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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】静電容量式タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20231108BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G06F3/044 130
G06F3/041 495
G06F3/041 422
G06F3/041 640
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019172500
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2020077383
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】18196531.0
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】セレフ アウズカラ
(72)【発明者】
【氏名】フェヒム チャグラル
(72)【発明者】
【氏名】デニズ イイドアン
(72)【発明者】
【氏名】シェミー カザンツ
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/080984(WO,A1)
【文献】特開2006-234716(JP,A)
【文献】特開2011-086114(JP,A)
【文献】特開2016-095615(JP,A)
【文献】特表2008-510251(JP,A)
【文献】特表2017-524181(JP,A)
【文献】特開2018-139108(JP,A)
【文献】特開2013-004102(JP,A)
【文献】特表2012-529127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層(1)と、前記支持層(1)に結合された複数の感知細長要素(2)とを含む静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記複数の感知細長要素(2)は、複数の電気抵抗細長要素(2r)を含んでおり、
前記複数の電気抵抗細長要素(2r)は、検出装置(5)の第1の入力ポート(INx)に電気的に接続されるように構成された第1の共通ノード(Nx)に電気的に接続された、電気抵抗細長要素(2r)の第1のセット(2rx)を含んでおり、
前記検出装置(5)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の第1のセット(2rx)の静電容量値(CRx)の関数である第1の出力値(OUTx)を含む出力信号(S_OUT)を出力するように構成されていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記第1の出力値(OUTx)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の第1のセット(2rx)の前記静電容量(CRx)の直接的又は間接的な測定値であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記複数の電気抵抗細長要素(2r)は、感知領域(3)を規定し、
前記複数の感知細長要素(2)は、前記感知領域(3)内に少なくとも部分的に配置され、前記電気抵抗細長要素(2r)から電気的に絶縁された少なくとも1つの導電性細長要素(2c)を含み、
少なくとも1つの前記導電性細長要素(2c)は、当該1つの導電性細長要素(2c)の静電容量(Cc)を検知するために、検出装置(5)の基準入力ポート(INc)に電気的に接続さするように構成された基準共通ノード(Nc)に電気的に接続されていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
少なくとも1つの前記導電性細長要素(2c)は、前記感知領域(3)と重なる領域を画定するように配置されていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれかに記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記複数の感知細長要素(2)は、前記基準共通ノード(Nc)に電気的に接続された複数の前記導電性細長要素(2c)を含んでおり、
前記各導電性細長要素(2c)は、前記複数の感知細長要素(2)の対応する前記電気抵抗細長要素(2r)に関連付けられ、
逆に、前記各電気抵抗細長要素(2r)は、対応する前記導電性細長要素(2c)に関連付けられていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
