(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231108BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20231108BHJP
A45D 29/00 20060101ALI20231108BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J3/407
A45D29/00
B41J2/165 301
B41J2/01 109
(21)【出願番号】P 2023010980
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2019036207の分割
【原出願日】2019-02-28
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-005306(JP,A)
【文献】特開2010-241091(JP,A)
【文献】特開2017-159462(JP,A)
【文献】特開2014-023729(JP,A)
【文献】特開2017-169727(JP,A)
【文献】特開2013-059579(JP,A)
【文献】特開2007-098777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 3/407
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に着脱可能なカバー部材と、
手又は足の指の爪に印刷を施す印刷部と、を備え、
前記印刷部は、前記爪に対応する印刷指以外の非印刷指を待機させる載置部を有し、
前記筐体における前記載置部の下部に空間が設けられ、
前記カバー部材は、前記空間に収容され、物体を収納可能である収納部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷部によって印刷が施される印刷領域が、前記筐体内における前側の左右方向略中央に配置され、
前記印刷領域の左右両側には、前記載置部として載置台部材が設けられ、
前記空間は、前記筐体内において前記載置台部材よりも下側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷部は印刷ヘッドを備え、
非印刷時に前記印刷ヘッドが配置される待機領域及び前記印刷ヘッドのメンテナンスが行われるメンテナンス領域が、前記印刷領域よりも後側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷領域と、前記待機領域と、前記メンテナンス領域とが、前記印刷ヘッドが移動可能な範囲内における互いに異なる位置に設けられ、
前記印刷領域の中心を通る架空の中心線で前記範囲を第1領域と第2領域とに分割した場合に、前記待機領域及び前記メンテナンス領域の一方が前記第1領域に配置され、前記待機領域及び前記メンテナンス領域の他方が前記第2領域に配置されることを特徴とする請求項
3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記載置台部材は、前記印刷ヘッドの移動方向と平行に設けられた板状部材であることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記印刷指及び前記非印刷指を内部に挿入するための開口を前面に有し、
前記カバー部材は、前記筐体への装着時に前記開口を覆うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを微細な液滴として印刷ヘッドのインク吐出面から吐出させて印刷対象に印刷を施すインクジェット方式の印刷装置が知られている。
こうしたインクジェット方式の印刷装置では、一般に、印刷を行っていない非印刷時に印刷ヘッドを所定の待機領域(ホームポジション)に待機させ、インク吐出面をキャップで覆うなどして保護するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
また、この種の印刷装置には、印刷ヘッドの各種メンテナンスを行うメンテナンス領域も設けられる。
これら待機領域やメンテナンス領域は、印刷が行われる印刷領域とは別の位置に設けなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印刷領域、待機領域及びメンテナンス領域を単純に異なる位置に配置しただけでは、装置が無用に大きくなってしまう場合がありうる。装置をコンパクトに構成できないと、例えば印刷ヘッドの移動時間が長くなるなどして、良好な印刷を行うことが困難になる。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、良好な印刷を可能とする印刷装置を提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、
筐体と、
前記筐体に着脱可能なカバー部材と、
手又は足の指の爪に印刷を施す印刷部と、を備え、
前記印刷部は、前記爪に対応する印刷指以外の非印刷指を待機させる載置部を有し、
前記筐体における前記載置部の下部に空間が設けられ、
前記カバー部材は、前記空間に収容され、物体を収納可能である収納部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態におけるネイルプリント装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すネイルプリント装置から下カバーを外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すネイルプリント装置から下カバーを外し上カバーを開けた状態を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態におけるネイルプリント装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態におけるネイルプリント装置の基台の構成を示す平面図である。
【
図6】本実施形態におけるパージ部の構成を模式的に示す側面図である。
【
図7】本実施形態におけるワイプ部の動作を説明する模式的な側面図である。
【
図8】本実施形態におけるネイルプリント装置の概略の制御構成を示す制御ブロック図である。
【
図9】本実施形態におけるネイルプリント装置で印刷を行う場合の指の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図9を参照しつつ、本発明に係る印刷装置の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0010】
図1は、本実施形態における印刷装置であるネイルプリント装置1の外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、
図1に示した方向をいうものとする。
【0011】
