(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G01N21/90 D
(21)【出願番号】P 2022516476
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017030
(87)【国際公開番号】W WO2021214820
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】井上 恵子
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 尚司
(72)【発明者】
【氏名】細井 利憲
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214153(JP,A)
【文献】特開2004-354100(JP,A)
【文献】特開2003-130805(JP,A)
【文献】特開2010-061844(JP,A)
【文献】米国特許第05864395(US,A)
【文献】特開2013-096921(JP,A)
【文献】特表2010-507807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填された容器を把持する把持部と、前記把持部が前記容器を把持した状態で当該容器を少なくとも傾斜させる傾斜部と、前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する箇所に設置され、前記容器の動きと連動して動くマーカと、を有する把持装置と、
前記把持装置の外部に
固定設置され、前記容器に充填された液体を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像データに基づいて物体を検出し、検出した物体が異物であるか否か判定する判定装置と、
を有し、
前記把持装置は、前記把持部が把持する前記容器内に充填された前記液体に対して光を照射する照明を有し、前記照明は、前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜するよう設置され、
前記マーカは、前記カメラにより前記容器に充填された液体を撮像する際の撮像範囲内に位置するように、前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する前記照明上に設置されている
判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の判定システムであって、
前記判定装置は、
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する検出部と、
前記検出部が検出した物体を追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、前記検出部が検出した前記物体の判定を行う判定部と、
を有する
判定
システム。
【請求項3】
請求項
2に記載の判定
システムであって、
前記判定部は、前記追跡部による追跡の結果として特定される前記物体の動きと、前記マーカの動きと、に基づいて、物体の判定を行う
判定
システム。
【請求項4】
請求項
3に記載の判定
システムであって、
前記判定部は、前記物体が気泡であるか、または異物であるかを判定する
判定
システム。
【請求項5】
請求項
3に記載の判定
システムであって、
前記判定部は、前記物体の動きと前記マーカの動きとが連動している場合、前記物体は前記容器の傷、または、汚れ、または、前記容器に付着している付着物、のいずかであると判定する
判定
システム。
【請求項6】
請求項
3に記載の判定
システムであって、
前記判定部は、前記物体の動きと前記マーカの動きとが連動しているか否かに基づく判定を行うとともに、前記追跡部による追跡の結果に基づいて前記物体が気泡であるか、または、異物であるかを判定する
判定
システム。
【請求項7】
請求項
3に記載の判定
システムであって、
前記判定部は、前記物体の動きと前記マーカの動きとが連動しているか否かに基づく判定により、前記容器の傷、または、汚れ、または、前記容器に付着している付着物、のいずかである前記物体を特定し、前記検出部が検出した前記物体のうち特定した前記物体を除いた前記物体に対して、当該物体が気泡であるか、または、異物であるかを判定する
判定
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置、判定システム、判定装置、判定方法、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に入った液体中の異物を検出するための技術が知られている。
【0003】
異物を検出する際に用いられる技術の一つとして、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、反転装置と、撮像装置と、撮像処理装置と、を備えるシステムが記載されている。特許文献1によると、反転装置は、保持した被検査体を傾斜もしくは倒立させて再び元の姿勢に戻す。また、撮像装置は、反転装置によって傾斜もしくは倒立させて再び元の姿勢に戻した直後の被検査体を撮像する。そして、撮像処理装置は、撮像装置による画像を処理して被検査体の良否を判定する。なお、特許文献1には、被検査体より上部に位置する回転中心軸を中心にして、被検査体を傾斜もしくは倒立させることが開示されている。
【0004】
また、関連する技術として、例えば、特許文献2がある。特許文献2には、差分画像に基づいて気泡や容器の汚れなどを選定し、選定した気泡や汚れなどを除くことで異物を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2005/031328号
【文献】特開2004-354100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異物を精度よく検出する際には、異物と気泡や容器についた傷、汚れなどとを判別することが必要になる。しかしながら、容器についた傷や汚れなどは、異物や気泡などとは異なり、容器を静止させた状態では移動しない。そのため、容器を静止させた状態で撮像した結果に基づく検出を行う特許文献1や特許文献2に記載の技術では、容器についた傷や汚れなどを判別することが難しいおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、異物を検出する際に容器についた傷や汚れなどを容易に判定することを可能とする、把持装置、判定システム、判定装置、判定方法、記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本開示の一形態である把持装置は、
液体が充填された容器を把持する把持部と、
前記把持部が前記容器を把持した状態で当該容器を少なくとも傾斜させる傾斜部と、
前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する箇所に設置され、前記容器の動きと連動して動くマーカと、
を有する
という構成をとる。
【0009】
また、本開示の他の形態である判定システムは、
液体が充填された容器を把持する把持部と、前記把持部が前記容器を把持した状態で当該容器を少なくとも傾斜させる傾斜部と、前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する箇所に設置され、前記容器の動きと連動して動くマーカと、を有する把持装置と、
前記把持装置の外部に設置され、前記容器に充填された液体を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像データに基づいて物体を検出し、検出した物体が異物であるか否か判定する判定装置と、