少なくとも1つの前記導電性細長要素(2c)の単位長さ当たりの電気抵抗(Rc)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の単位長さ当たりの電気抵抗(Rr)よりも少なくとも2桁小さく、Rr/Rcが100~100000の範囲にあることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記出力信号(S_OUT)は、少なくとも1つの前記導電性細長要素(2c)の静電容量(Cc)の直接的又は間接的な測定値である基準出力値(OUTc)を含むことを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項8】
請求項3~6のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記第1の出力値(OUTx)は、電気抵抗細長要素(2r)の第1のセット(2rx)の静電容量(CRx)の直接的又は間接的な測定値と、少なくとも1つの前記導電性細長要素(2c)の静電容量(Cc)の直接的又は間接的な測定値との比率(CRx/Cc)であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記複数の電気抵抗細長要素(2r)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の第1のセット(2rx)から電気的に絶縁された、前記電気抵抗細長要素(2r)の第2のセット(2ry)を含んでおり、かつ、前記検出装置(5)の第2の入力ポート(INy)に電気的に接続されるように構成された第2の共通ノード(Ny)に電気的に接続されており、
前記電気抵抗細長要素(2r)の前記第1のセット(2rx)と前記第2のセット(2ry)が重なり合って前記電気抵抗細長要素(2r)のグリッドを形成しており、
前記出力信号(S_OUT)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の前記第2のセット(2ry)の容量値(CRy)の関数である第2の出力値(OUTy)を含むことを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項10】
請求項9に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記第2の出力値(OUTy)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の前記第2のセット(2ry)の前記静電容量(CRy)の直接的又は間接的な測定値であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項11】
請求項3に従属する請求項9に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記第2の出力値(OUTy)は、前記電気抵抗細長要素(2r)の前記第2のセット(2ry)の前記静電容量(CRy)の直接的又は間接的な測定値と、少なくとも1つの前記導電性細長要素(2c)の前記静電容量(Cc)の直接的又は間接的な測定値との比率(CRy/Cc)であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記電気抵抗細長要素(2r)の前記第1のセット(2rx)は、第1の方向(X)に沿って互いに平行に配置されることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項13】
請求項12に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記電気抵抗細長要素(2r)の前記第2のセット(2ry)は、前記第1の方向(X)に実質的に直交する第2の方向(Y)に沿って互いに平行に配置されていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記検出装置(5)は、前記出力信号(S_OUT)を外部装置(6)に送信するように構成された通信モジュール(4)に接続されていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記支持層(1)は織物であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記電気抵抗細長要素(2r)は電気抵抗糸であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記導電性細長要素(2c)は導電性糸であることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)であって、
前記支持層(1)は織布であり、前記複数の感知細長要素(2)は前記織布(1)の緯糸(7)及び/又は経糸(8)の少なくとも一部を形成していることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)を含んだ物品であって、前記物品は、必要に応じて前記検出装置(5)を含むことを特徴とする物品。
【請求項20】
支持層(1)上のタッチイベントを検出する方法であって、
(a)請求項1~18のいずれか1項に記載の静電容量式タッチセンサ(10)を提供するステップ、
