(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】経路算出プログラム,情報処理装置及び経路算出方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20231108BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20231108BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20231108BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20231108BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20231108BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G3/00 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
(21)【出願番号】P 2022509883
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013362
(87)【国際公開番号】W WO2021192097
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100189201
【氏名又は名称】横田 功
(72)【発明者】
【氏名】梅宮 茂良
(72)【発明者】
【氏名】伊東 利雄
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 智
(72)【発明者】
【氏名】工藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓郎
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095270(JP,A)
【文献】特開2011-113488(JP,A)
【文献】特開2013-092930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 3/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発点から到着点までの経路を算出するコンピュータに、
前記出発点から前記到着点まで、所定の間隔で格子状の通過点候補となる複数のノードを生成し、
前記出発点から前記到着点まで、前記複数のノード同士を接続した複数の経路候補を生成し、
生成された前記複数の経路候補のそれぞれにコストを紐付け、
前記複数の経路候補の中から、前記コストが最小となる経路を最適経路として探索し、
探索された前記最適経路における進行方向の変位に影響する指標に応じて、前記複数のノードが生成される前記所定の間隔を制御
し、
前記複数のノードのうち1以上のノードをそれぞれ含む複数のノード群に分け、
前記複数のノード群のうち次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上である場合に、前記所定の間隔を密にする制御を行ない、
前記複数のノード群のうち直前の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上であり、前記直前の判定対象のノード群の後段の通過点候補である前記次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値未満である場合に、前記所定の間隔を粗にする制御を行なう、
処理を実行させる、経路算出プログラム
。
【請求項2】
前記指標は、気象条件又は海象条件である、
請求項
1に記載の経路算出プログラム。
【請求項3】
前記指標は、水深である、
請求項1
又は2に記載の経路算出プログラム。
【請求項4】
前記指標は、前記進行方向に対する変針角度である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の経路算出プログラム。
【請求項5】
出発点から到着点までの経路を算出する情報処理装置であって、
前記出発点から前記到着点まで、所定の間隔で格子状の通過点候補となる複数のノードを生成する格子生成部と、
前記出発点から前記到着点まで、前記複数のノード同士を接続した複数の経路候補を生成する経路候補生成部と、
生成された前記複数の経路候補のそれぞれにコストを紐付けるコスト生成部と、
前記複数の経路候補の中から、前記コストが最小となる経路を最適経路として探索する探索部と、
探索された前記最適経路における進行方向の変位に影響する指標に応じて、前記複数のノードが生成される前記所定の間隔を制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、
前記複数のノードのうち1以上のノードをそれぞれ含む複数のノード群に分け、
前記複数のノード群のうち次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上である場合に、前記所定の間隔を密にする制御を行ない、
前記複数のノード群のうち直前の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上であり、前記直前の判定対象のノード群の後段の通過点候補である前記次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値未満である場合に、前記所定の間隔を粗にする制御を行なう、
