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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】二次電池、電子機器及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231108BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20231108BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20231108BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20231108BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20231108BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20231108BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20231108BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/107
H01M50/342 101
H01M50/538
H01M10/0587
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022501719
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002128
(87)【国際公開番号】W WO2021166546
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020024003
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅
(72)【発明者】
【氏名】福留 裕賢
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-052756(JP,A)
【文献】特開2004-071266(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094228(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045569(WO,A1)
【文献】特開2011-134663(JP,A)
【文献】特開2007-335156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/50-598
H01M 50/10-198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板が、電池缶に収容され、前記電池缶の蓋体側に前記正極集電板が配置された二次電池であって、
前記正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質被覆部によって被覆された被覆部と、正極活物質非被覆部を有し、
前記負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質被覆部によって被覆された被覆部と、負極活物質非被覆部を有し、
前記正極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端部の一方において、前記正極集電板と接合され、
前記負極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端部の他方において、前記負極集電板と接合され、
前記電極巻回体は、前記正極活物質非被覆部と前記負極活物質非被覆部の何れか一方又は両方が、前記巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、
前記平坦面に形成された第1の溝とを有し、
前記電池缶の缶底にC字形の第2の溝を少なくとも1つを備え、
前記中心軸の方向から見たとき、前記負極集電板の板状部と重ならない位置に前記第2の溝があり、前記第2の溝の端部の全てが前記負極集電板の板状部と重なる位置にある二次電池。
【請求項2】
前記第2の溝の幅は0.10mm以上1.00mm以下である請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第2の溝は、前記缶底の両面のうち前記電池缶の内側の面に配置されている請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極集電板の材質はニッケル、ニッケル合金、銅若しくは銅合金の単体、又は、複合材である請求項1から3の何れかに記載の二次電池。
【請求項5】
前記電池缶内でガスが発生したときに該ガスを放出する安全弁を備える請求項1から4の何れかに記載の二次電池。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の二次電池を有する電子機器。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載の二次電池を有する電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電子機器及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は電動工具や自動車といった高出力を要する用途に向けても開発されるようになってきている。高出力に適した電池では、大電流を流すために、円筒形の電極巻回体の端面に露出した集電箔に集電板を接合する構造を有することが多い。このような電池では電極巻回体の端面が集電板によって覆われている。したがって、電池の異常発熱時には、発生したガスが電極巻回体の外に排出されにくい傾向がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、電池缶の底部に環状の薄肉部である溝が形成された二次電池について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-135822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術を、電極巻回体の端面に平板状の負極集電板を備える円筒型電池に適用した場合、溝と負極集電板との位置関係によっては、異常な内圧上昇時に、スムーズにガス放出できないという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、異常発熱時にスムーズにガス放出ができるハイレート放電用の電池を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明は、セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板が、電池缶に収容され、電池缶の蓋体側に正極集電板が配置された二次電池であって、
