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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】骨固定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/74 20060101AFI20231108BHJP
   A61B 17/72 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61B17/74
A61B17/72
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018231848
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020092790
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-12-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】393024186
【氏名又は名称】株式会社ホムズ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】堀江 誠
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074399(JP,A)
【文献】特表2005-506126(JP,A)
【文献】特表2016-504961(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01974681(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨固定のために体内に配置され、基端に開口する軸穴及び前記軸穴と交差する態様で連通する横断孔を備える髄内釘と、該髄内釘の前記基端に連結可能に構成された連結部を備え、前記連結部に対してアーム部を介して接続固定され、前記連結部が前記髄内釘の前記基端に連結されたときに前記横断孔に向けられる照準部を有し、前記髄内釘を体内に導入する際に挿入器具として用いられるとともに、体内に配置された前記髄内釘の前記横断孔に固定具を導入するための照準器具としても用いられる手術器具と、前記髄内釘の前記軸穴に対して着脱可能に装着される装着具と、を具備する骨固定システムであって、
前記装着具は、前記軸穴の開口に取り付けられるエンドキャップ、又は、前記軸穴を通して前記固定具の保持状態を制御する操作具若しくは調整具であり、或いは、前記エンドキャップ、前記操作具若しくは前記調整具を含み、
前記手術器具は、前記髄内釘に対する連結状態において、前記髄内釘に装着された態様若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具を前記連結部と前記髄内釘の間に組み込み可能に構成されるとともに、前記装着具を前記態様に維持したまま前記髄内釘から取り外し可能に構成され、
前記髄内釘が前記装着具を介して前記手術器具に連結可能に構成される、
骨固定システム。
【請求項2】
骨固定のために体内に配置され、基端に開口する軸穴及び前記軸穴と交差する態様で連通する横断孔を備える髄内釘と、該髄内釘の前記基端に連結可能に構成された連結部を備え、前記連結部に対してアーム部を介して接続固定され、前記連結部が前記髄内釘の前記基端に連結されたときに前記横断孔に向けられる照準部を有し、前記髄内釘を体内に導入する際に挿入器具として用いられるとともに、体内に配置された前記髄内釘の前記横断孔に固定具を導入するための照準器具としても用いられる手術器具と、前記髄内釘により保持可能に構成される前記固定具と、前記髄内釘の前記軸穴に対して着脱可能に装着される装着具と、を具備する骨固定システムであって、
前記装着具は、前記軸穴の開口に取り付けられるエンドキャップ、又は、前記軸穴を通して前記固定具の保持状態を制御する操作具若しくは調整具であり、或いは、前記エンドキャップ、前記操作具若しくは前記調整具を含み、
前記手術器具は、前記髄内釘に対する連結状態において、前記髄内釘に装着された態様若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具を前記連結部と前記髄内釘の間に組み込み可能に構成されるとともに、前記装着具を前記態様に維持したまま前記髄内釘から取り外し可能に構成され、
前記連結部は、前記装着具に対して着脱可能に接続される接続構造を有し、
前記手術器具は、前記髄内釘に対する連結状態において、前記髄内釘に装着された態様若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具が前記連結部に接続されるとともに、前記装着具の前記連結部に対する接続を解除することにより前記髄内釘から取り外し可能に構成される、
骨固定システム。
【請求項3】
前記手術器具は、前記髄内釘に対する連結状態において、前記連結部が前記装着具に接続されるとともに前記装着具が前記髄内釘に装着され、また、前記装着具が前記髄内釘に装着されたまま前記連結部と前記装着具との接続を解除することにより前記髄内釘から取り外し可能に構成される、
請求項2に記載の骨固定システム。
【請求項4】
前記連結部は、前記接続構造としての前記装着具に対して連結方向に着脱可能に接続される接続端部と、前記髄内釘に対して該連結方向と直交する方向に係合可能な係合端部と、を有する、
請求項2又は3に記載の骨固定システム。
【請求項5】
前記連結部は、前記接続端部を備えた第1の連結部材と、前記係合端部を備えた第2の連結部材とを有し、
前記接続端部に接続された前記装着具が前記髄内釘に装着され若しくは装着可能に位置決め保持されることにより、前記髄内釘と前記第1の連結部材により前記第2の連結部材が挟持される態様で前記髄内釘が前記手術器具に連結される、
請求項4に記載の骨固定システム。
【請求項6】
前記手術器具は、前記髄内釘に対する連結状態において、前記第1の連結部材が前記髄内釘に装着され若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具に接続されることにより、相互に前記装着具を介して接続された前記第1の連結部材と前記髄内釘が前記第2の連結部材を挟持する、
請求項5に記載の骨固定システム。
【請求項7】
前記第1の連結部材と前記第2の連結部材は、互いに回転可能かつ軸線方向の少なくとも所定の範囲内で互いに軸線方向に移動可能に構成され、
前記装着具の装着構造は、前記髄内釘の被装着構造に対して軸線を中心とするねじ結合により装着可能に構成され、
前記係合端部の係合構造は、当該係合構造に係合可能な前記髄内釘の被係合構造に対して前記軸線周りの回転方向に係合可能に構成される、
請求項5又は6に記載の骨固定システム。
【請求項8】
前記第1の連結部材は、前記接続端部の一部として前記装着具を保持する保持端部を備えるとともに、前記接続端部の他の一部として前記保持端部により保持された前記装着具を位置決めする位置決め端部を備える、
請求項7に記載の骨固定システム。
【請求項9】
前記第1の連結部材は、前記保持端部を備えるインナーロッドと、前記位置決め端部を備えるアウタースリーブと、を有し、
