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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両の充電口の構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231108BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20231108BHJP
   B60K 15/04 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
F16J15/10 N
B60K15/04 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022532406
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021019039
(87)【国際公開番号】W WO2021261129
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020106760
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】沖野 真紘
(72)【発明者】
【氏名】須賀 健夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄高
(72)【発明者】
【氏名】林 真人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】李 磊
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026194(JP,A)
【文献】特開2011-140288(JP,A)
【文献】特開2012-081849(JP,A)
【文献】特開2017-052336(JP,A)
【文献】特開2007-131043(JP,A)
【文献】特開2019-123440(JP,A)
【文献】特開2020-138618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04,15/00- 15/10
B60L 1/00- 3/12,
7/00-13/00,
15/00-58/40
H01R 13/52-13/527,13/73
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の充電口の構造であって、
車両のアウターパネルに形成されてリッドで開閉可能な開口部と、
前記アウターパネルと対向するインナーパネルに形成された開口に車内側から挿通された状態で固定され、前記アウターパネルの前記開口部に臨んで配置されるインレットと、
前記アウターパネルの前記開口部に車外側から嵌入され、前記アウターパネルから前記インナーパネルに向かって前記インレットの接続端子を囲むように筒状に立設されて前記充電口の内周壁を構成する充電口ブラケットと、
前記インレットとともに前記インナーパネルの前記開口に嵌入されて、前記インレットの接続端子の周囲を囲むようにアウターパネル側に向かって立設される筒状のリブと、
前記充電口ブラケットの前記インナーパネル側の端部に設けられ、前記リブの外周面に弾接されて前記リブと前記充電口ブラケットとの隙間をシールする第一シール部材と、
前記インレットと別体で構成され、前記リブを有し、前記インナーパネルに取り付けられるインレットブラケットと、
を備え
前記インレットブラケットは、前記インナーパネルと前記インレットとの間で挟持されている
ことを特徴とする車両の充電口の構造。
【請求項2】
前記インレットブラケットは、前記インナーパネルの前記開口の周囲に設けられる環状部と、前記環状部の周方向に沿って立設された前記リブと、を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の充電口の構造。
【請求項3】
前記環状部は、前記インナーパネルと前記インレットとの間で挟持されていることを特徴とする請求項2に記載の車両の充電口の構造。
【請求項4】
前記インレットブラケットは、前記インナーパネルに係止される係止部を有し、
前記係止部は、前記リブよりも前記環状部の径方向外側に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両の充電口の構造。
【請求項5】
前記インレットブラケットは、前記接続端子の下方において、該インレットブラケットと前記インレットとの間に設けられ、前記リブの先端部から前記インレットに向かって斜め上方向に延びる傾斜面部を有していることを特徴とする請求項~4の何れか1項に記載の車両の充電口の構造。
【請求項6】
前記インレットブラケットと前記インレットとの間に挟装されるインレットブラケットシールをさらに備えたことを特徴とする請求項~5の何れか1項に記載の車両の充電口の構造。
【請求項7】
前記第一シール部材は、前記充電口ブラケットの内周側に向かって延びるリップを有し、
前記リップは、前記アウターパネル側に向かって折り返された状態で前記リブの外周面と弾接されることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の車両の充電口の構造。
