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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】水熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/45 20220101AFI20231108BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B09B3/45
C02F11/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019054059
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020151678
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野間 彰
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰道
(72)【発明者】
【氏名】河合 一寛
(72)【発明者】
【氏名】行本 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】清木 義夫
(72)【発明者】
【氏名】吉川 邦夫
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-029862(JP,A)
【文献】特開2005-205252(JP,A)
【文献】特開2014-143945(JP,A)
【文献】特開2002-028613(JP,A)
【文献】国際公開第2004/105927(WO,A1)
【文献】特開2001-046858(JP,A)
【文献】特開2001-046857(JP,A)
【文献】特開2002-126490(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046622(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/046624(WO,A1)
【文献】特開2010-279255(JP,A)
【文献】特開2000-334425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を水熱処理するための水熱処理装置であって、
前記被処理物を受け入れ可能に構成された反応容器と、
前記被処理物の水熱処理後の反応物を排出するための排出経路と、
前記排出経路を開閉するための開閉機構であって、前記排出経路に設けられた第1排出バルブ及び前記第1排出バルブよりも下流側において前記排出経路に設けられた第2排出バルブを備える開閉機構と、
前記反応容器内に前記被処理物を供給するための供給経路と、
前記供給経路に設けられた第1供給バルブと、
前記第1供給バルブよりも下流側において前記供給経路に設けられた第2供給バルブと、
前記供給経路内において前記第1供給バルブ及び前記第2供給バルブ間に画定される前室と、前記排出経路内において前記第1排出バルブ及び前記第2排出バルブ間に画定される後室とを連通する圧力バランスラインと、
前記圧力バランスラインを介して前記前室と前記後室とを連通又は遮断する連通遮断部材と、
前記前室に蒸気を供給するための第1蒸気供給部材と、
前記前室の圧力を大気中へ開放する第1圧力開放部材と、
前記後室に蒸気を供給するための第2蒸気供給部材と、
前記後室の圧力を大気中へ開放する第2圧力開放部材と
を備え、
前記反応容器内には、前記被処理物を受け入れ前に、120℃~240℃の水で構成された液相と、気相とが収容されており、前記反応容器に受け入れられた前記被処理物が前記液相内に供給されるように構成されている水熱処理装置。
【請求項2】
前記反応容器は、長手方向軸を有する形状を有し、
前記反応容器は、水平方向に対して前記長手方向軸が鋭角の角度をなすように配置され、
前記反応容器内には搬送部材が設けられ、
鉛直方向において高い方の前記反応容器の端部側に前記排出経路が接続されるとともに、鉛直方向において低い方の前記反応容器の端部側に前記供給経路が接続される、請求項に記載の水熱処理装置。
【請求項3】
