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特許7380728車両用のバッテリボックスの固定構造および固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両用のバッテリボックスの固定構造および固定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20231108BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20231108BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M50/244 A
B60K1/04 Z
H01M50/244 Z
H01M50/249
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022039984
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023134995
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏樹
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-91726(JP,A)
【文献】特開2010-284984(JP,A)
【文献】国際公開第2010/123091(WO,A1)
【文献】特開平5-193367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに固定されたバッテリボックスが底面の一方向の前記車体フレームの側に配置された複数の奥側締結縦穴と前記車体フレームの側の反対側に配置された複数の手前側締結縦穴とを有している車両用のバッテリボックスの固定構造であって、
アダプタとブラケットとを備え、
前記アダプタは、被支持部と被横締結部とを有していて、前記被支持部が、前記複数の奥側締結縦穴の各々に連通する複数の奥側締結縦穴を有し、連通した前記複数の奥側締結縦穴どうしに挿入された複数の縦締結具により前記バッテリボックスの底面に締結されていて、前記被横締結部が、前記一方向に貫通した複数の締結横穴を有し、前記被支持部の前記車体フレームの側に配置されていて、
前記ブラケットは、固定部と支持部と横締結部とを有していて、前記固定部が前記車体フレームの側面に締結されていて、前記支持部が前記固定部の下端部に固定されて、前記被支持部を支持していて、前記横締結部が、前記一方向に貫通した複数の締結横穴を有し、前記支持部の前記車体フレームの側に配置されていて、
前記被横締結部と前記横締結部とが前記一方向に面接触して前記複数の締結横穴どうしが連通し、連通した前記複数の締結横穴どうしに挿入された複数の横締結具により前記アダプタと前記ブラケットとが締結されていることを特徴とする車両用のバッテリボックスの固定構造。
【請求項2】
前記被支持部は、前記複数の手前側締結縦穴の各々に連通する複数の手前側締結縦穴を有していて、
前記支持部は、前記バッテリボックスおよび前記アダプタが締結された状態で連通した前記複数の手前側締結縦穴どうしの各々に連通する複数の手前側締結縦穴を有していて、
前記バッテリボックス、前記アダプタ、および、前記ブラケットの各々の連通した前記複数の手前側締結縦穴どうしに挿入された縦締結具により前記バッテリボックス、前記アダプタ、および、前記ブラケットが締結されている請求項1に記載の車両用のバッテリボックスの固定構造。
【請求項3】
前記支持部および前記被支持部のどちらか一方は、上方に向かって窪んだ凹部を有していて、他方は、上方に向かって突出した凸部を有していて、前記アダプタと前記ブラケットとが締結された状態で、前記凸部と前記凹部とが係合している請求項1または2に記載の車両用のバッテリボックスの固定構造。
【請求項4】
前記凸部と前記凹部との各々は、前記アダプタと前記ブラケットとが締結された状態で、前記被支持部の前記車体フレームの側の端から前記車体フレームの側の反対側の端まで前記一方向に延在している請求項3に記載の車両用のバッテリボックスの固定構造。
【請求項5】
前記被支持部と前記支持部との各々は、前記バッテリボックスよりも前記車体フレームの側の反対側に突出していて、突出した各々の部位の一方に軸方向が上下方向に向いたピン部が配置されていて、他方に上下方向に貫通した挿入穴が配置されていて、前記アダプタと前記ブラケットとが締結された状態で、前記ピン部が前記挿入穴に挿入されている請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用のバッテリボックスの固定構造。
【請求項6】
前記凸部と前記凹部とは、前記バッテリボックスよりも前記車体フレームの側の反対側に突出していて、突出した各々の部位の一方に軸方向が上下方向に向いたピン部が配置されていて、他方に上下方向に貫通した挿入穴が配置されていて、前記アダプタと前記ブラケットとが締結された状態で、前記ピン部が前記挿入穴に挿入されている請求項4に記載の車両用のバッテリボックスの固定構造。
【請求項7】
前記被支持部は、前記車体フレームの延在方向の両端に切り欠きを有している請求項1~6のいずれか1項記載のバッテリボックスの固定構造。
【請求項8】
底面の一方向の奥側に配置された複数の奥側締結縦穴と手前側に配置された複数の手前側締結縦穴とを有しているバッテリボックスをその奥側を車体フレームの側にして固定する車両用のバッテリボックスの固定方法であって、
