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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/02 20060101AFI20231108BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20231108BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20231108BHJP
   F27B 9/36 20060101ALI20231108BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F27B9/02
C21D1/00 112L
F27B9/40
F27B9/36
F27D9/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019075784
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020173069
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598148913
【氏名又は名称】株式会社エコム
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】菅原 基
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義一
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-145053(JP,A)
【文献】特開2004-119070(JP,A)
【文献】特開2005-249248(JP,A)
【文献】特開2002-155313(JP,A)
【文献】実開平02-014350(JP,U)
【文献】特開昭62-167814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00-9/40
C21D 1/00
F27D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱処理物に対する一連の熱処理を、複数の熱処理ステップに分割し、各熱処理ステップにおける熱処理機能のうち被熱処理物を冷却する冷却機能を除くいずれもが実行可能に構成された汎用の加熱炉ユニットを複数設け、
該加熱炉ユニットを、特定の被熱処理物に対する一連の熱処理を行うために必要な複数の熱処理ステップに対応させてそれぞれ配置して互いに連結して構成され、
前記各加熱炉ユニットを各熱処理ステップに応じた熱処理機能を実現できるように作動させ、全体として前記特定の被熱処理物に対する熱処理を実現させる制御装置と、
前記各加熱炉ユニットのうち最初に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットに被熱処理物を搬入し、最後に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットから被熱処理物を搬出し、最初と最後の間の熱処理に対応する加熱炉ユニットに対しては、先に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットから次に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットに被熱処理物を順次搬送する搬送機と
を備え、
前記制御装置は、各加熱炉ユニットにおける各熱処理が完了するタイミングで、前記搬送機を制御して、熱処理が完了した被熱処理物を前記加熱炉ユニットから搬出し、これから熱処理を行う被熱処理物を前記加熱炉ユニットに搬入する
熱処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
被熱処理物に対する一連の熱処理を行うために必要な熱処理機能の一つとして、被熱処理物を冷却する冷却ユニットを備え、
前記特定の被熱処理物に対する熱処理を行うために必要な熱処理ステップのうち、被熱処理物を冷却する熱処理ステップに対応させて前記冷却ユニットを配置して前記加熱炉ユニットに連結して成る
熱処理システム。
【請求項3】
請求項において、
前記加熱炉ユニットは、前記搬送機による前記加熱炉ユニットに対する被熱処理物の搬出を検出するセンサを備え、
前記制御装置は、一連の熱処理を行う複数の熱処理ステップの中で、当該熱処理ステップの次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット内の被熱処理物が搬出されたことが前記センサにより検出されると、当該熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット内の被熱処理物を搬出して次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニットに次の被熱処理物として搬入させるように前記搬送機を制御する
熱処理システム。
【請求項4】
請求項において、
前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットは、前記搬送機による前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットに対する被熱処理物の搬出を検出するセンサを備え、
前記制御装置は、一連の熱処理を行う複数の熱処理ステップの中で、当該熱処理ステップの次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニット内の被熱処理物が搬出されたことが前記センサにより検出されると、当該熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニット内の被熱処理物を搬出して次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットに次の被熱処理物として搬入させるように前記搬送機を制御する
熱処理システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれかにおいて、
前記各加熱炉ユニットは、そこに被熱処理物が搬入されてから搬出されるまでの時間が互いに等しくなるように、他に比べて長時間を要する熱処理ステップを複数ユニットに分割して構成し、それらの複数ユニットを直列に連結して構成される
熱処理システム。
【請求項6】
請求項1又は3において、
前記加熱炉ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い長時間ユニットとを備え、前記短時間ユニットの前段及び後段に前記長時間ユニットがそれぞれ配置されており、