前記反応容器の重量を測定する重量測定部材を備える、請求項に記載の水熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、古紙を原料として紙製品を製造するプロセスでは、大量の排水が発生するので、排水処理装置が必要となる。排水処理で処理された水は、プロセスで再利用されたり、河川等に放流されたりする。排水処理によって、処理された水の他に汚泥も発生する。昨今では、このような汚泥を水熱処理して燃料等を製造するプロセスが実用化されている。
【0003】
水熱処理装置は一般的に、バッチ式と連続式とに大別することができる。バッチ式の水熱処理装置は例えば特許文献1に開示されており、連続式の水熱処理装置は例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3089543号公報
【文献】特許第3354438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、バッチ式の水熱処理装置は、被処理物の供給、水熱反応、及び水熱処理の反応物の排出等の各工程で時間的に拘束され、処理密度が低い。また、水熱処理装置の熱サイクルにおいて、昇温のためのエネルギーが再度必要になり、エネルギー効率が悪い。一方で、連続式の水熱処理装置は、被処理物を圧送ポンプで供給するために、被処理物を粉砕すると同時に大量の水と同伴させて搬送する必要があるので、粉砕工程が必要になるといった問題点や、水の加熱エネルギーのロスといった問題点があった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、バッチ式及び連続式の両方の利点を有する水熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
)本開示の少なくとも1つの実施形態に係る水熱処理装置は、
被処理物を水熱処理するための水熱処理装置であって、
前記被処理物を受け入れ可能に構成された反応容器と、
前記被処理物の水熱処理後の反応物を排出するための排出経路と、
前記排出経路を開閉するための開閉機構であって、前記排出経路に設けられた第1排出バルブ及び前記第1排出バルブよりも下流側において前記排出経路に設けられた第2排出バルブを備える開閉機構と、
前記反応容器内に前記被処理物を供給するための供給経路と、
前記供給経路に設けられた第1供給バルブと、
前記第1供給バルブよりも下流側において前記供給経路に設けられた第2供給バルブと、
前記供給経路内において前記第1供給バルブ及び前記第2供給バルブ間に画定される前室と、前記排出経路内において前記第1排出バルブ及び前記第2排出バルブ間に画定される後室とを連通する圧力バランスラインと、
前記圧力バランスラインを介して前記前室と前記後室とを連通又は遮断する連通遮断部材と、
前記前室に蒸気を供給するための第1蒸気供給部材と、
前記前室の圧力を大気中へ開放する第1圧力開放部材と、
前記後室に蒸気を供給するための第2蒸気供給部材と、
前記後室の圧力を大気中へ開放する第2圧力開放部材と
を備え、
前記反応容器内には、前記被処理物を受け入れ前に、120℃~240℃の水で構成された液相と、気相とが収容されており、前記反応容器に受け入れられた前記被処理物が前記液相内に供給されるように構成されている。
【0017】
第2供給バルブを閉じた状態で第1供給バルブを開けることにより、前室内に被処理物を供給することができる。この後、第1供給バルブを閉じて第2供給バルブを開けることにより、前室内の被処理物を反応容器内に供給することができるが、前室と反応容器との圧力差が大きいため、これらのバルブが故障するおそれがある。また、第2排出バルブを閉じた状態で第1排出バルブを開けることにより、水熱処理による反応物を後室内に供給することができる。この後、第1排出バルブを閉じて第2排出バルブを開けることにより、後室内の反応物を排出することができるが、第2排出バルブの下流側と後室との圧力差が大きいため、これらのバルブが故障するおそれがある。上記(6)の構成によると、前室と後室との間で蒸気のやりとりや前室及び後室それぞれへの蒸気の供給により、各バルブ開閉動作時の前室及び反応容器間の圧力差と、第2排出バルブの下流側及び後室間の圧力差とのそれぞれを低減することができるので、これらのバルブが故障するおそれを低減することができる。
【0018】
)いくつかの実施形態では、上記()の構成において、
前記反応容器は、長手方向軸を有する形状を有し、
