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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20231108BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20231108BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20231108BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D21/02 A
B60K1/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022176272
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2018237072の分割
【原出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2023011827
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】河合 桂介
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080117(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1488425(KR,B1)
【文献】国際公開第2012/063393(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0229030(US,A1)
【文献】特開2017-210206(JP,A)
【文献】実開昭59-186180(JP,U)
【文献】特開2015-003715(JP,A)
【文献】特開2003-063455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/02
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下面の車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、該左右一対のサイドメンバ間に設けられる電源部材と、車両幅方向に延び、前記左右一対のサイドメンバを連結するクロスメンバとを備え、
前記クロスメンバは、前記電源部材が固定されるとともに、前記サイドメンバに固定されている車両下部構造において、
前記サイドメンバと前記クロスメンバとは、ブラケット部材を介して固定され、
前記電源部材には、複数の前記クロスメンバが固定され、
前記ブラケット部材は、車両幅方向内側の位置で前記ブラケット部材の下面が前記クロスメンバに固定されるクロスメンバ側固定部と、前記サイドメンバの下面に固定されるサイドメンバ側固定部と、該サイドメンバ側固定部の車両幅方向内側端部から前記クロスメンバ側固定部まで延び、車両幅方向内側へ向かって下方に傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記サイドメンバ側固定部から前記クロスメンバ側固定部へ向かって延びる稜線を有し、該稜線は、車両前後方向に間隔を空けて前記傾斜面の前後部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記稜線の車両前後方向における前記間隔は、車両幅方向内側に向かうに従って拡大していることを特徴とする請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記クロスメンバは、前記電源部材が固定される閉断面構造の本体部と、前記サイドメンバに固定されるフランジ部と、前記本体部と前記フランジ部との境界領域において、車両幅方向内側へ向かって湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部は、前記ブラケット部材と車両幅方向で重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記サイドメンバは、断面略U字状に形成され、前記サイドメンバの内部には、前記サイドメンバと前記クロスメンバを固定する固定部材と、前記サイドメンバの左右両側壁を連結するリンフォースメントが設けられ、前記固定部材の上部は、前記リンフォースメントに接合され、前記固定部材の下部は、前記サイドメンバの下面に接合されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の車両下部構造。
【請求項6】
