(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】エアチャック
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20231108BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B25J15/04 C
B25J15/08 C
(21)【出願番号】P 2020040135
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】原 耕二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-277474(JP,A)
【文献】特開平07-290392(JP,A)
【文献】特開平08-025266(JP,A)
【文献】実開平05-080691(JP,U)
【文献】特開平04-289090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0256780(US,A1)
【文献】特開平04-041190(JP,A)
【文献】特開2012-101299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在の一対のフィンガーを有するフィンガー支持部と、前記一対のフィンガーを開閉操作するための操作機構を有するチャック本体部と、該チャック本体部と前記フィンガー支持部とを分離可能に連結する連結機構とを有するエアチャックにおいて、
前記フィンガー支持部は、該フィンガー支持部から互いに平行に延出する2つの連結シャフトを有し、
前記連結機構は、前記2つの連結シャフトに個々に対応させて2組設けられ、各連結機構は、前記連結シャフトに形成された係止面と、前記連結シャフトを挿入するため前記チャック本体部のボディに形成されたシャフト挿入孔と、該シャフト挿入孔内に前記連結シャフトが挿入されると該連結シャフトの前記係止面に弾性的に係止して前記連結シャフトと前記チャック本体部とを連結する係止体と、前記フィンガー支持部を前記チャック本体部から分離するとき前記係止体の前記係止面への係止を手動操作で解除する連結解除部材とを有する、
ことを特徴とするエアチャック。
【請求項2】
前記連結機構は、前記シャフト挿入孔の孔壁に形成された係止体収容孔の内部に、前記連結シャフトの係止面に係止する係止位置と前記係止面から外れる非係止位置とに変位自在に収容された少なくとも1つの前記係止体と、該係止体を前記係止位置に向けて押圧する押圧位置と前記係止体を押圧しない非押圧位置とに変位自在の押圧部材と、該押圧部材を前記押圧位置に向けて付勢する押圧ばねとを有することを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項3】
前記係止体は球体であり、
前記押圧部材は、円筒状をしていて、前記シャフト挿入孔及び前記係止体の周りに該シャフト挿入孔の軸線方向に進退動自在なるように配設され、該押圧部材の内面にテーパー面が形成され、該テーパー面は、前記押圧部材が前記押圧位置に前進すると前記係止体を前記係止位置に向けて押圧し、該押圧部材が前記非押圧位置に後退すると前記係止体の押圧を解除する、
ことを特徴とする請求項2に記載のエアチャック。
【請求項4】
前記連結解除部材は、前記フィンガー支持部を前記チャック本体部から分離するとき、前記押圧部材を前記非押圧位置に変位させることを特徴とする請求項2又は3に記載のエアチャック。
【請求項5】
前記連結解除部材は、円柱状をしていて、前記チャック本体部のボディに外部から回転操作可能なるように取り付けられ、前記押圧部材に当接する当接部を有し、回転操作により前記当接部で前記押圧部材を変位させることを特徴とする請求項4に記載のエアチャック。
【請求項6】
前記チャック本体部は、前記フィンガー支持部を該チャック本体部から分離したとき、非係止位置に変位した前記係止体を該非係止位置に保持する係止体保持機構を有することを特徴とする請求項2に記載のエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉自在の一対のフィンガーを備えたエアチャックに関するものであり、更に詳しくは、前記一対のフィンガーを有するフィンガー支持部と、前記フィンガーを開閉操作するチャック本体部とが、連結機構によって分離可能に連結されたエアチャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉自在の一対のフィンガーを有するフィンガー支持部と、前記一対のフィンガーを開閉操作する操作機構を有するチャック本体部とが、連結機構によって互いに分離可能に連結されたエアチャックは、例えば特許文献1-特許文献4に開示されているように公知である。このようなエアチャックは、ワークの種類に合わせて前記フィンガー支持部を交換することにより、多種類のワークに対応することができるため、効率的で経済性にも勝れる。
