(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】音響機器、音響機器の制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20231108BHJP
A61B 5/117 20160101ALI20231108BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
A61B5/117
(21)【出願番号】P 2022122524
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2017185084の分割
【原出願日】2017-09-26
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 比呂史
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-143130(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069118(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
A61B 5/117
G06F 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳穴内に音を出力する発音部と、
前記使用者の耳穴からの音が入力される受音部と、
電子機器と通信接続するインターフェース部と、
を備え、
前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した出力信号を、音声または楽音に対応した音信号に変換し、前記発音部から出力する第1制御と、
前記受音部を介して入力された前記使用者の音声を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第2制御と、
前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した認証指示信号を、特定の周波数の音信号に変換し、認証用の音響波として前記発音部から出力する第3制御と、
前記受音部を介して入力された、前記認証用の音響波が前記使用者の耳穴内で反射した反響波を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第4制御と、
を行う、音響機器。
【請求項2】
前記第1制御による音声出力機能または前記第2制御による音声入力機能を前記電子機器に提供する前に、前記第3制御および前記第4制御による個人認証の機能を前記電子機器に提供する、
請求項1に記載の音響機器。
【請求項3】
前記第1制御により前記使用者に音声を聞かせる前記音声出力機能または前記第2制御により前記使用者の音声を入力する前記音声入力機能を前記電子機器に提供する前に、前記第3制御および前記第4制御により前記使用者が前記音声出力機能または前記音声入力機能の対象人物であるかを特定するための前記個人認証の機能を前記電子機器に提供する、
請求項2に記載の音響機器。
【請求項4】
前記電子機器は、前記使用者の個人データを記憶しており、
前記電子機器が、前記使用者の個人データへのアクセスが必要となった場合に送信してくる前記認証指示信号を、前記インターフェース部を介して受信した場合に、前記第3制御および前記第4制御を行う、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の音響機器。
【請求項5】
前記電子機器は、前記発音部と前記受音部のいずれかを用いた語学の学習に関する処理を実行する機能を有し、
前記電子機器が前記語学の学習に関する処理を実行する前に送信してくる前記認証指示信号を、前記インターフェース部を介して受信した場合に、前記第3制御および前記第4制御を行う、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の音響機器。
【請求項6】
前記電子機器は、前記発音部を用いたリスニング学習と、前記受音部を用いたスピーキング学習のいずれかを行う
請求項5に記載の音響機器。
【請求項7】
前記電子機器は、前記語学の学習に関する前記使用者の個人データを記憶しており、
前記電子機器が、前記語学の学習を行うために前記使用者の個人データへのアクセスが必要となった場合に送信してくる前記認証指示信号を、前記インターフェース部を介して受信した場合に、前記第3制御および前記第4制御を行う、
請求項5または6に記載の音響機器。
【請求項8】
使用者の耳穴内に音を出力する発音部と、前記使用者の耳穴からの音が入力される受音部と、電子機器と通信接続するインターフェース部と、を備える音響機器が、
前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した出力信号を、音声または楽音に対応した音信号に変換し、前記発音部から出力する第1処理と、
前記受音部を介して入力された前記使用者の音声を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第2処理と、
前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した認証指示信号を、特定の周波数の音信号に変換し、認証用の音響波として前記発音部から出力する第3処理と、
前記受音部を介して入力された、前記認証用の音響波が前記使用者の耳穴内で反射した反響波を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第4処理と、
を実行する、音響機器の制御方法。
【請求項9】
使用者の耳穴内に音を出力する発音部と、前記使用者の耳穴からの音が入力される受音部と、電子機器と通信接続するインターフェース部と、を備える音響機器のコンピュータに、
前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した出力信号を、音声または楽音に対応した音信号に変換し、前記発音部から出力する第1処理と、
前記受音部を介して入力された前記使用者の音声を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第2処理と、
前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した認証指示信号を、特定の周波数の音信号に変換し、認証用の音響波として前記発音部から出力する第3処理と、
前記受音部を介して入力された、前記認証用の音響波が前記使用者の耳穴内で反射した反響波を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第4処理と、
を実行させる、電子機器の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器、音響機器の制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機、また、電子辞書を含む各種の電子学習機器のような携帯型の電子機器の普及が著しい。特に、近年においては、電子機器の高性能化や、内蔵メモリの大容量化や通信回線を介したクラウド化に伴って、保存やアクセスできる情報の種類や量が膨大になっている。このような背景に加え、携帯型の電子機器は、基本的に使用者本人のみが使用することを前提にしているため、電子機器に使用者固有の様々な情報やデータ(以下、「個人データ」と総称する)が保存されることが多くなっている。
