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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20231108BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01F1/00 A
G01F1/00 Q
A61F5/44 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019133997
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021018144
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 一平
(72)【発明者】
【氏名】中妻 啓
(72)【発明者】
【氏名】兼松 明弘
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 公宏
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-39158(JP,A)
【文献】実開平6-75448(JP,U)
【文献】特開2011-75347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01N27/00-27/24
A61F 5/44- 5/458
A61F13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴を測定するための測定装置であって、
前記吸水層は、表面側層と、裏面側層と、前記表面側層と前記裏面側層の間の中間層を備え、
前記中間層の有効吸水領域は、前記表面側層との間に広がる第1電極と、前記裏面側層との間に広がる第2電極を備え、
前記第1電極及び前記第2電極による感度は、前記中間層の有効吸水領域の全体に一様に分布し、前記中間層の一部又は全部において、前記表面側層及び前記裏面側層よりも感度が高い、測定装置。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極は、導電性布である、請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴を測定するための測定装置であって、
前記吸水層は、表面側層と、裏面側層と、前記表面側層と前記裏面側層の間の中間層を備え、
前記中間層は、第1電極と、第2電極を備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、線状であり、
前記第1電極は前記中間層において直線状に縫い込まれて折り返して前記直線状に縫い込まれた部分から一定の間隔を空けて直線状に縫い込まれ、
前記第2電極は前記中間層において直線状に縫い込まれて折り返して前記直線状に縫い込まれた部分から一定の間隔を空けて直線状に縫い込まれ、
前記第1電極と前記第2電極において前記直線状に縫い込まれた部分は平行な部分を含み、
前記第1電極及び前記第2電極による感度は、前記中間層の有効吸水領域の全体に一様に分布し、前記中間層の一部又は全部において前記表面側層及び前記裏面側層よりも感度が高い、測定装置。
【請求項4】
前記第1電極は、前記第2電極が前記中間層において折り返した位置の少なくとも一つにおいて、直線状に縫い込まれて前記第2電極が折り返した位置を超えて折り返す、請求項3記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、測定装置及び測定方法に関し、特に、吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴を測定するための測定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
泌尿器系の疾患診断において、尿流率(単位時間当たりの排尿流量の時間履歴)の測定が重要な検査項目である。自立的に排尿できる患者に対しては、種々の尿流率測定装置が開発されている。他方、例えば自立的な排尿ができない乳幼児などでは、母親の協力を得て、定期的にオムツを点検して、排尿があった場合に排尿量を測定するなどの方法で排尿データを収集している。しかし、この方法では、排尿があったおよその時刻と排尿総量が分かるだけで、尿流率データは得られない。
【0003】
例えば特許文献1及び特許文献2には、排尿を吸収する吸収性物品の、使用者の肌に触れる側とは反対の外側表面に電極を配置して、おむつなどの排尿量を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-39158号公報
【文献】特開2002-224093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極インピーダンスにより尿総量を計測するためには、各瞬間の電極インピーダンスが、その瞬間に吸水層全体に浸みこんでいる尿総量と対応している必要がある。しかしながら、通常、電極インピーダンスと尿総量の関係は、非線形で動的(時間履歴に依存)である。吸水層に尿が拡散し、吸水層が尿を吸収保持する過程は複雑である。特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、電極を外側表面に配置するために、電極インピーダンス変化が尿総量変化に対して時間遅れが大きい。さらに、電極インピーダンス変化が飽和したり、尿総量変化は単調増加であるのに電極インピーダンスが減少方向に変化したり、電極インピーダンス変化が尿総量変化に追いつけず波形がなまる、などの現象が生じていた。吸水層内の尿の拡散・吸収過程を数理モデル化して、劣化した電極インピーダンス信号から尿流率を逆推定することは、現実には悪条件問題となり困難である。
