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特許7380799線条異常検知システム及び線条異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】線条異常検知システム及び線条異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20231108BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01B11/00 H
B60M1/28 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022155627
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小井手 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】川畑 匠朗
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-169939(JP,A)
【文献】特開2014-198524(JP,A)
【文献】特開2006-284535(JP,A)
【文献】特開2009-234338(JP,A)
【文献】特開2014-169936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
B60M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の運行のための少なくとも吊架線とトロリ線とを含む線条の異常を検知する線条異常検知システムであって、
前記線条と前記線条に付帯する金具とを撮影する撮像部と、
前記撮像部によって撮影された画像データから前記金具を検出する電車線金具検出部と、
前記検出された金具の位置に基づいて、金具同士が直線で結合し得る度合を示す尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する線条検出部と、
前記線条が含まれる画像領域から前記線条の異常を検知する線条異常検知部と、
を備えることを特徴とする線条異常検知システム。
【請求項2】
前記線条は、前記吊架線、前記トロリ線に加え、補助吊架線を含み、前記金具は、少なくとも、前記トロリ線を支持するハンガと前記補助吊架線を支持するドロッパとを含み、
前記画像データから前記ハンガと前記ドロッパとを識別する金具識別部をさらに備え、
前記線条検出部は、前記ハンガと前記ドロッパとを区別して前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の線条異常検知システム。
【請求項3】
前記線条検出部は、前記画像データに含まれる少なくとも2つの金具の重心のずれを示す偏位距離尤度と、前記2つの金具との距離に対応するライン方向の距離尤度と、前記2つの金具の重心のずれの角度に対応する角度尤度との合計尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の線条異常検知システム。
【請求項4】
前記線条検出部は、前記画像データに含まれる少なくとも3つの金具のうち、第1の金具と第2の金具の距離に対応するライン方向の距離尤度と、前記第2の金具と第3の金具の距離に対応するライン方向の距離尤度と、前記第1の金具と前記第2の金具との重心を結ぶ直線と前記第2の金具と前記第3の金具との重心を結ぶ直線とが成す角度に対応する差分角度尤度とを合計した合計尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の線条異常検知システム。
【請求項5】
前記線条及び前記金具までの距離及び仰角を取得する測域レーザ部をさらに備え、
前記線条検出部は、検出された金具の位置と前記測域レーザ部により取得された距離及び仰角とに基づいて、金具同士が直線で結合し得る度合を示す尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の線条異常検知システム。
【請求項6】
前記線条検出部は、
前記画像データに含まれる少なくとも2つの金具の重心を結ぶ直線が成す角度と前記測域レーザ部によるレーザ光とが成す角度とのずれの程度に対応するレーザ尤度と、前記少なくとも2つの金具の重心のずれを示す偏位距離尤度と、前記少なくとも2つの金具の距離に対応するライン方向の距離尤度と、前記少なくとも2つの金具の重心のずれの角度に対応する角度尤度とを合計した合計尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の線条異常検知システム。
【請求項7】