前記ブラケット部材と前記クロスメンバとの間には、前記サイドメンバと前記クロスメンバとの固定を補助する固定補助部材が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の車両では、駆動用バッテリなどの電源部材が搭載
されており、該電源部材は、レイアウトの都合上、車体フロアの下方などの車両下部に設
けられている。そのため、電気自動車やハイブリッド自動車等においては、特に車両側突
時の衝撃荷重に対する電源部材の破損を避ける措置を施す必要がある。
そこで、従来の車両の中には、電池を支持するバッテリフレーム(クロスメンバ)をア
ンダーメンバ(サイドメンバ)に固定するフランジ部に延性部材を設けることにより、側
突時の衝撃荷重が加わった場合に、バッテリフレームのフランジ部から底部までの破損を
抑制する構造が取られているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-80117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車両下部構造は、側突時にバッテリフレームのフランジ
部から底部までを屈曲変形させる構造であるので、十分な荷重分散や荷重吸収を行うこと
ができず、衝突物の車両内側への侵入量を増加させるおそれがあった。そのため、従来の
車両下部構造は、重要部品である電源部材の破損を抑制する構造として改善する余地があ
った。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、側突時の衝撃荷重を効率良くクロスメンバに伝達して分散させ、クロスメンバの屈曲変形を抑制することが可能な車両下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、フロアパネルの下面の車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、該左右一対のサイドメンバ間に設けられる電源部材と、車両幅方向に延び、前記左右一対のサイドメンバを連結するクロスメンバとを備え、前記クロスメンバは、前記電源部材が固定されるとともに、前記サイドメンバに固定されている車両下部構造において、前記サイドメンバと前記クロスメンバとは、ブラケット部材を介して固定され、前記電源部材には、複数の前記クロスメンバが固定され、前記ブラケット部材は、車両幅方向内側の位置で前記ブラケット部材の下面が前記クロスメンバに固定されるクロスメンバ側固定部と、前記サイドメンバの下面に固定されるサイドメンバ側固定部と、該サイドメンバ側固定部の車両幅方向内側端部から前記クロスメンバ側固定部まで延び、車両幅方向内側へ向かって下方に傾斜する傾斜面を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両下部構造においては、車両幅方向の荷重がサイドメンバからブラケット部材を介してクロスメンバに効率良く伝達されて分散されることになるので、重要部品である電源部材を側突時の衝撃荷重から効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両下部構造において、フロアパネル、サイドメンバ及びクロスメンバ等の全体を車両下方から示す斜視図である。
図2図1におけるZ部を拡大して示す斜視図である。
図3図2におけるA-A線断面図である。
図4図2におけるB-B線断面斜視図である。
図5図2におけるC-C線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両下部構造において、クロスメンバ、ブラケット部材及び固定補助部材の位置関係を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両下部構造におけるブラケット部材を上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
なお、図において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印I方向は車両幅方向内側を示
している。また、矢印X方向は車両幅方向を示し、矢印Y方向は車両前後方向を示してい
る。
【0010】
図1図7は本発明の実施形態に係る車両下部構造を示すものである。本実施形態の車
両下部構造は、図1図5に示すように、車両幅方向及び車両前後方向に展開するフロア
パネル1の下面の車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメ
ンバ2と、これら左右一対のサイドメンバ2間に設けられ、フロアパネル1の下方に搭載
される電源部材(駆動用バッテリ、電池パック等)3と、車両幅方向に延び、左右一対の
