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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電通信システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20231108BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231108BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231108BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J7/00 301D
H02J50/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023014755
(22)【出願日】2023-02-02
【審査請求日】2023-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲配▼嶋 俊夫
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/157093(JP,A1)
【文献】特開2015-006096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス電力伝送により受電する受電回路および該受電回路を介して充電可能な蓄電手段を有するとともに、予め設定された待機期間の経過ごとに情報出力する情報出力デバイスと、
ホスト端末に組み込まれるかまたは通信接続され、前記情報出力デバイスにワイヤレス電力伝送するとともに前記情報出力デバイスからの情報を受信する送電受信側デバイスと、を備えるワイヤレス給電通信システムであって、
前記ホスト端末または前記送電受信側デバイスが、前記情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を変動させる送電受信側の制御部を有しており、
前記情報出力デバイスが、前記予め設定された待機期間の経過ごとにワイヤレス通信により情報発信するビーコンデバイスであり、前記ワイヤレス電力伝送の変動を判定するとともに、該変動の判定結果に応じて所定の動作を行うように制御する受電送信側の制御部を有していることを特徴とするワイヤレス給電通信システム。
【請求項2】
前記送電受信側の制御部は、前記送電受信側デバイスから前記情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を所定の変動パターンで断続させることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電通信システム。
【請求項3】
前記受電送信側の制御部は、前記変動の判定結果に応じて受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に、前記送電受信側デバイスから受信したコマンドに応じた所定の動作を行うように制御することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電通信システム。
【請求項4】
前記情報出力デバイスが、IoTセンサを有していることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電通信システム。
【請求項5】
前記情報出力デバイスが、所定の省電力型の近距離無線通信におけるアドバタイズ通信パケット中に出力データを含めて情報出力することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電通信システム。
【請求項6】
ワイヤレス電力伝送により受電する受電回路を介して蓄電手段に蓄電する蓄電ステップと、該蓄電された電力により予め設定された待機期間の経過ごとに受電側の情報出力デバイスから情報出力する情報出力ステップと、ホスト端末に組み込まれるかまたは通信接続される送電受信側デバイスによって、前記情報出力デバイスにワイヤレス電力伝送する給電ステップと、前記情報出力デバイスから出力された情報を前記送電受信側デバイスに受信させる受信ステップと、を含むワイヤレス給電通信方法であって、
前記ホスト端末または前記送電受信側デバイスにより、前記情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を変動させる送電制御ステップと、
前記情報出力デバイスにより、前記ワイヤレス電力伝送の変動を判定するとともに、該変動の判定結果に応じて情報出力に係る所定の動作を実行させる情報送信制御ステップと、をさらに含み、
前記情報出力デバイスが、前記予め設定された待機期間の経過ごとにワイヤレス通信により情報発信するビーコンデバイスであることを特徴とするワイヤレス給電通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電通信システムに関し、特に受電側情報出力デバイスから予め設定された待機期間の経過ごとに出力される情報を、送電受信側デバイスで受信するワイヤレス給電通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定時間間隔で情報発信するとともにワイヤレス電力伝送によって無線給電されるビーコンデバイスと、ビーコンデバイスへのワイヤレス電力伝送(無線給電)を行うとともにビーコンデバイスから情報データを受信する送電受信器とを備えたIoT(Internet_of_Things)センサ通信システム等のワイヤレス給電通信システムが知られている。
【0003】
このような無線給電が可能な通信システムにおいては、ビーコンデバイスが2次電池またはコンデンサ等の蓄電手段によって作動しているため、消費電力を低減して無線給電による給電量を低減させるべく、ビーコンデバイスを所定の時間間隔で起動して、送電受信器へとデータを送信するようになっているものが多い。
【0004】
この種の従来の通信システムとしては、例えば間欠的な検出用送電により送電可能な範囲の受電装置を検出する検出手段と、検出手段で検出された受電装置に検出用送電より大きい電力の無線送電を行う送電手段とを備えたワイヤレス給電装置において、検出手段により検出された受電装置の認証を行う認証手段を設け、その認証が成功した受電装置に対してのみ送電手段からの無線送電を行うようにして、不要な無線電力伝送処理の低減化を図ったものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-111879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来のワイヤレス給電通信システムにおいては、ビーコンデバイスのような受電側情報出力デバイスが、データを送信する情報出力期間以外は常時スリープ状態(例えば、計時のみを行う低消費電力状態)となるようにして、低消費電力化が図られていたため、受電側情報出力デバイスは、スリープ(Sleep)状態下において送電受信器側からの通信を受け付けることができなかった。
