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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】多層基板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231108BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20231108BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K1/02 B
H05K3/38 B
H05K3/46 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023531811
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2022024462
(87)【国際公開番号】W WO2023276743
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021106440
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博宣
(72)【発明者】
【氏名】礒野 文哉
(72)【発明者】
【氏名】松田 賢二
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/065172(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/194142(WO,A1)
【文献】特開平5-55746(JP,A)
【文献】特開2011-222664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/00―3/08
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層された構造を有し、かつ、前記複数の絶縁体層の積層方向に並ぶ第1主面及び第2主面を有している積層体と、
前記積層体に設けられている第1金属箔層であって、前記積層方向に見て、第1方向に延びる複数本の筋が前記第1金属箔層の主面に設けられている、第1金属箔層と、
前記積層体に設けられている第2金属箔層であって、前記積層方向に見て、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる複数本の筋が前記第2金属箔層の主面に設けられている、第2金属箔層と、
を備えており、
前記積層体は、前記第1主面が前記第2主面より外周側に位置するように第1折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第1領域と、前記第1主面が前記第2主面より内周側に位置するように第2折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第2領域と、を有しており、
前記第2折れ線は、前記第1折れ線と平行ではなく、
前記第1領域において、前記第1金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記第2領域において、前記第2金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第1方向が前記第1折れ線と形成する角度は、前記第1方向が前記第2折れ線と形成する角度より大きく、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第2方向が前記第2折れ線と形成する角度は、前記第2方向が前記第1折れ線と形成する角度より大きい、
多層基板。
【請求項2】
前記多層基板は、
前記積層体に設けられている第3金属箔層であって、前記積層方向に見て、第3方向に延びる複数本の筋が前記第3金属箔層の主面に設けられている、第3金属箔層を、
更に備えており、
前記第1領域において、前記第3金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第3方向が前記第1折れ線と形成する角度は、前記第3方向が前記第2折れ線と形成する角度より大きい、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記多層基板は、
前記積層体に設けられている第4金属箔層であって、前記積層方向に見て、第4方向に延びる複数本の筋が前記第4金属箔層の主面に設けられている、第4金属箔層を、
更に備えており、
前記第2領域において、前記第4金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第4方向が前記第2折れ線と形成する角度は、前記第4方向が前記第1折れ線と形成する角度より大きい、
請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記第1金属箔層の主面の表面粗さ及び前記第2金属箔層の主面の表面粗さは、前記第3金属箔層の主面の表面粗さより小さい、
請求項3に記載の多層基板。
【請求項5】
前記第1金属箔層の主面の表面粗さ及び前記第2金属箔層の主面の表面粗さは、前記第3金属箔層の主面の表面粗さより大きい、
請求項3に記載の多層基板。
【請求項6】
前記第3金属箔層は、信号が伝送される信号導体層である、
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の多層基板。
【請求項7】
前記第1金属箔層及び前記第2金属箔層は、リファレンス電位に接続されるリファレンス導体層である、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項8】
前記第1領域における前記積層体の前記積層方向の厚み及び/又は前記第2領域における前記積層体の前記積層方向の厚みは、前記第1領域及び前記第2領域を除く領域の少なくとも一部分における前記積層体の前記積層方向の厚みより小さい、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項9】
前記積層体は、前記第2主面が前記第1主面より外周側に位置するように第3折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第3領域を更に有しており、
前記第3領域において、前記第2金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第2方向が前記第3折れ線と形成する角度は、前記第2方向が前記第2折れ線と形成する角度より小さく、
前記第3領域の曲率半径は、前記第1領域の曲率半径より大きい、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項10】
前記積層体は、前記第1主面が前記第2主面より外周側に位置するように第4折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第4領域を更に有しており、
前記第4領域において、前記第1金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第1方向が前記第4折れ線と形成する角度は、前記第1方向が前記第1折れ線と形成する角度より小さく、
前記第4領域の曲率半径は、前記第2領域の曲率半径より大きい、
請求項9に記載の多層基板。
【請求項11】
前記積層体は、前記第2主面が前記第1主面より外周側に位置するように第3折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第3領域を更に有しており、
前記第3領域において、前記第2金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第2方向が前記第3折れ線と形成する角度は、前記第2方向が前記第2折れ線と形成する角度より小さく、
前記第3領域の曲率半径は、前記第2領域の曲率半径より大きい、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項12】
前記積層体は、前記第1主面が前記第2主面より外周側に位置するように第4折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第4領域を更に有しており、
前記第4領域において、前記第1金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第1方向が前記第4折れ線と形成する角度は、前記第1方向が前記第1折れ線と形成する角度より小さく、
前記第4領域の曲率半径は、前記第1領域の曲率半径より大きい、
請求項11に記載の多層基板。
【請求項13】
複数の絶縁体層が積層方向に積層された構造を有する積層体と、
前記積層体に設けられている第1金属箔層であって、前記積層方向に見て、第1方向に延びる複数本の筋が前記第1金属箔層の主面に設けられている、第1金属箔層と、
前記積層体に設けられている第2金属箔層であって、前記積層方向に見て、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる複数本の筋が前記第2金属箔層の主面に設けられている、第2金属箔層と、
を備えており、
前記積層体は、前記積層方向に折れ曲がっている、
多層基板。
【請求項14】
