(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20231108BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16H57/04 N
F16H57/04 G
H02K9/19 Z
(21)【出願番号】P 2022522150
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020019027
(87)【国際公開番号】W WO2021229697
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】原田 武仁
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/144035(WO,A1)
【文献】特開2000-83351(JP,A)
【文献】特開昭62-296737(JP,A)
【文献】特開2005-278319(JP,A)
【文献】特開2020-54065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに収装される回転電機及び変速機と、を備え、前記ハウジングの底部に前記変速機のギアを潤滑する潤滑油が貯留される駆動装置であって、
前記ハウジングは、
前記回転電機を冷却する冷媒が流通する冷媒通路と、
前記冷媒通路に隣接して、前記変速機のギアによりかき上げられた潤滑油を一時的に貯留する貯留部と、
内部に円筒形状の空間を有するアウターハウジングと、
前記アウターハウジングに内装されるインナーハウジングと、を備え、
前記アウターハウジングは、前記回転電機が収装される回転電機室と前記変速機が収装される変速機室とを区画する隔壁部を備え、前記回転電機室の内周側に前記インナーハウジングが装着され、
前記冷媒通路は、前記アウターハウジングの前記隔壁部と前記インナーハウジングとの間に形成され、
前記冷媒通路と前記貯留部は、前記隔壁部を挟んで対峙する、
駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記インナーハウジングは、前記アウターハウジングの前記隔壁部付近で当該アウターハウジングに内接する固定部により固定され、
前記アウターハウジングの前記回転電機室の内周と前記インナーハウジングとの間に第1冷媒通路が形成され、
前記アウターハウジングの前記回転電機室側の前記隔壁部と前記インナーハウジングとの間に第2冷媒通路が形成され、
前記第1冷媒通路と、前記第2冷媒通路とは、前記固定部に形成される連通孔により連通する
駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動装置であって、
前記変速機には、前記変速機の回転を静止させるためのパーク機構が備えられ、
前記貯留部は、前記隔壁部と、前記隔壁部に固定される前記パーク機構の一部の部品とにより区画された領域により構成される
駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の駆動装置であって、
前記ハウジングの前記変速機室には、前記ギアの径方向外側に、前記ギアがかき上げる潤滑油を導く仕切板が備えられる
駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の駆動装置であって、
前記隔壁部には、前記隔壁部から起立して形成されたリブが備えられ、
下方に流下する前記変速機の潤滑油が、前記リブにより前記貯留部に導かれる
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車両等に用いられる減速機においては、潤滑及び冷却のための潤滑油が用いられている。
【0003】
JP2018-59577Aには、変速機(減速機)内に冷却水が流通するU字状パイプからなる熱交換器を配置し、潤滑油と冷却水との間で熱交換を行なう動力伝達装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のように、減速機内に熱交換器を備えると構造が複雑になる。また、部品点数が増加することで減速機の構成が大型化し、重量も増加するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、減速機の部品点数を増加することなく潤滑油を冷却できる駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様は、ハウジングと、ハウジングに収装される回転電機及び変速機と、を備え、ハウジングの底部に変速機のギアを潤滑する潤滑油が貯留される駆動装置に適用される。ハウジングは、回転電機を冷却する冷媒が流通する冷媒通路と、冷媒通路に隣接して、変速機のギアによりかき上げられた潤滑油を一時的に貯留する貯留部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、回転電機の冷媒通路に隣接して潤滑油を一時的に貯留する貯留部を備えたので、減速機の部品点数を増加することなく、潤滑油を冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態の車両用の駆動装置の縦断面図である。