【0003】
一方、近年の携帯型の電子機器の普及により、学校や学習塾等の教育分野や、英会話や資格試験等の個人学習の分野等での利用が盛んに行われるようになってきている。そのため、学習プランやその進捗状況、学習の習熟度(成績)等の個人データの保護の確実性を高める必要性が求められている。
【0004】
このような携帯型の電子機器においては、使用者本人以外の個人データへのアクセスを制限するために、一般に、予め設定したパスワードやパターン、使用者固有の生体情報を用いた個人認証技術を用いて使用者本人を特定する手法が採用されている。例えば、生体情報を用いた個人認証技術としては、特許文献1に記載されているような静脈像を用いるものや、指紋や声紋、顔の形状、目の虹彩等を用いるものが知られている。なお、これらの個人認証技術は、官公庁や教育機関、一般企業等においても重要情報や機密情報へのアクセスを制限する手法としても広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した個人認証技術において、パスワードやパターン等を用いた手法においては、当該パスワードやパターン情報の漏洩や記憶忘れ等により個人認証が適切に行われない場合があった。また、特許文献1に記載されたような各種の生体情報を用いた手法においては、認証装置を新たに設ける必要があったり、装置が大掛かりになったり、例えば指紋認証や静脈パターン認証を行うために手袋を脱いだり、顔認証のためにマスクを外したりといったように認証のみを目的とした操作や認証処理が煩雑又は複雑になったりするという場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡易かつ適切な方法で個人認証に利用することができる音響機器、音響機器の制御方法、制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る音響機器は、使用者の耳穴内に音を出力する発音部と、前記使用者の耳穴からの音が入力される受音部と、電子機器と通信接続するインターフェース部と、を備え、前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した出力信号を、音声または楽音に対応した音信号に変換し、前記発音部から出力する第1制御と、前記受音部を介して入力された前記使用者の音声を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第2制御と、前記インターフェース部を介して前記電子機器から受信した認証指示信号を、特定の周波数の音信号に変換し、認証用の音響波として前記発音部から出力する第3制御と、前記受音部を介して入力された、前記認証用の音響波が前記使用者の耳穴内で反射した反響波を、電気信号に変換し、前記インターフェース部を介して前記電子機器に送信する第4制御と、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易かつ適切な方法で個人認証を行って、個人データを適切に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る電子機器に適用される機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る電子機器の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る電子機器において実行される学習プラン(認証時)の画面表示の一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る電子機器に適用可能な変形例を示す図である。
【
図6】一実施形態の変形例に係る電子機器の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子機器及び音響機器、電子機器の制御方法、制御プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。本実施形態においては、本発明に係る電子機器及び音響機器を電子学習機器に適用した場合について説明する。
【0015】
(電子機器)
図1は、本発明に係る電子機器の一実施形態を示す概略図である。
図1(a)は、電子機器と音響機器との接続形態の第1の例(有線接続)を示す図であり、
図1(b)は、電子機器と音響機器との接続形態の第2の例(無線接続)を示す図である。
図2は、本実施形態に係る電子機器に適用される機能構成の一例を示すブロック図である。
図2(a)は、電子機器の機能ブロックの一例を示す図であり、
図2(b)、(c)は、電子機器に接続される音響機器の機能ブロックの例を示す図である。
【0016】
本発明に係る電子機器は、例えば
図1(a)、(b)に示すように、英会話学習を含む外語学習や電子辞書等に適用される電子学習機器であって、電子機器100と、電子機器100から入力されたデータに基づいた音声等の音をリスニングしたり、音声等の発音をデータとして電子機器100に出力したりするための入出力機能を備えた音響機器200と、を有し、両者が有線又は無線方式によりデータ通信が可能なように接続されている。
【0017】
電子機器100は、例えば、予め設定された学習プランや語句の検索結果等に基づいて、使用者に英単語や英文、説明文等の情報を視覚や聴覚を介して提示する機能を有している。また、電子機器100は、使用者が耳部に装着する音響機器200を介して、英単語や英文、説明文等の情報を音声や楽音等により聴覚を介して提示するとともに、使用者により入力された音声に基づいて、スピーキングや会話の能力を判定したり、語句の検索等を行ったりする機能を有している。加えて、電子機器100は、使用者が耳部に装着する音響機器200により、使用者固有の生体情報に基づく認証情報を取得して個人認証処理を行う機能を有している。
【0018】
電子機器100は、例えば
図2(a)に示すように、概略、表示部110と、入力操作部120と、インターフェース部(以下、「I/F部」と略記する)130と、演算処理部140と、メモリ部150と、電源供給部160と、を有している。
【0019】
表示部110は、文字や数字、イラスト、グラフ等を表示可能な液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(ELD)、電子ペーパーディスプレイ等を有し、使用者が入力操作部120を介して行った操作や、電子機器100の内部での処理等に基づいて、各種の情報が表示される。
【0020】
入力操作部120は、例えば
図1(a)、(b)に示すように、表示部110の周辺や電子機器100の筐体の側部等に配置されたハードウェアキーによるボタンスイッチ12~16や、表示部110と一体的に形成されたタッチパネルを適用したソフトウェアキーによるタッチスイッチ18等を有している。
【0021】
ここで、