前記複数の奥側締結縦穴の各々とアダプタに形成された複数の奥側締結縦穴の各々とを連通させて、連通させた前記複数の奥側締結縦穴どうしに挿入した複数の縦締結具により前記アダプタを前記バッテリボックスの下端に締結する工程と、
ブラケットを前記車体フレームの側面に締結する工程と、
前記ブラケットに前記アダプタを支持させた状態で、前記アダプタの前記車体フレームの側に配置されている被横締結部と、前記ブラケットの前記車体フレームの側に配置されている横締結部とを、前記一方向に面接触させて、前記被横締結部に形成されている前記一方向に貫通した複数の締結横穴と、前記横締結部に形成されている前記一方向に貫通した複数の締結横穴と、を連通させ、連通させた前記複数の締結横穴どうしに挿入した複数の横締結具により前記アダプタと前記ブラケットとを締結する工程と、を含むことを特徴とする車両用のバッテリボックスの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のバッテリボックスの固定構造および固定方法に関し、より詳細には、下端に多数の締結穴を有するバッテリボックスを車体フレームに固定する車両用のバッテリボックスの固定構造および固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のバッテリボックスを車体フレームに固定する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-91726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造は、バッテリボックスに取り付けたフランジ部の突起部の係合部および車体フレームに固定された支持部材の係合部の係合と、支持部材に固定された固定バンドによりバッテリボックスを車体フレームに固定している。しかしながら、バッテリボックスのような重量物を動かして係合部どうしを係合させるには、多大な労力を要する。それ故、バッテリボックスを車体フレームに固定する方法としては、バッテリボックスと車体フレームに固定されたブラケットとを締結具により締結する方法が適している。
【0005】
ところで、一般的に、バッテリボックスは、高重量のバッテリを支持するための強固な梁構造が下端部に配置されている。このように、下端部に梁構造が配置されているバッテリボックスを車体フレームにより強固に固定するには、その梁構造に車体フレームとの締結点を設けることが合理的である。そこで、多数の締結穴をバッテリボックスの下端に形成し、車体フレームに固定されたブラケットに同様に多数の締結穴を形成し、バッテリボックスとブラケットとの各々の締結穴を連通させて、ボルトなどの締結具により締結する構造が考えられる。この構造は、バッテリボックスの下端に締結点を設けることにより、バッテリボックスと車体フレームとをより強固に固定できる。
【0006】
しかしながら、この構造では、締結作業時に、作業者がブラケットの下方に潜り込み、下方から締結作業を行う必要があるため、作業性が悪い。それ故、バッテリボックスの下端に締結点を設けた構造の締結作業の作業性を向上するには、改善の余地がある。
【0007】
本開示の目的は、バッテリボックスと車体フレームとを締結具により締結する締結作業の作業性を向上するバッテリボックスの固定構造および固定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の一態様のバッテリボックスの固定構造は、車体フレームに固定されたバッテリボックスが底面の一方向の前記車体フレームの側に配置された複数の奥側締結縦穴と前記車体フレームの側の反対側に配置された複数の手前側締結縦穴とを有している車両用のバッテリボックスの固定構造であって、アダプタとブラケットとを備え、前記アダプタは、被支持部と被横締結部とを有していて、前記被支持部が、前記複数の奥側締結縦穴の各々に連通する複数の奥側締結縦穴を有し、連通した前記複数の奥側締結縦穴どうしに挿入された複数の縦締結具により前記バッテリボックスの底面に締結されていて、前記被横締結部が、前記一方向に貫通した複数の締結横穴を有し、前記被支持部の前記車体フレームの側に配置されていて、前記ブラケットは、固定部と支持部と横締結部とを有していて、前記固定部が前記車体フレームの側面に締結されていて、前記支持部が前記固定部の下端部に固定されて、前記被支持部を支持していて、前記横締結部が、前記一方向に貫通した複数の締結横穴を有し、前記支持部の前記車体フレームの側に配置されていて、前記被横締結部と前記横締結部とが前記一方向に面接触して前記複数の締結横穴どうしが連通し、連通した前記複数の締結横穴どうしに挿入された複数の横締結具により前記アダプタと前記ブラケットとが締結されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様のバッテリボックスの固定方法は、底面の一方向の奥側に配置された複数の奥側締結縦穴と手前側に配置された複数の手前側締結縦穴とを有しているバッテリボックスをその奥側を車体フレームの側にして固定する車両用のバッテリボックスの固定方法であって、前記複数の奥側締結縦穴の各々とアダプタに形成された複数の奥側締結縦穴の各々とを連通させて、連通させた前記複数の奥側締結縦穴どうしに挿入した複数の縦締結具により前記アダプタを前記バッテリボックスの下端に締結する工程と、ブラケットを前記車体フレームの側面に締結する工程と、前記ブラケットに前記アダプタを支持させた状態で、前記アダプタの前記車体フレームの側に配置されている被横締結部と、前記ブラケットの前記車体フレームの側に配置されている横締結部とを、前記一方向に面接触させて、前記被横締結部に形成されている前記一方向に貫通した複数の締結横穴と、前記横締結部に形成されている前記一方向に貫通した複数の締結横穴と、を連通させ、連通させた前記複数の締結横穴どうしに挿入した複数の横締結具により前記アダプタと前記ブラケットとを締結する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、互いに連通した複数の締結横穴は、車体フレームの側面の向いている方向に開口しているため、困難であった奥側の締結作業を側面側から行うことが可能となる。