(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器
(51)【国際特許分類】
G06F 7/58 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G06F7/58 680
(21)【出願番号】P 2022519996
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2021097442
(87)【国際公開番号】W WO2021244491
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】202010492758.7
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522125397
【氏名又は名称】シュロン エナジー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHRONG ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2F, No.24 A, Art Museum East Street, Dongcheng District, Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ホイリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チエチュン
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108563422(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108491185(CN,A)
【文献】中国実用新案第209433389(CN,U)
【文献】特開2020-074152(JP,A)
【文献】特表2018-528520(JP,A)
【文献】特開2009-070009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F7/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器であって、
レーザ光源(1)と、非等比例光分岐器(2)と、プログラマブルロジック(3)と、nグループの差動検出器(4)と、nグループの順次接続された増幅器(5)と、アナログ-デジタル変換器(6)とを含み、前記レーザ光源(1)から発されたレーザ信号が、前記非等比例光分岐器(2)を介してn個の第1ビームとn個の第2ビームに分岐され、前記第1ビームの各々は、1個の前記第2ビームに対応して1グループの前記差動検出器(4)の入力ポートに入力され、各グループの前記差動検出器(4)の出力ポートは、前記増幅器(5)の入力ポートに対応して接続され、前記アナログ-デジタル変換器(6)の出力ポートは、前記プログラマブルロジック(3)の入力ポートに接続され
、
前記n個の第1ビームは、同じ光強度を持ち、前記n個の第2ビームは、同じ光強度を持ち、前記第1ビームの光強度は、前記第2ビームの光強度よりも小さく、
前記差動検出器(4)は、減算器(40)と、並列に設置された第1の光検出器(41)及び第2の光検出器(42)とを含み、前記第2の光検出器(42)の入力ポートに可変光減衰器(43)が設けられ、前記第1ビーム及び前記第2ビームは、それぞれ前記第1の光検出器(41)及び前記可変光減衰器(43)に入力され、前記第1の光検出器(41)及び前記第2の光検出器(42)の出力ポートは、共に、前記減算器(40)の入力ポートに接続され、前記減算器(40)の出力ポートは、前記増幅器(5)の入力ポートに接続されることを特徴とする高速量子乱数発生器。
【請求項2】
前記n個のビームのうち、nは2以上の整数であることを特徴とする請求項1に記載の高速量子乱数発生器。
【請求項3】
n=2の場合、前記第1ビームは、前記レーザ信号の10%または15%または20%であり、前記第2ビームは、前記レーザ信号の40%または35%または30%であり、n=3の場合、前記第1ビームは前記レーザ信号の1/9であり、前記第2ビームは前記レーザ信号の2/9であることを特徴とする請求項1に記載の高速量子乱数発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器に関するが、これに限定されない。
【0002】
本開示は、2020年06月03日に中国特許局へ出願された、出願番号が202010492758.7であって、発明名称が「真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が、参照によって本開示に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
社会的な情報化の高度化に伴い、情報の利便性および安全性が一層求められるようになってきた。暗号技術は情報セキュリティの重要な構成要素であり、真の乱数を発生させうると考えられる量子技術は広く注目され、実用化が進んでいる。真空のゆらぎ技術の基本的原理は、量子光学では、相空間における真空の振幅と位相の直交成分が同時に精度良く検出できないことである。
【発明の概要】
【0004】
以下は、本開示で詳細に説明する主題についての概要である。この概要は、請求項の保護範囲を限定するためのものではない。
【0005】