を有する
という構成をとる。
【0010】
また、本開示の他の形態である判定装置は、
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する検出部と、
前記検出部が検出した物体を追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、前記検出部が検出した前記物体の判定を行う判定部と、
を有する
という構成をとる。
【0011】
また、本開示の他の形態である判定方法は、
判定装置が、
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出し、
検出した物体を追跡し、
追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、検出した前記物体の判定を行う
という構成をとる。
【0012】
また、本開示の他の形態である記録媒体は、
判定装置に、
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する検出部と、
前記検出部が検出した物体を追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、物体の判定を行う判定部と、
を実現するためのプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0013】
上述したような各構成によると、異物を検出する際に容器についた傷や汚れなどを容易に判定することを可能とする、把持装置、判定システム、判定装置、判定方法、記録媒体、を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の第1の実施形態における判定システムの構成例を示す図である。
【
図2】容器とマーカの位置関係の一例を示す図である。
【
図3】容器の動きの一例を説明するための図である。
【
図5】揺動中心軸の位置を説明するための図である。
【
図7】
図1で示す判定装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】本開示の第1の実施形態における把持装置とカメラの動作例を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第1の実施形態における判定装置の全体的な動作例を示すフローチャートである。
【
図10】判定部の処理例を示すフローチャートである。
【
図11】判定システムが有する他の把持装置の構成例を示す図である。
【
図12】他の把持装置の構成例を説明するための図である。
【
図13】本開示の第2の実施形態における把持装置の構成例を示す図である。
【
図14】本開示の第2の実施形態における判定装置のハードウェア構成図の一例を示す図である。
【
図15】本開示の第2の実施形態における判定装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本開示の第1の実施形態について、
図1から
図12までを参照して説明する。
図1は、判定システム100の構成例を示す図である。
図2は、容器500とマーカ230の位置関係の一例を示す図である。
図3は、容器500の動きの一例を説明するための図である。
図4は、注目領域を説明するための図である。
図5は、揺動中心軸を説明するための図である。
図6は、カメラ300の位置を説明するための図である。
図7は、判定装置400の構成例を示すブロック図である。
図8は、把持装置200とカメラ300の動作例を示すフローチャートである。
図9は、判定装置400の動作例を示すフローチャートである。
図10は、判定部445の処理例を示すフローチャートである。
図11は、判定システム100が有する他の把持装置である把持装置600の構成例を示す図である。
図12は、他の把持装置である把持装置600の構成例を示す図である。
【0016】
本開示の第1の実施形態においては、水や薬剤などの液体を充填した容器500内部に混入している物体を検出して、検出した物体のうち髪の毛やガラス片などの異物を判定する判定システム100について説明する。後述するように、判定システム100は、容器500を挟み込んで把持した状態で容器500を傾斜・揺動させる。また、判定システム100においては、容器500を傾斜させる際に容器500と同期して傾斜する箇所にマーカ230が設けられている。このような構成によると、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などは、マーカ230の動きに連動して動くことになる。その結果、固定されたカメラ300が撮像・取得した、容器500とマーカ230とが映る画像データに基づいて、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などを容易に判定することが可能となる。
【0017】
なお、本実施形態においては、
図1で示す状態のうち容器500において液体を充填する側を上側、反対側を下側と定義して説明する。
図1の場合、容器500の内部に充填された液体は、容器500の下側に溜まっている。
【0018】
図1は、判定システム100の全体の構成例を示す側面図である。
図1を参照すると、判定システム100は、例えば、回転手段としてのモータ240を有する把持装置200と、カメラ300と、判定装置400と、を含んでいる。
図1で示すように、カメラ300と判定装置400とは、有線または無線により、互いに通信可能なよう接続されている。また、判定装置400と把持装置200とは、有線または無線により互いに通信可能なよう接続することが出来る。
【0019】
把持装置200は、液体を充填した容器500を上下方向から挟み込んで把持した状態で、容器500を傾斜・揺動、回転させる装置である。
図1で示すように、把持装置200は、例えば、上側把持部213と下側把持部214とからなる把持部を含む本体部210と、面照明220と、マーカ230と、モータ240と、を有している。
【0020】
本体部210は、回転手段として機能するモータ240の回転に応じて、傾斜・揺動したり回転したりする。例えば、本体部210は、正面からみて矩形形状を有している。なお、本実施形態においては、本体部210を形成する素材について特に限定しない。本体部210は、例えば、樹脂製や金属製など、任意の素材により形成されていて構わない。また、本体部210の形状も上記例示した以外であっても構わない。
【0021】
図1は、本体部210を側面からみた際の一例を示している。
図1を参照すると、本体部210は、例えば、モータ240と連結される平板状部分211と、平板状部分211の上方側端部及び下方側端部からモータ240が位置する側とは反対側に向かって延出する腕部212と、腕部212のうちモータ240が位置する側とは反対側の端部に形成され、容器500を挟み込んで把持する把持部と、から形成されている。
【0022】
把持部は、上方側に形成された腕部212から下方に向かって突出し容器500の上側(液体を充填する側)に当接する上側把持部213と、下方側に形成された腕部212から上方に向かって突出し容器500の下側に当接する下側把持部214とを含んでいる。
図1で示すように、上側把持部213が容器500の上側から容器500に当接し、下側把持部214が容器500の下側から容器500に当接することで、把持部は容器500を上下方向から挟み込んで容器500を把持する。
【0023】
