
また、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101は、受電コイル21Lと、受電コイル21Lと共に受電共振回路21を構成する共振キャパシタ21Cと、受電共振回路21に接続された整流平滑回路22と、を備える。
【0020】
また、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101は、上記整流平滑回路22の出力部に接続された電圧変換回路23と、充電回路24と、二次電池30と、充電制御回路25と、放電制御回路14と、電圧変換回路15と、を備える。
【0021】
電圧変換回路23は、例えばDC-DCコンバータで構成され、整流平滑回路22の出力電圧を、充電回路24に必要な電圧に変換する。充電回路24は電圧変換回路23の出力電圧で二次電池30を充電する。電圧変換回路15は二次電池30の起電圧を所定電圧に変換して、NFC-IC16へ電源電圧として供給する。
【0022】
上記充電制御回路25は、NFC-IC16から出力される制御信号に応じて、充電回路24の動作の有効/無効を制御する。例えば、NFC通信を行っている状態では充電を停止し、NFC通信を行っていない状態では充電を行う。
【0023】
上記放電制御回路14は、NFC-IC16から出力される制御信号に応じて、電圧変換回路15の動作の有効/無効を制御する。例えば、NFC通信を行っている状態では電圧変換回路15の動作を有効にし、NFC通信を行っていない状態では電圧変換回路15を無効にして放電を停止させる。
【0024】
図2に示す状態では、NFC通信用の相手側通信アンテナ41と通信アンテナ11とが磁界結合し、NFC通信回路42とNFC-IC16とでNFC通信が行われる。また、相手側通信アンテナ41は受電コイル21Lとも磁界結合する。受電共振回路21の共振周波数はNFC通信信号の周波数である13.56MHz帯である。また、NFC通信信号の周波数での受電共振回路21のインピーダンスは、NFC通信信号の周波数でのインターフェイス回路12のインピーダンスに比べて1/2以下である。したがって、NFC通信信号の電力を高効率で受電できる。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101を含む、ワイヤレス受電システムの構成を示すブロック図である。図3に示す状態では、近距離無線通信システムは近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101、送電回路50及び送電共振回路51で構成される。送電共振回路51は送電コイル51Lと共振キャパシタ51Cとで構成される。近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101の構成は図2に示した近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101と同じである。つまり、図3に示す例は、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101を送電コイル51Lに近接配置している状態である。この状態で、送電コイル51Lは受電コイル21Lと磁界結合する。受電共振回路21は送電共振回路51と結合して磁気共鳴し、送電回路50から整流平滑回路22、電圧変換回路23及び充電回路24等で構成される受電回路へ電力が受電される。
【0026】
図3に示す状態で、送電コイル51Lは通信アンテナ11とも磁界結合するが、NFC-IC16はNFC通信を行わない。また、この状態で、充電制御回路25はNFC-IC16から制御信号を受けず、充電回路が「有効」となる。これにより、送電回路50からワイヤレス受電した電力で二次電池30は充電される。さらに、放電制御回路14は、NFC-IC16から制御信号を受けず、電圧変換回路15が「無効」となる。これにより、二次電池30からの無駄な放電が抑制される。
【0027】
図4は、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置101のNFC-IC16から通信アンテナ11までの回路構成の例を示す図である。図4において、インターフェイス回路12は整合回路12M、送信フィルタ12TF及び受信フィルタ12RFで構成されている。NFC-IC16は、送信信号端子Tx1,Tx2、受信信号端子Rx1,Rx2及びグランド端子TVSSを備えている。NFC-IC16はベースバンド信号と高周波信号との間の変復調を行う。また、このNFC-IC16は通信データを含むデータの入出力も行う。
【0028】
送信フィルタ12TFは、インダクタL0及びキャパシタC0で構成されるEMI除去用フィルタであり、NFC-IC16により生じるノイズの放出及びNFC-IC16へのノイズの侵入を抑制するとともに、NFC送信信号の周波数帯は通過させる。受信フィルタ12RFはキャパシタC2bで構成され、NFC受信信号を通過させる。整合回路12Mは、キャパシタC1,C2aで構成される整合回路であり、送信フィルタ12TFを介するNFC-IC16のインピーダンスと通信アンテナ11のインピーダンスと、を整合させる。
【0029】
図4では図示していないが、NFC-IC16から通信アンテナ11までの回路構成において、抵抗成分を設ければ、入力インピーダンスを大きくして、NFC-IC16により生じるノイズの放出及びNFC-IC16へのノイズの侵入を抑制できる。
【0030】
図5は、図3に示した送電回路50の構成例を示す図である。送電回路50は、直流電源55、電圧変換回路53、電力変換回路52、電力制御回路54を備える。電圧変換回路53は、直流電源55の電圧を、電力変換回路52に適した電圧に変換する。電力変換回路52は電力制御回路54に制御されて、送電共振回路51へ送電電力を供給する。
【0031】
図5において、送電共振回路51は送電コイル51Lと共鳴調整回路51Aとで構成される。共鳴調整回路51Aは図3に示した共振キャパシタ51C等である。この共鳴調整回路51Aと送電コイル51Lとで共振回路が構成され、受電コイル21Lと共鳴調整回路21Aとで受電共振回路21が構成される。共鳴調整回路21Aは図3に示した共振キャパシタ21C等である。
【0032】
