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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/32 20060101AFI20231108BHJP
   B63B 25/04 20060101ALI20231108BHJP
   B63B 27/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B66C13/32 K
B63B25/04 Z
B63B27/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019159546
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021038047
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】310020482
【氏名又は名称】株式会社相浦機械
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】田崎 良佑
(72)【発明者】
【氏名】ホ ドゥク トオ
(72)【発明者】
【氏名】爪 光男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
(72)【発明者】
【氏名】野中 眞治
(72)【発明者】
【氏名】吉本 貴司
(72)【発明者】
【氏名】木村 司
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189389(JP,A)
【文献】特開昭63-017793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B63B 25/04
B63B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置に置かれた搬送物を、前記第1位置と異なる第2位置に搬送する搬送装置であって、
前記搬送物を保持する第1状態及び前記搬送物を落下させる第2状態を有するバケットと、
前記バケットを吊り下げるロープと、
前記ロープの上端部を保持するとともに、前記バケットによって前記第1位置に置かれた前記搬送物を拾い上げて保持させる位置である第1搬送位置から、前記第2位置の直上に位置する第2搬送位置に向かう方向である搬送方向に沿って移動可能な移動体と、
前記移動体の移動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記移動体を前記第1搬送位置に位置させて、かつ、前記バケットを前記第1位置にて前記第2状態から前記第1状態に切り替えて、前記バケットによって前記搬送物を拾い上げて保持させる第1制御部と、
前記第1制御部によって前記搬送物が保持されたことに応じて、前記第1搬送位置から前記搬送方向に沿って前記第2搬送位置に向けて前記移動体の移動を開始させ、前記第1搬送位置と前記第2搬送位置との間の第3搬送位置にて前記移動体の移動を終了させる移動体制御を実行する第2制御部であって、前記第3搬送位置は、前記移動体の移動により生じる前記ロープの前記搬送方向の振れによって前記バケットが前記第2位置の直上に到達する位置である、前記第2制御部と、
前記第2制御部によって前記バケットが前記第2位置の直上に到達したときに、前記バケットを前記第1状態から前記第2状態に切り替えることにより、前記搬送物を前記第2位置に落下させる第3制御部と、
前記移動体の移動によって生じる前記バケットの前記搬送方向の運動を、前記移動体の加速度及び前記ロープの延びる方向と鉛直方向とのなす角度を用いて表された数理モデルである搬送運動モデルを記憶する記憶部と、
前記ロープの前記搬送方向の振れによって前記バケットを前記第2位置の直上に位置させる前記移動体の駆動パターンを、前記搬送運動モデルを用いて導出する導出部と、を備え
前記導出部は、前記ロープの長さに対応する固有振動数を含んだ正弦波を、前記搬送運動モデルに対する制御入力として用いることで、前記移動体が移動したことにより生じる前記ロープの振れを共振周波数によって最大化させる前記移動体の駆動パターンを導出し、
前記第2制御部は、前記導出部によって導出された前記移動体の駆動パターンを用いて、前記移動体制御を実行する搬送装置。
【請求項2】
前記導出部は、前記第1搬送位置と前記第3搬送位置との間の第4搬送位置から、前記第3搬送位置までの前記移動体の動作パターンを、前記搬送運動モデルを用いて導出する、請求項に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記導出部は、前記第1搬送位置から前記第4搬送位置までの前記移動体の動作パターンを、バンバン制御に基づいて導出する請求項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の港へばら積み貨物の荷揚げを行うばら積み貨物船の一形式が開示されている。特許文献1のばら積み貨物船は、隣り合うハッチの間に配置されたデッキクレーンと、ハッチの横の一方の舷側に配置されたホッパと、このホッパの下側でかつハッチの横における一方の舷側に沿って船長方向に配置された第1コンベアと、一端側が第1コンベアに接続して第1コンベアから受けたばら積み貨物を他方の舷側に搬送する第2コンベアと、この第2コンベアに一端側が接続し、他端側が舷側から陸上側に旋回する第1旋回式ブームコンベアを備えて構成されている。