図1に示すように、ネイルプリント装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2は、前面側(ネイルプリント装置1の正面側、
図1において前側)に開口部211(
図2参照)を有する筐体本体21と、筐体本体21の前面側に配置され、開口部211を塞ぐ下カバー22及び上カバー23とを備えている。
すなわち、本実施形態において筐体2の前面は、筐体2の高さ方向において上下ほぼ半分に分割されており、前面下側が下カバー22、前面上側が上カバー23で構成されている。下カバー22と上カバー23とは閉状態においてほぼ面一となる。
【0012】
また、筐体本体21の前面上側であって上カバー23の内側には、前壁部212(
図3参照)が設けられている。前壁部212の一部は切り欠かれて開口しており、後述するカートリッジ7を装置に対して着脱する際の取出し口213となっている。
後述するように、本実施形態では、装置内の幅方向(X方向)右側にカートリッジ7のホームポジションAr1(非印刷時の待機領域)が設けられており、このホームポジションAr1からY方向における装置前方に直進した位置がカートリッジ7を着脱する際の交換領域Ar3となっている(
図4参照)。
取出し口213は、この交換領域Ar3に対応する位置に、カートリッジ7を着脱する際に引っ掛からない程度の大きさに形成されている。
【0013】
下カバー22は、筐体本体21に対して着脱可能となっている。
図2は、筐体2から下カバー22を取り外した状態を示した斜視図である。
図2に示すように、下カバー22を取り外すことにより、筐体本体21の開口部211から後述する指固定部6及び指待機部350が露出し、印刷対象である爪(当該爪に対応する指(これを以下「印刷指」とする。)いずれも図示せず。)及び印刷指以外の指(図示せず。これを以下「非印刷指」とする。)をネイルプリント装置1内に挿入可能となる。すなわち、下カバー22は、筐体本体21への装着時に開口部211を覆うようになっている。
また、下カバー22の奥側(
図1において後側)には、下カバー22を筐体本体21に装着した状態において筐体2内部(後述の載置板35よりも下側の空間)に収容される引出し部24が一体に形成されている。引出し部24は、例えばネイルプリント装置1に付属する図示しない各種部品等を収納可能な小物入れとなっていてもよい。
【0014】
図3は、上カバー23が開状態となったネイルプリント装置1の斜視図である。なお、
図3では、カートリッジ7が装着された状態を示している。
図2及び
図3に示すように、上カバー23は、前壁部212の上端部又は筐体本体21の上面(天板)の前端部に設けられたヒンジ機構214を介して、筐体本体21に回動可能に連結されている。ヒンジ機構214は、筐体2の外観に現れないようにスライド蝶番等で構成されることが好ましい。
上カバー23は、筐体本体21の前面側を覆う閉状態から、筐体本体21の前面側が開披された(本実施形態では前壁部212が露出した)開状態まで回動可能となっている。
【0015】
本実施形態では、上カバー23は、開状態において筐体2の前方に回動するようになっている。なお、
図3に示す例では、開状態において上カバー23が筐体2の上面よりも高い位置まで上がる例を示しているが、開状態における上カバー23の高さ位置は、図示例に限定されない。
上記のように、下カバー22及び上カバー23が装置前方に向かって取り外し又は開くことが可能に構成されていることにより、ネイルプリント装置1が高さ方向に余裕のない場所に収納されている場合でも、当該収納場所から取り出さないまま印刷等を行うことが可能となる。
【0016】
上カバー23において、筐体2の幅方向(ネイルプリント装置1の左右方向、
図1等におけるX方向)のほぼ中央部には、透明プラスチック等で形成された透明部材が装着された窓部231が設けられている。
窓部231からは、装置内部、特に印刷対象である爪が配置される指固定部6(後述)を、前壁部212の取出し口213のうちの左側部分を通じて、外部から目視可能となっている。
【0017】
筐体2(筐体本体21)の上面のほぼ中央部には、取手25が出没自在に設けられている。
筐体2の上面には凹部251が形成されており、取手25は凹部251内に収納可能となっている。取手25は、凹部251内に収納された収納状態(
図1等に示す状態)において筐体2の上面とほぼ面一となる。これにより、筐体2の高さ分の隙間があればネイルプリント装置1を配置することができ、装置収納時の省スペース化を図ることができる。
また、取手25は、凹部251内から引き起こされた引き起こし状態においてネイルプリント装置1を持ち運ぶための持ち手となる。
なお、筐体2各部の形状や配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、筐体2の上面や側面等にネイルプリント装置1の電源をON/OFFする電源スイッチ釦や各種表示部等が設けられていてもよい。
【0018】
また、筐体2の上面(天板)の内側であって、後述する指固定部6の開口部63の上方位置には、開口部63から露出する爪(爪を含む印刷指)を撮影して爪画像を取得する後述の撮影部50(
図8参照)が設けられている。
【0019】
図4は、
図1等に示すネイルプリント装置1から筐体2を外してネイルプリント装置1の内部構成を示した要部斜視図である。
図4に示すように、筐体2内には、各種の内部構造物が組み込まれた基台3が設けられている。
基台3の上側には、ほぼ平坦な基台上板30が配置されている。基台上板30は、指固定部6に印刷指を固定した状態における爪の表面(印刷対象面)とほぼ面一となる高さに配置されている。この基台上板30は、少なくとも指固定部6の左右両側の部分においては、配置された高さよりも上側の領域と下側の領域とに仕切っている。
【0020】
基台上板30のうちの前側(手前側)部分であって左右方向のほぼ中央部には、指固定部6が配置されている。つまり、基台上板30は、指固定部6(後述の印刷領域Ar4)の左右両側を含む部分に設けられている。
指固定部6は装置前面側に開口する開口部61を有する箱状の部材であり、指固定部6内部には印刷指を固定する指固定部材62が配置されている。
指固定部材62は、印刷指を下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。本実施形態では、指固定部材62は、幅方向(左右方向)のほぼ中央部が窪んだ形状となっており、印刷指を指固定部材62上に載置した際に、印刷指の腹部分を指固定部材62が受けて、左右方向に指がガタつくのを防止することができる。
【0021】
指固定部6の天面奥側(Y方向後側)は開口した開口部63となっている。開口部63からは指固定部6内に挿入された指の爪が露出するようになっている。
本実施形態では、開口部63の設けられている領域において、後述の印刷部40により印刷が行われるようになっている。
【0022】
また、指固定部6の天面手前側(Y方向前側)は印刷指の浮き上がりを防止して印刷指の上方向の位置を規制する指押え64となっている。
印刷指が下側から指固定部材62によって支持され、印刷指の上側が指押え64によって押さえられることで、印刷指の爪の表面(印刷対象面)の高さ方向の位置が印刷部40による印刷を行うのに適した所定の位置に位置決めされる。