なお、上側把持部213と下側把持部214とは、長さを調整可能なよう構成することが出来る。上側把持部213と下側把持部214の長さを調整可能なよう構成することで、様々な大きさの容器500を把持可能とするとともに、把持部が容器500を把持した際の位置調整(高さ調整)を容易に行うことが可能となる。なお、長さの調整機能は、例えば、上側把持部213や下側把持部214を第1部分と第2部分とから構成し、第1部分と第2部分とをスライド移動可能にするとともに、任意の位置で固定可能とするなど、既知の手段を用いて実現して構わない。
【0024】
面照明220(照明)は、容器500内に充填された液体に対して光を照射する。例えば、面照明220は、正面からみて矩形形状など、本体部210の形状に応じた形状を有している。面照明220は、例示した以外の形状であっても構わない。
【0025】
例えば、面照明220は、容器500や把持部からみてカメラ300が設置される側とは反対側に設置されている。例えば、
図1を参照すると、面照明220は、本体部210を構成する平板状部分211のうちモータ240が位置する側とは反対側の面上に設置されている。このような構成によると、面照明220は、容器500越しにカメラ300に対して光を照射する。つまり、面照明220は、容器500越しにカメラ300に対して光を照射するように、本体部210に設置されている、ということが出来る。
【0026】
なお、面照明220は、本体部210の平板状部分211に設置されているため、上側把持部213や下側把持部214を含む本体部210と一体的に構成されている、ということも出来る。そのため、例えば、上側把持部213と下側把持部214に把持された容器500を傾斜させると、容器500の傾斜と同期して面照明220も傾斜する。
【0027】
マーカ230は、カメラ300が撮像した画像データに基づいて回転角度を取得可能とするための仕組みである。マーカ230は、例えば、0.5mm角程度の大きさを有する矩形形状や円形形状の光を透過しないフィルムなどであり、面照明220上の所定個所に設置されている。マーカ230は、任意の情報を含む2次元コードなどであっても構わない。
【0028】
マーカ230は、固定設置されたカメラ300が取得する画像データ中に、容器500を傾斜させた際でも少なくとも1つのマーカ230が映るように、面照明220上の所定個所に設置されている。
図2は、マーカ230の設置個所の一例を示している。例えば、
図2で例示する場合、マーカ230は、容器500を傾斜させていない状態で、容器500より外側であって容器500の左側側面部近傍の位置と、容器500の外側であって容器500の右側側面部近傍の位置と、の2か所に設定されている。また、
図2で例示する場合、マーカ230は、容器500を傾斜させる際の軸である揺動中心軸Aの高さと同程度の高さに設けられている。
【0029】
なお、容器500を傾斜させた際でも少なくとも1つのマーカ230が、液体を撮像する画像に映るならば、マーカ230を設置する位置は上記例示した以外であっても構わない。また、マーカ230を設置する数も、1つや3つ以上など任意に定めて構わない。
【0030】
また、マーカ230は、上側把持部213や下側把持部214を含む本体部210と同期して動く箇所であるならば、面照明220以外の箇所に設けられていても構わない。例えば、マーカ230は、本体部210のうち容器500を把持した際に容器500の側面に位置する箇所から容器500の方向に向かって突出する突起部などにより実現されても構わない。マーカ230は、上記例示した以外の方法により実現されても構わない。
【0031】
モータ240は、外部から供給される電力に応じて自身が回転することにより、本体部210を傾斜させて、上側把持部213と下側把持部214に把持された容器500を傾斜・揺動、回転させる、回転手段(傾斜部)として機能する。例えば、モータ240は、本体部210の平板状部分211と連結しており、モータ240が回転することにより本体部210を傾斜・揺動、回転させることが出来る。
【0032】
図3は、上側把持部213と下側把持部214に把持された容器500を傾斜させる際の様子の一例を示している。
図3で示すように、モータ240は、容器500を正転方向(例えば、反時計回りの方向)に傾斜させるとともに、容器500を逆転方向(例えば、時計回りの方向)に傾斜させることが出来る。一例として、例えば、モータ240は、容器500が傾斜していない(0度である)状態、容器500が正転方向に90度傾斜している状態、容器500が傾斜していない状態、容器500が逆転方向に90度傾斜している状態、容器500が傾斜していない状態、という順番で容器500の状態が遷移するように、容器500を傾斜・揺動させることが出来る。つまり、モータ240は、正逆切り替えながら、揺動中心軸Aを中心に容器500を揺動させることが出来る。
【0033】
ここで、カメラ300により画像データを撮像する際には、
図4で示すような注目領域(液中と瓶底)が容器500を傾斜させた際でもカメラ300の画角内に効率よく収まっていることが望ましい。そのため、揺動回転軸Aは、例えば、
図5で示すように、容器500を傾斜させていないときの容器500の中心高さAではなく、容器500を傾斜させていないときの液面高さBや液体中心部高さC(または、液面高さBと液体中心部高さCの間など)に合わせられていることが望ましい。例えば、本実施形態で説明する把持装置200の場合、モータ240と平板状部分211とが連結される個所に応じて、本体部210や把持された容器500などが傾斜する際の中心となる揺動中心軸Aが定まることになる。また、上側把持部213や下側把持部214の長さを調整することで、揺動中心軸Aと容器500や容器500の内部に充填された液体との位置関係を調整することが出来る。従って、モータ240と平板状部分211とが連結される個所や、上側把持部213や下側把持部214の長さは、揺動中心軸Aの位置が望ましい位置になるように、容器500の大きさ、液面高さBや液体中心部高さCなどの液体の量、などに応じて予め定められていたり適宜修正されたりすることが望ましい、ということが出来る。
【0034】
なお、モータ240が容器500を傾斜させる角度は、90度までの間に限定されない。モータ240が容器500を傾斜させる角度は、例えば、容器500の内部に充填された液体の液性や検出したい異物の特性などに応じて適宜定めて構わない。
【0035】
また、モータ240は、後述する判定装置400から受信した指示に応じて、揺動を開始したり停止したりすることが出来る。モータ240は、手動などにより揺動を開始したり停止したりしても構わない。
【0036】
カメラ300は、容器500を撮像することで画像データを取得する撮像装置である。例えば、カメラ300は、上側把持部213や下側把持部214からみて面照明220が位置する側とは反対側の所定位置に予め設置されている。なお、
図1で示すように、把持装置200とカメラ300とは、一体的に構成されていない。そのため、本体部210などを傾斜させてもカメラ300は傾斜しない。つまり、本実施形態の場合、カメラ300は、予め設置された位置に固定された状態で、画像データを取得する。
【0037】
例えば、カメラ300は、150~200fps程度の高フレームレートで画像データを取得する。そして、カメラ300は、取得した画像データを、撮像時刻を示す情報などとともに、判定装置400へ対して送信する。カメラ300は、上記例示した以外のフレームレートで画像データを取得しても構わない。
【0038】
なお、容器500の内部に充填された液体中の異物は、