【0007】
そのため、送電受信器が発端となって受電側情報出力デバイスを任意のタイミングで通信応答させることができず、必要時に送電受信器から受電側情報出力デバイスに即時の情報出力を要求可能にしたり、必要時にその情報出力の条件変更を要求したりすることができなかった。
【0008】
具体的には、従来のビーコンデバイスのような受電側情報出力デバイスは、通常、満充電状態下であってもほぼスリープ状態にあり、データ送信時のみ動き出し、受信ウィンドウを開く場合は、送信直後に返事待ちの受信ウィンドウを開くようになっていた。したがって、データ送信タイミングの直後にしかコマンド受信することができなかった。例えば、1日に1回の送信といった少ない送信回数のIoTデバイスの場合、通常時はほぼスリープ状態で、1日に1回しかコマンドをやり取りする機会がなく、急にデータが欲しい場合や、コマンドのやり取りをしたい場合に、それができないというシステム上の欠点があった。
【0009】
本発明は、前述のような従来の課題を解決すべくなされたものであり、送電受信側デバイスからのワイヤレス電力伝送自体を利用して、任意のタイミングで送電受信側デバイスから受電側情報出力デバイスを起動可能としたワイヤレス給電通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワイヤレス給電通信システムは、上記目的達成のため、(1)ワイヤレス電力伝送により受電する受電回路および該受電回路を介して充電可能な蓄電手段を有するとともに、予め設定された待機期間の経過ごとに情報出力する情報出力デバイスと、ホスト端末に組み込まれるかまたは通信接続され、前記情報出力デバイスにワイヤレス電力伝送するとともに前記情報出力デバイスからの情報を受信する送電受信側デバイスと、を備えるワイヤレス給電通信システムであって、前記ホスト端末または前記送電受信側デバイスが、前記情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を変動させる送電受信側の制御部を有しており、前記情報出力デバイスが、前記予め設定された待機期間の経過ごとにワイヤレス通信により情報発信するビーコンデバイスであり、前記ワイヤレス電力伝送の変動を判定するとともに、該変動の判定結果に応じて所定の動作を行うように制御する受電送信側の制御部を有していることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明では、送電受信側の制御部が、情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を変動させることで、その変動に応じて、受電側の情報出力デバイスに対し、所定の動作を要求する信号伝達が可能となる。また、情報出力デバイスは、ワイヤレス電力伝送が特定の変動であるときに、受電送信側の制御部によるワイヤレス電力伝送の変動の判定機能を作動させることで、その変動で要求される所定の動作を判定可能となる。したがって、送電受信側デバイスからのワイヤレス電力伝送自体を信号伝達に利用して、省電力型の近距離無線通信を行うデバイスを、十分に待機させて省電力に使用しながらも、任意のタイミングで送電受信側デバイスから受電側情報出力デバイスを必要時に即座に起動可能としたワイヤレス給電通信システムとすることができることとなる。
【0012】
なお、ここにいう待機期間は、一定時間長さを有する期間であるが、温度等の環境条件に応じて時間長が変化する期間であってもよい。また、送電受信側の制御部では、電源電力をワイヤレス電力伝送(無線送電)時の伝送帯の交流周波数に変換して、情報出力デバイスで受電可能な電磁波を送電アンテナから送電出力させる一方、受電送信側の制御部では、アンテナで受けた電磁波により共振する受電回路により交流電力を生成し、直流または所望周波数の交流電力に整流する構成とすることができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施形態においては、前記送電受信側の制御部は、前記送電受信側デバイスから前記情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を前記所定の変動パターンで断続させる構成とすることができる。この場合、ワイヤレス電力伝送が所定の断続パターンで断続することになり、情報出力デバイスが、その断続パターンに対応してワイヤレス電力の受電時に生じる変動のパターンを判定することで、受電側情報出力デバイスを容易に起動可能となる。
【0014】
(3)本発明の好ましい実施形態においては、前記受電送信側の制御部は、前記変動の判定結果に応じて受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に、前記送電受信側デバイスから受信したコマンドに応じた所定の動作を行うように制御する構成とすることができる。この場合、予め設定されている時刻や経過時間にかかわらず、受電送信側の制御部でのコマンド受信タイミングで、送電受信側デバイスからのコマンドに応じた所定の動作を実行させることができる。
【0016】
)本発明の好ましい実施形態においては、前記情報出力デバイスが、IoTセンサを有している構成とすることができる。この場合、極低消費電力であることが要求され、待機期間が長くなるときであっても、必要時にセンサ情報を即時的に出力させることができる。ここにいうIoTセンサは、例えば温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、騒音センサ等のセンサデバイスである。
【0017】
)本発明の好ましい実施形態においては、前記情報出力デバイスが、所定の省電力型の近距離無線通信におけるアドバタイズ通信パケット中に出力データを含めて情報出力する。このようにすると、情報出力デバイスから送電受信側デバイスへの出力データがペアリングによるコネクションの確立前の段階で可能となり、待機時間の経過ごとに繰り返される情報出力に要する電力を十分に抑えることができる。
【0018】