前記装着具が前記保持端部に保持された状態で前記位置決め端部に当接することにより、前記装着具と前記インナーロッドにより前記アウタースリーブが挟持される態様で前記装着具が前記第1の連結部材に接続される、
請求項8に記載の骨固定システム。
【請求項10】
前記インナーロッドと前記アウタースリーブは、互いに回転可能、かつ、軸線方向の少なくとも所定範囲内で互いに軸線方向に移動可能に構成され、
前記保持端部の保持構造は、前記装着具の被保持構造に対して軸線を中心とするねじ結合により保持可能に構成される、
請求項9に記載の骨固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
骨を固定するための骨固定システムとして、従来から、髄内釘や骨プレートなどの体内に配置されるインプラントを備えたものが知られている。この場合において、インプラントを体内に導入し、所定の位置に位置決めするための導入器具が用いられることもあり、また、体内に配置されたインプラントの横断孔やねじ穴に対して固定具を取り付ける場合には、正確に固定具を適用するために、ターゲット装置などの照準器具が用いられることもある(例えば、以下の特許文献1及び2を参照)。
【0003】
上記のインプラントを体内に導入し、所定の位置に配置した後において、術式に応じた部品をインプラントに装着する作業が必要になる場合がある。例えば、髄内釘の基端部には、エンドキャップと呼ばれる栓部材や上記固定具を固定するためのセットスクリューと呼ばれる調整具を挿入したり、或いは、インプラントに設けられた調整機構を操作するための操作具を所要の態様で装着することがある。また、上述の照準器具や導入器具などの手術器具を用いる場合には、所定の連結構造を用いて、これらの手術器具の連結部とインプラントとを連結した状態とし、その後、手術器具を用いてインプラントを体内へと導入し、位置決めする。照準器具の場合には、さらにその後、照準器具の案内機能を用いてインプラントに固定具を取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-78499号公報
【文献】特開2010-110552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のように体内の所定の位置に位置決めされたインプラントに対しては、体内を直接視認できないことなどから、整形外科医などの手術者が体外からアクセスすることが難しい。特に、患者の手術時の負担を減らすための近年の術式の低侵襲化により、体内に配置されるインプラントへのアクセスの困難性はますます増大している。一方、髄内釘の基端部の軸穴の内面に形成された雌ねじに、エンドキャップなどの栓部材、セットスクリューなどの調整具、調整機構を操作するための操作具、骨プレートのねじ穴に対応する穿孔を施す際のドリルガイドなどの案内具といった、各種の装着具を用いることがある。しかし、上記のような状況において、体内に配置されたインプラントに対して、上記の各種の装着具を装着することはいずれも極めて困難である。これは、インプラントにおける装着具の装着作業においては、インプラント側の被装着部に対する装着具の軸線に対する傾きをなくし、軸線を正確に整合させた状態で操作を行う必要があるためである。また、少しでも軸線が傾いた状態で無理やりに装着してしまうと装着具や被装着部を破壊したり、装着不良が生ずるおそれがあり、この破壊や装着不良に気づかずに手術を終えると、インプラントの本来の機能を発揮できないという問題がある。さらに、装着に手間取ることにより手術時間が長くなってしまうという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解消するために、インプラントにおける装着具の装着作業を容易化及び確実化できる骨固定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の骨固定システムは、骨固定のために体内に配置されるインプラントと、該インプラントに連結可能に構成された連結部を備える手術器具と、前記インプラントにおいて着脱可能に装着される装着具とを具備する。ここで、前記手術器具は、前記インプラントに対する連結状態において、前記インプラントに装着された態様若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具を前記連結部と前記インプラントの間に組み込み可能に構成される。また、前記手術器具は、前記装着具を前記態様に維持したまま前記インプラントから取り外し可能に構成される。
【0008】
本発明において、前記連結部は、前記装着具に対して着脱可能に接続される接続構造を有し、前記手術器具は、前記インプラントに対する連結状態において、前記インプラントに装着された態様若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具が前記連結部に接続されるとともに、前記装着具の前記連結部に対する接続を解除することにより前記インプラントから取り外し可能に構成されることが好ましい。この場合において、前記手術器具は、前記インプラントに対する連結状態において、前記連結部が前記装着具に接続されるとともに前記装着具が前記インプラント本体に装着されるように構成され、また、前記装着具が前記インプラントに装着されたまま前記連結部と前記装着具との接続を解除することにより前記インプラントから取り外し可能に構成されることがさらに望ましい。
【0009】
本発明において、前記連結部は、前記装着具に着脱可能に接続される接続端部と、前記インプラントに対して連結方向と直交する方向に係合可能な係合端部と、を有することが望ましい。この場合において、前記連結部は、前記接続端部に接続されるとともに前記インプラントに装着され若しくは装着可能に位置決め保持された前記装着具を介して前記インプラントに連結可能、かつ、接続端部と装着具との接続を解除することにより前記インプラントから取り外し可能に構成される。また、前記接続端部は、前記装着具の被接続構造に対応する接続構造を備える。接続構造は、被接続構造の例えば、雌ねじ、雄ねじ、凸条、凹溝などに対応する雄ねじ、雌ねじ、凹溝、凸条などとすることができる。このとき、凸条や凹溝は、凹凸構造により相互に係止可能な弾性部や作動機構により着脱可能に接続されることが望ましい。さらに、前記係合端部は、前記インプラントの被係合構造に対応する係合構造を備える。係合構造は、被係合構造の例えば、凹凸構造に嵌合可能な凹凸構造により構成できる。
【0010】
本発明において、前記連結部は、前記接続端部を備えた第1の連結部材と、前記係合端部を備えた第2の連結部材と、を有することが好ましい。ここで、前記接続端部に接続された前記装着具が前記インプラントに装着され若しくは装着可能に位置決め保持されることにより、前記インプラントと前記第1の連結部材により前記第2の連結部材が挟持される態様で前記インプラントが前記手術器具に連結されることが望ましい。また、前記手術器具は、前記インプラントに対する連結状態において、前記第1の連結部材が前記インプラントに装着され若しくは装着可能に位置決め保持された態様の前記装着具に接続されることにより、相互に前記装着具を介して接続された前記第1の連結部材と前記インプラントが前記第2の連結部材を挟持することが望ましい。さらに、第1の連結部材と第2の連結部材は、互いに回転可能かつ軸線方向の少なくとも所定の範囲内で互いに軸線方向に移動可能に構成されることが好ましい。これらの場合において、前記第1の連結部材を内側軸体とし、前記第2の連結部材を外側筒体とする同軸構造を備えることが望ましい。