【0003】
特許文献1のばら積み貨物船によれば、複数の港へばら積み貨物を荷揚げするために複雑な機構の荷役設備を設けることなく、簡便で比較的軽量な設備を組み合わせることで、搭載する荷役設備を軽量化できて、より積載能力を高めることができ、かつ荷役効率を高めることで、二酸化炭素の排出量を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-180692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなばら積み貨物船においては、積載されたばら積み貨物等の搬送物の量に応じて、移動体が搬送物を搬送する回数が多くなる。また、ばら積み貨物をデッキクレーンのバケットでつかみ、所定の位置までバケットを搬送して荷下ろしする場合、バケットが搬送時に振動してしまうため、振動が治まるまで待ってからバケットを開き、貨物を降ろさなければ、所定の位置に貨物を降ろすことができなかった。よって、上述した積載能力を高める要請の他、搬送物の搬送時間を短時間化させる要請がある。
【0006】
そこで、本明細書は、搬送物の搬送時間を短時間化することができる搬送装置を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示された実施例に記載の搬送装置は、第1位置に置かれた搬送物を、第1位置と異なる第2位置に搬送する搬送装置であって、搬送物を保持する第1状態及び搬送物を落下させる第2状態を有するバケットと、バケットを吊り下げるロープと、ロープの上端部を保持するとともに、バケットによって第1位置に置かれた搬送物を拾い上げて保持させる位置である第1搬送位置から、第2位置の直上に位置する第2搬送位置に向かう方向である搬送方向に沿って移動可能な移動体と、移動体の移動を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、移動体を第1搬送位置に位置させて、かつ、バケットを第1位置にて第2状態から第1状態に切り替えることにより、バケットによって搬送物を拾い上げて保持させる第1制御部と、第1制御部によって搬送物が保持されたことに応じて、第1搬送位置から搬送方向に沿って第2搬送位置に向けて移動体の移動を開始させ、第1搬送位置と第2搬送位置との間の第3搬送位置にて移動体の移動を終了させる移動体制御を実行する第2制御部であって、第3搬送位置は、移動体の移動により生じるロープの搬送方向の振れによってバケットが第2位置の直上に到達する位置である、第2制御部と、第2制御部によってバケットが第2位置の直上に到達したときに、バケットを第1状態から第2状態に切り替えることにより、搬送物を第2位置に落下させる第3制御部と、移動体の移動によって生じるバケットの搬送方向の運動を、移動体の加速度及びロープの延びる方向と鉛直方向とのなす角度を用いて表された数理モデルである搬送運動モデルを記憶する記憶部と、ロープの搬送方向の振れによってバケットを第2位置の直上に位置させる移動体の駆動パターンを、搬送運動モデルを用いて導出する導出部と、を備え、導出部は、ロープの長さに対応する固有振動数を含んだ正弦波を、搬送運動モデルに対する制御入力として用いることで、移動体が移動したことにより生じるロープの振れを共振周波数によって最大化させる移動体の駆動パターンを導出し、第2制御部は、導出部によって導出された移動体の駆動パターンを用いて、移動体制御を実行する
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示された実施例に記載の搬送装置によれば、搬送物をバケットによって第1位置から第2位置に搬送する場合、バケットを吊り下げるロープを保持する移動体が、搬送物をバケットに保持させる第1搬送位置から、第1搬送位置と、第2位置の直上に位置する第2搬送位置との間の第3搬送位置まで移動して停止する。さらにバケットがロープの振れによって第2位置の直上に位置し、搬送物が第2位置に落下する。よって、移動体が第1搬送位置から第2搬送位置まで移動する場合に比べて、移動体の移動距離ひいては搬送時間を短くすることができる。したがって、搬送物の搬送時間を短時間化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書の実施例に係る搬送装置の概要図である。
図2】搬送装置のブロック図である。
図3】移動体制御のうち第1制御が実行された場合における移動体の駆動パターン及び移動体の動作を示す図であり、上段から下段に向けて順に、移動体の加速度、移動体の速度、及び、移動体の移動距離を示している。
図4】制御装置によって実行されるプログラムのフローチャートである。
図5】移動体制御のうち、第2制御が搬送距離を10mに設定されて実行された場合における移動体の駆動パターン、移動体の動作、及びバケットの動作を示す図であり、上段から下段に向けて順に、図中の実線が、バケットの移動距離、ロープ角度、ロープ角速度、移動体の速度、及び、移動体の加速度を示している。なお、バケットの移動距離における( )内の文字は、バケットの搬送方向の位置を示している。また、図中の破線は、第2制御に代えて、最短時間制御であるバンバン制御が実行された場合を示すものである。
