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特許7380909シフト装置および車両用電子制御ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】シフト装置および車両用電子制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/16 20060101AFI20231108BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02P25/16
F16H61/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022557553
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2021038567
(87)【国際公開番号】W WO2022085673
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020178032
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】松原 勝
(72)【発明者】
【氏名】三宅 基史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 一憲
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-271011(JP,A)
【文献】特開2019-152316(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022148(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/16
F16H 61/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機構を駆動させるモータの動作を制御するスイッチング部と、
前記スイッチング部を駆動させるためのモータドライバ部と、
前記モータドライバ部を制御する制御部と、
前記スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路と、
前記制御部に電力を供給するシステム系電源経路と、
前記システム系電源経路に設けられ、前記システム系電源経路から供給される電力を所定の電圧に変換して出力する昇降圧部と、を備え、
前記制御部には、前記昇降圧部を介して電力が供給されるように構成されており、
前記モータドライバ部には、前記モータ系電源経路からの電力と、前記システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている、シフト装置。
【請求項2】
シフトバイワイヤ方式の車両用シフト装置であって、
前記モータドライバ部には、前記モータ系電源経路からの電力と、前記昇降圧部から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている、請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記モータ系電源経路の第1電圧が、前記昇降圧部が出力する第2電圧よりも高い場合には、前記モータ系電源経路からの電力が、前記モータドライバ部に供給されるように構成されている、請求項2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記モータ系電源経路の前記第1電圧が、前記昇降圧部が出力する前記第2電圧よりも低い場合には、前記昇降圧部により前記第2電圧に変換された電力が、前記モータドライバ部に供給されるように構成されている、請求項3に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記モータ系電源経路と、前記昇降圧部の出力側とが、互いにダイオードを介して接続されており、
前記ダイオードは、前記モータ系電源経路に設けられる第1ダイオードと、前記昇降圧部の出力側に設けられる第2ダイオードとを含み、
前記モータドライバ部には、前記第1ダイオードを介した前記モータ系電源経路からの電力と、前記昇降圧部から出力され、前記第2ダイオードを介した電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて前記ダイオードを介して、供給されるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のシフト装置。
【請求項6】
装置外部の電源からの電力を供給するため電流経路が、装置内部において、前記モータ系電源経路および前記システム系電源経路の各々に分岐するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のシフト装置。
【請求項7】
モータの動作を制御するスイッチング部と、
前記スイッチング部を駆動させるためのモータドライバ部と、
前記モータドライバ部を制御する制御部と、
前記スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路と、
前記制御部に電力を供給するシステム系電源経路と、
前記システム系電源経路に設けられ、前記システム系電源経路から供給される電力を所定の電圧に変換して出力する昇降圧部と、を備え、
前記制御部には、前記昇降圧部を介して電力が供給されるように構成されており、
前記モータドライバ部には、少なくとも前記モータ系電源経路からの電力と、前記システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている、車両用電子制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるシフト装置および車両用電子制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のブレーキを電気信号に基づいて制御するブレーキバイワイヤに用いられる電源制御システムが知られている。このような、電源制御システムは、たとえば、特開2006-273046号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2006-273046号公報には、第1電源と、第2電源と、第1電源または第2電源から供給される電力によって駆動するとともに、車両のブレーキを作動させるポンプおよびモータを制御する電気作動装置を備える電源制御システムが開示されている。