【0003】
ところが、前記特許文献1及び特許文献2に開示されたエアチャックは、前記連結機構がエアシリンダにより構成されていて、エアを使用してフィンガー支持部を自動交換するものであるため、構造が複雑であり、エア配管を接続する必要があった。また、メンテナンス時等にエアを供給することができない場合、前記エアシリンダを動作させることができないため、フィンガー支持部をチャック本体部から分離することができないという欠点もある。
【0004】
一方、前記特許文献3に開示されたエアチャックは、前記フィンガー支持部(ワークチャック)の着脱を手動で行うことができるが、エアシリンダを用いた自動連結機構に、手動操作用の部材を補助的に取り付けものであるため、構造がより複雑である。
【0005】
一方、前記特許文献4に開示されたエアチャックは、チャック本体部(ボディ)の外側面に一対のパチン錠を取り付け、このパチン錠を、フィンガー支持部(ガイド部材)の外側面に設けた係合部に係合させることにより、前記チャック本体部とフィンガー支持部とを手動操作で着脱できるように連結している。
しかし、前記エアチャックは、前記パチン錠のフックとガイド部材の係合部との係合がエアチャックの外部で行われるため、前記フックや係合部が周辺部材との接触によって外れたり損傷を受けたりすることがあり、連結状態が非常に不安定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-289090号公報
【文献】特開平7-290392号公報
【文献】特開平4-41190号公報
【文献】実用新案登録第2576918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、フィンガー支持部とチャック本体部とを、連結機構によって簡単且つ安定的に連結することができるようにすると同時に、手動操作式の連結解除部材によって安全且つ容易に分離することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のエアチャックは、開閉自在の一対のフィンガーを有するフィンガー支持部と、前記一対のフィンガーを開閉操作するための操作機構を有するチャック本体部と、該チャック本体部と前記フィンガー支持部とを分離可能に連結する連結機構とを有する。
前記フィンガー支持部は、該フィンガー支持部から互いに平行に延出する2つの連結シャフトを有し、前記連結機構は、前記2つの連結シャフトに個々に対応させて2組設けられ、各連結機構は、前記連結シャフトに形成された係止面と、前記連結シャフトを挿入するため前記チャック本体部のボディに形成されたシャフト挿入孔と、該シャフト挿入孔内に前記連結シャフトが挿入されると該連結シャフトの前記係止面に弾性的に係止して前記連結シャフトと前記チャック本体部とを連結する係止体と、前記フィンガー支持部を前記チャック本体部から分離するとき前記係止体の前記係止面への係止を手動操作で解除する連結解除部材とを有する。
【0009】
本発明において、前記連結機構は、前記シャフト挿入孔の孔壁に形成された係止体収容孔の内部に、前記連結シャフトの係止面に係止する係止位置と前記係止面から外れる非係止位置とに変位自在に収容された少なくとも1つの前記係止体と、該係止体を前記係止位置に向けて押圧する押圧位置と前記係止体を押圧しない非押圧位置とに変位自在の押圧部材と、該押圧部材を前記押圧位置に向けて付勢する押圧ばねとを有することが好ましい。
【0010】
この場合、前記係止体は球体であり、前記押圧部材は、円筒状をしていて、前記シャフト挿入孔及び前記係止体の周りに該シャフト挿入孔の軸線方向に進退動自在なるように配設され、該押圧部材の内面にテーパー面が形成され、該テーパー面は、前記押圧部材が前記押圧位置に前進すると前記係止体を前記係止位置に向けて押圧し、該押圧部材が前記非押圧位置に後退すると前記係止体の押圧を解除するように構成されている。
【0011】
本発明において、前記連結解除部材は、前記フィンガー支持部を前記チャック本体部から分離するとき、前記押圧部材を前記非押圧位置に変位させる。