情報処理装置。
【請求項6】
出発点から到着点までの経路を算出する経路算出方法であって、
前記出発点から前記到着点まで、所定の間隔で格子状の通過点候補となる複数のノードを生成し、
前記出発点から前記到着点まで、前記複数のノード同士を接続した複数の経路候補を生成し、
生成された前記複数の経路候補のそれぞれにコストを紐付け、
前記複数の経路候補の中から、前記コストが最小となる経路を最適経路として探索し、
探索された前記最適経路における進行方向の変位に影響する指標に応じて、前記複数のノードが生成される前記所定の間隔を制御
し、
前記複数のノードのうち1以上のノードをそれぞれ含む複数のノード群に分け、
前記複数のノード群のうち次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上である場合に、前記所定の間隔を密にする制御を行ない、
前記複数のノード群のうち直前の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上であり、前記直前の判定対象のノード群の後段の通過点候補である前記次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値未満である場合に、前記所定の間隔を粗にする制御を行なう、
処理をコンピュータが実行する、経路算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路算出プログラム,情報処理装置及び経路算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の運航においては、気象・海象予報データに基づいたウェザールーティングを行ない、事前に最適航路が提示されることがある。最適航路は、例えば、低燃費の航路である。
【0003】
船舶の速度や燃料消費量は、風や波等の影響を受けるため、気象・海象状況によって、最適航路は異なってくる。また、気象・海象状況は刻々と変化するため、短時間のうちに最適航路が計算され、必要に応じて船舶の変針が実施されることがある。
【0004】
【0005】
図1に示すように、出発点(符号A1参照)から到着点(符号A2参照)までの間の海域において、船舶の中継点となり得る複数のノードが所定間隔毎に設定されている。また、各ノード間においては、運航のコストとして所要時間が示されている。
【0006】
図示する例では、符号A3に示すように、出発点から到着点まで、12h(時間)+12h+12h+12h+12h=60hで運航できる経路が最短時間航路として示されている。
【0007】
図2は、気象データに基づいた最適航路の算出の第1の例を示す図である。
【0008】
図2に示す例では、出発点(符号B1参照)と到着点(符号B2参照)との間において、符号B3に示すように低気圧が位置している。そこで、符号B4に示すように、出発点から到着点まで、低気圧を大きく迂回する経路が最少燃料航路として示されている。
【0009】
図3は、水深データに基づいた最適航路の算出の第1の例を示す図である。
【0010】
図3に示す例では、出発点(符号C1参照)と到着点(符号C2参照)との間において、符号C3に示すように水深が存在しない島が位置している。そこで、符号C4に示すように、出発点から到着点まで、島を迂回する経路が最少燃料航路として示されている。
【0011】
図4は、気象データに基づいた最適航路の算出の第2の例を示す図である。
【0012】
図4に示す例においては、
図2に示した例と比べて、海域上のノードの密度を高くしている。これにより、出発点(符号D1参照)から到着点(符号D2参照)までの経路は、
図2に示した例と比べて、低気圧(符号D3参照)の外側付近により近い海域を経由する。すなわち、符号D4に示すような、迂回を軽減した経路が最少燃料航路として選択される。
【0013】
図5は、水深データに基づいた最適航路の算出の第2の例を示す図である。
【0014】
図5に示す例においては、
図3に示した例と比べて、海域上のノードの密度を高くしている。これにより、出発点(符号E1参照)から到着点(符号E2参照)までの経路は、
図3に示した例と比べて、2つの島(符号E3参照)の間の海峡を経由する。すなわち、符号E4に示すような、島の間を通過する経路が最少燃料航路として選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2010-237755号公報
【文献】特開2008-145312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図6は、海域上のノードを密にした場合における最適経路の算出の課題を説明する図である。
【0017】
実際の運用では、気象・海象予報データは、時間(別言すれば、航路の進行)と共に変化する。このため、航海中に、最適航路の計算が一定間隔で繰り返し実施される。そして、ノード間隔を単純に密にすると計算時間が膨大となり、変針位置到達までに計算が終了せず、進路変更に遅延が生じ、最適航路から逸脱してしまうおそれがある(符号F1参照)。
【0018】
すなわち、海域上のノードを粗にすると移動コストの高い経路が算出されるおそれがある一方、海域上のノードを密にすると経路の算出時間が増加する。
【0019】