【0004】
また、上記特開2006-273046号公報には明記されていないが、車両のブレーキを電気信号に基づいて制御するブレーキバイワイヤ以外のバイワイヤシステム(制御対象を電気信号に基づいて制御するシステム)として、シフトバイワイヤが知られている。シフトバイワイヤでは、電気信号に基づいて、モータ駆動回路(スイッチング部)を制御して、モータを動作させることによって、変速機構を駆動させ、シフトポジション(シフトレンジ)を切り替える。このような、シフトバイワイヤでは、電源として、補機バッテリと、バックアップ用の電源(フェールセーフ電源)とを備え、補機バッテリに異常が発生した場合には、バックアップ電源から電力が供給されるように構成されている。
【0005】
ここで、シフトバイワイヤでは、シフトポジションを切り替えるための制御を行う制御部や各種センサなどに電力(電源)を供給するためのシステム系電源経路とは別の電源経路として、変速機構を駆動させるためのモータに電力(電源)を供給するためのモータ系電源経路が設けられている。また、シフトバイワイヤにおいて、従来では、モータの動作を制御するモータ駆動回路(スイッチング部)に含まれるスイッチング素子のソース側またはドレイン側には、モータ系電源経路からの電力が供給され、モータ駆動回路(スイッチング部)に含まれるスイッチング素子のゲート側(ゲート駆動回路)および制御部には、システム系電源経路からの電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-273046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、システム系電源経路およびモータ系電源経路に対してバックアップ電源からの電力を供給している際には、モータの回生電力によりモータ系電源経路の電圧が上昇する場合がある。そして、システム系電源経路の電圧に対して、モータ系電源経路の電圧が上昇した場合には、スイッチング部に供給される電力とゲート駆動回路に供給される電力との間の電位差に起因して、スイッチング部に含まれるスイッチング素子を駆動させるために必要なゲート駆動電圧に対するゲート駆動回路の出力電圧が不足する。すなわち、ゲート駆動電圧を確保できなくなる。その結果、システム系電源経路の電圧に対して、モータ系電源経路の電圧が上昇した場合には、モータの動作を制御するスイッチング部を駆動させることができなくなるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、システム系電源経路の電圧に対して、モータ系電源経路の電圧が上昇した場においても、モータの動作を制御するスイッチング部を駆動可能なシフト装置および電子制御ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるシフト装置は、変速機構を駆動させるモータの動作を制御するスイッチング部と、スイッチング部を駆動させるためのモータドライバ部と、モータドライバ部を制御する制御部と、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路と、制御部に電力を供給するシステム系電源経路と、システム系電源経路に設けられ、システム系電源経路から供給される電力を所定の電圧に変換して出力する昇降圧部と、を備え、制御部には、昇降圧部を介して電力が供給されるように構成されており、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている。
【0010】
この発明の第1の局面によるシフト装置は、上記のように、スイッチング部を駆動させるためのモータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給される。これにより、モータ系電源経路からの電力をモータドライバ部に供給することにより、モータ系電源経路からの電力がスイッチング部およびモータドライバ部の両方に供給される。したがって、制御部に電力を供給するシステム系電源経路の電圧に対して、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路の電圧が上昇した場合でも、スイッチング部に供給される電力の電圧と、モータドライバ部に供給される電力の電圧とがともに上昇する。これにより、スイッチング部に供給される電力とモータドライバ部に供給される電力との間に電位差が生じることを抑制することができる。その結果、制御部に電力を供給するシステム系電源経路の電圧に対して、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路の電圧が上昇した場合においても、モータの動作を制御するスイッチング部を駆動させることができる。
【0011】
ここで、モータドライバ部に、スイッチング部を駆動させるためのゲート駆動信号を出力するプリドライバICを用いる場合、プリドライバICのIC内部のレジスタには、シフト切替制御のための設定が書き込まれ、保持される。しかし、モータドライバ部への電力(電源)の供給が停止し、モータドライバ部の動作が停止した場合、レジスタの設定はリセットされてしまう。そのため、モータドライバ部への電力(電源)の供給が停止した場合、モータドライバ部内のレジスタの設定がリセットされることにより、制御部との通信に不具合が生じるなどの異常が発生する。これに対して、この発明の第1の局面によるシフト装置では、上記のように、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるので、いずれか一方の電源経路に異常が発生した場合においても、他方の電源経路からモータドライバ部に電力を供給することができる。その結果、いずれか一方の電源経路に異常が発生した場合においても、モータドライバ部を動作させ続けることができるので、モータドライバ部がリセットされることに起因するモータドライバ部の異常の発生を防止することができる。
【0012】
上記第1の局面によるシフト装置において、好ましくは、シフトバイワイヤ方式の車両用シフト装置であって、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、昇降圧部から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている。