これにより、本発明の一態様は、バッテリボックスの下端に締結点を設けることにより、バッテリボックスと車体フレームとをより強固に固定できる構造でありながら、バッテリボックスと車体フレームとを締結具により締結する締結作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】バッテリボックスを例示する説明図である。
図2】バッテリボックスの固定構造の実施形態を例示する説明図である。
図3図1のアダプタとブラケットを締結する前の状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示におけるバッテリボックスの固定構造および固定方法を、図に示す実施形態に基づいて説明する。図1図3では、上下方向である鉛直方向をZ方向とし、鉛直方向に垂直な平面における車体フレーム2の延在方向をX方向とし、そのX方向に直交して、バッテリボックス1を車体フレーム2に固定した状態で、バッテリボックス1の側から車体フレーム2の側に向かう一方向をY方向とする。以下、Y方向フレーム側はY方向での車体フレーム2の側に向かう方向を示し、Y方向反対側はY方向での車体フレーム2の側の反対側に向かう方向を示す。なお、図中では、実施形態の構成が分かり易いように、上下を入れ替えて図示しているために、図の上方が実施形態の下方となり、図の下方が実施形態の上方となっている。また、図中では、構成が分かり易いように部材の寸法を変化させており、必ずしも実際に製造するものとは一致させていない。
【0013】
図1に例示するバッテリボックス1は、その内部に図示しない複数のバッテリが収入されている。複数のバッテリは、車両用のバッテリであり、車両の走行用のモータや電装品などの電力源となっている。バッテリボックス1は、底板3、天板4、および、四つの側板(5、6、7)で構成されていて、X方向に長手方向が向いた直方体の箱である。バッテリボックス1は、長手方向がX方向以外の方向に向いた直方体でもよく、また、直方体に限定されずに立方体や多面体であってもよい。ただし、後術する車体フレーム2に固定されるバッテリボックス1では、天板4の上面と底板3の底面との位置に制約があり、その制約を超えない範囲で、所望する車両の航続距離に基づいたバッテリ容量を充足するために必要な体積を確保するにはX方向に長手方向が向いた直方体が適している。なお、天板4の上面の位置の制約は、車両の架装物とのクリアランスを確保するためであり、底板3の底面の位置の制約は、縁石などの障害物との干渉を回避するためである。
【0014】
底板3は、梁構造を成しており、複数の奥側締結縦穴H1aと複数の手前側締結穴H1b1と複数の中央締結穴H1cと複数の凹部R1とを有している。以下、締結縦穴H1は、底板3の全ての締結縦穴を示す。四つの側板のうちのY方向フレーム側の側板は、車体フレーム2のY方向に向いた側面8に対向する対向板5である。Y方向反対側の側板は、衝突時のエネルギーを吸収可能な構造を有する衝突板6であり、衝突板6は、複数の締結横穴H2を有している。残りの二つの側板の各々は、ケーブルや配管などの取付板7である。
【0015】
締結縦穴H1の各々は、下方(図中の上方)に開口している。締結縦穴H1は、互いにX方向およびY方向に間隔を空けて配置されている。締結縦穴H1は、その配置が特に限定されるものでは無いが、少なくともバッテリボックス1の下端の四隅の各々には配置されることが望ましい。図1では、締結縦穴H1の配置として、四隅を含む、X方向の並びが三列、Y方向の並びが四列の配置が例示されている。このX方向の並びの各々が、複数の奥側締結縦穴H1aと複数の手前側締結穴H1bと複数の中央締結穴H1cとを示している。複数の奥側締結縦穴H1aは、底板3のY方向フレーム側に配置されている。複数の手前側締結縦穴Hb1は、底板3のY方向反対側に配置されている。複数の中央締結縦穴H1cは、底板3のY方向中央部に配置されている。なお、複数の中央締結縦穴H1cは状況によっては設ける必要が無い場合もある。
【0016】
複数の凹部R1の各々は、締結縦穴H1が形成されていない部分に配置されている。凹部R1は、Z方向下方(図中の上方)から上方(図中の下方)に向かって窪んでいて、バッテリボックス1のY方向の一端から他端に向かって延在している。図1では、二つの凹部R1が、X方向に間隔を空けて配置されている。
【0017】
バッテリボックス1は、底板3が梁構造を成すことで、高重量の複数のバッテリを支持可能になり、梁構造による厚みを利用して多数の締結縦穴H1が形成されて、下端部に締結点が設けられている。このように、バッテリボックス1の下端部に締結点が設けられることで、バッテリボックス1と車体フレーム2とをより強固に固定できる。また、バッテリボックス1は、必ずしも複数の凹部R1が設けられる必要はないが、凹部R1が設けられることで、車体フレーム2に固定された状態で、底板3の底面の位置が制約を超えない範囲で最大限まで下げることが可能となり、その分、バッテリを搭載可能な体積を確保するには有利になる。なお、凹部R1のZ方向の深さは、底面の位置の制約を超えない範囲で任意に設定可能である。