本発明に係るワイヤレス給電通信方法は、上記目的達成のため、()ワイヤレス電力伝送により受電する受電回路を介して蓄電手段に蓄電する蓄電ステップと、該蓄電された電力により予め設定された待機期間の経過ごとに受電側の情報出力デバイスから情報出力する情報出力ステップと、ホスト端末に組み込まれるかまたは通信接続される送電受信側デバイスによって、前記情報出力デバイスにワイヤレス電力伝送する給電ステップと、前記情報出力デバイスから出力された情報を前記送電受信側デバイスに受信させる受信ステップと、を含むワイヤレス給電通信方法であって、前記ホスト端末または前記送電受信側デバイスにより、前記情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を変動させる送電制御ステップと、前記情報出力デバイスにより、前記ワイヤレス電力伝送の変動を判定するとともに、該変動の判定結果に応じて情報出力に係る所定の動作を実行させる情報送信制御ステップと、をさらに含み、前記情報出力デバイスが、前記予め設定された待機期間の経過ごとにワイヤレス通信により情報発信するビーコンデバイスであることを特徴とする。
【0019】
この構成により、本発明方法では、送電受信側デバイスから受電側の情報出力デバイスへの給電ステップで、情報出力デバイスへのワイヤレス電力伝送を変動させることで、その変動に応じて、情報出力デバイスに対し、所定の動作を要求することができる。また、ワイヤレス電力伝送が特定の変動であるときに情報出力デバイスを起動させ、かつ、その変動で要求される所定の動作を判定可能となる。したがって、送電受信側デバイスからのワイヤレス電力伝送を利用して、省電力型の近距離無線通信を行うデバイスを、十分に待機させて省電力に使用しながらも、任意のタイミングで送電受信側デバイスから受電側の情報出力デバイスを必要時に即座に起動可能としたワイヤレス給電通信方法を実現可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、送電受信側デバイスからのワイヤレス電力伝送を利用して、任意のタイミングで送電受信側デバイスから受電側の情報出力デバイスを起動可能としたワイヤレス給電通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電通信システムの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態のワイヤレス給電通信システムにおけるビーコンデバイスの機能ブロック構成図である。
図3】本発明の一実施形態のワイヤレス給電通信システムにおける概略の通信手順を示すシーケンスチャートである。
図4】本発明の一実施形態のワイヤレス給電通信システムにおける受電側の情報出力デバイスにおける概略の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電通信システムの構成と概略動作の流れを示している。
【0024】
まず、その構成について説明する。
【0025】
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電通信システム1は、少なくとも1つの受電側の情報出力デバイスであるビーコンデバイス10と、ビーコンデバイス10にワイヤレス電力伝送する一方、ビーコンデバイス10からデータ送信される情報を受信する少なくとも1つの送電受信装置30と、ビーコンデバイス10および送電受信装置30の間で省電力型の所定の近距離無線通信、例えばBluetooth_Low_Energy(登録商標)の規格に準拠する近距離無線通信(以下、単にBLE通信ともいう)を実行させるよう、ビーコンデバイス10および送電受信装置30に内蔵され、もしくは組み込まれた受電送信側の無線通信デバイス20Aおよび送電受信側の無線通信ユニット20Bと、で構成されている。
【0026】
図1に示すように、ビーコンデバイス10は、例えば設備状態監視用のIoTセンサとして機能し得るセンサ11、具体的には、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、騒音センサ等のうちいずれか一つまたは複数のセンサ11を有している。センサ11が加速度センサである場合、例えば振動や揺れを検知する。ビーコンデバイス10は、また、後述する受電送信側MCU22に電源を供給する二次電池やコンデンサ等の蓄電手段、例えば充電可能なバッテリ15を有している。なお、必要に応じて、バッテリ15からセンサ11へも電源が供給される場合がある。
【0027】
ビーコンデバイス10は、また、受電送信側の無線通信ユニット20Aの一部を構成するBLE通信が可能な指向性または無指向性の無線通信アンテナ(以下、BLEアンテナという)21と、ROMやRAMといった内部メモリに加えて必要な入出力インターフェース回路を一体化したマイクロプロセッサベースのコントローラICである受電送信側MCU(マイクロコントローラユニット)22と、所定の受信周波数で共振する不図示の受電回路および整流回路を内蔵し、受信した電力波(無線周波数電力)のエネルギーを電流に変換しつつ直流電力に整流して出力するWPT(Wireless_Power_Transfer)受電部23と、WPT受電部23(受電回路)からバッテリ15への充電を許容しつつ後述するワイヤレス電力伝送の断続時に逆流阻止機能を生じるダイオード24とを有している。なお、ダイオード24はダイオードに限定されるものではなく、これに代えて、逆流阻止機能を生じる他のあらゆる素子を使用することができる。
【0028】
受電送信側の無線通信ユニット20Aは、ビーコンデバイス10に内蔵されており、BLEアンテナ21を介してBLE通信による送受信が可能な無線送信機としての構成を有する通信モジュールであるとともに、WPT受電部23の受電時に得た電力を、上述のバッテリ15を介して受電送信側MCU22へ供給することで受電送信側MCU22を作動させ、送電受信装置30から送電受信側の無線通信ユニット20Bを介して送信出力される電力波をWPT受電部23の不図示の受電用アンテナにより受電するときに、その受電の有無、または受電した電力のレベルの変動に応じて、受電送信側MCU22により所定の判定機能を実行するようになっている。
【0029】
図2は、そのような受電送信側MCU22の機能を示す機能ブロックであり、WPT受電部23で受電されるとき、受電送信側MCU22は、内部メモリに予め格納された受電・送信制御プログラムを実行することで、受電送信側の制御部としての諸機能のうち、同図中に示す複数の機能部22a~22dの機能を実行するようになっている。
【0030】