【0013】
このように構成すれば、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、昇降圧部から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給される。これにより、昇降圧部から出力された電力をモータドライバ部に供給することにより、システム系電源経路から供給される電力をモータドライバ部および制御部の両方に、昇降圧部を介して供給することができる。その結果、モータ系電源経路に瞬断(電力の供給が瞬間的に途絶える現象)が発生した場合においても、モータドライバ部および制御部の両方を動作させ続けることが可能なシフトバイワイヤ方式の車両用シフト装置を提供することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、モータ系電源経路の第1電圧が、昇降圧部が出力する第2電圧よりも高い場合には、モータ系電源経路からの電力が、モータドライバ部に供給されるように構成されている。
【0015】
このように構成すれば、モータ系電源経路の第1電圧が、昇降圧部が出力する第2電圧よりも高い場合には、モータドライバ部にモータ系電源経路からの電力を供給するので、モータ系電源経路の第1電圧が、昇降圧部が出力する第2電圧よりも高い場合には、スイッチング部およびモータドライバ部には、モータ系電源経路からの第1電圧の電力が供給される。したがって、モータ系電源経路の第1電圧が上昇して、昇降圧部が出力する第2電圧に対して、モータ系電源経路の第1電圧が高くなった場合でも、スイッチング部およびモータドライバ部には、モータ系電源経路からの第1電圧の電力が供給される。これにより、モータドライバ部に供給される電力の電圧は、スイッチング部に供給される電力の電圧とともに上昇するので、モータドライバ部に供給される電力とスイッチング部に供給される電力との間に電位差が生じることを容易に抑制することができる。その結果、昇降圧部が出力する第2電圧に対して、モータ系電源経路の第1電圧が高くなった場合においても、モータの動作を制御するスイッチング部を容易に駆動させることができる。
【0016】
上記モータ系電源経路の第1電圧が、昇降圧部が出力する第2電圧よりも高い場合には、モータ系電源経路からの電力をモータドライバ部に供給する構成において、好ましくは、モータ系電源経路の第1電圧が、昇降圧部が出力する第2電圧よりも低い場合には、昇降圧部により第2電圧に変換された電力が、モータドライバ部に供給されるように構成されている。
【0017】
このように構成すれば、モータ系電源経路の第1電圧が、昇降圧部が出力する第2電圧よりも低い場合には、昇降圧部により第2電圧に変換された電力をモータドライバ部に供給するので、瞬断(電力の供給が瞬間的に途絶える現象)などによりモータ系電源経路の第1電圧が低下した場合においても、モータドライバ部に電力を供給し続けることができる。その結果、瞬断などにより、モータ系電源経路からの電力の供給が停止した場合でも、モータドライバ部を動作させ続けることができるので、モータドライバ部がリセットされることに起因するモータドライバ部の異常の発生をより容易に防止することができる。
【0018】
上記第1の局面によるシフト装置において、好ましくは、モータ系電源経路と、昇降圧部の出力側とが、互いにダイオードを介して接続されており、ダイオードは、モータ系電源経路に設けられる第1ダイオードと、昇降圧部の出力側に設けられる第2ダイオードとを含み、モータドライバ部には、第1ダイオードを介したモータ系電源経路からの電力と、昇降圧部から出力され、第2ダイオードを介した電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいてダイオードを介して、供給されるように構成されている。
【0019】
このように構成すれば、モータ系電源経路に設けられる第1ダイオードと、昇降圧部の出力側に設けられる第2ダイオードとによりダイオードオア(OR)回路を構成することができるので、モータドライバ部へ供給される電力を切り替えるスイッチング回路などを別途設けることなく、電圧の高低に基づいて、モータドライバ部へ供給される電力を切り替えることができる。その結果、モータドライバ部へ供給される電力を切り替えるスイッチング回路などを別途設ける場合に比べて、回路構成の複雑化を抑制することができる。
【0020】
上記第1の局面によるシフト装置において、好ましくは、装置外部の電源からの電力を供給するため電流経路が、装置内部において、モータ系電源経路およびシステム系電源経路の各々に分岐するように構成されている。
【0021】
このように構成すれば、装置外部の電源からの電力を供給するため電流経路が、装置外部において、装置内部のモータ系電源経路およびシステム系電源経路の各々に対して分岐する場合と異なり、装置外部の電源からの電力を入力するための端子を、モータ系電源経路およびシステム系電源経路の各々に対応して設ける必要がない。その結果、部品点数の増加を抑制することができる。
【0022】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における車両用電子制御ユニットは、モータの動作を制御するスイッチング部と、スイッチング部を駆動させるためのモータドライバ部と、モータドライバ部を制御する制御部と、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路と、制御部に電力を供給するシステム系電源経路と、システム系電源経路に設けられ、システム系電源経路から供給される電力を所定の電圧に変換して出力する昇降圧部と、を備え、制御部には、昇降圧部を介して電力が供給されるように構成されており、モータドライバ部には、少なくともモータ系電源経路からの電力と、システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている。
【0023】