【0011】
ここで、前記装着具の装着構造は、前記インプラントの被装着構造に対して軸線を中心とするねじ結合により装着可能に構成されることが好ましい。また、前記接続端部の接続構造は、前記装着具の被接続構造に対して軸線を中心とするねじ結合により装着可能に構成されることが好ましい。さらに、前記係合端部の前記係合構造は、前記インプラントの前記被係合構造に対して前記軸線周りの回転方向に係合可能に構成されることが望ましい。
【0012】
本発明において、前記第1の連結部材は、前記接続端部の一部として前記装着具を保持する保持端部を備えるとともに、前記接続端部の他の一部として前記保持端部により保持された前記装着具を位置決めする位置決め端部を備えることが好ましい。このとき、前記装着具は、前記被装着構造の一部として、前記保持端部により保持される被保持構造を備えるとともに、前記被装着構造の他の一部として、前記位置決め端部により位置決めされる被位置決め構造を備えることが好ましい。ここで、前記保持端部は、雄ねじ、雌ねじ、凸条、凹溝などにより構成できる。このとき、凸条や凹溝は凹凸構造により相互に係止可能な弾性部や可動部により保持可能に構成されることが望ましい。また、前記位置決め端部は、前記装着具の被位置決め構造に当接し、前記装着具の接続姿勢及び接続位置を規制するように構成されることが望ましい。特に、前記装着具の軸線周りの角度姿勢、軸線方向に対する姿勢、並びに、軸線方向及びこれと直交する方向の位置が規制されることがさらに望ましい。
【0013】
本発明において、前記保持端部を備えるインナーロッドと、前記位置決め端部を備えるアウタースリーブと、を有することが好ましい。ここで、前記装着具が前記保持端部に保持された状態で前記位置決め端部に当接することにより、前記装着具と前記インナーロッドにより前記アウタースリーブが挟持される態様で前記装着具が前記第1の連結部材に接続されることが望ましい。また、前記インナーロッドと前記アウタースリーブは、互いに回転可能、かつ、軸線方向の少なくとも所定範囲内で互いに軸線方向に移動可能に構成されることが好ましい。ここで、前記保持構造は、前記被保持構造に対して軸線を中心とするねじ結合により保持可能に構成されることが望ましい。例えば、前記保持端部は雄ねじを有し、前記被保持構造は雌ねじで構成される。この場合において、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材は、相互に軸線周りに回転可能かつ軸線方向に移動可能に構成されることが望ましい。また、前記インナーロッドと前記アウタースリーブのそれぞれの基端部には、相互に独立して回転操作工具などに係合可能な回転係合部(第1の回転係合部、第2の回転係合部)をそれぞれ備えることが望ましい。
【0014】
本発明において、前記インプラントにより保持可能に構成される固定具をさらに具備する場合がある。この場合において、前記装着具は、前記固定具の保持状態を調整可能な調整具であるか、或いは、当該調整具を含むことが望ましい。また、前記インプラントによる前記固定具の保持状態を調整する調整機構をさらに具備する場合もある。この場合には、前記装着具は、前記調整機構を操作可能に構成される操作具であるか、或いは、当該操作具を含むことが望ましい。
【0015】
本発明において、前記インプラントは、前記手術器具の前記連結部に連結される被接続端部に開口する軸穴を備える髄内釘であることが好ましい。この場合において、前記軸穴の内部に前記装着具の装着構造に対応する被装着構造を備えることが望ましい。この被装着構造は、前記装着具の装着構造、例えば、雄ねじ、雌ねじ、凸条、凹溝などに対応する雌ねじ、雄ねじ、凹溝、凸条などによって構成できる。また、前記軸穴の開口縁に前記係合端部の係合構造に係合可能な被係合構造を備えることが望ましい。この被係合構造は、前記係合端部の係合構造、例えば、凸状の突起、凹状の切り欠きなどに対応する凹状の切り欠き、凸状の突起などによって構成できる。特に、前記装着具は、前記インプラントの前記軸穴の内面に設けられたねじに螺合することによって装着されることが望ましい。この場合において、前記装着具の前記装着構造は雄ねじで構成され、前記被装着構造は雌ねじで構成される。さらに、上記装着具に対して接続可能に構成された、前記インプラントの基端部を延長するための延長用装着具(延長用エンドキャップ)をさらに具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、連結部とインプラントの間に装着具を組み込んだ状態で手術器具をインプラントに連結してから、インプラントを体内に導入し、その後、装着具がインプラントに接続された状態で手術器具を取り外すことにより、体内に配置されたインプラントにおける装着具の装着作業を不要とすることができるため、インプラントにおける各種の装着具の装着作業を容易化及び確実化できる骨固定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】骨固定システムの実施形態の全体構成を骨に対する適用状態とともに示す一部断面透視図である。
図2】同じ実施形態の手術器具の連結部の構造を拡大分解断面図とともに示す断面図である。
図3】同じ実施形態の手術器具の構成を、一部の部品を分解した状態で示す図である。
図4】同じ実施形態のインプラント(髄内釘)の構造をそれぞれ表わした、或る方位から見た様子を示すインプラントの外観図(a)、異なる方位から見た様子を示すインプラントの一部外観図(b)、及び、インプラントの内部に構成される調整機構を示す分解図(c)である。
図5】インプラント(髄内釘)の内部の調整機構の装着具(エンドキャップ)による動作態様の前後の状態をそれぞれ示す説明図(a)及び(b)である。
図6】インプラント(髄内釘)の内部における装着具の位置と調整機構の動作態様との関係を模式的に表すことにより、固定具(骨ねじ)に対するリリース状態とロック状態とをそれぞれ示す説明図(a)及び(b)である。
図7】インプラントから手術器具を取り外す際に用いる工具及びその適用方法を示す一部断面図(a)、平面図(b)及び一部断面側面図(c)である。
図8】インプラントの基端部を延長するための延長用エンドキャップの装着例を示す装着前の状態図(a)、装着後の状態図(b)、及び、装着具と延長用エンドキャップの拡大分解図(c)である。
図9】別の実施形態の手術器具とインプラントとの連結部分を示す拡大断面図(a)、装着具の構造を示す分解斜視図(b)、及び、装着具本体と延長エンドキャップの対応構造を示す分解斜視図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図4を参照して、本発明に係る実施形態の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の骨固定システム1は、骨(大腿骨)Bを保持するための体内の位置に導入されるインプラント2と、このインプラント2を体内に導入する際に挿入器具として用いられるとともに、体内に配置されたインプラント2に図示しない固定具(骨ねじ)を導入するための照準器具としても用いられる手術器具3と、を具備する。インプラント2は、インプラント本体(髄内釘)21と、このインプラント本体21の基端部に開口する軸穴21a内に装着される装着具(エンドキャップ或いは操作部材)22と、軸穴21a内に配置されるとともに、インプラント本体21に設けられた横断孔21dに挿通される上記固定具の保持状態を調整する調整機構23とを備える。