図1(a)、(b)に示すように、電子機器100として、例えば英会話学習機や電子辞書等の汎用の電子学習機器を適用した場合には、入力操作部120として、表示部110に表示されるメニューや学習プランに応じた問題文、その他各種項目を選択するための選択キーや決定ボタン、表示部110に表示される英単語や英文、説明文等を音声出力するための再生ボタン、音響機器200との間のデータ通信や使用者本人を特定する個人認証処理等の各種機能を実行又は設定するための機能キーやメニューキー等が、ハードウェアキーやソフトウェアキーの形態で配置されている。例えば、選択キーや決定ボタンはボタンスイッチ12やタッチスイッチ18を有し、再生ボタンはボタンスイッチ14を有し、機能キーやメニューキーはボタンスイッチ16やタッチスイッチ18を有している。使用者はこれらのスイッチ類を操作して、所望の英単語や英文、説明文等を表示部110に表示させて音響機器200から音声出力させたり、使用者本人の学習の進捗状況や習熟度を表示部110に表示させたり、各種の機能やメニューを選択したりする。
【0022】
I/F部130は、少なくとも、電子機器100に接続された音響機器200との間でデータ通信を行うためのインターフェースとして機能し、音響機器200から音声や楽音等を出力(発音)させるための出力信号を送信するとともに、音響機器200に入力(受音)される音声等を入力信号として受信する。また、I/F部130は、演算処理部140からの指示に従って認証指示信号を音響機器200に送信するとともに、音響機器200において取得した反響波に基づく反響信号を受信する。
【0023】
ここで、I/F部130は、例えば
図1(a)に示すように、イヤホンケーブル26を介してデータ通信を行う有線通信方式や、
図1(b)に示すように、Wi-Fi(wirelessfidelity(登録商標))やブルートゥース(登録商標)等の汎用の無線通信規格によりデータ通信を行う無線通信方式が適用される。音響機器200とのデータ通信に有線通信方式を適用する場合には、I/F部130は、
図1(a)に示すように、音響機器200との間で音声等の信号を送受信するためのイヤホンジャック20を有している。
【0024】
なお、I/F部130は、例えばインターネット等の公衆利用が可能なネットワークや、企業や教育機関等の特定の団体による限定的に利用可能なネットワークに接続され、ネットワーク上のサーバ等との間で、メモリ部150に保存されたデータや、サーバに保存されたデータ等を送受信するためのインターフェースとして機能を有するものであってもよい。
【0025】
演算処理部140は、CPU(中央演算処理装置)やMPU(マイクロプロセッサ)等のプロセッサ或いはプロセッサを備えたコンピュータを有し、メモリ部150に格納された制御プログラムを実行する。これにより、演算処理部140は、使用者による入力操作部120の操作に応じて所望の英単語や英文、説明文、学習の進捗状況や習熟度、メニュー等を表示部110に表示する制御や、音響機器200における音声等の入出力の制御、受信した音声等に基づくスピーキングや会話の能力の判定処理等の各種機能の制御を行う。
【0026】
特に、本実施形態においては、演算処理部140は、I/F部130に接続された音響機器200に対して認証指示信号を送信し、使用者の耳穴内で反射した反響波に基づく反響信号を受信する制御を行う。演算処理部140は、受信した反響信号に基づいて、音響機器200を装着した使用者を特定する個人認証処理を実行し、認証処理の結果に応じて使用者本人の個人データへのアクセスの可否を決定して、個人データを利用した学習プランや機能の実行状態を制御する。
【0027】
メモリ部150は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を有し、RAMには、入力操作部120の操作により入力又は指示された英単語や英文、検索語句等のデータや、電子学習機器としての各種機能に関連するデータや、音響機器200とのデータ通信により実行される個人認証処理に関連するデータ等が保存される。また、ROMには、演算処理部140で実行する制御プログラム等が格納されている。
【0028】
ここで、メモリ部150は、少なくともROMの一部が演算処理部140に内蔵されて、制御プログラムが予め演算処理部140に組み込まれているものであってもよい。また、メモリ部150は、その一部又は全部が、例えばメモリカード等のリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、電子機器100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。また、メモリ部150の代わりに個人認証処理等の上記のデータ等は、その一部又は全部が、I/F部130を介して接続されるネットワーク上のサーバ等に保存されているものであってもよい。
【0029】
電源供給部160は、電子機器100の各部に駆動用電力を供給する。電源供給部160は、動作電源として例えば汎用の一次電池や二次電池を適用することができるほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電(エナジーハーベスト)技術による電源等を適用することもできる。
【0030】
音響機器200は、例えばインナー型やカナル型のマイク付きイヤホン等の、使用者が耳部や頭部に装着し、音声等の入出力が可能な音響機器(ヘッドセット)である。音響機器200は、電子機器100との間でデータ通信が可能なように接続され、電子機器100からの出力信号に応じた音声や楽音を出力(発音)するとともに、使用者から入力(受音)された音声等に応じて入力信号を電子機器100に送信する機能を備えている。また、音響機器200は、電子機器100からの指示に基づいて使用者固有の生体情報を認証情報として取得する機能を有している。
【0031】
音響機器200は、例えば
図1(a)に示したように、電子機器100に対して有線接続される場合には、
図2(b)に示すように、概略、発音部210と、受音部220と、I/F部230と、を有している。また、音響機器200は、例えば
図1(b)に示したように、電子機器100に対して無線接続される場合には、
図2(c)に示すように、概略、発音部210と、受音部220と、I/F部230と、演算処理部240と、メモリ部250と、電源供給部260と、を有している。ここで、上述した電子機器100と同等の構成については、その説明を簡略化する。
【0032】
発音部210は、使用者の耳穴に装着されるハウジング22に設けられたイヤホン又はスピーカ等の放音手段であって、電子機器100から送信される出力信号をI/F部230を介して受信し、音声や楽音等の音信号に変換して音響機器200を装着した使用者の耳穴内に出力する。また、発音部210は、電子機器100から送信される認証指示信号を特定の周波数の音響波に変換して認証波として使用者の耳穴内に出力する。
【0033】
受音部220は、上記のハウジング22に設けられたマイク等の集音手段であって、使用者の外耳道を介して使用者から入力された音声等を電気信号に変換して、I/F部230を介して電子機器100に入力信号として送信する。また、受音部220は、発音部210から出力された認証波が使用者の耳穴内で反射して入力された(取り込まれた)反響波を電気信号に変換して、I/F部230を介して電子機器100に反響信号として送信する。ここで、受音部220に入力された反響波、又は、反響波に基づく反響信号は、使用者固有の生体情報に基づく認証情報に相当する。
【0034】