(b)前記感知細長要素(2)の前記静電容量(CRx、CRy、Cc)を求めるステップ、及び
(c)ステップ(b)で求められた前記静電容量(CRx、CRy、Cc)の関数である1つ以上の出力値(OUTx、OUTy、OUTc)を含む出力信号(S_OUT)を出力するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
さらに、前記出力信号(S_OUT)を外部装置(6)に送信するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の方法であって、
前記支持層(1)は織物であり、前記感知細長要素(2)は感知糸であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量センシングの分野に関する。特に、本発明は、例えば織物などの支持層上のタッチイベントを検出するのに適した、静電容量式タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
織物に埋め込まれた静電容量式タッチセンサは、公知である。例えば、特許文献1には、互いに電気的に絶縁され、グリッドを形成するように配置された複数の導電性ワイヤを含む容量性タッチセンシングを実装した織物が開示されている。各導電性ワイヤは、各ワイヤの静電容量値を求めるように構成されたコントローラに接続されている。コントローラは、容量グリッドのそれぞれのワイヤの静電容量の変化を検出することにより、どの水平ワイヤとどの垂直ワイヤがタッチされたかを検出することにより、タッチイベントの位置を検出する。コントローラは、タッチされた交差ワイヤの交差点を使用して、静電容量グリッド上のタッチイベントの位置を決定する。これにより、タッチ位置は、静電容量グリッド上のX、Y座標として決定される。
導電性ワイヤを緯糸及び経糸として使用することで、容量性グリッドを織物内に埋め込むことができる。ただし、容量性グリッドの各導電性ワイヤ(垂直及び水平ワイヤ)は、検知回路の対応する入力ポートに電気的に接続する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US2016048235A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容量性グリッドに多数の導電性ワイヤがある場合(例えば、タッチセンサとして広い感知領域が必要な場合)、検知回路の入力ポートの数が多くなり、容量性グリッドと検知回路間の電気接続のルーティングが非常に複雑になる。
【0005】
また、一方向のみに沿って平行に配置された導電性ワイヤを有するタッチセンサの場合(例えば、スワイプセンサの場合)には、導電性ワイヤの数が多くなり、タッチセンサの設計及び製造段階で電気接続のルーティングが複雑で高価になる。
【0006】
本発明の1つの目的は、上記の先行技術の欠点を克服し、広い感知領域を有し電気接続のルーティングが簡単な、静電容量式タッチセンサを提供することにある。
本発明の他の目的は、静電容量式タッチセンサの感知領域のサイズに関係なく、タッチイベントの検出に必要な入力ポートの数を減らすことができる、タッチイベントを検出するための静電容量式タッチセンサ、及び関連する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これら及び他の目的は、独立請求項に記載の、容量性タッチセンサ、この容量性タッチセンサを含む物品、及び、タッチイベントを検出する方法に関する、発明により達成される。
本発明の好ましい態様は、各従属請求項に記載されている。
特に、本発明によれば、静電容量式タッチセンサは、支持層と、この支持層に結合された複数の感知細長要素とを備えている。
【0008】
用語「細長要素」は、糸に似た形状を有する要素(すなわち、糸状要素)を意味する。細長要素の1つの例は糸である。
一般に、細長要素では、3つの次元のうちの2つの次元の大きさが、第3の次元の大きさよりもはるかに小さく、一般に無視できる。例えば、1つの細長要素は、長さに対して無視できる幅と厚さを有する、帯状の形状である。
好ましくは、細長要素は、3つの次元のうちの第3の次元(理想的には線)に対して、無視できる、3つの次元のうちの2つの次元を有する。例えば、細長要素は、直線経路に沿って配置された、ワイヤ、糸、フィラメント、又はトレース材料である。
細長要素においては、3つの次元のうちの1つ、すなわちその長さは、他の2つの次元の長さの少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍である。
感知細長要素は、検出装置の第1の入力ポートに電気的に接続されるように構成された第1の共通ノードに電気的に接続される、電気抵抗細長要素の第1のセットを含んでいる。
【0009】
検出装置は、電気抵抗細長要素の第1のセットの静電容量値の関数である第1の出力値を含む、出力信号を出力するように構成されている。
例えば、支持層は、その表面上に感知細長要素が結合され又はその中に一体化された、可撓性層(例えば、フィルム又は不織布)である。