【0018】
図2に例示する固定構造10は、バッテリボックス1をその奥側を車体フレーム2の側にして、車体フレーム2のY方向に向いた側面8に固定している。車体フレーム2は、車両のラダーフレームの一部を構成している。車体フレーム2は、バッテリボックス1を固定可能であればよく、ラダーフレームを構成するサイドメンバ(メインフレーム)、クロスメンバが特に限定されるものではない。ただし、重量が重いバッテリボックス1を固定するには、車体フレーム2がより強度の高いサイドメンバであることが望ましい。
【0019】
固定構造10は、アダプタ20とブラケット30とバンド40とを備えている。固定構造10は、バッテリボックス1に締結されたアダプタ20と車体フレーム2に締結されたブラケット30とが、縦締結具11と横締結具12との両方の締結具により締結されている。また、固定構造10は、一端がブラケット30に固定されたバンド40が、横締結具12により直にバッテリボックス1に締結されている。
【0020】
アダプタ20とブラケット30の締結について詳述すると、Y方向反対側では縦締結具11により締結され、Y方向フレーム側では横締結具12により締結されている。本開示において、縦締結具11は、軸方向がZ方向に向いていて、Z方向に挿抜されるボルトなどの締結具であり、横締結具12は、軸方向がY方向に向いていて、Y方向に挿抜されるボルトなどの締結具である。縦締結具11および横締結具12の各々は、締結箇所により寸法が異なっていてもよい。以下、アダプタ20とブラケット30とバンド40について詳述する。
【0021】
図3に例示するアダプタ20は、バッテリボックス1の底板3の底面に縦締結具11により締結される部材である。アダプタ20は、ステンレス鋼などの金属で構成されるが、ポリアミド樹脂やポリアミドイミド樹脂などのエンジニアリングプラスチック、炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチックでの代用も可能である。アダプタ20は、被支持部21と被横締結部22とを有している。
【0022】
被支持部21は、バッテリボックス1の底板3に面する板状を成しており、底板3の底面を覆っている。被支持部21は、その底面の全域を覆う必要はなく、その底面のうちの少なくとも多数の締結縦穴H1が配置されている部位を含む領域を覆っていればよい。被支持部21は、複数の奥側締結縦穴H2aと複数の手前側締結縦穴H2bと複数の中央締結縦穴H2cと複数の凹部R2と複数の切り欠きN2とを有している。以下、締結縦穴H2は、被支持部21の全ての締結縦穴を示す。被支持部21は、Y方向反対側の端がバッテリボックス1の衝突板6よりもY方向反対側に突出していて、その突出した部位にピン部23を有している。
【0023】
被支持部21は、複数の奥側締結縦穴H2aと複数の中央締結縦穴H2cに挿入された縦締結具11によりバッテリボックス1の底板3に締結されている。本実施形態では、アダプタ20とバッテリボックス1との締結に、複数の手前側締結縦穴H2bのみを除いたが、複数の中央締結縦穴H2cも除いて、複数の奥側締結縦穴H2aのみを用いてもよい。ただし、アダプタ20とブラケット30との締結作業をより簡便にするには、アダプタ20とバッテリボックス1との締結に、多数の締結縦穴H2のうちの複数の手前側締結縦穴H2bのみを除いた残りの締結縦穴H2を用いることが望ましい。
【0024】
多数の締結縦穴H2の各々は、底板3に形成された多数の締結縦穴H1の各々に対応する位置に配置されていて、被支持部21をZ方向に貫通している。多数の締結縦穴H2の穴径は、バッテリボックス1の多数の締結縦穴H1の穴径と等しい。多数の締結縦穴H2の各々は、アダプタ20をバッテリボックス1に締結する際に、底板3の多数の締結縦穴H1の各々とZ方向に連通する。複数の奥側締結縦穴H2aは、被支持部21のY方向フレーム側に配置されている。複数の手前側締結縦穴H2bは、被支持部21のY方向反対側に配置されている。複数の中央締結縦穴H2cは、被支持部21のY方向中央部に配置されている。
【0025】
複数の凹部R2は、底板3に形成された複数の凹部R1に対応する位置に配置されている。凹部R2は、Z方向下方(図中の上方)から上方(図中の下方)に向かって窪んでいて、被支持部21のY方向フレーム側の端から手前側の端まで延在している。つまり、被支持部21のX方向手前側の端が衝突板6からY方向反対側に突出している場合に、凹部R2のX方向手前側の端も衝突板6からY方向反対側に突出している。バッテリボックス1とアダプタ20との締結時に、凹部R2のZ方向反対側に形成された凸部が底板3に形成された凹部R1に嵌め込まれる。このとき、凸部と凹部R1とは嵌め合いでもよいが、X方向で対向する壁面どうしの間に隙間が存在することで、作業性の向上には有利になる。それ故、凹部R2のX方向の幅は、凹部R1のX方向の幅よりも短くすることが望ましい。また、凹部R2の反対側の凸部の上端(図中の下端)は、凹部R1の底に面接触することが望ましく、凹部R2のZ方向の深さは、底板3に形成された凹部R1の深さに応じている。凹部R2は、底板3に形成された凹部R1に対応することから、底板3に形成された凹部R1と同数が形成されている。また、凹部R2は、底板3に凹部R1が形成されていない場合には、被支持部21から省くこともできる。
【0026】
