(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】安全弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/38 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
F16K17/38 A
F16K17/38 Z
(21)【出願番号】P 2019194824
(22)【出願日】2019-10-26
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】松岡 真司
(72)【発明者】
【氏名】下村 嘉徳
(72)【発明者】
【氏名】大道 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】北中 公夫
(72)【発明者】
【氏名】堀川 裕生
(72)【発明者】
【氏名】平松 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特公昭29-005143(JP,B1)
【文献】特開2009-275861(JP,A)
【文献】特開2005-331016(JP,A)
【文献】特開2018-048688(JP,A)
【文献】特開2009-112484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/18-17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体用通路を有し、該流体用通路から分岐される排出用通路を備えた容器に取り付ける安全弁であって、
前記容器の排出用通路の開放端に取り付けられ、前記排出用通路を外部と連通する排出路を形成した本体と、
前記排出用通路を塞ぐ閉塞部材とを備え、
該閉塞部材は、内部に液体を封入した両端部が半球状のグラスバルブであり、前記容器の排出用通路開放端に形成した弁座機構に前記グラスバルブの半球状端部が当接する安全弁。
【請求項2】
前記グラスバルブを、容器側に付勢する弾性部材を配設した請求項1に記載の安全弁。
【請求項3】
前記弁座機構の本体側に前記グラスバルブの筒状部に当接するシール機構を配設した請求項1又は2に記載の安全弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災時等、周辺温度が高温となったとき、容器内圧力が上昇し過ぎることを防止するため、機器内の流体を安全に外部放出するための安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
このような安全弁として、高温時に融解する可溶体を有し、可溶体の融解に伴って可動栓体が移動することで、容器内のガスを開放する安全弁が知られている(特許文献1~2参照)。
【0003】
これらの安全弁は、内部に流体が流れる容器の流路から分岐した排出用流路の開放端に取り付けられ、火災発生時等、周辺の温度が上昇した場合に容器内のガス等の流体を外部(大気)へ開放するものである。
【0004】
特許文献1に記載の安全弁は、容器内の流体通路から分岐した流路の外部への開放端の開口に取り付けられ、通常時においては内部の流体が外部に漏れ出すことがないようにシールし、温度が上昇した場合に容器内のガスを開放することによって、容器内の圧力が上昇し過ぎることを防止するように構成されている。
【0005】
この安全弁は、頂壁および周壁からなりその周壁の下端部が容器の開口縁部に固定される円筒状本体と、本体内に移動可能に配置されたフランジ付き円柱状の移動部材と、移動部材を上向きに付勢する圧縮コイルばね(弾性部材)と、本体の頂壁下面と移動部材の上面との間に介在させられた安全弁用可溶体(可溶合金)とを備えている。本体内は、排出通路にとって外部と連通されている。
【0006】
そして、周壁の下端部は、移動部材の先端で容器内との連通が遮断されておいる。この状態から火災等の高温時に可溶体が溶解したとき、移動部材が圧縮コイルばねの付勢力で頂壁側に移動することで安全弁の本体内部と容器内とが連通し、容器内の流体が本体の排出通路を介して外部に開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-132475号公報