前記制御装置は、前記短時間ユニット及び前記長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを、前記短時間ユニットより前段の前記長時間ユニットは、前記短時間ユニットより後段の前記長時間ユニットに対して前記短時間ユニットの熱処理時間分だけ早くする
熱処理システム。
【請求項7】
請求項2又は4において、
前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い長時間ユニットとを備え、前記短時間ユニットの前段及び後段に前記長時間ユニットがそれぞれ配置されており、
前記制御装置は、前記短時間ユニット及び前記長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを、前記短時間ユニットより前段の前記長時間ユニットは、前記短時間ユニットより後段の前記長時間ユニットに対して前記短時間ユニットの熱処理時間分だけ早くする
熱処理システム。
【請求項8】
請求項1又は3において、
前記加熱炉ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い第2短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い第2長時間ユニットとを備え、前記第2長時間ユニットは、同じ第2長時間ユニットを並列配置して前記第2短時間ユニットに連結して成り、
前記制御装置は、並列配置された前記各第2長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを互いにずらすようにされており、前記各第2長時間ユニットに対して搬送される被熱処理物が、前記第2短時間ユニットでは前記タイミングのずれに相当する時間差を持って順次搬送されるように前記搬送機を制御する
熱処理システム。
【請求項9】
請求項2又は4において、
前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い第2短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い第2長時間ユニットとを備え、前記第2長時間ユニットは、同じ第2長時間ユニットを並列配置して前記第2短時間ユニットに連結して成り、
前記制御装置は、並列配置された前記各第2長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを互いにずらすようにされており、前記各第2長時間ユニットに対して搬送される被熱処理物が、前記第2短時間ユニットでは前記タイミングのずれに相当する時間差を持って順次搬送されるように前記搬送機を制御する
熱処理システム。
【請求項10】
請求項1~のいずれかにおいて、
前記各加熱炉ユニットは、燃料を燃焼させることにより被熱処理物を含む加熱炉内を加熱するバーナと、電気ヒータの発熱により被熱処理物を含む加熱炉内を加熱するヒータとを備え、
前記制御装置は、前記各加熱炉ユニットの加熱炉内を各熱処理ステップの設定温度まで昇温させる間は、少なくとも前記バーナを作動させ、被熱処理物の温度を上昇させる間は、前記バーナ又は前記ヒータ、若しくは前記バーナと前記ヒータの併用のうち、最適な熱源を選択して作動させ、被熱処理物の温度を維持する間は、少なくとも前記ヒータを作動させるように制御される
熱処理システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記制御装置は、互いに同一構成の前記各加熱炉ユニットにおける前記バーナと前記ヒータの作動時間の比率を0~100%の範囲で変更可能とし、前記ヒータより前記バーナの作動時間を長くすることにより前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を上昇させる昇温炉として使用する場合と、前記バーナより前記ヒータの作動時間を長くすることにより前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を維持する均熱炉として使用する場合とに切替可能とされている
熱処理システム。
【請求項12】
請求項1~のいずれかにおいて、
前記各加熱炉ユニットは、加熱炉内のガスを強制循環させる熱風循環炉であり、強制循環時の熱風の循環速度が少なくとも高低2段階に変更可能とされており、
前記制御装置は、被熱処理物の温度を上昇させる間は、熱風を高速で循環させ、被熱処理物の温度を維持する間、並びに加熱炉内に被熱処理物を搬入する前で、加熱炉内の温度を設定温度に昇温し、維持する間は、熱風を低速で循環させるように制御される
熱処理システム。
【請求項13】
請求項1~のいずれかにおいて,
前記各加熱炉ユニットは、加熱炉内のガスを強制循環させる熱風循環炉であり、強制循環時の熱風の循環速度が少なくとも高低2段階に変更可能とされており、
前記制御装置は、前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を上昇させる昇温炉としたとき、熱風を高速で循環させ、前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を維持する均熱炉としたとき、熱風を低速で循環させるように制御される
熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、半導体、セラミックス等の被熱処理物に対し、熱処理(金属の熱処理)、焼成、乾燥等の熱処理を行う熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被熱処理物が加熱炉内をスライド移動して、移動中に熱処理される発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被熱処理物により熱処理条件が異なり、加熱炉は被熱処理物の違いに応じて構成を変える必要がある。
【0005】
本発明の課題は、被熱処理物の熱処理を行う熱処理システムにおいて、熱処理条件を複数ステップに分割し、各ステップの熱処理機能を汎用の複数の加熱炉ユニットにより実現させることにある。それにより、熱処理条件の変化に係わらず、汎用の加熱炉ユニットによる構成は変更することなく、各加熱炉ユニットの作動の仕方を変更するのみで、各種の被熱処理物の熱処理を実行可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明の熱処理システムは、被熱処理物に対する一連の熱処理を、複数の熱処理ステップに分割し、各熱処理ステップにおける熱処理機能のうち被熱処理物を冷却する冷却機能を除くいずれもが実行可能に構成された汎用の加熱炉ユニットを複数設け、該加熱炉ユニットを、特定の被熱処理物に対する一連の熱処理を行うために必要な複数の熱処理ステップに対応させてそれぞれ配置して互いに連結して構成され、前記各加熱炉ユニットを各熱処理ステップに応じた熱処理機能を実現できるように作動させ、全体として前記特定の被熱処理物に対する熱処理を実現させる制御装置と、前記各加熱炉ユニットのうち最初に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットに被熱処理物を搬入し、最後に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットから被熱処理物を搬出し、最初と最後の間の熱処理に対応する加熱炉ユニットに対しては、先に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットから次に行われる熱処理に対応する前記加熱炉ユニットに被熱処理物を順次搬送する搬送機とを備え、前記制御装置は、各加熱炉ユニットにおける各熱処理が完了するタイミングで、前記搬送機を制御して、熱処理が完了した被熱処理物を前記加熱炉ユニットから搬出し、これから熱処理を行う被熱処理物を前記加熱炉ユニットに搬入する。