図6】移動体制御のうち、第2制御が搬送距離を20mに設定されて実行された場合における移動体の駆動パターン、移動体の動作、及びバケットの動作を示す図であり、上段から下段に向けて順に、図中の実線が、バケットの移動距離、ロープ角度、ロープ角速度、移動体の速度、及び、移動体の加速度を示している。なお、バケットの移動距離における( )内の文字は、バケットの搬送方向の位置を示している。また、図中の破線は、第2制御に代えて、最短時間制御であるバンバン制御が実行された場合を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書の実施例に係る搬送装置1について図面を参照しながら説明する。搬送装置1は、図1に示す第1位置Ps1に置かれた搬送物2を、第1位置Ps1と異なる第2位置Ps2に搬送するものである。搬送物2は、例えば木材チップである。以下、搬送物2をチップ2と記載する。
【0011】
第1位置Ps1は、チップ2を運搬する貨物船(図示省略)において、チップ2を置かれる船倉3が設けられた位置に相当する。第2位置Ps2は、チップ2を受け入れるホッパ4が配置された位置に相当する。搬送装置1は、クレーン10及び制御装置20(図20)を備えている。
【0012】
クレーン10は、本実施例において天井クレーンである。クレーン10は、バケット11、ロープ12、レール13、及び、移動体14を備えている。
【0013】
バケット11は、チップ2を保持する第1状態及びチップ2を落下させる第2状態を有するものである。バケット11は、開閉式のグラブバケットである。バケット11は、第1位置Ps1にて開状態から閉状態にすることにより、チップ2を拾い上げて保持する。また、バケット11は、第2位置Ps2の直上にて、チップ2を保持した閉状態から開状態にすることによりチップ2を落下させる。第1状態がバケット11の閉状態に相当し、第2状態がバケット11の開状態に相当する。以下、第1状態を開状態と記載し、第2状態を閉状態と記載する。
【0014】
バケット11の開状態と閉状態との切替は、開閉用ワイヤーロープ(図示省略)およびロープ12の巻上げ及び巻下げによって実行される。各ロープの巻上げ及び巻下げは、バケット駆動部11a(図2)の駆動されることにより行われる。バケット駆動部11aは、例えばロープ12が巻き付けられるドラム(図示省略)及びサーボモータ(図示省略)を含んで構成されている。
【0015】
ロープ12は、バケット11を吊り下げるものである。ロープ12は、ワイヤーロープであり、伸縮不能に設けられている。
【0016】
レール13は、第1位置Ps1および第2位置Ps2の上方にて搬送方向Xに沿って設けられ、上側面にて移動体14を搬送方向Xに沿って移動可能に支持するものである。搬送方向Xは、水平方向である。搬送方向Xは、図1の左右方向である。
【0017】
移動体14は、ロープ12の上端部を保持するとともに、バケット11によって第1位置Ps1に置かれたチップ2を拾い上げて保持させる第1搬送位置Px1から第2位置Ps2の直上に位置する第2搬送位置Px2に向かう方向である搬送方向Xに沿って移動可能なものである。移動体14は、トロリである。移動体14は、ロープ12を巻上げ及び巻下げ可能に保持する。
【0018】
第1搬送位置Px1は、レール13の上側面における第1位置Ps1の直上に対応する位置である。第1搬送位置Px1の搬送方向Xの位置は、X0(X=X0)である。第2搬送位置Px2は、レール13の上側面における第2位置Ps2の直上に対応する位置である。第2搬送位置Px2の搬送方向Xの位置は、X3(X=X3)である。移動体14に収納された移動体駆動部14aの駆動によって車輪14bが回転することにより、移動体14がレール13の上側面を搬送方向Xに沿って移動する。移動体駆動部14aは、サーボモータ(図示省略)を含んで構成されている。
【0019】
ここで、チップ2の搬送方法について説明する。はじめにバケット11によってチップ2が拾い上げられて保持される。具体的には、第1搬送位置Px1に位置する移動体14から、ロープ12が巻き下げられることによって、バケット11が第1位置Ps1に位置する。さらに、バケット11が開状態から閉状態に切り替えられることによってバケット11がチップ2を保持した後、ロープ12の長さが所定長さになるまでロープ12が巻上げられる。所定長さは、移動体14が搬送方向Xに沿って移動する場合におけるロープ12の長さである。
【0020】
ロープ12の長さが所定長さの状態にて移動体14が第1搬送位置Px1から、搬送方向Xに沿って第2搬送位置Px2に向けて移動する。移動体14の移動、及び、移動体14の移動によって生じるロープ12の搬送方向Xの振れによって、バケット11が第2位置Ps2の直上に位置したとき、バケット11が閉状態から開状態に切り替えられる。これにより、チップ2が落下して第2位置Ps2に位置する。
【0021】
このときのバケット11の位置は、搬送方向Xにおいては第2搬送位置Px2に相当し、具体的には、第2位置Ps2の直上、かつ、第2搬送位置Px2の直下の位置である。移動体14は、後述する移動体制御によって制御され、第1搬送位置Px1から、第2搬送位置Px2より搬送方向Xに沿って第1搬送位置Px1側に位置する第3搬送位置Px3まで移動する。第3搬送位置Px3の搬送方向Xの位置は、X2(X=X2)である。