【文献】特開2004-263786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような可溶合金を使った安全弁は火災等の災害が発生した時に作動するもので、作動後に繰り返し使用するものではない。そのため、この種の安全弁を使用する場合、製品コストを抑えることが望まれるが、特許文献1~2に記載の安全弁は部品点数が多く、製作コストが嵩むという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を減らし、簡単な構造で火災時等の災害時に容器内の流体を確実に大気に開放することができる安全弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本第1の発明に係る安全弁は、
内部に流体用通路を有し、該流体用通路から分岐される排出用通路を備えた容器に取り付ける安全弁であって、
前記容器の排出用通路の開放端に取り付けられ、前記排出用通路を外部と連通する排出路を形成した本体と、
前記排出用通路を塞ぐ閉塞部材とを備え、
該閉塞部材は、板状の多孔質部材であり内部の空隙内に溶融性金属が充填され、前記容器の排出用通路開放端の周縁に配設されるシール部材との当接面を、算術粗さ0.8Ra以下としている。
【0011】
この安全弁は、本体の排出路と容器の排出用通路を遮断する閉塞部材が溶融性金属を充填した多孔質部材とし、火災等の発生により周辺温度が高温となったとき多孔質部材の孔に充填される溶融性金属が溶けだし容器の排出用通路と安全弁の本体の排出路とが連通する。
【0012】
この場合において、前記多孔質部材を、焼結金属とすることができる。
【0013】
また、同じ課題を解決するためになされた本第2の発明に係る安全弁は、
内部に流体用通路を有し、該流体用通路から分岐される排出用通路を備えた容器に取り付ける安全弁であって、
前記容器の排出用通路の開放端に取り付けられ、前記排出用通路を外部と連通する排出路を形成した本体と、
前記排出用通路を塞ぐ閉塞部材とを備え、
該閉塞部材は、内部に液体を封入した両端部が半球状のグラスバルブであり、前記容器の排出用通路開放端に弁座機構形成し、該弁座機構に前記グラスバルブの半球状端部が当接するようにしている。
【0014】
この場合において、前記グラスバルブを、容器側に付勢する弾性部材を配設することができる。
【0015】
更にこれらの場合において、前記弁座機構の前記安全弁の本体側に前記グラスバルブの筒状部と当接するシール機構を配設することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品点数を減らし、簡単な構造で火災時等の災害時に容器内の流体を確実に大気に開放することができる安全弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本第1の発明の実施の形態に係る安全弁を示し、(a)平面図、(b)は容器に取り付けた一部切欠きの正面断面図、(c)は安全弁の本体とシール部材と容器の断面斜視図、(d)は閉鎖部材の底面図である。
【
図2】本第2の発明の実施の形態に係る安全弁を示し、(a)平面図、(b)は容器に取り付けた一部切欠きの正面断面図、(c)は安全弁の本体の断面斜視図(d)は閉鎖部材としてのグラスバルブの断面斜視図である。
【
図3】同安全弁の別の実施例を示し、(a)平面図、(b)は容器に取り付けた一部切欠きの正面断面図、(c)は安全弁を取り付ける部分の容器の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0019】
<実施形態1>
図1に、本第1の発明の安全弁の実施形態を示す。
【0020】
[安全弁]
図1に示す安全弁1は、内部に流体用通路を有し、この流体用通路から分岐される排出用通路20を備えた容器2に取り付ける安全弁である。この容器2は、特に限定するものではないが、例えば、燃料電池自動車の燃料水素を蓄えるタンク等が挙げられる。そして、この安全弁1は排出用通路29の開放端に取り付けられ、排出用通路20を外部(大気)と連通する排出路11を形成した本体10と、容器2の排出用通路20を塞ぐ閉塞部材3と、容器2の排出用通路20開放端の周縁に形成されるシール溝21に配設されるシール部材5とから構成されている。
【0021】