前記反応容器は、水平方向に対して前記長手方向軸が鋭角の角度をなすように配置され、
前記反応容器内には搬送部材が設けられ、
鉛直方向において高い方の前記反応容器の端部側に前記排出経路が接続されるとともに、鉛直方向において低い方の前記反応容器の端部側に前記供給経路が接続される。
【0019】
上記()の構成によると、水熱処理による反応物を含むスラリーは、搬送部材によって気相中に搬送されて、排出経路を介して反応容器から排出されるようになる。気相中でスラリーは固液分離されるので、水熱処理時の温度のような高温での固液分離が可能となる。
【0020】
)いくつかの実施形態では、上記()の構成において、
前記反応容器の重量を測定する重量測定部材を備える。
反応容器への被処理物の供給と、水熱処理による反応物の排出とがバランスしていれば、反応容器の重量がある範囲内を維持するようになる。一方で、反応物が反応容器から排出されずに滞留していると、反応容器の重量が増加し続けることになる。このため、重量測定部材の測定値を観測することにより、反応容器の重量が増加し続けていれば、反応物の排出が適切に行えていないことを的確に判断することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、反応容器内の熱水に被処理物を供給することができるので、被処理物を反応容器内に供給後の昇温が不要となり、エネルギー効率が向上する。また、反応容器内には予め熱水が存在することにより、被処理物を水と同伴させて反応容器に供給する必要もない。したがって、バッチ式及び連続式の両方の利点を有する水熱処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態1に係る水熱処理装置の構成模式図である。
図2】本開示の実施形態2に係る水熱処理装置において処理される汚泥が発生するプラントの構成を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態2に係る水熱処理装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
(実施形態1)
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る水熱処理装置10は、反応容器11と、反応容器11に接続された排出経路12と、排出経路12を開閉するための開閉機構13とを備えている。反応容器11内の圧力は10~30気圧程度に調整され、反応容器11内には、120℃~240℃の熱水で構成された液相5と、気相6とが予め収容されている。開閉機構13の構成は限定しないが、例えば、開閉機構13は、排出経路12に設けられた第1排出バルブ14と、第1排出バルブ14よりも下流側において排出経路12に設けられた第2排出バルブ15とを備えた構成とすることができる。
【0025】
排出経路12の下流端は、反応容器11の内容物である反応物2を受け入れるための収容容器16内に位置していることが好ましい。また、排出経路12には、開閉機構13よりも上流側に、固液分離部材であるメッシュ部材17を設けてもよい。メッシュ部材17は好ましくは、回転軸18を含み、排出経路12内において回転軸18を中心に反転可能に設けてもよい。さらに、排出経路12には、メッシュ部材17よりも上流側に第3排出バルブ19を設けてもよい。
【0026】
水熱処理装置10はさらに、被処理物である廃棄物1を反応容器11が受け入れられるように、反応容器11に廃棄物1を供給するための供給経路20を備えることができる。供給経路20の上流端にはホッパー21を設けてもよく、供給経路20には、第1供給バルブ22を設けるとともに、第1供給バルブ22よりも下流側に第2供給バルブ23を設けてもよい。
【0027】
供給経路20内において第1供給バルブ22及び第2供給バルブ23を両方とも全閉にすると、これらの間に前室24が画定される。一方、排出経路12内において第1排出バルブ14及び第2排出バルブ15を両方とも全閉にすると、これらの間に後室25が画定される。前室24と後室25とを連通するように圧力バランスライン26を設けることができ、圧力バランスライン26には、前室24の近傍に開閉バルブ27を設けるとともに後室25の近傍に開閉バルブ28を設けることができる。開閉バルブ27,28は、圧力バランスライン26を介して前室24と後室25とを連通又は遮断するための連通遮断部材を構成する。尚、連通遮断部材は、開閉バルブ27,28のいずれか一方であってもよい。