【0023】
基台上板30よりも下方であって開口部61よりも下方、かつ下カバー22の引出し部24と干渉しない高さ位置には、印刷時に非印刷指が載置される載置板35が、基台上板30とほぼ平行に設けられている。載置板35には凹状又は穴状に形成された指入れ部351が形成されている。この指入れ部351は、載置される非印刷指の先端側部分に対応する奥側(後側)の位置に形成されている。
筐体2内における指固定部6(後述の印刷領域Ar4)の左右両側であって、基台上板30と載置板35との間の空間は、印刷指の爪に印刷を行っている際に非印刷指を待機させておく指待機部350となっている。
【0024】
印刷中はユーザが待機中の非印刷指を指待機部350に挿入し、指先を適宜指入れ部351に入れることで非印刷指を無理なく安定した状態に保つことができる。このため印刷指にも負担がかからず、印刷中のブレ等を生じにくくなる。
また、非印刷指の指先を指入れ部351に入れておくことができるため、例えばすでに印刷が終了した指の爪が装置各部に接触することを防ぐことができる。これにより、印刷済みの爪が擦れたり傷ついたりするおそれがなく、装置内に汚れが付着することも防止することができる。
なお、載置板35よりも下側の空間を含めた、基台上板30よりも下側の空間を、指待機部としてもよい。さらに言えば、指待機部350は、筐体2内における指固定部6(後述の印刷領域Ar4)の左右両側の空間であればよい。
【0025】
基台上板30のうち指固定部6よりも奥側(Y方向後側)部分には、非印刷時に後述するカートリッジ7が待機する待機領域であるホームポジションAr1及び非印刷時にカートリッジ7のクリーニング等のメンテナンスを行うメンテナンス領域Ar2等が設けられている。
本実施形態では、
図4に示すように、装置内の幅方向(X方向)右側にホームポジションAr1が配置され、左側にメンテナンス領域Ar2が配置されている。
また、ホームポジションAr1から取出し口213の手前までY方向における装置前方に直進した位置が、カートリッジ7を着脱する際にカートリッジホルダ8が配置される交換領域Ar3となっている。
【0026】
また、
図4に示すように、筐体2の内部には、印刷対象面に印刷を施す印刷部40が設けられている。ここで印刷対象面とは、印刷対象の表面であり、本実施形態では、指の爪の表面である。
印刷部40は、印刷ヘッドとしての機能を有するカートリッジ7、カートリッジ7を支持するカートリッジホルダ8、カートリッジ7を左右方向に沿ったX方向に移動させるためのX方向移動ステージ45、X方向移動モータ46(
図8参照)、カートリッジ7を前後方向に沿ったY方向に移動させるためのY方向移動ステージ47、Y方向移動モータ48(
図8参照)等を備えて構成されている。
【0027】
Y方向移動ステージ47は、基台上板30における左右方向の両側部に、それぞれ前後方向(Y方向)に延在して設けられた支持部材471を有している。
これら一対の支持部材471の延在方向における両端部にはそれぞれプーリー477が取り付けられている。装置左側及び装置右側のプーリー477には、前後方向に延在する駆動ベルト474がそれぞれ巻回されている。
装置後側に設けられているプーリー477は、駆動軸部476の両端部に取り付けられている。この駆動軸部476には、Y方向移動モータ48(
図8参照)が接続されており、このY方向移動モータ48が駆動することで駆動軸部476及びこれに取り付けられているプーリー477が適宜正逆方向に回転する。
プーリー477の回転により、プーリー477に巻回されている駆動ベルト474も回転し、これによりX方向移動ステージ45(及びX方向移動ステージ45に搭載されているカートリッジ7)がY方向に移動可能となっている。
また、支持部材471上には駆動ベルト474と平行して前後方向に延在するガイド軸475が設けられている。
【0028】
X方向移動ステージ45は、左右方向(X方向)に延在する矩形箱状に形成され、基台上板30の後端部に設けられている。
X方向移動ステージ45の左右両端部にはそれぞれガイド軸475が挿通されており、Y方向移動モータ48(
図8参照)が駆動して駆動ベルト474が回転することによって、このX方向移動ステージ45は、ガイド軸475に沿ってY方向に移動可能となっている。
【0029】
また、X方向移動ステージ45の内側には図示しないプーリーが設けられており、このプーリーには、左右方向に延在する駆動ベルト454が巻回されている。また、X方向移動ステージ45の内側には、この駆動ベルト454とほぼ平行して左右方向に延在するガイド軸455が設けられている。
X方向移動ステージ45には、カートリッジホルダ8が搭載されている。
カートリッジホルダ8の背面側(
図4において後側)には、ガイド軸455が挿通されたホルダ支持部材(図示省略)が設けられている。
カートリッジホルダ8は、X方向移動モータ46(
図8参照)が駆動して駆動ベルト454が回転することによって、X方向移動ステージ45内をガイド軸455に沿ってX方向に移動可能となっている。
【0030】
カートリッジホルダ8には、コ字状のストッパ部材84が設けられている。
ストッパ部材84は、後端部がそれぞれカートリッジホルダ8の左右の側面部に固定されており、固定部分を支点として回動するようになっている。
ストッパ部材84は、カートリッジ7が装着されていない状態では上方に上げられており、カートリッジホルダ8の前面側を開放する。
そして、カートリッジホルダ8にカートリッジ7が装着されると、カートリッジ7の前面側に配置され、カートリッジ7が外部からの衝撃や振動等によってカートリッジホルダ8から外れて落下等するのを防止するようになっている。
なお、ストッパ部材84は、カートリッジホルダ8にカートリッジ7が装着されることで自動的にカートリッジ7の前面側に下りるように構成されていてもよいし、ユーザが手動によりストッパ部材84を上下させることができるようになっていてもよい。
【0031】
本実施形態では、X方向移動モータ46とY方向移動モータ48等により、印刷ヘッドとしてのカートリッジ7をX方向及びY方向に移動可能なヘッド移動機構49(
図8参照)が構成されており、後述する制御装置80(特に印刷制御部813)によりその動作が制御される。
なお、カートリッジ7の動作やヘッド移動機構49の動作を制御する印刷制御部813は、全てが1つの制御基板上に設けられている必要はない。例えば、カートリッジ7のインク吐出やX方向移動モータ46の動作等を制御する制御部81が搭載され、メインの制御基板と電気的に接続された図示しない制御基板がX方向移動ステージ45に設けられていてもよい。本実施形態においてカートリッジホルダ8の後面側には、フレキシブルなプリント配線基板425が設けられている。このプリント配線基板425は、X方向移動ステージ45に設けられている制御基板と電気的に接続されており、メインの制御基板上に設けられている印刷制御部813からの制御信号は、X方向移動ステージ45に設けられている制御基板を介してプリント配線基板425に送られ、印刷制御部813の制御に従ったカートリッジ7のインク吐出制御等が行われるようになっている。