他の実施形態では、支持層が、複合層の2つの層の間に挟まれた感知細長要素を有する、複合層であっても良い。
好ましい実施形態によれば、支持層は、織物(例:不織布、又は織り、編み、かぎ針編み、結び、タッティング、フェルト、又は編組によって作られた織物)でも良い。
【0010】
本発明の一態様によれば、電気抵抗細長要素の単位長さ当たりの電気抵抗は、10kΩ/m~10MΩ/m、好ましくは50kΩ/m~500kΩ/mの範囲に含まれる。
【0011】
各電気抵抗細長要素は、物体がそれに触れると変化する静電容量値を有している(物体の寄生容量は、タッチされた電気抵抗細長要素に結合される)。
この電気抵抗細長要素の静電容量値の変化は、次の2つの主な様相の関数である。
電気抵抗細長要素とそれに接触する物体との間の、寄生容量結合、及び
読み取りポイント(電気抵抗細長要素が検出装置に電気的に接続されているポイント)に対する電気抵抗細長要素の長さに沿った、タッチイベントが発生した、場所。
【0012】
基本的に、各電気抵抗細長要素は、タッチイベントの位置(物体の寄生容量が電気抵抗細長要素に付与される位置)に応じた抵抗値を持つ抵抗器と、これに直列に接続されたコンデンサの集中モデルで表すことができる。
【0013】
この態様によれば、単一の共通ノードを使用して、タッチイベントを感知できる感知領域を定義するように配置された、複数の電気抵抗細長要素の静電容量を検出できる。
換言すれば、電気抵抗細長要素は、感知領域内でタッチイベントが発生したとき、(例えば、ユーザの物体又は指が感知領域に触れる等)、少なくとも電気抵抗細長要素が接触されるように配置されている。
特に、複数の電気抵抗細長要素を共通ノードに接続することにより、電気抵抗細長要素の静電容量値の合計に実質的に等しい又は比例する、等価静電容量が求められる。
電気抵抗細長要素の共通ノードで求められた静電容量値は、共通ノードの位置からのタッチイベントの位置を表示するものである。
【0014】
幾つかの実施形態では、検出装置が、電気抵抗細長要素の第1のセットの静電容量の直接的又は間接的な測定値である、第1の出力値を含む出力信号を出力できるように構成されている。この実施形態によれば、容量性タッチセンサを、例えば、検出装置の単一の入力ポートによって、感知領域のサイズに関係なく、共通ノードに対して電気抵抗細長要素に沿ったタッチイベントのスワイプ方向を検出するための、スワイプセンサとして使用することができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、複数の感知細長要素が、電気抵抗細長要素から電気的に絶縁され、電気抵抗細長要素によって画定される感知領域内に少なくとも部分的に配置される、1つ以上の導電性細長要素を備えていても良い。この導電性細長要素は、検出装置の基準入力に電気的に接続されるように構成された、基準共通ノードに電気的に接続される。
【0016】
本発明の一態様によれば、導電性細長要素の数及び配置は、電気抵抗細長要素によって画定される感知領域でタッチイベントが発生すると、少なくとも1つの導電性細長要素がタッチされるようにして、選択される。好ましくは、導電性細長要素は、電気抵抗細長要素によって画定された感知領域と重なる領域を画定するようにして配置される。より好ましくは、各導電性細長要素は、複数の感知細長要素の対応する電気抵抗細長要素に結合されており、逆もまた同様である。
【0017】
本発明の一態様によれば、各導電性細長要素の単位長さ当たりの電気抵抗は、200Ω/m未満、好ましくは50Ω/m未満、より好ましくは約10Ω/m以下である。好ましくは、電気抵抗細長要素と導電性細長要素の単位長さ当たりの電気抵抗値の比率は、100~1000000、より好ましくは1000~100000の範囲にある。例えば、単位長さ当たりの電気抵抗は、標準のAATCC試験方法84-2011又はAATCC試験方法84-2018に従って測定できる。
【0018】
幾つかの実施形態では、検出装置によって提供される出力信号が、導電性細長要素の静電容量の直接的又は間接的な測定値である基準出力値を含んでいても良い。
【0019】
本発明の一態様によれば、各導電性細長要素は、タッチイベントに応答した静電容量値の変化を生じ、この静電容量値の変化は、その長さに沿ってタッチイベントが発生した場所からは実質的に独立している。
【0020】
本発明の一態様によれば、物体が導電性細長要素に触れると、静電容量値の変化は、導電性細長要素とそれに触れる物体との間の容量結合のみに実質的に依存する。この態様により、導電性細長要素の静電容量値を電気抵抗細長要素の静電容量値と共に使用すると、導電性細長要素とそれらに接触する物体との間の容量結合から実質的に独立した、感知領域上のタッチイベントの位置の表示ができる。
【0021】
例えば、基準出力値を使用して、電気抵抗細長要素の第1のセットの静電容量の直接的又は間接的な測定値と、導電性細長要素の静電容量の直接的又は間接的な測定値の比率を計算できる。
【0022】
幾つかの実施形態では、検出装置によって提供される出力信号の第1の出力値は、電気抵抗細長要素の第1のセットの静電容量の直接的又は間接的な測定値と、導電性細長要素の直接的又は間接的な測定値との、比率でも良い。