【0022】
次に、制御装置20について図2を用いて説明する。制御装置20は、移動体14の移動を制御するものである。制御装置20は、記憶部21、取得部22、導出部23、第1制御部24、第2制御部25、及び、第3制御部26を備えている。
【0023】
記憶部21は、移動体14の移動によって生じるバケット11の搬送方向Xの運動を、移動体14の加速度及びロープ12の延びる方向と鉛直方向Yとのなす角度を用いて表された数理モデルである搬送運動モデルを記憶するものである。以下、ロープ12の延びる方向と鉛直方向Yとのなす角度をロープ角度と記載する。鉛直方向Yは、図1の上下方向である。なお、ロープ角度は、図1において時計周りの方向を正の方向とする。
【0024】
搬送運動モデルは、バケット11及びロープ12を単振り子とみなすことにより、式(1)によって示される。lはロープ12の所定長さ、gは重力加速度、θはロープ角度、及び、xは移動体14の搬送方向Xの位置を示している。ロープ角加速度は、ロープ12の角加速度である。
【0025】
【数1】
【0026】
また、記憶部21は、搬送運動モデルに対する制御入力を記憶する。制御入力は、式(2)によって示される。a及びbは制御ゲイン、ωはロープ12の長さに対応する固有振動数、並びに、tは経過時間を示している。制御入力にロープ12の長さに対応する固有振動数を含んだ正弦波を用いることにより、ロープ12の共振を利用して、ロープ角度の最大化を図ることができる。以下、この制御入力を、正弦波制御入力と記載する。
【0027】
【数2】
【0028】
取得部22は、各パラメータを取得するものである。各パラメータは、搬送距離、第2制御距離、バケット11の重量、バケット11によって保持されるチップ2の重量、ロープ12の所定長さ、移動体14の最大加速度、及び、移動体14の最大速度である。
【0029】
搬送距離は、搬送方向Xにおけるバケット11の移動距離である。すなわち、搬送距離は、第1搬送位置Px1と第2搬送位置Px2との間の搬送方向Xに沿った距離d1である(図1)。第2制御距離は、後述する第2制御が実行される距離d2である(図1)。第2制御距離は、具体的には、搬送方向Xにおける第1搬送位置Px1と第2搬送位置Px2との間の第2制御開始位置Pcから、第2搬送位置Px2までの距離である(図1)。第2制御開始位置Pcは、第2制御が開始される位置であり、第3搬送位置Px3より第1搬送位置Px1側に位置する。第2制御開始位置Pcの搬送方向Xの位置は、X1(X=X1)である。なお、第2制御開始位置Pcは、特許請求の範囲に記載の第4搬送位置に相当する。
【0030】
各パラメータは、入力部5によって入力される。入力部5は、キーボードなどのインターフェースである。取得部22によって取得された各パラメータは、導出部23に導出される。
【0031】
導出部23は、ロープ12の搬送方向Xの振れによってバケット11を第2位置Ps2の直上に位置させる移動体14の駆動パターンを、搬送運動モデルを用いて導出するものである。具体的には、導出部23は、第1搬送位置Px1から第2制御開始位置Pcまでの移動体14の駆動パターンを、第1制御に基づいて導出する。さらに、導出部23は、第2制御開始位置Pcから第3搬送位置Px3までの移動体14の駆動パターンを、搬送運動モデルを用いた第2制御に基づいて導出する。
【0032】
第1制御は、最適制御の一つであるバンバン制御である。第1制御を開始する時点の制約条件として、移動体14の移動距離がゼロ、及び移動体14の速度がゼロに設定される。一方、第1制御を終了する時点の制約条件として、移動体14の移動距離が、搬送距離から第2制御距離を差し引いた距離に設定され、かつ、移動体14の速度がゼロに設定される。また、その他の制約条件として、第1搬送位置Px1から第2制御開始位置Pcまでの移動体14の移動する時間が最短となるように設定される。
【0033】
このような制約条件に基づいて導出される第1制御における移動体14の駆動パターンは、移動体14の加速度として導出される。この移動体14の駆動パターンは、具体的には、図3に示すように、第1搬送位置Px1(X=X0)から移動体14の駆動を開始して(時刻t0)、移動体14の速度が最大速度に到達するまで(時刻t1)、移動体14の加速度が移動体14の正の最大加速度に設定される。この移動体14の駆動を開始した時刻(時刻t0)から、移動体14の速度が最大速度に到達した時刻(時刻t1)までの時間を第1時間T1とする。なお、この正の最大加速度に設定される第1時間T1のうち一旦減速される第2時間T2が設けられる。
【0034】
続けて、移動体14の加速度がゼロに設定される。さらに、移動体14が第2制御開始位置Pc(X=X1)に到達する時刻(時刻t3)より第1時間T1を差し引いた時刻(時刻t2)から、第1時間T1が経過した時刻(時刻t3)まで、移動体14の加速度が移動体14の負の最大加速度に設定される。なお、この負の最大加速度に設定される第1時間T1のうち一旦加速される第3時間T3が設けられる。第2時間T2と第3時間T3とは、同じ時間に設定される。このように、移動体14が加速される駆動パターンと移動体14が減速される駆動パターンとが正負で反対となる。