図4で示すような注目領域(つまり、液中または瓶底)に存在する可能性が高い。そのため、カメラ300は、注目領域を効率的に撮像可能なよう設置することが望ましい。例えば、カメラ300の中心を容器500の下端より高い位置とするとともに、被写界深度が保てる範囲内で、出来る限り近くから容器500の底面(瓶底)全域が映るように、カメラ300の設置位置を定めることが望ましい。また、カメラ300は、広角レンズを用いることが望ましい。このようにカメラ300を設置することで、例えば、質量が大きく浮遊しない異物なども逃さず検出することが出来るようになる。
【0039】
また、カメラ300は、容器500の内部に充填された液体全体が映る範囲内で液中と液面が被る領域が極力小さくなるように、設置することが望ましい。例えば、カメラ300は、出来る限り液面の水平方向から撮像するように設置することが望ましい。
【0040】
以上をまとめると、カメラ300の設置位置は、例えば、
図6で示すような状態であることが望ましいということが出来る。
図6を参照すると、カメラ300の中心の高さが液面以下瓶底よりも高い位置に設置されており、瓶底全域が映っていることが分かる。また、カメラ300の中心高さが液面の高さより下方であって、出来る限り液面の高さと同程度になるようカメラ300が設置されていることが分かる。
【0041】
判定装置400は、カメラ300が撮像・取得した画像データに基づいて、液体を充填した容器500内部に混入している物体を検出して異物を判定する情報処理装置である。
図7は、判定装置400の構成例を示している。
図7を参照すると、判定装置400は、主な構成要素として、例えば、画面表示部410と、通信I/F部420と、記憶部430と、演算処理部440と、を有している。
【0042】
画面表示部410は、LCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)などの画面表示装置からなる。画面表示部410は、演算処理部440からの指示に応じて、画像情報431、追跡情報432、判定結果情報433などの記憶部430に格納された各種情報を画面表示することが出来る。
【0043】
通信I/F部420は、データ通信回路からなる。通信I/F部420は、通信回線を介して接続されたカメラ300や外部装置などとの間でデータ通信を行う。
【0044】
記憶部430は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置である。記憶部430は、演算処理部440における各種処理に必要な処理情報やプログラム434を記憶する。プログラム434は、演算処理部440に読み込まれて実行されることにより各種処理部を実現する。プログラム434は、通信I/F部420などのデータ入出力機能を介して外部装置や記録媒体から予め読み込まれ、記憶部430に保存されている。記憶部430で記憶される主な情報としては、例えば、画像情報431、追跡情報432、判定結果情報433などがある。
【0045】
画像情報431は、カメラ300が取得した画像データを含んでいる。画像情報431においては、例えば、画像データと、画像データをカメラ300が取得した日時を示す情報(撮像時刻を示す情報)と、が対応づけられている。
【0046】
追跡情報432は、追跡部343が追跡を行った結果に応じた情報を含んでいる。例えば、追跡情報432においては、物体ごとに与えられる識別情報と、物体の位置を示す時系列情報と、が対応づけられている。また、物体の位置を示す時系列情報には、例えば、時刻情報と、各時刻における物体の位置を示す座標などの位置情報と、が含まれている。
【0047】
なお、追跡情報432には、例えば、容器500の角度を示す角度情報や検出領域の面積を示す情報など、物体の位置以外の時系列情報が含まれていても構わない。また、物体の位置を示す座標などの位置情報は、各画像データにおけるXY座標を示していても構わないし、各画像データにおけるXY座標を容器500の角度を示す情報に基づいて修正した座標(例えば、容器500が傾いていない場合の位置に修正した座標)を示していても構わない。
【0048】
判定結果情報433は、判定部445が判定した結果を示す情報を含んでいる。例えば、判定結果情報433においては、物体ごとに与えられる識別情報と、判定部445が追跡情報432に基づいて判定した結果を示す情報と、が対応づけられている。つまり、判定結果情報433には、検出した物体が異物、気泡、容器の傷や汚れなど、のうちのいずれに該当するかを示す情報が含まれている。
【0049】
演算処理部440は、MPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有する。演算処理部440は、記憶部430からプログラム434を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム434とを協働させて各種処理部を実現する。演算処理部440で実現される主な処理部としては、例えば、画像取得部441、検出部442、追跡部443、角度情報取得部444、判定部445、出力部446などがある。
【0050】
画像取得部441は、通信I/F部420を介して、カメラ300から当該カメラ300が取得した画像データを取得する。そして、画像取得部441は、取得した画像データを、例えば画像データの取得日時(撮像時刻を示す情報)と対応付けて、画像情報431として記憶部430に格納する。
【0051】
検出部442は、画像データに基づいて、容器500や容器500内に充填された液体に対応する領域内に存在する物体を検出する。例えば、検出部442は、画像データに対する2値化処理を行って、2値化処理の結果に基づいて物体を検出する。なお、検出部442は、そのほか既知の技術を用いて物体を検出しても構わない。
【0052】
追跡部443は、検出部442が検出した物体の追跡を行う。上述したように、カメラ300は、200fpsなどの高フレームレートで画像データを取得している。そのため、撮像時刻が連続する(撮像時刻が所定値より近い)2つの画像データ間において、同一の物体の位置は極めて近いものと想定される。そこで、追跡部443は、検出部442が検出した物体の位置と、撮像時刻が一つ前(または、所定値内)の画像データにおいて検出部442が検出した物体の位置と、を比較する。そして、追跡部443は、物体間の距離が予め定められた閾値以下である物体が存在する場合、距離が閾値以下である、検出部442が検出した物体と撮像時刻が一つ前の画像データにおいて検出部442が検出した物体とが同一の物体であると判定する。この場合、追跡部443は、検出部442が検出した物体に、同一の物体と判断した物体に対して付与されているIDなどの識別情報を付与する。一方、撮像時刻が一つ前(または、所定値内)の画像データにおいて、検出部442が検出した物体との間の距離が予め定められた閾値以下となる物体が存在しない場合、追跡部443は新規な物体を検出したと判定する。この場合、追跡部443は、検出した物体に対して新たなIDなどの識別情報を付与する。
【0053】
例えば、以上のように、追跡部443は、異なる画像データにおける物体間の距離に基づく追跡を行うことで、検出部442が検出した物体に対して識別情報を与える。また、追跡部443は、検出部442が検出した物体の位置を示す座標を取得する。そして、追跡部443は、識別情報と画像データの撮像時刻を示す時刻情報と座標とを対応付けて、追跡情報432として記憶部430に格納する。なお、追跡部443は、画像データにおけるXY座標を追跡情報432として記憶部430に格納しても構わないし、各画像データにおけるXY座標を角度情報取得部444が取得した容器500の角度を示す情報に基づいて修正した座標(例えば、容器500が傾いていない場合の位置に修正した座標)を追跡情報432として記憶部430に格納しても構わない。
【0054】