前記積層体は、第1折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第1領域と、第2折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第2領域とを有しており、
前記第2折れ線は、前記第1折れ線と平行ではない、
請求項13に記載の多層基板。
【請求項15】
前記積層体は、前記複数の絶縁体層の積層方向に並ぶ第1主面及び第2主面を有しており、
前記第1領域は、前記第1主面が前記第2主面より外周側に位置するように前記第1折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有しており、
前記第1領域において、前記第1金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第1方向は、前記第1折れ線と交差している、
請求項14に記載の多層基板。
【請求項16】
請求項1ないし請求項5及び請求項13ないし請求項15のいずれかに記載の多層基板を、
備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の絶縁体層が積層された構造を有する多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多層基板に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載のフレキシブルプリント基板が知られている。このフレキシブルプリント基板は、2本の折れ線において折れ曲がっている。2本の折れ線は、異なる方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-5134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のフレキシブルプリント基板は、その内部に導電材を備えている。このようなフレキシブルプリント基板では、フレキシブルプリント基板が折れ曲がった際に、導電材が破損することを抑制することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、金属箔層の破損を抑制できる多層基板及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る多層基板は、
複数の絶縁体層が積層された構造を有し、かつ、前記複数の絶縁体層の積層方向に並ぶ第1主面及び第2主面を有している積層体と、
前記積層体に設けられている第1金属箔層であって、前記積層方向に見て、第1方向に延びる複数本の筋が前記第1金属箔層の主面に設けられている、第1金属箔層と、
前記積層体に設けられている第2金属箔層であって、前記積層方向に見て、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる複数本の筋が前記第2金属箔層の主面に設けられている、第2金属箔層と、
を備えており、
前記積層体は、前記第1主面が前記第2主面より外周側に位置するように第1折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第1領域と、前記第1主面が前記第2主面より内周側に位置するように第2折れ線において前記積層体が折れ曲がる構造を有している第2領域と、を有しており、
前記第2折れ線は、前記第1折れ線と平行ではなく、
前記第1領域において、前記第1金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記第2領域において、前記第2金属箔層は、前記積層体の前記積層方向の中央より外周側に位置しており、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第1方向が前記第1折れ線と形成する角度は、前記第1方向が前記第2折れ線と形成する角度より大きく、
前記積層体が平面に展開された状態において、前記積層方向に見て、前記第2方向が前記第2折れ線と形成する角度は、前記第2方向が前記第1折れ線と形成する角度より大きい。
【0007】
本発明の一形態に係る多層基板は、
複数の絶縁体層が積層方向に積層された構造を有する積層体と、
前記積層体に設けられている第1金属箔層であって、前記積層方向に見て、第1方向に延びる複数本の筋が前記第1金属箔層の主面に設けられている、第1金属箔層と、
前記積層体に設けられている第2金属箔層であって、前記積層方向に見て、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる複数本の筋が前記第2金属箔層の主面に設けられている、
第2金属箔層と、
を備えており、
前記積層体は、前記積層方向に折れ曲がっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る多層基板によれば、金属箔層の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、多層基板10の分解斜視図である。
図2図2は、図1のA-Aにおける断面図である。
図3図3は、信号導体層20及びリファレンス導体層22の上主面の拡大図である。
図4図4は、リファレンス導体層24の下主面の拡大図である。
図5図5は、リファレンス導体層22,24の表面の断面プロファイルである。
図6図6は、積層体12が折り曲げられた状態の多層基板10を備える電子機器100の斜視図である。
図7図7は、積層体12が平面に展開された状態の多層基板10の上面図である。
図8図8は、第1領域A11の断面図である。
図9図9は、第2領域A12の断面図である。
図10図10は、第1領域A11の断面図である。
図11図11は、第2領域A12の断面図である。
図12図12は、多層基板10bの分解斜視図である。
図13図13は、第1領域A11の断面図である。
図14図14は、多層基板10cの上面図である。
図15図15は、第3領域A13の断面図である。
図16図16は、第4領域A14の断面図である。
図17図17は、多層基板10dの上面図である。
図18図18は、多層基板10eの上面図である。
図19図19は、多層基板10eの第1折れ線L1における断面図である。
図20図20は、多層基板10eの第2折れ線L2における断面図である。
図21図21は、多層基板10gの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
[多層基板の構造]
以下に、本発明の実施形態に係る多層基板10の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、多層基板10の分解斜視図である。なお、図1では、複数の層間接続導体v1及び複数の層間接続導体v2の内の代表的な層間接続導体v1,v2にのみ参照符号を付した。図2は、図1のA-Aにおける断面図である。図3は、信号導体層20及びリファレンス導体層22の上主面の拡大図である。図4は、リファレンス導体層24の下主面の拡大図である。図5は、リファレンス導体層22,24の表面の断面プロファイルである。図6は、積層体12が折り曲げられた状態の多層基板10を備える電子機器100の斜視図である。図7は、積層体12が平面に展開された状態の多層基板10の上面図である。図8は、第1領域A11の断面図である。図9は、第2領域A12の断面図である。
【0011】
本明細書において、方向を以下のように定義する。複数の絶縁体層14a~14c,16a,16bが積層される積層方向を上下方向と定義する。左右方向は、上下方向に直交している。左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向と定義する。なお、本実施形態における上下方向、前後方向及び左右方向は、多層基板10の使用時における上下方向、前後方向及び左右方向と一致していなくてもよい。
【0012】
以下では、Xは、多層基板10の部品又は部材である。本明細書において、特に断りのない場合には、Xの各部について以下のように定義する。Xの前部とは、Xの前半分を意味する。Xの後部とは、Xの後半分を意味する。Xの左部とは、Xの左半分を意味する。Xの右部とは、Xの右半分を意味する。Xの上部とは、Xの上半分を意味する。Xの下部とは、Xの下半分を意味する。Xの前端とは、Xの前方向の端を意味する。Xの後端とは、Xの後方向の端を意味する。Xの左端とは、Xの左方向の端を意味する。Xの右端とは、Xの右方向の端を意味する。Xの上端とは、Xの上方向の端を意味する。Xの下端とは、Xの下方向の端を意味する。Xの前端部とは、Xの前端及びその近傍を意味する。Xの後端部とは、Xの後端及びその近傍を意味する。Xの左端部とは、Xの左端及びその近傍を意味する。Xの右端部とは、Xの右端及びその近傍を意味する。Xの上端部とは、Xの上端及びその近傍を意味する。Xの下端部とは、Xの下端及びその近傍を意味する。
【0013】
まず、図1を参照しながら、多層基板10の構造について説明する。多層基板10は、高周波信号を伝送する。多層基板10は、スマートフォン等の電子機器において、2つの回路を電気的に接続するために用いられる。多層基板10は、図1に示すように、積層体12、信号導体層20(第3金属箔層)、リファレンス導体層22(第1金属箔層)、リファレンス導体層24(第2金属箔層)、信号端子26、複数の層間接続導体v1、複数の層間接続導体v2及び層間接続導体v3を備えている。
【0014】