I/F部230は、音響機器200に接続された電子機器100との間でデータ通信を行うためのインターフェースとして機能し、発音部210から音声や楽音等を出力(発音)させるための出力信号を受信するとともに、受音部220に入力(受音)される音声等を入力信号として送信する。また、I/F部230は、電子機器100から送信された認証指示信号を受信するとともに、受音部220に入力された反響波に基づく反響信号を電子機器100に送信する。
【0035】
ここで、音響機器200を電子機器100に有線接続する場合には、I/F部230は、
図1(a)に示すように、イヤホンプラグ24及びイヤホンケーブル26を備え、イヤホンプラグ24を電子機器100のI/F部130に設けられたイヤホンジャック20に挿入して接続することにより、電子機器100との間でデータ通信を行う。また、音響機器200を電子機器100に無線接続する場合には、I/F部230は、
図1(b)に示すように、上述したWi-Fi(wirelessfidelity(登録商標))やブルートゥース(登録商標)、非接触通信としての近距離無線通信(NFC)等の汎用の無線通信規格により、電子機器100との間でデータ通信を行う。
【0036】
音響機器200と電子機器100とを無線接続する場合に適用される演算処理部240は、CPUやMPU等のプロセッサ或いはコンピュータを有し、メモリ部250に格納された所定の制御プログラムを実行する。これにより、演算処理部240は、I/F部230における電子機器100との無線接続状態を制御して、音声等の信号や個人認証処理に関連する信号の送受信を制御する。
【0037】
メモリ部250は、演算処理部240で実行する制御プログラム等を格納している。ここで、メモリ部250は、少なくとも一部が演算処理部240に内蔵されて、制御プログラムが予め演算処理部240に組み込まれているものであってもよい。
【0038】
電源供給部260は、音響機器200の各部に駆動用電力を供給する。電源供給部260は、動作電源として例えば汎用の一次電池や二次電池を適用することができる。ここで、音響機器200は、図示を省略した電源スイッチを操作することにより、電源供給部260から各部に駆動用電力が供給されて起動し、電子機器100に対して無線接続する動作が実行される。
【0039】
なお、本実施形態においては、使用者への音声等の入出力を行う手段として、電子機器100のI/F部130に有線又は無線方式により接続されるマイク付きイヤホン等の音響機器200のみを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、電子機器100は、上記の音響機器200に加えて、電子機器100の内部に音声等を入出力するためのマイクやスピーカからなる音響部を備える(内蔵する)ものであってもよい。
【0040】
(電子機器の制御方法)
次に、本実施形態に係る電子機器の制御方法及び制御プログラムについて、図面を参照して説明する。ここでは、電子機器として、例えば
図1に示したような英会話学習用の電子学習機器を適用した場合について説明する。
【0041】
認証設定前に電子機器100を起動し、認証のための初期設定を行う。具体的には、有線接続の場合、電子機器100のイヤホンジャック20に音響機器200のイヤホンプラグ24が挿入されると、メモリ部150或いは外部サーバに登録されている認証データがあるかどうか確認する。登録データがない場合、電子機器100の演算処理部140がI/F部130を介して認証設定信号を音響機器200に出力する。音響機器200は、I/F部230から受信された認証設定信号に応じて発音部210から認証設定波を出力する。使用者が音響機器200を耳に装着し、認証設定波が使用者の耳内で反響されてなる反響波が受音部220に入力され、受音部220が反響波にしたがった入力信号を出力する。音響機器200はI/F部230から入力信号を出力し、電子機器100は、I/F部130から受信された入力信号或いは入力信号から抽出された個人を特定できる成分が安定してきたら、入力信号或いは成分を、メモリ部150或いは外部サーバに登録する。
【0042】
無線接続の場合、電子機器100と音響機器200との間で所定の無線通信規格により接続状態が確立されると、メモリ部150或いは外部サーバに登録されている認証データがあるかどうか確認する。登録データがない場合、電子機器100の演算処理部140がI/F部130を介して認証設定信号を音響機器200に出力する。音響機器200は、I/F部230から受信された認証設定信号に応じて発音部210から認証設定波を出力する。使用者が音響機器200を耳に装着し、認証設定波が使用者の耳内で反響されてなる反響波が受音部220に入力され、受音部220が反響波にしたがった入力信号を出力する。音響機器200はI/F部230から入力信号を出力し、電子機器100は、I/F部130から受信された入力信号或いは入力信号から抽出された個人を特定できる成分が安定してきたら、入力信号或いは成分を、メモリ部150或いは外部サーバに登録する。
【0043】
図3は、本実施形態に係る電子機器の制御方法の一例を示すフローチャートである。また、
図4は、本実施形態に係る電子機器において実行される学習プラン(認証時)の画面表示の一例を示す図である。
【0044】
本実施形態に係る電子機器の制御方法においては、電子機器100への音響機器200の接続状態に基づいて使用者本人の個人認証処理の実行の可否を判断する処理と、音響機器200により取得された認証情報に基づいて、使用者本人を特定する個人認証処理と、個人認証処理の結果に基づいて使用者本人の個人データへのアクセスの可否を決定して、個人データを利用した学習プランや機能の実行状態を制御する処理と、が実行される。これらの処理は、電子機器100の演算処理部140、又は、電子機器100の演算処理部140及び音響機器200の演算処理部240において、特定のプログラムを実行することにより実現される。
【0045】
本実施形態に係る電子機器の制御方法は、
図1(a)に示したように、音響機器200が電子機器100に有線接続される構成を有する場合には、
図3のフローチャートに示すように、まず、使用者が電子機器100を起動すると(ステップS302)、演算処理部140は、音響機器200のイヤホンプラグ24が電子機器100のイヤホンジャック20に挿入されて接続されるまで電子機器100を待機状態に保持する。なお、イヤホンジャック20への挿入を検知する機能以外の主たる機能を停止しているスリープ状態の電子機器100のイヤホンジャック20に、音響機器200のイヤホンプラグ24が挿入されると、電子機器100が起動するよう設定されていてもよい。
【0046】
一方、
図1(b)に示したように、音響機器200が電子機器100に無線接続される構成を有する場合には、使用者が電子機器100及び音響機器200を起動すると(ステップS302)、演算処理部140、240は、電子機器100と音響機器200との間で所定の無線通信規格により接続状態が確立されるまで電子機器100及び音響機器200を待機状態に保持する。ここで、演算処理部140は、電子機器100が起動すると、表示部110に例えば
図4(a)に示すようなホーム画面(又は、メニュー画面)を表示する。ホーム画面には、例えば英会話学習における各種の学習プランや設定項目を示すメニューリストやアイコン(「スピーキング」や「発音トレーニング」、「英会話A」等)が表示される。
【0047】