角度情報取得部444は、画像データ中のマーカ230の位置に基づいて容器500が傾斜している角度を示す角度情報を取得する。例えば、容器500の傾斜角度と画像データ中のマーカ230の位置とのキャリブレーションが予め行われている。そのため、角度情報取得部444は、画像データ中のマーカ230の位置に基づいて、容器500が傾斜している角度を示す角度情報を取得することが出来る。
【0055】
角度情報取得部444は、角度情報を取得すると、当該取得した角度情報を画像データの撮像時刻を示す時刻情報などとともに記憶部430に格納することが出来る。上述したように、角度情報取得部444は、追跡情報432に含まれる情報の一つとして角度情報を記憶部430に格納しても構わない。
【0056】
判定部445は、追跡情報432に基づいて、検出部442が検出した物体が気泡、異物、容器500の傷や汚れや付着物、のいずれに該当するか判定する。本実施形態の場合、判定部445は、容器500が揺動中の時系列情報に基づく判定と、揺動が終わった後(つまり、容器500が
図1で示す状態で停止した後)の時系列情報に基づく判定と、を行うことが出来る。なお、判定部445は、追跡情報432に含まれる角度情報に基づいて、容器500が揺動中であるか否かを判断することが出来る。
【0057】
例えば、判定部445は、追跡情報432のうち容器500が揺動中の時系列情報に基づいて、検出部442が検出した物体が容器500の傷や汚れ、容器500に付着した付着物であるか否かを判定する。上述したように、マーカ230は、容器500と同期して傾斜する本体部210に設置された面照明220上に設置されている。そのため、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などは、マーカ230の動きに連動して動くことになる。例えば、上記連動とは、マーカ230が移動を開始すれば、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などが直ちに移動を開始し、マーカ230が移動を停止すれば、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などが移動を直ちに停止するように、完全に連動していることを意味する。そこで、判定部445は、容器500が揺動中の時系列情報に基づいて、検出部442が検出した物体のうち、マーカ230の動きと連動して動く物体について、容器500の傷や汚れ、付着物などであると判定する。一方、検出部442が検出した物体のうち、動きがマーカ230の動きと連動していない物体について、判定部445は、容器500の傷や汚れ、付着物などでないと判定する。つまり、判定部445は、マーカ230の動きと連動していない物体について、気泡または異物の可能性があると判定する。
【0058】
また、判定部445は、追跡情報432のうち揺動が終わった後の時系列情報に基づいて、検出部442が検出した物体が気泡または異物のいずれであるかを判定する。なお、判定部445は、検出部442が検出したすべての物体のうち、判定部445が容器の傷、汚れ、付着物である、と判定した物体を除いた物体に対して、上記判定を行うことが出来る。例えば、判定部445は、揺動が停止した後の時系列情報に基づいて、物体が上方へと移動していると判断される場合、当該物体は気泡であると判定する。一方、揺動が停止した後の時系列情報に基づいて、物体が下方へと移動していると判断される場合、判定部445は、当該物体は異物であると判定する。例えば、以上のように、判定部445は、揺動が停止した後の時系列情報が示す物体の移動方向に基づいて、物体が気泡または異物のいずれであるかを判定することが出来る。なお、判定部445は、予め学習されたモデルなどを用いて上記判定を行うなど、上記例示した以外の方法により気泡と異物とを判定しても構わない。
【0059】
例えば、以上のように、判定部445は、物体のうち容器500の傷などを判定した後に、残りの物体が気泡と異物のいずれであるかを判定する。そして、判定部445は、検出部442が検出した各物体の判定結果について、判定結果情報433として記憶部430に格納する。なお、本実施形態においては、判定部445が判定を行うタイミングについては特に限定しない。例えば、判定部445は、容器500の揺動中などにリアルタイムで物体が傷などであるか否か判定するよう構成しても構わないし、揺動中と終わった後の時系列データが揃った後に、上述した一連の処理を行っても構わない。
【0060】
なお、判定部445は、マーカ230の連動判定と、気泡または異物の判定と、を並列に実施するよう構成しても構わない。つまり、判定部445は、揺動が終わる前に、物体が気泡または異物のいずれであるかの判定を開始しても構わない。また、判定部445は、物体の判定を行う際、追跡情報432以外の情報を用いても構わない。例えば、判定部445は、物体の画像特徴、サイズや平均輝度値などを示す情報を併用して、物体の判定を行うことが出来る。物体のサイズや平均輝度値など動き以外の情報も併せて判断することによって、気泡や異物の特徴を総合的に判断できるため、より高い判定精度を得ることが可能になる。
【0061】
出力部446は、画像情報431、追跡情報432、判定結果情報433などを出力する。例えば、出力部446は、画像情報431、追跡情報432、判定結果情報433などを、画面表示部410上に画面表示したり、通信I/F部420を介して外部装置に対して送信したりすることが出来る。
【0062】
以上が、判定装置400の構成例である。
【0063】
なお、判定装置400は上述した以外の構成を有しても構わない。例えば、判定装置400は、把持装置200に対して揺動開始の指示をしたり揺動停止の指示をしたりするよう構成することが出来る。例えば、判定装置400は、揺動開始から所定時間経過した、揺動回数(正転方向へ傾斜した回数と逆転方向へ傾斜した回数)が所定回数になった、などの条件を満たす場合に、把持装置200に対して揺動停止を指示することが出来る。
【0064】
また、判定装置400は、揺動開始の指示の前に、容器500の壁面に固着した異物などを剥離するための回転動作を行うよう把持装置200に対して指示することが出来る。つまり、判定装置400は、回転動作を指示した後に揺動開始の指示を行うよう構成しても構わない。
【0065】
容器500は、ガラス瓶やペットボトルなどの透光性を有する容器である。容器500の内部には、水や薬剤などの液体が充填されている。容器500には傷や汚れなどが付着している可能性がある。また、容器500の内部には、異物が混入している可能性がある。異物としては、例えば、ゴム片、髪の毛、繊維片、煤、ガラスやプラスチック片、などが想定される。
【0066】
以上が、判定システム100が有する把持装置200、カメラ300、判定装置400、容器500の構成例である。続いて、
図8から
図10までを参照して、判定システム100の動作例について説明する。まず、
図8を参照して、把持装置200が容器500を揺動させるタイミングとカメラ300が撮像するタイミングの関係について説明する。
【0067】
図8を参照すると、把持装置200は、例えば判定装置400からの指示などに応じて、容器500を傾斜させる(ステップS101)。つまり、揺動開始する。また、例えば、把持装置200が揺動を開始したタイミングで、カメラ300は、撮像を開始する(ステップS201)。なお、カメラ300は、把持装置200が揺動を開始する前から撮像を開始しても構わないし、把持装置200が揺動を開始した後に撮像を開始しても構わない。
【0068】
把持装置200は、例えば判定装置400からの指示などに応じて、揺動を停止する(ステップS102)。
図8で示すように、把持装置200が揺動を停止するタイミングでは、カメラ300は撮像を終了しない。従って、カメラ300は、把持装置200が容器500を揺動させている最中に撮像を行うとともに、把持装置200による揺動が停止した後も撮像を続ける。