積層体12は、上下方向(複数の絶縁体層の積層方向)に並ぶ上主面(第1主面)及び下主面(第2主面)を有する板形状を有している。積層体12は、第1区間A1ないし第4区間A4を有している。第1区間A1ないし第4区間A4は、この順に並ぶように接続されている。第1区間A1は、左右方向に延びる帯形状を有している。第2区間A2は、第1区間A1の右端部に接続されている。第2区間A2は、第1区間A1の右端部から後方向に延びる帯形状を有している。第3区間A3は、第2区間A2の後端部に接続されている。第3区間A3は、第2区間A2の後端部から右方向に延びる帯形状を有している。第4区間A4は、第3区間A3の右端部に接続されている。第4区間A4は、上下方向に見て、長方形状を有している。第4区間A4の前後方向の幅は、第3区間A3の前後方向の幅より大きい。
【0015】
積層体12は、絶縁体層14a~14c,16a,16b(複数の絶縁体層)が積層方向に積層された構造を有している。本実施形態では、絶縁体層16a,14a~14c,16bは、上から下へとこの順に並んでいる。絶縁体層14a~14cは、上下方向に見て、積層体12と同じ形状を有している。絶縁体層14a~14cの材料は、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、液晶ポリマー、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)等の熱可塑性樹脂である。絶縁体層14a~14cの材料は、ポリイミドであってもよい。
【0016】
リファレンス導体層22(第1金属箔層)は、積層体12に設けられている。リファレンス導体層22は、絶縁体層14aの上主面に位置している。リファレンス導体層22は、絶縁体層14aの上主面に固定されている。これにより、図2に示すように、リファレンス導体層22と積層体12の上主面(第1主面)との距離D1は、リファレンス導体層22(第1金属箔層)と下主面(第2主面)との距離D2より短い。リファレンス導体層22は、絶縁体層14aの上主面の略全面を覆っている。ただし、リファレンス導体層22は、後述する信号端子26とは接していない。
【0017】
リファレンス導体層24(第2金属箔層)は、積層体12に設けられている。リファレンス導体層24は、絶縁体層14cの下主面に位置している。リファレンス導体層24は、絶縁体層14cの下主面に固定されている。これにより、図2に示すように、リファレンス導体層24と積層体12の下主面(第2主面)との距離D4は、リファレンス導体層24(第2金属箔層)と上主面(第1主面)との距離D3より短い。リファレンス導体層24は、絶縁体層14cの下主面の略全面を覆っている。以上のようなリファレンス導体層22,24,は、リファレンス電位に接続される。リファレンス電位は、例えば、グランド電位である。
【0018】
信号導体層20(第3金属箔層)は、積層体12に設けられている。信号導体層20は、絶縁体層14bの上主面に位置している。信号導体層20は、絶縁体層14bの上主面に固定されている。これにより、図2に示すように、信号導体層20(第3金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D5は、信号導体層20(第3金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D6より短い。信号導体層20は、上下方向に見て、積層体12に沿って延びる線形状を有している。信号導体層20は、第1区間A1の前後方向の中央及び第3区間A3の前後方向の中央において左右方向に延びている。信号導体層20は、第2区間A2の左右方向の中央において前後方向に延びている。信号導体層20の右端部は、第4区間A4の前後方向の中央及び左右方向の中央に位置している。
【0019】
以上のような信号導体層20は、上下方向に見て、リファレンス導体層22,24と重なっている。その結果、信号導体層20及びリファレンス導体層22,24は、ストリップライン構造を形成している。以上のような信号導体層20には、高周波信号が伝送される。
【0020】
信号端子26は、積層体12に設けられている。信号端子26は、図1に示すように、絶縁体層14aの上主面に位置している。信号端子26は、絶縁体層14aの上主面に固定されている。信号端子26は、上下方向に見て、長方形状を有している。信号端子26は、上下方向に見て、信号導体層20の右端部と重なっている。
【0021】
信号導体層20、リファレンス導体層22,24及び信号端子26は、例えば、絶縁体層14b,14a,14cの上主面又は下主面に設けられた金属箔にエッチングが施されることにより形成されている。金属箔は、例えば、銅箔である。このような金属箔は、ドラムに金属を析出させることにより作製される。一方向に延びる筋状の凹凸がドラムの表面に存在すると、筋状の凹凸がドラム上に形成された金属箔に転写される。多層基板10では、筋状の凹凸(以下、筋と呼ぶ)が延びる方向を特定している。言い換えると、多層基板10の金属箔の表面には、一方向に延びる凹凸が設けられている。本明細書における筋とは、一方向に延びる線状の窪みである。筋の幅は、筋の長さより十分に小さい。筋の長さとは、一方向における筋のサイズである。筋の幅とは、一方向に直交する方向における筋のサイズである。十分に小さいとは、例えば、筋の幅が筋の長さの1/10以下である。このような筋は、例えば、特開2019-143247号公報に記載されている。
【0022】
図3に示すように、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1に延びる複数本の筋がリファレンス導体層22(第1金属箔層)の上主面及び信号端子26の上主面に設けられている。本実施形態では、第1方向DIR1は、左右方向である。複数本の筋は、リファレンス導体層22(第1金属箔層)の上主面の全体及び信号端子26の上主面の全体に設けられている。図4に示すように、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1とは異なる第2方向DIR2に延びる複数本の筋がリファレンス導体層24(第2金属箔層)の下主面に設けられている。本実施形態では、第2方向DIR2は、前後方向である。複数本の筋は、リファレンス導体層24(第2金属箔層)の下主面の全体に設けられている。図3に示すように、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3に延びる複数本の筋が信号導体層20(第3金属箔層)の上主面に設けられている。本実施形態では、第3方向DIR3は、左右方向である。複数本の筋は、信号導体層20(第3金属箔層)の上主面の全体に設けられている。
【0023】
本明細書では、リファレンス導体層22,24に設けられた複数本の筋を以下の方法により確認できる。リファレンス導体層22,24をレーザー顕微鏡により20倍の倍率で観察する。このとき、複数本の筋は、以下のサイズを有する。
【0024】
筋の幅:5μm
筋の深さ:1μm~2μm
筋の長さ:5μm~60μm
隣り合う筋同士の間隔:ランダム
また、リファレンス導体層22,24の表面の断面プロファイルは、図5に示すような構造を取る。リファレンス導体層22,24の表面は、基準高さに対して±1μmの範囲で凹凸を有している。
【0025】
層間接続導体v3は、図1に示すように、信号導体層20と信号端子26とを電気的に接続している。層間接続導体v3は、絶縁体層14aを上下方向に貫通している。層間接続導体v3の上端は、信号端子26に接している。層間接続導体v3の下端は、信号導体層20に接している。
【0026】
複数の層間接続導体v1及び複数の層間接続導体v2は、リファレンス導体層22とリファレンス導体層24とを電気的に接続している。複数の層間接続導体v1及び複数の層間接続導体v2は、絶縁体層14a~14cを上下方向に貫通している。複数の層間接続導体v1の上端及び複数の層間接続導体v2の上端は、リファレンス導体層22に接している。複数の層間接続導体v1の下端及び複数の層間接続導体v2の下端は、リファレンス導体層24に接している。
【0027】
複数の層間接続導体v1は、信号導体層20に沿って等間隔に並んでいる。複数の層間接続導体v1は、第1区間A1及び第3区間A3において、信号導体層20の前に位置している。複数の層間接続導体v1は、第2区間A2において、信号導体層20の右に位置している。
【0028】
複数の層間接続導体v2は、信号導体層20に沿って等間隔に並んでいる。複数の層間接続導体v2は、第1区間A1及び第3区間A3において、信号導体層20の後に位置している。複数の層間接続導体v2は、第2区間A2において、信号導体層20の左に位置している。
【0029】
複数の層間接続導体v1、複数の層間接続導体v2及び層間接続導体v3は、絶縁体層14a~14cに設けられた貫通孔に導電性ペーストが充填され、導電性ペーストが加熱により固化することにより形成される。
【0030】
絶縁体層16aは、絶縁体層14aの上に積層されている。絶縁体層16aは、リファレンス導体層22を覆うことにより、リファレンス導体層22を保護している。絶縁体層16aの上主面は、積層体12の上主面である。ただし、絶縁体層16aの第4区間A4には、開口ha~hcが設けられている。開口hb,ha,hcは、前から後へとこの順に並んでいる。信号端子26は、開口haを介して積層体12から外部に露出している。リファレンス導体層22の一部は、開口hb,hcを介して積層体12から外部に露出している。信号端子26は、図示しない回路基板の信号端子と半田により接続される。リファレンス導体層22の一部は、図示しない回路基板のリファレンス端子と半田により接続される。