正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質被覆部によって被覆された被覆部と、正極活物質非被覆部を有し、
負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質被覆部によって被覆された被覆部と、負極活物質非被覆部を有し、
正極活物質非被覆部は、電極巻回体の端部の一方において、正極集電板と接合され、
負極活物質非被覆部は、電極巻回体の端部の他方において、負極集電板と接合され、
電極巻回体は、正極活物質非被覆部と負極活物質非被覆部の何れか一方又は両方が、巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、
平坦面に形成された第1の溝とを有し、
電池缶の缶底にC字形の第2の溝を少なくとも1つを備え、
中心軸の方向から見たとき、負極集電板の板状部と重ならない位置に第2の溝があり、第2の溝の端部の全てが負極集電板の板状部と重なる位置にある二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも実施の形態によれば、異常発熱時に発生したガスによって電池内部の圧力が上がると、強度の比較的低い溝を起点に缶底の開放(開裂)が発生し、電池内のガスを電池外に排出することができる。また、電極巻回体の端部のうち、負極集電板の板状部と重ならない部分と第2の溝の端部が、電極巻回体の中心軸方向から見て、重ならないように配置されることで、電池内部の圧力が上昇した際の缶底の開放(開裂)をスムーズに起こすことができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施の形態に係る電池の断面図である。
図2図2は、電極巻回体における正極、負極とセパレータの配置関係の一例を説明する図である。
図3図3Aは、正極集電板の平面図であり、図3Bは負極集電板の平面図である。
図4図4Aから図4Fは、一実施の形態に係る電池の組み立て工程を説明する図である。
図5図5は、実施例1の説明に使用する図である。
図6図6は、実施例2の説明に使用する図である。
図7図7は、比較例1の説明に使用する図である。
図8図8は、比較例2の説明に使用する図である。
図9図9は、比較例3の説明に使用する図である。
図10図10は、比較例4の説明に使用する図である。
図11図11は、比較例5の説明に使用する図である。
図12図12は、比較例6の説明に使用する図である。
図13図13は、比較例7の説明に使用する図である。
図14図14は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
図15図15は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
図16図16は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.一実施の形態>
<2.変形例>
<3.応用例>
以下に説明する実施の形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施の形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。
【0012】
<1.一実施の形態>
まず、リチウムイオン電池の全体構成に関して説明する。図1は、リチウムイオン電池1の概略断面図である。リチウムイオン電池1は、例えば、図1に示すように、電池缶11の内部に電極巻回体20が収納されている円筒型のリチウムイオン電池1である。
【0013】
具体的には、リチウムイオン電池1は、例えば、円筒状の電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電極巻回体20とを備えている。ただし、リチウムイオン電池1は、例えば、さらに、電池缶11の内部に、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を備えていてもよい。
【0014】
[電池缶]
電池缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。この電池缶11は、例えば、一端面が開放されると共に他端面が閉塞された円筒状の容器である。すなわち、電池缶11は、開放された一端面(開放端面11N)を有している。この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、電池缶11の表面には、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0015】
電池缶11の閉鎖された一端面には、缶底51を有している。缶底51は電池1のマイナス極の端子としての役割を担っている。缶底51はC字形の溝52(第2の溝)を有している。溝52とは、缶底51の両面のうち電池缶11の内側となる面に配置されている薄肉部である。溝52は、例えば刻印工程により形成され、缶底51の肉厚が薄くなっている溝状の部分である。溝52の形状はC字形である。溝52を複数備える場合には、例えば図5に示すように2つの溝を同一の円周上に備えていることが好ましい。この円は、溝52の幅の中心を通っており、円の直径はD1である。また、この円は缶底51の外縁(直径はD2である。)と同心円の関係にあることが好ましい。同心円の関係にすることで、電池1が落下したときに溝52からの漏液が発生しにくくなるからである。このとき、溝52の幅は、0.10mm以上1.00mm以下が好ましい。溝52の幅が0.10mm未満であると、電池1に対して異常な熱が加えられたときに、電池1が破裂する可能性があるからであり、溝52の幅が1.00mmを超えると、電池1が落下したときに、電極巻回体20が電池缶11から出てしまう可能性があるからである。
【0016】