【0028】
また、一端が前室24に連通するとともに他端が大気中へ開放する第1圧力開放ライン61と、第1圧力開放ライン61を開閉するための開閉バルブである第1圧力開放バルブ62とが設けられている。ここで、第1圧力開放ライン61及び第1圧力開放バルブ62は、前室24の圧力を大気中へ開放する第1圧力開放部材を構成する。さらに、一端が後室25に連通するとともに他端が大気中へ開放する第2圧力開放ライン71と、第2圧力開放ライン71を開閉するための開閉バルブである第2圧力開放バルブ72とが設けられている。ここで、第2圧力開放ライン71及び第2圧力開放バルブ72は、後室25の圧力を大気中へ開放する第2圧力開放部材を構成する。
【0029】
前室24に蒸気を供給するように前室24に連通した第1蒸気供給ライン31と、第1蒸気供給ライン31を開閉するための第1開閉バルブ32とを設けてもよい。第1蒸気供給ライン31及び第1開閉バルブ32は、前室24に蒸気を供給するための第1蒸気供給部材を構成する。第1蒸気供給ライン31は、図1に示されるように、圧力バランスライン26と合流するように設けてもよいし、圧力バランスライン26とは別々に前室24に連通するように設けてもよい。
【0030】
後室25に蒸気を供給するように後室25に連通した第2蒸気供給ライン33と、第2蒸気供給ライン33を開閉するための第2開閉バルブ34とを設けてもよい。第2蒸気供給ライン33及び第2開閉バルブ34は、後室25に蒸気を供給するための第2蒸気供給部材を構成する。第2蒸気供給ライン33は、図1に示されるように、圧力バランスライン26と合流するように設けてもよいし、圧力バランスライン26とは別々に後室25に連通するように設けてもよい。
【0031】
反応容器11の形状は特に限定しないが、例えば図1に示されるように、長手方向軸Lを有するように円柱形状の外形を有していてもよい。反応容器11がこのような形状を有する場合、反応容器11は、水平方向HRに対して長手方向軸Lが鋭角の角度θをなすように配置してもよい。反応容器11がこのような構成を有する場合、反応容器11内において、鉛直方向において低い方の反応容器11の端部11a側から鉛直方向において高い方の反応容器11の端部11b側に向かって液相5の深さが浅くなるようにすることができる。さらに、反応容器11がこのような構成を有する場合、反応容器11の端部11b側に排出経路12を接続することにより、排出経路12を気相6に連通させることができ、反応容器11の端部11a側に供給経路20を接続することにより、廃棄物1を液相5の深い位置に供給させることができるようになる。
【0032】
反応容器11内には、搬送部材である搬送スクリュー40が設けられている。搬送スクリュー40を回転させるためのモータ41が、反応容器11の外部に設けられている。反応容器11の外周には、液相5が存在する位置に対応するように、加熱部材42が設けられている。加熱部材42の構成は特に限定されず、反応容器11内の液相5を加熱できればどのような構成であってもよく、加熱部材42は例えば、加圧蒸気等が流通可能に構成されたジャケットであってもよく、反応容器11の外周に巻回されたニクロム線であってもよく、反応容器11の内部(例えば搬送スクリュー40やその回転軸等)を加熱するものであってもよい。
【0033】
反応容器11は、反応容器11内の気相6の一部を抜き出すためのガス抜き出し口43と、ガス抜き出し口43から抜き出されるガスの流量を制御する排気制御バルブ44(ガス流量制御部材)とを備えてもよい。図1には、ガス抜き出し口43及び排気制御バルブ44の組み合わせが1組設けられているが、2組以上設けてもよい。また、反応容器11は、反応容器11内の気相6に連通するように、反応容器11内に蒸気を供給するための蒸気供給口45と、蒸気供給口45に設けられた開閉バルブ46とを備えてもよい。図1には、蒸気供給口45及び開閉バルブ46の組み合わせが3組設けられているが、1組又は2組を設けてもよいし、4組以上設けてもよい。さらに、反応容器11の端部11aに接続するように排水抜き出し口47を設けるとともに排水抜き出し口47に開閉バルブ48を設けてもよい。
【0034】
水熱処理装置10はさらに、反応容器11の重量を測定するための重量測定部材49を備えてもよい。重量測定部材49の構成は特に限定されず、重量測定部材49として、例えばロードセルを用いることができる。