【0007】
上記第1発明によれば、特定の被熱処理物に対する一連の熱処理を、複数の熱処理ステップに分割し、各ステップに対応して配置された汎用の各加熱炉ユニットを、制御装置により各ステップに必要な熱処理が行われるように作動させる。また、被熱処理物を搬送機により各加熱炉ユニットにおいて必要な熱処理が行われるように搬送する。そのため、異なる被熱処理物に対して熱処理条件が変わったとき、制御装置による各加熱炉ユニットに対する制御内容を変更するのみで各熱処理ステップに必要な熱処理を行わせることができる。また、加熱炉ユニットの追加、削除により制御装置による制御内容の変更のみでは対応できない熱処理条件の異なる被熱処理物の熱処理を実行することができる。従って、汎用の加熱炉ユニットを用いて加熱炉ユニットの組合せの変更、若しくは制御装置による制御内容の変更により、熱処理条件の異なる複数種類の被熱処理物の熱処理を行うことができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、被熱処理物に対する一連の熱処理を行うために必要な熱処理機能の一つとして、被熱処理物を冷却する冷却ユニットを備え、前記特定の被熱処理物に対する熱処理を行うために必要な熱処理ステップのうち、被熱処理物を冷却する熱処理ステップに対応させて前記冷却ユニットを配置して前記加熱炉ユニットに連結して成る。
【0009】
上記第2発明によれば、冷却ユニットを備えることにより、一連の熱処理の中に被熱処理物を冷却する熱処理ステップが含まれる場合でも、それに対応することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明において、前記加熱炉ユニットは、前記搬送機により前記加熱炉ユニットに対する被熱処理物の搬出を検出するセンサを備え、前記制御装置は、一連の熱処理を行う複数の熱処理ステップの中で、当該熱処理ステップの次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット内の被熱処理物が搬出されたことが前記センサにより検出されると、当該熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット内の被熱処理物を搬出して次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニットに次の被熱処理物として搬入させるように前記搬送機を制御する。
【0011】
本発明の第4発明は、上記第2発明において、前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットは、前記搬送機により前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットに対する被熱処理物の搬出を検出するセンサを備え、前記制御装置は、一連の熱処理を行う複数の熱処理ステップの中で、当該熱処理ステップの次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニット内の被熱処理物が搬出されたことが前記センサにより検出されると、当該熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニット内の被熱処理物を搬出して次段の熱処理ステップに対応する前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットに次の被熱処理物として搬入させるように前記搬送機を制御する。
【0012】
上記第3、第4発明によれば、前後に配置された加熱炉ユニット又は冷却ユニットに対する被熱処理物の搬送が、被熱処理物が後段の加熱炉ユニット又は冷却ユニットから搬出されたのに応じて、次の被熱処理物が当該加熱炉ユニット又は冷却ユニットから後段の加熱炉ユニット又は冷却ユニットに搬入される。そのため、加熱炉ユニット又は冷却ユニットそれぞれに対する被熱処理物の熱処理時間に合わせて被熱処理物の搬送タイミングを予め調整することにより、当該加熱炉ユニット又は冷却ユニットから後段の加熱炉ユニット又は冷却ユニットに被熱処理物を搬送機上に滞留させず連続して搬送することができる。
【0013】
本発明の第発明は、上記第1~第発明のいずれかにおいて、前記各加熱炉ユニットは、そこに被熱処理物が搬入されてから搬出されるまでの時間が互いに等しくなるように、他に比べて長時間を要する熱処理ステップを複数ユニットに分割して構成し、それらの複数ユニットを直列に連結して構成される。
【0014】
上記第発明によれば、各加熱炉ユニットにおける熱処理時間が互いに等しくされる。そのため、各加熱炉ユニットは、被熱処理物が搬出されると、直ちに次の被熱処理物が搬入されて、連続稼働可能とされる。従って、熱処理システムとしての生産性を高めることができる。
【0015】
本発明の第発明は、上記第1又は3発明において、前記加熱炉ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い長時間ユニットとを備え、前記短時間ユニットの前段及び後段に前記長時間ユニットがそれぞれ配置されており、前記制御装置は、前記短時間ユニット及び前記長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを、前記短時間ユニットより前段の前記長時間ユニットは、前記短時間ユニットより後段の前記長時間ユニットに対して前記短時間ユニットの熱処理時間分だけ早くする。
【0016】
本発明の第発明は、上記第2又は4発明において、前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い長時間ユニットとを備え、前記短時間ユニットの前段及び後段に前記長時間ユニットがそれぞれ配置されており、前記制御装置は、前記短時間ユニット及び前記長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを、前記短時間ユニットより前段の前記長時間ユニットは、前記短時間ユニットより後段の前記長時間ユニットに対して前記短時間ユニットの熱処理時間分だけ早くする。
【0017】