【0020】
手術器具3は、インプラント2に連結される連結部31と、この連結部31に対してその軸線周りに回転可能に接続されたアーム部32と、このアーム部32に接続固定され、インプラント本体21に設けられた横断孔21dに固定具を挿通させるように穿孔具や固定具を案内するための照準部33とを備える。この照準部33は、図示しないガイドスリーブなどを案内軸線33xに沿った姿勢で装着可能に構成されている。
【0021】
また、手術器具3の連結部31は、インプラント2に連結される先端側の連結端31aと、この連結端31aの反対側に設けられ、アーム部32の先端のアーム端部32aの内部を挿通して基端側に突出した基端31bとを備える。基端31bは、インプラント2を導入する際にハンマーなどで打撃することができるようにフランジ状に拡大された形状を備える。この基端31bの直下部には、操作ハンドル34が取り付けられ、アーム部32及び照準部33のインプラント2に対する延在角度を変更操作したり、インプラント2の軸線に対するアーム部32及び照準部33の方位を確認するために使用される。連結部31のアーム端部32aに対する挿通部分には、当該アーム端部32aに対して軸線周りの回転方向に係合可能であるとともに軸線方向に移動可能に取り付けられることによりアーム端部32aに対して係脱可能に構成された係止リング35aと、この係止リング35aがアーム端部32aに係合したロック状態とアーム端部32aに対する解除状態とを切り替えるための操作スリーブ35bと、を備えた角度設定機構35が設けられる。なお、この角度設定機構35には図2に示すように付勢手段(コイルばね)35cが内蔵され、これにより、操作スリーブ35bが係止リング35aを解放している場合であっても、係止リング35aはアーム端部32aに係合する側に押し付けられた状態とされる。
【0022】
なお、図1に示す例は、骨Bとしての大腿骨の髄内に導入され、主として、大腿骨の遠位端の顆部Baの周辺の骨折を治療するための逆行性髄内釘をインプラントとした場合を示している。この場合には、手術前に予め体外でインプラント2を手術器具3に連結しておき、顆部Baにリーミングなどを施すことにより皮質骨を開創し、手術器具3を把持した状態で、皮質骨の開口を通してインプラント2を大腿骨の髄内に挿入する。
【0023】
図2及び図3に示すように、連結部31には、内周に配置される内側軸体で構成される(図示例では内側筒体でもある)第1の連結部材311と、外周に配置されることにより第1の連結部材311を収容する外側筒体で構成される第2の連結部材312と、を有する。第1の連結部材311は、内周に配置されるインナーロッド313と、外周に配置されるアウタースリーブ314とを備える。上記連結部31の連結端31aには、第1の連結部材311の先端に設けられる接続端部311aが設けられる。この接続端部311aは、上記装着具22に接続するための接続構造を備える。接続端部311aは、上記インナーロッド313の先端に設けられ、装着具22を保持可能な保持端部313aと、上記アウタースリーブ314の先端に設けられ、装着具22を位置決め可能な位置決め端部314aとから構成される。図示例では、保持端部313aは、装着具22に設けられた被保持構造である軸穴22aの内面に形成された雌ねじ22bに螺合(ねじ結合、以下同様。)可能な雄ねじを備える。位置決め端部314aは、装着具22の内面及び基端部からなる被位置決め構造と対応する段差状の端面を備えた位置決め構造を有する。また、この位置決め構造は、六角穴などの回転係合形状を備えた被位置決め構造に対応して、軸線周りの回転方向に係合可能な六角柱状などの回転係合形状を備える。
【0024】
インナーロッド313は、アウタースリーブ314の軸穴内に図示のように挿通された状態で、アウタースリーブ314に対して軸線周りに回転可能であり、しかも、少なくとも軸線方向の所定の範囲内では軸線方向に可動に構成される。これにより、インナーロッド313の保持端部313aを装着具22の軸穴22aに挿入し、保持端部313aの雄ねじを軸穴22aの内面の雌ねじ22bに螺合させることにより、装着具22の後述する基端側内面22eをアウタースリーブ314の位置決め端部314aに押し付けた状態で保持固定することができる。このときには、装着具22は、第1の連結部材311の軸線に沿った姿勢で、当該軸線の方向にしっかりと位置決めされた状態とされるとともに、軸線の周りの回転方向にも固定された状態とされる。
【0025】
インナーロッド313の基端には、レンチなどの回転操作工具を適用可能な六角穴などの工具係合部(第1の回転係合部)313bが設けられる。また、当該インナーロッド313の基端の外周面上には、手指などでインナーロッド313を回転操作可能とするローレットや粗面などからなる操作面313cが設けられる。アウタースリーブ314の基端には、レンチなどの回転操作工具を適用可能な六角穴などの工具係合部(第2の回転係合部)314bが設けられる。また、当該アウタースリーブ314の基端の外周面上には、手指などでアウタースリーブ314を回転操作可能とするローレットや粗面などからなる操作面314cが設けられる。なお、313dは保持ねじ、314dは保持スリーブであり、アウタースリーブ314に固定された保持スリーブ314dの内面上の雌ねじと、インナーロッド313の外面上の保持ねじ(雄ねじ)とが螺合可能に構成されることにより、インナーロッド313をアウタースリーブ314にねじ込み、その螺合範囲を越えた軸線方向の所定範囲内の位置に設定することで、インナーロッド313をアウタースリーブ314に対して軸線方向の所定範囲(保持ねじ313dが自由に移動できる範囲)で軸線方向に移動可能かつ軸線周りに回転可能に構成しつつ、脱落しないように構成している。また、インナーロッド313の張出部313eがアウタースリーブ314の受け部(図示例では保持スリーブ314d)に係合することにより、インナーロッド313と、その保持端部313aに保持された装着具22とによりアウタースリーブ314を挟持する態様でこれらの三つの部材が一体化されることにより、装着具22が第1の連結部材311に接続される。
【0026】
第2の連結部材312は、上記連結端31aに相当する先端に係合端部312aを備える。この係合端部312aは、外側筒体の先端開口縁に、係合構造としての凸状の突起又は凹状の切り欠きを形成することにより、対応する位置に凹状の切り欠き又は凸状の突起を備えたインプラント2の基端の開口縁に設けられた被係合構造21bと係合する。これによって、第2の連結部材312は、インプラント2に対して軸線の周りの回転が規制される状態とされる。第2の連結部材312は、軸線方向の中間位置で上記角度設定機構35の内部を通過し、アーム端部32aの内部を通過した後に、基端側に突出する基端部を備える。この第2の連結部材312の基端部には雄ねじ312cが設けられる。この雄ねじ312bには端部ナット36が螺合し、上述の操作ハンドル34の取付基部34aをアーム端部32aに押さえ付けるように固定しつつ、第2の連結部材312をアーム32に対して軸線方向に固定する。