その結果、静電容量式タッチセンサは、検出装置の2つの入力ポートのみを使用して、抵抗性細長要素とそれらに接触する物体との間の容量結合とは独立して、電気抵抗細長要素とそれらに触れる物体との間の、共通ノードに対する電気抵抗細長要素に沿ったタッチイベントの位置を検出できる。
【0023】
本発明の一態様によれば、複数の電気抵抗細長要素は、電気抵抗細長要素の第1のセットから電気的に絶縁され、検出装置の第2入力に電気接続されるように構成された第2の共通ノードに電気接続された電気抵抗細長要素の第2のセットを含んでいる。
特に、電気抵抗細長要素の第1のセットと第2のセットは重なり合って、電気抵抗細長要素のグリッドを形成する。この実施形態によれば、出力信号は、電気抵抗細長要素の第2のセットの容量値の関数である第2の出力値を含んでいる。
【0024】
幾つかの実施形態では、第2の出力値が電気抵抗細長要素の第2のセットの静電容量の直接的又は間接的な測定値であっても良い。
幾つかの実施形態では、感知細長要素が1つ以上の導電性細長要素を含み、そして、第2の出力値は、電気抵抗細長要素の第2のセットの静電容量の直接的又は間接的な測定値と、導電性細長要素の静電容量の直接的又は間接的な測定値との比率である。
【0025】
本発明の一態様によれば、電気抵抗細長要素の第1のセットは、第1の方向に沿って互いに平行に配置される。好ましくは、電気抵抗細長要素の第2のセットは、第1の方向に実質的に直交する第2の方向に沿って互いに平行に配置される。
本発明の幾つかの実施形態では、検出装置が、出力信号を外部装置に送信するように構成された通信モジュールに接続されても良い。
【0026】
本発明の一態様によれば、感知細長要素は感知糸である。
幾つかの実施形態では、電気抵抗細長要素が電気抵抗性糸である。
幾つかの実施形態では、導電性細長要素が導電性糸である。
好ましくは、支持層は織物であり、より好ましくは織布である。
【0027】
本発明の一態様によれば、支持層は織布であり、感知細長要素は、織布の緯糸及び/又は経糸の少なくとも一部を構成する。
【0028】
本発明のさらなる対象は、本発明による静電容量式タッチセンサを含む物品である。この物品は、例えば衣服であっても良い。好ましくは、この物品は、感知糸の静電容量値を検出するための検出装置を含んでいる。
【0029】
本発明のさらなる対象は、以下のステップを含む、支持層上のタッチイベントを検出する方法である。
(a)本発明の実施形態のいずれかによる容量性タッチセンサを提供する。
(b)感知細長要素の静電容量を求める。
(c)ステップ(b)で求められた静電容量の関数である1つ以上の出力値を含む出力信号を出力する。
本発明の一態様によれば、支持層は織物であり、感知細長要素は検出糸である。
幾つかの実施形態では、本発明による方法が、出力信号を外部装置に送信するステップを含んでいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による静電容量式タッチセンサの、一実施例を概略的に示す透視図である。
図2】本発明による静電容量式タッチセンサの、他の実施例を概略的に示す透視図である。
図3】本発明による静電容量性タッチセンサの、さらなる他の実施例を示す概略的に示す透視図である。
図4】本発明による静電容量性タッチセンサの、さらなる他の実施例を示す概略的に示す透視図である。
図5】本発明による静電容量性タッチセンサの、さらなる他の実施例を示す概略的に示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の非限定的な図面を例とし参照し、本発明をより詳細に説明する。一般的な慣行通り、図面のさまざまな特徴は必ずしも縮尺どおりではない。むしろ、さまざまな機能の寸法は、それらをより明確にするために任意に拡大又は縮小されている。明細書及び図面の全体を通して、同じ数字は同字の特徴を示している。
【0032】
図1図5は、各々、本発明による静電容量式タッチセンサ10の具体的な実施形態を示している。
静電容量式タッチセンサ10は、支持層1と、この支持層1に結合された複数の感知細長要素2とを備えている。
図1図5に示される本発明の例示的な実施形態によるタッチセンサ10に関する以下の説明は、分かり易くするために、感知糸2について行うが、糸の代わりに一般的な細長要素を有するタッチセンサに適用できることは言うまでもない。
【実施例1】
【0033】
図1において、感知糸2は、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxを含んでおり、この第1のセット2rxは、検出装置5の第1の入力ポートINxに電気的に接続された1個の第1の共通ノードNx(点線の長方形として示す)に接続されるように構成されている。この共通ノードは、理想的には抵抗がゼロの接続で構成することができる(例えば、この共通ノードを、導電性糸によって形成することができる)。
【0034】
検出装置5は、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxの関数である第1の出力値OUTxを含む出力信号S_OUTを出力するように構成されている。