【0032】
本実施形態のカートリッジ7は、上述のとおり印刷ヘッドとして機能するものであり、その下面のインク吐出部から微滴化したインクを印刷対象(爪)の被印刷面に吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。カートリッジ7は、例えば、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクを吐出可能となっている。
カートリッジ7は、基台上板30よりも上側の領域を移動するように構成されている。
【0033】
図5は、印刷部40のX方向移動ステージ45及びカートリッジホルダ8に支持されたカートリッジ7を取り除いて、基台上板30の構成を示した平面図である。
図4及び
図5に示すように、基台上板30のうちの前側部分であって左右方向のほぼ中央部には、前述のように指固定部6が配置されており、本実施形態では、この指固定部6の開口部63に対応する領域が、印刷時においてカートリッジ7が印刷動作を行う印刷領域Ar4となっている。
印刷領域Ar4の左右方向(X方向)の中心を通り、左右方向(X方向)に垂直な架空の中心線Cにより、カートリッジ7が移動可能な基台上板30上を中心線Cより右側の第1領域と中心線Cより左側の第2領域とに分割した場合に、基台上板30の右側(第1領域)の後部に、非印刷時においてカートリッジ7が配置されるホームポジションAr1が設けられている。
ホームポジションAr1は、カートリッジ7のホームポジションであり、印刷領域Ar4とは異なる位置であって、印刷領域Ar4よりも右側に配置される。なお、ホームポジションAr1は、ヘッド移動機構49によりカートリッジ7が移動可能な範囲内に配置されればよく、図示例には限定されない。
【0034】
ホームポジションAr1には、カートリッジ7下面のインク吐出面を覆うキャップ部71が設けられている。
キャップ部71は、非印刷時においてインク吐出面を乾燥等から保護するものであり、例えば柔軟性のある樹脂等で形成されている。
キャップ部71は、カートリッジ7を覆っていない初期位置にあるとき(例えば
図5に示す状態)には、ばね等を有する付勢部材711によって前側に向かって付勢されている。この状態においてキャップ部71の上面はカートリッジ7の下面(すなわちインク吐出面)と接触しない程度に、十分に低い位置まで下がっている。これにより、印刷時においてキャップ部71がカートリッジ7に接触したり、その移動を妨げたりすることがないようになっている。
【0035】
そして、カートリッジ7が前側から後側に向かって移動しながらホームポジションAr1に移動してくると、カートリッジ7及びこれを支持するカートリッジホルダ8が付勢部材711の付勢力に抗してキャップ部71を後方に押し込んでいく。
これによりキャップ部71は図示しないレール等に案内されてカートリッジ7のインク吐出面を覆う位置まで上方にせり上がり、インク吐出面がキャップ部71によりキャッピングされるようになっている。さらに、カートリッジ7がホームポジションAr1から離脱した際は、キャップ部71は付勢部材711によって初期位置まで押し戻され、再びカートリッジ7と干渉しない高さ位置まで下降する。
なお、キャップ部71をカートリッジ7に干渉しない高さ位置とカートリッジ7のインク吐出面を覆う高さ位置との間で上下動可能とする構成はここに例示したものに限定されない。
【0036】
また、基台上板30の左側(第2領域)の後部に、カートリッジ7のメンテナンスが行われるメンテナンス領域Ar2が設けられている。
本実施形態において、メンテナンス領域Ar2は、互いに異なる内容の複数のメンテナンスが行われるようになっており、具体的に、当該メンテナンス領域Ar2には、パージ(スピット)処理を行うパージ部72と、インク吐出面をワイプするワイプ部73とが設けられている。
メンテナンス領域Ar2は、印刷領域Ar4及びホームポジションAr1とは異なる位置であって、印刷領域Ar4よりも左側の位置であり、ヘッド移動機構49によりカートリッジ7が移動可能な範囲内に配置される。このメンテナンス領域Ar2とホームポジションAr1とは、印刷領域Ar4の左右両側であって、印刷領域Ar4よりも後側に配置されている。
また、メンテナンス領域Ar2では、パージ部72及びワイプ部73が互いにX方向又はY方向の少なくともいずれかにずれた位置に配置されている。本実施形態では、パージ部72及びワイプ部73は、X方向の位置はほぼ同じであるが、パージ部72はワイプ部73よりもY方向において前側に配置されている。
なお、パージ部72及びワイプ部73の具体的な配置は図示例には限定されず、例えば、パージ部72とワイプ部73とのY方向における位置が逆であってもよいし、パージ部72とワイプ部73とがY方向ではなくX方向にずれて配置されていてもよいし、X方向、Y方向の両方にずれて配置されていてもよい。
【0037】
パージ部72は、カートリッジ7のインク吐出面のインク吐出口からインクを強制的に吐出させて、ノズル内等のインク流路内のエアや不純物、粘度の上がったインク等をインクとともに外部に排出させる、いわゆるパージ処理の際に、インク吐出面から強制的に吐出されるインクを受けるメンテナンス部である。
パージ処理を行うことにより、カートリッジ7のノズル内で生じた目詰まり等が解消され、良好な吐出状態に回復させることができる。
図6は、パージ部72においてカートリッジ7のメンテナンスを行う様子を示す模式的な側面図である。
図6では、説明の便宜上、パージ部72の内部を透過させて表している。また、
図6中においてパージ処理により吐出されたインク液滴Lを破線で表している。
図6に示すように、パージ部72は、インク吐出面よりも多少大きく形成された開口部721と、この開口部721から一繋がりに形成された廃インクタンク722とを備えている。また、廃インクタンク722内には、インクを吸収する吸収体723が設けられている。吸収体723はインクを素早く吸収できるものであればよく、例えば多孔性の材料であるフェルトやスポンジ状の樹脂等が適用される。
本実施形態では、開口部721から廃インクタンク722に向かって傾斜面が形成されており、カートリッジ7のインク吐出面から吐出されたインクは、
図6中、黒矢印で示すように、傾斜面を伝わって廃インクタンク722に流れ込むようになっている。
なお、吸収体723又はパージ部72全体は、取り外して交換が可能な部品としてもよい。
【0038】
ワイプ部73は、カートリッジ7下面のインク吐出面をワイプすることでクリーニングするメンテナンス部であり、
図4及び
図5に示すように、複数のワイプ部材731が立設されたものである。本実施形態では、4つのワイプ部材731が千鳥状に位置をずらして配置されている。なお、ワイプ部材731の配置や大きさ、設ける数等は図示例に限定されない。
ワイプ部材731は、インク吐出面に付着したインク等を拭き取るクリーニングブレードであり、例えばゴム等の弾性体によって形成されている。ワイプ部材731はインクに繰り返し触れても腐食等が発生しにくい耐腐食性の材料で形成されることが好ましい。