C字形の溝52の直径(以下、D1と称する。)は、缶底51の外径の44%以上の大きさであることが好ましい。これについて、説明する。外部から電池1に対して異常な熱が加えられると、電極巻回体20の外周部から熱(炎)が発生する。その熱(炎)は、缶底51の溝52を軟化させる作用があり、電極巻回体20の外周部に溝52が近いほど軟化しやすい。D1が、缶底の外径の44%以上の大きさであると、電極巻回体20の外周部に溝52が近いため、外部から電池に対して異常な熱が加えられると、缶底51の溝52が軟化しやすい。したがって、発生ガスによる缶底51のガス圧力上昇によって、缶底51の溝52が開裂し、ガスを外に逃がすことができる。一方、D1が、缶底51の外径の44%未満の大きさであると、電極巻回体20の外周部から溝52が遠くなるため、燃焼試験時の発熱により溝52が軟化し難い。したがって、発生ガスによる缶底51のガス圧力上昇によっても、缶底51が開裂せずに、ガスを外に逃がすことができないおそれがある。
【0017】
[絶縁板]
絶縁板12,13は、電極巻回体20の巻回軸(図1のZ軸)に対して略垂直な面を有する皿状の板である。また、絶縁板12,13は、例えば、互いに電極巻回体20を挟むように配置されている。
【0018】
[かしめ構造]
電池缶11の開放端面11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介して、かしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11は密閉されている。
【0019】
[電池蓋]
電池蓋14は、主に、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11の開放端面11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、例えば、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、+Z方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、例えば、安全弁機構30に接触している。
【0020】
[ガスケット]
ガスケット15は、主に、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ただし、ガスケット15の表面には、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0021】
このガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプロピレン(PP)などの高分子材料である。中でも、絶縁性材料は、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。電池缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0022】
[安全弁機構]
安全弁機構30は、主に、電池缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0023】
[電極巻回体]
円筒形状のリチウムイオン電池では、帯状の正極21と帯状の負極22がセパレータ23を挟んで渦巻き状に巻回されて、電解液に含浸された状態で、電池缶11に収まっている。正極21は正極箔21Aの片面又は両面に正極の活物質被覆部21Bを形成したものであり、正極箔21Aの材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金でできた金属箔である。負極22は負極箔22Aの片面又は両面に負極活物質層22Bを形成したものであり、負極箔22Aの材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金でできた金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、イオンや電解液等の物質の移動を可能にしている。
【0024】
正極活物質層21Bと負極活物質層22Bはそれぞれ、正極箔21Aと負極箔22Aとの多くの部分を覆うが、どちらも帯の方向にある片方の端周辺を意図的に被覆していない。この活物質層21B,22Bが被覆されていない部分を、以下、適宜、活物質非被覆部と称し、活物質層21B,22Bが被覆されている部分を、以下、適宜、活物質被覆部と称する。円筒形状の電池では、電極巻回体20は正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向を向くようにしてセパレータ23を介して重ねられて巻回されている。
【0025】
図2に正極21、負極22とセパレータ23を積層した巻回前の構造の一例を示す。正極の活物質非被覆部21C(図2の上側のドット部分)の幅はAであり、負極の活物質非被覆部22C(図2の下側のドット部分)の幅はBである。一実施の形態ではA>Bであることが好ましく、例えばA=7(mm)、B=4(mm)である。正極の活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した部分の長さはCであり、負極の活物質非被覆部22Cがセパレータ23の幅方向の他端から突出した部分の長さはDである。一実施の形態ではC>Dであることが好ましく、例えば、C=4.5(mm)、D=3(mm)である。
【0026】
正極の活物質非被覆部21Cは例えばアルミニウムなどからなり、負極の活物質非被覆部22Cは例えば銅などからなるので、一般的に正極の活物質非被覆部21Cの方が負極の活物質非被覆部22Cよりも柔らかい(ヤング率が低い)。このため、一実施の形態では、A>BかつC>Dがより好ましく、この場合、両極側から同時に同じ圧力で正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cとが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、活物質非被覆部21C,22Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、活物質非被覆部21C,22Cと集電板24,25とのレーザー溶接による接合を容易に行うことができる。一実施の形態における接合とは、レーザー溶接により繋ぎ合わされていることを意味するが、接合方法はレーザー溶接に限定されない。
【0027】
正極21は、活物質非被覆部21Cと活物質被覆部21Bとの境界を含む幅3mmの区間が絶縁層101(図2の灰色の領域部分)で被覆されている。そして、セパレータを介して負極の活物質被覆部22Bに対向する正極の活物質非被覆部21Cの全ての領域が絶縁層101で覆われている。絶縁層101は、負極の活物質被覆部22Bと正極の活物質非被覆部21Cとの間に異物が侵入したときに、電池1の内部短絡を確実に防ぐ効果がある。また、絶縁層101は、電池1に衝撃が加わったときに、その衝撃を吸収し、正極の活物質非被覆部21Cが折れ曲がりや、負極22との短絡を確実に防ぐ効果がある。