【0035】
次に、本開示の実施形態1に係る水熱処理装置10の動作について説明する。
図1に示されるように、全てのバルブを閉じた状態で加熱部材42を作動させて、反応容器11内の液相5を加熱し、必要に応じて開閉バルブ46を開けて、蒸気供給口45を介して反応容器11内に蒸気を供給する。また、モータ41を起動して、搬送スクリュー40を回転させる。液相5の温度が120℃~240℃の範囲の適切な温度になったら、廃棄物1の供給を開始する。尚、廃棄物1としては特に限定するものではなく、実施形態1において廃棄物1は、都市ごみ等の固形状のものを想定している。
【0036】
廃棄物1をホッパー21内に投入する。ある程度の量の廃棄物1をホッパーに投入したら、第1供給バルブ22を開ける。そうすると、ホッパー21内の廃棄物1が第2供給バルブ23上に落下する。その後、第1供給バルブ22を閉める。これにより、廃棄物1がホッパー21から前室24に移動される。したがって、ホッパー21内に投入される廃棄物1の量は、前室24に収容可能な量にすることが好ましい。
【0037】
前室24内の廃棄物1は、第2供給バルブ23を開けることによって、反応容器11内に落下する。しかし、第2供給バルブ23を開ける前における前室24内の圧力はほぼ大気圧であるのに対し、反応容器11内の圧力は10~30気圧程度である。このような圧力差がある状態で第2供給バルブ23を開けると、第1供給バルブ22及び第2供給バルブ23が故障するおそれがある。
【0038】
そこで、第1開閉バルブ32を開けて第1蒸気供給ライン31を介して前室24内に蒸気を供給することで前室24内の圧力を上昇させて、前室24内の圧力と反応容器11内の圧力との差を小さくする。この後、第1開閉バルブ32を閉め、第2供給バルブ23を開けることにより、第1供給バルブ22及び第2供給バルブ23の故障を防ぎながら、前室24内の廃棄物1を反応容器11内に落下させることができる。
【0039】
前室24内の廃棄物1を反応容器11内に落下後、第2供給バルブ23を閉めると、前室24内の圧力は反応容器11内の圧力と同等になる。この状態で、ホッパー21に投入された廃棄物1を前室24内に落下させるために第1供給バルブ22を再び開けると、前室24内の圧力が大気圧に開放されてしまい、廃棄物1をホッパー21から噴出させてしまったり、第1供給バルブ22及び第2供給バルブ23が故障したりするおそれがある。そこで、開閉バルブ27及び28を開けることにより、前室24内の圧力を、圧力バランスライン26を介して後室25内に逃がす。この操作でも前室24内の圧力が高い場合には、第1圧力開放バルブ62を開けることにより、第1圧力開放ライン61を介して前室24内の圧力を大気中へ開放する。これにより、前室24内の圧力が低下するので、そのようなおそれの発生を抑制しながら第1供給バルブ22を安全に開けることができる。
【0040】
廃棄物1は、反応容器11内において液相5の深い位置に落下するように供給される。廃棄物1は、液相5を構成する熱水により水熱処理されて分解され、やがてスラリーの形態となる。液相5は、搬送スクリュー40によって攪拌されているものの、搬送スクリュー40の回転数を調整することにより、液相5は、熱水と固相3との2相に分離した状態にすることができる。
【0041】
液相5の下方に沈殿する固相3は、搬送スクリュー40の回転によって、反応容器11内を端部11a側から端部11b側に向かって搬送される。液相5の深さは端部11a側から端部11b側に向かって浅くなっているので、搬送スクリュー40の回転によって搬送される固相3は、気相6内に移動する。気相6において、固相3は固液分離される。気相6の温度も、120℃~240℃の範囲の適切な温度となっているので、このような高温の状態で固液分離が可能となる。固相3には、高温の状態であれば水に溶解可能な成分も含まれており、そのような成分は、高温の状態での固液分離によって液相5に移動させることができる。尚、搬送スクリュー40として、圧縮機能付きの搬送スクリューを用いれば、搬送及び固液分離の両方を同時に行うことが可能である。
【0042】
水熱処理によって二酸化炭素等が発生及び蓄積すると、反応容器11内の圧力が上昇するので、排気制御バルブ44(ガス流量制御部材)の開度調整によりガス抜き出し口43を介して気相6のガスの一部を排出して、圧力容器11内の圧力を低下させることができる。また、排出されるガスには蒸気も含まれているので、固相3に含まれる水分量の調整も可能になる。固相3が水分調整されることにより、水熱処理による反応物2が生成する。