【請求項8】
前記第一シール部材の前記リップは、前記リブと弾接された状態で、前記リップの先端が前記リブの先端側を向いて当接する弓形形状を有していることを特徴とする請求項7に記載の車両の充電口の構造。
【請求項9】
前記アウターパネルの前記開口部は、入口から車室側へと延設され、前記充電口ブラケットが嵌合して位置決めされる受け部を有し、
前記受け部の前記リッド近傍には、前記受け部と前記充電口ブラケットとの隙間をシールする環状の第二シール部材が配置され、
前記受け部の車室側の底部には、前記受け部と前記充電口ブラケットとの隙間をシールする環状の第三シール部材が配置されていることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の車両の充電口の構造。
【請求項10】
前記接続端子は、その軸方向が斜め上方向に傾斜していることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の車両の充電口の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の充電口の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部充電用の充電口を備えた車両において、充電口への被水を防止するための技術が存在する。例えば、充電口の周囲に空気を吹き出すノズルを配置し、エアーカーテン状の空気層を形成することで雨滴が充電口にかからないようにする技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2018-052329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、何らかの理由で充電口の近傍に水が進入してしまったような場合に、充電口が取り付けられた壁面と充電口との隙間から水分が進入するおそれがある。このような浸水は、金属部品の腐食や錆よごれの原因となるほか、樹脂やゴム部品の劣化を促進するおそれがある。また、充電口の形状や大きさは充電規格に応じて変化しうるため、上記のような隙間を防水ゴムやグロメットなどのシール部材で封止しようとすると、充電口の形状ごとに異なるシール部材を用意しなければならず、十分な止水性が得られない場合がある。特に、仕向地ごとに充電口の形状が異なる車両においては、止水性の低下や性能のばらつきが生じやすいという課題がある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で止水性を改善できるようにした車両の充電口の構造を提供することである。この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する車両の充電口の構造は、車両のアウターパネルに形成されてリッドで開閉可能な開口部と、アウターパネルと対向するインナーパネルに形成された開口に車内側から挿通された状態で固定され、アウターパネルの開口部に臨んで配置されるインレットと、アウターパネルの開口部に車外側から嵌入され、アウターパネルからインナーパネルに向かってインレットの接続端子を囲むように筒状に立設されて充電口の内周壁を構成する充電口ブラケットと、インレットとともにインナーパネルの開口に嵌入されて、インレットの接続端子の周囲を囲むようにアウターパネル側に向かって立設される筒状のリブと、充電口ブラケットのインナーパネル側の端部に設けられ、リブの外周面に弾接されてリブと充電口ブラケットとの隙間をシールする第一シール部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の車両の充電口の構造によれば、簡素な構成で止水性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例としての充電口の構造が適用された車両の斜視図である。
図2図1に示す車両のインレットまわりの構造を説明するための分解斜視図である。
図3図2に示すインレットまわりの断面図である。
図4図3に示す第一シール部材及びインレットブラケットの斜視図である。
図5A図4に示す第一シール部材の断面図(A-A断面図)である。
図5B図4に示すインレットブラケットの断面図(B-B断面図)である。
図6A】インレットブラケットをインナーパネルに差し込む前の状態を示す断面図である。
図6B】インレットブラケットをインナーパネルに差し込んだ後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.構成]
図1は、実施例としての充電口1の構造が適用された車両10の斜視図である。この車両10のアウターパネル2(図2)には、インレット9を内蔵しリッド11で開閉可能な開口部3が設けられる。インレット9は、例えば接続端子12(コネクタ)が設けられた外部充電用の部品である。インレット9は、アウターパネル2と対向するインナーパネル6に形成された開口16に車内側から挿通された状態で固定され、アウターパネル2の開口部3に臨んで配置される。図2に示すように、インレット9の表側には例えば複数の接続端子12が円筒状に突設され、インレット9の裏側には接続端子12と車両10の充電回路とを接続する給電ライン15(ハーネス)が接続される。また、図3に示すように、給電ライン15とインレット9との接続箇所の近傍には、接続端子12から入り込んでしまった水分を車外へ排出するための排水ホース18が接続される。なお、図3中に示す「上」、「下」、「内」、「外」は、車両10を基準とした方向(上方向,下方向,車幅方向外側方向,車幅方向内側方向)を表す。