上記第6、第7発明によれば、前段の長時間ユニットが短時間ユニットの熱処理時間分だけ早く被熱処理物を搬送し、後段の長時間ユニットが熱処理を完了して短時間ユニットを含めて後段の長時間ユニットの被熱処理物を搬送すると、短時間ユニットでは被熱処理物の熱処理が丁度完了するタイミングとなり、被熱処理物を各ユニット間に無駄に滞留させることなく搬送することができる。そのため、熱処理システムとしての生産性を高めることができる。
【0018】
本発明の第発明は、上記第1又は3発明において、前記加熱炉ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い第2短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い第2長時間ユニットとを備え、前記第2長時間ユニットは、同じ第2長時間ユニットを並列配置して前記第2短時間ユニットに連結して成り、前記制御装置は、並列配置された前記各第2長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを互いにずらすようにされており、前記各第2長時間ユニットに対して搬送される被熱処理物が、前記第2短時間ユニットでは前記タイミングのずれに相当する時間差を持って順次搬送されるように前記搬送機を制御する。
【0019】
本発明の第発明は、上記第2又は4発明において、前記加熱炉ユニット又は前記冷却ユニットとして、被熱処理物の搬入から搬出までの熱処理時間が比較的短い第2短時間ユニットと、前記熱処理時間が比較的長い第2長時間ユニットとを備え、前記第2長時間ユニットは、同じ第2長時間ユニットを並列配置して前記第2短時間ユニットに連結して成り、前記制御装置は、並列配置された前記各第2長時間ユニットに対して被熱処理物が搬送されるタイミングを互いにずらすようにされており、前記各第2長時間ユニットに対して搬送される被熱処理物が、前記第2短時間ユニットでは前記タイミングのずれに相当する時間差を持って順次搬送されるように前記搬送機を制御する。
【0020】
上記第8、第9発明において、並列配置される長時間ユニットに対し、短時間ユニットは、前段側、後段側のいずれに配置される構成でもよい。若しくは、前段側、後段側の両方に配置される構成でもよい。また、並列配置される長時間ユニットの列数は、長時間ユニット及び短時間ユニットの上記時間差に応じて決めることができる。その場合、列数は、長時間ユニットと短時間ユニットの熱処理時間の差に係わらず各ユニット間の搬送機上に被熱処理物が滞留する時間が短くなるようにすることが望ましい。
【0021】
上記第8、第9発明によれば、長時間ユニットでは被熱処理物を並列で搬送し、短時間ユニットでは直列で搬送するため、短時間ユニットは長時間ユニットから被熱処理物が搬出されるのを、両ユニットの熱処理に要する時間差分だけ待つ必要をなくすことができる。そのため、長時間ユニット、短時間ユニットが混在するシステムにおける被熱処理物の熱処理の生産性を高めることができる。
【0022】
本発明の第10発明は、上記第1~発明のいずれかにおいて、前記各加熱炉ユニットは、燃料を燃焼させることにより被熱処理物を含む加熱炉内を加熱するバーナと、電気ヒータの発熱により被熱処理物を含む加熱炉内を加熱するヒータとを備え、前記制御装置は、前記各加熱炉ユニットの加熱炉内を各熱処理ステップの設定温度まで昇温させる間は、少なくとも前記バーナを作動させ、被熱処理物の温度を上昇させる間は、前記バーナ又は前記ヒータ、若しくは前記バーナと前記ヒータの併用のうち、最適な熱源を選択して作動させ、被熱処理物の温度を維持する間は、少なくとも前記ヒータを作動させるように制御される。
【0023】
上記第10発明によれば、各加熱炉ユニットにおける熱エネルギの必要量や昇温速度の高速化の要求に応じてバーナとヒータとを適切に使い分けることができる。そのため、全体として、環境負荷を抑えつつ、省エネルギ化や熱処理時間の短縮を図ることができる。
【0024】
本発明の第11発明は、上記第10において、前記制御装置は、互いに同一構成の前記各加熱炉ユニットにおける前記バーナと前記ヒータの作動時間の比率を0~100%の範囲で変更可能とし、前記ヒータより前記バーナの作動時間を長くすることにより前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を上昇させる昇温炉として使用する場合と、前記バーナより前記ヒータの作動時間を長くすることにより前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を維持する均熱炉として使用する場合とに切替可能とされている。
【0025】
上記第11発明によれば、同一の加熱炉ユニットを使用して、バーナとヒータとの作動時間の比率を変えることにより、昇温炉と均熱炉とを使い分けることができる。
【0026】
本発明の第12発明は、上記第1~発明のいずれかにおいて、前記各加熱炉ユニットは、加熱炉内のガスを強制循環させる熱風循環炉であり、強制循環時の熱風の循環速度が少なくとも高低2段階に変更可能とされており、前記制御装置は、被熱処理物の温度を上昇させる間は、熱風を高速で循環させ、被熱処理物の温度を維持する間、並びに加熱炉内に被熱処理物を搬入する前で、加熱炉内の温度を設定温度に昇温し、維持する間は、熱風を低速で循環させるように制御される。
【0027】
本発明の第13発明は、上記第1~発明のいずれかにおいて、前記各加熱炉ユニットは、加熱炉内のガスを強制循環させる熱風循環炉であり、強制循環時の熱風の循環速度が少なくとも高低2段階に変更可能とされており、前記制御装置は、前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を上昇させる昇温炉としたとき、熱風を高速で循環させ、前記加熱炉ユニットを被熱処理物の温度を維持する均熱炉としたとき、熱風を低速で循環させるように制御される。
【0028】
上記第12、第13発明によれば、被熱処理物の温度を上昇させる熱処理ステップでは、加熱炉内の熱風を高速で循環させて昇温を速やかに行う。また、被熱処理物の温度を維持する熱処理ステップ、並びに加熱炉内に被熱処理物を搬入する前で、加熱炉内の温度を設定温度に維持する熱処理ステップでは、加熱炉内の熱風を低速で循環させる。そのため、被熱処理物の温度のむらをなくして全体として均一に保ち、且つ被熱処理物の温度の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態としての熱処理システムを示すブロック図である。
図2】第1実施形態の概略斜視図である。
図3】第1実施形態の概略平面図である。
図4】第1実施形態における一つの加熱炉ユニットの拡大斜視図である。
図5】加熱炉ユニットにおけるバーナ装置の概略構成図である。
図6】第1実施形態の作用を説明するためのタイムチャートである。
図7】第1実施形態の制御装置による搬送機制御の内容を示すフローチャートである。
図8】加熱炉ユニットを溶体化昇温炉として使用したときの加熱炉内温度及び被熱処理物の温度制御の様子を示す説明図である。
図9図8と同様の説明図であり、加熱炉ユニットを溶体化均熱炉として使用したときを示す。