1つの側面では、本明細書に記載する技術は、経路の算出において、移動コストを低減しつつ、算出の処理時間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
1つの側面において、経路算出プログラムは、出発点から到着点までの経路を算出するコンピュータに、前記出発点から前記到着点まで、所定の間隔で格子状の通過点候補となる複数のノードを生成し、前記出発点から前記到着点まで、前記複数のノード同士を接続した複数の経路候補を生成し、生成された前記複数の経路候補のそれぞれにコストを紐付け、前記複数の経路候補の中から、前記コストが最小となる経路を最適経路として探索し、探索された前記最適経路における進行方向の変位に影響する指標に応じて、前記複数のノードが生成される前記所定の間隔を制御し、前記複数のノードのうち1以上のノードをそれぞれ含む複数のノード群に分け、前記複数のノード群のうち次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上である場合に、前記所定の間隔を密にする制御を行ない、前記複数のノード群のうち直前の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値以上であり、前記直前の判定対象のノード群の後段の通過点候補である前記次の判定対象のノード群における前記指標の値が閾値未満である場合に、前記所定の間隔を粗にする制御を行なう。
【発明の効果】
【0021】
開示の経路算出プログラムによれば、経路の算出において、移動コストを低減しつつ、算出の処理時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】気象データに基づいた最適航路の算出の第1の例を示す図である。
【
図3】水深データに基づいた最適航路の算出の第1の例を示す図である。
【
図4】気象データに基づいた最適航路の算出の第2の例を示す図である。
【
図5】水深データに基づいた最適航路の算出の第2の例を示す図である。
【
図6】海域上のノードを密にした場合における最適経路の算出の課題を説明する図である。
【
図7】実施形態における情報処理装置のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図8】
図7に示した情報処理装置のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図9】
図7に示した情報処理装置における海象に基づいた最適航路の再計算例を説明する図である。
【
図10】
図7に示した情報処理装置における気象に基づいた最適航路の再計算例を説明する図である。
【
図11】
図7に示した情報処理装置における水深に基づいた最適航路の再計算例を説明する図である。
【
図12】
図7に示した情報処理装置における変針角度に基づいた最適航路の再計算例を説明する図である。
【
図13】
図7に示した情報処理装置における最適航路の算出処理を説明するフローチャートである。
【
図14】ノード間隔条件毎の最適航路の計算時間と燃料削減率とのシミュレーション例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して一実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0024】
また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0025】
以下、図中において、同一の符号を付した部分は同様の部分を示している。
【0026】
〔A〕実施形態の一例
〔A-1〕システム構成例
図7は、実施形態における情報処理装置1のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0027】
情報処理装置1は、例えば、地上のデータセンタに備えられ、算出した後述する最適航路142(
図8等を用いて後述)に関する情報を船舶に送信する。また、情報処理装置1は、船舶に備えられてもよい。
【0028】
図7に示すように、情報処理装置1は、Central Processing Unit(CPU)11,メモリ部12,表示制御部13,記憶装置14,入力Interface(IF)15,外部記録媒体処理部16及び通信IF17を備える。
【0029】
メモリ部12は、記憶部の一例であり、例示的に、Read Only Memory(ROM)及びRandom Access Memory(RAM)などである。メモリ部12のROMには、Basic Input/Output System(BIOS)等のプログラムが書き込まれてよい。メモリ部12のソフトウェアプログラムは、CPU11に適宜に読み込まれて実行されてよい。また、メモリ部12のRAMは、一時記録メモリあるいはワーキングメモリとして利用されてよい。
【0030】
表示制御部13は、表示装置130と接続され、表示装置130を制御する。表示装置130は、液晶ディスプレイやOrganic Light-Emitting Diode(OLED)ディスプレイ,Cathode Ray Tube(CRT),電子ペーパーディスプレイ等であり、オペレータ等に対する各種情報を表示する。表示装置130は、入力装置と組み合わされたものでもよく、例えば、タッチパネルでもよい。
【0031】
記憶装置14は、高IO性能の記憶装置であり、例えば、Hard Disk Drive(HDD)やSolid State Drive(SSD),Storage Class Memory(SCM)が用いられてよい。記憶装置14は、ストリームデータの中の少なくとも一部のエントリを記憶する。記憶装置14は、ストリームデータに対して実行される抽出処理の数に応じて、複数備えられてよい。