【0035】
第2制御における移動体14の駆動パターンは、上述した搬送運動モデルに対して正弦波制御入力を用いられることにより導出される。また、第2制御を開始する時点における制約条件として、移動体14の第2制御による移動距離がゼロ、移動体14の速度がゼロ、ロープ角度がゼロ、ロープ12の角速度がゼロに設定される。すなわち、ロープ12の振れや振動が抑制された状態にて移動体14の第2制御による駆動が開始される。以下、ロープ12の角速度をロープ角速度と記載する。
【0036】
さらに、第2制御を終了する時点における制約条件として、バケット11の位置を第2位置Ps2の直上の位置、移動体14の速度をゼロ、ロープ角速度をゼロに設定される。すなわち、ロープ12及びバケット11を単振り子とみなしたとき、第2制御を終了する時点において、バケット11の位置は単振り子の振幅に相当する位置に位置し、かつ、バケット11の位置が第2位置Ps2の直上に位置した状態にて、移動体14の駆動が停止する。
【0037】
このような制約条件にて、第2制御が実行される時間を最短とするように、正弦波制御入力の制御ゲインが数値解析によって求められることにより、移動体14の駆動パターンが移動体14の加速度として導出される(図5)。導出部23は、移動体14の駆動パターンを導出したことを、第1制御部24に出力する。
【0038】
第1制御部24は、移動体14を第1搬送位置Px1に位置させて、かつ、バケット11を第1位置Ps1にて開状態から閉状態に切り替えて、バケット11によってチップ2を拾い上げて保持させる処理を実行する。第1制御部24は、具体的には、上述したようにロープ12を巻き下げて、バケット駆動部11aに制御信号を出力することにより、バケット11を開状態から閉状態に切り替える。さらに、第1制御部24は、ロープ12の長さが所定長さになるまでロープ12を巻き上げる。第1制御部24は、これらの処理の終了時に、これらの処理が終了したことを、第2制御部25に出力する。
【0039】
第2制御部25は、第1制御部24によってチップ2が保持されたことに応じて、第1搬送位置Px1から搬送方向Xに沿って第2搬送位置Px2に向けて移動体14の移動を開始させ、第1搬送位置Px1と第2搬送位置Px2との間の第3搬送位置Px3にて移動体14の移動を終了させる移動体制御を実行する。第3搬送位置Px3は、移動体14の移動により生じるロープ12の搬送方向Xの振れによってバケット11が第2位置Ps2の直上に到達する位置である。
【0040】
移動体制御は、上述した第1制御および第2制御である。第1制御および第2制御は、この順に連続して実行される。第2制御部25は、第1制御部24の処理の終了したことが出力されたことに応じて、導出部23によって導出された移動体14の駆動パターンに基づいて、移動体駆動部14aに制御信号を出力する。第2制御部25は、移動体制御の終了時に、移動体制御が終了したことを第3制御部26に出力する。
【0041】
第3制御部26は、第2制御部25によってバケット11が第2位置Ps2の直上に到達したときに、バケット11を第1状態から第2状態に切り替えることにより、チップ2を第2位置Ps2に落下させる。第3制御部26は、具体的には、移動体制御が終了した時点に、バケット駆動部11aに制御信号を出力することにより、バケット11を第1状態から第2状態に切り替える処理を実行する。
【0042】
次に、制御装置20が実行するプログラムについて図4のフローチャートを用いて説明する。制御装置20は、S10にて、各パラメータが入力されたか否かを判定する(取得部22)。各パラメータが入力されていない場合、制御装置20は、S10にてNOと判定し、S10を繰返し実行する。一方、各パラメータが入力された場合、制御装置20は、S10にてYESと判定し、S20に進む。
【0043】
制御装置20は、S20にて、移動体14の駆動パターンを導出する(導出部23)。続けて、制御装置20は、S30にて第1位置Ps1にてチップ2を拾い上げて保持し(第1制御部24)、S40にて移動体制御を実行する(第2制御部25)。さらに、制御装置20は、S50にて第2位置Ps2にチップ2を落下させ(第3制御部26)、S60にて移動体14を第1搬送位置Px1に戻す。
【0044】
次に、上述したフローチャートが実行された場合における搬送装置1の動作について、図1の概要図、並びに図3及び図5のタイムチャートを用いて説明する。はじめに、第2制御距離が10m(=d2)に設定された場合について説明する。また、他の各パラメータは次のように入力される。搬送距離は、10mより大きく、第1搬送位置Px1と第2制御開始位置Pcとの間を移動体14が最大速度にて走行可能な距離に設定される。チップ2の重量は4000kg、ロープ12の所定長さは20m、移動体14の最大加速度は0.6m/s、及び、移動体14の最大速度は1.5m/sに設定される。
【0045】
各パラメータが入力されたことに応じて(S10でYES)、移動体14の駆動パターンが導出される(S20)。具体的には、第1搬送位置Px1(X=X0)から第2制御開始位置Pc(X=1)までの移動体14の加速度が図3に示す移動体14の加速度に示されるように導出される。さらに、第2制御開始位置Pcから第3搬送位置Px3(X=2)までの移動体14の駆動パターンが図5に実線にて示す移動体14の加速度に示されるように導出される。