すなわち、受電送信側MCU22は、ワイヤレス電力伝送されてWPT受電部23で受電されるときに電力の電圧を検出する電圧検出部22aと、その電圧検出部22aで検出される電圧の所定時間ごとの変化量を繰り返し算出するとともに、所定の判定周期で受電電圧の変動パターンが予め設定され内部メモリに記憶している変動パターンであるか否かを判定する変動パターン判定部22bと、変動パターン判定部22bでの判定の結果が所定の変動パターンであると判定されていないときは、通常の動作として、現在時刻あるいは測定した経過時間に基づいて、予め設定されている時刻あるいは経過期間ごとに、センサ情報を含む所定データ形式の情報をBLEアンテナ21から送信させ、また、変動パターン判定部22bでの判定の結果が所定の変動パターンであると判定されたときは、受電送信側の無線通信ユニット20Aが送電受信側の無線通信ユニット20BからのBLE通信を受信可能となるように、所定の期間、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に、無線通信ユニット20BからBLE受信したコマンドに応じて、上述の予め設定されている時刻あるいは経過時間に関わらず、当該コマンドを受信したタイミングでセンサ情報を含む所定データ形式の情報をBLEアンテナ21から送信させる等の所定の動作を行う測定・送信制御部22cと、センサ11の出力信号を所定時間毎に取り込んで、測定・送信制御部22cから読み出し可能に記憶するセンサ情報記憶部22dとして機能するように構成されている。
【0031】
なお、上述の無線通信ユニット20BからBLE受信したコマンドに応じた所定の動作として、例えば、上述の予め設定されている時刻あるいは経過期間の設定を変更するなど、受電送信側の無線通信ユニット20AからのBLE通信に係る各種設定の変更を行うこと、あるいは、BLE通信でファームウェアを受電送信側の無線通信ユニット20Aで受信することでファームウェアを更新することもできる。また、ここにいう所定の変動パターンとは、送電受信装置30側からのワイヤレス電力伝送が所定の変動パターンで断続(送電電力レベルが大小に変動する場合を含む)するように実行される場合に、それに対応して生じる受電電圧の変動パターンであり、ワイヤレス電力伝送が所定変動パターンでなされたことを示すものである。変動パターンには、一定の時間にわたってワイヤレス電力伝送がされていない状態から、ワイヤレス電力伝送を開始したことに対応して、受電電圧が低い電圧から高い電圧へと変動するよう場合も含まれ得る。
【0032】
送電受信側の無線通信ユニット20Bは、例えば送電受信装置30に組み込まれており、BLEアンテナ25を介してBLE受信が可能な無線送信機としての構成を有するとともに、WPT送電部28における不図示のWPT送電用アンテナを介してワイヤレス電力伝送(電力波送信)が可能になっている。
【0033】
送電受信装置30は、ビーコンデバイス10から受信したセンサ情報を基に、ビーコンデバイス10が装置された設備の状態を監視して、上位の監視システムにその監視情報を提供するホスト端末として機能するとともに、送電受信側の無線通信ユニット20Bにその送電電力の電源を供給する機能を有している。
【0034】
また、受電送信側MCU22は、その内部メモリ(ROM)に予め記憶格納された所定の情報出力制御プログラムを実行することで、所定の待機期間(例えば、1日)に対応する一定時間ごとに、センサ情報記憶部22dに記憶させたセンサ11の出力値(例えば、センサ11が温度センサである場合は検知された温度データに基づく信号)を基に所定データ形式のセンサ情報を生成して、BLEアンテナ21から送信出力させる機能を有している。
【0035】
受電送信側MCU22は、さらに、内部メモリに予め記憶させたビーコンデバイス10の識別情報となるアドレス情報および所定の送信条件等を基に、ビーコンデバイス10の識別情報(アドバタイザアドレス)とセンサ11の出力信号に基づく所定データ形式のセンサ情報を含む所定のアドバタイズデータとを含むアドバタイズパケットを生成し、例えばアドバタイズチャネルを用いる周波数ホッピング方式で、受電送信側の無線通信ユニット20AのBLEアンテナ21から送信させる通信制御機能を有している。
【0036】
なお、センサ11の出力信号に基づく所定データ形式のセンサ情報を生成する機能は、必ずしも単体の受電送信側MCU22において実行される必要はなく、受電送信側MCU22と接続される別のMCUにおいて実行される態様であってもよい。すなわち、受電送信側MCU22に相当する機能部分を、必要な複数のMCUによって構成してもよい。この場合、別のMCUによって生成されたアドバタイズデータは、例えばシリアル通信インターフェースを介して、別のMCUから受電送信側MCU22へ提供される。
【0037】
WPT受電部23は、受電用アンテナに接続する整流部を有しており、送電受信側の無線通信ユニット20Bから放射され受電用のアンテナで受信された電力波をその整流部に入力させ、直流電力に変換するようになっている。なお、ここにいう受電用のアンテナは、データ送信用のBLEアンテナ21とは別の不図示のアンテナであるが、BLEアンテナ21による空中線の放射機能と受信機能を切り替え得る構成とすることもできる。
【0038】
受電送信側MCU22の一部機能により実現される受電制御部は、受信された電力をビーコンデバイス10内のセンサ11その他の負荷に電力を供給するとともに、バッテリ15に対する充電制御を実行するようになっている。
【0039】
図1に示す送電受信側の無線通信ユニット20Bは、少なくとも指向性または無指向性のBLEアンテナ25と、ROMやRAMといった内部メモリに加えて必要な入出力インターフェース回路を一体化したマイクロプロセッサベースのコントローラICである送電受信側MCU27とを含んでいる。
【0040】
ここで、送電受信側の無線通信ユニット20Bは、送電受信側MCU27で内部メモリに格納された所定の送電制御プログラムを実行することにより、ビーコンデバイス10が比較的近距離にあり、ビーコンデバイス10のいずれかから送信されたRF信号を受信可能であるとき、ビーコンデバイス10から送信されたRF信号をそれぞれのBLEアンテナ25から受信する無線通信モジュールとして機能する。
【0041】
また、WPT送電部28は、送電受信装置30に設けられた電源から得たWPT用の電力を所定の周波数を有するRF信号に変換し、ビーコンデバイス10で受電可能な電磁波(電力波)をWPT送電部28における図示しないWPT送電用のアンテナから送信させることができるようになっている。上述の所定の周波数は送電距離などに応じて選択される。送電受信装置30は、例えば商用交流電源から直流電力(図1中のPower)を生成する電力変換回路等を有している。
【0042】
加えて、送電受信側MCU27は、ビーコンデバイス10へのワイヤレス電力伝送を所定の変動パターン、例えば所定の断続パターン(ON/OFFパターン;詳細は後述する)で変化させる送電受信側の制御部としての機能を有している。なお、ビーコンデバイス10は、受電送信側MCU22が、所定の判定処理を実行することで、WPT受電部23で受電される電力が所定の変動パターンであるか否かを判定し、その判定結果に応じて、所定の期間、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に、無線通信ユニット20Bから受信したコマンドに応じて、前述の受電送信側の制御部としてのセンサ情報出力に係る所定の動作を実行するようになっている。