【0027】
装着具22は、図2に示すように、基端側(図示上方)が開放され、先端側(図示下方)が軸穴22aの周囲に環状の壁縁を備えることにより、軸線周りの断面形状がL字状に構成された円筒形状を有する。装着具22の外周には雄ねじ22cが形成される。この雄ねじ22cは、インプラント本体21の軸穴21aの内面に形成された雌ねじ21cと螺合可能に構成される。装着具22は、上記軸穴22aの周囲に設けられた先端面22dにより、インプラント本体21の軸穴21a内に収容された調整機構23を押圧することにより、調整機構23を駆動し、その結果、後述するように、インプラント本体21の横断孔21dに挿通される固定具24を保持固定したり、解放したりすることができる操作具である。装着具22の基端側には六角穴などの回転方向に係合する回転係合面を備える基端側内面22eが設けられる。
【0028】
第1の連結部材311は、第2の連結部材312の軸穴に挿通された図示の状態で、第2の連結部材312に対して、軸線周りに回転可能であるとともに、軸線方向の少なくとも所定範囲内で軸線方向に移動可能である。また、図2に示す連結状態では、雄ねじ22cが雌ねじ21cに螺合することにより装着具22がインプラント本体21に装着されているため、第1の連結部材311は装着具22を介してインプラント本体21に接続された状態となる。この状態では、第1の連結部材311の頭部311b(アウタースリーブ314の基部に相当する。)は、第2の連結部材312の受け部312bに対して軸線方向に係合し、これによって、第2の連結部材312がインプラント本体21から軸線方向に沿って離れる方向に移動することを規制する。特に、図1及び図2のように装着具22がインプラント本体21の軸穴21a内に深く装着される(ねじ込まれる)ことにより、第2の連結部材312が第1の連結部材311とインプラント本体21とによって軸線方向両側から挟持されるため、第2の連結部材312は、上記係合構造312aが被係合構造21bと係合した状態で、軸線方向に固定される。
【0029】
図4に示すように、インプラント2のインプラント本体21の基端部には、軸穴21aと交差する態様で連通する複数の横断孔21dが形成される。そして、これらの複数の横断孔21dに対応するように、軸穴21aの内部に調整機構23が収容される。調整機構23は、第1駒部材231、第2駒部材232、第3駒部材233、第4駒部材234といった複数の駒部材と、これらの複数の駒部材231~234を軸穴21a内に保持する保持リング235と、これらの複数の駒部材231~234を軸穴21aの開口側へ付勢する付勢手段(コイルばね)236とを備える。保持リング235は、第1駒部材231の外面の凹溝231cと軸穴21aの内面の凹溝21eに係合することによって第1駒部材231を凹溝21eに相当する軸穴21a内の位置に保持する。また、付勢手段236は第4駒部材234の脚部234の周囲に配置され、第4駒部材234を軸穴21aの開口側へ押し上げる。
【0030】
調整機構23において、各駒部材231~234は、それぞれ、上記インプラント本体21の横断孔21dに対応する位置に開口231a~234aを備える。これらの開口231a~234aは、それぞれが上記横断孔21dに挿通される固定具(骨ねじ)を挿通可能となるように形成される。各開口231a~234aはインプラント本体21の軸線方向にやや長い開口形状を備える。また、第1駒部材231、第2駒部材232、第3駒部材233はそれぞれ一対の係合脚部231b、232b、233bを備え、これらの係合脚部231b~233bをその奥にある隣接する駒部材232,233,234に設けられた被係合凹部232d,233d,234dに係合させた状態で相互に連接される。
【0031】
図5は、インプラント本体21の基端部内に収容された調整機構23の様子を示す断面図である。ここで、図5(a)は、装着具(エンドキャップ)22が装着されていない初期状態であるリリース状態を示す図、図5(b)は、装着具(エンドキャップ)22を装着し、装着具22を既定の深さまでねじ込んだときのロック状態を示す図である。このように、装着具22によって調整機構23を軸線方向に押し込むことで、各駒部材231~234に設けられた開口231a~234aが軸線方向に移動することがわかる。
【0032】
図6は、上記リリース状態(a)と上記ロック状態(b)とを模式的に示す説明図である。なお、この図6では、図示の都合上、上記の図5とは異なり、複数の横断孔21dが全て紙面と直交する方向に貫通しているものとして模式的に描いてある。図6(a)に示すように、リリース状態では、各駒部材231~234の開口231a~234a(実線で示す。)は、それぞれに対応する横断孔21d(点線で示す。)の開口位置と整合しているため、固定具24(破線で示す。)を横断孔21dに挿通させても、固定具は開口231a~234aを余裕を持って通過できるので、各固定具24はインプラント本体21に対して自由に抜き差し可能な状態になる。
【0033】
一方、図6(b)に示すように、ロック状態では、各駒部材231~234は装着具22により軸穴21aの奥部側に押し込まれることから、開口231a~234aも奥部側へ移動して、横断孔21dの開口範囲に対してやや軸線方向にずれる。このため、固定具24は、相互にずれた開口231a~234aの開口縁と横断孔21dの開口縁とによって軸線方向に挟み込まれ、締め付けられた状態となる。したがって、固定具24はインプラント本体21に保持された状態となるから、インプラント本体21とともに骨をしっかりと支持することが可能になる。
【0034】
以上のように構成された本実施形態の骨固定システム1は、以下のように用いられる。まず、事前にインプラント2と手術器具3を連結する。このとき、手術器具3の連結部31の連結端31aに設けられた、第1の連結部材311の接続端部311aに装着具22を接続する。これは、装着具22の軸穴22aの雌ねじ22bにインナーロッド313の保持端部313aの雄ねじを螺合させ、装着具22の基端側内面22eをアウターロッド314の位置決め端部314aに係合(嵌合)させた状態に固定する。これにより、装着具22の姿勢及び位置、すなわち、軸線周りの角度姿勢、軸線方向に対する姿勢、並びに、軸線方向及びこれと直交する半径方向の位置が連結部31に対して正確に設定される。なお、上記第1の連結部材311及び第2の連結部材312により構成される連結部31の連結端31aには、接続端部311a及び係合端部312aが含まれる。
【0035】