サイドメンバ2を連結する複数本のクロスメンバ4とを備えており、該クロスメンバ4は
、電源部材3の車両下方に位置し、車両前後方向に間隔を空けて配置されている。なお、
サイドメンバ2の車両幅方向外側には、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル5が
設けられている。
本実施形態のクロスメンバ4は、電源部材3が固定部Dで固定される閉断面構造の本体
部41と、サイドメンバ2に固定されるフランジ部42を有している。本体部41は、ク
ロスメンバ4の車両幅方向の中間部分に位置しており、上下に間隔を空けて配置される上
下一対のメンバ体41a,41bを有している。フランジ部42は、クロスメンバ4の車
両幅方向の外側端部に位置しており、車両後方視で本体部41の車両幅方向外側の開口端
を塞ぐように、上下一対のメンバ体41a,41bに接合されている。
【0011】
本実施形態の車両下部構造においては、図3図5に示すように、サイドメンバ2とク
ロスメンバ4のフランジ部42とがブラケット部材6を介して固定されており、これらブ
ラケット部材6とクロスメンバ4とが組み合わされることにより、ブラケット部材6の固
定部周りの剛性を高める閉断面部S1が形成されている。しかも、この閉断面部S1は、
車両幅方向でクロスメンバ4の本体部41とフランジ部42との境界領域Rを跨ぐ位置に
配置されており、この配置によってサイドメンバ2とクロスメンバ4との固定部の応力集
中箇所の位置がずらせるようになっている。また、ブラケット部材6は、車両幅方向内側
の位置でクロスメンバ4の本体部41に固定されるクロスメンバ側固定部61を有してい
る。さらに、ブラケット部材6の車両幅方向外側に位置する閉断面部S1の下方には、図
5に示すように、クロスメンバ4の本体部41とフランジ部42とによって形成される端
部閉断面部S2が設けられ、該端部閉断面部S2は、閉断面構造の本体部41の閉断面部
と繋がっており、サイドメンバ2とクロスメンバ4との固定部に加わる荷重の車両幅方向
への伝達が促進されるようになっている。
【0012】
本実施形態のブラケット部材6は、図3図7に示すように、車両上面視で四角形形状
に形成され、サイドメンバ2の下面2aに固定されるサイドメンバ側固定部62と、該サ
イドメンバ側固定部62の車両幅方向内側端部からクロスメンバ側固定部61まで延び、
車両幅方向内側へ向かって下方に傾斜する傾斜面63を有している。すなわち、ブラケッ
ト部材6は、板状部材を加工することにより、車両幅方向の内側部分6aと車両前後方向
の前側部分6b及び後側部分6cを残して中央部分が車両上方へ向かって膨出し、車両側
方視で台形形状に形成されており、サイドメンバ側固定部62を中心として三方が放射線
状に拡がって内側部分6a、前側部分6b及び後側部分6cの下面が、クロスメンバ4に
接合されるように構成されている。なお、サイドメンバ側固定部62には、後述の締結ボ
ルトの軸部を挿通させる貫通孔65が設けられている。
これによって、サイドメンバ2からの荷重がブラケット部材6のサイドメンバ側固定部
62及び傾斜面63を介してクロスメンバ4側に円滑に伝達され、局所的な荷重集中が抑
制されるようになっている。
【0013】
また、本実施形態のブラケット部材6の傾斜面63は、図7に示すように、サイドメン
バ側固定部62の車両幅方向内側に位置する角部62aからクロスメンバ側固定部61へ
向かって延びる複数本の稜線64を有している。これら稜線64は、車両前後方向に間隔
を空けて傾斜面63の前後部にそれぞれ設けられている。このような稜線64を傾斜面6
3が有することにより、ブラケット部材6のサイドメンバ側固定部62から車両幅方向に
入力された荷重が、稜線64に沿って効率的に伝達され、クロスメンバ側固定部61より
クロスメンバ4側へ分散され、荷重の局所的集中が抑えられるようになっている。
【0014】
一方、本実施形態のクロスメンバ4は、図2及び図3に示すように、本体部41とフラ
ンジ部42との境界領域Rにおいて、車両幅方向内側へ向かって湾曲する湾曲部43を有
している。すなわち、湾曲部43は、クロスメンバ4の上側に位置するフランジ部42か
ら本体部41の下側メンバ体41bへ向かって車両幅方向内側へ湾曲した横置きの略S字
形状に形成されており、湾曲部43の周辺部は、本体部41の下側メンバ体41bに接合
されている。このような形状の湾曲部43によって、ブラケット部材6側の閉断面部S1
とクロスメンバ4の本体部41が有する閉断面部を合わせた合計閉断面部の断面積変化を
減らし、合計閉断面部の面積を維持する構造が得られることになる。
ところで、クロスメンバ4の湾曲部43は、車両上下方向の荷重に対して剛性を有して
いる。そのため、当該湾曲部43は、ブラケット部材6の傾斜面63と車両幅方向で重な