この場合、前記連結解除部材は、円柱状をしていて、前記チャック本体部のボディに外部から回転操作可能なるように取り付けられ、前記押圧部材に当接する当接部を有し、回転操作により前記当接部で前記押圧部材を変位させるものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明において、前記チャック本体部は、前記フィンガー支持部を該チャック本体部から分離したとき、非係止位置に変位した前記係止体を該非係止位置に保持する係止体保持機構を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィンガー支持部の連結シャフトをチャック本体部のシャフト挿入孔内に挿入すると、該シャフト挿入孔内に設けた係止体が前記連結シャフトの係止面に弾性的に係止することにより、前記フィンガー支持部とチャック本体部とが簡単且つ安定的に連結される。
また、前記係止体が前記係止面に係止している状態を、連結解除部材を手動操作して解除することにより、前記フィンガー支持部を前記チャック本体部から安全且つ容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るエアチャックの第1実施形態の斜視図であって、フィンガー支持部をチャック本体部に連結した状態の図である。
【
図2】フィンガー支持部をチャック本体部から分離した状態のエアチャックの斜視図である。
【
図5】一対のフィンガーを閉じた状態のエアチャックの縦断面図である。
【
図6】手動操作部材を操作位置に回転させた状態の要部拡大図である。
【
図7】フィンガー支持部をチャック本体部から分離する途中の状態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係るエアチャックの第2実施形態の縦断面図であって、フィンガー支持部をチャック本体部に連結した状態の図である。
【
図9】フィンガー支持部をチャック本体部から分離した状態の第2実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1-
図7は本発明に係るエアチャックの第1実施形態を示すもので、このエアチャック1Aは、開閉自在の一対のフィンガー5,5を有するフィンガー支持部2と、前記一対のフィンガー5,5を開閉操作する操作機構6を内蔵するチャック本体部3とを有し、前記フィンガー支持部2とチャック本体部3とは、連結機構4によって分離自在なるように連結されている。
なお、以下の説明において、上、下、前、後、左、右とは、
図1に示す方向である。
【0016】
前記フィンガー支持部2は、溝形断面をなす左右に細長い支持レール10を有し、該支持レール10の上面に形成されたガイド溝11内に、前記一対のフィンガー5,5が、前記支持レール10に沿って開閉自在に支持されている。
前記フィンガー5は、正面視形状が略T字形をなすもので、矩形の駒状をした基体部5aと、該基体部5aから上方に立ち上がった矩形の駒状をした把持部5bとを有し、前記基体部5aが前記支持レール10のガイド溝11内に摺動自在に支持されている。そして、前記把持部5bにチャック用のアタッチメント(不図視)が取り付けられ、このアタッチメントの間にワークが把持される。
【0017】
前記支持レール10には、前記フィンガー支持部2をチャック本体部3から分離した際に、前記一対のフィンガー5,5を開閉不能な状態にロックする2組のフィンガーロック機構12,12が設けられている。該2組のフィンガーロック機構12,12は、
図3及び
図4から明らかなように互いに同じ構成を有するもので、前記一対のフィンガー5,5に個々に対応するロックシャフト13をそれぞれ1つずつ有しており、該ロックシャフト13は、
図3に示す全開位置に移動した一対のフィンガー5,5に対応するように、前記支持レール10の長手方向の一端寄りの位置と他端寄りの位置とに1つずつ設けられている。従って、前記支持レール10には、前記一対のフィンガー5,5に個々に対応する一対のロックシャフト13,13が設けられているということができる。
【0018】
前記ロックシャフト13は、円柱状の胴部13aと、該胴部13aの上端(基端)に形成された円板状の頭部13bとを有している。前記頭部13bの直径は前記胴部13aの直径より大径である。また、前記ロックシャフト13は、前記頭部13bを前記支持レール10の上面に形成された円形凹部10a内に嵌合させた状態で、前記支持レール10と、該支持レール10の下面に固定されたガイド部材14とを、上下動自在なるように貫通し、前記支持レール10の下方に向けて延出している。
【0019】
前記ガイド部材14は、円形容器形をした部材であって、前記ロックシャフト13の上下動をガイドする機能と、ばね座としての機能とを兼備しており、このガイド部材14と前記ロックシャフト13の頭部13bとの間にロックばね15が圧縮状態に介設され、このロックばね15によって前記ロックシャフト13が、図の上向き、即ち、前記頭部13bの上面が前記フィンガー5の基体部5aの下面に押し付けられる方向に向けて、常に付勢されている。
