(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】断熱板用設備器具固定具
(51)【国際特許分類】
E04G 9/10 20060101AFI20231108BHJP
E04B 2/86 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
E04G9/10 102A
E04B2/86 601J
E04G9/10 103B
(21)【出願番号】P 2020072570
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 光秀
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020617(JP,A)
【文献】実開昭50-086026(JP,U)
【文献】特開2000-328673(JP,A)
【文献】特開2007-162838(JP,A)
【文献】実開昭59-142341(JP,U)
【文献】実開昭57-082502(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
E04B 1/38-1/61
E04B 2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂製の断熱板に設備器具や部材を固定するための固定具であって、基板と、該基板の片側に設けた固定部と該固定部に並設するアンカー部とを具備し、
前記固定部は前記基板から突設する棒状体であり、前記アンカー部は、前記基板に設けた透孔に連通し、底部を有する中空部と、該中空部を囲む複数のスリットにより分割された外縁部からなるアンカー筒部と、前記中空部に挿入するアンカー軸とからなり、
前記設備器具や部材に設けた固定用釘穴に前記固定部を挿通するようにアンカー部と共に前記断熱板に差し込んで仮止めした状態で、前記アンカー軸を前記基板の透孔から前記アンカー部の中空部に向かって挿入し、前記底部を押し拡げることで前記外縁部が下拡がりのテーパー状に開拡することを特徴とする断熱板用器具固定具。
【請求項3】
前記アンカー部のアンカー軸が前記基板に一体的に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱板用器具固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡合成樹脂製の断熱板を天井スラブや外壁の内側に敷設する構造のコンクリート建築物において、コンクリートに埋設する設備器具や部材、例えば、コンクリートボックス、電線や配管用固定具、コンクリート開口用スリーブなどであり、これらを前記断熱板に固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートに埋設する設備器具や部材を断熱板に固定する方法として、断熱板を支えるコンクリート型枠がある場合には、長尺の釘を用いて前記断熱板を介してコンクリート型枠に釘止め固定を行うが、前記断熱板をコンクリート型枠と兼用する場合、すなわち、コンクリート型枠を使用しない場合には釘止め固定することができないので、設備器具や部材に平面上の座面があれば粘着テープ等で断熱板に貼着して固定をしていた。
長尺の釘を使用する場合、コンクリート型枠に固定されるので、コンクリート側圧等の外力に抵抗する所定の固定力は維持できるものの、釘が断熱板に残れば熱橋となり、断熱性能が低下してしまうことや、脱型後の釘の後処理に手間がかかるといった問題点があり、また、粘着テープ等で断熱板に貼着する場合には、貼着前に断熱板表面の油汚れや雨水等の水気、微細なごみをきれいに取り除く必要があり、貼付力の強弱により固定力の維持に影響受けるので、確実性に乏しいなどの問題点があった。
【0003】
更に、公知の文献において、特許文献1には、貫通孔形成スリーブを専用のスリーブ固定金具で、断熱板に固定する方法が提案され、その形態は断熱板に喰い込んでアンカーとなる薄板状の突刺部及び返し部分となる喰込部からなるが、固定力に不安があり、また、中空筒状のスリーブに使用用途が限定されているため、スリーブ以外の設備器具や部材を固定するなどの汎用性には乏しいなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、その目的は、発泡合成樹脂製の断熱板に、設備器具や部材を、それらに設けた釘穴を利用して、コンクリート打設圧にも耐えうる固定力により、安定して固定できる固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その手段として、本発明の請求項1は、発泡合成樹脂製の断熱板に設備器具や部材を固定するための固定具であって、基板と、該基板の片側に設けた固定部と該固定部に並設するアンカー部とを具備し、