【0010】
図1に示す充電口1は、車両10の後方側面部分に配置されている。図2は、充電口1に内蔵されるインレット9の周辺構造を説明するための分解斜視図である。この充電口1には、開口部3が設けられたアウターパネル2,充電口ブラケット4,第一シール部材5,インナーパネル6,インレットブラケット7,インレットブラケットシール8,インレット9が設けられる。
【0011】
充電口ブラケット4は、開口部3の縁から車幅方向内側に延設された筒状の部材であり、アウターパネル2に対して固定される。充電口ブラケット4の車幅方向外側の端部における断面形状は、開口部3に対応する形状(例えば角を丸めた四角形状)に形成される。一方、車幅方向内側の端部における断面形状は、インレット9の接続端子12を囲む形状(例えばピーナッツ形状)に形成される。充電口ブラケット4は、アウターパネル2の開口部3に車外側から嵌入され、アウターパネル2からインナーパネル6に向かってインレット9の接続端子12を囲むように筒状に立設されて充電口1の内周壁を構成する。この内周壁のうち、接続端子12よりも上方に位置する部位の勾配は、おおむね車内側に向かう下り勾配に形成される。一方、接続端子12よりも下方に位置する部位の勾配は、雨滴や水滴が溜まりにくくなるように、車外側に向かう下り勾配に形成される。
【0012】
図3に示すように、充電口ブラケット4は、アウターパネル2からインナーパネル6に向かってインレット9の接続端子12を囲むように筒状に立設される。また、充電口ブラケット4には、開口部3を開閉可能に閉塞するリッド11が取り付けられる。リッド11を開放することで、車両10の外部からインレット9の接続端子12が見える状態となり、充電ガンや充電ケーブルの接続が可能となる。なお、接続端子12の軸方向(向き)は、充電ガンや充電ケーブルの接続しやすさが考慮されて、斜め上方向に傾斜するように設定される。
【0013】
図3に示すように、充電口ブラケット4は、アウターパネル2にボルト固定、あるいは、充電口ブラケット4に設けられた嵌合爪によってアウターパネル2に嵌合固定される。アウターパネル2の開口部3には、図3に示すように、開口部3の入口(車両外部側)から車室側へと延設された受け部19が設けられる。この受け部19には、充電口ブラケット4が嵌合して位置決めされる。また、充電口ブラケット4の車幅方向外側の端部には、第二シール部材13及び第三シール部材14が取り付けられる。
【0014】
第二シール部材13は、受け部19のリッド11近傍に配置される環状の封止部材であり、受け部19と充電口ブラケット4との隙間をシールしている。また、第三シール部材14は、受け部19の車室側の底部に配置される環状の封止部材であり、第二シール部材13よりも車室側で受け部19と充電口ブラケット4との隙間をシールしている。これらのシール部材13,14により、アウターパネル2と充電口ブラケット4との隙間が封止される。なお、充電口ブラケット4は、アウターパネル2と一体に形成されてもよいし、アウターパネル2に対して溶接固定されてもよい。アウターパネル2と充電口ブラケット4とを一体に形成した場合、第二シール部材13及び第三シール部材14は省略可能である。
【0015】
第一シール部材5は、充電口ブラケット4の車幅方向内側(インナーパネル6側)の端部に設けられる封止部材である。第一シール部材5は、例えば適度な弾性を持つ軟質樹脂で形成され、硬質樹脂で形成される充電口ブラケット4と一体になるように二色成形される。また、第一シール部材5は、後述するリブ23の外周面に弾接されてリブ23と充電口ブラケット4との隙間をシールする機能を持つ。図4に示すように、第一シール部材5には固定部21とリップ22とが設けられる。固定部21は充電口ブラケット4に固定される部位であり、充電口ブラケット4の車幅方向内側の端部に対応する断面形状(例えばピーナッツ形状)を有する筒状に形成される。なお、図4中に示す「前後内外上下」は、車両10を基準とした方向(前方,後方,車幅方向外側方向,車幅方向内側方向,上方向,下方向)を表す。
【0016】
リップ22は、固定部21の車幅方向内側の端部から筒状の内側に向かって延設される。第一シール部材5の形状はL字断面の環状であり、アウターパネル2側に向かって折り返された状態でリブ23の外周面と弾接される。このリップ22は、リブ23と弾接された状態で、リップ22の先端がリブ23の先端側を向いて当接する弓形形状を有している。図5Aに示すように、充電口ブラケット4の車幅方向内側の端部開口は、第一シール部材5のリップ22によって狭められた状態となる。なお、第一シール部材5を充電口ブラケット4と別体に設ける場合には、充電口ブラケット4の車幅方向内側の端部に第一シール部材5を装着,接着して固定してもよい。
【0017】
インナーパネル6は、車両10のインレット9がボルト固定される板状の部材である。インナーパネル6には、充電口ブラケット4の車幅方向内側の端部に対応する形状(例えばピーナッツ形状)の開口16と、インレットブラケット7を係止するための係止孔17とが設けられる。インレット9の接続端子12は、インナーパネル6の車幅方向内側(インナーパネル6の裏側)から開口16に挿通されて、インナーパネル6よりも車幅方向外側へと突設される。また、係止孔17は、開口16の周囲の複数箇所に形成される。なお、車両10のインナーパネルの一部をインナーパネル6として構成してもよいし、車両10のインナーパネルとは別体のインナーパネル6をインナーパネルに固定してもよい。