【0020】
前記頭部13bの上面中央には、ロック突起16が形成され、前記フィンガー5の基体部5aの下面には、前記ロック突起16が係止可能なロック凹部17が形成されている。図示した例では、前記ロック突起16は円錐台状をなし、前記ロック凹部17は円錐孔状をなしているが、該ロック突起16及びロック凹部17の形状は、それ以外の形状であっても良い。
【0021】
また、前記ロックシャフト13の下端部(先端部)には、環状の係止凹部18が形成され、前記フィンガー支持部2をチャック本体部3に前記連結機構4で連結したとき、後で詳細に説明するように、該連結機構4の係止体19が前記係止凹部18の係止面18aに係止することにより、前記ロックシャフト13が、前記ロックばね15を圧縮しながら図の下方、即ち、前記頭部13bのロック突起16が前記フィンガー5のロック凹部17から離れる方向に向けて、変位するようになっている。
前記係止面18aは、ロックシャフト13の先端(下端)側に向けて次第に該ロックシャフト13の中心軸線から遠ざかる方向に傾斜する傾斜面であり、図示した例では円錐面である。
【0022】
前記フィンガーロック機構12はこのように構成されているから、
図3及び
図4に示すように、前記フィンガー支持部2を前記チャック本体部3に連結すると、前記連結機構4の係止体19が前記ロックシャフト13の係止面18aに係止することにより、該ロックシャフト13を、前記頭部13bのロック突起16が前記フィンガー5のロック凹部17から離れる位置(非ロック位置)に変位させるため、前記一対のフィンガー5,5は開閉可能な状態になる。
また、
図2及び
図7に示すように、前記フィンガー支持部2をチャック本体部3から分離すると、前記ロックシャフト13は、前記ロックばね15に押されて前記ロック突起16が前記ロック凹部17に係止する位置(ロック位置)に変位するため、前記一対のフィンガー5,5は開閉不能な状態にロックされる。
【0023】
前記チャック本体部3は、直方体状をしたボディ23を有し、該ボディ23の左右方向の中央部に、前記一対のフィンガー5,5を開閉操作する前記操作機構6が設けられている。該操作機構6は、
図3及び
図4に示すように、1組のシリンダ装置24と、該シリンダ装置24の動作を前記一対のフィンガー5,5に伝える2つの開閉レバー25とを有している。
【0024】
前記シリンダ装置24は、前記ボディ23の中央部を第1軸線L1に沿って上下方向に延びる円形のシリンダ孔26を有している。該シリンダ孔26の下端部には、短円柱形をした下部栓27が、シール部材27aを介して気密に取り付けられ、該シリンダ孔26の上端部には、短円柱形をした上部栓28が、シール部材28aを介して気密に取り付けられ、これら下部栓27と上部栓28との間にピストン室29が区画され、該ピストン室29の内部に、開閉ピストン30がピストンパッキン30aを介して摺動自在に収容されている。
【0025】
また、前記開閉ピストン30の上面中央部には、前記第1軸線L1に沿って延びる円柱状の開閉ロッド31の下端部が一体に連なっている。該開閉ロッド31は、前記上部栓28をシール部材31aを介して気密に且つ摺動自在に貫通し、該開閉ロッド31の上端は、前記ボディ23の上部に形成されたレバー収容部32内に突出し、該開閉ロッド31の上端に、前記一対の開閉レバー25を支持する板状の支持壁31bが形成されている。
【0026】
図3中の符号33が付された部材は、前記開閉ピストン30に取り付けられたリング状の永久磁石であって、位置検出用の被検体である。
図1に示すように、前記ボディ23の前面及び後面(不図示)には、磁気センサ(不図示)を取り付けるためのセンサ取付溝34が形成され、このセンサ取付溝34内に取り付けられた磁気センサで前記永久磁石33を検出することにより、前記開閉ピストン30の動作位置を検出することができる。この場合、前記センサ取付溝34内に2つの磁気センサを取り付けることにより、前記開閉ピストン30の上昇端及び下降端の両方を検出することができる。
【0027】
図3及び
図4に戻って、前記ピストン室29は、前記開閉ピストン30と上部栓28との間の第1圧力室35と、前記開閉ピストン30と下部栓27との間の第2圧力室36とに区画され、前記第1圧力室35は、前記ボディ23の前面に形成された第1ポート37(
図1参照)に、該ボディ23の内部を通る不図示の流路を通じて連通し、前記第2圧力室36は、前記ボディ23の後面に形成された第2ポート(不図示)に、前記ボディ23の内部を通る不図示の通孔を通じて連通している。