上記送電共振回路51と受電共振回路21とは共鳴して、電磁界共鳴する。このようにしていわゆる直流共鳴方式によってワイヤレス電力伝送がなされる。受電コイル21Lに接続された共鳴調整回路21A及び受電共振回路21は通信を目的としないので、ノイズの放出やノイズの侵入を抑制する抵抗成分は不要であり、回路構成における抵抗成分を十分に小さくして入力インピーダンスを小さくできる。このため、電気エネルギーや磁気エネルギーの消費は小さい。受電コイル21Lを通して得た磁気エネルギーから変換された電気エネルギーは、受電共振回路において保存することができ、通信距離を大きくすることができる。
【0033】
図6は、図5に示した電力変換回路52及び整流平滑回路22の回路構成例を示す図である。電力変換回路52は、等価的にスイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、等価的にスイッチング素子Q2、ダイオードDds2及びキャパシタCds2の並列接続回路で構成される第2スイッチ回路S2とを備える。
【0034】
スイッチング素子Q1,Q2は電力制御回路54(図5)からの信号によってスイッチングされる。第1スイッチ回路S1のスイッチング素子Q1及び第2スイッチ回路S2のスイッチング素子Q2は交互にオン/オフされる。
【0035】
スイッチング素子Q1,Q2はMOSFETなどの、寄生出力容量や寄生ダイオードを有するスイッチング素子であり、この寄生出力容量や寄生ダイオードを利用してスイッチ回路S1、S2を構成している。
【0036】
上記スイッチング制御回路は第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を所定の動作周波数でスイッチングすることで、直流電圧を送電共振機構に断続的に与えて送電共振機構に共振電流を発生させる。これにより、第1スイッチ回路S1及び第2スイッチ回路S2の両端電圧を半周期毎の半波の正弦波状の波形とする。具体的には、NFC通信で用いられる13.56MHzでスイッチング動作させる。
【0037】
受電回路は、受電コイル21Lと共振キャパシタ21Cによる受電共振回路と整流平滑回路22を備える。整流平滑回路22は、等価的にダイオードD3及びキャパシタCds3の並列接続回路で構成される第3スイッチ回路S3と、等価的にダイオードD4及びキャパシタCds4の並列接続回路で構成される第4スイッチ回路S4とを備える。
【0038】
第3スイッチ回路S3及び第4スイッチ回路S4は、受電コイル21Lと共振キャパシタ21Cによる受電共振回路に発生する電圧を整流し、キャパシタCoはその電圧を平滑する。この例では、受電コイル21Lと共振キャパシタ21Cとは直列共振回路を構成している。
【0039】
図7は整流平滑回路22の別の構成例を示す図である。このように、受電共振回路21にダイオードブリッジ回路DBの入力部を接続し、ダイオードブリッジ回路DBの出力に平滑用のキャパシタCoを接続してもよい。
【0040】
図8は、送電コイル51L、通信アンテナ11及び受電コイル21Lの結合係数の関係を示す図である。ここで、送電コイル51Lと通信アンテナ11との結合係数をk1、送電コイル51Lと受電コイル21Lとの結合係数をk2、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数をk12、でそれぞれ表すと、k12<k1の関係である。また、k12<k2の関係である。
【0041】
上記関係により、通信アンテナ11は主に送電コイル51Lと結合し、受電コイル21Lとは強く結合しない。
【0042】
図9(A)、図9(B)は、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係と、その両者の結合係数k12との関係をシミュレーションするための、受電コイル21La,21Lb及び通信アンテナ11の構成を示す図である。ここで、通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbの仕様は次のとおりである。
【0043】
[通信アンテナ11]
外形:8.4mm×8.4mm
配線幅:0.15mm
配線ピッチ:0.2mm
ターン数:13
[受電コイル21La]
外形:20mm×20mm
配線幅:0.8mm
配線ピッチ:1.2mm
ターン数:4
[受電コイル21Lb]
外形:20mm×40mm
配線幅:0.8mm
配線ピッチ:1.2mm
ターン数:4
図10は、図9(A)、図9(B)に示すように、通信アンテナ11を基材の角部に配置し、受電コイル21La,21Lbを基材の角部から中央へ移動させたときの、結合係数k12の変化を示す図である。
【0044】
通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの結合係数k12は、受電コイル21La,21Lbが通信アンテナ11に接近するほど大きくなる。
【0045】
上記k12<k1の関係を満足するためには、通信アンテナ11及び受電コイル21La,21Lbが配置されている基材の、異なる角部に通信アンテナ11及び受電コイル21La,21Lbがそれぞれ配置されていることが好ましい。また、通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの間隔がより離れる位置関係で基材に配置されていることが好ましい。
【0046】
本実施形態によれば、近距離無線通信機能とワイヤレス受電機能とを独立した機能としてもたせることができる。そのため、近距離無線通信機能及びワイヤレス受電機能の特性をそれぞれ変更することなく、近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が構成できる。例えば、ワイヤレス受電機能のための構成による干渉を受けることなく、近距離無線通信の通信可能距離に制限を掛けことが容易となる。
【0047】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、通信アンテナ11及び受電コイル21La,21Lbに近接する磁性体を備える近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置について示す。
【0048】