【0028】
電極巻回体20の中心軸には、貫通孔26が空いている。貫通孔26は電極巻回体20の組み立て用の巻き芯と溶接用の電極棒を差し込むための孔である。電極巻回体20は、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向を向くように重ねて巻回してあるので、電極巻回体の端面の一方(端面41)には、正極の活物質非被覆部21Cが集まり、電極巻回体20の端面の他方(端面42)には、負極の活物質非被覆部22Cが集まる。電流を取り出すための集電板24,25との接触を良くするために、活物質非被覆部21C,22Cは曲折されて、端面41,42が平坦面となっている。曲折する方向は端面41,42の外縁部27,28から貫通孔26に向かう方向であり、巻回された状態で隣接する周の活物質非被覆部同士が重なって曲折している。なお、本明細書において「平坦面」とは、完全に平坦な面のみならず、活物質非被覆部と集電板が接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する表面も含む。
【0029】
活物質非被覆部21C,22Cがそれぞれ重なるようにして曲折することで、一見、端面41,42を平坦面にすることが可能に思われるが、曲折する前に何らの加工もないと、曲折するときに端面41,42にシワやボイド(空隙、空間)が発生して、端面41,42が平坦面とならない。ここで、「シワ」や「ボイド」とは曲折した活物質非被覆部21C,22Cに偏りが生じ、端面41,42が平坦面とはならない部分である。このシワやボイドの発生を防止するために、貫通孔26から放射方向に予め溝43(第1の溝,例えば図4Bを参照)が形成されている。溝43は端面41,42の外縁部27,28から貫通孔26まで延在している。電極巻回体20の中心には貫通孔26があり、貫通孔26はリチウムイオン電池1の組み立て工程で、溶接器具を差し込む孔として使用される。貫通孔26の付近にある、正極21と負極22との巻き始めの活物質非被覆部21C,22Cには切欠きがある。これは貫通孔26に向かって曲折したとき貫通孔26を塞がないようにするためである。溝43は、活物質非被覆部21C,22Cを曲折した後も平坦面内に残っており、溝43の無い部分が、正極集電板24又は負極集電板25と接合(溶接等)されている。なお、平坦面のみならず、溝43が集電板24,25の一部と接合されていてもよい。
電極巻回体20の詳細な構成、すなわち正極21、負極22、セパレータ23及び電解液のそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する。
【0030】
[集電板]
通常のリチウムイオン電池では例えば、正極と負極の一か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されているが、これでは電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、一実施の形態のリチウムイオン電池では、端面41,42に正極集電板24と負極集電板25とを配置し、端面41,42に存在する正極や負極の活物質非被覆部21C,22Cと多点で溶接することで、電池の内部抵抗を低く抑えている。端面41,42が曲折して平坦面となっていることも低抵抗化に寄与している。
【0031】
図3A及び図3Bに、集電板の一例を示す。図3Aが正極集電板24であり、図3Bは負極集電板25である。正極集電板24の材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の単体若しくは複合材でできた金属板であり、負極集電板25の材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金の単体若しくは複合材でできた金属板である。図3Aに示すように、正極集電板24の形状は平坦な扇形をした板状部31に、矩形の帯状部32が付いた形状になっている。板状部31の中央付近に孔35があいていて、孔35の位置は貫通孔26に対応する位置である。
【0032】
図3Aの斜線で示す部分は帯状部32に絶縁テープが貼付されているか絶縁材料が塗布された絶縁部32Aであり、図面のドット部より下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、貫通孔26に金属製のセンターピン(図示せず)を備えていない電池構造の場合には帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低いため、絶縁部32Aが無くても良い。その場合には、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ大きくして充放電容量を大きくすることができる。
【0033】
負極集電板25の形状は正極集電板24と殆ど同じ形状だが、帯状部が異なっている。図3Bの負極集電板の帯状部34は、正極集電板の帯状部32より短く、絶縁部32Aに相当する部分がない。帯状部34には、複数の丸印で示される丸型の突起部(プロジェクション)37がある。抵抗溶接時には、電流が突起部に集中し、突起部が溶けて帯状部34が電池缶11の底に溶接される。正極集電板24と同様に、負極集電板25には板状部33の中央付近に孔36があいていて、孔36の位置は貫通孔26に対応する位置である。正極集電板24の板状部31と負極集電板25の板状部33は扇形の形状をしているため、端面41,42の一部を覆うようになっている。全部を覆わない理由は、電池を組み立てる際に電極巻回体へ電解液を円滑に浸透させる為、あるいは電池が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスを電池外へ放出しやすくする為である。
【0034】
[正極]
正極活物質層21Bは、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有複合酸化物又はリチウム含有リン酸化合物が好ましい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0035】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリイミドなどである。
【0036】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0037】
[負極]