【0031】
絶縁体層16bは、絶縁体層14cの下に積層されている。絶縁体層16bは、リファレンス導体層24を覆うことにより、リファレンス導体層24を保護している。絶縁体層16bの下主面は、積層体12の下主面である。
【0032】
絶縁体層16a,16bの材料は、絶縁体層14a~14cの材料とは異なる。絶縁体層16a,16bは、絶縁性を有するペーストが印刷されることにより形成されてもよいし、絶縁性を有するシートが貼り付けられることにより形成されてもよい。
【0033】
以上のような多層基板10は、図6に示すように、複数個所において折り曲げて用いられる。より詳細には、積層体12は、図7に示すように、第1領域A11及び第2領域A12を有している。第1領域A11は、図8に示すように、積層体12の上主面(第1主面)が積層体12の下主面(第2主面)より外周側に位置するように第1折れ線L1において積層体12が折れ曲がる構造を有している。第1折れ線L1は、前後方向に延びている。従って、第1折れ線L1は、多層基板10が展開された状態において、第1区間A1が延びる左右方向と直交している。また、本明細書において、積層体12が折れ曲がるとは、積層体12に外力が加わって変形することを意味する。変形は、塑性変形であってもよいし、弾性変形であってもよいし、塑性変形及び弾性変形であってもよい。
【0034】
第2領域A12は、図9に示すように、積層体12の上主面(第1主面)が積層体12の下主面(第2主面)より内周側に位置するように第2折れ線L2において積層体12が折れ曲がる構造を有している。第2折れ線L2は、図7に示すように、第1折れ線L1と平行ではない。本実施形態では、第2折れ線L2は、左右方向に延びている。従って、第2折れ線L2は、多層基板10が展開された状態において、第2区間A2が延びる前後方向と直交している。
【0035】
図8及び図9に示すように、第1領域A11及び第2領域A12において、リファレンス導体層22(第1金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D1は、リファレンス導体層22(第1金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D2より短い。これにより、第1領域A11において、リファレンス導体層22(第1金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。図8及び図9に示すように、第1領域A11及び第2領域A12において、リファレンス導体層24と積層体12の下主面(第2主面)との距離D4は、リファレンス導体層24(第2金属箔層)と上主面(第1主面)との距離D3より短い。これにより、第2領域A12において、リファレンス導体層24(第2金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。
【0036】
また、図8及び図9に示すように、第1領域A11及び第2領域A12において、信号導体層20(第3金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D5は、信号導体層20(第3金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D6より短い。これにより、第1領域A11において、信号導体層20(第3金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。第2領域A12において、信号導体層20(第3金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より内周側に位置している。
【0037】
また、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1に延びる複数本の筋がリファレンス導体層22(第1金属箔層)の上主面に設けられている。複数本の筋は、リファレンス導体層22の上主面の全体に設けられている。第1方向DIR1は、左右方向である。第1折れ線L1は、前後方向に延びている。第2折れ線L2は、左右方向に延びている。従って、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1は、第1折れ線L1と交差している。積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2は、第2折れ線L2と交差している。積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11は、90°である。一方、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1が第2折れ線L2と形成する角度θ12は、0°である。以上より、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11は、第1方向DIR1が第2折れ線L2と形成する角度θ12より大きい。リファレンス導体層22の上主面に位置し、かつ、第1折れ線L1に平行な線は、リファレンス導体層22の上主面に設けられている複数本の筋と交差しやすい。一方、リファレンス導体層22の上主面に位置し、かつ、第2折れ線L2に平行な線は、リファレンス導体層22に設けられている複数本の筋と交差しにくい。そこで、表面粗さの測定範囲となる線は、リファレンス導体層22の上主面に設けられている複数本の筋と交差する長さに設定される。これにより、リファレンス導体層22の上主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さは、リファレンス導体層22の上主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さより大きい。表面粗さは、例えば、接触式の触針段差計、非接触のレーザー顕微鏡で測定可能である。
【0038】
表面粗さの測定は、次の手順により行われる。まず、サンプルを準備する。絶縁体層16a,16bを除去して、リファレンス導体層22,24を露出させる。絶縁体層16a,16bの除去は、溶剤により絶縁体層16a,16bを溶かすことによって行われてもよいし、絶縁体層16a,16bを削り取ることによって行われてもよい。
【0039】
サンプルをステージに吸引により固定する。そして、サンプルのリファレンス導体層22,24の表面をレーザー顕微鏡により観察する。リファレンス導体層22,24の異なる30本の観測線における表面粗さを測定する。観測線の長さは、10μm~150μmである。30本の観測線の平均値を算出する。解析ソフトにより、傾き補正を行う。そして、測定面の全体での高さの平均値を0μm(図5参照)に設定する。
【0040】
また、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2に延びる複数本の筋がリファレンス導体層24(第2金属箔層)の下主面に設けられている。複数本の筋は、リファレンス導体層24の下主面の全体に設けられている。第2方向DIR2は、前後方向である。第1折れ線L1は、前後方向に延びている。第2折れ線L2は、左右方向に延びている。従って、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2が第2折れ線L2と形成する角度θ22は、90°である。積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2が第1折れ線L1と形成する角度θ21は、0°である。以上より、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2が第2折れ線L2と形成する角度θ22は、第2方向DIR2が第1折れ線L1と形成する角度θ21より大きい。これにより、リファレンス導体層24の下主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さは、リファレンス導体層24の下主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さより大きい。
【0041】
また、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3に延びる複数本の筋が信号導体層20(第3金属箔層)の上主面に設けられている。複数本の筋は、信号導体層20の上主面の全体に設けられている。第3方向DIR3は、左右方向である。第1折れ線L1は、前後方向に延びている。第2折れ線L2は、左右方向に延びている。従って、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31は、90°である。積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32は、0°である。積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31は、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32より大きい。これにより、信号導体層20の上主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さは、信号導体層20の上主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さより大きい。