この待機状態においては、演算処理部140は、音響機器200が電子機器100に有線接続又は無線接続されたか否かを常時、或いは、所定のタイミングで監視する(ステップS304)。演算処理部140は、音響機器200が接続されていないと判断した場合(ステップS304のNo)には、上記の待機状態を保持し、音響機器200が接続されたと判断した場合(ステップS304のYes)には、音響機器200を耳部に装着した使用者固有の認証情報を取得するための処理(認証情報取得処理)を実行する。
【0048】
認証情報取得処理においては、演算処理部140は、まず、I/F部130を介して、使用者固有の認証情報を取得するための認証指示信号を音響機器200に送信する(ステップS306)。音響機器200は、I/F部230を介して、電子機器100から送信される認証指示信号を受信すると、発音部210において認証指示信号を特定の周波数の音響波に変換し、認証波として使用者の耳穴内に出力する(ステップS308)。そして、音響機器200は、発音部210から出力され、使用者の耳穴内で反射して受音部220に入力された反響波を電気信号に変換して(ステップS310)、I/F部230を介して電子機器100へ反響信号として送信する(ステップS312)。
【0049】
次いで、電子機器100がI/F部130を介して、音響機器200から送信される反響信号を受信すると、演算処理部140は、当該反響信号に含まれる認証情報に基づいて使用者本人を特定する個人認証処理を実行する(ステップS314)。
【0050】
具体的には、一般に、人間の耳穴の形状は個人ごとに異なることが知られている。そこで、本実施形態においては、英会話学習機等の電子学習機器において必須の構成であるマイク付きイヤホン等の音響機器200に着目し、当該音響機器200を装着した使用者の耳穴に認証波を出力し、耳穴内の形状に応じて反射して入力された反響波を反響信号として受信する。演算処理部140は、当該反響信号に含まれる反響波の波形(すなわち、耳穴内の音響特性)を、使用者固有の認証情報として取得し、当該認証情報と予めメモリ部150等に保存(登録)された認証情報(耳穴内の音響特性)と比較することにより、使用者本人であるか否かを認証する個人認証処理を実行する。
【0051】
このような使用者固有の認証情報の取得方法においては、音響機器200として適用されるインナー型やカナル型のイヤホンを使用者の耳穴に密着した状態で装着することができるので、耳穴内の形状に対応した反響波を良好に取得することができ、適切に使用者本人を特定する個人認証処理を実行することができるという利点を有している。
【0052】
上記の個人認証処理(ステップS314)において、現在電子機器を使用している使用者が特定され、予め登録された使用者本人であると認証された場合(ステップS314のYes)には、演算処理部140は、当該使用者に関して蓄積されたデータや使用者が過去に登録した情報等の、個人データへのアクセスを許可し(ステップS316)、当該個人データの閲覧や更新、或いは、個人データを利用した学習プランや機能を実行する(ステップS318)。
【0053】
ここで、上記のステップS316における個人データへのアクセスを許可するとは、使用者本人の学習プランや学習結果等の履歴をメモリ部150から読み出して閲覧を可能にするだけでなく、新たに個人データを作成したり、更新保存したりすることも可能にするという意味である。
【0054】
また、上記のステップS318における個人データを利用した学習プランについて、英会話学習を例にして説明すると、まず、電子機器の使用者が個人認証された場合には、演算処理部140は、例えば
図4(b)に示すように、
図4(a)に示した表示部110におけるホーム画面のメニューリストやアイコンのデザインや輝度等を変化させて表示を切り替えたり、個人認証された旨のメッセージを表示したりして、個人認証された状態、又は、個人データを利用した学習プランの実行が可能である状態への変化を使用者に通知する。個人認証の場合の初期画面は、ホーム画面でもよいし、認証された使用者が前回終了したときの画面であってもよい。
【0055】
次いで、使用者がホーム画面から任意のメニューリスト等(
図4(b)では「発音トレーニング」)を選択すると、演算処理部140は、メモリ部150から使用者本人の個人データを読み出して、選択された学習プランを実行する。次いで、演算処理部140は、表示部110に、当該学習プランにおける実行条件(
図4(c)に示す「出題方法」や
図4(d)に示す「出題範囲」)等を入力するための表示を行う。このとき、演算処理部140は、使用者が過去に実行した同様の学習プランに関する履歴に基づいて、未出題の範囲が存在する場合には、その範囲を出題範囲としてメニューリスト等に表示する。
【0056】
そして、使用者が任意の実行条件等を入力すると、演算処理部140は、例えば
図4(e)に示すように、当該条件に基づく例文を出題して、表示部110に表示するとともに、音響機器200を介して例文の模範的な(すなわち、ネイティブな)発音の音声を再生出力する。このとき、演算処理部140は、表示部110に、例文の模範音声の再生出力終了後に使用者に当該例文の発音を促す旨のメッセージを表示する。これにしたがって、使用者が音響機器200を介して例文を入力すると、演算処理部140は、
図4(f)に示すように、使用者が発音した音声を録音する。
【0057】
次いで、演算処理部140は、
図4(g)に示すように、録音された使用者の音声データと出題された例文の模範音声データとを比較して、発音解析処理を実行する。ここでは、例えば使用者の発音に対して、発音のなめらかさやメリハリ、子音の強さ、音読時間等の要素が比較される。発音解析処理の終了後、演算処理部140は、例えば
図4(h)に示すように、解析結果を点数や円グラフ等の理解しやすい形態で表示部110に表示する。このとき、演算処理部140は、使用者が過去(例えば前回)に実行してメモリ部150に蓄積された同様の学習プランの解析結果が存在する場合には、当該解析結果を今回の解析結果と比較可能な形態で表示する。また、今回の発音解析処理の結果(すなわち、学習結果)は、学習プランの進捗状況等とともに、メモリ部150に個人データとして更新保存、又は、新規に保存される。これにより、使用者は、自己の発音の習熟度の変化を的確に把握して、今後の習熟度の向上に反映させることができる。
【0058】
次いで、上記の一連の学習プランの終了後、電子機器の使用を終了しない(又は、使用を継続する)場合(ステップS320のNo)には、演算処理部140は、ステップS318に戻って、表示部110に再度ホーム画面を表示して、個人データへのアクセスや、当該個人データを利用した学習プランの実行が可能な状態を継続する。一方、電子機器100から音響機器200が取り外された場合や、使用者が電源スイッチをオフ操作した場合(ステップS320のYes)には、演算処理部140は、電子機器における全ての動作を終了又は停止する。なお、ステップS320における終了判断処理は、一連の学習プランの終了後だけでなく、当該学習プランの実行中においても、電子機器100から音響機器200が取り外された場合や、使用者が電源スイッチをオフ操作した場合には適用される。この場合、演算処理部140は、電子機器における動作を終了又は停止までの間に、更新されたり新たに作成されたりした学習プランの進捗状況や学習結果等をログとして記録し、メモリ部150に個人データとして更新保存、又は、新規に保存する。
【0059】