負極箔22Aの表面は、負極活物質層22Bとの密着性向上のために粗面化されていることが好ましい。負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0038】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0039】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiO(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0040】
[セパレータ]
セパレータ23は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。セパレータ23は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。
【0041】
樹脂層は、PVdFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層には、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0042】
[電解液]
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0043】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。電解質塩の含有量は特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0044】
[リチウムイオン電池の作製方法]
図4Aから図4Fを参照して、一実施の形態のリチウムイオン電池1の作製方法について述べる。まず、正極活物質を、帯状の正極箔21Aの表面に塗着させ、これを正極21の被覆部とし、負極活物質を、帯状の負極箔22Aの表面に塗着させ、これを負極22の被覆部とした。このとき、正極21の短手方向の一端と負極22の短手方向の一端に、正極活物質と負極活物質が塗着されていない活物質非被覆部21C,22Cを作製した。活物質非被覆部21C,22Cの一部であって、巻回するときの巻き始めに当たる部分に、切欠きを作製した。正極21と負極22とには乾燥等の工程を行った。そして、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cが逆方向となるようにセパレータ23を介して重ね、中心軸に貫通孔26ができるように、且つ、作製した切欠きが中心軸付近に配置されるように、渦巻き状に巻回して、図4Aのような電極巻回体20を作製した。
【0045】
次に、図4Bのように、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)などの端を端面41,42に対して垂直に押し付けることで、端面41,42を局所的に折り曲げて溝43を作製した。この方法で貫通孔26から放射方向に、中心軸に向かって延びる溝43を作製した。図4Bに示される、溝43の数や配置はあくまでも一例である。そして、図4Cのように、両極側から同時に同じ圧力を端面41,42に対して略垂直方向に加え、正極の活物質非被覆部21Cと負極の活物質非被覆部22Cを折り曲げて、端面41,42が平坦面となるように形成した。このとき、端面41,42にある活物質非被覆部が、貫通孔26側に向かって重なって曲折するように、平板の板面などで荷重を加えた。その後、端面41に正極集電板24の板状部31をレーザー溶接し、端面42に負極集電板25の板状部33をレーザー溶接した。
【0046】
その後、図4Dのように、集電板24,25の帯状部32,34を折り曲げ、正極集電板24と負極集電板25に絶縁板12,13(又は絶縁テープ)を貼り付け、図4Eに示される電池缶11内に上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入し、電池缶11の底の溶接を行った。電解液を電池缶11内に注入後、図4Fのように、ガスケット15及び電池蓋14にて封止を行った。
【実施例
【0047】
以下、上記のようにして作製したリチウムイオン電池1を用い、バーナー試験での不良発生数を比較した実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0048】
以下の全ての実施例及び比較例において、電池サイズを21700(直径21mm、長さ70mm)とした。正極の活物質被覆部21Bの幅を59mmとし、負極の活物質被覆部22Bの幅を62mmとし、セパレータ23の幅を64mmとした。セパレータ23を正極の活物質被覆部21Bと負極の活物質被覆部22Bの全範囲を覆うように重ね、正極の活物質非被覆部の幅を7mm、負極の活物質非被覆部の幅を4mmとした。溝43の数を8とし、略等角間隔となるように配置した。
【0049】
図5を例として、缶底51の溝52の数および、負極集電板の板状部33と重ならない溝の端部53の数について説明する。図5は、電極巻回体の中心軸の方向(図1のZ軸方向)から見たときの、電池缶11の缶底51の外縁と溝52および負極集電板25の板状部33とを重ねて描いた模式図である。実施例や比較例では、溝52の形状はC字形又はO字形となっている。溝52の数とはC字形形状又はO字形形状の個数である。図5の例では、溝52の数は2となる。
【0050】
溝52の端部53とは、C字形の溝の先端部分のことを指している。そこで、C字形の溝1つに対して、端部53は2つと数えることとする。図5では、負極集電板25として、板状部33と板状部の孔36が表示されていて、負極集電板25には板状部の孔36以外には切り欠きや孔は存在していない。負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数とは、電極巻回体20の中心軸方向(図1のZ軸方向)から見て、板状部33と重ならない位置に存在する缶底51の溝52の端部53の数のことである。図5の例では、溝52の端部53が全て板状部33に重なっているので、板状部33と重ならない溝52の端部53の数は0である。
【0051】
[実施例1]
図5に示されるように、缶底の溝の数を2とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を0とした。
【0052】
[実施例2]
図6に示されるように、缶底の溝の数を1とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を0とした。
【0053】
[比較例1]
図7に示されるように、缶底の溝の数を2とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を2とした。