好ましくは、電気抵抗糸2rは、単位長さRr当たり、10kΩ/m~10MΩ/m、より好ましくは50kΩ/m~500kΩ/m、例えば、約200kΩ/mの電気抵抗を有する。言い換えると、電気抵抗糸2rの断面及び電気抵抗率は、1m当たり、10kΩ~10MΩの間、より好ましくは50kΩ~500kΩの間、例えば約200kΩの電気抵抗を有する電気抵抗糸2rとなるように、選定される。例えば、電気抵抗糸2rは、10-6Ωm~10Ωm、より好ましくは10-4Ωm~10-1mの電気抵抗率を有する。
【0035】
電気抵抗糸2rは、好ましくは、導電性要素(例えば、導電性カーボン)で満たされたプラスチック糸(例えば、ナイロン)である。より好ましくは、電気抵抗糸2rは、その表面に導電性炭素が充満された80デニールのナイロン6,6を含むことができる。
例えば、適切な電気抵抗糸2rは、商品名RESISTAT(登録商標)F901,MERGER080として入手可能な、表面に導電性炭素が充満された80デニールのナイロン6,6モノフィラメントの電気抵抗糸でも良い。この特定の抵抗糸は、コーティング厚さが約1μmの円形断面で、約84デニールの線形質量密度を有している。この抵抗糸の電気抵抗は、1センチメートル当たり約0.8×10Ω(つまり、約80kΩ/m)である。
【0036】
図1に示す実施例において、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxは互いに平行に配置された例を示しているが、他の実施形態として、電気抵抗糸の異なる配置も本発明の保護範囲内にある。例えば、幾つかの実施形態では、第1のセット2rxの電気抵抗糸2rが、中心点に対して放射状に配置されても良い。
これらの実施形態は、各電気抵抗糸の中心点に面する端部が、1個の第1の共通ノードNxに電気的に接続されるか、又は各電気抵抗糸の中心点の反対端が第1の共通ノードNxに電気接続されることによって提供できる。
【0037】
図1において、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxは、第1の方向Xに沿って互いに平行に配置されることが好ましい。この実施例では、容量性タッチセンサ10として、一次元スワイプセンサ(すなわち、第1の方向Xに沿ったタッチイベントのスワイプ方向を検出できる容量性タッチセンサ)が実装されている。
【0038】
この実施例によれば、出力信号の第1の出力値OUTxは、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxの直接的又は間接的な測定値である。
静電容量値CRxは、例えば、充電時間、又は発振器の発振周波数を測定することにより、又は当該技術分野で既知の他の測定技術によりのその値を求めることができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、検出装置5がフロントエンド回路5aを備え、第1の入力ポートINxがフロントエンド回路5aの入力となっている。例えば、フロントエンド回路5aは、少なくとも1つの発振器(例えばコルピッツ発振器)を備えていても良い。
電気抵抗糸2rxの第1の共通ノードNxは、タッチイベントがない場合に所定の発振周波数を有する機能を有する発振器に接続される。
【0040】
電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxの変化は、発振器の発振周波数の変化として検出される。すなわち、発振器の発振周波数を求めることにより、電気抵抗糸2rxの静電容量値CRxを求めることができる。
検出装置5は、フロントエンド回路5aに接続され、発振器の発振周波数に基づいて電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxを計算するように構成された、マイクロコントローラ5bを備えているのが望ましい。
【0041】
幾つかの実施形態では、検出装置5がフロントエンド回路5aと、このフロントエンド回路5aのフォワード端子にフォワード信号(例えば、ブール信号)を送信するマイクロコントローラ5bとを備えていても良い。
フロントエンド回路5aは、フォワード信号に対して遅延のあるリターン信号を提供するリターン端末を含んでいる。フォワード信号とリターン信号の間の遅延は、電気抵抗糸2rxの充電時間の関数であり、これは電気抵抗糸の静電容量値CRxの関数でもある。
【0042】
上記したように、電気抵抗糸2rxの静電容量値CRxの変化は、1つ又は複数の電気抵抗糸2rxで発生したタッチイベントを示している。タッチイベントのタッチ領域のサイズが実質的に一定である(すなわち、タッチされた電気抵抗糸2rxの数はタッチイベント中一定のままである)と仮定すると、第1の出力値OUTxは、第1の方向に沿ったタッチイベントのスワイプ方向Xを示す。
【0043】
特に、検出装置5は、所定の周期で更新された、電気抵抗糸2rxの静電容量値CRxの測定値である第1の出力値OUTxを含む、出力信号S_OUTを提供するように構成されることが好ましい。この更新の周期は、出力値OUTxを更新するために容量値CRxが再検知される、例えば数ミリ秒の周期である。