【0069】
カメラ300は、撮像を終了する(ステップS202)。本実施形態においては、カメラ300が撮像を終了する条件については特に限定しない。例えば、カメラ300は、揺動開始から所定時間経過した、揺動停止後所定時間経過した、検出部442が検出したすべての物体に対して判定部445による判定が終了した、などの予め定められた条件を満たした場合に、撮像を終了することが出来る。
【0070】
以上が、把持装置200が容器500を揺動させるタイミングとカメラ300が撮像するタイミングの関係の一例である。上述したように、本実施形態の場合、カメラ300は、把持装置200が容器500を揺動させる様子を撮像するとともに、揺動が停止した後も撮像を継続する。続いて、
図9を参照して、判定装置400の全体的な動作例について説明する。
【0071】
図9を参照すると、画像取得部441は、通信I/F部420を介して、カメラ300から当該カメラ300が取得した画像データを取得する(ステップS301)。
【0072】
検出部442は、画像データに基づいて、容器500や容器500内に充填された液体に対応する領域内に存在する物体を検出する(ステップS302)。検出部442は、既知の技術を用いて物体を検出して構わない。
【0073】
追跡部443は、検出部442が検出した物体の追跡を行う(ステップS303)。例えば、追跡部443は、撮像時刻が近い(または連続する)画像データにおける物体間の距離に基づいて、物体を追跡する。
【0074】
画像データ内において検出部422が検出したすべての物体を追跡できていない場合(ステップS304、No)、追跡部443は、追跡していない物体の追跡を行う。一方、画像データ内において検出部422が検出したすべての物体を追跡できた場合(ステップS304、Yes)、追跡部443は、追跡を完了する。
【0075】
また、角度情報取得部444は、画像データ中のマーカ230の位置に基づいて、容器500が傾斜している角度を示す角度情報を取得する(ステップS305)。
【0076】
カメラ300が撮像する一連の画像データをすべて取得した場合(ステップS306、Yes)、判定装置400は処理を終了する。一方、未取得の画像データがある場合(ステップS306、No)、画像取得部441はカメラ300から画像データを取得する(ステップS301)。
【0077】
以上が、判定装置400の動作例である。なお、判定装置400は、カメラ300が撮像する一連の画像データをすべて取得した後に、ステップS302以降の処理を行うなど、上記例示した以外の順番で処理を行っても構わない。続いて、
図10を参照して、判定部445の処理例について説明する。
【0078】
図10を参照すると、判定部445は、追跡情報432のうち容器500が揺動中の時系列情報を取得する(ステップS401)。
【0079】
検出部442が検出した物体の中にマーカ230の動きと連動して動く物体がある場合(ステップS402、Yes)、判定部445は、マーカ230の動きと連動して動く物体が容器500の傷や汚れ、付着物などであると判定する(ステップS403)。そして、判定部445は、ステップS407の処理で判定する対象から容器500の傷や汚れ、付着物などであると判定した物体を除外する(ステップS404)。一方、マーカ230の動きと連動して動かない物体がある場合(ステップS402、No)、判定部445は、マーカ230の動きと連動していない物体は、容器500の傷や汚れ、付着物などでないと判定する(ステップS405)。
【0080】
また、判定部445は、追跡情報432のうち容器500が揺動を停止した後の時系列情報を取得する(ステップS406)。そして、判定部445は、追跡情報432のうち揺動が終わった後の時系列情報に基づいて、検出部442が検出した物体が気泡または異物のいずれであるかを判定する(ステップS407)。例えば、判定部445は、揺動が停止した後の時系列情報が示す物体の移動方向に基づいて、物体が気泡または異物のいずれであるかを判定することが出来る。判定部445は、上記例示した以外の方法により判定を行っても構わない。
【0081】
以上が、判定部445の処理例である。なお、本実施形態においては、判定部445が判定を行うタイミングについては特に限定しない。例えば、判定部445は、容器500の揺動中などにリアルタイムで物体が傷などであるか否か判定するよう構成しても構わないし、揺動中と終わった後の時系列データが揃った後に、上述した一連の処理を行っても構わない。
【0082】
このように、把持装置200は、把持した容器500を傾斜させる際に容器500と同期して傾斜する面照明220に設置されたマーカ230を有している。このような構成によると、把持した容器500を傾斜させる際、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などは、マーカ230の動きに連動して動くことになる。その結果、固定されたカメラ300が取得した、容器500とマーカ230とが映る画像データに基づいて、容器500の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などを容易に判定することが可能となる。
【0083】
また、上記構成によると、固定されたカメラ300が撮像・取得した画像データに基づいて、容易に容器500が傾斜している角度を示す角度情報を取得することが出来る。角度情報は、例えば、回転手段であるモータ240のエンコーダなどから取得することも出来るが、エンコーダから角度情報を取得しようとすると、判定システム100の構成が複雑になる。上述したようにマーカ230を設置することで、構成を複雑なものとすることなく、容易に角度情報を取得することが可能となる。
【0084】
また、上述した構成によると、容器500の傷などを事前に判定することが出来る。その結果、判定部445は、事前に容器500の傷などを除いた物体に対して、気泡と異物のいずれであるかを判定することが出来る。その結果、容器500の傷などを気泡や異物などと誤判定することを抑制でき、判定の精度を上げることが出来る。
【0085】
なお、本実施形態では、判定システム100の構成例について説明した。しかしながら、判定システム100の構成は、本実施形態で例示した場合に限定されない。例えば、判定システム100は、
図1などで例示した把持装置200の代わりに、
図11、
図12で示すような把持装置600を有しても構わない。
【0086】
把持装置600は、把持装置200と同様に、液体を充填した容器500を上下方向から挟み込んで把持した状態で、容器500を傾斜させる装置である。
図11で示すように、把持装置600は、例えば、上側把持部611と下側把持部612とからなる把持部を含む本体部610と、面照明620と、歯車630と、モータ640と、を有している。
【0087】
本体部610は、回転手段として機能する歯車630とモータ640の回転に応じて、傾斜・揺動、回転する。例えば、本体部610は、円柱形状を有しており、内部に容器500を把持可能なよう構成されている。なお、本体部210と同様に、本体部610は、任意の素材により形成されていて構わない。また、本体部610の形状も上記例示した以外であっても構わない。
【0088】
図11は本体部610を側面からみた際の一例を示しており、
図12は本体部610を正面からみた際の一例を示している。
図11、
図12を参照すると、本体部610は、容器500を把持するための把持部と、本体部610のうち容器500を把持した際に容器500の側面に位置する箇所から容器500の方向に向かって突出する一対のマーカ部613と、を含んでいる。また、本体部610は、歯車630とかみ合っており、歯車630の回転に応じて傾斜・揺動するよう構成されている。