この発明の第2の局面における車両用電子制御ユニットは、上記のように、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給される。これにより、モータ系電源経路からの電力をモータドライバ部に供給することにより、モータ系電源経路からの電力がスイッチング部およびモータドライバ部の両方に供給される。したがって、制御部に電力を供給するシステム系電源経路の電圧に対して、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路の電圧が上昇した場合でも、スイッチング部に供給される電力の電圧と、モータドライバ部に供給される電力の電圧とがともに上昇するので、スイッチング部に供給される電力とモータドライバ部に供給される電力との間に電位差が生じることを抑制することができる。これにより、制御部に電力を供給するシステム系電源経路の電圧に対して、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路の電圧が上昇した場合においても、スイッチング部を駆動させ、モータの動作を制御することが可能な車両用電子制御ユニットを提供することができる。
【0024】
また、この発明の第2の局面による車両用電子制御ユニットは、上記のように、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力と、システム系電源経路からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるので、いずれか一方の電源経路に異常が発生した場合においても、他方の電源経路からモータドライバ部に電力を供給することができる。その結果、いずれか一方の電源経路に異常が発生した場合においても、モータドライバ部を動作させ続けることができるので、モータドライバ部がリセットされることに起因するモータドライバ部の異常の発生を防止することが可能な車両用電子制御ユニットを提供することができる。
【0025】
なお、本出願では、上記第1の局面によるシフト装置および上記第2の局面における車両用電子制御ユニットにおいて、以下のような構成も考えられる。
【0026】
(付記項1)
すなわち、上記シフト装置および車両用電子制御ユニットにおいて、モータ系電源経路およびシステム系電源経路の各々には、モータ系電源経路およびシステム系電源経路に電力を供給するための電源である補機バッテリと、補機バッテリに異常が発生した際に、モータ系電源経路およびシステム系電源経路に電力を供給するためのバックアップ用の電源であるバックアップ電源とが接続されており、通常時において、モータ系電源経路およびシステム系電源経路には、補機バッテリからの電力が供給されるように構成されており、補機バッテリに異常が発生した際には、モータ系電源経路およびシステム系電源経路への電力の供給が、補機バッテリからの供給からバックアップ電源からの供給へと切り替わるように構成されている。
【0027】
このように構成すれば、モータドライバ部には、補機バッテリまたはバックアップ電源からの電力がモータ系電源経路を介して供給されるので、補機バッテリまたはバックアップ電源からの電力がモータ系電源経路を介して、スイッチング部およびモータドライバ部の両方に供給される。したがって、モータ系電源経路およびシステム系電源経路への電力の供給が、補機バッテリからの供給からバックアップ電源からの供給へと切り替わる際または切り替わり後において、制御部に電力を供給するシステム系電源経路の電圧に対して、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路の電圧が上昇した場合でも、スイッチング部に供給される電力の電圧と、モータドライバ部に供給される電力の電圧とがともに上昇する。これにより、スイッチング部に供給される電力とモータドライバ部に供給される電力との間に電位差が生じることを抑制することができる。その結果、モータ系電源経路およびシステム系電源経路への電力の供給が、補機バッテリからの供給からバックアップ電源からの供給へと切り替わる際または切り替わり後において、制御部に電力を供給するシステム系電源経路の電圧に対して、スイッチング部に電力を供給するモータ系電源経路の電圧が上昇した場合においても、モータの動作を制御するスイッチング部を駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態によるシフト装置を示したブロック図である。
図2】本発明の一実施形態によるシフト装置の第1変形例を示したブロック図である。
図3】本発明の一実施形態によるシフト装置の第2変形例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1を参照して、本実施形態によるシフト装置100の構成について説明する。
【0031】
本実施形態によるシフト装置100は、ECU(Electronic Control Unit)部10と、アクチュエータ部20とを備える。シフト装置100は、自動車などの車両に搭載されており、乗員(運転者)がシフトレバー(またはシフトスイッチ)などを介したシフト切替操作を行った際や自動運転の際に、シフト装置100に設けられたECU部10(制御部5)から送信される制御信号に基づいて、シフトポジション(シフトレンジ)を切り替える電気的なシフト切替制御が行われる。このようなシフト切替制御は、シフトバイワイヤ(SBW:Shift By Wire)と呼ばれる。すなわち、本実施形態によるシフト装置100は、シフトバイワイヤ方式の車両用シフト装置である。なお、ECU部10は、請求の範囲の「車両用電子制御ユニット」の一例である。
【0032】
本実施形態では、ECU部10は、モータ系電源経路1と、システム系電源経路2とを備える。そして、ECU部10は、モータ駆動回路3と、モータドライバ部4と、制御部5と、昇降圧部6とを備える。なお、モータ駆動回路3は、請求の範囲の「スイッチング部」の一例である。また、ECU部10は、モータ回転センサ7と、絶対角センサ8とを備える。なお、ECU部10は、車両全体をコントロールするメイン電子制御ユニット(図示せず)との通信によりシフト指令信号を受信して、シフト切替制御を行うように構成されている。
【0033】
モータ系電源経路1、システム系電源経路2、モータ駆動回路3、モータドライバ部4、制御部5、昇降圧部6、モータ回転センサ7および絶対角センサ8は、同一の回路基板上に設けられており、一体的なユニット(電子制御ユニット)として、構成されている。
【0034】
本実施形態では、アクチュエータ部20は、モータ21と、変速機構22とを備える。
【0035】
モータ21は、いわゆる三相モータであって、変速機構22を駆動させるための駆動力を発生させる機能を有している。また、モータ21は、変速機構22などを介して制御軸(マニュアルシャフト)41を駆動する。制御軸41は、変速機構22と、AT(Automatic Transmission)の切替機構42との間に設けられ、変速機構22と切替機構42とを繋ぐように構成されている。切替機構42は、パーキングロック状態と、パーキングロック解除状態とを切り替えるための機構である。