複数の切り欠きN2の各々は、被支持部21のX方向の両端のそれぞれに配置されている。切り欠きN2は、被支持部21のY方向反対側から奥側に向かって延在している。被支持部21の切り欠きN2が形成された部分では、Z方向下方(図中の上方)から見てバッテリボックス1の底板3が露出している。つまり、アダプタ20とブラケット30とを締結した状態で、切り欠きN2が形成された部分には、ブラケット30とバッテリボックス1の底板3との間に隙間が形成された状態、あるいは、バッテリボックスの底板3の一部が露出した状態になる。その隙間や露出した部位は、バッテリボックス1の取り外しに利用することが可能になっている。例えば、その隙間や露出した部位を利用して、公知のフォークリフトの爪をバッテリボックス1の底板3に当接させて、フォークリフトによりバッテリボックス1の取り外しが可能になる。そこで、複数の切り欠きN2は、公知のフォークリフトの爪の仕様に基づいて形成されていることが望ましい。なお、フォークリフトによるバッテリボックス1の取り外しでは、バッテリボックス1とアダプタ20とが締結された状態でもよく、アダプタ20との締結が解除されたバッテリボックス1のみでもよい。なお、切り欠きN2は場合によって設ける必要がなく、被支持部21から省くこともできる。
【0027】
ピン部23は、被支持部21のY方向反対側に突出した部位に配置されている。ピン部23は、その部位からZ方向下方(図中の上方)に向かって立設していて、軸方向がZ方向に向いている。ピン部23は、円柱状を成しているが、後述する挿入穴に挿入可能であればよく、その形状は特に限定されるものではない。ピン部23は、被支持部21のY方向反対側に突出した部位であれば、その配置位置が特に限定されるものでは無いが、被支持部21のY方向反対側に突出した部位に形成された凹部R2に配置されることが望ましい。なお、ピン部23は場合によって設ける必要がなく、被支持部21から省くこともできる。
【0028】
被横締結部22は、被支持部21の下端のY方向フレーム側に配置されている。被横締結部22は、被支持部21の下端からZ方向下方(図中の上方)に向かって立設しており、被支持部21の下端に固定されている。被横締結部22は、複数の被締結板24とそれらの複数の被締結板24に形成された複数の締結横穴H2dと、を有している。被横締結部22は、被支持部21に複数の凹部R2が形成されて、被支持部21の下端面が分断されている場合に、複数の部材で構成される。また、被横締結部22が複数の部材で構成される場合には、設置箇所によって複数の部材の各々の形状が異なっていてもよい。本実施形態では、X方向両端部に配置された部材がZ方向視で「Z字」状に屈曲した板状を成していて、X方向中央部に配置された部材がZ方向視で「コの字」状に屈曲した板状を成している。いずれの部材も被締結板24を有していて、それらの被締結板24に締結横穴H2dが形成されている。なお、一枚の被締結板24に形成される締結横穴H2dは一つに限らずに複数でもよい。
【0029】
複数の被締結板24は、後述するブラケット30の横締結部に対してY方向に対向する。また、複数の被締結板24は、アダプタ20とブラケット30との締結時に、後述するブラケット30の横締結部33の締結板35に面接触する締結面となっている。本実施形態では、被横締結部22が、三枚の被締結板24を有しており、X方向の両端部に配置された被締結板24の各々には一つの締結横穴H2dが形成されており、X方向の中央部に配置された被締結板24には二つの締結横穴H2dが形成されている。
【0030】
複数の締結横穴H2dの各々は、被締結板24の各々をY方向に貫通している。複数の締結横穴H2dの各々は、後述するブラケット30の横締結部33の締結板35に形成された複数の締結横穴H3dの各々に対応する位置に配置されている。複数の締結横穴H2dの各々は、アダプタ20とブラケット30とを締結する際に、ブラケット30の複数の締結横穴H3dの各々とY方向に連通する。
【0031】
図3に例示するブラケット30は、車体フレーム2のY方向に向いた側面8に横締結具12により締結される部材である。ブラケット30は、アダプタ20と同様の材料で構成されている。ブラケット30は、固定部31、支持部32、および、横締結部33を有している。
【0032】
ブラケット30は、各々が固定部31、支持部32、および、横締結部33を有する複数の部材で構成されている。詳述すると、ブラケット30は、X方向視で「L字」形状を成す二つのL字部材で構成されていて、L字部材の各々がX方向に見て上方(図中の下方)に凸の「U字」(「コの字」)形状を成す四つのU字部材を有している。各々のU字部材は、L字部材のY方向に延在する一片のX方向両側面のY方向フレーム側と手前側との計四箇所に固定されている。L字部材のZ方向に延在する一片が固定部31であり、L字部材のY方向に延在する一片とU字部材のZ方向に面する部位とが支持部32であり、U字部材のY方向に面する部位が横締結部33である。なお、バッテリボックス1を固定したブラケット30には、車両の衝突時あるいは車両への追突時にバッテリボックス1の慣性力が作用する。その慣性力による運動エネルギーをブラケット30自身の変形により吸収することで、その運動エネルギーによりバッテリボックス1の固定が解除されてバッテリボックス1が飛び出すような事態を回避するとともに、その運動エネルギーの車体フレーム2への伝達による車体フレーム2の損傷を回避する役割を有する。ブラケット30の支持部32および横締結部33を構成する部材の一つとしてU字部材を採用したことで、ブラケット30の下端部に締結作業に必要な作業スペースを確保することができる。
【0033】