鉄道車両の運行のための少なくとも吊架線とトロリ線とを含む線条の異常を検知する線条異常検知方法であって、
前記線条と前記線条に付帯する金具とを撮像部によって撮影すること、
前記撮像部によって撮影された画像データから前記金具を検出すること、
前記検出された金具の位置に基づいて、金具同士が直線で結合し得る度合を示す尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出すること、
前記線条が含まれる画像領域から前記線条の異常を検知すること、
を含むことを特徴とする線条異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線条異常検知システム及び線条異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気鉄道設備のうち、架空電車線(トロリ線、吊架線、補助吊架線;以下「線条」)に対する保守点検作業があり、線条を構成する撚り線のほつれや断線等を検査員が目視で確認して保守を行っている。しかしながら、目視による点検には限界があり、異常を見逃す可能性があった。
【0003】
そこで、特許文献1には、ラインセンサカメラ画像からトロリ線を検出する技術が開示されている。また、特許文献2には、ラインセンサカメラ画像及び測域レーザを組み合わせて、架線及び吊架線の抽出を行い、三次元計測を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-040215号公報
【文献】特開2015-017882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ラインセンサカメラによる画像に対してエッジ検出処理により架線の連続性を評価しているが、画像処理では、線条を確実に検出することができないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2では、ラインセンサの画像に対して複数の画像処理を施す必要があるため、三次元計測を行うため処理が重くなり、処理に時間を要するという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、線条をより高精度で、かつより短時間で検出することが可能な線条異常検知システム及び線条異常検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の線条異常検知システムは、鉄道車両の運行のための少なくとも吊架線とトロリ線とを含む線条の異常を検知する線条異常検知システムであって、前記線条と前記線条に付帯する金具とを撮影する撮像部と、前記撮像部によって撮影された画像データから前記金具を検出する電車線金具検出部と、前記検出された金具の位置に基づいて、金具同士が直線で結合し得る度合を示す尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出する線条検出部と、前記線条が含まれる画像領域から前記線条の異常を検知する線条異常検知部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の線条異常検知方法は、鉄道車両の運行のための少なくとも吊架線とトロリ線とを含む線条の異常を検知する線条異常検知方法であって、前記線条と前記線条に付帯する金具とを撮像部によって撮影すること、前記撮像部によって撮影された画像データから前記金具を検出すること、前記検出された金具の位置に基づいて、金具同士が直線で結合し得る度合を示す尤度に基づいて、前記画像データから前記線条が含まれる画像領域を検出すること、前記線条が含まれる画像領域から前記線条の異常を検知すること、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、線条をより確実に、かつより短時間で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による線条異常検知システム10が用いられる電気鉄道設備を示す斜視図である。
図2】本第1実施形態による線条異常検知システム10の機能構成を示すブロック図である。
図3】本第1実施形態による線条異常検知システム10の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本第1実施形態の線条異常検知システム10による線条検出処理を説明するための概念図である。
図5】本第1実施形態による線条異常検知システム10による主要部分の結合尤度算出方法を説明するための概念図である。
図6】本第1実施形態による線条異常検知システム10による余り矩形の結合尤度算出方法を説明するための概念図である。
図7】本第1実施形態による線条異常検知システム10による金具矩形の結合情報を説明するための概念図である。