【0043】
反応物2は、反応容器11から排出経路12内に流入する。第3排出バルブ19を開けると、反応物2は、メッシュ部材17を通過する際に、メッシュ部材17のメッシュサイズよりも大きな塊4がメッシュ部材17に捕捉される。塊4は、水熱処理によって分解されなかった物質であり、例えば、都市ごみに含まれる空き缶やプラゴミ等が該当する。第3排出バルブ19を閉じた後、第1排出バルブ14を開けることで、大きな塊4が除去された反応物2が後室25内に落下する。ここで、前述したように、後室25内には予め前室24内の圧力を逃がしているので、第1排出バルブ14の両側の圧力差は、大気圧と反応容器11内の圧力との差よりも小さくなっている。それでも第1排出バルブ14の両側の圧力差が、第1排出バルブ14を安全に開けられる程度に小さくない場合には、第2開閉バルブ34を開けることによって第2蒸気供給ラインを介して後室25内に蒸気を供給できるので、第1排出バルブ14の両側の圧力差をさらに小さくし、第1排出バルブ14を安全に開けることができる。
【0044】
第1排出バルブ14を開けて後室25内に反応物2を受け入れた後、第1排出バルブ14を閉じて第2排出バルブ15を開けることにより、後室25内の反応物2を収容容器16へ排出することができる。しかしながら、第2排出バルブ15を開ける前における第2排出バルブ15の両側の圧力差が大きいので、反応物2が収容容器16へ勢いよく噴出してしまったり、第1排出バルブ14及び第2排出バルブ15が故障してしまったりするおそれがある。そこで、第2排出バルブ15を開ける前に、開閉バルブ27及び28を開けることにより圧力バランスライン26を介して後室25内の圧力を前室24内に逃がす。この操作でも後室25内の圧力が高い場合には、第2圧力開放バルブ72を開けることにより、第2圧力開放ライン71を介して後室25内の圧力を大気中へ開放する。これにより、第2排出バルブ15の両側の圧力差が小さくなるので、そのようなおそれの発生を抑制しながら第2排出バルブ15を安全に開けることができる。収容容器16内の反応物2は、乾燥や成型等の工程を経て、燃料等に加工することができる。
【0045】
メッシュ部材17上に堆積した塊4は、排出経路12内において回転軸18を中心にメッシュ部材17を反転することで、第1排出バルブ14上に落下させることができる。その後、第1排出バルブ14及び第2排出バルブ15の開閉操作により、塊4を排出することができる。塊4の排出は、収容容器16に反応物2がない状態で行うか、あるいは、収容容器16に代えて、塊4を収容するための別の容器内に排出経路12の下流端を位置させて行うことができる。このようにして、メッシュ部材17によって除去された塊4を容易に回収することができる。
【0046】
このような動作の間、重量測定部材49は反応容器11の重量を測定している。反応容器11への廃棄物1の供給と、水熱処理による反応物2の排出とがバランスしていれば、反応容器11の重量がある範囲内を維持するようになる。一方で、反応物2が反応容器11から排出されずに滞留していると、反応容器11の重量が増加し続けることになる。このため、重量測定部材49の測定値を観測することにより、反応容器11の重量が増加し続けていれば、反応物2の排出が適切に行えていないことを的確に判断することができる。
【0047】
このように、反応容器11内の熱水(液相5)に廃棄物1を供給することができるので、廃棄物1を反応容器11内に供給後の昇温が不要となり、エネルギー効率が向上する。また、反応容器11内には予め熱水が存在することにより、廃棄物1を水と同伴させて反応容器11に供給する必要もない。したがって、バッチ式及び連続式の両方の利点を有する水熱処理装置10を実現することができる。
【0048】
また、水熱処理装置10では、第1排出バルブ14及び第2排出バルブ15の開閉によって、反応容器11内の反応物2をバッチ式に排出することができるので、水熱処理の滞留時間の調整を容易に行うことができる。
【0049】
また、水熱処理装置10では、第1供給バルブ22及び第2供給バルブ23の開閉によって、廃棄物1を反応容器11内にバッチ式に供給することができる。このため、反応容器11内への廃棄物1の供給量の調整を容易に行うことができる。