【0054】
[比較例2]
図8に示されるように、缶底の溝の数を1とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を2とした。
【0055】
[比較例3]
図9に示されるように、缶底の溝の数を2とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を1とした。
【0056】
[比較例4]
図10に示されるように、缶底の溝の数を1とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を1とした。
【0057】
[比較例5]
図11に示されるように、缶底の溝の数を1とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を0とした。
【0058】
[比較例6]
図12に示されるように、缶底の溝の数を0とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を0とした。
【0059】
[比較例7]
図13に示されるように、缶底の溝の数を1とし、負極集電板の板状部と重ならない溝の端部の数を0とした。
【0060】
[評価]
上記の例の電池1を組み立て充電したものについて、バーナー試験を行った。バーナー試験はUL 1642 projectile testに基づくものである。バーナー試験の前に、CC/CV充電、4.2V/2A、100mAcutの条件で満充電になるまで充電した。バーナー試験では、対角面距離61cmの8角形、高さ30.5cmのアルミニウム網(Φ0.25mm,16-18wires/inch)の中でガスバーナーを使用して燃焼させた。中央部に102mmの穴の開いた操作架台のスクリーン(20 opening/inch,Φ0.43mmの鉄ワイヤー)をバーナーの口元から38mm上に設置した。バーナーのガス流量を500ml/分(メタン)と150~175ml/分(プロパン)とし、バーナーの炎を明青色でスクリーンを赤くする状態で、スクリーンの上に電池を置き(終了まで移動しなければ固定しない)燃焼した。バーナー試験では試験数100本について行い、電池1又は電池1の一部が囲い(金属製のかご)を貫通したものを不良と判定し、不良と判定した本数をカウントし、バーナー試験での不良発生数とした。以下に、その結果を示す。
【0061】
[表1]
【0062】
実施例1と実施例2では、バーナー試験での不良発生数がそれぞれ5以下と比較的小さかったのに対し、比較例1から比較例7では、それぞれ10以上であった。バーナー試験時には、電池1が加熱されて、電池1の電極巻回体20の内部から発生したガスによって電池1内部の圧力が上昇する。そして、強度の比較的低い溝52を起点に缶底の開放(開裂)が発生し、ガスが電池外に排出されると考えられる。実施例1と実施例2では、電極巻回体20の端面が塞がれていない領域、すなわち負極集電板25の板状部33が存在しない領域がガスの主要な通り道となる。この領域に溝52が存在し、さらに溝52に端部53が無いので、缶底51の開放(開裂)がスムーズに起こり、ガスを安全に排出できたと考えられる。
【0063】
比較例1から比較例4では、電極巻回体20の中心軸方向から見て、溝52の端部53が負極集電板25の板状部33の存在しない領域と重なるように配置されている。そのため、負極集電板25の板状部33が存在しない領域に溝52の端部53があるため、缶底51の開放(開裂)がスムーズに起こらなかったと考えられる。すなわち、ガスの主要な通り道となる領域に溝52の端部53がある為に、ガスを排出しにくい状態であったと考えられる。比較例5と比較例6では、負極集電板25の板状部33と重ならない領域、すなわちガスの主要な通り道となる領域に缶底51の溝52がないため、ガスを排出しにくい状態であったと考えられる。比較例7では、溝52の形状がC字形でなくO字形であるため、電池1の内容物が飛び出して囲い(金属製のかご)を貫通したので不良発生数が比較的多かったと考えられる。
【0064】
これらの結果と考察より、電池缶11の缶底51にC字形の溝52を少なくとも1つを備え、電極巻回体20の中心軸の方向から見たとき、負極集電板25の板状部33と重ならない位置に溝52があり、溝の端部53の全てが負極集電板25の板状部33と重なる位置にある場合には、電池1の内圧が上昇したときに、缶底の開放(開裂)がスムーズに発生し、ガスを安全に電池外へ排出できると判断できる。
【0065】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0066】
実施例及び比較例では、溝43の数を8としていたが、これ以外の数であってもよい。電池サイズを21700としていたが、18650やこれら以外のサイズであってもよい。
正極集電板24と負極集電板25は、扇形の形状をした板状部31,33を備えていたが、それ以外の形状であってもよい。
【0067】
本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は、リチウムイオン電池以外の他の電池や、円筒形状以外の電池(例えば、ラミネート型電池、角型電池、コイン型電池、ボタン型電池)に適用することも可能である。この場合において、「電極巻回体の端面」の形状は、円筒形状のみならず、楕円形状や扁平形状なども採り得る。
【0068】
<3.応用例>
(1)電池パック
図14は、本発明の実施形態又は実施例にかかる二次電池を電池パック300に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。制御部310は各デバイスの制御を行い、さらに異常発熱時に充放電制御を行ったり、電池パック300の残容量の算出や補正を行ったりすることが可能である。電池パック300の正極端子321及び負極端子322は、充電器や電子機器に接続され、充放電が行われる。
【0069】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。図14では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されている。
【0070】
温度検出部318は、温度検出素子308(例えばサーミスタ)と接続されており、組電池301又は電池パック300の温度を測定して、測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0071】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流をもとに、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aが過充電検出電圧(例えば4.20V±0.05V)以上若しくは過放電検出電圧(2.4V±0.1V)以下になったときに、スイッチ部304にOFFの制御信号を送ることにより、過充電又は過放電を防止する。