【0018】
インレットブラケット7は、インレット9とともにインナーパネル6の開口16に固定される環状の部材であり、インレット9とは別体で構成される。図4図5Bに示すように、インレットブラケット7には、リブ23と環状部24と係止部25と傾斜面部26とが設けられる。リブ23は、充電口ブラケット4の車幅方向内側の端部に対応する断面形状(例えばピーナッツ形状)を有する筒状であって、第一シール部材5の固定部21よりもやや小さい筒状に形成される。リブ23は、インレット9とともにインナーパネル6の開口16に嵌入されて、インレット9の接続端子12の周囲を囲むようにアウターパネル2側に向かって立設される。また、このリブ23は、インレット9をインナーパネル6に固定する際に、インナーパネル6から見て充電口ブラケット4とは反対側(車幅方向内側)から差し込まれて第一シール部材5のリップ22と弾性的に接触するように設けられる。
【0019】
また、図5A及び図5Bに示すように、インレット9の接続端子12よりも上方側のリブ23と下方側のリブ23との各々が、第一シール部材5のリップ22と接触するような位置関係となっている。言い換えれば、環状のリップ22の全体が、筒状のリブ23の先端と接触して弾性変形しながら車幅方向外側へと押し込まれて、充電口ブラケット4とインレットブラケット7との間にシール構造を形成するようになっている。
【0020】
環状部24は、リブ23の車幅方向内側の端部(基端部)から筒状の外側に向かって延設された平面状の部位であり、インナーパネル6の開口16の周囲に設けられる。言い換えれば、リブ23は環状部24から環状部24の周方向に沿って立設される。環状部24は、充電口ブラケット4のインナーパネル6側の端部に対応する形状に形成される。また、環状部24は、インナーパネル6の開口16の縁(車幅方向内側の面)に接触するように設けられる。図3に示すように、環状部24とインレット9との間にはインレットブラケットシール8が挟装されて封止される。環状部24は、インナーパネル6とインレット9との間で挟持される。インレットブラケット7及びインレット9は、例えばインレットブラケットシール8によって接着状態で固定される。
【0021】
係止部25は、インナーパネル6の係止孔17に係止される部位であり、係止孔17に対して車幅方向内側から差し込まれてインナーパネル6に固定される。係止部25は、リブ23よりも環状部24の径方向外側に配置される。図4に示すように、インレットブラケット7には複数の係止部25が設けられる。係止部25には、係止孔17に挿通された状態で係止孔17の端辺よりも外側に突出する係止爪が形成される。また、インレット9の接続端子12を挟んで対向する一対の係止部25について、係止爪の突出方向は互いに逆方向に設定される。これにより、インレットブラケット7のインナーパネル6に対する係止状態が安定する。
【0022】
傾斜面部26は、図3に示すように、インレット9の接続端子12の下方において、リブ23と接続端子12との隙間に傾斜面を形成するようにリブ23の先端部からインレット9に向かって斜め上方向に延設された面状の部位である。この傾斜面部26は、インレットブラケット7とインレット9との間に設けられ、インレット9の正面視において接続端子12の下方に位置する範囲に形成される。例えば図4に示すように、環状に配置されるリブ23のうち、下半分に位置する(ほぼ半分の)リブ23における車幅方向外側の端部から傾斜面部26を延ばしてもよい。なお、傾斜面部26の傾斜角度は、図3に示すように、車幅方向外側に向かって下り勾配になる角度に設定されることが好ましい。
【0023】
[2.作用]
図6A中に示す「上」、「下」、「内」、「外」は、車両10を基準とした方向(上方向,下方向,車幅方向外側方向,車幅方向内側方向)を表す。インレット9をインナーパネル6に固定する際には、インレットブラケット7の係止部25がインナーパネル6の係止孔17と係合するように、インレット9及びインレットブラケット7が車幅方向内側から外側に向かって押し込まれる。このとき、インレットブラケット7のリブ23は、開口16の内側に差し込まれ、第一シール部材5のリップ22に接触する。
【0024】
また、図6Bに示すように、リブ23が車幅方向外側へと移動するにつれて第一シール部材5のリップ22が弾性変形し、リブ23とリップ22との接触状態が維持されたまま、固定部21に対してリップ22が屈曲変形した状態となる。これにより、充電口ブラケット4とインレットブラケット7との隙間が封止される。その後、インレットブラケット7の係止部25がインナーパネル6の係止孔17と係合し、インレットブラケット7の取り付けが完了する。
【0025】
本実施例に係る充電口1の構造においては、何らかの理由で充電口1の内部に水が進入した場合であっても、その水が適切に排出される。例えば、充電中の降雨により充電口ブラケット4の内表面に水滴が付着したとしても、第一シール部材5が充電口ブラケット4とインレットブラケット7との間をシールし、水分の進入が阻止される。また、第二シール部材13,第三シール部材14がアウターパネル2の受け部19と充電口ブラケット4との隙間をシールし、水分の進入が阻止される。同様に、インレットブラケットシール8がインレットブラケット7とインレット9との隙間をシールし、水分の進入が阻止される。