【0050】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る水熱処理装置について説明する。実施形態2に係る水熱処理装置は、実施形態1に対して、原料から製品を製造する任意のプロセスにおいて生成する排水を処理する際の生物処理で発生し得る汚泥を被処理物としたものである。生物処理で発生する汚泥は、細胞膜の中に水分を含有しているため、脱水が困難で処理コストが増大するといった問題点があったが、実施形態2に係る水熱処理装置は、この問題点を解決するものである。
【0051】
図2に示されるプラント50では、製造装置51において原料から製品が製造される過程で排水が生成し、この排水は排水処理装置52で処理される。このようなプラント50の一例として、古紙を原料として紙製品を製造するプラントが挙げられるが、これに限定するものではない。排水処理装置52で処理された排水は、製造装置51で再利用されたり、図示しない河川等に放流されたりすることができる。排水処理装置52での排水の処理において、一般に汚泥も生成する。本開示の実施形態2に係る水熱処理装置100を、このような汚泥を被処理物とするものとして以下に説明する。
【0052】
図3に示されるように、本開示の実施形態2に係る水熱処理装置100は、反応容器111と、反応容器111に接続された排出経路112と、排出経路112を開閉するための開閉機構113とを備えている。反応容器111内の圧力は10~30気圧程度に調整され、反応容器111内には、120℃~240℃の熱水で構成された液相105と、気相106とが予め収容されている。開閉機構113の構成は限定しないが、例えば、開閉機構113は、排出経路112に設けられた第1排出バルブ114と、第1排出バルブ114よりも下流側において排出経路112に設けられた第2排出バルブ115とを備えた構成とすることができる。排出経路112には、一端が排出経路112の内部に連通するとともに他端が大気中へ開放する圧力開放ライン170と、圧力開放ライン170を開閉するための開閉バルブである圧力開放バルブ171とを設けてもよい。
【0053】
反応容器111は、円錐形状の外形を有する下方部分111aと、下方部分111aの上に設けられるとともに円柱形状の外形を有する上方部分111bとを有している。下方部分111aの最下端部に排出経路112が接続されている。上方部分111bの頂部には、排水処理装置52(図2参照)で生成した汚泥を反応容器111内に供給するための供給経路120が接続され、供給経路120には、汚泥を圧送するためのポンプ121が設けられている。また、上方部分111bの頂部には、反応容器111内の気相106の一部を抜き出すためのガス抜き出し口143と、ガス抜き出し口143から抜き出されるガスの流量を制御する排気制御バルブ144とが設けられている。
【0054】
反応容器111内には、反応容器111内の内容物を攪拌する撹拌機140が設けられ、反応容器111の外部には、撹拌機140を駆動するモータ141が設けられている。反応容器111の外周には、液相105が存在する位置に対応するように、加熱部材142が設けられている。加熱部材142の構成は特に限定されず、反応容器111内の液相105を加熱できればどのような構成であってもよく、加熱部材142は例えば、加圧蒸気等が流通可能に構成されたジャケットであってもよく、反応容器111の外周に巻回されたニクロム線であってもよい。
【0055】
排出経路112の下流端の下方には、乾燥装置150を設けることができる。乾燥装置150の構成は特に限定しないが、乾燥装置150は例えば、ベルトコンベアの形態を有し、温風がベルトコンベアのベルトを通過するように構成されたものであってもよい。
【0056】
次に、本開示の実施形態2に係る水熱処理装置100の動作について説明する。
図3に示されるように、第1排出バルブ114、第2排出バルブ115、及び排気制御バルブ144を閉じた状態で加熱部材142を作動させて、反応容器111内の液相105を加熱する。また、モータ141を起動して、撹拌機140を回転させる。液相105の温度が120℃~240℃の範囲の適切な温度になったら、ポンプ121を起動して汚泥の供給を開始する。
【0057】