【0028】
従って、
図3の状態から、前記第1ポート37を通じて圧縮空気を前記第1圧力室35内に供給すると共に、前記第2ポートを通じて前記第2圧力室36を大気に開放すると、前記開閉ピストン30及び開閉ロッド31は
図5のように下降し、また、前記開閉ピストン30及び開閉ロッド31が下降した
図5の状態から、前記第2ポートを通じて圧縮空気を前記第2圧力室36内に供給すると共に、前記第1ポート37を通じて前記第1圧力室35を大気に開放すると、前記開閉ピストン30及び開閉ロッド31は
図3のように上昇する。
【0029】
前記開閉レバー25は、前記ロッド側に延びる第1アーム25aと前記フィンガー5側に延びる第2アーム25bとを有するL字形の部材であって、2つの開閉レバー25,25が、前記ボディ23の上端のレバー収容部32内に、前記第1軸線L1を挟んで左右相対するように配設され、各開閉レバー25の前記第1アーム25aと第2アーム25bとの中間部が、前記ボディ23の前後方向に延びるレバーシャフト39によって該ボディ23に回転自在に支持されている。
【0030】
前記開閉レバー25の第1アーム25aの先端には、U字形をした切欠き25cが形成され、この切欠き25c内に、前記開閉ロッド31の上端の前記支持壁31bに固定された操作ピン40が係合している。前記支持壁31bは板状の壁であり、この支持壁31bに前記操作ピン40が、前記レバーシャフト39と平行をなす向きで、該操作ピン40の一端及び他端が前記支持壁31bの前面側及び後面側にそれぞれ突出するように取り付けられ、一方の開閉レバー25の切欠き25cが前記支持壁31bの前面側で前記操作ピン40に係合し、他方の開閉レバー25の切欠き25cが前記支持壁31bの後面側で前記操作ピン40に係合している。
【0031】
また、前記開閉レバー25の第2アーム25bの先端には、外面に円弧状のカム面を有する係合カム25dが形成され、この係合カム25dが、前記フィンガー5の基体部5aの下面に形成された係合凹部5c内に、前記支持レール10に形成された開口を通じて揺動自在且つ分離自在に嵌合している。
【0032】
前記開閉レバー25はこのように構成されているため、
図3及び
図4の状態から、前記シリンダ装置24の開閉ピストン30及び開閉ロッド31が下降すると、
図5に示すように、前記一対の開閉レバー25,25の第1アーム25a,25aの先端が前記操作ピン40で引き下げられることで、該一対の開閉レバー25,25は、第2アーム25b,25bの先端の係合カム25d,25dが互いに近づく方向に回転し、前記一対のフィンガー5,5は閉じる。
【0033】
また、前記一対のフィンガー5,5が閉じた
図5の状態から、前記開閉ピストン30及び開閉ロッド31が上昇すると、
図3に示すように、前記一対の開閉レバー25,25は、第2アーム25b,25bの先端の係合カム25d,25dが互いに離れる方向に回転するため、前記一対のフィンガー5,5は開く。
このようなフィンガー5の開閉動作により、該フィンガー5の間にワークを把持したり、把持したワークを解放したりする。
【0034】
前記連結機構4は、前記フィンガー支持部2と前記チャック本体部3とを前記ロックシャフト13を介して連結するもので、一対のロックシャフト13,13に個々に対応する2組の連結機構4,4が、前記ボディ23の前記操作機構6を挟んで左右相対する位置に、左右対称をなすように配設されている。従って、前記ロックシャフト13は、前記連結機構4の一部を構成するものであり、「連結シャフト」と言い換えることができる。
【0035】
前記連結機構4,4は、
図4に一方の連結機構4について詳細に示すように、前記ロックシャフト13と、該ロックシャフト13が挿入されるシャフト挿入孔44と、該シャフト挿入孔44に前記ロックシャフト13が挿入されたとき、該ロックシャフト13を前記非ロック位置に変位させると共に該ロックシャフト13を前記チャック本体部3に係止させるシャフト係止機構45と、前記フィンガー支持部2を該チャック本体部3から分離する際に、前記ロックシャフト13に係止している前記係止体19を手動操作で非係止位置に向けて変位可能な状態にする連結解除部材70と、前記フィンガー支持部2を該チャック本体部3から分離したあと、非係止位置に変位した前記係止体19を該非係止位置に保持する係止体保持機構71とを有している。
【0036】
前記シャフト挿入孔44を形成するため、前記ボディ23には、前記第1軸線L1と平行な第2軸線L2に沿って延びる円形の貫通孔47が形成され、該貫通孔47の上端寄りの位置に、該貫通孔47より小径の円筒形をしたスリーブ48が挿入され、該スリーブ48の内部に前記シャフト挿入孔44が形成されている。