【0089】
把持部は、本体部610の上方側内周面に形成され下方に向かって突出する上側把持部611と、本体部610の下方側内周面に形成され上方に向かって突出する下側把持部612を含んでいる。
図12で示すように、上側把持部611が容器500の上側から容器500に当接し、下側把持部612が容器500の下側から容器500に当接することで、把持部は容器500を上下方向から挟み込んで容器500を把持する。
【0090】
なお、把持装置200の場合と同様に、上側把持部611と下側把持部612とは、長さを調整可能なよう構成して構わない。
【0091】
マーカ部613は、マーカ230と同様に、カメラ300が撮像した画像データに基づいて回転角度を取得可能とするための仕組みである。マーカ部613の内側先端付近には、2次元コードなどを設置しても構わない。マーカ部613は、マーカ230と同様に様々な変形例を採用することが出来る。
【0092】
面照明620は、容器500内に充填された液体に対して光を照射する。例えば、面照明620は、正面からみて円形形状など本体部610の形状に応じた形状を有していても構わないし、矩形形状などであっても構わない。
【0093】
例えば、面照明620は、面照明220と同様に、容器500や把持部からみてカメラ300が設置される側とは反対側に設置されている。把持装置600の場合、把持装置200の場合と異なり、面照明620が本体部610と一体的に構成されていなくても構わない。面照明620は、本体部610と一体的に構成されていても構わない。
【0094】
歯車630とモータ640は、本体部610を回転させる回転手段として機能する。モータ640は、外部から供給される電力に応じて自身が回転することにより、歯車630を回転させる。また、歯車630は、モータ640の回転を本体部610へと伝える。これにより、本体部610は、モータ640の回転に応じて、傾斜・揺動する。
【0095】
例えば、以上説明したように、判定システム100は、把持装置200の代わりに把持装置600を有しても構わない。判定システム100は、把持装置600を有する場合であっても、把持装置200の場合と同様の作用・効果を有することが出来る。なお、判定システム100が有する把持装置は、把持装置200の特徴と把持装置600の特徴とを組み合わせた特徴を有していても構わない。
【0096】
また、本実施形態においては、1台の情報処理装置により判定装置400としての機能を実現する場合について説明した。しかしながら、判定装置400としての機能は、ネットワークを介して接続された複数台の情報処理装置により実現されても構わない。例えば、本実施形態においては、判定装置400が把持装置200に対して揺動開始の指示をしたり揺動停止の指示をしたりするよう構成することが出来るとした。しかしながら、判定システム100は、上記指示を行う指示装置を判定装置400と別の装置として有しても構わない。
【0097】
[第2の実施形態]
次に、
図13から
図15までを参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、把持装置700と、判定装置800の構成の概要について説明する。
【0098】
図13は、把持装置700の構成の一例を示している。
図13を参照すると、把持装置700は、把持部710と、傾斜部720と、マーカ730と、を有している。
【0099】
把持部710は、液体が充填された容器を把持する。また、傾斜部720は、把持部710が容器を把持した状態で当該容器を少なくとも傾斜させる。例えば、傾斜部720は、モータなどであり、把持部710を傾斜させることで、容器を傾斜させる。また、マーカ730は、容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する箇所に設置され、容器の動きと連動して動く。例えば、マーカ730は、把持部710に設置されている。
【0100】
このように、把持装置700は、把持部710と傾斜部720とマーカ730とを有している。このような構成によると、把持した容器を傾斜させる際、容器の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などは、マーカ730の動きに連動して動くことになる。その結果、固定されたカメラが取得した、容器とマーカ730とが映る画像データに基づいて、容器の傷や汚れ、充填された液体の外側に位置する付着物などを容易に判定することが可能となる。
【0101】
また、
図14は、判定装置800のハードウェア構成例を示している。
図14を参照すると、判定装置800は、一例として、以下のようなハードウェア構成を有している。
・CPU(Central Processing Unit)801(演算装置)
・ROM(Read Only Memory)802(記憶装置)
・RAM(Random Access Memory)803(記憶装置)
・RAM803にロードされるプログラム群804
・プログラム群804を格納する記憶装置805
・情報処理装置外部の記録媒体810の読み書きを行うドライブ装置806
・情報処理装置外部の通信ネットワーク811と接続する通信インタフェース807
・データの入出力を行う入出力インタフェース808
・各構成要素を接続するバス809
【0102】
また、判定装置800は、プログラム群804をCPU801が取得して当該CPU801が実行することで、
図15に示す検出部821、追跡部822、判定部823としての機能を実現することが出来る。なお、プログラム群804は、例えば、予め記憶装置805やROM802に格納されており、必要に応じてCPU801がRAM803などにロードして実行する。また、プログラム群804は、通信ネットワーク811を介してCPU801に供給されてもよいし、予め記録媒体810に格納されており、ドライブ装置806が該プログラムを読み出してCPU801に供給してもよい。
【0103】
なお、
図14は、判定装置800のハードウェア構成例を示している。判定装置800のハードウェア構成は上述した場合に限定されない。例えば、判定装置800は、ドライブ装置806を有さないなど、上述した構成の一部から構成されてもよい。
【0104】
検出部821は、容器に充填された液体と、容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する。
【0105】
追跡部822は、検出部821が検出した物体を追跡する。
【0106】
判定部823は、追跡部822による追跡の結果と、マーカの動きと、に基づいて、検出部821が検出した物体の判定を行う。例えば、判定部823は、物体が、異物、気泡、容器の傷など、のうちのいずれに該当するかを判定する。
【0107】
このように、判定装置800は、検出部821と、追跡部822と、判定部823と、を有している。このような構成により、判定部823は、追跡部822による追跡の結果と、マーカの動きと、に基づいて、検出部821が検出した物体の判定を行うことが出来る。その結果、容器の傷などを容易に判定することが可能となり、容器の傷などを除いた状態で、物体が気泡であるか異物であるかを判定することが可能となる。これにより、例えば、判定の精度を向上させることなどが出来る。
【0108】
なお、上述した判定装置800は、当該判定装置800に所定のプログラムが組み込まれることで実現できる。具体的に、本発明の他の形態であるプログラムは、判定装置800に、容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する検出部821と、検出部821が検出した物体を追跡する追跡部822と、追跡部822による追跡の結果と、マーカの動きと、に基づいて、物体の判定を行う判定部823と、を実現するためのプログラムである。