【0036】
シフト装置100には、シフト装置100外部の補機バッテリ31またはバックアップ電源32から電力が供給されるように構成されている。
【0037】
補機バッテリ31は、通常時において、シフト装置100のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2に電力を供給するための電源である。補機バッテリ31は、鉛蓄電池を含む。補機バッテリ31には、車両に搭載されたオルタネータなどの発電機(図示せず)が発電した電力が蓄えられている。
【0038】
バックアップ電源32は、補機バッテリ31に異常が発生した際に、シフト装置100のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2に電力を供給するためのバックアップ用の電源である。バックアップ電源32は、リチウムイオン電池またはキャパシタを含む。
【0039】
シフト装置100では、補機バッテリ31に異常が発生した際には、モータ系電源経路1およびシステム系電源経路2への電力の供給が、補機バッテリ31からの供給からバックアップ電源32からの供給へと切り替わるように構成されている。
【0040】
モータ系電源経路1は、モータ駆動回路3に電力(電源)を供給するための経路である。モータ系電源経路1は、前述した補機バッテリ31およびバックアップ電源32から出力された電力をモータ駆動回路3に供給するための経路である。
【0041】
そして、システム系電源経路2は、制御部5に電力(電源)を供給するための経路である。システム系電源経路2は、前述した補機バッテリ31およびバックアップ電源32から出力された電力を制御部5に供給するための経路である。
【0042】
モータ駆動回路3は、変速機構22を駆動させるモータ21の動作を制御するように構成されている。モータ駆動回路3は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子を含む。たとえば、モータ駆動回路3は、一対(2つ)のMOSFET(スイッチング素子)を3相(U相、V相、W相)のそれぞれに対応して設けた合計6つのMOSFETにより構成されるインバータ回路を含むモータ駆動3相回路である。MOSFET(スイッチング素子)のソース側またはドレイン側には、モータ系電源経路1から電力が供給されている。
【0043】
モータドライバ部4は、モータ駆動回路3を駆動させるように構成されている。モータドライバ部4は、モータ駆動回路3に含まれるスイッチング素子のゲートを駆動させるための回路(ゲート駆動回路)を含み、モータ駆動回路3に対して、ゲート駆動信号を出力するように構成されている。モータドライバ部4は、たとえば、ゲート駆動回路を含むプリドライバICなどである。また、モータドライバ部4(モータドライバ部4内部のレジスタ)には、制御部5のイニシャライズの際(起動時)に、制御部5によりシフト切替制御のための設定(レジスタ設定)が書き込まれ、保持される。また、制御部5のイニシャライズの際(起動時)には、制御部5によりシフト切替制御のためのソフトウェアがモータドライバ部4に書き込まれてもよい。
【0044】
制御部5は、モータドライバ部4を制御するように構成されている。制御部5は、モータドライバ部4に対して、制御信号を出力するように構成されている。すなわち、制御部5は、モータドライバ部4およびモータ駆動回路3を介して、モータ21の動作の制御を行うように構成されている。制御部5は、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部5は、たとえば、CPU、RAM(Read Only Memory)、ROM(Random Access Memory)、および、外部と通信するための入出力インターフェースなどを含むマイクロプロセッサ(マイコン)である。
【0045】
昇降圧部6は、システム系電源経路2に設けられ、システム系電源経路2から供給される電力を所定の電圧に変換して出力するように構成されている。昇降圧部6は、第1昇降圧部61と、第2昇降圧部62とを備える。昇降圧部6(第1昇降圧部61および第2昇降圧部62)は、昇降圧DC/DCコンバータを含む。昇降圧部6は、たとえば、昇降圧DC/DCコンバータを含む電源ICである。
【0046】
第1昇降圧部61は、システム系電源経路2から供給される電力を電圧V2に変換して出力するように構成されている。そして、第2昇降圧部62は、第1昇降圧部61により電圧V2に変換して出力された電力を、電圧V2よりも低い電圧V3に変換(降圧)して出力するように構成されている。なお、昇降圧部6(第1昇降圧部61)により電圧V2に変換された電力は、モータドライバ部4に対してVddとして供給されている。すなわち、モータドライバ部4には、昇降圧部6を介してシステム系電源経路2からの電力が供給される。
【0047】
また、制御部5、モータ回転センサ7および絶対角センサ8には、昇降圧部6(第1昇降圧部61および第2昇降圧部62)により電圧V3に変換された電力が供給される。すなわち、制御部5には、昇降圧部6を介してシステム系電源経路2からの電力が供給される。なお、昇降圧部6(第1昇降圧部61および第2昇降圧部62)により電圧V3に変換された電力は、モータドライバ部4に対してVccとして供給されている。
【0048】
モータ回転センサ7は、モータ21のロータの回転変位の相対的位置情報(相対角変位)を検出(取得)するように構成されている。モータ回転センサ7は、磁気式回転角度センサICを含み、アクチュエータ部20に設けられた図示しないセンサマグネット(磁石)により、モータ21のロータの回転変位の相対的位置情報(相対角変位)を検出(取得)するように構成されている。
【0049】
また、絶対角センサ8は、制御軸41の絶対角度を検出(取得)ように構成されている。絶対角センサ8は、非接触のホール式絶対角センサを含む。なお、絶対角センサ8は、ホール式絶対角センサ以外のセンサを含んでもよい。絶対角センサ8は、たとえば、磁気式回転角度センサICを含み、図示しないセンサマグネット(磁石)により、制御軸41の角度を検出(取得)するように構成してもよい。
【0050】