る位置に配置されている。これに伴い、湾曲部43と本体部41とが接合される部分に荷
重が集中して変形が生じる場合に、湾曲部43が傾斜面63の範囲内に配置されているこ
とから、傾斜面63に荷重が伝達され、当該湾曲部43への荷重集中が防げる構造になっ
ている。
【0015】
本実施形態のサイドメンバ2は、図3図5に示すように、平面状の下面2aと、該下
面2aの車両幅方向の内側及び外側に位置し、車両上方へ向かって延びる左右両側壁2b
,2cとを有する断面略U字状に形成されている。サイドメンバ2の内部には、サイドメ
ンバ2とクロスメンバ4を固定する円筒形の固定部材7と、サイドメンバ2の左右両側壁
2b,2cを連結するリンフォースメント21が設けられている。そのため、固定部材7
の内周面には、サイドメンバ2とクロスメンバ4とを締結する締結ボルト8の軸部の雄ね
じと螺合する雌ねじが形成されている。また、リンフォースメント21は、サイドメンバ
2の下面2aの上方に位置し、該下面2aに対して間隔を空けて配置される取付面21a
と、サイドメンバ2の左右両側壁2b,2cに接合される側面21b,21cとを有して
おり、取付面21aには、固定部材7の上部を挿入する取付孔21dが設けられている。
なお、サイドメンバ2の下面2aと、クロスメンバ4の本体部41及びフランジ部42に
は、ブラケット部材6の貫通孔65及びリンフォースメント21の取付孔21dと対応し
て、締結ボルト8の軸部を挿通させる挿通孔2d,41c,42aが設けられている。
固定部材7は、円筒体の上端に位置する小径の上部7aと、円筒体の下端に位置する大
径の下部7bと、円筒体の上下中間に位置し、上下部7a,7cの間の径で形成された中
間部7cとを有しており、固定部材7の上下長さは、サイドメンバ2の下面2aとリンフ
ォースメント21の取付面21aとの間隔よりも少し大きく形成されている。固定部材7
の上部7aは、取付孔21dを介して取付面21aの上方に突出され、中間部7cが取付
面21aの下面に当接した状態でリンフォースメント21に接合されている。固定部材7
の下部7bは、サイドメンバ2の下面2aの上に接合されている。
これにより、サイドメンバ2の右側側壁2cに入力される車両幅方向の荷重がリンフォ
ースメント21及び固定部材7を介してクロスメンバ4に伝達されることになり、荷重の
伝達及び分散が促進されるような構造になっている。
【0016】
さらに、本実施形態のブラケット部材6とクロスメンバ4のフランジ部42との間には
図3図5及び図6に示すように、サイドメンバ2とクロスメンバ4との固定を補助す
る円筒形の固定補助部材9が設けられている。そのため、固定補助部材9は、ブラケット
部材6のサイドメンバ側固定部62と、クロスメンバ4の本体部41の上側メンバ体41
aとの上下間に配置可能で、かつ円筒体の上下面がサイドメンバ側固定部62及び上側メ
ンバ体41aと当接可能な上下長さを有している。また、固定補助部材9は、締結ボルト
8を挿通させることが可能な内径を有している。しかも、固定部材7及び固定補助部材9
は、締結ボルト8により締結されており、締結ボルト8の車両幅方向の剛性を利用できる
構造を有している。
これにより、サイドメンバ2から入力される荷重が固定補助部材9を介してクロスメン
バ4に伝達されることになり、荷重の分散がさらに促進されるようになっている。
【0017】
このように、本発明の実施形態に係る車両下部構造では、フロアパネル1の下面の車両
幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ2と、左右一対の
サイドメンバ2間に設けられる電源部材3と、車両幅方向に延び、前記左右一対のサイド
メンバ2を連結するクロスメンバ4とを備えている。クロスメンバ4は、電源部材3が固
定される閉断面構造の本体部41と、サイドメンバ2に固定されるフランジ部42を有し
ている。そして、サイドメンバ2とフランジ部42とは、ブラケット部材6を介して固定
されるとともに、ブラケット部材6とクロスメンバ4とが組み合わされることにより閉断
面部S1が形成され、閉断面部S1は、車両幅方向で本体部41とフランジ部42との境
界領域Rを跨ぐ位置に配置されている。また、ブラケット部材6は、車両幅方向内側の位
置でクロスメンバ4に固定されるクロスメンバ側固定部61を有している。
すなわち、本実施形態の車両下部構造においては、クロスメンバ4と組み合わされて特
定の位置に閉断面部S1を形成するブラケット部材6が設けられているので、側突時に車
両外側からサイドメンバ2に加わる衝撃荷重を吸収することが可能となり、車両外側から
の荷重に対して、クロスメンバ4の本体部41とフランジ部42との間の屈曲変形や折れ