【0026】
充電口ブラケット4の内表面のうち接続端子12よりも上方の部位に付着した水滴は、車内側へと移動し、接続端子12の周面に付着する。この水滴は、円筒状に突設された接続端子12の外表面に沿って下方へ流れ、傾斜面部26の上面を伝って充電口ブラケット4の内表面へと誘導される。その後、充電口ブラケット4の内表面の水滴は、アウターパネル2とリッド11との隙間から車外へと排出される。また、接続端子12の内部に入り込んでしまった水分は、排水ホース18を通って車外へと排出される。
【0027】
[3.効果]
(1)上記の充電口1の構造には、車両10のアウターパネル2に形成されてリッド11で開閉可能な開口部3と、インナーパネル6に形成された開口16に車内側から挿通された状態で固定され、アウターパネル2の開口部3に臨んで配置されるインレット9とが設けられる。また、アウターパネル2の開口部3に車外側から嵌入され、アウターパネル2からインナーパネル6に向かってインレット9の接続端子12を囲むように筒状に立設されて充電口1の内周壁を構成する充電口ブラケット4が設けられる。また、インレット9とともにインナーパネル6の開口16に嵌入されて、インレット9の接続端子12の周囲を囲むようにアウターパネル2側に向かって立設される筒状のリブ23が設けられる。さらに、充電口ブラケット4のインナーパネル6側の端部に設けられ、リブ23の外周面に弾接されてリブ23と充電口ブラケット4との隙間をシールする第一シール部材5が設けられる。
【0028】
このような構成により、インレット9及びリブ23を有するインレットブラケット7を車幅方向外側へ移動させるだけで、インレット9まわりの隙間を簡単にシールすることができ、止水構造を形成することができる。また、第一シール部材5がリブ23に対して弾性的に押し付けられた状態になるため、例えば充電口ブラケット4とインレットブラケット7との隙間に作用する圧力(水圧)が増加したとしても、高い封止性能が維持されやすくなる。したがって、簡素な構成でインレット9まわりの止水性を改善することができる。
【0029】
(2)上記の充電口1の構造には、インレット9とは別体のインレットブラケット7が設けられる。このインレットブラケット7には、環状部24とリブ23とが設けられる。このような構成により、車両10の車種や仕向地に応じてインレット9の形状が相違するような場合であっても、インレットブラケット7の形状を変更することで、充電口ブラケット4や第一シール部材5,インナーパネル6などの構造を共通化することができる。したがって、簡素な構成でインレット9まわりの止水性を改善しつつ、部品点数や製造コストを削減することができる。
【0030】
(3)上記のインレットブラケット7の環状部24は、例えば図3に示すように、インナーパネル6とインレット9との間で挟持されている。このような構成により、インナーパネル6に対するインレットブラケット7のずれ落ちを抑制することができ、インレットブラケット7の取付位置精度を向上させることができる。また、インレットブラケット7の位置ズレが生じにくくなることから、止水性能の低下を防止することができる。
【0031】
(4)上記のインレットブラケット7には、インナーパネル6に係止される係止部25が設けられる。係止部25は、リブ23よりも環状部24の径方向外側に配置される。このような構成により、簡単な操作でインレットブラケット7をインナーパネル6に取り付けることができ、止水構造を容易に実現することができる。また、係止部25への被水や係止部25からの入水を防止することができ、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。なお、インレット9の接続端子12を挟んで対向する一対の係止部25について、係止爪の突出方向を互いに逆方向に設定することで、インレットブラケット7のインナーパネル6に対する係止状態を安定させることができる。したがって、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。
【0032】
(5)上記のインレットブラケット7には、傾斜面部26が設けられる。この傾斜面部26は、リブ23と接続端子12との隙間に傾斜面を形成するように、リブ23から延設される。このような構成により、インレットブラケット7とインレット9との隙間からの浸水を防止することができ、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。また、インレットブラケットシール8への被水が防止されやすくなることから、インレットブラケット7及びインレット9の取り付け状態を安定させることができる。
【0033】
また、上記の傾斜面部26は、インレット9の正面視において接続端子12の下方に位置する範囲に形成される。このような構成により、例えば接続端子12の周面に水滴が付着したような場合であっても、その水滴が下方へ落下してきたときに、傾斜面部26に沿って車幅方向外側へと確実に流出させることができる。したがって、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。
【0034】