制御部5には、モータ回転センサ7からモータ21のロータの回転変位の相対的位置情報やロータ回転数を示す信号が送信(供給)され、絶対角センサ8から制御軸41の絶対角を示す信号が供給される。制御部5は、モータ回転センサ7が検出したモータ21のロータの回転変位の相対的位置情報(相対角変位)と、絶対角センサ8が検出した制御軸41の絶対角度とに基づいて、切替機構42の切替位置が、パーキングロック状態の位置であるか、パーキングロック解除状態の位置であるかを判定する。
【0051】
モータ系電源経路1の補機バッテリ31側(バックアップ電源32側)には、シフト装置100外部に設けられた補機バッテリ31およびバックアップ電源32と、モータ駆動回路3(モータ系電源経路1)とを電気的に切り離すためのリレー部9が設けられている。リレー部9は、第1リレー91と、第2リレー92を含む。また、本実施形態では、補機バッテリ31からの電力を供給するための電源経路、および、バックアップ電源32からの電力を供給するための電源経路の各々が、シフト装置100の外部において分岐している。そして、補機バッテリ31から供給される電力、および、バックアップ電源32から供給される電力の各々が、シフト装置100(ECU部10)内のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対応して、個別にシフト装置100(ECU部10)に入力されるように構成されている。
【0052】
第1リレー91は、補機バッテリ31と、モータ駆動回路3(モータ系電源経路1)とを電気的に切り離すように構成されている。また、第2リレー92は、バックアップ電源32と、モータ駆動回路3(モータ系電源経路1)とを電気的に切り離すように構成されている。第1リレー91および第2リレー92は、たとえば、MOSFETを含むスイッチング回路である。
【0053】
本実施形態では、モータ系電源経路1と、昇降圧部6の出力側とが、互いにダイオード11を介して接続されている。
【0054】
ダイオード11は、モータ系電源経路1に設けられるダイオード11aと、昇降圧部6の出力側に設けられるダイオード11bとを含む。なお、ダイオード11aは、請求の範囲の「第1ダイオード」の一例であり、ダイオード11bは、請求の範囲の「第2ダイオード」の一例である。
【0055】
本実施形態では、モータドライバ部4は、ダイオード11aと、ダイオード11bとにより構成されたダイオードオア(OR)回路によって、モータ系電源経路1および昇降圧部6の出力のいずれかからでも電力の供給を受けることが可能なように構成されている。
【0056】
また、昇降圧部6と、補機バッテリ31との間のシステム系電源経路2には、補機バッテリ31への逆流を防止するためのダイオード12が設けられている。そして、昇降圧部6と、バックアップ電源32との間のシステム系電源経路2には、バックアップ電源32への逆流を防止するためのダイオード13が設けられている。
【0057】
(モータドライバ部への電力の供給)
モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、システム系電源経路2からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている。すなわち、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力が供給可能に構成されている。本実施形態では、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、昇降圧部6から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている。また、モータドライバ部4は、モータ系電源経路1からの電力と、昇降圧部6から出力された電力とのうち、いずれか一方から供給される電力に基づいて、モータ駆動回路3を駆動させるように構成されている。
【0058】
モータドライバ部4には、ダイオード11aを介したモータ系電源経路1からの電力と、昇降圧部6から出力され、ダイオード11bを介した電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいてダイオード11(ダイオード11aまたは11b)を介して、供給されるように構成されている。
【0059】
具体的には、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも高い場合には、モータ系電源経路1からの電力が、ダイオード11aを介して、モータドライバ部4に供給されるように構成されている。なお、電圧V1は、請求の範囲の「第1電圧」の一例であり、電圧V2は、請求の範囲の「第2電圧」の一例である。
【0060】
なお、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも高い場合とは、瞬断(電力の供給が瞬間的に途絶える現象)などにより電圧V2が0Vになった場合も含む。このような場合においては、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1から電圧V1の電力が供給されるように構成されている。
【0061】
また、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも低い場合には、昇降圧部6により電圧V2に変換された電力が、ダイオード11bを介して、モータドライバ部4に供給されるように構成されている。
【0062】
なお、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも低い場合とは、瞬断などによりモータ系電源経路1の電圧V1が0Vになった場合も含む。このような場合においては、システム系電源経路2から供給され、第1昇降圧部61から出力された電圧V2の電力がモータドライバ部4に供給されるように構成されている。
【0063】
すなわち、モータ系電源経路1に瞬断が発生した場合においては、モータドライバ部4および制御部5には、昇降圧部6を介して電力が供給されるので、モータ系電源経路1に瞬断が発生した場合においても、モータドライバ部4および制御部5の両方が動作し続けることが可能である。
【0064】