図10図8と同様の説明図であり、加熱炉ユニットを時効硬化昇温炉として使用したときを示す。
図11図8と同様の説明図であり、加熱炉ユニットを時効硬化均熱炉として使用したときを示す。
図12】本発明の第2実施形態としての熱処理システムを示すブロック図である。
図13】第2実施形態の作用を説明するためのタイムチャートである。
図14】第2実施形態の制御装置による搬送機制御の内容の一部を示すフローチャートである。
図15】第2実施形態の制御装置による搬送機制御の内容の残部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態の全体構成>
図1~3は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態は、アルミニウムを被熱処理物として熱処理を行う熱処理システムに本発明を適用した例である。係る熱処理システムにおいてアルミニウムの熱処理を行うために必要な熱処理ステップは、表1のように、6つのステップに分割することができる。
【0031】
第1実施形態では、図1のように、分割された各熱処理ステップを加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽(冷却ユニットと呼ぶこともある)20A及び冷却ユニット20Bによって実現するように構成し、各加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bを、各熱処理ステップに対応させて配置して互いに連結して構成している。ここでは、表1のように、時効硬化昇温ステップ及び冷却ステップの熱処理時間が30分であるのに対し、溶体化昇温ステップ、溶体化均熱ステップ、及び時効硬化均熱ステップの熱処理時間は、それぞれ1時間であるため、溶体化昇温ステップ、溶体化均熱ステップ、及び時効硬化均熱ステップは、図1のように、それぞれ2個の加熱炉ユニットにより構成している。それにより、各加熱炉ユニットの熱処理時間を均一化している。
【0032】
【表1】
【0033】
各加熱炉ユニット10A~10Gは、各熱処理ステップの熱処理機能のいずれもが実行できるように構成された汎用の加熱炉ユニットである。各加熱炉ユニット10A~10Gは、図4のように、バーナ装置11を備えた加熱炉12によって構成されている。各加熱炉ユニット10A~10Gは、図2、3のように、それらを複数個組み合わせて連結する際に、連結を容易にするように6面体形状にパッケージング化されている。なお、図2、3では、加熱炉ユニット10A~10G内の加熱炉12及びバーナ装置11の図示を省略している。また、焼入水槽20A内の水槽等の図示を省略している。
【0034】
表1のように、第1実施形態の熱処理システムでは、アルミニウムを溶体化し、時効硬化させる。そのため、図1のように、加熱炉ユニット10A、10Bによる溶体化昇温炉(以下、溶体化昇温炉10A、10Bともいう)では、加熱炉内を510度に維持しており、アルミニウムを各30分、合計1時間かけて510度まで昇温させ、加熱炉ユニット10C、10Dによる溶体化均熱炉(以下、溶体化均熱炉10C、10Dともいう)では、加熱炉内を510度に各30分、合計1時間維持する。次の焼入水槽20Aは、水槽を持っており、被熱処理物であるアルミニウムを水槽に入れて70度まで急冷して焼入れする。ここでの処理時間は3分である。
【0035】
次の加熱炉ユニット10Eによる時効硬化昇温炉(以下、時効硬化昇温炉10Eともいう)では、加熱炉内を220度に維持しており、アルミニウムを30分かけて220度まで昇温させ、加熱炉ユニット10F、10Gによる時効硬化均熱炉(以下、時効硬化均熱炉10F、10Gともいう)では、加熱炉内を220度に各30分、合計1時間維持する。次の冷却ユニット20Bは、被熱処理物であるアルミニウムを大気中で30度まで自然冷却させる。ここでの処理時間は30分である。
【0036】
各加熱炉ユニット10A~10Gは、上述のように汎用の加熱炉ユニット10であり、それぞれ同一構造を備えるが、違う熱処理機能を実現するため、図1のように、制御装置13によって各加熱炉ユニット10A~10Gのバーナ装置11が制御されている。具体的には後述する。
【0037】
<搬送機30の全体構成>
図2、3のように、加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bは、搬送機30によって被熱処理物が各ユニット10A~10G、20A、20B内を通過するように構成されている。搬送機30は、ローラコンベア(図示略)により構成されており、ローラコンベア上に載せられた被熱処理物を加熱炉ユニット10A~10Gの加熱炉12内に搬入し、搬出する。また、搬送機30は、ローラコンベア上に載せられた被熱処理物を焼入水槽20Aの水槽内に浸漬し、冷却ユニット20Bの空間内を通過させる。ここでは、搬送機30は、加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bのそれぞれに独立して被熱処理物を搬送できるように、加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bに対応して独立して構成されている。搬送機30は、制御装置13により制御されている(図1参照)。
【0038】
図1のように、搬送機30の側部には、複数個のセンサ40が設けられている。図1にて、各センサ40は、塗りつぶしの三角形にて示されている。センサ40は、各ユニット10A~10G、20A、20Bの出入口にそれぞれ設けられている。また、センサ40は、焼入水槽20Aを除く各ユニット10A~10G、20B内に被熱処理物が搬入された状態にあることを検出するように、各ユニット10A~10G、20B内に2個ずつ設けられている。各ユニット10A~10G、20B内に2個ずつ設けられたセンサ40は、各ユニット10A~10G、20B内に搬入された状態にある被熱処理物の前後端部を検出するように配置されている。更に、センサ40は、被熱処理物の熱処理が完了して冷却ユニット20Bから搬出された状態となったことを検出するように、冷却ユニット20Bの出口側に2個設けられている。各センサ40の検出信号は、制御装置13に送られる。各センサ40は、公知の近接センサによって構成することができる。
【0039】
<搬送機30の制御>
搬送機30は、熱処理の最終処理ステップである冷却ユニット20Bの冷却処理が完了したときに冷却ユニット20Bから被熱処理物を搬出する。冷却ユニット20Bから被熱処理物が搬出されたことをセンサ40が検出したのを受けて、制御装置13は、前段の時効硬化均熱炉10Gから被熱処理物を搬出して、その被熱処理物を冷却ユニット20Bに搬入するように搬送機30を作動させる。制御装置13は、デジタルコンピュータを含んで構成されている。
【0040】