図8】本第1実施形態による線条異常検知システム10による線条矩形の割当方法を説明するための概念図である。
図9】本発明の第2実施形態による線条異常検知システム10が用いられる電気鉄道設備を示す斜視図である。
図10】本第2実施形態による線条異常検知システム10の機能構成を示すブロック図である。
図11】本第2実施形態による線条異常検知システム10の動作を説明するためのフローチャートである。
図12】本第2実施形態による線条異常検知システム10が用いられるコンパウンド区間の金具矩形を示す模式図である。
図13】本発明の第3実施形態による線条異常検知システム10が用いられる電気鉄道設備を示す斜視図である。
図14】本第3実施形態による線条異常検知システム10の機能構成を示すブロック図である。
図15】本第3実施形態による線条異常検知システム10の動作を説明するためのフローチャートである。
図16】本第3実施形態による線条異常検知システム10によるレーザデータを用いた結合尤度算出方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、鉄道車両の屋根上搭載カメラから取得された画像に対し、自動で線条検出を行うことを可能とし、後段処理で線条検出画像に対して異常検知を行うことで、線条に対する保守点検業務の省力化を実現することが本発明の目的である。
【0013】
A.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による線条異常検知システム10が用いられる電気鉄道設備を示す斜視図である。図1において、車両1は、矢印で示す進行方向に走行している。電気鉄道設備としては、車両1が走行する線路に沿って所定の間隔で架線柱3が配設されており、該架線柱3から吊架線4が吊り下げられている。そして、吊架線4がハンガ6(金具)でトロリ線5を支持している。
【0014】
本第1実施形態において、線条異常検知システム10は、車両屋根2上に設置された2台のラインセンサカメラ(撮像部)11a、11bと解析装置12とから構成される。ラインセンサカメラ11a、11bは、撮像面が枕木方向になるように設置される。すなわち、ラインセンサカメラ11a、11bは、車両の左右の斜め下方向から線条(吊架線4、トロリ線5)とハンガ6(金具)とを撮影することになる。なお、2台のラインセンサカメラ11a、11bを用いているのは、何らかの原因で撮影ができないなどの不具合があることを想定し、左右それぞれの方向から画像を撮影するためであるが、1台のみでも本線条異常検知システム10は機能する。
【0015】
なお、図1には、1つの線条(本線;吊架線4、トロリ線5)しか示していないが、実際には、本線に対して斜めに交差する渡り線等の線条も存在する場合がある。以下の処理では、本線の線条に加えて上記渡り線等の線条が含まれる場合を想定し、「余り矩形」として説明している。
【0016】
図2は、本第1実施形態による線条異常検知システム10の機能構成を示すブロック図である。線条異常検知システム10は、上述したように、ラインセンサカメラ11a、11bと解析装置12とから構成される。解析装置12は、記憶部13、電車線金具検出部14、線条検出部15及び線条異常検出部16から構成される。ラインセンサカメラ11a、11bで撮影された画像データは、記憶部13に保存される。ラインセンサカメラ11a、11bは、連続して画像を撮影しており、以降では、架線柱間分を1単位として解析処理される。
【0017】
電車線金具検出部14は、記憶部13に保存されている画像データから金具(ハンガ6)を検出し、金具検出情報として記憶部13に保存する。線条検出部15は、記憶部13に保存されている金具検出情報から線条(吊架線4、トロリ線5)を検出し、線条検出情報として記憶部13に保存する。線条異常検出部16は、記憶部13に保存されている線条検出情報に基づいて割り当てられた線条検出画像から線条(吊架線4、トロリ線5)の異常を検出し、異常判定(結果)として記憶部13に保存する。
【0018】
図3は、本第1実施形態による線条異常検知システム10の動作を説明するためのフローチャートである。まず、電車線金具検出部14は、記憶部13に保存されている架線柱間の画像データ20に対して電車線金具検出処理を行うことで金具(ハンガ6)の画像を検出し、金具検出位置(xmin, ymin, xmax, ymax)とラベル名とを紐付けた金具検出情報21を取得する(ステップS10)。なお、電車線金具検出処理の方法は特に限定しない。例えば、SSD、YOLO、FasterR-CNN、M2Det等の深層学習を用いた物体検出モデル等であってもよい。
【0019】