なお、ワイプ部材731又はワイプ部73全体は、取り外して交換が可能な部品としてもよい。
【0039】
図7は、ワイプ部材731によりカートリッジ7のインク吐出面をワイプする様子を示す模式的な側面図である。
図7に示すように、ワイプ部材731は、カートリッジ7の移動方向がY方向である場合、これと直交するX方向に扁平な板状部材であり、カートリッジ7がワイプ部73の上方を通る際に、その先端(上端)がインク吐出面と接触する位置及び高さに形成されている。
そして、ワイプ部材731は、カートリッジ7の移動に応じて柔軟に撓み、先端部分をインク吐出面に摺接させることによって、インク吐出面に付着したインク等を除去できるようになっている。
【0040】
なお、カートリッジ7のインク吐出面をワイプすると、ワイプ部材731の先端部等にはインクが付着する。
このため、本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、ワイプ部73よりも後方に、ワイプ部材731に付着したインクを除去するスクレープ部74が設けられている。
スクレープ部74は、Y方向に延在する2条のガイドレール741に沿って、Y方向に移動可能に設けられている。
スクレープ部74の前端には、ワイプ部材731に摺接してその先端部等に付着したインクを掻き落とすスクレープ部材742が設けられている。なお、スクレープ部材742の材料、形状等は特に限定されず、ワイプ部材731に付着したインクを除去できるものであればよい。
【0041】
スクレープ部74の上面には、前端に山折の屈曲部を有する薄い板状の連結ばね743が設けられている。この連結ばね743前端の屈曲部がカートリッジホルダ8の下面に設けられた図示しない凹部に嵌まり込むことで、スクレープ部74がカートリッジホルダ8と係脱可能に連結されるようになっている。
つまり、カートリッジホルダ8をY方向に沿ってスクレープ部74の上方に移動させることにより、連結ばね743の屈曲部がカートリッジホルダ8の凹部に嵌まって、スクレープ部74とカートリッジホルダ8とが連結する。この連結状態でカートリッジホルダ8を移動させることで、ワイプ部材731をスクレープできる位置までスクレープ部74を移動させることができる。
スクレープ部74を後方からワイプ部材731上に通過させると、パージ部72に突き当たり、連結ばね743の屈曲部がカートリッジホルダ8の凹部から脱落する。これにより、スクレープ部74とカートリッジホルダ8との連結が解除される。スクレープ部74は図示しない付勢ばねにより後方に付勢されており、カートリッジホルダ8との連結が解除されると、この付勢ばねの付勢力によって初期位置(本実施形態では、
図5の位置)に復帰する。
【0042】
図8は、ネイルプリント装置1の概略の制御構成を示す制御ブロック図である。
この図に示すように、ネイルプリント装置1は、上述した印刷部40のほかに、撮影部50と、通信部55と、制御装置80とを備えている。
【0043】
撮影部50は、撮影装置51と、照明装置52とを備えている。
撮影部50は、指固定部6に配置された印刷指の爪を照明装置52によって照明する。そして、撮影装置51によってその印刷指を撮影して、印刷指の爪の画像である爪画像(爪画像を含む指の画像)を得るものである。
なお、撮影部50は、カートリッジ7を移動させるヘッド移動機構49によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
撮影装置51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。また、照明装置52は、例えば白色LED等の照明灯である。
撮影部50は、撮影装置51により爪を撮影して爪画像(印刷指を含む爪の画像)を取得する。
この撮影部50は、後述する制御装置80の撮影制御部812に接続され、当該撮影制御部812によって動作を制御されるようになっている。
なお、撮影部50によって撮影された画像のデータは、後述する記憶部82に記憶されてもよい。
【0044】
通信部55は、後述の端末装置9との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。
ネイルプリント装置1と端末装置9との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、ネイルプリント装置1と端末装置9との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部55は端末装置9の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0045】
制御装置80は、例えば筐体2天面の下面側等に配置された図示しない基板等に設置されている。
制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)821及びRAM(Random Access Memory)822等を有して構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0046】
記憶部82には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82のROM821には、例えばカートリッジ7をメンテナンスするメンテナンス動作を行うためのメンテナンスプログラムや、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置80によって実行されることによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
【0047】
制御部81は、機能的に見た場合、通信制御部811、撮影制御部812、印刷制御部813等を備えている。これら通信制御部811、撮影制御部812、印刷制御部813等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROM821に記憶されたプログラムとの共働によって実現される。
【0048】
通信制御部811は、通信部55の動作を制御するものである。本実施形態では、後述の端末装置9との間での通信を制御し、当該端末装置9から印刷用データ等が送信された場合にこれを受信する。
また、撮影部50によって爪画像が取得されたときは、取得された日時等の経時情報とともに爪画像データを端末装置9に送信する。
なお、ネイルプリント装置1側で印刷中にトラブル等が発生した場合等、動作状況に異変が生じた場合には、その旨を端末装置9側に送信するようにしてもよい。
【0049】
撮影制御部812は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影装置51により、指固定部6に固定された印刷指の爪の画像を含む指の画像(爪画像)を撮影させるものである。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、通信部55を介して後述の端末装置9に送信される。なお、画像データは記憶部82に記憶されてもよい。
【0050】