【
図2】
図2は、減速機をアウターハウジングの隔壁部に向かって見た図である。
【
図3】
図3は、減速機をアウターハウジングの隔壁部に向かって見た図である。
【
図4】
図4は、減速機を隔壁部に向かって見た図である。
【
図5】
図5は、減速機を隔壁部側から見た図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態の車両用の駆動装置の縦断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態の減速機をアウターハウジングの隔壁部に向かって見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の車両用の駆動装置1の縦断面図である。
【0011】
駆動装置1は、回転電機としてのモータ10と、モータ10の回転を減速して図示しない駆動輪に伝達する減速機20とを備える。モータ10と減速機20とは、ハウジング50に収容される。
【0012】
モータ10は、ステータ110、ロータ120及びロータ軸130を備え、図示しないバッテリからの電力の供給を受けて回転する。モータ10は、駆動輪の回転による駆動力を受けて発電(回生)を行なう発電機としても機能する。なお、モータ10は、車両以外の装置、例えば各種電気機器又は産業機械の駆動装置として用いられてもよい。
【0013】
減速機20は複数のギアを有する変速装置である。減速機20は、モータ10から入力される回転を減速して、駆動輪へと伝達する。
【0014】
ハウジング50は、アウターハウジング51と、アウターハウジング51に内装されるインナーハウジング52とを備える。
【0015】
アウターハウジング51の内周側には、モータ10が収装されるモータ室(回転電機室)510と、減速機20が収装される減速機室(変速機室)520と、が構成されている。モータ室510と減速機室520との間には、これらを区画する隔壁部530が形成されている。隔壁部530には、モータ10のロータ軸130が貫通する貫通口531が形成されている。
【0016】
アウターハウジング51のモータ室510は、円筒形状の空間であり、その内周側にインナーハウジング52が装着される。インナーハウジング52の内側には、モータ10が備えられる。
【0017】
インナーハウジング52の外周には、凹凸形状が形成されている。インナーハウジング52の外周の凸形状がアウターハウジング51の内周に密接することで、インナーハウジング52がアウターハウジング51に固定される。インナーハウジング52の外周の凹形状は、アウターハウジング51の内周との間に空間を形成する。この空間が、モータ10を冷却する冷媒が流通する冷媒通路(第1冷媒通路61)として構成される。
【0018】
インナーハウジング52の隔壁部530に臨む部分には、隔壁部530に対向するように内周側に沿って延設された壁部525が形成される。また、インナーハウジング52の壁部525の内周部位(開口部)は、隔壁部530の貫通口531から突出する円筒状のフランジ部531aに外接する。この壁部525の内周部位には、冷媒の漏れを防止するシール部材65aが備えられる。インナーハウジング52の隔壁部530付近であって、壁部525よりも外周側には、外周面に沿って延設する固定部54が形成されている。固定部54は、アウターハウジング51の内周に密接する凸形状として構成され、インナーハウジング52をアウターハウジング51の内周に固定する。
【0019】
このような構成により、インナーハウジング52の壁部525及び固定部54と、アウターハウジング51の隔壁部530とで囲まれる空間は、冷媒が流通する冷媒通路(第2冷媒通路62)として構成される(
図2に点線で示す)。固定部54には、第1冷媒通路61と第2冷媒通路62とを連通する連通孔54aが、周方向に所定の間隔で(例えば4つ)開口されている。
【0020】
モータ10は、その周方向外側に形成された第1冷媒通路61と、隔壁部530側に形成された第2冷媒通路62とを流通する冷媒により冷却される。
【0021】
減速機20は、三つの軸(第1軸21、第2軸22及び第3軸23)と、三つの軸それぞれに固定されるギアにより構成される。
【0022】
第1軸21は、第1ギア211を有する。第1軸21は、モータ10のロータ軸130に連結され、モータ10のロータ120と共に回転する。第2軸22は第1軸21の下方に位置しており、二つの第2ギア221a、221bを有する。第3軸23は第2軸22の下方に位置しており、ファイナルギア231を有する。ファイナルギア231は差動装置を備える。第3軸23は車軸として構成され、駆動輪に連結される。第2ギア221aは、第1軸21の第1ギア211と噛合し、第2ギア221bは第3軸23のファイナルギア231と噛合する。これにより、第1軸21の回転が第3軸23へと伝達される。
【0023】
第1軸21、第2軸22及び第3軸23は、図示しない軸受により、アウターハウジング51の内壁に回転可能に支持される。