固定部31は、Z方向に延在している。固定部31は、図示しない締結横穴が複数形成されていて、横締結具12により車体フレーム2の側面8に締結されている。具体的に、固定部31としてL字部材のZ方向に延在する一片が、車体フレーム2の側面8に締結されている。固定部31は、下端部(図中の上端部)に支持部32のY方向フレーム側の端が固定されていて、上端部にバンド40のY方向フレーム側の端が固定されている。これらの固定は、特に限定されるものではない。なお、固定部31と支持部32とは、各々が別体の部材が固定された構成に限定されずに、固定部31と支持部32が一体物で構成されていてもよい。
【0034】
支持部32は、アダプタ20とブラケット30との締結時に、アダプタ20の被支持部21に当接して被支持部21を支持しており、アダプタ20の被支持部21にZ方向で対向する複数の面を有している。複数の面は、被支持部21の被横締結部22や被支持部21およびバッテリボックス1を締結している縦締結具11との接触を避けるように配置されている。具体的に、支持部32の複数の面として、L字部材のY方向に延在する一片の上端面(図中の下端面)と各々のU字部材の上端面(図中の下端面)とがアダプタ20の被支持部21に当接する。各々のU字部材のうちのY方向フレーム側に配置されたU字部材には、アダプタ20とバッテリボックス1とを締結している縦締結具11の頭部よりも大きな穴が形成されていて、頭部との干渉が回避されている。Y方向フレーム側に配置されたU字部材とY方向反対側に配置されたU字部材とは、Y方向に間隔が空いていて、アダプタ20とバッテリボックス1とを締結している縦締結具11の頭部との干渉や被横締結部22との干渉が回避されている。支持部32は、複数の手前側締結縦穴H3bと複数の凸部P1と挿入穴34を有している。支持部32は、ブラケット30が一つの部材で構成される場合に、複数の面の代わりに、被支持部21に当接する一つの面を有し、その面に被横締結部22や縦締結具11との干渉を避ける溝や切り込みが形成されていてもよい。
【0035】
複数の手前側締結縦穴H3bの各々は、支持部32をZ方向に貫通している。具体的に、複数の手前側締結縦穴H3bの各々は、Y方向反対側に配置されたU字部材の被支持部21に面する部位をZ方向に貫通している。複数の手前側締結縦穴H3bの穴径は、バッテリボックス1の多数の締結縦穴H1の穴径と等しい。複数の手前側締結縦穴H3bの各々は、バッテリボックス1に締結されたアダプタ20の縦締結具11により締結されていない複数の手前側締結縦穴H2bの各々に対応する位置に配置されている。複数の手前側締結縦穴H3bの各々は、アダプタ20とブラケット30とを締結する際に、アダプタ20の複数の手前側締結縦穴H2bの各々とZ方向に連通する。つまり、複数の手前側締結縦穴H3bの各々は、底板3の複数の手前側締結縦穴H1bの各々ともZ方向に連通する。
【0036】
複数の凸部P1の各々は、Z方向下方(図中の上方)から上方(図中の下方)に向かって突出していて、支持部32のY方向フレーム側の端からY方向反対側の端まで延在している。具体的に、凸部P1は、Y字部材のY方向に延在する一片のZ方向上端部(図中の下端部)で構成されている。複数の凸部P1の各々は、アダプタ20に形成された複数の凹部R2に対応する位置に配置されている。つまり、凸部P1は、凹部R2と同様に、凸部P1のY方向反対側の端が、固定されたバッテリボックス1の衝突板6からY方向反対側に突出している。アダプタ20とブラケット30との締結時に、凸部P1は被支持部21に形成された凹部R2に嵌め込まれる。このとき、凸部P1と凹部R2とは嵌め合いでもよいが、X方向で対向する壁面どうしの間に隙間が存在することで、作業性の向上には有利になる。それ故、凸部P1のX方向の幅は、凹部R2のX方向の幅よりも短くすることが望ましい。また、凸部P1の上面(図中の下端)は、凹部R2の底に面接触することが望ましく、凸部P1のZ方向の高さは、凹部R2の深さに応じている。凸部P1は、アダプタ20に形成された凹部R2に対応することから、凹部R2と同数が形成されている。また、凸部P2は、アダプタ20に凹部R2が形成されていない場合には、支持部32から省くこともできる。
【0037】
挿入穴34は、支持部32のY方向反対側に突出した部位に配置されている。挿入穴34は、アダプタ20のピン部23が挿入可能であればよく、その形状は特に限定されるものではない。挿入穴34は、ピン部23と同様に、支持部32のY方向反対側に突出した部位であれば、その配置位置が特に限定されるものでは無いが、支持部32のY方向反対側に突出した部位に形成された凸部P1に配置されることが望ましい。
【0038】
横締結部33は、支持部32のY方向フレーム側に配置されている。具体的に、横締結部33は、Y方向フレーム側に配置されたU字部材のY方向に面する部位のうちのY方向反対側の部位で構成される。横締結部33は、複数の締結板35とそれらの複数の締結板35に形成された複数の締結横穴H3dと、を有している。なお、一枚の締結板35に形成される締結横穴H3dは一つに限らずに複数でもよく、横締結部33が複数の部材で構成されていなくてもよい。
【0039】
複数の締結板35は、アダプタ20の被横締結部22に対してY方向に対向する。また、複数の締結板35は、アダプタ20とブラケット30との締結時に、アダプタ20の被横締結部22の被締結板24に面接触して締結面となっている。本実施形態では、横締結部33が、四枚の締結板35を有しており、各々の締結板35に一つずつ締結横穴H3dが形成されている。
【0040】