ここで、図4は、本第1実施形態の線条異常検知システム10よる線条検出処理を説明するための概念図である。図示するように、画像データは、架線柱間分を1単位としている。図4に示す画像データの場合には、2つの線条(交差線条)が撮影された場合を示している。図中の太線分は、トロリ線5を吊り下げているハンガ6(金具)である。線条検出処理では、画像内の全てのハンガ6(金具)が検出され、それぞれのハンガ6(金具)を囲む金具矩形6aを設定し、その金具矩形6aの座標を金具検出位置(xmin, ymin, xmax, ymax)として取得する。また、線条検出処理では、それぞれのハンガ6(金具)が何の金具に該当するのかを示し、画像内のどの金具であるかを区別するためのラベル名を設定する。この場合、ラベル名は「ハンガi」(i=0,1,...,n)である。
【0020】
次に、線条検出部15は、架線柱間に含まれる全てのハンガ6(金具)の金具検出位置(xmin, ymin, xmax, ymax)とラベル名とが紐付けられた金具検出情報21を受け取り、同架線上にあると判定した金具矩形6aを結んでいき(金具矩形6aの結合処理:下記ステップS14、S16、S18)、最終的に線条矩形を割り当てる(線条矩形の割当処理:下記ステップS20)ことで線条検出を行い、線条検出情報22を取得する(ステップS12)。
【0021】
より詳細に説明すると、線条検出部15は、まず、金具検出情報21から、金具矩形6aに対して、「ハンガ」ラベル矩形を線条検出に用いる金具矩形として登録する(ステップS14)。次に、線条検出部15は、主要部分(直線的な部分)の金具矩形を結合する(ステップS16)。ここで、主要部分(直線的な部分)の金具矩形の結合について説明する。
【0022】
図5は、本第1実施形態による線条異常検知システム10による主要部分の結合尤度算出方法を説明するための概念図である。主要部分(直線的な部分)の結合では、各結合候補同士の位置関係から結合尤度を計算する。図5に示すように、結合候補として金具矩形「0」と金具矩形「1」とに注目した場合、結合尤度は、金具矩形の重心のずれの距離を示す偏位距離D、金具矩形間の距離を示すライン方向の距離D、上記重心のずれの角度を示す角度θの3つのパラメータを用い、以下の式(1)~(4)から偏位距離尤度LDx、ライン方向の距離尤度LDy、角度尤度Lθ、それぞれの尤度に重み付けして合計した合計尤度Lを算出する。本線(走行線)は、画像縦方向に直線的に写るため、偏位距離Dとライン方向の距離Dとの要素を重視する。そして、互いに合計尤度Lが最大となる矩形を結合元(親矩形)及び結合先(子矩形)として結合して登録する。したがって、偏位距離Dが小さいほど、ライン方向の距離Dが規定された設置間隔に近いほど、角度θが0に近いほど、合計尤度は大きくなる。
【0023】
【数1】
【0024】
次に、線条検出部15は、主要部分以外の余り矩形(主要部分以外の金具矩形)を結合する(ステップS18)。ここで、余り矩形(斜めの部分)の金具矩形の結合について説明する。
【0025】
図6は、本第1実施形態による線条異常検知システム10による余り矩形の結合尤度算出方法を説明するための概念図である。余り矩形の結合では、主要部分として結合されなかった金具矩形の中で、対象となる金具矩形(図6における金具矩形「1」とその上の金具矩形「0」とその下の金具矩形「2」)の位置関係から結合尤度を計算する。結合尤度は、図6に示すように、金具矩形「0」と金具矩形「1」との距離を示すライン方向の距離Dy1、金具矩形「1」と金具矩形「2」との距離を示すライン方向の距離Dy2、金具矩形「0」と金具矩形「1」の重心を結ぶ直線と金具矩形「1」と金具矩形「2」の重心を結ぶ直線とが成す角度を示す差分角度θの3つのパラメータを用い、下記式(5)~(8)から、差分角度尤度Lθd、ライン方向の距離尤度LDy2、ライン方向の距離尤度LDy1に対して重み付けして合計した合計尤度Lを算出する。余り矩形は、画像縦方向に直線的でない分布の矩形で、上述した渡り線等が斜めに撮影された線条と考えられるため、差分角度θの要素を重視する。そして、合計尤度Lが最大となる金具矩形を結合元(親矩形)及び結合先(子矩形)として登録する。したがって、差分角度θが小さいほど、ライン方向の距離Dy1及びライン方向の距離Dy2が規定された設置間隔に近いほど、合計尤度は大きくなる。
【0026】
【数2】
【0027】
図7は、本第1実施形態による線条異常検知システム10による金具矩形の結合情報を説明するための概念図である。上述した主要部分(直線的な部分)の金具矩形の結合及び余り矩形(金具矩形)の結合により、図7に示すように、金具矩形「0」、「2」、「4」、「6」、「8」が主要部分として結合され、金具矩形「1」、「3」、「5」、「7」、「9」が余り矩形として結合される。主要部分の結合を結合グループG1とし、余り矩形の結合を結合グループG2とする。
【0028】