本体10は、内部に排出路11と排出路11と連なる閉塞部材3を保持する保持空間12とを有している。また、安全弁1を容器2に取り付けるためのボルト等の締結部材4の挿通口13を開口している。この挿通口13の数は、複数であれば特に限定するものではないが、本実施形態では中止から周上等間隔で3箇所に形成している。
【0022】
保持空間12は、閉塞部材3の形状に合わせた円筒状の窪みで、本体10の底面中心に形成されている。排出路11は、その数を特に限定するものではないが、本実施形態では本体10の表面から保持空間12に貫通するように5箇所に形成している。
【0023】
閉塞部材3は、板状の多孔質部材であり内部の空隙内に溶融性金属が充填され、容器2の排出用通路20開放端の周縁に形成されるシール溝21に配設されるシール部材5との当接面30を、算術粗さ0.8Ra以下となるように研磨されている。この研磨は、シール部材5との当接面30に限られず、シール部材5との当接側の面全体を研磨するようにしても構わない。
【0024】
閉塞部材3は、多孔質部材であって、内部の空隙内に溶融性金属が充填されるものであれば、特に限定するものではない。多孔質部材となる多孔質材料は、細孔が非常に多く空いている材料であって、例えば、活性炭やゼオライト等のミクロポーラス材料、MCMやFCM等のメソポーラス材料等があるが、本実施形態では、焼結金属を採用する。
【0025】
焼結金属は、金属製の粉体を溶融点前後の温度で焼き固めたもので、樹脂やセラミック、ガラス等と比べ、耐久性に優れ、金属粉体の大きさで内部の空隙サイズが調整でき使用する溶融性金属を選択することができる。本発明で使用する溶融性金属とは融点が200℃以下の金属をいい、例えば、低融点合金(低温アロイ、錫合金、低温半田等)であって、焼結金属の融点(SUS球体粉の場合、1400~1500℃、ブロンズ球体粉の場合、1000℃前後)よりも低く、安全弁として求められる溶融温度では焼結金属が溶融することはない。
【0026】
通常、焼結金属は、不純物を含む流体が流れる流路に配設され、不純物を濾過する役割を果たすもので、分子レベルの流体の通過を許容する。本発明の閉塞部材3としての焼結金属は、内部の空隙に所定の溶融金属を充填するもので、内部の空隙全域に亘って充填しても構わないが、容器2の排出用通路20の開放端を塞ぐ面側の細孔を確実に塞ぐように溶融金属を充填すればよい。
【0027】
これは、閉塞部材3の容器2の排出用通路20の開放端を塞ぐ面側は、容器2のシール溝21に配設されるシール部材5と接触する環状の面30がシール部材5との間で隙間が生じることがないように算術粗さ0.8Ra以下に仕上げる必要がるが、その前提として表面の細孔が、確実に溶融性金属で充填されている必要があるからである。
【0028】
上記構成において、常時は、容器2の排出用通路20内は容器2を流れる流体で満たされており、容器2に取り付けた安全弁1の閉塞部材3の底面には流体の圧力がかかっている。そして、火災等が発生し、容器2の周辺温度が所定温度(溶融金属の溶融温度)を越えると、閉塞部材3としての焼結金属内の溶融金属が溶け始める。
【0029】
溶融し始めた溶融金属は、排出用通路20側に流れるか排出路11がに噴き出され、容器2内の流体は閉塞部材3の空議を通過し外部に放出される。
【0030】
<実施形態2>
図2に、本第2発明の安全弁の実施形態を示す。
【0031】
[安全弁]
図2に示す安全弁1は、実施形態1と同様、内部に流体用通路を有し、この流体用通路から分岐される排出用通路20を備えた容器2に取り付ける安全弁である。この容器2の排出用通路20の開放端に取り付けられ、排出用通路20を外部(大気)と連通する排出路11を形成した本体10と、排出用通路20を塞ぐ閉塞部材6とを備えている。
【0032】
閉塞部材6は、内部に液体を封入した両端部が半球状のグラスバルブ60であり、容器2の排出用通路20開放端に形成した弁座機構23にグラスバルブ60の半球状端部60aが当接する。この弁座機構23は、容器2の排出用流路20の開放端縁部をR状又は円錐台状(C面取状)に加工することで構成されている。
【0033】
本体10は、容器に取り付けられる大径部10Aと、大径部10Aと同心の小径部10Bかなる断面視T字状をしており、大径部10Aには安全弁1を容器2に取り付けるためのボルト等の締結部材4の挿通口13を開口している。この挿通口13の数は、複数であれば特に限定するものではないが、本実施形態では中止から周上等間隔で4箇所に形成している。