前記固定部は前記基板から突設する棒状体であり、前記アンカー部は、前記基板に設けた透孔に連通し、底部を有する中空部と、該中空部を囲む複数のスリットにより分割された外縁部からなるアンカー筒部と、前記中空部に挿入するアンカー軸とからなり、
前記設備器具や部材に設けた固定用釘穴に前記固定部を挿通するようにアンカー部と共に前記断熱板に差し込んで仮止めした状態で、前記アンカー軸を前記基板の透孔から前記アンカー部の中空部に向かって挿入し、前記底部を押し拡げることで前記外縁部が下拡がりのテーパー状に開拡することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2は、請求項1において、前記アンカー部を複数個設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3は、請求項1又は2において、前記アンカー部のアンカー軸が前記基板に一体的に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、基板と、該基板の片側に設けた固定部と該固定部に並設するアンカー部とを具備し、前記固定部は前記基板から突設する棒状体としたことで、設備器具や部材の固定用釘穴に挿通して断熱板に差し込み、前記基板により前記固定用釘穴周辺を押さえて固定できるので、多種の設備器具や部材の固定に使用することができ、使用用途の範囲が広がる。
前記アンカー部は、前記基板に設ける透孔に連通し、底部を有する中空部と、該中空部を囲む複数のスリットにより分割された外縁部からなるアンカー筒部と、前記中空部に挿入するアンカー軸とからなり、前記設備器具や部材に設けてある固定用釘穴に前記固定部が挿通するようにアンカー筒と共に前記断熱板に差し込んで仮止めした状態で、前記アンカー軸を前記基板の透孔から前記アンカー筒の中空部に向かって挿入し、前記底部を押し拡げることで前記外縁部が下拡がりのテーパー状に開拡することにより、前記外縁部が断熱板にしっかりと喰い込み、また、アンカー軸を挿入して前記外縁部を開拡しているので、アンカー部に引抜き力が作用した場合にも前記外縁部の閉塞方向への移動を抑制するので安定した固定力を得ることができる。
【0010】
本発明の請求項2によれば、前記アンカー部を複数個設けたことにより、固定具一ケ当たりの固定力を高めることができる。
【0011】
本発明の請求項3によれば、前記アンカー部のアンカー軸が前記基板に一体的に設けられたことにより、別体の場合での個々を取り出す作業手間が解消され、アンカー軸の紛失等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明の実施形態1の別形態を示す斜視図である。
【
図4】(A)は断熱板上のコンクリートボックスに固定具を挿入する状態、(B)は固定具にアンカー軸を挿入する状態、(C)はコンクリートボックスが断熱板に固定された状態、をそれぞれ示す図である。
【
図9】(A)は断熱板上の、スリーブ固定金具を取着したスリーブに、固定具を挿入する状態、(B)は固定具にアンカー軸を挿入する状態、(C)はス リーブが断熱板に固定された状態、をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を
図1~
図5にしたがって説明する。
図1及び
図2は実施形態1であり、固定具1は、合成樹脂を射出成型により一体的に形成したものであり、10は平板状の基板であり、基板10の下面側には先端を鋭角状に形成した円柱棒状体の固定部20と、該固定部20と同方向に突出するアンカー部30を並設する。
アンカー部30は、アンカー筒31とアンカー軸40とから構成される。
アンカー筒31は基板10に設けた透孔11に連通する中空部32と中空部32の先端の底部33を形成した円筒状で且つ先端を鋭角状に形成し、中空部32を囲む外縁部34及び、底部33はアンカー部30の延伸方向に沿う複数のスリット35により分割をする。
【0014】
アンカー軸40は円柱棒状の軸41と該円柱棒状の胴径よりやや大径の頭部42から構成される。
軸41の外径は基板10の透孔11の内径よりやや小径とし、透孔11からアンカー部30の中空部32に挿入可能であると共に、中空部32の先端に形成した底部33を押し拡げることで、外縁部34が下拡がりのテーパー状に開拡するものとする。
アンカー軸40も固定具と同様に合成樹脂から構成されることが望ましいが、材質を限定するものではない。
【0015】