次に、線条検出部15は、結合された金具矩形から、線条を含む線条矩形を割り当てる割当処理を行う(ステップS20)。より詳細には、線条矩形の割当処理は、金具矩形の結合情報を元に各結合グループ単位で行う。以下では、図7に示す結合グループG1に対する線条矩形の割当について説明する。
【0029】
図8(a)、(b)は、本第1実施形態による線条異常検知システム10による線条矩形の割当方法を説明するための概念図である。図8(a)に示すように、矩形高さ位置を境界としてエリアを分け、各エリアで矩形の重心座標を通る近似式を求める。最上段及び最下段のエリアは、直近のペア矩形座標から1次関数の近似式を求める。それ以外は前後3つの矩形座標から2次関数の近似式を求める。
【0030】
次に、図8(b)に示すように、画像座標の上端から直近の2つの金具矩形のうち矩形幅が大きい方の値を用いて線条矩形サイズとし、線条矩形の中心座標を図8(a)で求めた近似式上とし、上から順に線条矩形(正方形の破線矩形)を割り当てる。最後の線条矩形には、キリが悪い分を足して調整する。また、次の矩形割当ライン位置は[矩形幅×シフト率(0~1)]で調整可能とする。
【0031】
最後に、線条異常検出部16は、線条異常検知処理として、線条検出情報22に基づいて割り当てられた線条検出画像を入力とし、線条の異常を検出する異常検出を行い、最終的に異常判定結果を出力する(ステップS22)。ここでの異常検出の方法については、特に限定しないが、例えば、VAE、GAN、ResNET、DeepSAD、CS-FLOW等の深層学習の物体認識モデルを用いた画像識別等を用いればよい。
【0032】
上述した第1実施形態によれば、車両1の車両屋根2上に搭載したラインセンサカメラ11a、11bで取得した画像から、電車線金具検出部14で、線条に付帯する金具を検出し、線条検出部15で金具検出情報から線条を検出し、線条異常検出部16で線条検出情報と線条画像とから線条の異常を検知するようにしたので、線条をより高精度で、かつより短時間で検出することができ、線条に対する保守点検業務の省力化を実現することができる。
【0033】
また、上述した第1実施形態によれば、線条検出部15で、金具同士が直線状に結合し得る度合を示す尤度を算出し、該尤度に基づいて画像データから線条を検出するようにしたので、本線のみならず、本線と交差する線条についても、より高精度で、かつより短時間で検出することができ、線条に対する保守点検業務の省力化を実現することができる。
【0034】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態による線条異常検知システム10が用いられる電気鉄道設備を示す斜視図である。第2実施形態は、コンパウンドカテナリ式の区間に対する処理となる。コンパウンドカテナリ式とは、図9に示すように、吊架線4とトロリ線5との間に補助用吊架線7を追加し、吊架線4がドロッパ8で補助用吊架線7を支持し、補助用吊架線7がハンガ6でトロリ線5を支持する方式である。
【0035】
図10は、本第2実施形態による線条異常検知システム10の機能構成を示すブロック図である。なお、図1に示す第1実施形態による線条異常検知システム10の機能構成に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第2実施形態では、金具識別部17を新たに設けている。金具識別部17は、上述したハンガ6とドロッパ8とを異なる金具として識別した金具検出情報を取得する。したがって、線条検出部15は、金具ごとに識別された金具検出情報に基づいて、それぞれの金具矩形毎に線条を検出する。
【0036】
図11は、本第2実施形態による線条異常検知システム10の動作を説明するためのフローチャートである。第2実施形態による線条異常検知システム10の動作は、基本的に、第1実施形態と同様であるが、金具識別部17による金具の種類による識別処理が追加されるとともに、線条検出部15での処理が金具の種類に応じた線条検出処理となる。
【0037】
まず、電車線金具検出部14は、記憶部13に保存されている架線柱間の画像データ20に対して電車線金具検出処理を行うことで金具(ハンガ6、ドロッパ8)の画像を検出し、金具検出位置(xmin, ymin, xmax, ymax)とラベル名とを紐付けた金具検出情報21を取得する(ステップS30)。次に、金具識別部17は、金具検出情報21からハンガ6とドロッパ8とを異なる金具として識別した金具検出情報24を取得する(ステップS32)。ハンガ6とドロッパ8とではその大きさが異なるので、ハンガ6とドロッパ8の識別には、金具矩形の幅を情報として用いる。
【0038】
図12は、本第2実施形態による線条異常検知システム10が用いられるコンパウンド区間の金具矩形を示す模式図である。図12に示すように、ハンガ6の矩形とドロッパ8の金具矩形では、矩形幅が大きく異なる。分類手法としては、特に限定しないが、例えば、k-meansを用いた金具矩形幅サイズによる2クラス分類を行うようにしてもよい。