印刷制御部813は、後述の端末装置9から送信された印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪に対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、カートリッジ7等を制御する制御部である。
【0051】
また、
図8に示すように、本実施形態のネイルプリント装置1は、端末装置9との間で通信可能に構成されており、端末装置9からの動作指令に基づいて印刷動作等を実行するようになっている。
【0052】
端末装置9は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末である。ただし、端末装置9は、ネイルプリント装置1と通信可能なものであれば特に限定されず、例えばノート型又は定置型のパソコンや、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
具体的に、端末装置9は、操作部91、表示部92、通信部94、制御装置95等を備えている。
【0053】
操作部91は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、操作部91が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御装置95に送信される。なお、本実施形態では表示部92の表面にタッチパネルが一体的に設けられており、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によっても各種の入力・設定等の操作を行うことができるようになっている。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部91はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部91として設けられていてもよい。
本実施形態では、ユーザが操作部91を操作することで、爪に印刷するネイルデザインを選択すること等ができるようになっている。
【0054】
表示部92に構成されているタッチパネルは、後述する制御部951の制御にしたがって各種の表示画面を表示させる。
本実施形態では、表示部92には、ユーザが操作部91から入力・選択したネイルデザインや、ネイルプリント装置1から送信された画像等が表示可能となっている。
【0055】
通信部94は、ネイルプリント装置1に対して印刷用データを送信することが可能となっている。また、通信部94は、ネイルプリント装置1から爪画像等のデータが送信されたときには、これを受信する。通信部94は、ネイルプリント装置1の通信部55との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えている。
なお、通信部94は、ネイルプリント装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、ネイルプリント装置1の通信部55の通信規格と合致するものが適用される。
【0056】
制御装置95は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等により構成される制御部951と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部952とを備えるコンピュータである。
【0057】
記憶部952には、端末装置9の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等には、端末装置9の各部を統括制御するための動作プログラムの他、ネイルプリント装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム等の各種プログラムが格納されており、制御装置95がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して実行することによって、端末装置9が制御されるようになっている。
また、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザインのデータや、爪の画像及び爪の位置・範囲の情報等が格納されるようになっている。
【0058】
制御部951は、端末装置9の各部の動作を統合的に制御する。制御部951は、記憶部952に記憶されたプログラムとの協働により、爪への印刷を行うための各種機能を実現する。
【0059】
続いて、手の指の爪にネイルプリントを行う場合の印刷方法について説明する。
図9は、ネイルプリント装置1で印刷を行う場合の指の配置例を示す図である。
ネイルプリント装置1によりネイルプリントを行う場合、まずユーザは、端末装置9の操作部91からネイルプリント処理の実行を選択するとともに、爪に印刷するネイルデザインを選択する。
【0060】
それから、ユーザは、
図9に示すように、印刷する爪Tをネイルプリント装置1の指固定部6にセットする。
このとき、ユーザは、印刷指U1(
図9の例では薬指)を指固定部6に載置するとともに、その左右両側の指待機部350に非印刷指U2を挿入して載置板35上に載置する。これにより、非印刷指U2を無理なく安定した状態に保つことができ、ひいては、印刷指U1への負担を減らして印刷中のブレ等を生じにくくすることができる。なお、
図9では図示を省略するが、短い親指は、載置板35の下側の空間に配置しておいてもよい。
また、非印刷指U2が指待機部350内、つまり基台上板30よりも下側に配置されるので、カートリッジ7が移動する基台上板30よりも上側の領域に非印刷指U2を入れてしまうことがない。
また、
図9では図示を省略するが、非印刷指U2の指先を指入れ部351に入れておくことができる。これにより、例えばすでに印刷が終了した指の爪が装置各部に接触することを防ぐことができる。
【0061】
印刷する爪Tを指固定部6にセットすると、撮影部50によりこの爪Tが撮影されて爪画像が取得される。取得された爪画像は通信部55により端末装置9に送信される。
端末装置9の制御装置95は、送信されてきた爪画像から爪Tの輪郭や曲率等の爪情報を検出する。そして、制御装置95は、ユーザに選択されたネイルデザインの印刷像のデータを読み込み、当該印刷像のデータを、検出された爪Tの爪情報に基づいて補正し、印刷用データを生成する。生成された印刷用データは、端末装置9から通信部94によりネイルプリント装置1に送信される。
【0062】
印刷用データを受信すると、ネイルプリント装置1の印刷制御部813は、まずカートリッジ7を印刷領域Ar4まで移動させる。
カートリッジ7がホームポジションAr1にある状態から印刷動作を開始する場合には、印刷制御部813は、ホームポジションAr1のキャップ部71によりキャッピングされている状態から、カートリッジ7をY方向前側、X方向左側に動かして印刷領域Ar4上方の印刷開始位置まで移動させる。そして、印刷制御部813は、予め生成した印刷用データを印刷部40に出力し、爪Tへの印刷を実行する。