図7は、制御装置13による搬送機30の制御内容を示す。上述の冷却ユニット20B及び時効硬化均熱炉10Gに対する搬送機30の制御内容が、ステップS1~ステップS3に示されている。以後、制御装置13は、同様に搬送機30を作動させて(ステップS4~ステップS24参照)、被熱処理物に対して最初に熱処理を行う溶体化昇温炉10Aにおける熱処理が完了した時点で、溶体化昇温炉10Aから被熱処理物を搬出し、次に熱処理を開始すべき被熱処理物を溶体化昇温炉10Aに搬入させる。この制御は、図7のステップS25、ステップS26の処理に相当する。図7において、ステップS4とステップS5との間、並びにステップS22とステップS23との間は、その前までと同様の処理が順次行われるため図示を省略している。
【0041】
第1実施形態において、焼入水槽20Aを除く各ユニット10A~10G、20B(本発明の長時間ユニットに相当)の熱処理時間は30分であるのに対し、焼入水槽20A(本発明の短時間ユニットに相当)の熱処理時間は3分である。しかし、上記のように順次被熱処理物を単純に搬送すると、各ユニット10A~10G、20A、20Bに対応する搬送機30は、30分周期で前段のユニットから後段のユニットに被熱処理物を搬送することになる。そのため、3分間冷却された被熱処理物が焼入水槽20Aから搬出された後、次段の時効硬化昇温炉10Eに搬入されるまで、27分間(30分-3分)搬送機30上で待機することになる。
【0042】
この非効率性を回避するため、第1実施形態では、焼入水槽20Aより後段側の焼入水槽20A~冷却ユニット20Bの被熱処理物の搬送を、焼入水槽20Aより前段側の溶体化昇温炉10A~溶体化均熱炉10Dの被熱処理物の搬送より3分だけタイムシフトして先に行うようにしている。図6は、各ユニット10A~10G、20A、20Bに対応する搬送機30による被熱処理物の搬送タイミングを示すタイムチャートである。図6のT1の時点で、焼入水槽20A~冷却ユニット20Bの被熱処理物の搬送が行われて、時効硬化昇温炉10E~時効硬化均熱炉10Gにより被熱処理物の熱処理が行われる。このT1以降の制御は、図7のステップS27、ステップS1~ステップS6の処理に相当する。
【0043】
その27分後のT2の時点で、T1より3分前に被熱処理物の熱処理を行っていた溶体化昇温炉10A~溶体化均熱炉10Dの被熱処理物の搬送が行われる。このT2の時点で、焼入水槽20Aに溶体化均熱炉10Dから搬出された被熱処理物が搬入されて焼入れ処理が行われる。このT2以降の制御は、図7のステップS21~ステップS26の処理に相当する。
【0044】
その3分後のT3の時点で、焼入水槽20Aにおける被熱処理物の焼入れ処理は完了するので、焼入水槽20A~冷却ユニット20Bの被熱処理物の搬送が行われる。T3の時点で、時効硬化昇温炉10E~冷却ユニット20Bの被熱処理物の熱処理は30分を経過して完了している。このT3以降の制御は、図7のステップS27、ステップS1~ステップS6の処理に相当する。以降、図6のように、T3、T4、T5の各時点は、上述のT1、T2、T3の各時点に相当しており、同じ操作が繰り返される。
【0045】
この結果、第1実施形態によれば、一つの被熱処理物が最初の熱処理ステップに相当する溶体化昇温炉10Aに搬入されてから最後の熱処理ステップに相当する冷却ユニット20Bから搬出されるまでの1サイクルの熱処理時間が、4時間3分(30分×8ステップ+3分)となる。これは、従来の考え方で、順次被熱処理物を30分周期で単純に搬送した場合には、4時間30分(30分×9ステップ)となるのに対し、1サイクル当たり27分だけ生産性を高めることができる。但し、この場合、被熱処理物が各ユニット間を移動する時間はゼロとした。
【0046】
<搬送機30の具体的構成>
図2、3のように、第1実施形態の熱処理システムの場合、矢印で示すように搬送機30により被熱処理物が搬送される。即ち、加熱炉ユニット10Aにつながる搬送機30から被熱処理物が加熱炉ユニット10A内に搬入され、搬入された被熱処理物は、加熱炉ユニット10B~10D、焼入水槽20Aを通過し、焼入水槽20Aから搬出される。この間、被熱処理物であるアルミニウムは、溶体化され、焼入れされる。
【0047】
焼入水槽20Aから搬出された被熱処理物は、加熱炉ユニット10Eにつながる搬送機30から加熱炉ユニット10E内に搬入され、更に、加熱炉ユニット10F、10G、冷却ユニット20Bを通過し、冷却ユニット20Bから搬出される。この間、被熱処理物であるアルミニウムは時効硬化される。この実施形態では、焼入水槽20Aにつながる搬送機30と加熱炉ユニット10Eにつながる搬送機30とは、互いに切り離されており、切り離された搬送機30同士間では、被熱処理物がロボットハンド等により移載される。それら両搬送機30は、互いにつながった一連の搬送機となるように構成してもよい。その場合には、ロボットハンド等による被熱処理物の移載作業は不要となる。
【0048】
<加熱炉ユニット10の構成>
図5のように、各加熱炉ユニット10A~10Gのバーナ装置11は、バーナ11aとヒータ11bを備える。バーナ11aは、液化天然ガス(本発明の燃料に相当する。以下、単にガスという)及びエアを供給されて、ガスを燃焼させて加熱炉12内に火炎を発生させる構成とされている。また、ヒータ11bは、加熱炉12内の燃焼ガスを循環させ、その循環ガスを電気ヒータのジュール熱により加熱して加熱炉12内に加熱ガスとして戻す構成とされている。
【0049】
加熱炉12は公知の熱風循環炉であり、図示を省略したが、加熱炉12には、加熱炉内のガスを強制循環させる送風機を備える。送風機は、制御装置13により作動制御されており、循環されるガスの熱風の循環速度を高低2段階に変更可能とされている。具体的には、制御装置13は、溶体化昇温炉10A、10B、時効硬化昇温炉10Eにおいて、被熱処理物の温度を上昇させるときは、熱風の循環速度を高速とする。また、溶体化均熱炉10C、10D及び時効硬化均熱炉10F、10Gにおいて、被熱処理物の温度を維持するときは、熱風の循環速度を低速とする。また、各加熱炉ユニット10A~10Gにおいて、加熱炉内に被加熱処理物を搬入する前で、加熱炉内の温度を設定温度に維持するときは、熱風の循環速度を低速とする。なお、送風機は、2段階よりも多段階に速度変更可能とされてもよく、各加熱炉ユニット10A~10Gの状況に応じて細かく速度制御することができる。このように、加熱炉12の熱風の循環速度を制御することにより、昇温を速やかに行うことができる。また、被熱処理物の温度のむらをなくして全体として均一に保ち、且つ被熱処理物の温度の変動を抑制することができる。
【0050】
<第1実施形態の作用、効果>
図8~11は、加熱炉ユニット10を溶体化昇温炉(図8)、溶体化均熱炉(図9)、時効硬化昇温炉(図10)、時効硬化均熱炉(図11)として使用した際の加熱炉12内及び被熱処理物の温度制御の様子を示している。なお、図示した内容は、一例にすぎず、設定温度や加熱速度の要求に応じて最適な熱源が選択される。
【0051】