【0043】
この場合、送電受信側MCU27がビーコンデバイス10へのワイヤレス電力伝送を所定の変動パターンで変化させることは、受電送信側MCU22に対し、所定の動作を要求する契機となる信号を生成することになる。また、送電受信装置30側から送信された電力波がWPT受電部23で受電されるときに、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受電送信側MCU22が、ワイヤレス電力伝送の変動パターン判定機能を作動させることで、その変動パターンの判定の後に要求される所定の動作を実行することができる。したがって、送電受信装置30側からのワイヤレス電力伝送自体を信号伝達に利用して、任意のタイミングでビーコンデバイス10を情報出力に係る所定の動作が可能な状態に起動することができる。
【0044】
このように、本実施形態のワイヤレス給電通信システム1は、ワイヤレス電力伝送により受電するWPT受電部23(受電回路)およびその受電回路を介して充電可能なバッテリ15(蓄電手段)を有するとともに、予め設定された待機期間の経過ごとに情報出力する受電送信側の無線通信ユニット20Aを内蔵するビーコンデバイス10(情報出力デバイス)と、ホスト端末である送電受信装置30に組み込まれるかまたは通信接続され、ビーコンデバイス10にワイヤレス電力伝送するとともにビーコンデバイス10からのセンサ情報を受信する送電受信側の無線通信ユニット20B(送電受信側デバイス)と、を具備している。
【0045】
そして、送電受信装置30または送電受信側の無線通信ユニット20Bが、ビーコンデバイス10へのワイヤレス電力伝送を所定の変動パターンで変化させる送電受信側MCU27(送電受信側の制御部)を有しており、ビーコンデバイス10に内蔵された受電送信側の無線通信ユニット20Aが、ワイヤレス電力伝送の変動パターンを判定するとともに、その変動パターンの判定結果に応じて、受電送信側の無線通信ユニット20Aが送電受信側の無線通信ユニット20BからのBLE通信を受信可能となるように、所定の期間、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に、無線通信ユニット20BからBLE受信したコマンドに応じて、センサ情報を含む所定データ形式の情報をBLEアンテナ21から送信させる、あるいは、受電送信側の無線通信ユニット20AからのBLE通信に係る各種設定の変更を行うなど、情報送信に係る所定の動作を実行させる受電送信側MCU22(受電送信側の制御部)を有している。
【0046】
なお、送電受信装置30のWPT送電部28は、その送電アンテナの指向特性を無指向性とすることで、ワイヤレス電力伝送が可能な範囲内に存在するビーコンデバイス10と同様の複数のビーコンデバイスへ向けて電力伝送することが可能であり、1つの送電受信装置30によって、複数のビーコンデバイスと通信を行う態様のワイヤレス給電通信システムを構成することもできる。なお、この場合、複数のビーコンデバイスとBLE通信を行い、かつワイヤレス電力伝送するよう、送電受信側の無線通信ユニット20Bを複数有してもよく、また、必要となる電力に応じて、それに相当する送電出力が可能となるよう、複数のWPT送電部28を有していてもよいことはいうまでもない。
【0047】
本実施形態では、通常の動作状態において、受電送信側MCU22は、予め設定されている時刻になるまでの間、あるいは、予め設定された待機期間の間は、少なくとも受電送信側の無線通信ユニット20Aをスリープ状態にするスリープモード制御、あるいは、センサ11を含むビーコンデバイス10全体を低消費電力状態にするスリープモード制御を実行するとともに、予め設定されている時刻になった場合、あるいは、予め設定された待機期間が経過すると、ビーコンデバイス10からセンサ情報を含む所定データ形式のADV(アドバタイズメント)データ通信を行うために、受電送信側の無線通信ユニット20Aまたはビーコンデバイス10全体をスリープ状態から復帰させるようになっている。センサ情報を含むADV(アドバタイズメント)データ通信が完了した後、受電送信側MCU22は、再び、上述のスリープモード制御を実行する。この通常の動作状態においては、WPT受電部23によってワイヤレス電力伝送を受電していなくても、受電していてもよい。受電していない場合は、バッテリ15に蓄えられている電力によって受電送信側MCU22やセンサ11が動作する。なお、受電している場合であっても、ワイヤレス電力伝送によって受電する電力が受電送信側MCU22やセンサ11が動作するための電力に対して不足する場合には、必要に応じて、バッテリ15から電力が供給される。
【0048】
ここにいうスリープモード制御とは、受電送信側MCU22に電源が供給されているが、受電送信側MCU22が例えばクロックを停止させる等することで、極低消費電力に抑えられる待機状態にする制御モード、あるいは、受電送信側MCU22が計時のためのクロック発生程度の低消費電力に抑えられる待機状態にする制御モードである。スリープモード制御中の期間であっても、受電送信側MCU22はWPT受電部23の受電の状態を監視しており、ビーコンデバイス10のWPT受電部23で所定電圧レベルの受電が開始されると、受電送信側MCU22でスリープ状態から復帰させるための割り込み処理等が実行されることで、このスリープモード制御が終了し、スリープ状態から復帰する。これにより、受信側無線通信ユニット20Bからのワイヤレス電力伝送が行われている状態であっても、任意のタイミングで、ワイヤレス電力伝送を一旦停止させ、その後、ワイヤレス電力伝送を再開させることで、そのタイミングで、ビーコンデバイス10をスリープ状態から復帰させることができる。
【0049】
本実施形態では、受電送信側の無線通信制御ユニット20Aは、上述の通常の動作状態にある中で、WPT受電部23での受電の変動の判定を契機として、無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、無線通信ユニット20BからBLE受信したコマンドに応じて、BLEの規格に従うアドバタイズチャネルのPDU(プロトコルデータユニット)を含むBLEパケット形式で、そのアドバタイズチャネルのPDU中に、特定の企業識別情報と共に、センサ11のセンサ情報、ビーコンデバイス10のデバイス情報およびその関連情報を含んだ通信データを組み込んで、ADV(アドバタイズメント)データ通信をBLEアンテナ21からブロードキャストさせる。本実施形態では、この動作は、ペアリングによるコネクション確立を行わない状態で実行される。受電送信側の無線通信制御ユニット20Aは、無線通信ユニット20BからBLE受信したコマンドに応じて、受電送信側の無線通信ユニット20AからのBLE通信に係る各種設定の変更を行うこともできる。