本開示は、レーザ光源と、非等比例光分岐器と、プログラマブルロジックと、nグループの差動検出器と、nグループの順次接続された増幅器と、アナログ-デジタル変換器とを含み、前記レーザ光源から発されたレーザ信号が、前記非等比例光分岐器を介してn個の第1ビームとn個の第2ビーム(nが2以上の整数である)に分岐され、前記第1ビームの各々は、1個の前記第2ビームに対応して1グループの前記差動検出器の入力ポートに入力され、各グループの前記差動検出器の出力ポートは、前記増幅器の入力ポートに対応して接続され、前記アナログ-デジタル変換器の出力ポートは、前記プログラマブルロジックの入力ポートに接続される真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器を提供する。
【0006】
なかでも、前記差動検出器は、減算器と、並列に設置された第1の光検出器及び第2の光検出器とを含み、前記第2の光検出器の入力ポートに可変光減衰器が設けられ、前記第1ビーム及び前記第2ビームは、それぞれ前記第1の光検出器及び前記可変光減衰器に入力され、前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器の出力ポートは、共に、前記減算器の入力ポートに接続され、前記減算器の出力ポートは、前記増幅器の入力ポートに接続される。
【0007】
なかでも、前記第1ビームの光強度は、前記第2ビームの光強度よりも小さい。
【0008】
n=2の場合、前記第1ビームは、前記レーザ信号の10%または15%または20%であり、前記第2ビームは、前記レーザ信号の40%または35%または30%であり、n=3の場合、前記第1ビームは前記レーザ信号の1/9であり、前記第2ビームは前記レーザ信号の2/9である。
【0009】
本開示の実施例における真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器は、以下の利点を達成することができる。
【0010】
本開示の高速量子乱数発生器は、レーザ信号を非等分にした後、少なくとも2グループの差動検出器に入力して差動した後に増幅・再フィルタ処理を行い、合成した後、高速のデジタル乱数となり、この高速量子乱数発生器は、電気的ノイズを効果的に相殺すると共に、可変デバイスを減らすことができ、省スペース化、デバッグ工程を減らして、製品の信頼性と生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する図面は、本開示の実施例を示し、かつ、説明と共に本開示の実施例の原理を説明するためのものである。これらの図面において、同様の符号が同様の要素を示すために用いられる。以下の説明における図面は、本開示のいくつかの実施例であり、すべての実施例ではない。当業者にとって、進歩性に値する労力を払わない前提でこれらの図面から他の図面を得ることができる。
【
図1】本開示の実施例による高速量子乱数発生器の模式図を例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施例の目的、技術案、および利点をより明確にするために、以下、本開示の実施例における技術案を、本開示の実施例における図面と併せて、明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明される実施例は、本開示の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。本開示の実施例に基づいて、進歩性に値する労働を払わない前提で当業者が得た他のすべての実施例は、何れも、本開示の保護範囲に属する。なお、本開示における実施例および実施例中の特徴は、矛盾しない限り、互いに任意に組み合わせることができる。
【0013】
本開示は、非等比例光分岐器を用いて、レーザ光源のレーザ信号を複数の比較的強いビーム信号と複数の比較的弱いビーム信号とに分割し、比較的強いビーム信号に対して減衰調整を行った後、比較的弱いビーム信号と差分を行ってから増幅し、更に増幅後の信号に対してアナログ-デジタル変換を行い、分割後に上記処理を経た複数グループのアナログ-デジタル変換信号をプログラマブルロジックに入力して合成し、高速のデジタル乱数を形成し、即ち高速量子乱数信号を得る。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示で提供される真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示の高速量子乱数発生器の一つの具体的な実施例の模式図を示した。
図1を参照すると、この高速量子乱数発生器は、レーザ光源1と、非等比例光分岐器2と、プログラマブルロジック3と、nグループの差動検出器4と、nグループの順次接続された増幅器5と、アナログ-デジタル変換器6とを含む。ここで、レーザ光源1から発されたレーザ信号が、非等比例光分岐器2を介してn個の第1ビームとn個の第2ビーム(nが2以上の整数である)に分岐され、第1ビームと第2ビームとの光強度が異なる。例えば
図1に示す実施例では、n=2である。量子ノイズの発生はレーザ光源の安定性に強く要求され、レーザ光源のコストが高いため、この技術案では1つのレーザ光源1を用いて、非等比例光分岐器2を用いてレーザ信号を複数に分けてそれぞれ検出し、製品コストを効果的に低減し、製品の信頼性を向上させることができる。
【0016】