【0037】
前記スリーブ48は、上端に固定用のフランジ部48aを有していて、該フランジ部48aを、前記ボディ23の上面に係止させた状態で、該ボディ23の上面に固定したプレート49と該ボディ23との間に挟持することにより、前記貫通孔47内に固定されている。また、前記シャフト挿入孔44の入口部分の内径は、入口側即ちスリーブ48の上端側に向かって次第に大径化するようにテーパーが付されている。
【0038】
前記スリーブ48には、前記シャフト挿入孔44の孔壁に開口する複数の係止体収容孔50が形成され、各係止体収容孔50の内部に、球状をした前記係止体19が、該係止体19の一部が前記シャフト挿入孔44の内部に突出する係止位置と、該係止体19が前記シャフト挿入孔44内に突出しない前記非係止位置とに変位自在なるように収容されている。
図示した例では、3つの係止体収容孔50と、各係止体収容孔50内に収容された3つの係止体19とが、前記第2軸線L2の周りに120度間隔で配設されている。しかし、前記係止体19及び係止体収容孔50の数は、それ以外であっても良く、例えば1つ又は2つであっても、4つ以上であっても構わない。
【0039】
また、前記スリーブ48の外周面と前記貫通孔47の内周面との間には、筒状をした押圧部材53が、前記スリーブ48に沿って前記第2軸線L2方向に変位自在なるように配設されている。この押圧部材53は、基端(上端)側の小径部53aと、先端(下端)側の大径部53bとを有し、前記小径部53aの内周面は前記スリーブ48の外周面に摺動自在に接触し、前記大径部53bの外周面は前記貫通孔47の内周面に摺動自在に接触している。前記大径部53bの直径は、前記小径部53aの直径より大径である。
【0040】
前記押圧部材53の内面には、前記小径部53aと大径部53bとの間に、前記係止体19を前記係止位置に向けて押圧するためのテーパー面53cが形成されている。該テーパー面53cは、前記押圧部材53の先端側に向けて次第に前記第2軸線L2から遠ざかる方向に傾斜しており、前記押圧部材53が下方の押圧位置に向けて前進すると、該テーパー面53cは、前記係止体19を前記係止位置に向けて押し動かし、前記押圧部材53が図の上方の非押圧位置に向けて後退すると、該テーパー面53cは、前記係止体19を押圧状態から解放して前記非係止位置に向けて変位可能にする。
【0041】
前記押圧部材53の大径部53bと、前記ボディ23に形成されたばね座23aとの間には、前記小径部53aの外周面を取り巻く押圧ばね54が圧縮状態に介設され、この押圧ばね54によって前記押圧部材53が、前記係止体19を係止位置に押し動かす方向である前進方向に向けて常時付勢されている。
そして、前記ロックシャフト13の前記係止面18aと、前記係止体19と、前記押圧部材53と、前記押圧ばね54とにより、前記ロックシャフト13を前記チャック本体部3に係止させるための前記シャフト係止機構45が構成されている。
【0042】
前記連結解除部材70は、円柱状をした部材であって、前記チャック本体部3のボディ23を前面から後面まで貫通する円形の取付孔72の内部に、前記第2軸線L2と直交する軸線を中心にして正逆方向に回転自在なるように取り付けられ、該連結解除部材70の前端面及び後端面に、六角レンチ等の工具を差し込んで回転操作するための六角形の操作孔70aが形成されている。従って、前記連結解除部材70は、前記ボディ23の前面及び後面のどちら側からでも回転操作することができる。前記連結解除部材70は、「手動操作部材」と言い換えることができる。
【0043】
前記連結解除部材70は、該連結解除部材70の外周の一部又は全部に雄螺子を設けると共に、前記取付孔72の一部又は全部に雌螺子を設けることにより、該取付孔72内にねじ込み式に取り付けられ、回転操作によって進退動するように構成されている。しかし、該連結解除部材70及び取付孔72に螺子を設けないことにより、回転操作によって軸方向に進退動しないように構成されていても良い。
【0044】
前記連結解除部材70が取り付けられている位置は、前記押圧部材53の先端付近において該押圧部材53と交叉する位置であり、前記連結解除部材70が前記押圧部材53の先端に近接する部分には、該押圧部材53の先端を押し上げるための操作カム73が形成されている。
【0045】
前記操作カム73は、円柱の側面の一部を略L字形に切欠くことにより形成されたもので、
図6から明らかなように、逃げ部73aと当接部73bとを有しており、
図3及び
図4に示すように、前記連結解除部材70が非操作位置に回転しているときは、前記押圧部材53の下端部が前記逃げ部73a内に位置して当接部73bに押されないため、該押圧部材53は、前記押圧ばね54の付勢力により前進(下降)して、前記係止体19を係止位置に押圧する押圧位置を占め、前記フィンガー支持部2と前記チャック本体部3とは互いに連結されている。