そして、手術器具3の連結部31の連結端31aをインプラント本体21の軸穴21aの開口縁に当接し、第2の連結部材312の係合端部312aをインプラント本体21の被係合構造21bに係合(嵌合)させた状態で、上述のように手術器具3に接続固定した装着具22をインプラント本体21の軸穴21aに挿入し、第1の連結部材311を回転させる(具体的には工具係合部314bを用いてアウタースリーブ314を回転させる)ことにより、装着具22の雄ねじ22cをインプラント本体21の軸穴21aの内面に設けられた雌ねじ21cに螺合させる。これにより、第1の連結部材311は装着具22を介して軸穴21aの内部にねじ込まれ、これを強く締め付けることにより、第1の連結部材311が連結ボルトとして機能し、その頭部311bが受け部312bに係合して第2の連結部材312をインプラント本体21に押し付けた状態で固定する。これにより、インプラント本体21が装着具22を介して手術器具3に連結された状態となる。すなわち、第1の連結部材311がインプラント本体21に対して装着具22を介して接続されるとともに、第2の連結部材312が第1の連結部材311とインプラント本体21に挟持されることにより、インプラント本体21に対して軸線周りに固定した状態で軸線方向に固定されることから、連結部31とインプラント本体21との間の軸線方向及び軸線周りの連結状態が実現される。
【0036】
なお、上記のインプラント2と手術器具3の連結状態においては、上記連結部31の連結構造により、装着具22が図6(a)に示すリリース状態となる深さに装着された状態となることが好ましい。これは、手術器具3を用いてインプラント2を体内に導入した後に、インプラント本体21の横断孔21dに固定具24を挿通可能とするためには、上記調整機構23がリリース状態になっていなければならないからである。ただし、上記連結状態において、装着具22を操作可能に構成し、リリース状態とロック状態を切り替え可能な場合には、上記の限りではない。
【0037】
また、このインプラント2と手術器具3が連結された状態において、図示例のように、装着具22が連結部31に接続されているとともにインプラント本体21に装着されている必要は必ずしもない。例えば、この状態で、装着具22が連結部31に接続されていないがインプラント本体21には装着されている第1の場合、装着具22がインプラント本体21に装着されていないが連結部31には接続されている第2の場合、装着具22が連結部31に接続されていないとともにインプラント本体21にも装着されていない第3の場合などが考えられる。これらの場合において、装着具22は連結部31とインプラント本体21との間に組み込まれていればよい。ただし、第2の場合や第3の場合には、装着具22はインプラント21に装着可能に位置決め保持された状態となっている必要がある。
【0038】
次に、上記の連結状態において、手術器具3を挿入器具として用いて、インプラント2を体内へと導入する。このとき、予め骨Bに穿孔を施す必要があれば、この導入作業の前に穿孔を完了させておく。本実施形態の場合には、髄内釘として、顆部Baの穿孔部位から大腿骨の髄内に向けてインプラント2を挿入する。図1に示す例では逆行性髄内釘として大腿骨の遠位端から導入するが、大腿骨の近位端から導入する通常の髄内釘であってもよい。インプラント2が体内の適切な位置に導入されると、手術器具3を照準器具として用いて、図示しないガイドスリーブと、このガイドスリーブに案内されるドリルやリーマなどの穿孔器具とにより、インプラント本体21の横断孔21dに対応する位置を穿孔し、その後、上記ガイドスリーブに案内される骨ねじなどの固定具24を穿孔部位に導入する。このとき、固定具24は、横断孔21dと調整機構23の各駒部材231~234の開口231a~234aに挿通される。固定具24が骨ねじである場合には、図示しないレンチをガイドスリーブに通して固定具24を骨内にねじ込む。
【0039】
上述のようにして、インプラント2に対する固定具24の適用が完了すると、最後に、手術器具3をインプラント本体21から取り外す。なお、本実施形態では、手術器具3を取り外してから、装着具22をさらにねじ込むことにより、調整機構23を図6(b)に示すロック状態に移行させる。ただし、連結部31の内部を通して装着具22を操作可能な構造(前述のように装着具22を操作可能に構成し、リリース状態とロック状態を切り替え可能な場合)であれば、手術器具3を取り外す前に、装着具22をねじ込んで、上記ロック状態にすることも可能である。
【0040】
本実施形態において、手術器具3の取り外し作業には、図7に示す回転操作工具4を用いる。この回転操作工具4は、上記工具係合部314b(第2の回転係合部)に係合する係合端41aと、この係合端41aから軸線方向に突出する筒状部41bと、この筒状部41bから外周へ延出する支持ハンドル41cとを備える支持具41と、上記工具係合部313b(第1の回転係合部)に係合する係合端42aと、この係合端42aから第1支持具41の上記筒状部41bの内部を通して延在する軸状部42bと、この軸状部42bの基端に設けられた操作ハンドル42cとを備える操作具42とを有する。
【0041】
この取り外し作業では、まず、図7に示すように、支持具41を連結部31の基端31bから挿入して、先端の係合端41aを、第1の連結部材311のアウタースリーブ314の第2の回転係合部である工具係合部134bに係合させる。次に、支持具41の上記筒状部41bを通して操作具42の先端の係合端42aを、インナーロッド313の第1の回転係合部である工具係合部313bに係合させる。そして、支持ハンドル41cを把持して支持具41によりアウタースリーブ314の回転を防止しながら、操作ハンドル42cを用いて操作具42によりインナーロッド313を回転させることにより、インナーロッド313の保持端部313aの雄ねじを装着具22の雌ねじ22bから取り外す。これにより、第1の連結部材311(インナーロッド313)は装着具22から分離可能となるので、第1の連結部材311及び第2の連結部材312をいずれもインプラント本体21から取り外すことができるようになる。ここで、連結部31は、上述のように手術器具3のうちの体外に配置される部分に対する操作、或いは、当該部分から挿入される器具による操作により、インプラント本体21に装着された装着具22の接続端部311aとの接続を解除可能であるように構成されるので、手術中に支障なく、手術器具3の取り外しを容易に行うことができる。
【0042】
本実施形態では、上述のように手術器具3を取り外した後に、インプラント本体21に既に装着されている(図6(a)に示すリリース状態にある)装着具22をさらに図示しない工具により深くねじ込むことにより、図6(b)に示すロック状態に移行させる。これにより、調整機構23は、各横断孔21dに挿通されている固定具24を保持固定するので、骨折部分をしっかりと保持した状態とすることができる。
【0043】
以上のように構成される本実施形態では、装着具22を組み込んだ形でインプラント2と手術器具3を予め連結した状態とし、インプラント2を体内に導入してから、インプラント2において装着具22が装着された態様を維持したままでインプラント2から手術器具3を取り外すことにより、インプラント2を体内に導入した後に別途装着具22を導入し、装着する作業を不要とすることができる。したがって、装着具22のインプラント2への装着不良や装着作業の煩雑化を抑制することができ、手術の容易化、確実化を図ることができる。特に、図示例のような逆行性髄内釘のように、軸穴21aの開口縁と、最も近い横断孔21dとの間隔G、G′(図5(a)及び(b)参照)が極めて小さい場合には、装着具22を雌ねじ21cにねじ込むことが極めて困難であり、装着具22を傾けてねじ込んでねじ山を破壊してしまったり、装着不良により装着具22の機能を発揮できなかったり、装着具22のねじ込みに手間取り手術時間が長くなったりするといった事態を確実に防止できる。