図11は、第2の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す平面図である。図11において、通信アンテナ11はNFCの通信アンテナであり、受電コイル21Lはワイヤレス受電用の受電コイルである。通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、平面に沿って配置されている。通信アンテナ11は複数ターン巻回された方形スパイラル状のコイル導体で構成されている。受電コイル21Lも複数ターン巻回された方形スパイラル状のコイル導体で構成されている。図1に示した例とは異なり、この例では、受電コイル21Lに対して面で接するように受電コイル磁性シート62が設けられている。
【0049】
図11において、+Z方向の面が相手側通信アンテナ41又は送電コイル51L側である。受電コイル磁性シート62は、例えば磁性フェライトをフレキシブルなシート状に形成したものである。受電コイル磁性シート62は通信アンテナ11には接していない。
【0050】
この構成によれば、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lのコイル開口を通る磁束の拡がりが抑えられ、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12は小さい。また、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lと相手側通信アンテナ41(図2)との結合係数、または受電コイル21Lと送電コイル51L(図3)との結合係数k2(図8)が向上する。
【0051】
図12(A)、図12(B)は、第2の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係と、その両者の結合係数k12との関係をシミュレーションするための、受電コイル21La,21Lb及び通信アンテナ11の構成を示す図である。
【0052】
図13は、受電コイル21Lbに流れる電流により発生する磁界の向き及び磁界強度の分布、または受電コイル21Lbのコイル開口に磁束が鎖交する状態における磁界の向き及び磁界強度の分布を示す図である。このように、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lbを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lbのコイル開口を通る磁束の拡がりが抑えられ、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12は小さい。
【0053】
ここで、透磁率などの異なる磁性体を用いたときの、通信アンテナ11、受電コイル21La,21Lbのインダクタンス及び結合係数k12の例を示す。各磁性シートの複素誘電率の実部μ′、虚部μ″及び誘電正接tanδは次のとおりである。
【0054】
第1磁性シート:μ′=40、μ″=0.9、tanδ=0.0225
第2磁性シート:μ′=26、μ″=0.6、tanδ=0.023
第3磁性シート:μ′=52、μ″=9.2、tanδ=0.176
通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbの仕様は第1の実施形態で示したとおりである。
【0055】
次の表1は、上記磁性シートを用いたときの、受電コイル21La,21Lbの自己インダクタンス、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との相互インダクタンス及び結合係数k12の例である。
【0056】
【表1】
【0057】
表1においてドットパターンで示すように、磁性シートが無いときの通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの結合係数k12は最大となる。つまり、受電コイル磁性シート62を設けることによって、通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの結合係数k12は低減できる。
【0058】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、通信アンテナ11に近接する磁性体を備える近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置について示す。
【0059】
図14は、第3の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す平面図である。図14において、通信アンテナ11はNFCの通信アンテナであり、受電コイル21Lはワイヤレス受電用の受電コイルである。通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、平面に沿って配置されている。通信アンテナ11は複数ターン巻回された方形スパイラル状のコイル導体で構成されている。受電コイル21Lも複数ターン巻回された方形スパイラル状のコイル導体で構成されている。
【0060】
第3の実施形態では、受電コイル21Lに対して面で接するように受電コイル磁性シート62が設けられている。また、通信アンテナ11に対して面で接するように通信アンテナ磁性シート61が設けられている。図14において、+Z方向の面が相手側通信アンテナ41又は送電コイル51L側である。通信アンテナ磁性シート61及び受電コイル磁性シート62は、例えば磁性フェライトをフレキシブルなシート状に形成したものである。通信アンテナ磁性シート61と受電コイル磁性シート62とは接していない。
【0061】
図14に示す例では、受電コイル21Lは、X方向の沿った二辺とY方向に沿った二辺を有する直方体形状のスパイラル状コイルである。また、通信アンテナ11は、X方向及びY方向に対して45度傾いた(回転した)四辺を有する正方形状のスパイラル状コイルである。
【0062】