【0042】
また、リファレンス導体層22(第1金属箔層)の主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24(第2金属箔層)の主面の表面粗さは、信号導体層20(第3金属箔層)の主面の表面粗さより小さい。より詳細には、リファレンス導体層22の上主面の表面粗さ、リファレンス導体層22の下主面の表面粗さ、リファレンス導体層24の上主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24の下主面の表面粗さは、信号導体層20の上主面の表面粗さ及び信号導体層20の主面の表面粗さより小さい。特に、リファレンス導体層22の上主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24の下主面の表面粗さは、信号導体層20の上主面の表面粗さより小さい。ここでの表面粗さは、所定のサイズを有する正方形内の表面粗さである。
【0043】
以上のような多層基板10は、図6に示すように、電子機器100の一部として用いられる。電子機器100は、多層基板10及び筐体102を備えている。筐体102は、多層基板10を収容している。電子機器100は、スマートフォン等の無線通信端末である。
【0044】
[効果]
多層基板10によれば、リファレンス導体層22,24の破損を抑制できる。より詳細には、リファレンス導体層22の上主面及びリファレンス導体層24の下主面には、一方向に延びる複数の筋が設けられている。リファレンス導体層22,24の折れ線と複数の筋が延びる方向とが形成する角度が小さくなると、リファレンス導体層22,24が破損しやすくなる。特に、リファレンス導体層22,24の内の外周側に位置するリファレンス導体には、大きな引っ張り応力が加わる。そのため、リファレンス導体層22,24の内の外周側に位置するリファレンス導体に設けられている複数の筋が延びる方向と、リファレンス導体層22,24の折れ線とが形成する角度が小さくなると、リファレンス導体層22,24の内の外周側に位置するリファレンス導体がより破損しやすくなる。
【0045】
ここで、多層基板10では、積層体12が積層方向に折れ曲がっている。第1折れ線L1及び第2折れ線L2において積層体12が折れ曲がる。具体的には、第1領域A11では、積層体12の上主面が積層体12の下主面より外周側に位置するように第1折れ線L1において積層体12が折れ曲がっている。第2領域A12では、積層体12の上主面が積層体12の下主面より内周側に位置するように第2折れ線L2において積層体12が折れ曲がっている。第1領域A11において、リファレンス導体層22と積層体12の上主面との距離D1は、リファレンス導体層22と積層体12の下主面との距離D2より短い。第1領域A11において、リファレンス導体層22(第1金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第1領域A11では、リファレンス導体層22に大きな引っ張り応力が加わる。第2領域A12において、リファレンス導体層24と積層体12の下主面との距離D4は、リファレンス導体層24と積層体12の上主面との距離D3より短い。第2領域A12において、リファレンス導体層24(第2金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第2領域A12では、リファレンス導体層24に大きな引っ張り応力が加わる。
【0046】
そこで、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11は、第1方向DIR1が第2折れ線L2と形成する角度θ12より大きい。これにより、第1領域A11において、リファレンス導体層22に大きな引っ張り応力が加わったとしても、リファレンス導体層22の破損が抑制される。同様に、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第2方向DIR2が第2折れ線L2と形成する角度θ22は、第2方向DIR2が第1折れ線L1と形成する角度θ21より大きい。これにより、第2領域A12において、リファレンス導体層24に大きな引っ張り応力が加わったとしても、リファレンス導体層24の破損が抑制される。リファレンス導体層22,24の破損が抑制されると、リファレンス導体層22,24にクラックが発生することが抑制される。その結果、リファレンス導体層22,24によるノイズ抑制効果の低下が抑制される。
【0047】
なお、第1方向DIR1の確認及び第2方向DIR2の確認並びにリファレンス導体層22の上主面の表面粗さの計測及びリファレンス導体層24の下主面の表面粗さの計測は、例えば、絶縁体層16a,16bを溶剤により溶かして除去することにより行われる。
【0048】
また、多層基板10によれば、信号導体層20の破損が抑制される。より詳細には、第1領域A11において、信号導体層20と積層体12の上主面との距離D5は、信号導体層20と積層体12の下主面との距離D6より短い。第1領域A11において、信号導体層20(第3金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第1領域A11では、信号導体層20に大きな引っ張り応力が加わる。特に、信号導体層20は、細い線幅を有しているので、断線しやすい。そこで、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31は、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32より大きい。これにより、第1領域A11において、信号導体層20に大きな引っ張り応力が加わったとしても、細い線幅を有する信号導体層20の破損が効果的に抑制される。
【0049】
また、リファレンス導体層22(第1金属箔層)の主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24(第2金属箔層)の主面の表面粗さは、信号導体層20(第3金属箔層)の主面の表面粗さより小さい。特に、リファレンス導体層22の上主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24の下主面の表面粗さは、信号導体層20の上主面の表面粗さより小さい。これにより、多層基板10が折り曲げられたときに、リファレンス導体層22,24が破損しにくい。
【0050】
また、多層基板10によれば、絶縁体層14a~14cの材料は、熱可塑性樹脂である。そのため、積層体12を塑性変形させることが容易である。
【0051】
(第1変形例)
以下に、第1変形例に係る多層基板10aについて図面を参照しながら説明する。図10は、第1領域A11の断面図である。図11は、第2領域A12の断面図である。
【0052】
多層基板10aは、信号導体層20の位置、及び、信号導体層20の下主面に設けられている複数本の筋が延びる第3方向DIR3において多層基板10と相違する。より詳細には、信号導体層20は、絶縁体層14bの下主面に位置している。信号導体層20は、絶縁体層14bの下主面に固定されている。これにより、第1領域A11及び第2領域A12において、信号導体層20(第3金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D6は、信号導体層20(第3金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D5より短い。第1領域A11において、信号導体層20(第3金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より内周側に位置している。第2領域A12において、信号導体層20(第3金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。
【0053】
また、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3に延びる複数本の筋が信号導体層20(第3金属箔層)の下主面に設けられている。複数本の筋は、信号導体層20の下主面の全体に設けられている。第3方向DIR3は、前後方向である。そして、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32は、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31より大きい。これにより、信号導体層20の下主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さは、信号導体層20の下主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さより大きい。多層基板10aのその他の構造は、多層基板10と同様であるので説明を省略する。多層基板10aは、多層基板10と同じ作用効果を奏することできる。
【0054】