【0034】
小径部10Bには、開口部はなく、大径部10Aの底面中央から閉塞部材6が配備される円筒状の空間15が形成されている。この空間15はグラスバルブ60の筒状部60bの外径よりも若干大径をなし、小径部10B側にグラスバルブブ60を、容器2側に付勢する弾性部材8を収納する収納空間16を形成している。この収納空間16は、空間15の内径と同じであっても構わないが、グラスバルブ60の一方の側の半球状端部60aに製造上形成される突起部分60cの部分に嵌める弾性部材8としてのスプリングの外径よりも若干大径となる程度の内径とし、空間15よりも小径とすることが好ましい。これにより弾性部材8としてのスプリングの設置が容易となる。本実施形態では、弾性部材8としてスプリングを使った例を示すが、弾性部材8はこれに限られるものではなく、例えば高度の低い樹脂材料等を用いることもできる。
【0035】
排出路11は、空間15と連通され、容器2の排出用流路20とは閉塞部材6によって遮断されている。
【0036】
上記構成において、常時は、容器2の排出用通路20内は容器2を流れる流体で満たされており、容器2に取り付けた安全弁1の閉塞部材6としてのグラスバルブ60の半球状端部60aが弁体となって、弁座機構23となる排出用流路20の開放端縁部に当接し、容器2内の流体の外部への漏洩を防止している。そして、火災等が発生し、容器2の周辺温度が所定温度(グラスバルブ60内の液体が膨張し硝子が破裂する温度)を越えると、閉塞部材6としてのグラスバルブ60が破裂し、排気用流路20と排出路11が連通し、容器2内の流体が外部へ放出される。
【0037】
<変形例>
図3に、本第2発明の安全弁の実施形態の変形例を示す。
【0038】
[安全弁]
図3に示す安全弁1は、実施形態2と同様、内部に流体用通路を有し、この流体用通路から分岐される排出用通路20を備えた容器2に取り付ける安全弁である。この容器2の排出用通路20の開放端に取り付けられ、排出用通路20を外部(大気)と連通する排出路11を形成した本体10と、排出用通路20を塞ぐ閉塞部材6とを備えている。
【0039】
閉塞部材6も実施形態2と同様、内部に液体を封入した両端部が半球状のグラスバルブ60であり、容器2の排出用通路20開放端に形成した弁座機構23にグラスバルブ60の半球状端部60aが当接する。
【0040】
本実施形態の弁座機構23は、実施形態2が容器2の排出用流路20の開放端縁部をR状又は円錐台状(C面取状)に加工することで構成したものと異なり、開放端よりも奥側で排出用流路20の内径よりも若干大径の中径部20aを形成し、排出用流路20の中径部20a底部の開放端縁部にR状又は円錐台状(C面取状)に加工することで構成する。
【0041】
そして、中径部20aよりも容器2の開放端側に、中径部20aよりも大径の大径部20bを形成し、この大径部20bにグラスバルブ60の筒状部60bに当接するシール機構24を配設する。
【0042】
シール機構24は、グラスバルブ60の筒状部60bの周面と、大径部20bの側面底面と当接し、容器2内の流体が外部に漏洩することを防止することができるものであれば、特に限定するものではないが、本実施形態では、Oリング24aとバックアップリング24bから構成されている。
【0043】
このシール機構24を配設することで、グラスバルブ60の半球状端部60aが弁体となって、弁座機構23となる排出用流路20の開放端縁部に当接して容器2内の流体の外部への漏洩を防止機構から、振動などで位置ずれが生じて流体が漏洩した場合でも、流体が排出路11を介して外部に放出されることを有効に防止することができる。
【0044】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態及び変形例は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明の安全弁は、火災の発生等周辺の温度が急激に上昇し、容器内の流体を外部に放出する必要があるシステムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 安全弁
10 本体
11 排出路
2 容器
20 排出用流路
23 弁座機構
24 シール機構
3 閉塞部材(多孔質部材)
5 シール部材
6 閉塞部材
60 グラスバルブ
60a 半球状端部
60b 筒状部