【0024】
このような構成により、減速機20によりモータ10の回転が駆動輪に伝達されて、車両が走行する。
【0025】
なお、本実施形態では、減速機20は、4つの歯車によりモータ10を減速する例を示したが、歯車の数及び構成はこれに限られるものではない。減速機20は、回転を変速させるものであればよく、変速機として構成されていてもよい。
【0026】
図2は、隔壁部530を減速機20側から見た図である。
【0027】
隔壁部530は、第1軸21が支持される第1軸受部521と、第2軸22が支持される第2軸受部522と、第3軸23が支持される第3軸受部523と、を備える。
【0028】
これら軸受部は、隔壁部530から円筒状に起立して形成される。これら軸受部の周囲には、補強のための複数のリブが備えられている。
【0029】
次に、減速機20における潤滑油について説明する。
【0030】
減速機20は、潤滑油により、複数のギアの潤滑が行なわれる。潤滑油は、減速機20の底部、つまり、ハウジング50内の減速機室520の下部に貯留されている。すなわち、この底部がオイルパン540(
図1参照)として構成される。
【0031】
車両の走行時には、ファイナルギア231により潤滑油が上方へとかき上げられる。その後、潤滑油は、第2ギア221a、221b及び第1ギア211へと導かれる。このように、潤滑油が各ギアの歯面を伝わることで、各ギアを潤滑する。その後、潤滑油は、重力により下方へと流下する。
【0032】
このように構成される減速機20において、潤滑油の冷却について説明する。
【0033】
減速機20の潤滑油を冷却するために、従来、減速機20の外部にオイルクーラを備えたり、減速機20の内部にモータ冷却用の冷媒を流通させる冷却水通路を備えたり、といった方法があった。
【0034】
一方で、このような冷却用の構成を備えると、構造が複雑になり部品点数が増加することで減速機の構成が大型化し、重量も増加する。さらに、潤滑油を減速機20の外部に流通させる配管や、冷却水を減速機20の内部に流通させる配管は、オイルシールが必要となり、構造が複雑となり、メンテナンス性も低下する。
【0035】
そこで、本実施形態は、次のような構成により、減速機20の潤滑油の冷却を行なうように構成した。
【0036】
図3は、隔壁部530を減速機20側から見た図であり、貯留部100の説明のための図である。
【0037】
本実施形態では、隔壁部530の減速機20側に、上方から流下する潤滑油を一時的に貯留する貯留部(貯留タンク)100を備えた。
【0038】
貯留部100は、隔壁部530の第1軸受部521、第2軸受部522及び第3軸受部523の間に位置する。貯留部100は、この位置で、隔壁部530から起立形成される部位と、この部位に取り付けられるディテントスプリング58とによって構成される。
【0039】
ディテントスプリング58は、減速機20に備えられるパーク機構(図示せず)の一部の部品を構成する。パーク機構は、減速機20の減速機の回転を静止させるカム部材を有する。ディテントスプリング58は、このカム部材に付勢力を与える薄板状の板バネとして構成される。
【0040】
隔壁部530の表面には複数の凸形状が起立形成されている。リブ56a、56bは、隔壁部530の補強のための構成である。突起部55aは、ディテントスプリング58を固定するための構成である。
【0041】
突起部55aにディテントスプリング58が固定されることにより、
図1に示すように、隔壁部530と、これに対向するディテントスプリング58とで挟まれ、突起部55a、55b及びリブ56a、56bに囲繞された領域が形成される。この領域が、ギアによって上方にかき上げられた潤滑油が流下する際に、潤滑油を一時的に貯留する貯留部100として機能する。
【0042】
また、隔壁部530のモータ室510側には、第2冷媒通路62(
図3中に点線で示す)が備えられる。すなわち、隔壁部530の減速機室520側の貯留部100が、モータ室510側に備えられる第2冷媒通路62に隔壁部530を挟んで隣接して配置される。特に、隔壁部530の薄板部位、すなわち、突起部やリブ、軸受部等の突出した構造がない部位(
図3中にハッチングで示す)は、第2冷媒通路62に、より隣接する。
【0043】
従って、減速機20の潤滑油を一時的に貯留する貯留部100が、モータ10の冷媒が流通する第2冷媒通路62に隣接して配置されることで、潤滑油が冷媒により冷却される。なお、貯留部100に貯留された潤滑油は、その後、ディテントスプリング58と隔壁部530との間に存在する隙間等を通過して、減速機室520の下方へと流下する。
【0044】
また、本実施形態では、減速機20の潤滑油が貯留部100へと導かれるように、各ギアの周囲に、仕切板を備えた。
【0045】
図4及び
図5は、減速機20の仕切板の説明図である。
図4は減速機20の各ギアの構成の説明図であり、
図5は、モータ10側から減速機20の各ギアを見た図である。
【0046】
ファイナルギア231の斜め上方の径方向外側には、第1仕切板301が備えられる。第1仕切板301は、ファイナルギア231の外側で平坦な面を有し、潤滑油の飛散を防いでギアの回転方向へと導く仕切部301aと固定部301bとから構成される。