一方、上記の個人認証処理(ステップS314)において、現在電子機器を使用している使用者が、予め登録された使用者本人であると認証されなかった場合(ステップS314のNo)には、演算処理部140は、予め登録された使用者本人の個人データへのアクセスを不許可にするとともに(ステップS322)、表示部110に個人認証されなかった旨のメッセージを表示して通知した(ステップS324)後、電子機器における全ての動作を終了又は停止して、電子機器の使用を終了する。
【0060】
なお、上記の個人認証処理(ステップS314)においては、例えば演算処理部140が、音響機器200により取得された反響波の波形(すなわち、耳穴内の音響特性)について、事前に適否を判断するようにしてもよい。すなわち、例えば、反射波の波形の振幅が非常に小さかったりノイズ成分の混入が著しかったりして、個人認証処理に適さないと判断された場合には、演算処理部140は、有効な反響波に基づく反響信号が取得されるまで、音響機器200に対して認証指示信号を繰り返し送信して反響波を取得する処理(ステップS306~S312)を繰り返し実行する。この反響波を取得する処理は、所定回数又は所定時間、繰り返し実行され、所定回数又は所定時間内に有効な反響波が取得されなかった場合には、演算処理部140は、上記のステップS322、S324と同様に、個人データへのアクセスを不許可にするとともに、表示部110に個人認証されなかった旨のメッセージを表示した後、電子機器の使用を終了するものであってもよい。
【0061】
また、上記の個人認証処理(ステップS314)において、使用者が個人認証されなかった場合(ステップS314のNo)には、演算処理部140は、上記のステップS322~S324に示した処理動作に替えて、後述する変形例(
図6のフローチャート)に示すステップS622~S626の一連の処理動作(個人データへのアクセス不許可、個人データを利用しない学習プランの実行、電子機器の終了判断)を実行するものであってもよい。
【0062】
このように、本実施形態は、電子機器100に音響機器200を接続して利用する電子機器において、音響機器200の発音部210から出力された認証波が使用者の耳穴内で反響し、受音部220に入力された反響波に基づいて、音響機器200を装着した使用者を特定する個人認証処理を実行して、使用者本人の個人データへのアクセスの可否を決定する。
【0063】
これにより、電子機器に新たな構成を追加することなく、電子機器における通常の動作(学習プラン等)を実行する際に用いる音響機器を適用して、個人認証のみを目的とした動作をすることなく、一連の学習準備として耳に音響機器を装着するだけで、使用者本人を適切に特定する個人認証処理を実行することができ、使用者本人の個人データの閲覧や更新、或いは、当該個人データを利用した学習プランや機能を良好に実行することができる。特に、学校教育の現場をはじめ、語学学習の現場では、会話能力の向上が重視されているため、各国語の会話学習用の電子学習機器においても、マイク機能が搭載されたイヤホンやヘッドホンを採用する製品が一般的になっている。したがって、本発明はこのような電子機器に良好に適用することができる。
【0064】
なお、登録済みの使用者Aから未登録の使用者Bに登録の変更を行う場合、或いは登録済みの使用者Aに加えて未登録の使用者Bの登録を行う場合、登録済みの使用者Aが音響機器200及び電子機器100を用いてステップS302~S314の一連の個人認証を行い、登録の変更又は追加の設定を可能な状態とする。この後、電子機器100の入力操作部120から登録のための入力によって登録の変更又は追加を設定するモードに移行する。この後、使用者Bが上述した認証のための初期設定を行い登録が完了する。登録を削除する場合も、電子機器100の入力操作部120から登録のための入力の代わりに電子機器100の入力操作部120から削除のための入力以外は上記と同様の操作を行う。
【0065】
(変形例)
次に、上述した実施形態に適用可能な変形例について説明する。
図5は、本実施形態に係る電子機器に適用可能な変形例を示す図である。
図6は、本変形例に係る電子機器の制御方法の一例を示すフローチャートである。ここで、上述した実施形態と同等の処理動作については同等の符号を示して説明を簡略化する。
【0066】
上述した実施形態においては、電子機器100にマイク付きイヤホン等の音響機器200が接続された状態を判断して、使用者固有の生体情報に基づく認証情報を取得し、個人認証を行う場合について説明した。すなわち、電子機器100に接続される音響機器200が、上述した使用者固有の認証情報を取得する処理に適したマイク付きイヤホン等(例えば、電子機器のメーカーが指定する正規品や、それに準ずる品質の製品)であることを前提にして、当該音響機器200が接続された状態を判断して(トリガーとして)、認証情報を取得する処理、及び、使用者本人を特定する個人認証処理とが実行される。
【0067】
本実施形態に係る変形例においては、電子機器100が音声を入出力する音響部を内蔵する構成を有するとともに、音響機器200としてマイク機能が搭載されていないイヤホン(マイクなしイヤホン)が接続される場合に対応した制御方法を有している。
【0068】
具体的には、電子機器100は、音響機器200として接続されるマイク付きイヤホンを介した音声等の入出力を有効とする(又は、優先する)外部マイクモードと、電子機器100に内蔵された音響部を介した音声等の入出力を有効とする(又は、優先する)本体マイクモードと、を有している。これにより、電子機器は、各モードに応じて電子機器100における動作状態が制御される。
【0069】
(外部マイクモード)
例えば
図5に示すように、電子機器100がマイク付きイヤホンを介した音声等の入出力を有効とする「外部マイクモード」に設定されている状態で、
図6のフローチャートに示すように、I/F部130に音響機器200として正規のマイク付きイヤホンが接続された場合(ステップS604のYes)には、演算処理部140は外部マイクモードの設定をそのまま保持する。そして、演算処理部140は、上述した実施形態(
図3)に示した制御方法のステップS306~S320と同様に、ステップS606~S620に示す一連の処理動作(認証情報取得処理、個人認証処理、学習プラン実行処理、電子機器の終了判断)を実行する。
【0070】
すなわち、演算処理部140が、音響機器200であるマイク付きイヤホンに対して、認証指示信号を送信することにより(ステップS606)、マイク付きイヤホンから使用者の耳穴内に認証波が出力される(ステップS608)。次いで、マイク付きイヤホンにより使用者の耳穴内で反射した反響波が取り込まれ(ステップS610)、反響信号として送信されると(ステップS612)、演算処理部140は、反響信号に含まれる認証情報に基づいて使用者本人を特定する個人認証処理を実行する(ステップS614)。個人認証処理により使用者が特定されて本人であると認証された場合(ステップS614のYes)には、演算処理部140は、当該使用者の個人データへのアクセスを許可して(ステップS616)、当該個人データを利用した学習プランや機能を実行する(ステップS618)。
【0071】
一方、上記の個人認証処理(ステップS614)において、電子機器を使用している使用者が個人認証されなかった場合(ステップS614のNo)には、演算処理部140は、上述した実施形態(