図8のように、加熱炉ユニット10を溶体化昇温炉10A、10Bとして使用する際は、加熱炉12のバーナ11aにガス及びエアを供給して、バーナ11aが発生する火炎により図8にTaで示すように、加熱炉12内を設定温度である510℃まで高める(炉の昇温)。加熱炉12内が設定温度に到達した後も、バーナ11aへのガス及びエアの供給を継続して、加熱炉12内が設定温度に維持される。その間、溶体化昇温炉10A、10Bに被熱処理物1~3が搬入される都度、被熱処理物1~3は、図8のTbで示すように、設定温度まで急速に加熱される。ここでは、加熱炉12内を昇温する際も、設定温度に維持する際も、熱源をガスとしたバーナ11aにより加熱されるが、必要な熱エネルギは、温度維持の後者に比べて昇温の前者の方が大きいため、バーナ11aに供給されるガス及びエアの量は、後者に比べて前者の方が多くされる。なお、図8では、被熱処理物1~3の加熱が一気に行われているように記載されているが、既述のように第1実施形態では、被熱処理物の加熱が溶体化昇温炉10A、10Bで分担して行われている。
【0052】
図9のように、加熱炉ユニット10を溶体化均熱炉10C、10Dとして使用する際は、加熱炉12のバーナ11aにガス及びエアを供給して、図9にTaで示すように、加熱炉12内を設定温度である510℃まで高める(炉の昇温)。加熱炉12内が設定温度に到達した後は、バーナ11aの作動を停止し、ヒータ11bを作動して加熱炉12内が設定温度に維持される。その間、溶体化均熱炉10C、10Dに被熱処理物1~3が搬入される都度、被熱処理物1~3は、図9のTbで示すように、設定温度に維持される。加熱炉12内を昇温する際は、バーナ11a(ガス)により加熱されるが、加熱炉12内を設定温度に維持する際は、加熱炉12はヒータ11bの作動のみとされている。なぜなら、溶体化均熱炉10C、10Dに搬入される被熱処理物は、搬入時に既に設定温度まで高められているため、被熱処理物を設定温度に維持するために必要な熱エネルギは少なくて済むためである。ヒータ11bによる加熱は、加熱炉12からの排気を必要としないため、環境に悪影響を与えず、省エネルギにも寄与する。
【0053】
図10のように、加熱炉ユニット10を時効硬化昇温炉10Eとして使用する際は、加熱炉12のバーナ11aにガス及びエアを供給して、図10にTaで示すように、加熱炉12内を設定温度である220℃まで高める(炉の昇温)。昇温の途中で、バーナ11aに供給するガス及びエアの量を抑制して、ヒータ11bを作動させる。つまり、ガスによる加熱と電気による加熱が併用して行われる。ここは、ガスのみにより加熱することもできるが、電気を併用することにより環境への悪影響を抑え、省エネルギにも寄与することができる。加熱炉12内が設定温度に到達した後は、バーナ11aの作動を停止してヒータ11bのみにより加熱炉12内が設定温度に維持される。その間、時効硬化昇温炉10Eに被熱処理物1~3が搬入される都度、被熱処理物1~3は、図10のTbで示すように、設定温度まで急速に加熱される。加熱炉12内を昇温する際は、バーナ11a(ガス)による加熱が行われるが、加熱炉12内を設定温度に維持する際は、加熱炉12はヒータ11bの作動のみとされている。なぜなら、時効硬化昇温炉10Eにおいて加熱される被熱処理物の温度は、図8の溶体化昇温炉10A、10Bとして使用する場合に比べて220℃と比較的低いため、加熱に必要な熱エネルギは少なくて済むためである。勿論、加熱炉12内を設定温度に維持する際も、ヒータ11bの作動のみではなく、必要に応じてガスによる加熱を併用することは可能である。
【0054】
図11のように、加熱炉ユニット10を時効硬化均熱炉10F、10Gとして使用する際は、加熱炉12のバーナ11aにガス及びエアを供給して、図11にTaで示すように、加熱炉12内を設定温度である220℃まで高める(炉の昇温)。昇温の途中で、バーナ11aに供給するガス及びエアの量を抑制して、ヒータ11bを作動させる。つまり、ガスによる加熱と電気による加熱が併用して行われる。ここは、ガスのみにより加熱することもできるが、電気を併用することにより環境への悪影響を抑え、省エネルギにも寄与することができる。加熱炉12内が設定温度に到達した後は、バーナ11aの作動を停止してヒータ11bのみにより加熱炉12内が設定温度に維持される。その間、時効硬化均熱炉10F、10Gに被熱処理物1~3が搬入される都度、被熱処理物1~3は、図11のTbで示すように、設定温度に維持される。加熱炉12内を昇温する際は、バーナ11a(ガス)による加熱が行われるが、加熱炉12内を設定温度に維持する際は、加熱炉12はヒータ11bの作動のみとされている。なぜなら、時効硬化均熱炉10F、10Gに搬入される被熱処理物は、搬入時に既に設定温度まで高められていること、しかも時効硬化均熱炉10F、10Gにおいて加熱される被熱処理物の温度は、図8の溶体化昇温炉10A、10Bとして使用する場合に比べて220℃と比較的低いことから、加熱に必要な熱エネルギは少なくて済むためである。なお、このような各加熱炉ユニット10A~10Gのバーナ装置11の制御は、制御装置13により行われる。
【0055】
被熱処理物の形状、種類等が変わって、熱処理条件を変える必要が生じた場合は、各加熱炉ユニット10A~10Gに対する制御内容を、変更された熱処理条件に合わせて変更して、各加熱炉ユニット10A~10Gにおける加熱特性を変更する。また、必要に応じて各焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bにおける冷却特性を変更する。この変更により熱処理条件の変更に対応することができ、各加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20B自体の変更、それらの配置の変更は行う必要がない。
【0056】
例えば、溶体化昇温炉10A、10B及び時効硬化昇温炉10Eにおける上昇温度をより高くする場合は、バーナ11aへのガス及びエア量を多くしてバーナ11aの発熱量を多くする。反対に上昇温度をより低くする場合は、バーナ11aへのガス及びエア量を少なくしてバーナ11aの発熱量を少なくする。また、溶体化均熱炉10C、10D及び時効硬化均熱炉10F、10Gにおける維持温度をより高くする場合は、ヒータ11bへの電流を増加してヒータ11bの発熱量を多くする。反対に維持温度をより低くする場合は、ヒータ11bへの電流を少なくしてヒータ11bの発熱量を少なくする。
【0057】
また、溶体化昇温炉10Bを溶体化均熱炉に変更する場合は、バーナ11a及びヒータ11bの作動制御を図8の内容から図9の内容に変更することにより実現することができる。また、時効硬化均熱炉10Fを時効硬化昇温炉に変更する場合は、バーナ11a及びヒータ11bの作動制御を図11の内容から図10の内容に変更することにより実現することができる。このように、バーナ11aの作動時間とヒータ11bの作動時間の比率(0~100%)、並びに各出力を調整することにより、同じ加熱炉ユニット10を昇温炉、均熱炉等に適宜使い分けることができる。
【0058】