また、シフト装置100(ECU部10)は、起動の際には、リレー部9によって、補機バッテリ31およびバックアップ電源32と、モータ駆動回路3(モータ系電源経路1)とが電気的に切り離されている。本実施形態では、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、昇降圧部6から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている。これにより、リレー部9によって、補機バッテリ31およびバックアップ電源32と、モータ駆動回路3(モータ系電源経路1)とが電気的に切り離されている状態においても、モータドライバ部4および制御部5には、システム系電源経路2から供給され、昇降圧部6から出力された電力が供給可能である。
【0065】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態では、上記のように、シフト装置100(ECU部10)のモータ駆動回路3を駆動させるためのモータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、システム系電源経路2(昇降圧部6)からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給される。これにより、モータ系電源経路1からの電力をモータドライバ部4に供給することにより、モータ系電源経路1からの電力がモータ駆動回路3およびモータドライバ部4の両方に供給される。したがって、制御部5に電力を供給するシステム系電源経路2の電圧に対して、モータ駆動回路3に電力を供給するモータ系電源経路1の電圧V1が上昇した場合でも、モータ駆動回路3に供給される電力の電圧と、モータドライバ部4に供給される電力の電圧とがともに上昇する。これにより、モータ駆動回路3に供給される電力とモータドライバ部4に供給される電力との間に電位差が生じることを抑制することができる。その結果、制御部5に電力を供給するシステム系電源経路2の電圧に対して、モータ駆動回路3に電力を供給するモータ系電源経路1の電圧V1が上昇した場合においても、モータ21の動作を制御するモータ駆動回路3を駆動させることができる。すなわち、ECU部10は、システム系電源経路2の電圧に対して、モータ系電源経路1の電圧V1が上昇した場合においても、モータ駆動回路3を駆動させ、モータ21の動作を制御することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、システム系電源経路2(昇降圧部6)からの電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるので、いずれか一方の電源経路に異常が発生した場合においても、他方の電源経路からモータドライバ部4に電力を供給することができる。その結果、いずれか一方の電源経路に異常が発生した場合においても、モータドライバ部4を動作させ続けることができるので、モータドライバ部4がリセットされることに起因するモータドライバ部4の異常の発生を防止することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、昇降圧部6から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給される。これにより、昇降圧部6から出力された電力をモータドライバ部4に供給することにより、システム系電源経路2から供給される電力をモータドライバ部4および制御部5の両方に、昇降圧部6を介して供給することができる。その結果、モータ系電源経路1に瞬断が発生した場合においても、モータドライバ部4および制御部5の両方を動作させ続けることが可能なシフト装置100(シフトバイワイヤ方式の車両用シフト装置)を提供することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも高い場合には、モータドライバ部4にモータ系電源経路1からの電力を供給するので、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも高い場合には、モータ駆動回路3およびモータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電圧V1の電力が供給される。したがって、モータ系電源経路1の電圧V1が上昇して、昇降圧部6が出力する電圧V2に対して、モータ系電源経路1の電圧V1が高くなった場合でも、モータ駆動回路3およびモータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電圧V1の電力が供給される。これにより、モータドライバ部4に供給される電力の電圧は、モータ駆動回路3に供給される電力の電圧とともに上昇するので、モータドライバ部4に供給される電力とモータ駆動回路3に供給される電力との間に電位差が生じることを容易に抑制することができる。その結果、昇降圧部6が出力する電圧V2に対して、モータ系電源経路1の電圧V1が高くなった場合においても、モータ21の動作を制御するモータ駆動回路3を容易に駆動させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、モータ系電源経路1の電圧V1が、昇降圧部6が出力する電圧V2よりも低い場合には、昇降圧部6により電圧V2に変換された電力をモータドライバ部4に供給するので、瞬断(電力の供給が瞬間的に途絶える現象)などによりモータ系電源経路1の電圧V2が低下した場合においても、モータドライバ部4に電力を供給し続けることができる。その結果、瞬断などにより、モータ系電源経路1からの電力の供給が停止した場合でも、モータドライバ部4を動作させ続けることができるので、モータドライバ部4がリセットされることに起因するモータドライバ部4の異常の発生をより容易に防止することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、モータ系電源経路1に設けられるダイオード11aと、昇降圧部6の出力側に設けられるダイオード11bとによりダイオードオア(OR)回路を構成することができるので、モータドライバ部4へ供給される電力を切り替えるスイッチング回路などを別途設けることなく、電圧の高低に基づいて、モータドライバ部4へ供給される電力を切り替えることができる。その結果、モータドライバ部4へ供給される電力を切り替えるためのスイッチング回路などを別途設ける場合に比べて、回路構成の複雑化を抑制することができる。
【0072】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0073】