【0047】
図5を参照して、第2ギア221aの下方向の径方向外側には、第2仕切板302が備えられる。第2仕切板302は、第2ギア221aの周囲に沿って円周形状の面を有し、潤滑油の飛散を防いでギアの回転方向へと導く仕切部302aと固定部302bとから構成される。
【0048】
図4を参照して、第2ギアの上方の径方向外側には、第3仕切板303が備えられる。第3仕切板303は、隔離壁側に傾斜した板状の面を有し潤滑油を隔壁部530へと導く仕切部303aと固定部303bとから構成される。
【0049】
このように、仕切板を備えることで、次のように潤滑油が貯留部100へと導かれる。まず、
図4に示すように、ファイナルギア231が反時計回り方向に回転するとき(図中白抜き矢印で示す)、減速機室520の底部に貯留されている潤滑油は、ファイナルギア231の回転に伴って反時計回り方向にかき上げられる。
【0050】
ファイナルギア231の斜め上方側には、第1仕切板301が備えられている。第1仕切板301は、潤滑油を受け止めてファイナルギア231の歯に戻す。これにより、潤滑油が遠心力で飛散することなく、ファイナルギア231の歯から第2ギア221の歯へと伝達される。
【0051】
図5に示すように、第2ギア221aの下方側には円周形状の第2仕切板302が備えられている。第2仕切板302は、第2ギア221aの潤滑油が流下しないように受け止めて、第2ギア221の歯に戻す。これにより、第2ギア221が回転するとき(図中白抜き矢印で示す)、重力で落下しようとする潤滑油が、第2ギア221aの上方側へとかき上げられる。
【0052】
第2ギアの上方側には、第3仕切板303が備えられている。第3仕切板303は、隔壁部530へと向かって下り向きに傾斜するように構成されている。これにより、第2ギア221の回転によって上方に送られた潤滑油は、遠心力により第3仕切板303の仕切部303aの表面に付着した後、仕切部303aの傾斜に従って、隔壁部530の表面へと伝達される。
【0053】
潤滑油は、隔壁部530の表面を伝って下方へと流下する。つまり、潤滑油は、隔壁部530の表面の第1軸受部521及び第2軸受部522の周囲を流下しながらより下方へと流れて行く。
図2に示したように、貯留部100の隔壁部530側には、縦方向(垂直方向)にリブ56a、56bが形成されているので、上方から流下する潤滑油が、貯留部100へと導かれ、貯留部100に貯留される。
【0054】
貯留部100は、隔壁部530を挟んで第2冷媒通路62と隣接する。従って、潤滑油が貯留部100に留まっている間は、第2冷媒通路62の冷媒によって冷却される。さらに、貯留部100の隔壁部530側には、横方向(水平方向)のリブ101a、101bが形成されているので、隔壁部530側の表面積が増加する。従って、冷媒による潤滑油の冷却が促進される。
【0055】
貯留部100に貯留された潤滑油は、その後、ディテントスプリング58と隔壁部530との間に存在する隙間等を通過して、減速機室520の下方へと流下する。
【0056】
以上説明したように、本発明の第1実施形態の駆動装置1は、その底部(オイルパン540)に減速機20の潤滑油が貯留されるハウジング50と、ハウジング50に収装される回転電機(モータ10)及び変速機(減速機20)とを備える。ハウジング50は、モータ10を冷却する冷媒が流通する冷媒通路(第2冷媒通路62)と、第2冷媒通路62に隣接して、減速機20のギア(第1ギア211、第2ギア221、ファイナルギア231)によりかき上げられた潤滑油を一時的に貯留する貯留部100と、が備えられる。
【0057】
このように、モータ10を冷却する第2冷媒通路62に隣接して貯留部100を備えたので、減速機20内に熱交換機等の複雑な構成を新たに追加することなく、潤滑油を冷却することができる。従って、減速機20の部品点数を増加することなく、潤滑油を冷却できるので、減速機20の構成が大型化し、重量が増加することを防ぐことができる。
【0058】
さらに、走行時に潤滑油を貯留部100へと一時的に貯留することで、減速機室520の底部(オイルパン540)の油面を低下させることができる。これにより、潤滑油のかき上げ抵抗を低下させることができ、潤滑油の発熱も低減されるので、潤滑油の冷却が促進される。
【0059】
また、本実施形態は、ハウジング50は、内部に円筒形状の空間を有するアウターハウジング51と、アウターハウジング51に内装されるインナーハウジング52と、から構成される。アウターハウジング51は、モータ10が収装されるモータ室510と減速機20が収装される減速機室520とを区画する隔壁部530を備え、モータ室510にはインナーハウジング52が内装される。アウターハウジング51の隔壁部530とインナーハウジング52との間に第2冷媒通路62が形成され、第2冷媒通路62と貯留部100とが隔壁部530を挟んで対峙する。
【0060】
このような構成により、隔壁部530を挟んで第2冷媒通路62と貯留部とが対峙するので、潤滑油が適切に冷却される。