【0039】
次に、線条検出部15は、架線柱間に含まれる全ての金具(ハンガ6及びドロッパ8)の金具検出位置とラベル名とが紐付けられた金具検出情報24を受け取り、同架線上にあると判定した金具矩形を結んでいき、最終的に線条矩形を割り当てることで線条検出を行い、線条検出情報25を取得する(ステップS34)。図示するステップS36~S42は、識別された異なる金具(ハンガ6、ドロッパ8)があることを除けば、第1実施形態のステップS14~S20と同様であるので説明を省略する。金具矩形の結合処理において、結合候補とする矩形は同じラベル同士(同じ金具同士)のものだけとすることで、コンパウンドカテナリ式の区間における線条検出の精度を高めることが可能である。したがって、本第2実施形態では、線条検出情報25としては、ハンガ6同士を結合して得られた線条矩形とドロッパ8同士を結合して得られた線条矩形とが取得される。
【0040】
最後に、線条異常検出部16は、線条異常検知処理として、ハンガ6同士を結合して得られた線条矩形とドロッパ8同士を結合して得られた線条矩形とを含む線条検出情報25に基づいて割り当てられた線条検出画像を入力とし、線条の異常を検出する異常検出を行い、最終的に異常判定結果26を出力する(ステップS44)。ここでの異常検出の方法については、第1実施形態と同様に、特に限定しないが、例えば、深層学習の物体認識モデルを用いた画像識別等を用いればよい。
【0041】
なお、上述した第2実施形態においては、金具識別部17を設けるとしたが、これに限らず、電車線金具検出部14で、金具としてハンガ6とドロッパ8とをそれぞれ検出してラベリング(「ハンガ」、「ドロッパ」)しておき、線条検出部15で、ラベルに従って、ハンガ6とドロッパ8とを登録する。このように、電車線金具検出部14と線条検出部15とが金具識別部17の機能を分担するようにしてもよい。
【0042】
上述した第2実施形態によれば、コンパウンドカテナリ式の区間において、車両1の車両屋根2上に搭載したラインセンサカメラ11a、11bで取得した画像から、線条に付帯する金具を検出し、異なる金具を分類し、分類した金具ごとの金具検出情報から線条を検出し、線条検出情報と線条画像とから線条の異常を検知するようにしたので、コンパウンドカテナリ式で用いられる吊架線、補助吊架線、トロリ線をより高精度で、かつより短時間で検出することができ、線条に対する保守点検業務の省力化を実現することができる。
【0043】
また、上述した第1実施形態によれば、金具同士が直線状に結合し得る度合を示す尤度を算出し、該尤度に基づいて画像データから線条を検出するようにしたので、本線のみならず、本線と交差する線条についても、コンパウンドカテナリ式で用いられる吊架線、補助吊架線、トロリ線をより高精度で、かつより短時間で検出することができ、線条に対する保守点検業務の省力化を実現することができる。
【0044】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図13は、本発明の第3実施形態による線条異常検知システム10が用いられる電気鉄道設備を示す斜視図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。第2実施形態では、ラインセンサカメラ11a、11bに加えて、車両屋根2上に測域レーザ18を追加して配設している。測域レーザ18は、線条(吊架線4及びトロリ線5)及び金具(ハンガ6)までの距離と、線条(吊架線4及びトロリ線5)及び金具(ハンガ6)に対する仰角とをレーザデータとして取得する。
【0045】
図14は、本第3実施形態による線条異常検知システム10の機能構成を示すブロック図である。なお、図2に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。測域レーザ18は、線条(吊架線4及びトロリ線5)までの距離と線条(吊架線4及びトロリ線5)に対する仰角とをレーザデータとして取得して記憶部13に保存する。したがって、線条検出部15は、金具ごとに分類された金具検出情報及びレーザデータに基づいて、金具矩形毎に線条を検出する。
【0046】
図15は、本第3実施形態による線条異常検知システム10の動作を説明するためのフローチャートである。第3実施形態による線条異常検知システム10の動作は、基本的に、第1実施形態と同様であるが、線条検出部15での処理が金具検出情報及びレーザデータを用いた線条検出処理となる。
【0047】
まず、電車線金具検出部14は、記憶部13に保存されている架線柱間の画像データ20に対して電車線金具検出処理を行うことで金具(ハンガ6)の画像を検出し、金具検出位置とラベル名とを紐付けた金具検出情報21を取得する(ステップS50)。