また、多層基板10aによれば、信号導体層20の破損が抑制される。より詳細には、第2領域A12において、信号導体層20と積層体12の下主面との距離D6は、信号導体層20と積層体12の上主面との距離D5より短い。第2領域A12において、信号導体層20は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第2領域A12では、信号導体層20に大きな引っ張り応力が加わる。そこで、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32は、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31より大きい。これにより、信号導体層20に大きな引っ張り応力が加わったとしても、信号導体層20の破損が抑制される。
【0055】
(第2変形例)
以下に、第2変形例に係る多層基板10bについて図面を参照しながら説明する。図12は、多層基板10bの分解斜視図である。図13は、第1領域A11の断面図である。積層体12が平面に展開された状態の多層基板10bの上面図については、図7を援用する。 多層基板10bは、絶縁体層14aの一部分が欠損している点において多層基板10と相違する。より詳細には、第1区間A1の一部分において絶縁体層14a及びリファレンス導体層22が存在しない。そして、第1折れ線L1及び第1領域A11は、第1区間A1において絶縁体層14a及びリファレンス導体層22が存在しない部分に位置している。
【0056】
第1領域A11において、信号導体層20(第1金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D1は、信号導体層20(第1金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D2より短い。第1領域A11において、信号導体層20(第1金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1に延びる複数本の筋が信号導体層20(第1金属箔層)の上主面に設けられている。複数本の筋は、信号導体層20の上主面の全体に設けられている。第1方向DIR1は、左右方向である。そして、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11は、第1方向DIR1が第2折れ線L2と形成する角度θ12より大きい。これにより、信号導体層20の上主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さは、信号導体層20の上主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さより大きい。多層基板10bのその他の構造は、多層基板10と同様であるので説明を省略する
【0057】
また、多層基板10bによれば、信号導体層20の破損が抑制される。より詳細には、第1領域A11において、信号導体層20と積層体12の上主面との距離D1は、信号導体層20と積層体12の下主面との距離D2より短い。第1領域A11において、信号導体層20(第1金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第1領域A11では、信号導体層20に大きな引っ張り応力が加わる。そこで、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11は、第1方向DIR1が第2折れ線L2と形成する角度θ12より大きい。これにより、信号導体層20に大きな引っ張り応力が加わったとしても、信号導体層20の破損が抑制される。
【0058】
また、多層基板10bによれば、第1領域A11における積層体12の上下方向(積層方向)の厚みは、第1領域A11及び第2領域A12を除く領域の少なくとも一部分における積層体12の上下方向(積層方向)の厚みより小さい。従って、積層体12を第1領域A11において折り曲げることが容易となる。
【0059】
なお、多層基板10bにおいて、上下方向(積層方向)に見て、第5方向DIR5に延びる複数本の筋がリファレンス導体層22の上主面に設けられている。複数本の筋は、リファレンス導体層22の上主面の全体に設けられている。第5方向DIR5は、前後方向である。これにより、第2領域A12においてリファレンス導体層22の破損が抑制される。このように、リファレンス導体層22が第1領域A11に設けられていないので、リファレンス導体層22に設けられている複数本の筋が延びる第5方向DIR5は、第2折れ線L2においてリファレンス導体層22に破損が生じることが抑制される方向に設定される。
【0060】
(第3変形例)
以下に、第3変形例に係る多層基板10cについて図面を参照しながら説明する。図14は、多層基板10cの上面図である。図15は、第3領域A13の断面図である。図16は、第4領域A14の断面図である。
【0061】
多層基板10cは、第1折れ線L1、第2折れ線L2、第3折れ線L3及び第4折れ線L4において折れ曲がっている点において多層基板10と相違する。より詳細には、積層体12は、第3領域A13及び第4領域A14を有している。第3領域A13は、積層体12の下主面(第2主面)が積層体12の上主面(第1主面)より外周側に位置するように第3折れ線L3において積層体12が折れ曲がる構造を有している。第3折れ線L3及び第3領域A13は、第1区間A1に位置している。第3折れ線L3は、前後方向に延びている。ただし、第3領域A13の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい。すなわち、第3領域A13は、第1領域A11より緩やかに折れ曲がっている。また、第3領域A13の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい。すなわち、第3領域A13は、第2領域A12より緩やかに折れ曲がっている。
【0062】
第4領域A14は、積層体12の上主面(第1主面)が積層体12の下主面(第2主面)より外周側に位置するように第4折れ線L4において積層体12が折れ曲がる構造を有している。第4折れ線L4及び第4領域A14は、第2区間A2に位置している。第4折れ線L4は、左右方向に延びている。第4領域A14の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい。すなわち、第4領域A14は、第2領域A12より緩やかに折れ曲がっている。第4領域A14の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい。すなわち、第4領域A14は、第1領域A11より緩やかに折れ曲がっている。
【0063】
また、第3領域A13において、リファレンス導体層24(第2金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D4は、リファレンス導体層24(第2金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D3より短い。第3領域A13において、リファレンス導体層24(第2金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。第4領域A14において、リファレンス導体層22(第1金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D1は、リファレンス導体層22(第1金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D2より短い。第4領域A14において、リファレンス導体層22(第1金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。
【0064】
上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1に延びる複数本の筋がリファレンス導体層22(第1金属箔層)の上主面及び信号端子26の上主面に設けられている。複数本の筋は、リファレンス導体層22の上主面の全体及び信号端子26の上主面の全体に設けられている。本実施形態では、第1方向DIR1は、左右方向である。上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2に延びる複数本の筋がリファレンス導体層24(第2金属箔層)の下主面に設けられている。複数本の筋は、リファレンス導体層24の下主面の全体に設けられている。本実施形態では、第2方向DIR2は、前後方向である。従って、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2が第3折れ線L3と形成する角度θ23は、第2方向DIR2が第2折れ線L2と形成する角度θ22より小さい。これにより、リファレンス導体層24の下主面の第3折れ線L3に平行な方向の表面粗さは、リファレンス導体層24の下主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さより小さい。
【0065】
積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1が第4折れ線L4と形成する角度θ14は、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11より小さい。これにより、リファレンス導体層22の上主面の第4折れ線L4に平行な方向の表面粗さは、リファレンス導体層22の上主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さより小さい。多層基板10cのその他の構造は、多層基板10と同様であるので説明を省略する。