図14に示す構造によれば、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lのコイル開口を通る磁束の拡がりが抑えられ、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12は小さい。さらに、本実施形態では、通信アンテナ磁性シート61が、通信アンテナ11を鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、通信アンテナ11のコイル開口を通る磁束の拡がりが抑えられるので、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12はより効果的に抑制される。
【0063】
また、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lと相手側通信アンテナ41(図2)との結合係数、または受電コイル21Lと送電コイル51Lとの結合係数k2(図8)が向上する。さらに、通信アンテナ磁性シート61が、通信アンテナ11を鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、通信アンテナ11と相手側通信アンテナ41(図2)との結合係数、または通信アンテナ11と送電コイル51Lとの結合係数k1(図8)が向上する。
【0064】
本実施形態では、通信アンテナ11と受電コイル21Lとは、平面に沿って45度傾いた(回転した)関係にあるので、通信アンテナ11の導体パターンと受電コイル21Lの導体パターンは並行しない。そのため、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数は小さい。また、通信アンテナ11の導体パターンの角部が受電コイル21Lに対向しているので、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの間における磁束密度は相対的に小さい。そのため、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数は小さい。
【0065】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、通信アンテナと受電コイルの位置関係がこれまでに示した例とは異なる近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置について示す。
【0066】
図15は、第4の実施形態に係る近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置が備える、通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す斜視図である。図16は、図15に示す通信アンテナ及び受電コイルの構造を示す断面図である。
【0067】
この第4の実施形態では、受電コイル21Lが形成された受電コイル基板72、受電コイル磁性シート62、通信アンテナ11が形成された通信アンテナ基板71及び通信アンテナ磁性シート61を備える。受電コイル基板72は長方形の枠状であり、通信アンテナ基板71は正方形状である。受電コイル磁性シート62は受電コイル基板72に重なっていて、通信アンテナ11は通信アンテナ基板71に重なっている。
【0068】
受電コイル21Lと通信アンテナ11とは同軸関係に配置されている。この構成によれば、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lのコイル開口を通る磁束の拡がりが抑えられる。また、通信アンテナ磁性シート61が、通信アンテナ11を鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、通信アンテナ11のコイル開口を通る磁束の拡がりが抑えられる。このことにより、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12(図8)は小さい。また、受電コイル磁性シート62が、受電コイル21Lを鎖交する磁束の磁路の一部として作用するので、受電コイル21Lと相手側通信アンテナ41(図2)との結合係数は高い。同様に、通信アンテナ11と通信回路(例えば、図2中のNFC通信回路42)との結合係数も高い。
【0069】
なお、図15図16に示す例では、受電コイル基板72と通信アンテナ基板71とが別体であるが、これらを一体の基板で構成してもよい。ただし、その場合でも、受電コイル磁性シート62は受電コイル21Lに沿った枠状であることが好ましい。このことにより、近距離無線通信用の磁束が通信アンテナ11に鎖交する磁路から、受電用の磁束の磁路が分離される。
【0070】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0071】
例えば、本発明はカード型電子機器に限らず、スマートフォンやフィーチャーフォン等の携帯電話端末、スマートウォッチやスマートグラス等のウェアラブル端末、ノートPCやタブレットPC等の携帯PC、カメラ、ゲーム機、玩具等の情報機器、ICタグ、ICカード等の情報媒体等、様々な電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
Cds1,Cds2,Cds3,Cds4,Co…キャパシタ
D3,D4,Dds1,Dds2…ダイオード
DB…ダイオードブリッジ回路
Q1…第1スイッチング素子
Q2…第2スイッチング素子
Rx1,Rx2…受信信号端子
S1…第1スイッチ回路
S2…第2スイッチ回路
S3…第3スイッチ回路
S4…第4スイッチ回路
TVSS…グランド端子
Tx1,Tx2…送信信号端子
11…通信アンテナ
12…インターフェイス回路
12M…整合回路
12RF…受信フィルタ
12TF…送信フィルタ
14…放電制御回路
15…電圧変換回路
16…NFC-IC
21…受電共振回路
21A…共鳴調整回路
21C…共振キャパシタ
21L,21La,21Lb…受電コイル
22…整流平滑回路
23…電圧変換回路
24…充電回路
25…充電制御回路
30…二次電池
41…相手側通信アンテナ
42…NFC通信回路
50…送電回路
51…送電共振回路
51A…共鳴調整回路
51C…共振キャパシタ
51L…送電コイル
52…電力変換回路
53…電圧変換回路
54…電力制御回路
55…直流電源
61…通信アンテナ磁性シート
62…受電コイル磁性シート
101…近距離無線通信機能付きワイヤレス受電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16