たとえば、上記実施形態では、ECU部10(車両用電子制御ユニット)は、シフトバイワイヤ方式の車両用のシフト装置100に備えられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の車両用電子制御ユニットは、モータ系電源経路と、システム系電源経路との間に電位差が生じる装置であれば、車両のシフト装置以外の装置に用いられてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、制御部5には、昇降圧部6を介して電力が供給されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図2に示した第1変形例によるシフト装置200のように、制御部5には、ECU部210に備えられた昇降圧部6を介さずに、システム系電源経路2からの電力が供給されるように構成されてもよい。この場合、モータ系電源経路1の電圧V1が、システム系電源経路2の電圧よりも高い場合には、モータ系電源経路1からの電力がモータドライバ部4に供給されるとともに、モータ系電源経路1の電圧V1が、システム系電源経路2の電圧よりも低い場合には、システム系電源経路2からの電力がモータドライバ部4に供給される。なお、ECU部210は、請求の範囲の「車両用電子制御ユニット」の一例である。
【0075】
また、上記実施形態では、モータドライバ部4には、モータ系電源経路1からの電力と、昇降圧部6から出力された電力とのうち、いずれか一方が電圧に基づいて供給されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータドライバ部には、モータ系電源経路からの電力および昇降圧部から出力された電力の両方が同時に供給されるように構成されてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、モータドライバ部4へ供給される電力を切り替えるスイッチング回路などを別途設けることなく、電圧の高低に基づいて、モータドライバ部4へ供給される電力を切り替えるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電圧の高低に基づいて、電源経路の通電と遮断と切り替えるためのスイッチング回路などを別途設けることにより、モータドライバ部へ供給される電力を切り替えるように構成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、バックアップ電源32からの電力を供給するための電源経路が、シフト装置100の外部において分岐(図1参照)し、バックアップ電源32から供給される電力が、シフト装置100(ECU部10)内のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対応して、個別にシフト装置100(ECU部10)に入力される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図3に示した第2変形例によるシフト装置300(ECU部310)のように、シフト装置300外部のバックアップ電源32からの電力を供給するための電源経路が、シフト装置300(ECU部310)の内部において、モータ系電源経路1と、システム系電源経路2とに分岐するように構成されてもよい。これにより、第2変形例によるシフト装置300では、シフト装置300外部のバックアップ電源32からの電力を供給するため電流経路が、シフト装置300外部において、シフト装置300内部のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対して分岐する場合と異なり、シフト装置300外部のバックアップ電源32からの電力を入力するための端子を、モータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対応して設ける必要がない。その結果、部品点数の増加を抑制することができる。なお、ECU部310は、請求の範囲の「車両用電子制御ユニット」の一例であり、バックアップ電源32は、請求の範囲の「装置外部の電源」の一例である。また、第2変形例による第2変形例によるシフト装置300においても、モータ21の回生電力などに起因して、制御部5に電力を供給するシステム系電源経路2の電圧に対して、モータ駆動回路3に電力を供給するモータ系電源経路1の電圧V1が上昇した場合においても、モータ21の動作を制御するモータ駆動回路3を駆動させることができる。
【0078】
また、上記実施形態では、補機バッテリ31からの電力を供給するための電源経路が、シフト装置100の外部において分岐(図1参照)し、補機バッテリ31から供給される電力が、シフト装置100(ECU部10)内のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対応して、個別にシフト装置100(ECU部10)に入力される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図3に示した第2変形例によるシフト装置300(ECU部310)のように、シフト装置300外部の補機バッテリ31からの電力を供給するための電源経路が、シフト装置300(ECU部310)の内部において、モータ系電源経路1と、システム系電源経路2とに分岐するように構成されてもよい。これにより、シフト装置300外部の補機バッテリ31からの電力を供給するため電流経路が、シフト装置300外部において、シフト装置300内部のモータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対して分岐する場合と異なり、シフト装置300外部の補機バッテリ31からの電力を入力するための端子を、モータ系電源経路1およびシステム系電源経路2の各々に対応して設ける必要がない。その結果、部品点数の増加を抑制することができる。なお、補機バッテリ31は、請求の範囲の「装置外部の電源」の一例である。
【符号の説明】
【0079】
1 モータ系電源経路
2 システム系電源経路
3 モータ駆動回路(スイッチング部)
4 モータドライバ部
5 制御部
6 昇降圧部
10、210、310 ECU部(車両用電子制御ユニット)
11 ダイオード
11a ダイオード(第1ダイオード)
11b ダイオード(第2ダイオード)
21 モータ
22 変速機構
31 補機バッテリ(装置外部の電源)
32 バックアップ電源(装置外部の電源)
100、200、300 シフト装置
V1 電圧(第1電圧)
V2 電圧(第2電圧)
図1
図2
図3