【0109】
また、上述した判定装置800により実行される判定方法は、判定装置800が、容器に充填された液体と、容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出し、検出した物体を追跡し、追跡の結果と、マーカの動きと、に基づいて、検出した物体の判定を行う、という方法である。
【0110】
上述した構成を有する、プログラム、又は、判定方法、の発明であっても、上記判定装置800と同様の作用・効果を有するために、上述した本発明の目的を達成することが出来る。
【0111】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における把持装置や判定装置などの概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0112】
(付記1)
液体が充填された容器を把持する把持部と、
前記把持部が前記容器を把持した状態で当該容器を少なくとも傾斜させる傾斜部と、
前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する箇所に設置され、前記容器の動きと連動して動くマーカと、
を有する
把持装置。
(付記2)
付記1に記載の把持装置であって、
前記把持部が把持する前記容器内に充填された前記液体に対して光を照射する照明を有し、
前記照明は、前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜するよう設置され、
前記マーカは、前記照明上に設置されている
把持装置。
(付記3)
付記1または2に記載の把持装置であって、
前記傾斜部は、前記把持部を有する本体部を傾斜させることで、当該把持部が把持する前記容器を傾斜させるよう構成され、
前記マーカは、前記本体部に形成されている
把持装置。
(付記4)
付記1から付記3までのいずれか1項に記載の把持装置であって、
前記マーカは、外部に設置されたカメラにより前記容器に充填された液体を撮像する際の撮像範囲内に位置するよう設置されている
把持装置。
(付記5)
付記1から付記4までのいずれか1項に記載の把持装置であって、
前記傾斜部は、前記容器を時計回り方向に傾斜させるとともに、反時計回り方向に傾斜させる
把持装置。
(付記6)
液体が充填された容器を把持する把持部と、前記把持部が前記容器を把持した状態で当該容器を少なくとも傾斜させる傾斜部と、前記容器が傾斜する際に当該容器と同期して傾斜する箇所に設置され、前記容器の動きと連動して動くマーカと、を有する把持装置と、
前記把持装置の外部に設置され、前記容器に充填された液体を撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像データに基づいて物体を検出し、検出した物体が異物であるか否か判定する判定装置と、
を有する
判定システム。
(付記7)
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する検出部と、
前記検出部が検出した物体を追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、前記検出部が検出した前記物体の判定を行う判定部と、
を有する
判定装置。
(付記8)
付記7に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記追跡部による追跡の結果として特定される前記物体の動きと、前記マーカの動きと、に基づいて、物体の判定を行う
判定装置。
(付記9)
付記8に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記物体が気泡であるか、または異物であるかを判定する
判定装置。
(付記10)
付記8または付記9に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記物体の動きと前記マーカの動きとが連動している場合、前記物体は前記容器の傷、または、汚れ、または、前記容器に付着している付着物、のいずかであると判定する
判定装置。
(付記11)
付記8から付記10までのいずれか1項に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記物体の動きと前記マーカの動きとが連動しているか否かに基づく判定を行うとともに、前記追跡部による追跡の結果に基づいて前記物体が気泡であるか、または、異物であるかを判定する
判定装置。
(付記12)
付記8から付記11までのいずれか1項に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記物体の動きと前記マーカの動きとが連動しているか否かに基づく判定により、前記容器の傷、または、汚れ、または、前記容器に付着している付着物、のいずかである前記物体を特定し、前記検出部が検出した前記物体のうち特定した前記物体を除いた前記物体に対して、当該物体が気泡であるか、または、異物であるかを判定する
判定装置。
(付記13)
判定装置が、
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出し、
検出した物体を追跡し、
追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、検出した前記物体の判定を行う
判定方法。
(付記14)
判定装置に、
容器に充填された液体と、前記容器が動く際に連動して動くマーカと、が映る画像データに基づいて、物体を検出する検出部と、
前記検出部が検出した物体を追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡の結果と、前記マーカの動きと、に基づいて、物体の判定を行う判定部と、
を実現するためのプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【0113】
なお、上記各実施形態及び付記において記載したプログラムは、記憶装置に記憶されていたり、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていたりする。例えば、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び、半導体メモリ等の可搬性を有する媒体である。
【0114】
以上、上記各実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることが出来る。
【符号の説明】
【0115】
100 判定システム
200 把持装置
210 本体部
211 平板状部分
212 腕部
213 上側把持部
214 下側把持部
220 面照明
230 マーカ
240 モータ
300 カメラ
400 判定装置
410 画面表示部
420 通信I/F部
430 記憶部
431 画像情報
432 追跡情報
433 判定結果情報
434 プログラム
440 演算処理部
441 画像取得部
442 検出部
443 追跡部
444 角度情報取得部
445 判定部
446 出力部
500 容器
600 把持装置
610 本体部
611 上側把持部
612 下側把持部
613 マーカ部
620 面照明
630 歯車
640 モータ
710 把持部
720 傾斜部
730 マーカ
800 判定装置
801 CPU
802 ROM
803 RAM
804 プログラム群
805 記憶装置
806 ドライブ装置
807 通信インタフェース
808 入出力インタフェース
809 バス
810 記録媒体
811 通信ネットワーク
821 検出部
822 追跡部
823 判定部