【0032】
入力IF15は、マウス151やキーボード152等の入力装置と接続され、マウス151やキーボード152等の入力装置を制御してよい。マウス151やキーボード152は、入力装置の一例であり、これらの入力装置を介して、オペレータが各種の入力操作を行なう。
【0033】
外部記録媒体処理部16は、記録媒体160が装着可能に構成される。外部記録媒体処理部16は、記録媒体160が装着された状態において、記録媒体160に記録されている情報を読み取り可能に構成される。本例では、記録媒体160は、可搬性を有する。例えば、記録媒体160は、フレキシブルディスク、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は、半導体メモリ等である。
【0034】
通信IF17は、外部装置との通信を可能にするためのインタフェースである。
【0035】
CPU11は、種々の制御や演算を行なう処理装置であり、メモリ部12に格納されたOperating System(OS)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。
【0036】
情報処理装置1全体の動作を制御するための装置は、CPU11に限定されず、例えば、MPUやDSP,ASIC,PLD,FPGAのいずれか1つであってもよい。また、情報処理装置1全体の動作を制御するための装置は、CPU,MPU,DSP,ASIC,PLD及びFPGAのうちの2種類以上の組み合わせであってもよい。なお、MPUはMicro Processing Unitの略称であり、DSPはDigital Signal Processorの略称であり、ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略称である。また、PLDはProgrammable Logic Deviceの略称であり、FPGAはField Programmable Gate Arrayの略称である。
【0037】
図8は、
図7に示した情報処理装置1のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0038】
Database(DB)141は、経路予測の対象の海域における気象予報や海象予報,水深等の情報を含み、
図7に示した記憶装置14に記憶されてよい。
【0039】
コスト生成部111は、DB141から風や波,海流,水深等の気象条件101を抽出し、抽出した気象条件101に基づき海域において船舶が通過し得るノード間のコストを生成する。コストは、ノード間の航行に要する時間や消費燃料及び距離等であってよい。また、DB141には、船舶固有のデータ(エンジン又はプロペラ回転数や出力)を記憶してよく、気象条件に加えて船舶固有データを元に、コストを生成してもよい。
【0040】
別言すれば、コスト生成部111は、生成された複数の経路候補のそれぞれにコストを紐付ける。
【0041】
候補航路生成部112は、DB141から到着時刻や船速,波風海流,水深等の船舶制約102を抽出する。そして、候補航路生成部112は、抽出した船舶制約102と、コスト生成部111によって抽出されたコストと、後述する格子生成部116によって生成された複数のノードによって構成される格子とに基づき、ノード間のコストが付加された複数の候補航路を生成する。
【0042】
別言すれば、候補航路生成部112は、経路候補生成部の一例であり、出発点から到着点まで、複数のノード同士を接続した複数の経路候補を生成する。
【0043】
航路探索部113は、候補航路生成部112によって生成された複数の候補航路の中から、最もコストが低い最適航路142を探索する。
【0044】
別言すれば、航路探索部113は、複数の経路候補の中から、コストが最小となる経路を最適経路として探索する。
【0045】
頻繁操舵海域検出部114は、頻繁に操舵が行なわれる海域が次の判定対象であるノード群にあるかを判定する。また、頻繁操舵海域検出部114は、航路探索部113によって探索された最適航路142を出力して例えば記憶装置14に記憶させる。なお、頻繁操舵海域検出部114における処理の詳細は、
図9~
図12等を用いて後述する。
【0046】
格子間隔制御部115は、頻繁に操舵が行なわれる海域がある場合には、格子間隔を密にするよう格子生成部116を制御する。一方、格子間隔制御部115は、頻繁に操舵が行なわれる海域がない場合には、格子間隔を粗にするよう格子生成部116を制御する。
【0047】
別言すれば、格子間隔制御部115は、探索された最適経路における進行方向の変位に影響する指標に応じて、複数のノードが生成される所定の間隔を制御する。また、格子間隔制御部115は、複数のノードのうち1以上のノードからなる複数のノード群に分け、複数のノード群のうち次の判定対象のノード群における指標の値が閾値以上である場合に、所定の間隔を密にする制御を行なう。更に、格子間隔制御部115は、複数のノード群のうち直前の判定対象のノード群における指標の値が閾値以上であり、次の判定対象のノード群における指標の値が閾値未満である場合に、所定の間隔を粗にする制御を行なう。
【0048】
格子生成部116は、船舶の出発点及び到着点に関する情報103と、格子間隔制御部115による格子間隔の粗密の制御とに基づき、複数のノードによって構成される格子を生成する。