【0046】
移動体14の駆動パターンが導出されたことに応じて、第1位置Ps1にてチップ2が拾い上げて保持される(S30)。具体的には、移動体14が第1搬送位置Px1に位置する状態にて、上述したようにバケット11によってチップ2が保持された後、ロープ12の長さが所定長さになるまでロープ12が巻き上げられる(図1)。このとき、ロープ12の振れ及び振動は抑制された状態である。
【0047】
続けて、ロープ12が巻き上げられたことに応じて、移動体制御が開始される(S40)。はじめに図3に示す第1制御が開始される。移動体14の加速度を正の最大加速度に設定され、移動体14が第1搬送位置Px1から移動を開始し(時刻t0)、移動体14が加速されて移動体14の速度が最大速度に到達する(時刻t1)。続けて、移動体14の加速度がゼロに設定されることにより、移動体14が最大速度にて移動する。さらに、移動体14の加速度が負の最大加速度に切り替えられることにより(時刻t2)、移動体14が減速されて移動体14の速度がゼロになるとともに、移動体14が第2制御開始位置Pcに到達する(時刻t3;図1)。
【0048】
この時(時刻t3)、上述したように、移動体14が加速される駆動パターンと移動体14が減速される駆動パターンとが正負で反対となっているため、ロープ12の振れ及び振動が移動体14の移動が開始された時点(時刻t1)と同じ状態となる。すなわち、移動体14が第2制御開始位置Pcに位置した時(時刻t3)、ロープ12の振れ及び振動が抑制された状態である。よってこの時(時刻t3)、バケット11は、移動体14の直下に位置する。すなわち、バケット11は、搬送方向Xにおける第2制御開始位置Pcに対応する位置に位置する。
【0049】
続けて図5に示す第2制御が開始される。第2制御が開始される時点において(時刻t3)、移動体14の速度がゼロである。また、ロープ角度およびロープ角速度が抑制された状態(θ=ゼロ)である。移動体14の加速度は、第2制御が開始される時点(時刻t3)におけるゼロの状態から正弦波の1周期分の波形を描くように出力され、移動体14が第3搬送位置Px3に到達する時点(時刻t5)においてゼロとなる。これに応じて、移動体14の速度は、移動体14の加速度からおよそ1/4周期分だけ遅れて、かつ、正の値となる正弦波形を描くように増加した後に減少し、移動体14が第3搬送位置Px3に到達する時点(時刻t5)においてゼロとなる。
【0050】
バケット11は、移動体14の移動に遅れて第2位置Ps2に向けて移動を開始するため、ロープ角度が移動体14の移動が開始された直後から正の値を示す。そして、移動体14が減速されたことによってバケット11が移動体14に追いついて、バケット11が移動体14の直下に位置する(時刻t4)。すなわち、この時点において、ロープ角度がゼロになる(時刻t4)。さらに、移動体14が減速することにより、バケット11が移動体14より第2位置Ps2側に位置するため、ロープ角度が負の値を示す。
【0051】
そして、移動体14が第3搬送位置Px3に到達した時点で移動体制御が終了する(時刻t5)。この時(時刻t5)、バケット11は、搬送方向Xにおいて、第2制御開始位置Pc(X=X1)に相当する位置から第2制御距離(d2)だけ移動した第2搬送位置Px2(X=X3)に相当する位置に位置する(図1)。具体的には、この時(時刻t5)、バケット11は、第2位置Ps2の直上、かつ第2搬送位置Px2の直下に位置する。また、この時(時刻t5)、バケット11の位置は、ロープ12及びバケット11を単振り子とみなした場合における単振り子の振幅に相当する位置であるため、ロープ12の角速度であるロープ角速度がゼロである(時刻t5)。なお、第3搬送位置Px3は、第2搬送位置Px2から搬送方向Xに沿って、ロープ12の所定長さとロープ角度とを乗じた分だけ第1搬送位置Px1側に位置する。
【0052】
なお、図5の破線にて示されるように、第2制御に代えて、最短時間制御のうちバンバン制御にて実行された場合においては、移動体14が第2搬送位置Px2まで移動して、バケット11を第2位置Ps2に位置させる。このバンバン制御が実行された場合、第2制御が実行された場合に比べて、移動体14の移動距離及び搬送時間が長くなっている。
【0053】
移動体制御が終了したことに応じて、バケット11が第1状態から第2状態に切替えられることにより、第2位置Ps2にチップ2が落下する(S50)。続けて、移動体14が第3搬送位置Px3から第1搬送位置Px1に戻される(S60)。
【0054】
次に、第2制御距離が20m(=d2)に設定された場合について説明する。他のパラメータ及び第1制御については、上述した第2制御距離が10mである場合と同様である。以下、第2制御についてのみ記載する。
【0055】
第2制御における移動体14の加速度は、第2制御が開始される時点(時刻t3)におけるゼロの状態から正弦波の2周期分の波形を描くように出力され、移動体14が第3搬送位置Px3に到達する時点(時刻t5)においてゼロとなる。これに応じて、移動体14の速度は、移動体14の加速度からおよそ1/4周期分だけ遅れて、かつ、正の値となる正弦波形を描くように出力され、移動体14が第3搬送位置Px3に到達する時点(時刻t5)においてゼロとなる。
【0056】