【0050】
一方、受信側無線通信ユニット20Bの送電受信側MCU27は、受電送信側の無線通信制御ユニット20Aからのアドバタイズ通信を受信したときに、そのアドバタイズ通信に含まれるビーコンデバイス10の識別情報に基づいて、接続相手との認証処理が可能な通信接続返答(図3におけるCONNECT要求)を生成し、受電送信側の無線通信制御ユニット20Aとの間でペアリングによるコネクションを確立させることもできる。一例として、ペアリングによるコネクションを確立させない状態で、ビーコンデバイス10の受電送信側MCU22に予め設定されたタイミング以外でのセンサ情報送信や情報出力に係る設定条件の変更を実行させるようにし、また、ペアリングによるコネクションを確立させた場合には、ビーコンデバイス10の受電送信側MCU22に対してのファームウェアの更新を実行させるようにする、等といったように、ペアリングによるコネクション確立を要しない所定の動作と、コネクション確立を要する所定の動作とを定義することができる。なお、ペアリングによるコネクションを確立させた場合において、ビーコンデバイス10の受電送信側MCU22に対して予め設定されたタイミング以外でのセンサ情報送信や情報出力に係る設定条件の変更ができるようにすることもできる。
【0051】
次に、動作について説明する。
【0052】
上述のように構成された本実施形態のワイヤレス給電通信システム1においては、予め設定された待機期間の経過ごとに、受電送信側の無線通信ユニット20Aを内蔵するビーコンデバイス10から、ホスト端末である送電受信装置30側に組み込まれるかまたは通信接続された送電受信側の無線通信ユニット20Bに対して、所定データ形式でセンサ情報が出力される一方、送電受信装置30側からビーコンデバイス10にワイヤレス電力伝送がなされ、ビーコンデバイス10内のバッテリ15がビーコンデバイス10の動作に十分な電力を供給可能な所要の電圧レベルに維持される。
【0053】
また、送電受信側の無線通信ユニット20Bが、ワイヤレス電力伝送を所定の変動パターンで変化させると、ビーコンデバイス10に内蔵された受電送信側の無線通信ユニット20Aが、ワイヤレス電力伝送の変動パターンを判定するとともに、その変動パターンの判定結果に応じて、所定の期間、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に受信したコマンドに応じて、上述したような情報送信等に係る所定の動作を実行させる。
【0054】
判定結果に応じて、受電送信側の無線通信ユニット20Aと送電受信側の無線通信ユニット20Bの間では、図3に示すように、異なる複数の通信が選択的に実行され、ワイヤレス電力伝送と必要な情報通信が実行される。
【0055】
なお、図3中には典型的な3つの通信の概略のシーケンスを例示しており、同図中の左側にビーコンデバイス10に相当するIoT_Device(0)デバイスを、同図中の右側に送電受信装置30で構成される受信器WPT(WPT送電部)を、それらの間に送電受信装置30に組み込まれた送電受信側の無線通信ユニット20Bに相当する受信器BTを示している。
【0056】
図3に示すように、通常のADV(アドバタイズメント)データ通信の場合、受電送信側の無線通信ユニット20Aにおいて受電送信側MCU22がRTC(リアルタイムクロック)タイマで起動され、省電力型の近距離無線通信であるBluetooth_Low_Energy規格に従う近距離無線通信における非接続アドバタイズ通信パケット中にセンサ情報を含む通常のデータ形式で、同報送信される。そして、このとき、送電受信側の無線通信ユニット20Bでは、送電受信側MCU27により、受信したIoTデバイスの識別情報が、予め保存されているビーコンデバイス10の識別情報と一致するか否かが判定され、一致した場合に、受信した通信データに基づいてデバイス側にセンサ情報が監視情報の一部として取得される。そして、受電送信側MCU22が、センサ情報のデータ送信が完了するとビーコンデバイス10をスリープ状態に戻す一方で、WPT受電部23による受電中はバッテリ15の充電を継続させる制御を実行する。
【0057】
このように、本実施形態では、受電送信側の無線通信ユニット20Aおよび送電受信側の無線通信ユニット20Bの間で、ペアリングによるコネクションを確立させる前に、非接続アドバタイズ通信のパケット中にセンサ情報を通信データに組み込んで送信できることになる。したがって、1日に1回の送信といった程度に送信回数が少ないビーコンデバイス10および送電受信装置30の間において、ペアリング後の通信接続状態を維持するために一定時間間隔で各々の通信制御をつかさどるホスト(HOST)側と通信する必要をなくし、省電力化を図ることができる。
【0058】
このような極低消費電力化が可能である一方、ビーコンデバイス10のようなIoTデバイスは、通常時はほぼスリープ状態で、1日に1回しかコマンドをやり取りする機会がなく、急にデータが欲しい場合や、コマンドのやり取りをしたい場合でも、データ送信タイミングの直後にしかコマンド受信することができないことになる。
【0059】
しかし、本実施形態では、送電受信側の無線通信ユニット20Bの送電受信側MCU27が、WPT送電時に、ビーコンデバイス10へのワイヤレス電力伝送を所定の変動パターンで変化させる送電受信側の制御を実行することができるので、必要時にこの機能を発揮させることで、受電送信側MCU22に所定の判定処理を実行させ、その判定結果に応じて、所定の期間、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間にコマンドを受信したタイミングで、センサ情報を含む所定データ形式の情報をBLEアンテナ21から送信させることができる。
【0060】
すなわち、図3の中段に示すように、送電受信装置30側からコマンドを送る場合、まず、受信側無線通信ユニット20Bからのワイヤレス電力伝送を一旦停止させ、その後、ワイヤレス電力伝送を再開させることでビーコンデバイス10をスリープ状態から復帰させた上で、送電受信側の無線通信ユニット20Bから所定変動パターンで断続するようにワイヤレス電力伝送(WPT送電)がなされる。例えば、図3中に示すように所定送電時間Tw1(例えば、0.5秒)だけWPT送電され、所定中断時間Tw2(例えば、0.5秒)だけWPT送電が中断され、所定の再送電待ち時間Tw3の経過後、再度、所定送電時間Tw1だけWPT送電され、所定中断時間Tw2だけWPT送電が中断されるように、送電受信側の無線通信ユニット20BからのWPT送電が断続(変動送信)される。