図3)に示した制御方法のステップS322~S324と同様の処理動作(個人データへのアクセス不許可、非認証通知、電子機器の使用終了)するものであってもよいし、
図6のフローチャートに示すステップS622~S626の一連の処理動作を実行するものであってもよい。
【0072】
すなわち、電子機器の使用者が個人認証されなかった場合には、演算処理部140は、予め登録された個人データへのアクセスを不許可にするとともに(ステップS622)、当該個人データを利用しない設定状態で音声等の入出力に対応した学習プランや機能を実行する(ステップS624)。
【0073】
ここで、上記のステップS624における個人データを利用しない学習プランについて、
図4に示した英会話学習を例にして説明すると、例えば
図4(a)に示すように、使用者が電子機器100の表示部110に表示されたホーム画面から任意のメニューリスト等を選択すると、演算処理部140は、使用者の個人データを利用しない設定状態で、選択された学習プランを実行する。使用者が例えば「発音トレーニング」を選択すると、演算処理部140は、表示部110に、当該学習プランにおける実行条件(
図4(c)に示す「出題方法」や
図4(d)に示す「出題範囲」)等を入力するための表示を行う。このとき、個人データを利用しない設定状態では、使用者の学習プランに関する履歴は参照されないため、
図4(d)中に示した出題範囲のリストに「未出題」の項目は表示されず、例えば「難易度」の項目だけが表示される。
【0074】
そして、使用者が任意の実行条件等を入力すると、演算処理部140は、上述した実施形態と同様に、例えば
図4(e)に示すように、当該条件に基づく例文を出題して、表示部110に表示するとともに、音響機器200を介して模範音声を再生出力する。使用者が模範音声に続いて音響機器200を介して例文を入力すると、
図4(f)に示すように、演算処理部140は、使用者が発音した音声を録音し、
図4(g)に示すように、使用者の音声データと出題された例文の模範音声データとを比較して、発音解析処理を実行する。発音解析処理の結果は、例えば
図4(h)に示すように、円グラフ等の理解しやすい形態で表示部110に表示される。
【0075】
このとき、個人データを利用しない設定状態では、使用者の学習プランに関する履歴は参照されないため、
図4(h)中に示した「前回」の解析結果は表示されず、今回の結果のみが表示される。また、今回の解析結果(すなわち、学習結果)は、使用者が個人認証されていないため、履歴として保存されない。
【0076】
そして、個人データを利用しない学習プランの終了後、電子機器の使用を終了しない(又は、使用を継続する)場合(ステップS626のNo)には、演算処理部140は、ステップS624に戻って、個人データを利用しない学習プランの実行が可能な状態を継続する。一方、電子機器の利用を終了する場合(ステップS626のYes)には、演算処理部140は、電子機器における全ての動作を終了又は停止して、電子機器の使用を終了する。
【0077】
なお、
図5に示すように、この外部マイクモードにおいて、電子機器100に接続されていたマイク付きイヤホンを取り外すと、演算処理部140は、モード設定を本体マイクモードに切り替えて、電子機器100に内蔵された音響部による音声等の入出力が有効な状態に設定する。
【0078】
一方、上記の音響機器200の接続判断処理(ステップS604)において、I/F部130に音響機器200としてマイクなしイヤホンが接続された場合(ステップS604のNo)には、外部マイクモードの設定はそのまま保持されるものの、音声等の入力ができない(すなわち、認証情報取得処理に適さない)音響機器であるため、演算処理部140は、個人認証処理を実行することなく、使用者本人の個人データへのアクセスを不許可にするとともに(ステップS628)、発音を伴わない特定の学習プランや機能を実行する(ステップS630)。ここでは、例えば電子機器100の表示部110に例文のリストが表示され、使用者が任意の例文を選択することにより、演算処理部140は、当該例文を表示部110に表示するとともに、マイクなしイヤホンを介して模範音声を再生出力する。すなわち、この状態においては、リスニングに特化した学習プランが実行される。
【0079】
(本体マイクモード)
また、
図5に示すように、電子機器100が内蔵された音響部を介した音声等の入出力を有効とする「本体マイクモード」に設定されている状態で、
図6のフローチャートに示すように、I/F部130に音響機器200として正規のマイク付きイヤホンが接続された場合(ステップS604のYes)には、演算処理部140は表示部に110に、マイクの設定を本体マイクからマイク付きイヤホンのマイクに変更するか否かの判断を促す旨のメッセージを表示する。これにしたがって、使用者がマイクの設定を切り替えた場合には、演算処理部140は、モード設定を本体マイクモードから外部マイクモードに切り替えて、電子機器100に接続されたマイク付きイヤホンによる音声等の入出力が有効な状態に設定する。以下、上述した「外部マイクモード」において、正規のマイク付きイヤホンが接続された場合の一連の処理動作(ステップS606~S620に示す認証情報取得処理、個人認証処理、学習プラン実行処理、電子機器の終了判断)が実行される。
【0080】
なお、
図5に示すように、この本体マイクモードにおいて、電子機器100に接続されていたマイク付きイヤホンを取り外すと、演算処理部140は、モード設定をそのまま保持して、電子機器100に内蔵された音響部による音声等の入出力が有効な状態に設定する。
【0081】
一方、上記の音響機器200の接続判断処理(ステップS604)において、I/F部130に音響機器200としてマイクなしイヤホンが接続された場合(ステップS604のNo)には、本体マイクモードの設定はそのまま保持されて、電子機器100の音響部のマイクを介した音声等の入力が有効な状態に設定される。ここでは、マイクなしイヤホンによる音声等の入力ができない(すなわち、認証情報取得処理に適さない)ため、演算処理部140は、個人認証処理を実行することなく、使用者本人の個人データへのアクセスを不許可にするとともに(ステップS628)、音響部のマイク、及び、I/F部130に接続されたマイクなしイヤホンを介した音声等の入出力に対応した特定の学習プランや機能を実行する(ステップS630)。すなわち、この状態においては、上記のステップS624と同様に、使用者の個人データを利用しない設定状態で音声等の入出力に対応した学習プランや機能が実行される。
【0082】
このように、本変形例は、電子機器100に内蔵された音響部と、外部に接続された音響機器200とを利用する電子機器において、音声等の入出力に利用する音響手段を適切に設定するとともに、使用者本人の個人データへのアクセスの可否や、学習プランにおける個人データの利用の可否等を各種の条件に基づいて設定することができる。
【0083】
これにより、電子機器に新たな構成を追加することなく、個人認証のみを目的とした動作をすることなく、一連の学習準備として耳に音響手段を装着するだけで、電子機器に設定される動作モード(外部マイクモード、本体マイクモード)、及び、学習プラン等を実行する際に用いる音響手段に基づいて、自動的に使用者本人を適切に特定する個人認証処理を実行することができ、使用者本人の個人データの閲覧や更新、或いは、当該個人データを利用した学習プランや機能を良好に実行することができる。このため、仮に電子機器100が盗難或いは紛失されたとしても学習プランやその進捗状況、学習の習熟度(成績)等の個人データが漏洩されることがない。