バケット11は、移動体14の移動に遅れて第2位置Ps2に向けて移動を開始し、移動体14を一度追い越した後に移動体14に抜かれ、移動体14を再度追い越す。このため、ロープ角度が移動体14の移動が開始された直後から正の値を示し、その後、ロープ角度の正負の反転が3回繰り返される。バケット11が第2位置Ps2の直上に到達したとき(時刻t5)のロープ角度は、上述した第2制御距離が10mである場合に比べて大きくなっている。また、この時(時刻t5)、バケット11の位置は、ロープ12及びバケット11を単振り子とみなした場合における単振り子の振幅に相当する位置であるため、ロープ12の角速度であるロープ角速度がゼロである(時刻t5)。
【0057】
本実施例によれば、搬送装置1は、第1位置Ps1に置かれたチップ2を、第1位置Ps1と異なる第2位置Ps2に搬送する。搬送装置1は、チップ2を保持する第1状態及びチップ2を落下させる第2状態を有するバケット11と、バケット11を吊り下げるロープ12と、ロープ12の上端部を保持するとともに、バケット11によって第1位置Ps1に置かれたチップ2を拾い上げて保持させる位置である第1搬送位置Px1から、第2位置Ps2の直上に位置する第2搬送位置Px2に向かう方向である搬送方向Xに沿って移動可能な移動体14と、移動体14の移動を制御する制御装置20と、を備えている。制御装置20は、移動体14を第1搬送位置Px1に位置させて、かつ、バケット11を第1位置Ps1にて第2状態から第1状態に切り替えることにより、バケット11によってチップ2を拾い上げて保持させる第1制御部24と、第1制御部24によってバケット11が第1状態に切替えられたことに応じて、第1搬送位置Px1から搬送方向Xに沿って第2搬送位置Px2に向けて移動体14の移動を開始させ、第1搬送位置Px1と第2搬送位置Px2との間の第3搬送位置Px3にて移動体14の移動を終了させる移動体制御を実行する第2制御部25であって、第3搬送位置Px3は、移動体14の移動により生じるロープ12の搬送方向Xの振れによってバケット11が第2位置Ps2の直上に到達する位置である、第2制御部25と、第2制御部25によってバケット11が第2位置Ps2の直上に到達したときに、バケット11を第1状態から第2状態に切り替えることにより、チップ2を第2位置Ps2に落下させる第3制御部26と、を備えている。
【0058】
これによれば、チップ2をバケット11によって第1位置Ps1から第2位置Ps2に搬送する場合、バケット11を吊り下げるロープ12を保持する移動体14が、チップ2をバケット11に保持させる第1搬送位置Px1から、第1搬送位置Px1と、第2位置Ps2の直上に位置する第2搬送位置Px2との間の第3搬送位置Px3まで移動して停止する。さらにバケットがロープ12の振れによって第2位置Ps2の直上に位置し、チップ2が第2位置Ps2に落下する。よって、移動体14が第1搬送位置Px1から第2搬送位置Px2まで移動する場合に比べて、移動体14の移動距離ひいては搬送時間を短くすることができる。したがって、チップ2の搬送時間を短時間化することができる。
【0059】
また、制御装置20は、移動体14の移動によって生じるバケット11の搬送方向Xの運動を、移動体14の加速度及びロープ12の延びる方向と鉛直方向Yとのなす角度を用いて表された数理モデルである搬送運動モデルを記憶する記憶部21と、ロープ12の搬送方向Xの振れによってバケット11を第2位置Ps2の直上に位置させる移動体14の駆動パターンを、搬送運動モデルを用いて導出する導出部23と、をさらに備えている。第2制御部25は、導出部23によって導出された移動体14の駆動パターンを用いて、移動体制御を実行する。
【0060】
これによれば、制御装置20は、搬送運動モデルを用いて移動体14の動作パターンを導出するため、バケット11を第2位置Ps2の直上に確実に位置させることができる。
【0061】
また、搬送運動モデルに対する制御入力には、ロープ12の長さに対応する固有振動数を含んだ正弦波が用いられる。
【0062】
これによれば、移動体14が移動したことにより生じるロープ12の振れを共振周波数によって最大化させることができる。よって、搬送運動モデルがロープ12の固有振動数を用いない場合に比べて移動体14の移動距離を短くすることができる。
【0063】
導出部23は、第1搬送位置Px1と第3搬送位置Px3との間の第2制御開始位置Pcから、第3搬送位置Px3までの移動体14の動作パターンを、搬送運動モデルを用いて導出する。
【0064】
これによれば、制御装置20は、第1搬送位置Px1から第3搬送位置Px3までの移動体14の駆動パターンを搬送運動モデルが用いられて導出される場合に比べて、計算時間の短時間化を図ることができる。
【0065】
導出部23は、第1搬送位置Px1から第2制御開始位置Pcまでの移動体14の動作パターンを、バンバン制御に基づいて導出する。
【0066】
これによれば、第1搬送位置Px1から第2制御開始位置Pcまでの移動体14の動作パターンを簡便化することができるとともに、移動体14の移動速度の最大化を図ることができるため、移動体14の搬送時間の短時間化をさらに図ることができる。また、第2制御開始位置Pcにおいてロープ12の延びる方向を鉛直方向Yと同じにすることができるため、第2制御開始位置Pcから第3搬送位置Px3までの搬送運動モデルによる数値計算を簡便化することができる。