【0006】
そこで、本願発明は、吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴(尿流率など)を精度よく推定することに適した測定装置等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の観点は、吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴を測定するための測定装置であって、前記吸水層は、表面側層と、裏面側層と、前記表面側層と前記裏面側層の間の中間層を備え、前記吸水層は、一対以上の電極を備え、前記電極は、前記中間層の一部又は全部において、前記表面側層及び前記裏面側層よりも感度が高い。
【0008】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の測定装置であって、前記中間層は、前記吸水層の表面と裏面との間の厚み方向の中央を含み、前記電解液は、前記吸水層の表面から流入して、裏面からは流入しない。
【0009】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の測定装置であって、前記電極の最大感度は、前記中間層の表面側と裏面側との間の厚み方向の中央及び/又は中央の近傍に存在する。
【0010】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の測定装置であって、前記電極の感度は、前記吸水層の有効吸水領域の全体に、一様に分布し、前記電極のインピーダンスは、前記電解液の総量との間の関係が線形近似できる。
【0011】
本願発明の第5の観点は、吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴を測定するための測定方法であって、前記吸水層は、表面側層と、裏面側層と、前記表面側層と前記裏面側層の間の中間層を備え、前記吸水層は、一対以上の電極を備え、前記電極は、前記中間層の一部又は全部において、前記表面側層と前記裏面側層よりも感度が高く、前記電極の間のインピーダンスが、少なくとも、前記中間層における電解液により変化するステップを含む。
【0012】
本願発明の第6の観点は、第5の観点の測定方法であって、前記電極のインピーダンスは、少なくとも、前記中間層で流れる拡散状態の電解液により変化するとともに、前記中間層に保持される吸水状態の電解液によっても変化して、前記吸水層に流入した前記電解液の総量との間の関係が線形近似できる。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の各観点によれば、吸水層に設置した電極の感度が、中間層において、表面側層及び裏面側層よりも高くする。特に、第3の観点にあるように厚さ方向に中央及び/又は中央の近傍で最大感度にする。これにより、吸水層に流入した電解液に対して、できるだけ時間遅れがないようにする。さらに、吸水層の内部で計測することにより、吸水層に流入した電解液を精度よく検出することができ、例えば第4や第6の観点にあるように、インピーダンスが、電解液の総量との間の関係が線形近似できるような精度で測定することができる。
【0014】
従来の技術では、主として、オムツの交換時期を知るために「排尿の有無」を検知すること、あるいは、オムツ交換の要否を判定するために「排尿総量」を推定することを目的としていた。それに対し、本願発明は、単位時間当たりの電解液の流量の時間履歴(尿の場合には尿流率)を高い精度で測定できるものである。
【0015】
なお、例えば特許文献1は、尿流率の測定に言及している。しかしながら、特許文献1では、電極を吸水層の外側(肌から遠い側)に接触させる構成であり、電解液検出感度の吸水層厚さ方向の分布は、吸水層の端面で最大値を取る。また、電極が25mm×25mmといった大きさの導体群から構成されており、電解液検出感度が一様とはみなせない。そのため、尿流率の測定結果は、十分な精度でないことが予想される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明の実施の形態に係る測定装置の構成の一例を示す。
図2】発明者らが作成した吸水層の一例を示す第1図である。
図3】発明者らが作成した吸水層の一例を示す第2図である。
図4】発明者らによる実験を示すグラフである。
図5】本願発明の実施の形態に係る測定装置の構成の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0018】
図1は、本願発明の実施の形態に係る測定装置の構成の一例を示す。測定装置1は、吸水層に流入した電解液の単位時間当たりの流量の時間履歴を測定するためのものである。測定装置1は、吸水層3(本願請求項の「吸水層」の一例)と、計測部5を備える。吸水層3は、電解液を吸水して保持する。以下では、吸水層3の上面を表面とし、下面を裏面とする。「厚さ」は、表面と裏面の間である。厚み方向は、図1の上下方向である。電解液は、表面から流入する。以下では、吸水層3はおむつであり、電解液は尿であるとする。おむつは、表面が肌に接触し、裏面が肌から遠い状態で使用するとする。