なお、印刷領域Ar4で印刷を行う前に、パージ部72においてカートリッジ7からインクを強制吐出(予備吐出)させてもよい。このパージ処理により、前回の印刷動作で生じたカートリッジ7のノズル内の目詰まり等が解消される。
【0063】
印刷が終了したら、印刷制御部813は、カートリッジ7をX方向左側、Y方向後側に動かしてパージ部72まで移動させた後、パージ部72においてカートリッジ7からインクを強制吐出(予備吐出)させる。このパージ処理により、印刷動作で生じたカートリッジ7のノズル内の目詰まり等が解消される。
なお、パージ部72でのパージ処理に代えて、又はこれと併せて、カートリッジ7のインク吐出状態を正常に保つためのワイプ部73でのワイプ処理もしくは他のメンテナンス処理を行うこととしてもよい。
【0064】
それから、印刷制御部813は、カートリッジ7をX方向右側、Y方向後側に動かしてホームポジションAr1まで移動させ、カートリッジ7のインク吐出面がホームポジションAr1のキャップ部71に覆われた状態にする。そして、制御装置80は、印刷処理を終了させる。
印刷処理が終了した際には、端末装置9の表示部92にその旨を表示させるようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、印刷領域Ar4の中心を通る中心線Cでカートリッジ7の移動範囲を左右の第1領域と第2領域とに分割した場合に、待機領域であるホームポジションAr1が右側の第1領域に配置され、メンテナンス領域Ar2が左側の第2領域に配置される。
このように、印刷時にはその両側にスペースを要する印刷領域Ar4を中央に配置し、ホームポジションAr1及びメンテナンス領域Ar2をその両側に配置することにより、コンパクトなレイアウトとすることができる。したがって、ネイルプリント装置1をコンパクトに構成することができ、ひいては良好な印刷を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、印刷領域Ar4が、筐体2内における前側の左右方向略中央に配置され、ホームポジションAr1及びメンテナンス領域Ar2が、印刷領域Ar4よりも後側に配置され、印刷領域Ar4の左右両側には、印刷時に非印刷指を待機させる指待機部350が設けられている。
これにより、ネイルプリント装置1をコンパクトに構成することができるとともに、ユーザは、左右両手のどの指を印刷する場合にもこの印刷指以外の非印刷指を指待機部350に待機させておくことができる。そのため、ユーザは印刷時に非印刷指を窮屈に曲げておいたりせずに済み、快適にネイルプリントを行うことができる。また、印刷指にも負担が掛かりにくくなるため、印刷中のブレ等を生じにくくなる。
【0067】
また、本実施形態によれば、筐体2内における印刷領域Ar4の左右両側には、開口部61に印刷指を挿入した状態における印刷対象の爪の表面と略同じ高さに配置されて、この高さよりも上側の領域と下側の領域とに仕切る基台上板30が設けられている。そして、指待機部350はこの基台上板30よりも下側の空間であり、カートリッジ7はこの基台上板30よりも上側の領域を移動するように構成されている。
これにより、非印刷指が配置される指待機部350と、カートリッジ7が移動する空間とが基台上板30により仕切られるため、印刷時に非印刷指を誤ってカートリッジ7に接触させるといった事故を防ぐことができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、開口部61よりも下方の高さ位置に、非印刷指が載置される載置板35が設けられており、開口部61及び載置板35は基台上板30よりも下方に配置され、指待機部350は基台上板30と載置板35との間の空間となっている。
これにより、ユーザは印刷時に非印刷指を載置板35に載置しておくことができるため、快適にネイルプリントを行うことができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、載置板35は、当該載置板35に載置される非印刷指の先端側部分に対応する奥側の位置に、凹部又は穴状に形成された指入れ部を有する。
これにより、ユーザは非印刷指の指先を指入れ部351に入れておくことができるため、例えばすでに印刷が終了した指の爪が装置各部に接触することを防ぐことができる。したがって、印刷済みの爪が擦れたり傷ついたりするおそれがなく、装置内に汚れが付着することも防止することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、載置板35は、基台上板30とほぼ平行に設けられた板状部材である。
そのため、例えば、比較的に長い人差し指や中指、薬指は載置板35上に載置し、比較的に短い親指や小指は載置板35より下側の空間に入れるなどして、非印刷指を無理なく配置することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、下カバー22が、筐体本体21への装着時に載置板35よりも下側の空間に収容される引出し部24を有する。
これにより、載置板35よりも下側の空間を、小物入れの引出し部24のための空間として有効に活用することができる。
【0072】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0073】
例えば、本実施形態では、基台上板30を左右方向(X方向)に分割するような印刷領域Ar4の中心を通る架空の中心線Cにより、基台上板30を第1領域と第2領域とに分割するものを例示したが、ホームポジションAr1及びメンテナンス領域Ar2が、それぞれ第1領域及び第2領域内に配置されていればよく、中心線Cの引き方はこれに限定されない。基台上板30を前後方向(Y方向)に分割するようなものでもよい。
また、ホームポジションAr1が第1領域に、メンテナンス領域Ar2が第2領域に、それぞれ配置されるものを例示したが、メンテナンス領域Ar2が第1領域に、ホームポジションAr1が第2領域に配置されるようにしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、パージ部72として、通常のインク吐出と同様の動作でインクを強制的に吐出させるものを例示したが、パージ部72の構成はこれに限定されない。
例えば、小型のポンプ等を備え、インク吐出面を密閉状態とした上でノズル内等に残留するインクや不純物等をポンプによって吸引し、強制的に外部に排出させる方式のパージ部を設けてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、メンテナンス部としてパージ部72を有する場合を例示したが、メンテナンス部の種類はこれに限定されない。パージ部72の代わりに他のメンテナンス部を設けてもよい。
他のメンテナンス部としては、例えば、フェルト等の高吸収性の材料で形成された吸収部材をインク吐出面に押し当ててインク吐出面に付着したインク等を吸収・吸着させて除去するものを設けてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、カートリッジ7がインクジェット方式の印刷ヘッド機構を一体的に備えるヘッド一体型のインクカートリッジである場合を例示したが、カートリッジはインクジェット方式で印刷を行うものに限定されない。