供給経路120を流通する汚泥は、反応容器111内に流入すると、液相105内に落下するように供給される。汚泥は、液相105を構成する熱水により水熱処理されて分解され、やがてスラリーの形態となる。液相105は、撹拌機140によって攪拌されているものの、撹拌機140の回転数を調整することにより、液相105は、熱水と固相103との2相に分離した状態にすることができ、さらに、汚泥の粘度も調整可能である。尚、固相103も撹拌機140により攪拌されるので、加熱部材142からの熱による焦げ付きを抑制することができる。
【0058】
水熱処理によって二酸化炭素等が発生及び蓄積すると、反応容器111内の圧力が上昇するので、排気制御バルブ144の開度調整によりガス抜き出し口143を介して気相106のガスの一部を排出して、圧力容器111内の圧力を低下させることができる。また、排出されるガスには蒸気も含まれるので、液相105の液面レベルの調整を行うこともできる。
【0059】
第1排出バルブ114を開くと、固相103の一部が、水熱処理の反応物102として排出経路112内に抜き出される。その後、第1排出バルブ114を閉じ、圧力開放バルブ171を開閉して、圧力開放ライン170を介して排出経路112内の圧力を大気中へ開放する。続いて、第2排出バルブ115を開くと、供給経路120内の反応物102が乾燥装置150のベルト上に落下する。反応物102がベルトによって搬送される間、温風によって乾燥される。反応物102は、乾燥装置150において乾燥された後、成形等の工程を経て、燃料等に加工することができる。尚、必須の構成ではないが、乾燥装置150とポンプ121の入口側とを接続するリサイクルライン161を設けることにより、乾燥装置150における乾燥で液体の水分160が発生した場合は、リサイクルライン161を介して水分160を汚泥に混入させることで、再び反応容器111に水分160を供給するようにすることもできる。
【0060】
このように、反応容器111内の熱水(液相105)に汚泥を供給することができるので、汚泥を反応容器111内に供給後の昇温が不要となり、エネルギー効率が向上する。また、反応容器111内には予め熱水が存在することにより、汚泥を水と同伴させて反応容器111に供給する必要もない。したがって、バッチ式及び連続式の両方の利点を有する水熱処理装置100を実現することができる。
【0061】
また、水熱処理装置100では、第1排出バルブ114及び第2排出バルブ115の開閉によって、反応容器111から反応物102をバッチ式に排出することができるので、水熱処理の滞留時間の調整を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 廃棄物(被処理物)
2 反応物
3 固相
4 塊
5 液相
6 気相
10 水熱処理装置
11 反応容器
11a (反応容器の)端部
11b (反応容器の)端部
12 排出経路
13 開閉機構
14 第1排出バルブ
15 第2排出バルブ
16 収容容器
17 メッシュ部材(固液分離部材)
18 回転軸
19 第3排出バルブ
20 供給経路
21 ホッパー
22 第1供給バルブ
23 第2供給バルブ
24 前室
25 後室
26 圧力バランスライン
27 開閉バルブ(連通遮断部材)
28 開閉バルブ(連通遮断部材)
31 第1蒸気供給ライン
32 第1開閉バルブ
33 第2蒸気供給ライン
34 第2開閉バルブ
40 搬送スクリュー(搬送部材)
41 モータ
42 加熱部材
43 ガス抜き出し口
44 排気制御バルブ(ガス流量制御部材)
45 蒸気供給口
46 開閉バルブ
47 排水抜き出し口
48 開閉バルブ
49 重量測定部材
50 プラント
51 製造装置
52 排水処理装置
61 第1圧力開放ライン(第1圧力開放部材)
62 第1圧力開放バルブ(第1圧力開放部材)
71 第2圧力開放ライン(第2圧力開放部材)
72 第2圧力開放バルブ(第2圧力開放部材)
100 水熱処理装置
102 反応物
103 固相
105 液相
106 気相
111 反応容器
111a (反応容器の)下方部分
111b (反応容器の)上方部分
112 排出経路
113 開閉機構
114 第1排出バルブ
115 第2排出バルブ
120 供給経路
121 ポンプ
140 撹拌機
141 モータ
142 加熱部材
143 ガス抜き出し口
144 排気制御バルブ
150 乾燥装置
160 水分
161 リサイクルライン
HR 水平方向
L 長手方向軸
θ 角度
図1
図2
図3