【0066】
多層基板10cによれば、リファレンス導体層24の破損を抑制できる。より詳細には、第3領域A13において、リファレンス導体層24(第2金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D4は、リファレンス導体層24(第2金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D3より短い。第3領域A13において、リファレンス導体層24(第2金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第3領域A13では、リファレンス導体層24に大きな引っ張り応力が加わる。そして、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2に延びる複数本の筋がリファレンス導体層24(第2金属箔層)の下主面に設けられている。複数本の筋は、リファレンス導体層24の下主面の全体に設けられている。第2方向DIR2は、前後方向である。第2折れ線L2は、左右方向に延びている。第3折れ線L3は、前後方向に延びている。そのため、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2が第3折れ線L3と形成する角度θ23は、第2方向DIR2が第2折れ線L2と形成する角度θ22より小さい。従って、第3領域A13においてリファレンス導体層24が破損する可能性がある。そこで、多層基板10cでは、第3領域A13の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい。また、第3領域A13の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい。これにより、第3領域A13においてリファレンス導体層24に加わる引っ張り応力が低減される。その結果、多層基板10cによれば、リファレンス導体層24の破損を抑制できる。同様に、多層基板10cでは、第4領域A14の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい。また、第4領域A14の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい。これにより、第4領域A14においてリファレンス導体層22に加わる引っ張り応力が低減される。その結果、多層基板10cによれば、リファレンス導体層22の破損を抑制できる。
【0067】
(第4変形例)
以下に、第4変形例に係る多層基板10dについて図面を参照しながら説明する。図17は、多層基板10dの上面図である。
【0068】
多層基板10dは、第1折れ線L1が延びている方向及び第2折れ線L2が延びている方向において多層基板10と相違する。より詳細には、第1折れ線L1は、前後方向に対して時計回り方向に傾いている。第2折れ線L2は、左右方向に対して反時計回り方向に傾いている。ただし、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第1方向DIR1が第1折れ線L1と形成する角度θ11は、第1方向DIR1が第2折れ線L2と形成する角度θ12より大きい。これにより、リファレンス導体層22の上主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さは、リファレンス導体層22の上主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さより大きい。積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第2方向DIR2が第2折れ線L2と形成する角度θ22は、第2方向DIR2が第1折れ線L1と形成する角度θ21より大きい。これにより、リファレンス導体層24の下主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さは、リファレンス導体層24の下主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さより大きい。多層基板10dのその他の構造は、多層基板10と同様であるので説明を省略する。多層基板10dは、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0069】
(第5変形例)
以下に、第5変形例に係る多層基板10eについて図面を参照しながら説明する。図18は、多層基板10eの上面図である。図19は、多層基板10eの第1折れ線L1における断面図である。図20は、多層基板10eの第2折れ線L2における断面図である。
【0070】
多層基板10eは、信号導体層120及び複数の層間接続導体v11を更に備えている点において多層基板10と相違する。信号導体層120は、積層体12に設けられている。信号導体層120は、絶縁体層14bの上主面に位置している。信号導体層120は、絶縁体層14bの上主面に固定されている。信号導体層120は、信号導体層20と平行である。第1区間A1では、信号導体層120は、信号導体層20の後に位置している。
【0071】
第2区間A2では、信号導体層120は、信号導体層20の左に位置している。第3区間A3では、信号導体層120は、信号導体層20の後に位置している。
【0072】
複数の層間接続導体v11は、リファレンス導体層22とリファレンス導体層24とを電気的に接続している。複数の層間接続導体v11は、絶縁体層14a~14cを上下方向に貫通している。複数の層間接続導体v11の上端は、リファレンス導体層22に接している。複数の層間接続導体v11の下端は、リファレンス導体層24に接している。
【0073】
複数の層間接続導体v11は、信号導体層20,120に沿って等間隔に並んでいる。複数の層間接続導体v11は、上下方向に見て、信号導体層20と信号導体層120との間に位置している。
【0074】
以上のような多層基板10eでは、第1折れ線L1における多層基板10eの前後方向の幅は、第2折れ線L2における多層基板10eの左右方向の幅より大きい。そのため、第1折れ線L1における信号導体層20と層間接続導体v1,v11との距離は、第2折れ線L2における信号導体層20と層間接続導体v1,v11との距離より長くなるように配置可能である。その結果、第1折れ線L1において信号導体層20と層間接続導体v1,v11との間に形成される容量は、第2折れ線L2において信号導体層20と層間接続導体v1,v11との間に形成される容量より小さくなる。そこで、第1折れ線L1における信号導体層20,120の前後方向の幅は、第2折れ線L2における信号導体層20,120の左右方向の幅より大きい。これにより、信号導体層20に発生する容量の変動が抑制され、信号導体層20に発生する特性インピーダンスの変動が抑制される。同じ理由により、信号導体層120に発生する容量の変動が抑制され、信号導体層120に発生する特性インピーダンスの変動が抑制される。多層基板10eのその他の構造は、多層基板10と同様であるので説明を省略する。多層基板10eは、多層基板10と同じ作用効果を奏する。
【0075】
(第6変形例)
以下に、第6変形例に係る多層基板10fについて図面を参照しながら説明する。多層基板10fの断面図については、図8及び図11を援用する。
【0076】
多層基板10fは、信号導体層20,20aを備えている点において多層基板10と相違する。信号導体層20(第3金属箔層)は、第1区間A1に設けられている。すなわち、信号導体層20(第3金属箔層)は、第1領域A11に設けられている。信号導体層20は、絶縁体層14bの上主面に位置している。
【0077】
信号導体層20a(第4金属箔層)は、積層体12に設けられている。信号導体層20aは、第2区間A2、第3区間A3及び第4区間A4に設けられている。すなわち、信号導体層20aは、第2領域A12に設けられている。信号導体層20aは、絶縁体層14bの下主面に位置している。信号導体層20aは、絶縁体層14bの下主面に固定されている。第2領域A12において、信号導体層20a(第4金属箔層)と積層体12の下主面(第2主面)との距離D6は、信号導体層20a(第4金属箔層)と積層体12の上主面(第1主面)との距離D5より短い。第2領域A12において、信号導体層20a(第4金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。信号導体層20と信号導体層20aとは、第1区間A1と第2区間A2との境界において層間接続導体により接続されている。
【0078】
上下方向(積層方向)に見て、第4方向DIR4に延びる複数本の筋が信号導体層20a(第4金属箔層)の下主面に設けられている。複数本の筋は、信号導体層20aの下主面の全体に設けられている。第4方向DIR4は、前後方向である。これにより、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第4方向DIR4が第2折れ線L2と形成する角度θ42は、第4方向DIR4が第1折れ線L1と形成する角度θ41より大きい。よって、信号導体層20aの下主面の第2折れ線L2に平行な方向の表面粗さは、信号導体層20aの下主面の第1折れ線L1に平行な方向の表面粗さより大きい。多層基板10fのその他の構造は、多層基板10と同様であるので説明を省略する。多層基板10fは、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0079】