図3は、実施形態1の基板10の幅長さを短くした別形態であり、断熱板に固定する被固定具が軽量の場合や固定片が小さい場合等で、基板10で押さえる必要がない場合などに使用することができる。
【0016】
続いて、実施形態1の使用例について説明する。
図4及び
図5は、コンクリートボックスBを断熱板Aに固定する場合であり、1は固定具(実施形態1)であり、Bは設備器具の一例としての、電気配線用のコンクリートボックスであり、箱型に形成され、釘穴を備えた固定片を具備しており、例えば薄鋼板や合成樹脂によって形成される。
Aは断熱板であり、合成樹脂を発泡させ、板状に形成したものである。
【0017】
コンクリートボックスBの固定片Cに設けられた釘穴Dに、固定具1の固定部20が挿通するようにアンカー筒31と共に断熱板Aに差し込んで、固定片Cを基板10により押さえた状態で仮固定する。
次に、アンカー軸40を、基板10の透孔11から、アンカー部30の中空部32に向かって挿入し、底部33を押し広げることで、外縁部34が下拡がりのテーパー状に開拡し、外縁部34が断熱板Aに喰い込むことで、断熱板Aと密着係合し、コンクリート打設時の振動や衝撃にも耐えることができる。
また、固定具1はコンクリートに埋設されるため、脱型後に除去する必要もない。
【0018】
設備器具や部材が長大な物となる場合には、固定具1を複数個使用することで、固定力を上げることで対応できる。(図示省略)
【0019】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2を
図6~10にしたがって説明する。
実施形態2では実施形態1と異なる部分のみ説明し、共通部分の説明を省略する。
図6は実施形態2であり、実施形態1で記載したアンカー部130、130を固定部120の両側2箇所に設けたものであり、固定力を倍増すると共に、固定部120、すなわち、設備器具や部材の固定部分から両側に均等な位置のため、安定した強い固定力を得ることができるものである。
また、アンカー部130は、固定力の要望により更に複数個所に増やすことも容易にできる。
【0020】
図7及び
図8は、実施形態2の別形態であり、実施形態1で記載した基板110にアンカー軸140、140を一体的に設けた形態であり、アンカー軸140、140の頭部142,142と基板110の両端を板紐状の連結片143、143で連結したもので、連結片143、143はアンカー軸140、140がアンカー部130、130にそれぞれ支障なく挿入できる長さとし、また、折り曲げ付近を薄板状にした薄板部144、144を設けるなどして折り曲げやすくする。
【0021】
続いて、実施形態2の使用例について説明する。
図9、
図10は、スリーブEを断熱板Aに固定する場合であり、100は固定具(実施形態2の別形態)であり、Eは部材の一例としての貫通孔形成用のスリーブであり、中空筒状に形成され、例えば紙管や合成樹脂製のパイプによって形成される。
Fはスリーブ固定金具であり、前記スリーブEの周縁部を挟持して取着する挟持部Gと釘穴Dを設けた固定片Cとからなる薄鋼鈑製のものである。
【0022】
スリーブEの端部には、スリーブ固定金具Fを複数個取着して所定位置に配置する。
スリーブ固定金具Fの釘穴Dに、固定具100の固定部120が挿通するようにアンカー筒135と共に断熱板Aに差し込んで固定片Cを基板110により押さえた状態で仮固定される。
次に、一方のアンカー軸140を、基板110と連結する連結片143を適宜折り曲げて、基板110の透孔111から、アンカー部130の中空部132に向かって挿入し、底部133を押し広げることで、外縁部134が下拡がりのテーパー状に開拡し、外縁部134が断熱板Aに喰い込む。
他方のアンカー軸140も同様にすることで、断熱板Aと密着係合し、コンクリート打設時の大きな振動や衝撃にも耐えることができる。
【0023】
尚、実施形態1、又は2において、アンカー軸40、140は、頭部42,142を有する円柱棒状に形成され、押し入れる形態としているが、棒状の軸41、141をネジ状に形成し、頭部42、142に電動ドライバーの先端が嵌合するネジやビス形態とすることで電動ドライバーを使用して作業性を効率化することも容易に推考することができる。(図示省略)
【符号の説明】
【0024】
1、100 固定具
10、110 基板
11、111 透孔
20、120 固定部
30、130 アンカー部
31、131 アンカー筒部
32、132 中空部
33、133 底部
34、134 外縁部
35、135 スリット
40、140 アンカー軸
41、141 軸
42、142 頭部
43、143 連結片
144 薄板部
A 断熱板
B コンクリートボックス
C 固定片
D 釘穴
E スリーブ
F スリーブ固定金具
G 挟持部