【0046】
この状態から、前記連結解除部材70を、回転させて操作位置に切り換えると、
図6に示すように、前記操作カム73の当接部73bが前記押圧部材53の下端面に当接して該押圧部材53を押し上げるため、該押圧部材53は、前記押圧ばね54を圧縮しながら後退(上昇)し、テーパー面53cによる前記係止体19の押圧を解除する非押圧位置を占める。そこで、この状態で、前記フィンガー支持部2を持ち上げて前記ロックシャフト13を上昇させると、前記係止体19が、前記ロックシャフト13の係止面18aに押されて
図6に鎖線で示す非係止位置に変位するため、
図7の状態を経て、前記フィンガー支持部2を該チャック本体部3から完全に分離することができる。
【0047】
また、分離した前記フィンガー支持部2を前記チャック本体部3に連結するときは、
図7に示すように、前記ロックシャフト13をシャフト挿入孔44内に挿入し、該ロックシャフト13で前記係止体保持機構71の作動ロッド76を押し下げながら、前記フィンガー支持部2の支持レール10が前記チャック本体部3のプレート49の上面に当接して、前記ロックシャフト13の係止凹部18が前記係止体19に隣接する位置である、
図6の位置まで押し込む。このとき前記係止体19は鎖線位置にある。そして、前記手動操作部材70を回転させて
図3及び
図4の非操作位置に復帰させると、前記押圧部材53が押圧ばね54に押されて下降(前進)するため、前記係止体19は、前記押圧部材53のテーパー面53cに押されて前記係止凹部18の係止面18aに当接し、前記ロックシャフト13を下向きに押して非ロック位置に変位させると共に、該ロックシャフト13を介して前記フィンガー支持部2とチャック本体部3とを相互に連結する。
【0048】
なお、前記連結解除部材70及びボディ23には、該連結解除部材70が前記操作位置にあるのか非操作位置にあるのかということを目で確認することができるように、何らかの目印を設けることができる。
【0049】
前記係止体保持機構71は、前記ボディ23における前記貫通孔47の内部に、前記シャフト挿入孔44及びシャフト係止機構45より下方に位置するように配設されており、前記シャフト挿入孔44内に摺動自在に挿入された作動ロッド76と、該作動ロッド76の下端に一体に連設されたピストン状の作動部材75と、該作動部材75に上向きの付勢力を作用させる作動ばね77とを有している。
【0050】
前記作動部材75を配置するため、前記貫通孔47の内部には、該貫通孔47の下端部をシール部材59aを介して気密に塞ぐ下部壁59と、該貫通孔47の中間部をシール部材60aを介して気密に塞ぐ中間壁60とが取り付けられ、これら下部壁59と中間壁60との間に区画された作動室61内に前記作動部材75が上下動自在に配設されている。前記作動部材75の外周にシール部材は取り付けられていないため、該作動部材75と前記中間壁60との間の上部室78と、該作動部材75と前記下部壁59との間の下部室79とは、該作動部材75の外周と作動室61の内周との間の隙間を通じて相互に連通し、これら上部室78及び下部室79は、ボディ23に形成された不図示の通孔を通じて大気に開放されている。そして、前記作動部材75の下面に形成された凹部75aと、前記下部壁59の上面に形成された凹部59bとの間に、前記作動ばね77が圧縮状態に介設されている。
【0051】
前記係止体保持機構71は次のように動作する。
図3及び
図4の状態から、
図6に示すように、前記連結解除部材70を操作位置に回転させることにより前記押圧部材53を押し上げて、前記係止体19を非係止位置に変位し得る状態にしたあと、
図7に示すように前記フィンガー支持部2を持ち上げてロックシャフト13を上昇させると、前記作動部材75及び作動ロッド76は、前記作動ばね77に押されて前記ロックシャフト13と共に上昇し、前記作動部材75が前記中間壁60に当接する上昇端の位置で停止する。このとき、前記作動ロッド76は、その先端(上端)が前記シャフト挿入孔44内を前記係止体19より上方の位置まで上昇するため、該作動ロッド76の側面は、非係止位置に変位した前記係止体19に当接し、該係止体19を前記非係止位置に保持する。
【0052】
従って、前記作動ばね77のばね力は、前記フィンガー支持部2の分離に伴って前記ロックシャフト13が前記シャフト挿入孔44から引き抜かれるとき、それに追随して前記作動ロッド76を前記上昇端まで押し上げることができる大きさであれば良い。