【0044】
特に、本実施形態では、インプラント2と手術器具3の連結状態において、第1の連結部材311がインプラント本体21に装着された状態の装着具22に接続されることにより、相互に装着具22を介して接続された第1の連結部材311とインプラント本体21が第2の連結部材312を挟持するように構成される。このため、装着具22を介在させることなしにインプラント2と手術器具3を連結させるための独立した連結構造を設ける必要がなくなり、第1の連結部材311と装着具22との接続構造を設けるだけで、既存の装着具22とインプラント本体21との装着構造を利用して連結構造を構成できるため、連結部31を簡易に構成できるという利点がある。
【0045】
図8(a)~(c)には、上記実施形態のインプラント2を大腿骨遠位端に適用した様子を示すとともに、インプラント本体21の基端部に装着することで基端部の長さを延長するための延長用エンドキャップ26とその装着状態を示す。図8(a)に示すように、インプラント本体21の複数の横断孔21dには、骨ねじ24A,24Cやワッシャ付き骨ボルトナット組立体24Bなどの固定具24が挿通され、上述の調整機構23により保持固定される。調整機構23は、インプラント本体21の軸穴にねじ込まれた上記装着具22のねじ込み深さによって固定具24を固定するロック状態とされる。
【0046】
図8(a)に示すように、インプラント本体21の基端部が大腿骨遠位端の端部位置よりも骨の内部側に配置される場合には、当該端部の閉塞によりインプラント2が抜去不能になることを避けるため、若しくはインプラント本体21の基端部が骨内で不用意に動くことを防ぐため等の理由で、延長用エンドキャップ26を装着する。この場合、図8(b)に示すように、インプラント本体21の基端部を延長しないエンドキャップでもある装着具22に対して延長用エンドキャップ26を接続することにより、インプラント本体21の基端部を延長することができる。図8(c)に示すように、延長用エンドキャップ26は、インプラント本体21の基端部を延長するための当該基端部とほぼ同じ外径を備える本体26aと、この本体26aに対して先端側に突出する突出部26bと、この突出部26bのさらに先端に突出する突起部26cと、本体26aの基端側に形成された工具係合部26eとを備える。ここで、突起部26cの外周には、装着具22の雌ねじ22bと螺合可能な雄ねじ26dが形成される。また、突出部26bは、装着具22の工具係合部である基端側内面22eに嵌合可能な対応する寸法を備え、雄ねじ26dと雌ねじ22bのねじ結合作業のためのパイロットガイドとして機能する。なお、突出部26bの外周に雄ねじを形成し、基端側内面22eに雌ねじを形成することで、より軸線方向の広い範囲でねじ結合させることも可能である。このとき、上記雌ねじは、基端側内面22eの六角穴の各平坦面に別々に形成されることにより周方向に分割された態様の複数のねじ溝によって構成できる。
【0047】
本実施形態では、前述のように装着具22が装着された状態のインプラント2から手術器具3を取り外した後に、上記延長用エンドキャップ26を装着具22に取り付ける。この場合、装着具22と延長用エンドキャップ26には、上述のパイロットガイドなどのような、予め装着性を高めるような相互に対応する工夫を施すことができるので、装着具22が予め装着されていることにより、延長用エンドキャップ26を比較的容易に取り付けることができる。ただし、予め装着具22と延長用エンドキャップ26を予め接続することにより或いは一体化することにより装着結合体としておいて、この装着結合体を上述のインプラント2と手術器具3の間に組み込むことができるように構成してもよい。このとき、図示の延長用エンドキャップ26は上記実施形態のインプラント本体21の基端部とほぼ同様の外径を備えるため、第2の連結部材312の係合端部312aをインプラント本体21の基端とともに拡径することにより、延長用エンドキャップ26を収容した状態で相互間の係合を可能にすることができる。なお、この場合においても、装着具22を含む装着組立体は、インプラント本体21に対して正式に装着されていなくてもよいときがある。例えば、上記第1の連結部材311とインプラント本体21による第2の連結部材312に対する挟持作用が実現可能となる位置決め保持態様であれば、装着結合体がインプラント本体21に対して装着可能に位置決め保持された態様であっても構わない。
【0048】
図9(a)は、上記と同様の手術器具の連結部31と、別の実施形態のインプラント2′の連結端の間の連結状態を示す拡大部分断面図である。この実施形態では、先の実施形態とほぼ同様の手術器具の連結部31と、インプラント2′のインプラント本体21′との間に装着具22′が組み込まれた状態にある点、また、装着具22′がインプラント本体21′に装着された状態にある点、さらに、先の実施形態と同様の第1の連結部材311(インナーロッド313及びアウタースリーブ314)に対して装着具22′が接続されている点、第1の連結部材311と装着具22′を介して接続されたインプラント本体21′とにより、インプラント本体21′の被係合構造21b′と軸線周りに係合した係合端部312aを備える第2の連結部材312が挟持された状態で、連結部31とインプラント2′とが連結されている点、においてそれぞれ共通する。ここで、装着具本体22Aの工具係合部ともなる基端側内面22Aeは第1の連結部材311(アウタースリーブ314)の接続端部311a(位置決め端部314a)と軸線方向に嵌合し、同時に軸線周りに係合固定された状態となる点も先の実施形態と同様である。
【0049】
しかしながら、この実施形態では、装着具22′は、インプラント本体21′の雌ねじ21c′と螺合して装着される装着具本体22Aと、この装着具本体22Aに取り付けられる操作具22Bとを有する点で、先の実施形態とは異なる。ここで、装着具本体22Aには、インプラント本体21′の軸穴21a′の内面に当接して案内される外周面22Aaと、この外周面22Aaが形成される部分の内側に形成された軸孔の内面上の雌ねじ22Abと、この雌ねじ22Abよりも先端側の内面上に設けられた雌ねじ22Acと、この雌ねじ22Acが形成される部分の外周に設けられた雄ねじ22Adとを備える。ここで、雄ねじ22Adはインプラント2′の雌ねじ21c′と螺合可能に構成される。また、雌ねじ22Abは、第1の連結部材311(インナーロッド313)の接続端部311a(保持端部313a)に設けられた雄ねじと螺合可能に構成される。さらに、雌ねじ22Acは、上記操作具22Bの外周に設けられた雄ねじ22Bcに螺合可能に構成される。
【0050】
操作具22Bは、先の実施形態の上記装着具22とほぼ同様の構造である、軸穴22Ba、雌ねじ22Bb、雄ねじ22Bc、先端面22Bd、基端側内面22Beを備える。ただし、この操作具22Bは、先の実施形態とは異なり、上記連結部31に対して直接に接続可能に構成される必要はない。この操作具22Bは、装着具本体22Aに取り付け可能に構成されていればよい。このように、インプラント2′のインプラント本体21′が手術器具の連結部31に連結されている状態で、装着具22′がインプラント本体21′に装着されており、また、操作具22Bは装着具22′に取り付けられている。そして、この装着具22′がインプラント本体21′に装着された状態のままで、手術器具の連結部31をインプラント本体21′及び装着具22′から取り外すことができるように構成される。したがって、具体的な構造は異なるものの、この実施形態でも基本的な作用効果は先の実施形態と同様である。