を抑制することができる。それに加えて、本実施形態の車両下部構造では、車両幅方向の
荷重がサイドメンバ2からブラケット部材6を介してクロスメンバ4に効率良く伝達され
て分散されることになるので、重要部品である電源部材3を側突時の衝撃荷重から効果的
に保護することができる。
【0018】
また、本実施形態の車両下部構造において、ブラケット部材6は、サイドメンバ2の下
面2aに固定されるサイドメンバ側固定部62と、サイドメンバ側固定部62の車両幅方
向内側端部からクロスメンバ側固定部61まで延び、車両幅方向内側へ向かって下方に傾
斜する傾斜面63を有している。
したがって、本実施形態の車両下部構造によれば、側突時にサイドメンバ2からの荷重
がブラケット部材6のサイドメンバ側固定部62及び傾斜面63を介してクロスメンバ4
側に伝達されることになるので、局所的な荷重集中を抑制し、クロスメンバ4の屈曲変形
を抑えることができる。これにより、側突時の衝撃荷重に対する電源部材3の保護効果を
更に高めることができる。
【0019】
そして、本実施形態の車両下部構造において、傾斜面63は、サイドメンバ側固定部6
2からクロスメンバ側固定部61へ向かって延びる稜線64を有し、稜線64は、車両前
後方向に間隔を空けて傾斜面63の前後部に設けられている。したがって、本実施形態の
車両下部構造によれば、側突時に、ブラケット部材6のサイドメンバ側固定部62から車
両幅方向に入力された荷重が、稜線64に沿って伝達され、クロスメンバ側固定部61よ
りクロスメンバ4側へ分散されることになるので、荷重の局所的集中をより一層抑側する
ことができる。
【0020】
さらに、本実施形態の車両下部構造において、クロスメンバ4は、本体部41とフラン
ジ部42との境界領域Rにおいて、車両幅方向内側へ向かって湾曲する湾曲部43を有し
ている。この湾曲部43は、傾斜面63と車両幅方向で重なる位置に配置されている。し
たがって、本実施形態の車両下部構造では、ブラケット部材6により形成される閉断面部
S1とクロスメンバ4の本体部41が有する閉断面部を合わせた合計閉断面部の断面積変
化を減らすことが可能になるので、湾曲部43への荷重集中を防止することができる。
【0021】
そして、本実施形態の車両下部構造において、サイドメンバ2は、断面略U字状に形成
されており、サイドメンバ2の内部には、サイドメンバ2とクロスメンバ4を固定する固
定部材7と、サイドメンバ2の左右両側壁2b,2cを連結するリンフォースメント21
が設けられている。固定部材7の上部7aは、リンフォースメント21に接合され、固定
部材7の下部7bは、サイドメンバ2の下面2aに接合されている。
したがって、本実施形態の車両下部構造では、サイドメンバ2の下面2aとリンフォー
スメント21に対して車両幅方向より荷重が入力されると、固定部材7がリンフォースメ
ント21及びサイドメンバ2との接合部で当該車両幅方向の荷重を受けることになるので
、固定部材7の車両幅方向剛性を利用することができる。しかも、本実施形態の車両下部
構造においては、サイドメンバ2の車両幅方向外側の右側側壁2cに入力される車両幅方
向の荷重がリンフォースメント21及び固定部材7を介してクロスメンバ4に伝達される
ことになるので、車両幅方向の荷重伝達を促進することができ、側突時の衝撃荷重をクロ
スメンバ4などに円滑に分散させることができる。
【0022】
また、本実施形態の車両下部構造において、ブラケット部材6とフランジ部42との間
には、サイドメンバ2とクロスメンバ4との固定を補助する固定補助部材9が設けられて
いるので、サイドメンバ2から入力される荷重を、固定補助部材9を介してクロスメンバ
4に円滑に伝達することができ、荷重の分散効果をさらに高めることができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるも
のではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 フロアパネル
2 サイドメンバ
2a 下面
2b,2c 側壁
2d 挿通孔
3 電源部材
4 クロスメンバ
6 ブラケット部材
7 固定部材
7a 上部
7b 下部
7c 中間部
8 締結ボルト
9 固定補助部材
21 リンフォースメント
21a 取付面
21b,21c 側面
21d 取付孔
41 クロスメンバの本体部
41a 上側メンバ体
41b 下側メンバ体
41c 挿通孔
42 クロスメンバのフランジ部
42a 挿通孔
43 湾曲部
61 クロスメンバ側固定部
62 サイドメンバ側固定部
63 傾斜面
64 稜線
65 貫通孔
R クロスメンバの本体部とフランジ部との境界領域
S1 閉断面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7