また、多層基板10fによれば、信号導体層20aの破損が抑制される。より詳細には、第2領域A12において、信号導体層20aと積層体12の下主面との距離D6は、信号導体層20aと積層体12の上主面との距離D5より短い。第2領域A12において、信号導体層20a(第4金属箔層)は、積層体12の積層方向の中央より外周側に位置している。そのため、第2領域A12では、信号導体層20aに大きな引っ張り応力が加わる。そこで、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向(積層方向)に見て、第4方向DIR4が第2折れ線L2と形成する角度θ42は、第4方向DIR4が第1折れ線L1と形成する角度θ41より大きい。これにより、信号導体層20aに大きな引っ張り応力が加わったとしても、信号導体層20aの破損が抑制される。
【0080】
(第7変形例)
以下に、第7変形例に係る多層基板10gについて図面を参照しながら説明する。図21は、多層基板10gの上面図である。
【0081】
多層基板10gは、第4折れ線L4の位置において多層基板10cと相違する。より詳細には、第4折れ線L4は、第3区間A3に位置している。多層基板10gのその他の構造は、多層基板10cと同じであるので説明を省略する。多層基板10gは、多層基板10cと同じ作用効果を奏することができる。
【0082】
(その他の実施形態)
本発明に係る多層基板は、多層基板10,10a~10gに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。なお、多層基板10,10a~10gの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0083】
なお、多層基板10,10a~10gにおいて、信号導体層20,20a,120は、必須の構成要件ではない。
【0084】
なお、多層基板10bにおいて、第2領域A12における積層体12の積層方向の厚みは、第1領域A11及び第2領域A12を除く領域の少なくとも一部分における積層体12の積層方向の厚みより小さくてもよい。また、第1領域A11における積層体12の積層方向の厚み及び第2領域A12における積層体12の積層方向の厚みは、第1領域A11及び第2領域A12を除く領域の少なくとも一部分における積層体12の積層方向の厚みより小さくてもよい。
【0085】
なお、多層基板10,10a~10gは、上下方向に見て、帯形状を有していなくてもよい。多層基板10,10a~10gは、例えば、上下方向に見て、長方形状を有していてもよい。
【0086】
なお、複数本の筋は、リファレンス導体層22の下主面に設けられていてもよい。複数本の筋は、リファレンス導体層24の上主面に設けられていてもよい。
【0087】
なお、多層基板10,10a~10gにおいて、絶縁体層16a,16bは、必須の構成要件ではない。絶縁体層14aの材料と同じ材料の絶縁体層が絶縁体層14aの上に積層されてもよい。
【0088】
なお、多層基板10において、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31は、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32以下であってもよい。
【0089】
なお、多層基板10aにおいて、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第3方向DIR3が第2折れ線L2と形成する角度θ32は、第3方向DIR3が第1折れ線L1と形成する角度θ31以下であってもよい。
【0090】
なお、多層基板10fにおいて、積層体12が平面に展開された状態において、上下方向に見て、第4方向DIR4が第2折れ線L2と形成する角度θ42は、第4方向DIR4が第1折れ線L1と形成する角度θ41以下であってもよい。
【0091】
なお、多層基板10,10a~10gの信号導体層20,20a,120は、電源電圧が印加される電源導体層やリファレンス電位が接続されるリファレンス導体層等であってもよい。
【0092】
なお、多層基板10,10a~10gのリファレンス導体層22,24は、電源電圧が印加される電源導体層や高周波信号が伝送される信号導体層等であってもよい。
【0093】
なお、信号導体層20,20a,120及びリファレンス導体層22,24の形成には、金属が圧延されることにより形成された金属箔が用いられてもよい。圧延により形成された金属箔にも、複数本の筋が形成されている。圧延により形成された金属箔に形成される筋については、例えば、特開2010-227971号公報に記載されている。
【0094】
なお、絶縁体層14a~14cの材料は、熱可塑性樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0095】
なお、層間接続導体v1~v3,v11は、絶縁体層14a~14cの形成された貫通孔の内周面にメッキにより導体が形成された構造を有するスルーホール導体であってもよい。
【0096】
なお、多層基板10bにおいて、上下方向(積層方向)に見て、第5方向DIR5に延びる複数本の筋がリファレンス導体層22の主面に設けられている。第5方向DIR5は、前後方向以外の方向であってもよい。第5方向DIR5は、例えば、左右方向であってもよい。
【0097】
なお、本明細書において、角度は、2本の線が交差して形成される鈍角及び鋭角の内の鋭角を指す。
【0098】
なお、多層基板10c,10gにおいて、「第3領域A13の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい」ことと、「第3領域A13の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい」ことと、「第4領域A14の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい」ことと、「第4領域A14の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい」こととの少なくとも一つが満たされていればよい。ただし、「第3領域A13の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい」ことと、「第4領域A14の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい」こととが満たされていることが好ましい。また、「第3領域A13の曲率半径は、第2領域A12の曲率半径より大きい」ことと、「第4領域A14の曲率半径は、第1領域A11の曲率半径より大きい」こととが満たされていることが好ましい。
【0099】
なお、多層基板10において、リファレンス導体層22(第1金属箔層)の主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24(第2金属箔層)の主面の表面粗さは、信号導体層20(第3金属箔層)の主面の表面粗さより大きくてもよい。より詳細には、リファレンス導体層22の上主面の表面粗さ、リファレンス導体層22の下主面の表面粗さ、リファレンス導体層24の上主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24の下主面の表面粗さは、信号導体層20の上主面の表面粗さ及び信号導体層20の主面の表面粗さより大きい。特に、リファレンス導体層22の下主面は、絶縁体層14aに接しており、リファレンス導体層24の上主面は、絶縁体層14cに接している。従って、リファレンス導体層22の下主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24の上主面の表面粗さは、信号導体層20の上主面の表面粗さ及び信号導体層20の主面の表面粗さより大きい。これにより、リファレンス導体層22が絶縁体層14aから剥離しにくくなる。同様に、リファレンス導体層24が絶縁体層14cから剥離しにくくなる。ただし、リファレンス導体層22の上主面は、絶縁体層に接しており、リファレンス導体層24の下主面は、絶縁体層に接している場合がある。この場合、リファレンス導体層22の上主面の表面粗さ及びリファレンス導体層24の下主面の表面粗さは、信号導体層20の上主面の表面粗さ及び信号導体層20の主面の表面粗さより大きくてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10,10a~10g:多層基板
12:積層体
14a~14c,16a,16b:絶縁体層
20,20a,120:信号導体層
22,24:リファレンス導体層
26:信号端子
100:電子機器
102:筐体
A1:第1区間
A2:第2区間
A3:第3区間
A4:第4区間
A11:第1領域
A12:第2領域
A13:第3領域
A14:第4領域
L1:第1折れ線
L2:第2折れ線
L3:第3折れ線
L4:第4折れ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
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図19
図20
図21