この高速量子乱数発生器において、第1ビームの各々は、1個の第2ビームに対応して1グループの差動検出器4の入力ポートに入力され、各グループの差動検出器4の出力ポートは、増幅器5の入力ポートに対応して接続され、アナログ-デジタル変換器6の出力ポートは、プログラマブルロジック3の入力ポートに接続される。差動検出器4により第1ビームと第2ビームの信号を別々に検出して差分を求めて、その後、増幅器5によりその差分を増幅してからアナログ-デジタル変換器6に送ってアナログ-デジタル変換を行い、そしてプログラマブルロジック3に送り、プログラマブルロジック3は、アナログ-デジタル変換後の各信号に対してフィルタリング処理を行って、残留した電気的ノイズを除去して1つの信号に合成し、高速デジタル乱数信号、即ち高速量子乱数信号を得る。アナログ-デジタル変換器6は、乱数の発生率を倍に向上させることができるとともに、n個の信号間でのランダムなノイズの無相関を保証する。
【0017】
本実施例では、差動検出器4は、減算器40と、並列に設置された第1の光検出器41及び第2の光検出器42とを含み、第1の光検出器41及び第2の光検出器41の出力ポートは、共に、減算器40の入力ポートに接続され、減算器40の出力ポートは、増幅器5の入力ポートに接続される。第1の光検出器41及び第2の光検出器42は、それぞれ第1ビーム及び第2ビームを光電変換して、光信号を電気信号に変換し、その後、減算器40によって2つの信号の差分を求めて増幅器5に出力して増幅処理を行う。ここで、第2の光検出器42の入力ポートに可変光減衰器43が設けられ、すなわち、第1の光検出器41の分岐路と第2の光検出器42の分岐路に出力されるビームの光強度は異なり、第1の光検出器41に入るビームの光強度は、可変光減衰器43に入るビームの光強度よりも弱いことが好ましい。例えば、第1ビームの光強度が第2ビームの光強度よりも弱いと、第1ビームは第1の光検出器41に入力され、第2ビームは可変光減衰器43に入力され、可変光減衰器43で減衰された後に第2の光検出器42に入る。
【0018】
例示的に、n=2の場合、第1ビームは、レーザ信号の10%または15%または20%であってもよく、第2ビームは、レーザ信号の40%または35%または30%であり、n=3の場合、第1ビームはレーザ信号の1/9であり、第2ビームはレーザ信号の2/9である。
【0019】
例えば、レーザ光源1から出力された光パワーがPであるレーザ信号は、非等比例光分岐器2を介して、2個の光パワーが0.1Pである第1ビームと2個の光パワーが0.4Pである第2ビーム、又は2個の光パワーが0.2Pである第1ビームと2個の光パワーが0.3Pである第2ビームに分岐される。
【0020】
本開示の実施例における真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器は、以下の利点を達成することができる。
【0021】
本開示の高速量子乱数発生器は、レーザ信号を非等分にした後、少なくとも2グループの差動検出器に入力して差動した後に増幅・再フィルタ処理を行い、合成した後、高速のデジタル乱数となり、この高速量子乱数発生器は、電気的ノイズを効果的に相殺すると共に、可変デバイスを減らすことができ、省スペース化、デバッグ工程を減らして、製品の信頼性と生産性を向上させることができる。
【0022】
本明細書において、表現用語の「含む」、「含有する」、またはそれらの任意の他の変形形態は、非排他的な包含をカバーすることが意図されて、一連の要素を含む物品または設備は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含み、またはそのような物品または設備の固有の要素も含むようになる。「……を含む」という表現によって定義される要素は、これ以上限定しない場合、追加の同一の要素が、前記要素を含む物品又は装置中にさらに存在することを除外しない。
【0023】
当業者は明細書に開示される発明を考慮および実施した後、本開示の他の実施案を容易に想到する。本願は、本開示の一般原理に従い、本開示に開示されていない当技術分野における公知常識又は慣用技術手段を含む、本開示のいかなる変形、使用、又は適応的な変化を包むことが意図される。明細書および実施例は、単に例示としてみなされるものであり、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって定められる。
【0024】
本開示は、上記で既に説明され、図面に示された厳密な構造に限定されず、その範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更がなされ得ることを理解されるべきである。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって規定される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本開示は、真空のゆらぎ技術に基づく高速量子乱数発生器を提供し、非等比例光分岐器を用いて、レーザ光源のレーザ信号を複数の比較的強いビーム信号と複数の比較的弱いビーム信号とに分割し、製品コストを効果的に低減し、製品の信頼性を向上させる。比較的強いビーム信号に対して減衰調整を行った後、比較的弱いビーム信号と差分を行ってから増幅し、更に増幅後の信号に対してアナログ-デジタル変換を行い、分割後に上記処理を経た複数グループのアナログ-デジタル変換信号をプログラマブルロジックに入力して合成し、高速のデジタル乱数を形成し、即ち高速量子乱数信号を得る。電気的ノイズを効果的に相殺すると共に、可変デバイスを減らすことができ、省スペース化、デバッグ工程を減らして、製品の信頼性と生産性を向上させることができる。