しかし、前記作動ばね77のばね力は、前記連結解除部材70を回転操作して前記係止体19を非係止位置に変位させたとき、前記ロックシャフト13を
図7に示す位置まで押し上げることができる大きさに設定することもできる。
【0053】
前記フィンガー支持部2が前記チャック本体部3から分離されたあとも、前記連結解除部材70は前記操作位置を維持し、前記作動部材75及び作動ロッド76は前記上昇端の位置を維持する。
【0054】
そして、その状態から、前述したようにして前記フィンガー支持部2が前記チャック本体部3に連結されると、前記作動ロッド76は、シャフト挿入孔44内に挿入された前記ロックシャフト13によって
図3及び
図4に示す位置まで押し下げられる。
【0055】
図8及び
図9は本発明に係るエアチャックの第2実施形態を示すもので、この第2実施形態のエアチャック1Bが前記第1実施形態のエアチャック1Aと相違する点は、連結解除部材80が押釦形をしていて、ボディ23の左側面と右側面とに設けられているという点である。
即ち、前記ボディ23の左側面及び右側面には、押圧部材53の先端部に対応する位置に、釦取付孔82が形成され、この釦取付孔82内に、前記連結解除部材80が、取付プレート83に支持された状態で、前記押圧部材53に向けてボディ23の左右方向に進退動自在に取り付けられている。
【0056】
前記連結解除部材80は、四角いブロック形をしていて、該連結解除部材80の先端に、斜め上向きに傾斜するカム面80a、即ち、該連結解除部材80の下面側から上面側に向けて次第に前記第2軸線L2から遠ざかる方向に傾斜するカム面80aを有している。
また、前記手動操作部材80は、ボディ23から突出する非操作位置と、ボディ23の内部に押し込まれた操作位置とに変位可能であり、前記非操作位置から操作位置に押し込むと、この操作位置に自己保持し、もう一度押すと、前記非操作位置に復帰するように構成されている。
【0057】
前記第2実施形態のエアチャックの前記相異点以外の構成は、前記第1実施形態のエアチャックと実質的に同一である。このため、主要な同一構成部分に第1実施形態のエアチャックと同じ符号を付してその説明は省略する。
【0058】
図8は、フィンガー支持部2がチャック本体部3に連結された状態であり、このとき、前記連結解除部材80は後退した非操作位置にある。
この状態から、前記連結解除部材80を操作位置まで押し込むと、
図9に示すように、該連結解除部材80の前記カム面80aが前記押圧部材53の下端を押し上げるため、該押圧部材53は上昇して係止体19の押圧を解除する非押圧位置を占める。そこで、前記フィンガー支持部2を持ち上げると、前記ロックシャフト13の係止面18aが前記係止体19を非係止位置に変位させるため、該ロックシャフト13とチャック本体部3との係止は解消され、前記フィンガー支持部2を該チャック本体部3から完全に分離することが可能になる。
【0059】
分離した前記フィンガー支持部2を前記チャック本体部3に連結するときは、前記ロックシャフト13をシャフト挿入孔44内に挿入し、該ロックシャフト13で前記係止体保持機構71の作動ロッド76を押し下げながら、該ロックシャフト13を
図8に示す位置まで押し込む。そして、前記手動操作部材80を非操作位置に復帰させると、前記押圧部材53が押圧ばね54に押されて下降(前進)するため、前記係止体19が、前記押圧部材53に押されて前記係止凹部18の係止面18aに当接し、前記ロックシャフト13を下向きに押して非ロック位置に変位させると共に、該ロックシャフト13を介して前記フィンガー支持部2とチャック本体部3とを連結する。
【0060】
前述した各実施形態では、フィンガー支持部2がフィンガーロック機構12を有しているが、該フィンガー支持部2はフィンガーロック機構12を有していなくても良い。この場合、前記2つのロックシャフト13,13は、前記支持レール10にそれぞれ固定される。その固定方法は任意であり、例えば、前記支持レール10に形成した螺子孔に、前記ロックシャフト13に形成した螺子軸をねじ込んで固定しても、前記ロックシャフト13のフランジ状をした頭部13bを固定螺子で前記支持レール10に固定しても、あるいは、適宜の取付部材によって前記ロックシャフト13の頭部13bを前記支持レール10に固定しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B エアチャック
2 フィンガー支持部
3 チャック本体部
4 連結機構
5 フィンガー
6 操作機構
13 連結シャフト
18a 係止面
19 係止体
23 ボディ
44 シャフト挿入孔
50 係止体収容孔
53 押圧部材
53c テーパー面
54 押圧ばね
70,80 連結解除部材
71 係止体保持機構
73b 当接部