また、カートリッジはヘッド一体型のものに限定されない。例えば、インクを吐出させる機能を備えた印刷ヘッド機構をカートリッジ7が装着されるカートリッジホルダ8側等に備え、カートリッジはインク貯留部のみを有するものとしてもよい。
この場合には、消耗品として交換可能なカートリッジを簡易かつ安価な構成で実現することができ、ユーザにとって経済的である。
なお、この場合に、カートリッジは、インクの減り具合を監視するセンサとこのセンサに接続される端子部を備え、カートリッジがカートリッジホルダに装着されると、カートリッジ端子部及びホルダ端子部を介して、インク残量が装置側で把握され、カートリッジの交換時期がユーザに報知されるように構成してもよい。
【0077】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1がインクジェット方式で印刷を行う構成としたが、ネイルプリント装置1が印刷を行う手法はインクジェット方式に限定されない。
例えば、爪の表面にペン先を接触させて印刷を行う印刷用のペンを保持するペンホルダを備え、ペンを用いて印刷を行うようにしてもよい。また、本実施形態のようなインクジェット方式の印刷手段と印刷用のペンを保持するペンホルダとを両方備え、複数の印刷手段を用いて印刷を行う構成としてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1が端末装置と連携して印刷システムを構成し、印刷開始指示の入力や、印刷領域(すなわち爪の領域)の検出、各種補正や印刷用データの生成等を端末装置側で行った上で、爪に印刷を行う印刷動作をネイルプリント装置1側で行う場合を例示したが、ネイルプリント装置1はここに示すようなものに限定されない。
例えば、各種指示を入力する操作部や表示部、印刷用データを生成する印刷データ生成部等をネイルプリント装置1側に設けて、ネイルプリント装置1の制御装置がこれらの処理を行うようにしてもよい。
このように構成した場合には、端末装置と連携することなく、ネイルプリント装置1が単体で印刷動作を完結できるように構成することもできる。
【0079】
また、ネイルデザインの画像データは端末装置の記憶部に設けられていてもよいし、ネイルプリント装置1の記憶部に記憶されていてもよい。
また、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等にネイルデザインの画像データを記憶させておき、端末装置又はネイルプリント装置1がサーバ装置等にアクセスしてネイルデザインの画像データを参照可能に構成してもよい。
このようにすることで、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することが可能となる。
【0080】
また、ネイルプリント装置1に、印刷後にインクを乾燥させるためのヒータやファンを備える乾燥部が設けられていてもよい。
例えば、指待機部350等に乾燥部を設けることで、他の指の爪に印刷を行っている間に、印刷済みの爪を乾燥させることができ、ネイルプリントに要する時間を短縮することができる。
【0081】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷ヘッドを備え、
前記印刷ヘッドにより印刷が施される印刷領域と、非印刷時に前記印刷ヘッドが配置される待機領域と、前記印刷ヘッドのメンテナンスが行われるメンテナンス領域とが、前記印刷ヘッドが移動可能な範囲内における互いに異なる位置に設けられ、
前記印刷領域の中心を通る架空の中心線で前記範囲を第1領域と第2領域とに分割した場合に、前記待機領域及び前記メンテナンス領域の一方が前記第1領域に配置され、前記待機領域及び前記メンテナンス領域の他方が前記第2領域に配置されていることを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記印刷ヘッドを収容する筐体を備え、
前記中心線は、前記筐体の左右方向で前記印刷領域を分割するものであり、前記待機領域と前記メンテナンス領域とが、前記印刷領域の前記筐体における左右両側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記印刷ヘッドは、印刷対象として手又は足の指の爪に印刷を施すものであり、
前記印刷領域は、前記筐体内における前側の左右方向略中央に配置され、
前記待機領域及び前記メンテナンス領域は、前記印刷領域よりも後側に配置され、
前記印刷領域の左右両側には、前記爪に対応する印刷指以外の非印刷指を待機させる指待機空間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記印刷領域内において前記印刷指を挿入する開口部と、
前記開口部に前記印刷指を挿入した状態における前記爪の表面と略同じ高さに配置されて、当該高さよりも上側の領域と下側の領域とに仕切る仕切部材と、
を備え、
前記仕切部材は、前記筐体内における前記印刷領域の左右両側に設けられ、
前記指待機空間は、前記仕切部材よりも下側の空間であり、
前記印刷ヘッドは、前記仕切部材よりも上側の領域を移動するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記開口部よりも下方の高さ位置に、前記非印刷指が載置される載置台部材が設けられ、
前記開口部及び前記載置台部材は、前記仕切部材よりも下方であり、
前記指待機空間は、前記仕切部材と前記載置台部材との間の空間であることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記載置台部材は、当該載置台部材に載置される前記非印刷指の先端側部分に対応する奥側の位置に、凹状又は穴状に形成された指入れ部を有することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記載置台部材は、前記仕切部材と平行に設けられた板状部材であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の印刷装置。
<請求項8>
前記筐体は、前記印刷指及び前記非印刷指を内部に挿入するための開口を前面に有する筐体本体と、前記筐体本体と着脱可能に構成され、前記筐体本体への装着時に前記開口を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、当該カバー部材の前記筐体本体への装着時には前記載置台部材よりも下側の空間に収容される収納部を有することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0082】
1 ネイルプリント装置
2 筐体
3 基台
6 指固定部
7 カートリッジ
21 筐体本体
22 下カバー
23 上カバー
24 引出し部
30 基台上板
35 載置板
63 開口部
350 指待機部
351 指入れ部
Ar1 ホームポジション
Ar2 メンテナンス領域
Ar4 印刷領域
C 中心線
T 爪
U1 印刷指
U2 非印刷指