複数の締結横穴H3dの各々は、締結板35の各々をY方向に貫通している。複数の締結横穴H3dの各々は、アダプタ20の被横締結部22の被締結板24に形成された複数の締結横穴H2dの各々に対応する位置に配置されている。複数の締結横穴H3dの穴径は、被横締結部22の複数の締結横穴H2dの穴径と等しい。複数の締結横穴H3dの各々は、アダプタ20とブラケット30とを締結する際に、アダプタ20の複数の締結横穴H2dの各々とY方向に連通する。
【0041】
バンド40は、一端が固定部31の上端部に固定されていて、他端が締結横穴を有している。バンド40は、アダプタ20やブラケット30と同様の材料により構成さている。バンド40は、他端がバッテリボックス1の締結横穴H1dに横締結具12により締結される構造に限定されない。例えば、バッテリボックス1の天板4に締結縦穴を形成し、バンド40の他端を天板4に縦締結具11により締結してもよい。ただし、衝突板6は、衝突時のエネルギーを吸収可能な構造を有することから、厚みがあり、締結に適しているため、バンド40の他端は衝突板6に形成された締結横穴H1dに横締結具12により締結されることが望ましい。
【0042】
次に、バッテリボックス1の固定方法について説明する。この固定方法は、ライン生産方式の一部の工程であるが、バッテリボックス1とアダプタ20との締結工程は、準備工程としてライン外で行われる。
【0043】
ライン外での準備工程として、バッテリボックス1とアダプタ20との締結工程を行う。この締結工程では、まず、バッテリボックス1の底板3に形成された複数の凹部R1にアダプタ20の被支持部21に形成された複数の凹部R2の下端部の凸部を嵌め込む。この嵌め込みにより、バッテリボックス1の底板3に形成された多数の締結縦穴H1と、アダプタ20の被支持部21に形成された多数の締結縦穴H2との大まかな位置合わせを行うことができる。ついで、多数の締結縦穴H1および締結縦穴H2の最終的な位置合わせを行って、それぞれの締結縦穴H1およびH2を連通させる。ついで、連通した奥側締結縦穴H1aおよび奥側締結縦穴H2aと、連通した中央締結縦穴H1cおよび中央締結縦穴H2cとのそれぞれに縦締結具11を挿入し、挿入した縦締結具11によりバッテリボックス1とアダプタ20とを締結する。
【0044】
ライン内では、まず、車体フレーム2とブラケット30との締結工程を行う。この締結工程では、車体フレーム2の側面にブラケット30の固定部31を複数の横締結具12により締結する。
【0045】
次に、アダプタ20とブラケット30との締結工程を行う。この締結工程では、まず、アダプタ20が締結されたバッテリボックス1を公知のフォークリフトやホイストを用いて、ブラケット30の凸部P1にアダプタ20の凹部R2を嵌め込み可能な位置に移動させる。ついで、アダプタ20が締結されたバッテリボックス1を徐々に下ろしていき、凸部P1に凹部R2を嵌め込むと同時に、ブラケット30の挿入穴34にアダプタ20のピン部23を挿入する。この凸部P1および凹部R2の嵌め込みと挿入穴34へのピン部23の挿入により、複数の手前側締結縦穴H1b、H2b、H3bの位置合わせと、アダプタ20に形成された複数の締結横穴H2dおよびブラケット30に形成された複数の締結縦穴H3dの位置合わせと、を行うことができる。また、アダプタ20の被締結板24とブラケット30の締結板35とを面接触させることができる。ついで、連通した複数の手前側締結縦穴H1a、H2b、H3bに縦締結具11を挿入するとともに、連通した複数の締結横穴H2d、H3dに横締結具12を挿入し、各々の縦締結具11および横締結具12によりアダプタ20とブラケット30とを締結する。
【0046】
次に、バッテリボックス1とバンド40との締結工程を行う。この締結工程では、まず、バンド40の一端をブラケット30の固定部31に固定する。ついで、バンド40の中途部位をバッテリボックス1の上端(図中の下端)に這わせて、バンド40の他端をバッテリボックス1に横締結具12により締結する。
【0047】
以上のとおり、本実施形態によれば、固定構造10のY方向の車体フレーム2の側で互いにY方向に連通した締結横穴H2d、H3dは、Y方向に開口しているため、横締結具12による締結が可能となる。それ故、縦締結具11による締結では困難であった車体フレームの側の締結作業を側面側から行うことが可能となっている。これにより、本実施形態は、バッテリボックス1の下端に締結点を設けることにより、バッテリボックス1と車体フレーム2とをより強固に固定できる構造でありながら、バッテリボックス1と車体フレーム2とを固定する作業の作業性を向上することができる。
【0048】
本実施形態によれば、バッテリボックス1と車体フレーム2とを固定する作業で困難であった車体フレーム2の側の締結作業を簡便にしたことで、作業性を確保するためにバッテリボックス1や車体フレーム2などの重量物を上方に持ち上げる必要も無くなる。それ故、重量物を上方に持ち上げることで懸念される作業の危険性を回避して、作業の安全性を確保することができる。また、車体フレーム2を上方に持ち上げる必要が無くなることで、バッテリボックス1の固定作業と同時に、車両の他の部位の組み立て作業も行うことができるので、車両の組み立ての作業効率を向上することができる。
【0049】