更に、熱処理ステップが増加、若しくは減少するような熱処理条件の変更の場合は、各加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bに対し、新たな加熱炉ユニット10、焼入水槽20A又は冷却ユニット20Bを追加するか、若しくは各加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bのうちのいずれかを除去することにより対応することができる。
【0059】
以上のように、第1実施形態では、特定の被熱処理物に対する一連の熱処理を、複数の熱処理ステップに分割し、各ステップに対応して汎用の各加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bを配置している。そして、各加熱炉ユニット10A~10Gは、制御装置13により各熱処理ステップに必要な熱処理が行われるように作動させている。また、被熱処理物を搬送機30により各加熱炉ユニット10A~10G、焼入水槽20A及び冷却ユニット20Bにおいて必要な熱処理が行われるように搬送している。そのため、被熱処理物が変わって熱処理条件が変わったとき、制御装置13による各加熱炉ユニット10A~10Gに対する制御内容を変更するのみで各ステップに必要な熱処理を行わせることができる。従って、各加熱炉ユニット10A~10G自体は、汎用の加熱炉ユニット10を共通に使用することができる。即ち、汎用の加熱炉ユニット10を用いて制御装置13による制御内容を変更するのみで、熱処理条件の異なる複数種類の被熱処理物の熱処理を行うことができる。
【0060】
<第2実施形態の構成、作用、効果>
図12は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、第1実施形態における各加熱炉ユニット10A~10Dに対応する各加熱炉ユニット10A1~10D1(本発明の第2長時間ユニットに相当)の熱処理時間を、各30分から各60分に変更した点である。また、第1実施形態における溶体化昇温炉10Bを溶体化均熱炉10B1とした点である。更に、上記のように熱処理時間を変更したのに伴い、各加熱炉ユニット10A1~10D1に対し、それと同じ構成の加熱炉ユニット10A2~10D2(本発明の第2長時間ユニットに相当)を並列配置した点である。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0061】
第2実施形態において、搬送機30は、各加熱炉ユニット10A1~10D1、10E~10G、焼入水槽20A、及び冷却ユニット20Bに対して被熱処理物を搬送するように構成されている。また、加熱炉ユニット10A2~10D2に対しても、搬送機30と同様の搬送機30Aが設けられている。搬送機30Aは、搬送機30に対して焼入水槽20Aにて合流するように接続されている。搬送機30Aによる被熱処理物の搬送は、搬送機30による搬送に対して30分遅れで行われるように制御されている。
【0062】
図13は、各ユニット10A1~10D1、10A2~10D2、20A、10E~10G、及び20Bに対応する搬送機30、30Aによる被熱処理物の搬送タイミングを示すタイムチャートである。図13のT1の時点で、焼入水槽20A~冷却ユニット20B(本発明の第2短時間ユニットに相当)の被熱処理物の搬送が行われて、時効硬化昇温炉10E~時効硬化均熱炉10Gにより被熱処理物の熱処理が行われる。
【0063】
図14、15は、制御装置13による搬送機30、30Aの制御内容を示す。上述の焼入水槽20A~冷却ユニット20Bに対する搬送機30の制御内容が、ステップS1~ステップS6に示されている。この制御内容は、第1実施形態の場合と同一である。
【0064】
その27分後のT2の時点で、T1より3分前に被熱処理物の熱処理を行っていた溶体化昇温炉10A1~溶体化均熱炉10D1の被熱処理物の搬送が行われる。このT2の時点で、焼入水槽20Aに溶体化均熱炉10D1から搬出された被熱処理物が搬入されて焼入れ処理が行われる。この制御は、図14のステップS7~ステップS36の処理に相当する。この制御内容は、図7に示す第1実施形態のステップS7~ステップS26に対応するが、第2実施形態の場合は、図14のステップS8、ステップS9のようにステップS31以降の処理が行われたことを記憶するフラグFを設定している。
【0065】
その3分後のT3の時点で、焼入水槽20Aにおける被熱処理物の焼入れ処理は完了するので、焼入水槽20A~冷却ユニット20Bの被熱処理物の搬送が行われる。T3の時点で、時効硬化昇温炉10E~冷却ユニット20Bの被熱処理物の熱処理は30分を経過して完了している。この制御は、図14のステップS37、ステップS1~ステップS6の処理に相当する。この制御内容は、図7に示す第1実施形態のステップS27、ステップS1~ステップS6に対応する。
【0066】
T4の時点では、溶体化昇温炉10A2~溶体化均熱炉10D2の被熱処理物の搬送が行われる。この時点で、焼入水槽20Aに溶体化均熱炉10D2から搬出された被熱処理物が搬入されて焼入れ処理が行われる。この制御は、図15のステップS41~ステップS46の処理に相当する。T3の時点で、ステップS7の処理が実行され、ステップS8では、フラグFがセットされて「F=1」とされているため、T4の時点で、ステップS8からステップS41の処理に進むことになる。以降、T5、T6、T7、T8の各時点は、上述のT1、T2、T3、T4の各時点に相当しており、同じ操作が繰り返される。
【0067】
この結果、第2実施形態によれば、溶体化昇温炉10A1~溶体化均熱炉10D1の熱処理時間が60分で、時効硬化昇温炉10E~冷却ユニット20Bの熱処理が30分であり、搬送機30の前後間で搬送速度が異なるにも係わらず、無駄に被熱処理物を滞留させることなく熱処理を行うことができる。即ち、溶体化昇温炉10A1~溶体化均熱炉10D1に対し、これと同様の構成の溶体化昇温炉10A2~溶体化均熱炉10D2を並列に配置して、溶体化昇温炉10A1~溶体化均熱炉10D1と溶体化昇温炉10A2~溶体化均熱炉10D2における被熱処理物の搬送タイミングを30分ずらすことにより、生産性の高い熱処理を実現している。
【0068】
<その他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、被熱処理物をアルミニウムとし、熱処理として金属における熱処理を施す熱処理システムについて説明したが、本発明は、アルミニウム以外の金属の熱処理、又は半導体、セラミックス等の焼成、乾燥等を行う熱処理システムに適用してもよい。
【0069】
上記実施形態では、バーナ11aとヒータ11bを一つのバーナ装置11内にまとめて設けたが、加熱炉12内で互いに独立して設けてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10、10A~10G、10A1~10D1、10A2~10D2 加熱炉ユニット
11 バーナ装置
11a バーナ
11b ヒータ
12 加熱炉
13 制御装置
20A 焼入水槽(冷却ユニット)
20B 冷却ユニット
30、30A 搬送機
40 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15