【0048】
次に、線条検出部15は、架線柱間に含まれる全ての金具(ハンガ6)の金具検出位置とラベル名とが紐付けられた金具検出情報21と、及び測域レーザ18で取得されたレーザデータ30とを受け取り、同架線上にあると判定した金具矩形を結んでいき、最終的に線条矩形を割り当てることで線条検出を行い、線条検出情報25を取得する(ステップS52)。
【0049】
第3実施形態において、図示するステップS54~S60は、第1実施形態のステップS14~S20と同様であるが、第1実施形態とは異なるレーザデータ30を用いた尤度の算出方法について説明する。
【0050】
図16(a)~(d)は、本第3実施形態による線条異常検知システム10によるレーザデータ30を用いた結合尤度算出方法を説明するための概念図である。ステップ56の主要部分の結合において、レーザデータ30を用いた尤度項を追加している。図16(a)~(d)に示すように、以下の流れでレーザデータ30を用いた尤度を計算する。まず、図16(a)に示すように、結合元となる金具矩形「0」にレーザ点が存在することを確認し(存在しない場合は尤度0)、図16(b)に示すように、結合候補の金具矩形「1」との間で1次近似式を算出する。次いで、図16(c)に示すように、1次近似式に基づくレーザ角度θと、金具矩形「0」と「1」の重心点を結ぶ直線に基づく矩形角度θとを算出し、図16(d)に示すように、レーザ角度θと矩形角度θとの差分角度θslを算出する。そして、下記式(9)から金具矩形の重心を結ぶ直線とレーザによる1次近似式で表わされる直線とのずれの程度を示すレーザ尤度Lを算出する。
【0051】
【数3】
【0052】
レーザ尤度Lは、入力されたレーザデータ30全てのチャンネルに対して計算を行い、最も合計尤度Lが高かったものを用いる(レーザは、同一架線を追跡してチャンネルで管理する)。レーザ尤度Lと第1実施形態の偏位距離尤度Ldx、ライン方向の距離尤度Ldy、角度尤度Lθとに重み付けして合計した合計値が結合候補矩形との合計尤度Lとなる(式(10))。第1実施形態の場合よりも入力情報が多くなるため、より精度良く線条検出が可能となる。ステップS58における余り矩形の結合についても、同様に、レーザデータ30を用いて線条検出を行う。また、ステップS60における線条矩形の割当については第1、第2実施形態と同様の処理を行う。
【0053】
最後に、線条異常検出部16は、線条異常検知処理として、線条検出情報31に基づいて割り当てられた線条検出画像を入力とし、線条の異常を検出する異常検出を行い、最終的に異常判定結果32を出力する(ステップS64)。ここでの異常検出の方法については、上述した第1、第2実施形態と同様に、特に限定しないが、例えば、深層学習の物体認識モデルを用いた画像識別等を用いればよい。
【0054】
上述した第3実施形態によれば、車両1の車両屋根2上に搭載したラインセンサカメラ11a、11bで取得した画像から線条に付帯する金具を検出し、金具検出情報と測域レーザ18で取得したレーザデータ30とから、金具同士が直線状に結合し得る度合を示す尤度を算出し、該尤度に基づいて画像データから線条を検出し、線条検出情報と線条画像とから線条の異常を検知するようにしたので、線条をより高精度で、かつより短時間で検出することができ、線条に対する保守点検業務の省力化を実現することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 車両屋根
3 架線柱
4 吊架線
5 トロリ線
6 ハンガ
7 補助吊架線
8 ドロッパ
10 線条異常検知システム
11a、11b ラインセンサカメラ
12 解析装置
13 記憶部
14 電車線金具検出部
15 線条検出部
16 線条異常検出部
17 金具識別部
18 測域レーザ
20 画像データ
21 金具検出情報
22、25、31 線条検出情報
23、26、32 異常判定結果
24 金具検出情報(識別済み)
30 レーザデータ
【要約】
【課題】線条をより高精度で、かつより短時間で検出する線条異常検知システムを提供する。
【解決手段】線条異常検知システム10は、ラインセンサカメラ11a、11b、記憶部、電車線金具検出部、線条検出部及び線条異常検出部から構成される。ラインセンサカメラ11a、11bは、走行中の車両1の車両屋根2上から線条(吊架線4、トロリ線5、ハンガ6)を撮影する。車線金具検出部は、画像データから線条に付帯する金具(ハンガ6)を検出する。線条検出部は、金具同士が直線状に結合し得る度合を示す尤度を算出し、該尤度に基づいて画像データから線条(吊架線4、トロリ線5)を検出する。線条異常検出部は、線条検出情報と線条画像とから線条(吊架線4、トロリ線5)の異常を検知する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16