本実施形態では、アダプタ20とブラケット30とを、Y方向反対側では縦締結具11により締結し、Y方向フレーム側では横締結具12により締結している。詳述すると、Y方向フレーム側では、アダプタ20の被横締結部22とブラケット30の横締結部33とをY方向に面接触させて、各々に形成された締結横穴H2d、H3dどうしをY方向に連通させている。同様の構造を用いることにより、Y方向反対側でも、横締結具12による締結は可能である。つまり、バッテリボックス1の全ての締結縦穴H1とアダプタ20の全ての締結縦穴H2とを縦締結具11で締結し、アダプタ20とブラケット30との締結を、全て横締結具12による側面からの締結にすることもできる。しかしながら、アダプタ20とブラケット30との締結の全てを横締結具12による締結にすると、アダプタ20とブラケット30との公差によりいずれかの被横締結部22と横締結部33との間に隙間が生じるおそれがある。このように、締結面に隙間が生じると、締結により発生する軸力が損なわれて締結具の緩みの要因になる。そこで、Y方向反対側では、バッテリボックス1に形成された複数の手前側締結縦穴H1bを利用して縦締結具11により締結することが望ましい。Y方向反対側では、バッテリボックス1の底板3から下方(図中では上方)に向かってアダプタ20の被支持部21とブラケット30の支持部32とが板状に積層しているのみであり、公差による隙間が生じ難くなっている。このように、Y方向反対側では縦締結具11により締結し、Y方向フレーム側では横締結具12により締結する構造とすることで、作業性を向上する構造でありながら、公差による固定の緩みを回避することができる。
【0050】
本実施形態では、アダプタ20の凹部R2とブラケット30の凸部P1とが係合することで、アダプタ20とブラケット30との締結時の大まかな位置合わせが可能となっている。そのため、アダプタ20の凹部R2およびブラケット30の凸部P1は、バッテリボックス1の底板3に凹部R1が形成されていない状態でも、設けることが望ましい。また、アダプタ20の凹部R2とブラケット30の凸部P1とは、それらの形状が特に限定されるものではない。例えば、凹部R2をZ方向視で円形の窪みで構成し、凸部P1をZ方向視で円形の出っ張りで構成してもよい。なお、アダプタ20に凸部を設けて、ブラケット30に凹部を設けてもよい。
【0051】
本実施形態では、更に、アダプタ20のピン部23がブラケット30の挿入穴34に挿入することで、アダプタ20の凹部R2とブラケット30の凸部P1との係合に比して、より精度の高い位置合わせが可能となっている。ピン部23の挿入穴34への挿入のみでも、位置合わせは可能であるが、凹部R2と凸部P1との係合により大まかな位置合わせを行い、ついで、ピン部23の挿入穴34への挿入による高精度の位置合わせを行うことが望ましい。このように、段階的に位置合わせを行うことで、重量物であるバッテリボックス1の位置合わせが高精度でありながら、その位置合わせの作業が簡便になる。
【0052】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示のバッテリボックスの固定構造および固定方法は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0053】
バッテリボックス1の底板3に形成される凹部R1は、底板3のX方向の両端に亘って延在してもよい。この場合に、アダプタ20の凹部R2も同様に被支持部21のX方向の両端に亘って形成される。ブラケット30の凸部P1は、二つのL字部材のY方向に延在する一片の各々に、その一片から上方(図中では下方)に突出してX方向に延在する部材を設け、それらの部材がX方向に点在していればよい。凹部R1、R2、凸部P1のそれぞれの延在する方向は、車両の前後方向に直交する方向にすることが望ましい。例えば、バッテリボックス1を固定する車体フレーム2がクロスメンバの場合に、凹部R1、R2、凸部P1のそれぞれの延在する方向は車両の左右方向であり、車体フレーム2の延在方向となる。凹部R1、R2、凸部P1のそれぞれの延在する方向が、車両の前後方向に直交する方向に向くことで、車両の衝突時や車両への追突時に凹部R2と凸部P1とが衝突してストッパーとして機能することで、ブラケット30の変形によるエネルギーの吸収がより効果的に機能する。なお、構造が複雑にはなるが、凹部R1、R2、凸部P1の各々をZ方向視で「十字」形状に配置することも可能である。
【0054】
アダプタ20に挿入穴を形成し、ブラケット30にピン部を形成してもよいが、ピン部の先端部が挿入穴を通り抜ける構造とするには、バッテリボックス1にも挿入穴を設ける必要がある。それ故、アダプタ20にピン部23を形成し、ブラケット30に挿入穴34を形成し、かつ、ピン部23が凹部R2に配置され、挿入穴34が凸部P1に配置されることが望ましい。凸部P1は、他の支持部32を構成する部材よりも上方(図中の下方)に突出していることから、ピン部23の先端部が挿入穴34を通り抜けることが可能である。
【0055】
バッテリボックス1の重量が軽く、バッテリボックス1をY方向に動かしてアダプタ20の締結を行うことが可能な場合に限定されるが、ブラケット30とバンド40とを一体化して、X方向視で「コの字」形状を成すブラケットを用いることもできる。このように、固定部31、支持部32、および、横締結部33を有していれば、ブラケットの形状は特に限定されるものではない。同様に、アダプタ20の被支持部21を複数の部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 バッテリボックス
2 車体フレーム
3 底板
10 固定構造
11 縦締結具
12 横締結具
20 アダプタ
21 被支持部
22 被横締結部
23 ピン部
30 ブラケット
31 固定部
32 支持部
33 横締結部
H1a、H2a 複数の奥側締結縦穴
H1b、H2b、H3b 複数の手前側締結縦穴
H2d、H3d 複数の締結横穴
図1
図2
図3