【0049】
別言すれば、格子生成部116は、出発点から前記到着点まで、所定の間隔で格子状の通過点候補となる複数のノードを生成する。
【0050】
図9は、
図7に示した情報処理装置1における海象に基づいた最適航路142の再計算例を説明する図である。
【0051】
符号G1に示すように、出発点から到着点までの最適航路142として、荒れた海域を迂回する経路が示されている。各ノード付近の矢印は、風速・風向又は波高・波向を示し、長いほど海が荒れていることを示す。
【0052】
符号G2に示す列のノード候補群においては、短い矢印に限って示されており、海域が荒れていない。また、符号G3に示す列のノード候補群においては、長い矢印が1つあるものの半数以上のノードには短い矢印が示されており、比較的海域が荒れていない。
【0053】
ここで、次に航路の候補を判定するノード群である次ノード候補群が符号G4に示す列のノード群であるとする。符号G4に示す列のノード群では、半数以上のノードに長い矢印が示されており、比較的海域が荒れている。海域が荒れていることにより、符号G1に示す最適航路142は大きく迂回しており、航行に要する時間や燃料等のコストが増加する。
【0054】
そこで、符号G5に示すように、最適航路142の再計算が実行される。符号G6に示すように、海域が荒れている領域ではノード間隔が密に設定される。これにより、符号G7に示すように、荒れた海域の迂回が軽減された最適航路142が再計算される。
【0055】
また、符号G8に示すように次ノード候補群において半数以上のノードに長い矢印が示されておらず海域が荒れていない場合には、符号G9に示すようにノードの間隔が粗に戻される。
【0056】
図10は、
図7に示した情報処理装置1における気象に基づいた最適航路142の再計算例を説明する図である。
【0057】
符号H1に示すように、出発点から到着点までの最適航路142として、低気圧が位置している海域を迂回する経路が示されている。
【0058】
符号H2及びH3に示す列のノード候補群においては、全てのノード上において低気圧が位置していない。
【0059】
ここで、次に航路の候補を判定するノード群である次ノード候補群が符号H4に示す列のノード群であるとする。符号H4に示す列のノード群では、半数以上のノード上において低気圧が位置している。低気圧が位置していることにより、符号H1に示す最適航路142は大きく迂回されており、航行に要する時間や燃料等のコストが増加する。
【0060】
そこで、符号H5に示すように、最適航路142の再計算が実行される。符号H6に示すように、低気圧が位置している領域ではノード間隔が密に設定される。これにより、符号H7に示すように、低気圧が位置している海域の迂回が軽減された最適航路142が再計算される。
【0061】
また、符号H8に示すように次ノード候補群において半数以上のノード上で低気圧が位置していない場合には、符号H9に示すようにノードの間隔が粗に戻される。
【0062】
図11は、
図7に示した情報処理装置1における水深に基づいた最適航路142の再計算例を説明する図である。
【0063】
符号I1に示すように、出発点から到着点までの最適航路142として、島が存在している海域を迂回する経路が示されている。
【0064】
符号I2及びI3に示す列のノード候補群においては、全てのノード上において島が存在していない。
【0065】
ここで、次に航路の候補を判定するノード群である次ノード候補群が符号HI4に示す列のノード群であるとする。符号I4に示す列のノード群では、半数以上のノード上において島が存在している。島が存在していることにより、符号I1に示す最適航路142は大きく迂回されており、航行に要する時間や燃料等のコストが増加する。
【0066】
そこで、符号I5に示すように、最適航路142の再計算が実行される。符号I6に示すように、島が存在している領域ではノード間隔が密に設定される。これにより、符号I7に示すように、島が位置している海域の迂回が軽減された最適航路142が再計算される。
【0067】
また、符号I8に示すように次ノード候補群において半数以上のノード上で島が存在していない場合には、符号I9に示すようにノードの間隔が粗に戻される。ここで島や浅瀬の有無判定には、水深を用いる。
【0068】
図12は、
図7に示した情報処理装置1における変針角度に基づいた最適航路142の再計算例を説明する図である。
【0069】
符号J1に示すように、出発点から到着点までの最適航路142が示されている。
【0070】
ここで、符号J2に示すように、迂回により船舶の変針角度が閾値よりも大きくなるノードが存在する。これにより、船舶の揺れの増大や燃料等のコストが増加するおそれがある。
【0071】
そこで、符号J3に示すように、最適航路142の再計算が実行される。符号J4に示すように、船舶の変針角度が大きい領域ではノード間隔が密に設定される。これにより、符号J5に示すように、船舶の変針角度が軽減された最適航路142が再計算される。
【0072】
また、符号J6に示すように、例えば3ノード先において、ノードの間隔が粗に戻される。
【0073】
〔A-2〕動作例
図7に示した情報処理装置1における最適航路142の算出処理を、
図13に示すフローチャート(ステップS1~S6)に従って説明する。
【0074】
航路探索部113は、出発点から到着点までのノード群とコストとに基づき、最適航路142を探索する(ステップS1)。
【0075】