【0019】
吸水層3は、厚さ方向に3つの層に分かれ、表面側を表面側層7(本願請求項の「表面側層」の一例)とし、裏面側を裏面側層11(本願請求項の「裏面側層」の一例)とし、表面側層7と裏面側層11の間の層を中間層9(本願請求項の「中間層」の一例)とする。例えば、吸水層3を厚さ方向に4等分し、表面側を表面側層7とし、裏面側を裏面側層11とし、表面側層7と裏面側層11の間の2つの層を併せて中間層9としてもよい(図3(b)及び(c)参照)。
【0020】
中間層9は、一対の電極131及び132(本願請求項の「電極」の一例)を備える。そのため、中間層9では、電極13の感度は、表面側層7及び裏面側層11よりも高い。ここで、電極13の感度は、中間層9の厚さ方向に全体で高くてもよく(図2及び図3など参照)、一部で高くてもよい。また、電極131及び132の最大感度は、中間層9の厚さ方向の中央に存在してもよく、中央の近傍に存在してもよく、中央を含まずに近傍のみに分布してもよく、中央を含んでその近傍に分布してもよい。なお、電極は、一対以上であってもよい。また、電極13の最大感度は、吸水層3の厚さ方向の中央及び/又はその近傍に存在してもよい。
【0021】
おむつとしての役割から、一般的に、表面側層7は、肌に近く、中間層9の電極13が直接肌に触れないようにし、さらに、できるだけ尿を集めつつ逆流を防ぐことが期待される。中間層9は、吸水した尿の大部分を保持する役割を担うことが期待される。裏面側層11は、中間層9の尿が外側に浸みださないようにすることが期待される。なお、表面側層7と中間層9と裏面側層11は、一体のものでもよく、分離したものでもよい。
【0022】
電極13は、計測部5と電気的に接続されている。表面から流入した電解液が電極131及び132に到達すると、計測部5は、電極間のインピーダンス(電極インピーダンス)の変化を計測する。計測部5は、電解液である尿が吸水層に浸潤するのに伴って変化する電極インピーダンスを測定して、その値に基づいて吸水層に含まれる尿量の時間変化を推定し、さらにその時間微分を計算して、尿流量を推定する。なお、電極インピーダンスは、抵抗(コンダクタンス)を用いてもよく、キャパシタンス(容量性サセプタンス)を用いてもよい。
【0023】
おむつは、尿を保持するためのものである。表面側層7、中間層9及び裏面側層11は、吸水層3の表面から流入した尿を保持する。電極インピーダンスにより尿総量を計測するためには、各瞬間の電極インピーダンスが、その瞬間に吸水層全体に浸みこんでいる尿総量と対応している必要がある。
【0024】
おむつの一般的な傾向から、表面側層7では、尿を保持するために、表面側から裏面側に流入している状態(拡散状態)が多いことが予想される。そのため、表面側層7でインピーダンスを測定しようとしても、電解液は表面側層7から中間層9へと流れてしまい、計測できる状態のものが少なくなる可能性が高い。
【0025】
他方、裏面側層11では、中間層9などを経て拡散状態が弱まり、保持される吸水状態になることが予想される。そのため、裏面側層11に浸みこむ尿は、流入してから時間が経過した後である。そのため、裏面側層11に浸みこんでいる尿は、尿総量と対応しているとは認め難い。特に、特許文献1や特許文献2では、裏面側層11のさらに外側に電極を配置し、吸水層から空気中へと浸みだす尿を測定している。尿を保持するというおむつの役割を考慮すれば、外側表面の電極にて測定された尿は、総量とは異なる可能性が高い。
【0026】
それに対し、中間層9では、表面側層7に流入した尿が時間の遅れが少なく測定でき、さらに、裏面側層11に浸みだす前に保持された尿をも測定することができる。このように、拡散状態と吸水状態の尿をバランスよく測定することができる。そのため、高い精度での測定を可能とする。
【0027】
図2及び図3は、発明者らが作成した吸水層の一例を示す。図2(a)は、吸水層の中間層21の構成を示す。図2(b)は、図2(a)を側面から見たときの2本の銅線の位置関係を示す参考図である。図2(c)は、吸水層23を示す。図2(d)は、図2(c)を側面から見たときの2本の銅線などの位置関係を示す参考図である。
【0028】
図3(a)は、発明者らが作成した中間層の実物の一例を撮影したものである。吸水材は、布おむつ(綿布)である。中間層は、4枚重ねであり、吸水層内層は150mm×150mmである。中間層は、図2(a)及び(b)にあるように、電極として2つの銅線が縫い込まれている。電極の編み込みピッチは、5mm間隔である。尿を測定することができる有効吸水領域では、全体として、マクロに見て一様な感度となるようにしている。マクロに見て一様な感度とは、有効吸水領域の異なる場所に、所定量の尿を同様に流入させた場合に、同様の変化をするように配置するものである。例えば特許文献1では、電極が25mm×25mmといった大きさの導体群から構成されており、電解液検出感度が一様とはみなせない。
【0029】
図3(b)は、発明者らが作成した中間層の実物の他の一例を撮影したものである。吸水材は、布おむつである。中間層は、4枚重ねであり、吸水層内層は80mm×80mmである。中間層は、図3(a)と同様に、電極として、2つの銅線が縫い込まれている。
【0030】