【0061】
このとき、受電送信側の無線通信ユニット20A側ではWPT受電部23で受電される電力に伴う電圧レベルが所定変動パターンで変動することになる。このとき、変動パターン判定部22bでの判定の結果が所定の変動パターンであると判定され、これに伴って、受電送信側MCU22が、所定時間Tw4の間、ビーコンデバイス10側の受信ウィンドウをオープンさせることで、受電送信側の無線通信ユニット20A側でコマンド受信が可能な状態となる。
【0062】
図3の中段に示すように、この場合のコマンドはADV(アドバタイズメント)通信によるものであり、BLE規格に従うアドバタイズチャネルのプロトコルデータユニット(PDU)を含む所定のアドバタイズメントパケット形式で、アドバタイズチャネルのPDU中に、特定のコマンド、デバイスの情報、通信設定やファームウェアの更新要求などを含むアドバタイズデータが組み込まれて、ペアリング後の同期した通信接続状態となる前段階で、送信可能となる。
【0063】
そして、受電送信側MCU22がアドバタイズデータに組み込まれたコマンドを受信することで、そのコマンドに応じた所定の動作として、例えばセンサ情報のデータ送信の条件(例えば1日に1回送信、数時間に1回送信、数分に1回送信、数秒に1回送信等)を変更した上で、そのコマンドを受信し認識した旨の返答であるACK送信を所定時間(例えば数秒)内に実行する。送電受信側の無線通信ユニット20Bは、コマンドを送信してからの所定時間Tw5以内にビーコンデバイス10からのACK送信を受信したことをもって、当該コマンドに係る処理が正常に完了したものとして、一連のコマンド送信処理を終了する。このとき、通信エラー等により、ビーコンデバイス10において送電受信側の無線通信ユニット20Bから送信されるコマンドを受信することがないまま時間Tw4が経過すると、受電送信側MCU22は、受信ウィンドウを閉じて、スリープ状態に戻る。また、送電受信側の無線通信ユニット20Bは、コマンドを送信した後、ビーコンデバイス10からのACK送信を受信しないまま時間Tw5が経過すると、通信エラー等が生じたものと判断し、一連のコマンド送信の動作をもう一度実行するなどする。
【0064】
この場合も、受電送信側MCU22は、WPT受電部23による受電中はバッテリ15の受電を継続させる制御を実行する。
【0065】
図4は、前述のコマンドの場合を一例として、受電送信側の無線通信ユニット20Aに内蔵された受電送信側MCU22で実行される概略の処理の流れを示している。
【0066】
まず、送電受信装置30側からWPT送電がなされ、WPT受電部23で受電されている状態下で、図4に示す処理が実行されていなければ、所定時間内に受電送信側MCU22が作動し、この処理が開始される。
【0067】
同図において、まず、WPT受電部23で受電され直流出力される電力の電圧が電圧検出部22aで検出され(ステップS11)、その変動パターンの判定周期に相当する所定時間が経過するまで(ステップS12でYESとなるまで)、電圧検出およびその記憶が繰り返される(ステップS11,S12)。
【0068】
そして、所定時間が経過すると(ステップS12でYESの場合)、電圧の変動パターンが、例えば今回検出および記憶された電圧検出データと、予め記憶された電圧変動パターンの電圧値とを比較して、判定される(ステップS13)。
【0069】
次いで、電圧の変動パターンが所定の変動パターンに該当するか否かによって、該当していなければ(ステップS14のNOの場合)、今回の処理を終了する一方、電圧の変動パターンが所定の変動パターンに該当していれば(ステップS14のYESの場合)、次いで、受電送信側の無線通信ユニット20Aが送電受信側の無線通信ユニット20BからのBLE通信を受信可能となるように、所定の期間、受電送信側の無線通信ユニット20Aの受信ウィンドウを開き、当該受信ウィンドウを開いている間に、無線通信ユニット20AがADV(アドバタイズ)コマンドを受信した場合に、受信したADV(アドバタイズ)コマンドが抽出され(ステップS15)、そのコマンドに対応する所定の動作を実行した後(ステップS16)、今回の処理を実行する。
【0070】
図3に戻ると、同図の下段に示すように、OTA(Over_The_Air)の場合、すなわち、省電力型の無線通信のコネクションをペアリングによって上位層まで確立させ、ファームウェアの更新などを実行可能な程度のデータ通信を行う場合となるが、この場合もまず、受信側無線通信ユニット20Bからのワイヤレス電力伝送を一旦停止させ、その後、ワイヤレス電力伝送を再開させることでビーコンデバイス10をスリープ状態から復帰させた上で、上述のコマンドの場合と同様に、送電受信側の無線通信ユニット20Bから所定変動パターンで断続するようにWPT送電がなされる。
【0071】
そして、そのとき、受電送信側の無線通信ユニット20A側ではWPT受電部23で受電される電力が所定変動パターンで変動することになる。このとき、変動パターン判定部22bでの判定の結果が所定の変動パターンであると判定され、これに伴って、受電送信側MCU22がビーコンデバイス10側の受信ウィンドウを、所定時間Tw4の間、オープンさせることで、受電送信側の無線通信ユニット20A側でコマンド受信が可能な状態となる。
【0072】
この図3で下段に示す場合、送電受信装置30側からのコマンドは、例えば、OTAによるファームウェア更新要求であり、ファームウェアを更新するためにペアリングによるコネクション確立を要する場合に該当する。この場合、受電送信側MCU22がそのコマンドを受信し認識した旨の返答であるACK送信を受電送信側の無線通信ユニット20Aにより実行させ、送電受信側の無線通信ユニット20Bからの接続要求を待って、双方間でペアリングによるコネクションを確立する。
【0073】
すなわち、受電送信側MCU22は、BLE通信規則に従った同期処理やパケット送信タイミング、データ通信する周波数チャネル情報等をマスター側となる送電受信側の無線通信ユニット20Bから受け取る等といった、通常のコネクトのやりとりを実施することにより、コネクション確立後のBLE通信であるGATT通信で、OTAによるファームウェアの更新などを所定の動作として実行できるようにすることになる。その所定の動作後は、例えば更新完了のACK送信とともに更新後のバージョン(Version)等のデータを送り、次いで、スリープ状態に戻る制御を実行する。
【0074】
この場合も、受電送信側MCU22は、WPT受電部23による受電中はバッテリ15の受電を継続させる制御を実行する。
【0075】