【0084】
(なお書き)
なお、上述した実施形態及び変形例においては、使用者の耳穴に挿入する形態を有するインナー型やカナル型のイヤホンを備えた音響機器200を適用し、耳穴内の音響特性に基づいて使用者本人を特定する個人認証処理を実行する場合について説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。すなわち、本発明は使用者が耳部や頭部に装着する音響機器により、使用者固有の生体情報を認証情報として取得することができるものであればよいので、認証情報として取得される生体情報が個人認証処理に適用される精度や情報量等の条件を満たしているのであれば、音響機器として、例えば密閉型や開放型のマイク付きヘッドホン等を適用するものであってもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、一人(単一)の使用者について個人認証を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1台の電子機器を複数の使用者で共有する場合であっても良好に適用することができる。この場合には、個人認証処理において、使用者が装着した音響機器200により取得された認証情報と、予め登録された複数の使用者の認証情報とを個別に比較することにより、現在の電子機器の使用者が特定されて、使用者ごとに予めの登録された複数の個人データの中から、個人認証された使用者の個人データへのアクセスのみが許可されて、当該個人データを利用した学習プランや機能が実行される。
【0086】
また、本実施形態においては、使用者の個人認証処理を電子機器100の演算処理部140により実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばネットワーク上のサーバで個人認証処理を実行するものであってもよい。近年、情報の漏洩等に対する対策として、例えば情報処理機器内に会計情報や顧客情報等の重要情報や機密情報を保存せず、ネットワーク上のサーバに保存するシステムが増加している。本発明においても、予め登録された1又は複数の個人データをネットワーク上のサーバに保存して、電子機器100内のメモリ部150に保存しないようにし、さらに、使用者の本人の個人認証処理をサーバ上で実行することにより、電子機器100の構成を簡略化しつつ処理負担を大幅に軽減することができるとともに、セキュリティ面での信頼性を高めることができる。
【0087】
また、本実施形態においては、マイク付きイヤホンを利用する電子機器として、英会話学習機や電子辞書等の電子学習機器を適用例として示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、同等の機能を備えた他の電子機器、例えばスマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機等に適用するものであってもよい。また、個人認証処理によりアクセスの可否が決定される個人データとして、英会話学習等における学習プランや学習結果等の履歴を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。マイク付きイヤホンを利用する電子機器で取り扱うことができ、使用者に固有の情報であれば、例えば、内耳に挿入したセンサにより体温や脈拍を計測し、その経過を保存する医療機器や健康管理機器等に、本発明を適用するものであってもよい。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実行可能な範囲で上記複数の実施形態の各構成を組合せしてなしたものを含み、また特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0089】
(付記)
[1]
音を出力する発音部、及び、音が入力される受音部を備えた音響機器が接続されることにより、固有の認証情報の取得を前記音響機器に指示し、
前記音響機器からの前記認証情報に基づいて前記音響機器を装着している使用者の個人認証を行うことを特徴とする電子機器。
【0090】
[2]
前記個人認証の結果に基づいて、予め保存された前記使用者の個人データへのアクセスの可否、及び、前記個人データを利用した動作の実行状態を制御することを特徴とする[1]に記載の電子機器。
【0091】
[3]
前記個人認証により前記使用者が特定された場合には、前記使用者の前記個人データへのアクセスを許可して、前記個人データを利用した前記動作を実行するとともに、前記動作中に取得した新たな個人データを保存し、前記動作中に取得した前記新たな個人データについて、前記予め保存された前記使用者の前記個人データが存在する場合には、前記新たな個人データとの比較に関する前記情報を提供することを特徴とする[2]に記載の電子機器。
【0092】
[4]
前記個人認証により前記使用者が特定されなかった場合には、前記使用者の前記個人データへのアクセスを不許可にし、前記個人データを利用しない動作を実行することを特徴とする[2]に記載の電子機器。
【0093】
[5]
前記個人データを利用した動作として、前記音響機器が入力した発音のデータを入力する又は前記音響機器に発音のデータを出力することを特徴とする[2]乃至[4]のいずれかにに記載の電子機器。
【0094】
[6]
音を出力する発音部、及び、音が入力される受音部を備え、
電子機器が接続されることにより、前記電子機器からの固有の認証情報の取得の指示に従い取得した認証情報を前記電子機器に出力することを特徴とする音響機器。
【0095】
[7]
特定の周波数の音響波を出力し、前記音響波が前記音響機器を装着している使用者に反響されてなる反響波に基づく前記認証情報を前記電子機器に送信することを特徴とする[6]に記載の音響機器。
【0096】
[8]
前記認証情報は、前記音響波を前記使用者の耳穴に出力し、前記耳穴内の形状に応じて反射した前記反響波の波形に基づく音響特性であることを特徴とする[7]に記載の音響機器。
【0097】
[9]
音の入出力を伴う動作を実行し、前記動作に関連する情報を提供する電子機器は、音響機器に接続されることにより、前記音響機器に指示信号を送信し、
前記音響機器は、前記指示信号に基づいて、前記音響機器を装着した使用者に対して、前記音響機器からの前記音の入出力により前記使用者に固有の認証情報を取得し、
前記電子機器は、前記認証情報に基づいて、前記音響機器を装着している使用者の個人認証を行う、
ことを特徴する電子機器の制御方法。
【0098】
[10]
音の入出力を伴う動作を実行し、前記動作に関連する情報を提供する電子機器のコンピュータに、
前記電子機器が音響機器に接続されることにより、前記電子機器から前記音響機器に指示信号を送信させ、
前記指示信号に基づいて、前記音響機器を装着した使用者に対して、前記音響機器からの前記音の入出力により取得された前記使用者に固有の認証情報に基づいて、前記音響機器を装着している使用者の個人認証を行わせる、
ことを特徴する電子機器の制御プログラム。
【符号の説明】
【0099】
100 電子機器
110 表示部
120 入力操作部
130 I/F部
140 演算処理部
150 メモリ部
200 音響機器
210 発音部
220 受音部
230 I/F部
240 演算処理部