【0067】
なお、上述した各実施例において、搬送装置の一例を示したが、本明細書の実施例はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した実施例において、クレーン10は天井クレーンであるが、これに代えて、デッキクレーンやガントリークレーンでも良い。この場合、移動体14は、各クレーンにおけるブームの先端部であるジブに相当する。またこの場合、搬送方向Xは、ブームの旋回や俯仰の動作によるジブの移動方向に相当する。
【0068】
また、上述した実施例において、バケット11は、ワイヤーロープによって駆動するワイヤーロープ式が用いられているが、これに代えて、油圧によって駆動する油圧式や電動によって駆動する電動式のバケットを用いるようにしても良い。
【0069】
また、上述した実施例において、第1搬送位置Px1は、第1位置Ps1の直上に位置するが、これに代えて、バケット11が第1位置Ps1に到達する範囲内において、第1搬送位置Px1を第1位置Ps1の上方に位置させても良い。
【0070】
また、上述した実施例において、第1制御はバンバン制御であるが、これに代えて、フィードバック制御を用いるようにしても良い。この場合、移動体14に加速度センサ(図示省略)を配置して、第2制御開始位置Pcにおいて、上述した制約条件となるようにフィードバック制御を行う。
【0071】
また、上述した実施例において、第2制御における正弦波制御入力には、ロープ12の長さに対応する固有振動数が用いられているが、これに代えて、この固有振動数以外の振動数を用いるようにしても良い。
【0072】
また、上述した実施例において、移動体制御は、第1制御及び第2制御が用いられているが、第2制御のみを用いるようにしても良い。この場合、搬送距離と第2制御距離とが同じ距離となる。
【0073】
また、上述した実施例において、第1搬送位置Px1において、ロープの振れおよび振動を抑制するように移動体を駆動させても良い。この場合、バケットに加速度センサ(図示省略)を配置して、加速度センサによって検出される加速度が所定加速度以下となるように移動体の駆動をフィードバック制御する。所定加速度は、ロープの振れ及び振動が抑制された加速度であり、実験等により実測されて導出される。
【0074】
また、上述した実施例において、移動体制御は、第1制御及び第2制御が用いられているが、これに代えて、第1制御及び第2制御を用いないようにしても良い。この場合、例えば、第3搬送位置Px3に移動体14の移動を規制するストッパ(図示省略)を配置し、移動体14を第3搬送位置Px3に所定速度以上にてストッパに衝突するように移動体14の駆動を制御する。所定速度は、移動体14の衝突によって生じるロープ12の振れによってバケット11が第2位置Ps2の直上に到達する速度であり、実験等により実測されて導出される。さらに、ロープ角度を検出する角度センサ(図示省略)またはバケット11の位置を検出する位置センサ(図示省略)を配置して、移動体14がストッパに衝突した後、バケット11が第2位置Ps2の直上に位置したことを角度センサまたは位置センサによって検出されたことに応じて、バケット11が閉状態から開状態に切り替えられる。これにより、チップ2が第2位置Ps2に落下する。また、この場合、ストッパを配置せずに、移動体14を第3搬送位置Px3にて急停止させても良い。
【0075】
また、上述した実施例において、制御装置20は、S60にて移動体14を第3搬送位置Px3から第1搬送位置Px1に戻すが、この場合、移動体14が第3搬送位置Px3に到達してチップ2を落下させた時点から、S40にて実行した移動体制御における移動体14の加速度の制御指令値(図5)を時間軸において逆とする制御指令値を出力してもよい。この場合、移動体14は、第3搬送位置Px3から、S40にて実行された移動体制御における移動体14の軌跡(図5)と同じ軌跡をたどって第1搬送位置Px1に戻る。これにより、バケット11が、第2位置Ps2の直上から、S40にて実行された移動体制御におけるバケット11の動きと同じ軌跡(図5)をたどって第1位置Ps1の直上まで戻る(図1)。さらに、バケット11が第1位置Ps1の直上に位置した時点及び移動体14が第2制御開始位置Pcに位置した時点には、バケット11の振動が抑制される。
【0076】
また、本明細書の要旨を逸脱しない範囲において、チップ2の種類、クレーン10の種類、バケット11の形状、バケット11の駆動方式、移動体14の駆動方式、搬送方向Xの方向、各位置Ps1,Ps2,Px1,Px2,Px3,Pcの位置、並びに、搬送運動モデル及び制御入力の構成を変更するようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…搬送装置、2…搬送物(チップ)、10…クレーン、11…バケット、12…ロープ、14…移動体、20…制御装置、21…記憶部、22…取得部、23…導出部、24…第1制御部、25…第2制御部、26…第3制御部、Pc…第2制御開始位置(第4搬送位置)、Ps1…第1位置、Ps2…第2位置、Px1…第1搬送位置、Px2…第2搬送位置、Px3…第3搬送位置、X…搬送方向、Y…鉛直方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6