このように、本実施形態においては、送電受信側MCU27が、ビーコンデバイス10へのWPT送電を所定の変動パターンで変化させることで、その変動パターンに応じて、ビーコンデバイス10に対し、所定の動作を要求する信号伝達が可能となる。また、ビーコンデバイス10は、WPT受電部23で受電する電力にWPT送電の変動パターンに対応する特定の変動パターンが生じると、受電送信側MCU22に変動パターン判定機能を発揮させることで、コマンドの受信など、その変動パターンで要求される所定の動作を判定する。
【0076】
したがって、本実施形態のワイヤレス給電通信システム1は、送電受信装置30側からのワイヤレス電力伝送自体を信号伝達に利用して、任意のタイミングでビーコンデバイス10を起動し、情報出力に係る所定の動作を実行させることができるものとなる。
【0077】
また、本実施形態では、送電受信側MCU27が、WPT送電を所定の変動パターンで断続させるので、その断続パターンでのWPT受電部23での受電時にビーコンデバイス10を容易に受信可能な状態にすることができるものとなる。
【0078】
しかも、本実施形態では、受電側の情報出力デバイスが、予め設定された待機期間の経過ごとにワイヤレス通信により情報発信するビーコンデバイス10で構成されているので、省電力型の近距離無線通信を行うビーコンデバイス10を十分に待機させて、省電力に使用しながらも、必要時に即座に起動させることが可能となる。
【0079】
さらに、本実施形態では、ビーコンデバイス10がIoTセンサを有する構成であるので、極低消費電力であることが要求され、待機期間が長くなるときであっても、必要時にセンサ情報を即時的に出力させることができる。
【0080】
加えて、本実施形態では、ビーコンデバイス10が、所定の省電力型の近距離無線通信におけるアドバタイズ通信パケット中に出力データを含めて情報出力するので、情報出力デバイスから送電受信側デバイスへの出力データがペアリングによる相互通信の確立前の段階で可能となり、待機時間の経過ごとに繰り返される情報出力に要する電力を十分に抑えることができる。
【0081】
また、本発明に係るワイヤレス給電通信方法は、ワイヤレス電力伝送(WPT送電)される電力波を受信し受電するWPT受電部23を介してバッテリ15に充電し蓄電する蓄電ステップと、その蓄電された電力により予め設定された待機期間の経過ごとにビーコンデバイス10から情報出力する情報出力ステップと、ホスト端末に組み込まれるかまたは通信接続される送電受信側の無線通信ユニット20Bによって、ビーコンデバイス10にワイヤレス電力伝送する給電ステップと、ビーコンデバイス10から出力された情報を送電受信装置30に受信させる受信ステップとを含むワイヤレス給電通信方法であって、ホスト端末である送電受信装置30または送電受信側の無線通信ユニット20Bにより、ビーコンデバイス10へのWPT送電を変動させる送電制御ステップと、ビーコンデバイス10により、WPT送電の変動を判定するとともに、その変動の判定結果に応じて情報出力に係る所定の動作を実行させる情報送信制御ステップと、をさらに含んでいる。
【0082】
したがって、本実施形態におけるワイヤレス給電受信方法では、送電受信装置30側からビーコンデバイス10への給電ステップで、ビーコンデバイス10に対して、WPT送電の変動パターンに応じて所定の動作を要求する信号伝達が可能となる。また、ワイヤレス電力伝送が変動したときにビーコンデバイス10を起動させ、かつ、その変動を契機として要求される所定の動作を判定し実行させることができる。したがって、送電受信装置30側からWPT送電する電力波自体を利用して、任意のタイミングでビーコンデバイス10を起動させ、情報出力に係る所定の動作を実行させることができる。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、スリープ状態下であっても、送電受信装置30側からビーコンデバイス10側へのワイヤレス電力伝送を利用して、任意のタイミングでビーコンデバイス10を起動可能としたワイヤレス給電通信システム1を提供することができる。
【0084】
なお、前述の一実施形態においては、近距離無線通信をBLE通信として説明したが、ZigBee(登録商標)その他の省電力型の近距離無線通信方式であってもよい。
【0085】
以上説明したように、本発明は、送電受信側デバイスからのワイヤレス電力伝送自体を利用して、任意のタイミングで送電受信側デバイスから受電側情報出力デバイスを起動可能としたワイヤレス給電通信システムを提供することができる。このような本発明は、情報出力デバイスから予め設定された待機期間の経過ごとに出力される情報を、情報出力デバイスにワイヤレス電力伝送可能な送電受信側デバイスで受信するワイヤレス給電通信システム全般に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 ワイヤレス給電通信システム
10 ビーコンデバイス(受電側情報出力デバイス、IoT_device)
11 センサ(温度センサ、IoTセンサ)
15 バッテリ(蓄電手段)
20A 受電送信側の無線通信ユニット(受電送信側デバイス)
20B 送電受信側の無線通信ユニット(送電受信側デバイス、送電受信器BT)
21 BLEアンテナ(受電側のアンテナ、送信側のアンテナ)
22 MCU(マイクロコントローラユニット)
22a 電圧検出部
22b 変動パターン判定部
22c 測定・送信制御部
22d センサ情報記憶部
23 WPT受電部(受電回路)
24 ダイオード
25 BLEアンテナ(受信側のアンテナ、送電側のアンテナ)
27 送電受信側MCU
30 送電受信装置(送電受信側デバイス、受信器WPT、WPT送電部)
Tw1 所定送電時間
Tw2 所定中断時間
Tw3、Tw4、Tw5 時間
【要約】
【課題】送電側デバイスからのワイヤレス電力伝送自体を利用して、任意のタイミングで受電側情報出力デバイスを起動可能としたワイヤレス給電通信システムを提供する。
【解決手段】WPT受電部23およびこれを介して充電可能なバッテリ15を有するとともに、予め設定された待機期間の経過ごとに情報出力するビーコンデバイス10と、ホスト端末に組み込まれるか通信接続され、デバイス10にワイヤレス電力伝送するとともにデバイス10からの送信情報を受信する送電受信装置30とを備えるワイヤレス給電通信システムであって、送電受信装置30側の無線通信ユニット20Bが、デバイス10側へのワイヤレス電力伝送を変動させる送電受信側MCU27を有しており、デバイス10側の無線通信ユニット20Aが、ワイヤレス電力伝送の変動を判定するとともに、その判定結果に応じて所定の動作を行うように制御する受電送信側MCU22を有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4