頻繁操舵海域検出部114は、最適航路142の近隣ノードにおける風速や波高,気圧,水深を確認し、最適航路142の変針角度を確認する(ステップS2)。
【0076】
頻繁操舵海域検出部114は、探索された最適航路142上に頻繁操舵海域があるかを判定する(ステップS3)。
【0077】
探索された最適航路142上に頻繁操舵海域がない場合には(ステップS3のNOルート参照)、頻繁操舵海域検出部114は、最適航路142を出力して、最適航路142の算出処理は終了する。
【0078】
一方、探索された最適航路142上に頻繁操舵海域がある場合には(ステップS3のYESルート参照)、頻繁操舵海域検出部114は、継続して、最適航路142の近隣ノードにおける風速や波高,気圧,水深を確認する(ステップS4)。
【0079】
頻繁操舵海域検出部114は、頻繁操舵海域の終了点を検出する(ステップS5)。
【0080】
格子間隔制御部115は、頻繁操舵海域検出部114によって検出された頻繁操舵海域のノードを密にして格子を追加生成するように制御して(ステップS6)、処理はステップS1へ戻る。
【0081】
〔A-3〕効果
図14は、ノード間隔条件毎の最適航路142の計算時間と燃料削減率とのシミュレーション例を示すテーブルである。
図14においては、太平洋横断航路における最適航路142の算出結果が示されている。
【0082】
図示するように、ノード間隔を緯度及び経度について2°から1°に変更すると、燃料削減率は増加したが、計算時間も2倍以上に増加している。
【0083】
そこで、頻繁操舵海域に限ってノード間隔を1°とし、その他の海域のノード間隔を2°とすることで、燃料削減率を維持しつつ、計算時間の増加を抑制できる。
【0084】
実施形態の一例における経路算出プログラム,情報処理装置1及び経路算出方法によれば、例えば以下の作用効果を奏することができる。
【0085】
格子生成部116は、出発点から前記到着点まで、所定の間隔で格子状の通過点候補となる複数のノードを生成する。候補航路生成部112は、出発点から到着点まで、複数のノード同士を接続した複数の経路候補を生成する。コスト生成部111は、生成された複数の経路候補のそれぞれにコストを紐付ける。航路探索部113は、複数の経路候補の中から、コストが最小となる経路を最適経路として探索する。格子間隔制御部115は、探索された最適経路における進行方向の変位に影響する指標に応じて、複数のノードが生成される所定の間隔を制御する。
【0086】
これにより、経路の算出において、移動コストを低減しつつ、算出の処理時間を低減することができる。具体的には、格子間隔を制御して最適航路142の再計算を実施することで、燃料消費量が削減できると共に、実運用に耐え得る時間で最適航路142を計算できる。
【0087】
格子間隔制御部115は、複数のノードのうち1以上のノードをそれぞれ含む複数のノード群に分け、複数のノード群のうち次の判定対象のノード群における指標の値が閾値以上である場合に、所定の間隔を密にする制御を行なう。これにより、頻繁操舵海域の条件を満たした場合に限って当該海域のノード間隔を密に変更でき、よりきめ細やかな航路探索の実施によって移動コストを低減することができる。なお、本実施例の指標の値は、例えば、あるノード群の状態についての標準状態からの乖離の大きさである。
【0088】
格子間隔制御部115は、複数のノード群のうち直前の判定対象のノード群における指標の値が閾値以上であり、次の判定対象のノード群における指標の値が閾値未満である場合に、所定の間隔を粗にする制御を行なう。これにより、頻繁操舵海域の条件を満たさなくなった場合にノード間隔を粗に戻すことができ、航路探索のための計算時間を短縮できる。
【0089】
進行方向の変位に影響する指標は、気象条件又は海象条件である。これにより、気象条件又は海象条件に基づいた最適航路142の再計算を効率的に行なえる。
【0090】
進行方向の変位に影響する指標は、水深である。これにより、島の存在等の水深に基づいた最適航路142の再計算を効率的に行なえる。
【0091】
進行方向の変位に影響する指標は、進行方向に対する変針角度である。これにより、進行方向に対する変針角度が大きい場合に、最適航路142の再計算を効率的に行なえる。
【0092】
〔B〕その他
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成及び各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0093】
上述した実施形態の一例においては、船舶の最適航路142を算出することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、航空機の最適空路が算出されてもよいし、草原地帯や砂漠地帯等のオフロードを走行する車両の最適経路が算出されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 :情報処理装置
11 :CPU
111 :コスト生成部
112 :候補航路生成部
113 :航路探索部
114 :頻繁操舵海域検出部
115 :格子間隔制御部
116 :格子生成部
12 :メモリ部
13 :表示制御部
130 :表示装置
14 :記憶装置
141 :DB
142 :最適航路
15 :入力IF
151 :マウス
152 :キーボード
16 :外部記録媒体処理部
160 :記録媒体
17 :通信IF
101 :気象条件
102 :船舶制約
103 :出発点及び到着点に関する情報