(6)上記の充電口1の構造には、インレットブラケット7とインレット9との間に挟装されるインレットブラケットシール8が設けられる。これにより、インレットブラケット7とインレット9との隙間の止水性を向上させることができる。したがって、簡素な構成でインレット9まわりの止水性を改善することができる。また、インナーパネル6に対するインレットブラケット7の相対移動を生じにくくすることができ、インレットブラケット7の取付位置精度を向上させることができる。さらに、インレットブラケット7の位置ズレが生じにくくなることから、止水性能の低下を防止することができる。
【0035】
(7)上記の第一シール部材5には、充電口ブラケット4の内周側に向かって延びるリップ22が設けられる。リップ22は、アウターパネル2側に向かって折り返された状態でリブ23の外周面と弾接される。このように、リップ22をリブ23の外周面に対して弾性的に接触させることで、充電口ブラケット4とインレットブラケット7との隙間を確実にシールすることができ、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。
【0036】
(8)上記の第一シール部材5のリップ22は、例えば図6Bに示すように、リブ23と弾接された状態で、リップ22の先端がリブ23の先端側を向いて当接する弓形形状を有している。このような構成により、リップ22のたわみを利用してリブ23をしなやかに保持することができ、充電口ブラケット4に対するインレットブラケット7の微小な相対移動を許容しつつ、適切に位置決めをすることができる。したがって、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。
【0037】
(9)上記のアウターパネル2の開口部3には、充電口ブラケット4が嵌合して位置決めされる受け部19が設けられる。また、受け部19のリッド11近傍には環状の第二シール部材13が配置され、受け部19の車室側の底部には環状の第三シール部材14が配置される。このような構成により、アウターパネル2の受け部19と充電口ブラケット4との隙間からの入水を防止することができ、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。また、第二シール部材13及び第三シール部材14を介して充電口ブラケット4が受け部19に取り付けられるため、充電口ブラケット4の位置決め精度を向上させることができる。
【0038】
(10)上記のインレット9の接続端子12は、図3に示すように、その軸方向が斜め上方向に傾斜している。このような構成により、例えば軸方向を鉛直上向きに配した場合と比較して、端子の開口に水が入りにくくすることができ、インレット9まわりの止水性をさらに改善することができる。また、インレット9に充電ガンや充電ケーブルを接続する操作が容易となり、利便性を向上させることができる。また、接続端子12の表面への被水によって端子の開口から水が入り込んでしまったとしても、その水を排水ホース18から車外へと排出することができる。
【0039】
なお、上記の充電口1の構造では、第一シール部材5が充電口ブラケット4と一体に二色成型される。例えば、一型目において充電口ブラケット4が硬質樹脂で成型され、その後の二型目において第一シール部材5が軟質樹脂で成形される。このように、第一シール部材5を充電口ブラケット4に熱溶着させることで、第一シール部材5と充電口ブラケット4との隙間をなくすことができ、封止性をさらに向上させることができる。また、第一シール部材5と充電口ブラケット4とを別部材にした場合と比較して、部品の組付け作業性を向上させることができる。
【0040】
[4.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0041】
例えば、上述の実施例では充電口1の止水構造について詳述したが、同様の構造を他のインレット9に適用することも可能である。例えば、内燃機関の燃料を補給するための給油口や排気浄化用の尿素水を補給するための給水口などに同様の構造を適用することで、上述の実施例と同様の作用,効果を得ることができる。
【0042】
また、上述の実施例ではインレットブラケット7がインレット9と別体に設けられた構造を例示したが、インレットブラケット7とインレット9とを一体に形成してもよい。少なくとも、インレット9にリブ23を設けておけば、上述の実施例と同様の作用,効果を得ることができる。
【0043】
本出願は、2020年6月22日出願の日本出願(特願2020-106760)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の車両の充電口の構造によれば、簡素な構成で止水性を改善できる。
【符号の説明】
【0045】
1 充電口
2 アウターパネル
3 開口部
4 充電口ブラケット
5 第一シール部材
6 インナーパネル
7 インレットブラケット
8 インレットブラケットシール
9 インレット
10 車両
11 リッド
12 接続端子
13 第二シール部材
14 第三シール部材
15 給電ライン
16 開口
17 係止孔
18 排水ホース
19 受け部
21 固定部
22 リップ
23 リブ
24 環状部
25 係止部
26 傾斜面部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B