【0061】
また、本実施形態は、インナーハウジング52は、アウターハウジング51の隔壁部530付近でアウターハウジング51に内接する固定部54により固定され、アウターハウジング51のモータ室510の内周とインナーハウジング52との間に第1冷媒通路61が形成され、アウターハウジング51のモータ室510側の隔壁部530とインナーハウジング52との間に第2冷媒通路62が形成される。第1冷媒通路61と第2冷媒通路62とは、固定部54に形成される連通孔54aにより連通する。
【0062】
このような構成により、第1冷媒通路61と第2冷媒通路62とが連通孔54aにより連通することで、冷媒をモータ10側と隔壁部530側とで循環させることができる。
【0063】
また、本実施形態は、減速機20の回転を静止させるためのパーク機構が備えられ、隔壁部530と隔壁部530に固定されるパーク機構の一部の部品(ディテントスプリング58)とにより区画された領域により貯留部100が形成される。これにより、部品を新たに追加することなく、貯留部100が形成できる。
【0064】
また、本実施形態は、ハウジング50の減速機室520には、ギアの径方向外側に、ギアがかき上げる潤滑油を導く仕切板(第1仕切板301、第2仕切板302、第3仕切板303)が備えられる。
【0065】
これにより、ギアによってかき上げられる潤滑油を貯留部100へと導くことができる
【0066】
また、本実施形態は、隔壁部530には、隔壁部530から起立して形成されたリブ56a、56bが備えられるので、下方に流下する前記減速機の潤滑油が、リブ56a、56bにより貯留部100へと導くことができる。
【0067】
次に、本発明の第2実施形態に係る駆動装置1について説明する。
【0068】
図6及び7は、本発明の第2実施形態の駆動装置1の説明図である。
【0069】
図7は、駆動装置1の縦断面図である。
図7は、減速機20をアウターハウジング51の隔壁部530に向かって観察した説明図である。
【0070】
第2実施形態は、減速機の構成が第1実施形態とは異なる。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明は省略される。
【0071】
第2実施形態において、モータ10のロータ軸131は、中空軸として形成されている。ロータ軸131の内周には、車軸132が貫通している。
【0072】
減速機20は、遊星歯車機構200により構成される。遊星歯車機構200は、ロータ軸131の回転を減速して、車軸132に伝達する。なお、遊星歯車機構200には図示しない差動装置が備えられている。
【0073】
図7に示すように、ハウジング50の隔壁部530には、複数の半円周状のリブ(リブ59a、59b、59c)が同心して立設形成されている。
【0074】
また、隔壁部530には、ロータ軸131の左上側方向に、断面がL字形状のプレート109が備えられている、プレート109と隔壁部530とにより区画される領域により、貯留部100が形成される。
【0075】
このように構成された第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
すなわち、
図7に示すように、遊星歯車機構200が反時計回り方向に回転することで(図中白抜き矢印で示す)、減速機室520の底部であるオイルパン540の潤滑油を上方にかき上げる。このとき、潤滑油は、半円周状に立設形成されているリブ59a、59b、59cの間の隙間に入り込むと共に、遊星歯車機構200の回転に伴って、隔壁部530のこの隙間を反時計回り方向へと伝達される(図中矢印で示す)。
【0077】
上方へと送られた潤滑油は、隔壁部530の表面を伝わり、貯留部100へと流下する。リブ59a、59b、59cの裏面、及び、貯留部100の裏面には、
図1に示すように、第2冷媒通路62が形成されている。従って、隔壁部530の表面を伝達する潤滑油、及び、貯留部100に一時的に貯留された潤滑油が、冷媒によって冷却される。
【0078】
貯留部100に貯留された潤滑油は、その後、プレートと109と隔壁部530との間に存在する隙間等を通過して、減速機室520の下方へと流下する。
【0079】
このように、第2実施形態のように、減速機構を1軸の遊星歯車機構200で構成した場合であっても、第1実施形態と同様に、減速機20内に熱交換機等の複雑な構成を新たに追加することなく、潤滑油を適切に冷却することができる。従って、減速機20の部品点数を増加することなく、潤滑油を冷却できるので、減速機20の構成が大型化し、重量が増加することを防ぐことができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態、上記実施形態及び変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0081】
前述した本実施形態では、バッテリの電力によりモータ10を駆動することにより走行する電気自動車を例に説明したが、これに限られない。エンジンを備え、エンジンが発電した電力により、モータ10を駆動するシリーズハイブリッド式の自動車であってもよい。