図3(c)は、図3(b)を中間層として、外層をも含めた実物を撮影したものである。吸収層外層は、図3(b)の中間層の上下に、それぞれ、表面側層及び裏面側層として布おむつ2枚重ねを配置して挟んでいる。吸水層は、実質的に、布おむつ8枚重ねであり、上2枚が表面側層、中間4枚が吸水層23、下2枚が裏面側層である。吸水層23は、同じ素材にて、表面側層、中間層及び裏面側層を構成している。
【0031】
図4は、発明者らによる実験を示すグラフである。図4(a)は、アドミタンス(線L11:実線)と尿流率(ml/s)(線L12:破線)の関係を示す。横軸は、時間である。尿流率は、アドミタンス波形を数値的に時間微分して求めることができる。
【0032】
図4(b)は、図3(a)の中間層に、図3(c)と同様の外層を設けた場合の実験結果を示す。シリンジポンプにより釣り鐘型の流率で模擬尿を滴下する。図4(b)は、シリンジポンプの移動速度から求めた尿流率(線L21:破線)と、図2のおむつ型センサにより測定した値(線L22:実線)を示す。横軸は時間(s)、縦軸は微係数((1/Ω)/s)である。シリンジポンプの移動速度から求めた尿流率は、不確かさ2%程度で真値と一致することを確認している。おむつ型センサは、高い精度で正確な尿流率を検出している。なお、尿の総量は、例えばおむつの重さを測定することで、高い精度で得られる。おむつ型センサによる測定結果(L22)は、おむつの重さなどを利用してキャリブレーションをすることなどによって、L21に一致する精度を高めることができる。
【0033】
図4(c)は、吸水材を電極の上に重ねる構成(特許文献1、特許文献2など参照)の場合の測定結果を示す。横軸は時間(s)、縦軸はアドミタンス(1/Ω)である。線L31、線L32及び線L33は、それぞれ、吸水材として、さらし5枚、10枚及び15枚を重ねたときの、5ml/sの一定流量で模擬尿を滴下したときの電極アドミタンス波形を示す。電解液が電極面に到達するまでに時間がかかり、電極インピーダンス変化には遅れが生じている。吸水材の厚みが増すほど、アドミタンス変化の遅れが増大する。
【0034】
図4(d)は、図3(c)のおむつ型センサによる測定結果を示す。横軸は時間(s)、縦軸はアドミタンス(1/Ω)である。線L41(破線)は、5ml/sの一定流量で滴下した模擬尿を示す。線L42(実線)は、模擬尿を滴下したときの電極アドミタンス波形を示す。図4(d)では、吸水層の中間層に電極を設置して、吸水層の厚みの中央近傍に電極の最大感度が一致するように電極を構成して、遅れができるだけ小さくなっている。実際、図4(d)では、図4(c)と比較して、遅れが大幅に縮小されている。
【0035】
図4(e)及び図4(f)を参照して、有効吸水領域について説明する。電極感度の面的分布が、マクロに見て一様であることは、電極インピーダンスが吸収尿量に比例するための必要条件である。同じ量の尿が吸水層に吸収されても吸収の場所によって異なるインピーダンスを示すのであれば、インピーダンスと吸収量は比例しない。さらに、感度の分布が、有効吸水領域全体を覆うことも重要である。感度を持たない領域にまで尿が拡散したとき、感度分布外の尿は電極インピーダンスに寄与しないため、インピーダンスと吸水量が比例しなくなる。
【0036】
図4(e)及び図4(f)は、図3(c)のおむつ型センサによる、滴下総量の違いによる影響を示すものである。図3(c)では、電極感度分布(銅線縫込み領域)は80mm×80mmと小さい。図4(e)は、滴下総量が50mlである場合の尿流率(線L51)と、おむつ型センサにより測定した値(線L52)を示す。横軸は時間(s)、縦軸はアドミタンス増加値((1/Ω)/s)である。図4(e)は、この場合、正確に尿流率が測定できている。他方、図4(f)は、滴下総量が100mlである場合の尿流率(線L61)と、おむつ型センサにより測定した値(線L62)を示す。横軸は時間(s)、縦軸はアドミタンス増加値((1/Ω)/s)である。この場合、総尿量は減っていないはずなのにアドミタンスが減少するように、電解液が電極感度分布の外側に拡散して正確な測定ができない部分が生じた。なお、図3(a)の大きさであれば、有効吸水領域の面積が3.5倍以上であるため、滴下総量が100mlであっても高い精度で測定できることが期待される。
【0037】
図3の電極によって、従来の電極の問題点を解消し、インピーダンスと尿総量の間の関係を実用上十分な程度で線形近似することが可能となった。さらに、電極のインピーダンスを数値微分することで、尿流率も実用上十分な精度で推定することができた。
【0038】
図5(a)及び(b)は、本願発明の実施の形態に係る他の一例を示す。図5(a)を参照して、吸水層内層(電極層)は、吸水材の上下に導電性布を配置した構成とした例である。吸水層外層として、吸水層内層の上下に吸水材を配置する。図5(b)は、図5(a)を側面から見たときの吸収材外層と、吸収材内層(吸収剤と上下の導電性布)の位置関係を示す参考図である。
【0039】
図5(c)及び(d)は、本願発明の実施の形態に係るさらに他の一例を示す。図5(c)を参照して、内層は、櫛歯型電極を配置した構成とする。吸水層外層として、内層の上下に吸水材を配置する。図5(d)は、図5(c)を側面から見たときの吸収材と櫛歯形電極の位置関係を示す参考図である。
【符号の説明】
【0040】
1 測定装置、3,23 吸水層、5 計測部、7 表面側層、9,21 中間層、11 裏面側層、13 電極
図1
図2
図3
図4
図5