【0051】
この実施形態では、手術器具を取り外した後に、装着具本体22Aの軸穴を通して、図示しない工具を操作具22Bの基端側内面22Beの工具係合部内に挿入することにより、操作具22Bを回転操作することができる。これにより、インプラント本体21′の内部で軸線方向に操作具22Bを移動させることができる。この操作具22Bは、インプラント本体21′の軸穴21a′の内部の周溝に係合した係止リング235′により保持された第1駒部材231′などの調整機構に当接し、その位置を制御する。これにより、当該調整機構による図示しない固定具の保持状態を調整可能に構成される。このとき、操作具22Bが調整機構を押圧するロック状態になると、操作具22Bが装着具本体22Aの側に押し返されることにより、装着具本体22Aと操作具22Bの螺合部分に軸力が働くと同時に、装着具本体22Aとインプラント本体21′との螺合部分にも軸力が働くので、両螺合部分の緩み止めを図ることができる。
【0052】
この実施形態では、装着具本体22Aに操作具22Bを取り付けずに、装着具本体22Aをそのまま単なるエンドキャップとして、連結状態にある手術器具の連結部31とインプラント本体21′との間に組み込んでもよい。また、上記と同様に装着具本体22Aに操作具22Bを取り付けないで、その代わりに、図9(c)に示す延長用エンドキャップ26′を装着具本体22Aの軸孔を通して挿入し、雄ねじ26c′が雌ねじ22Abと螺合させることによって装着することも可能である。このとき、延長用エンドキャップ26′には、装着具本体22Aの基端側内面22Aeの内部において回転が許容される態様で収容可能な基部突起26b′と、この基部突起26b′からさらに突出する先端突起26d′とを設けることが好ましい。ここで、上記基部突起26b′は、基端側内面22Aeの内部で回転可能に構成されつつ、基端側内面11Aeによって軸芯が案内され、雄ねじ26c′と雌ねじ22Abとの螺合を容易化できる形状とされることが望ましい。また、先端突起26d′は、装着具本体22Aの軸孔を通して第1駒部材231′を押し込み可能に構成されるなど、上記調整機構を制御可能に構成されることが望ましい。
【0053】
なお、本発明の骨固定システムは、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、接続端部311aと装着具22の接続態様を螺合とし、装着具22とインプラント本体21の装着態様も螺合としている。しかし、これらの態様はいずれも螺合に限らず、弾性部を用いたスナップ嵌合構造や、種々の駆動方式による拡径コレットなどの作動部を用いた嵌合作動機構などを用いることもできる。
【0054】
また、上記実施形態では、インプラント2と手術器具3の連結状態において、装着具22を外部より操作することができない構造となっているとともに、手術器具3を取り外してから装着具22を操作する手順となっている。しかし、上記連結状態においても、例えば、連結部31(図示例であればインナーロッド313の軸穴)の内部を通して工具や操作軸等を介して操作するなどの方法で、装着具22を操作可能に構成しても構わない。
【0055】
さらに、上記実施形態では、連結部31が装着具22に接続された状態でインプラント本体21に連結可能に構成されているが、連結部31とインプラント本体21とは装着具22をその間に組み込んだ状態で連結可能に構成されていればよい。したがって、インプラント2と手術器具3の連結状態において、装着具22が連結部31に対しては接続されない状態で、装着具22がインプラント2において装着されていたり、装着可能に位置決め保持されていたりしていてもよい。また、装着具22がインプラント2において本来の体制で装着されているとは言えなくても、装着可能な状態で位置決め保持されていればよい。例えば、連結状態において、装着具22をインプラント本体21に装着することはできないが、軸穴21aの開口近傍の縁部における雌ねじ21cの形成されていない内面領域内に嵌合して、軸線に沿った正規の姿勢に位置決め保持された態様、或いは、上記縁部に設けられたスナップ嵌合部内に保持されることにより、軸線に沿って正規の姿勢に位置決め保持された態様で組み込まれ、装着具22がインプラント2における上記態様のままで、手術器具3を取り外せるようになっていてもよい。上記の位置決め保持された態様であれば、手術器具3を取り外した後であっても、工具等を用いてそのまま装着具22を正規の姿勢で容易に装着することができるからである。
【0056】
また、連結部31とインプラント本体21とが連結された時点では、上記の位置決め保持された状態であるが、連結状態において行われる操作により、装着具22がインプラント本体21に装着されるように構成してもよい。この場合には、上記操作も事前に行うことができるので、手術中には、装着具22がインプラント本体21に装着された態様のまま、手術器具3をインプラント本体21から取り外すことができる。
【0057】
さらに、上記各実施形態のように、上記の装着具22、装着具22′の操作具22B、或いは、延長用エンドキャップ26′を、調整機構23等を介して固定具24等の保持状態を制御する操作具として用いるのではなく、直接に固定具24等の保持状態を制御する調整具(セットスクリューなど)として構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…骨固定システム、2…インプラント、21…インプラント本体(髄内釘本体)、21a…軸穴、21b…被係合構造、21c…雌ねじ、21d…横断孔、21e…凹溝、22…装着具(エンドキャップ或いは操作部材)、22a…軸穴、22b…雌ねじ、22c…雄ねじ、22d…先端面、22e…基端側内面、23…調整機構、231…第1駒部材、232…第2駒部材、233…第3駒部材、234…第4駒部材、235…係止リング、236…付勢手段(コイルばね)、24…固定具(骨ねじ)、26…延長用エンドキャップ(延長用装着具)、3…手術器具、31…連結部、31a…連結端、31b…基端、311…第1の連結部材(内側軸体)、311a…接続端部、311b…頭部、312…第2の連結部材(外側筒体)、312a…係合端部、312b…受け部、313…インナーロッド、313a…保持端部、313b…工具係合部(第1の回転係合部)、313c…操作面、313d…保持ねじ、313e…張出部、314…アウタースリーブ、314a…位置決め端部、314b…工具係合部(第2の回転係合部)、314c…操作面、314d…保持スリーブ、32…アーム部、32a…アーム端部、33…照準部、34…操作ハンドル、35…角度設定機構、35a…係止リング、35b…操作スリーブ、35c…付勢手段、36…端部ナット、4…回転操作工具、41…支持具、42…操作具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9