【0072】
充電制御スイッチ302a又は放電制御スイッチ303aがOFFした後は、ダイオード302b又はダイオード303bを介することによってのみ、充電又は放電が可能となる。これらの充放電スイッチは、MOSFETなどの半導体スイッチを使用することができる。なお、図14では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0073】
メモリ317は、RAMやROMからなり、制御部310で演算された電池特性の値や、満充電容量、残容量などが記憶され、書き換えられる。
【0074】
(2)電子機器
上述した本発明の実施形態又は実施例に係る二次電池は、電子機器や電動輸送機器、蓄電装置などの機器に搭載され、電力を供給するために使用することができる。
【0075】
電子機器としては、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、デジタルスチルカメラ、電子書籍、音楽プレイヤー、ゲーム機、補聴器、電動工具、テレビ、照明機器、玩具、医療機器、ロボットが挙げられる。また、後述する電動輸送機器、蓄電装置、電動工具、電動式無人航空機も、広義では電子機器に含まれ得る。
【0076】
電動輸送機器としては電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)、電動バイク、電動アシスト自転車、電動バス、電動カート、無人搬送車(AGV)、鉄道車両などが挙げられる。また、電動旅客航空機や輸送用の電動式無人航空機も含まれる。本発明に係る二次電池は、これらの駆動用電源のみならず、補助用電源、エネルギー回生用電源などとしても用いられる。
【0077】
蓄電装置としては、商業用又は家庭用の蓄電モジュールや、住宅、ビル、オフィスなどの建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0078】
(3)電動工具
図15を参照して、本発明が適用可能な電動工具として電動ドライバの例について概略的に説明する。電動ドライバ431には、シャフト434に回転動力を伝達するモータ433と、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、本発明に係る電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430は、電動ドライバ431に対して内蔵されているか、又は着脱自在とされている。
【0079】
電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれには、マイクロコンピュータ(図示せず)が備えられており、電池パック430の充放電情報が相互に通信できるようにしてもよい。モータ制御部435は、モータ433の動作を制御すると共に、過放電などの異常時にモータ433への電源供給を遮断することができる。
【0080】
(4)電動車両用蓄電システム
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例として、図16に、シリーズハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV)の構成例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンを動力とする発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0081】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置603(直流モータ又は交流モータ。以下単に「モータ603」という。)、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608としては、本発明の電池パック300、又は本発明の電池1を複数搭載した蓄電モジュールが適用され得る。
【0082】
バッテリ608の電力によってモータ603が作動し、モータ603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。エンジン601によって産み出された回転力によって、発電機602で生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度を制御したりする。
【0083】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ603に回転力として加わり、この回転力によって生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。まバッテリ608は、ハイブリッド車両600の充電口611を介して外部の電源に接続されることで充電することが可能である。このようなHV車両を、プラグインハイブリッド車(PHV又はPHEV)という。
【0084】
なお、本発明に係る二次電池を小型化された一次電池に応用して、車輪604、605に内蔵された空気圧センサシステム(TPMS: Tire Pressure Monitoring system)の電源として用いることも可能である。
【0085】
以上では、シリーズハイブリッド車を例として説明したが、エンジンとモータを併用するパラレル方式、又は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたハイブリッド車に対しても本発明は適用可能である。さらに、エンジンを用いない駆動モータのみで走行する電気自動車(EV又はBEV)や、燃料電池車(FCV)に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1・・・リチウムイオン電池,12・・・絶縁板,21・・・正極,21A・・・正極箔,21B・・・正極活物質被覆部,21C・・・正極の活物質非被覆部,22・・・負極,22A・・・負極箔,22B・・・負極活物質被覆部,22C・・・負極の活物質非被覆部,23・・・セパレータ,24・・・正極集電板,25・・・負極集電板,26・・・貫通孔,27,28・・・外縁部,41,42・・・端面,43・・・溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16