【0044】
第1の出力値OUTxが所定の閾値を超えると、タッチイベントが発生したことを意味する。特に、この第1の出力値が閾値よりも大きい限り、第1の出力値OUTxの経時的な増加は、共通ノードNxに向かうスワイプ方向でタッチイベントが発生したことを意味する。
同様に、第1の出力値OUTxの減少は、タッチイベントのスワイプ方向が反対方向に向かって、すなわち共通ノードNxから離れる方向に発生したことを意味する。
【0045】
本発明による静電容量式タッチセンサ10によれば、一次元スワイプセンサを実施するのに、単一の入力ポートINxのみが必要である。
検出装置5の入力ポートの数を増やすことなく、電気抵抗糸2rxによって画定される感知領域3を増加させる(電気抵抗糸の数及び/又は長さを増加させる)ことができる。
【実施例2】
【0046】
図2は、本発明による静電容量式タッチセンサ10の、他の実施例を示す。図2に示した静電容量式タッチセンサ10は、図1に示した実施例と同じ、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxを含んでいる。電気抵抗糸2rによって画定される感知領域3は、点線の長方形として象徴的に示されている。図2において、感知糸2は、さらに、感知領域3内に少なくとも部分的に配置され、電気抵抗糸2rから電気的に絶縁された複数の導電性糸2cを含んでいる。
【0047】
導電性糸2cは、この導電性糸2cの静電容量値Ccを検出するために検出装置5の基準入力ポートINcに電気的に接続された、1個の基準共通ノードNcに、電気的に接続されている。検出装置5は、好ましくは、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxを求めるために、上述したのと同じ技術により、導電性糸2cの静電容量値Ccを求めるように構成されている。
【0048】
図2の実施例では、複数の導電性糸2cを有する静電容量式タッチセンサ10を示しているが、さらなる実施形態では、感知糸2が感知領域3内に少なくとも部分的に配置され基準共通ノードNcに電気的に接続された1本の導電性糸2cのみを含んでいても良い。好ましくは、導電性糸2cは、電気抵抗性糸2rによって画定された感知領域3と重なる領域を画定するように配置される。例えば、単一の導電性糸2cを蛇状の経路に沿って配置し、この導電性糸によって画定される領域が、上記感知領域3と重なるようにすることができる。
【0049】
一般に、感知糸2は、少なくとも1本の導電性糸2cを含むのが好ましい。特に、幾つかの実施形態では、導電性糸2cの数が、電気抵抗性糸2rの数とは異なっていても良い。
本発明の一態様によれば、導電性糸2cの数及び配置は、電気抵抗性糸2rによって画定された感知領域3でタッチイベントが発生すると、少なくとも1本の導電性糸2cがタッチされるように選択される。
【0050】
図2では、各導電性糸2cが、対応する電気抵抗糸2rに関連付けられ、逆もまた同様である。言い換えれば、図2に示される実施例では、導電性糸2cの数が電気抵抗性糸2rの数に等しく、各電気抵抗性糸2rに対して1つの導電性糸2cが関連付けられている。
【0051】
各導電性糸2cは、例えば、導電性糸2cの表面に設けられた電気絶縁コーティングによって、電気抵抗糸2rから電気的に絶縁されている。
導電性糸2cは、好ましくは絶縁された金属線、例えばマグネットワイヤである。「エナメル線」とも呼ばれるマグネットワイヤは、非常に薄い絶縁層でコーティングされた金属ワイヤ(銅製やアルミニウム製など)である。マグネットワイヤは市販されており、通常、トランス、インダクタ、モーター、スピーカー、ハードディスクヘッドのアクチュエータ、電磁石、及び、その他の絶縁ワイヤのタイトコイルを必要とするアプリケーションの構築に使用される。
【0052】
導電性糸2cは、単位長さ当たりの電気抵抗Rcが、好ましくは200Ω/m未満、より好ましくは50Ω/m未満、例えば約10Ω/mである。言い換えれば、1メートルの導電性糸2cが、200Ω未満、より好ましくは50Ω未満、例えば約10Ωの電気抵抗を有するように、導電性糸2cの断面及び電気抵抗率が選択される。
例えば、導電性糸2cは、10-6Ωm未満、より好ましくは10-7Ωm未満の電気抵抗率を有する材料で作られるのが良い(例えば、銀、銅、金、アルミニウム、白金、鉄は、導電性糸2cに適した材料である)。
【0053】
本発明の一態様によれば、導電性糸2cの単位長さ当たりの電気抵抗は、電気抵抗性糸2rの単位長さ当たりの電気抵抗よりも少なくとも2桁小さい。好ましくは、電気抵抗糸2rと導電性糸2cの単位長さ当たりの電気抵抗値の比率Rr/Rcは、100~1000000、より好ましくは1000~100000の範囲にある。
【0054】
図2に関して、幾つかの実施形態では、出力信号S_OUTが、導電性糸2cの静電容量値Ccの直接的又は間接的な測定値である基準出力値OUTcを含んでいても良い。言い換えると、これらの実施形態では、出力信号S_OUTが、2つの出力値(第1の出力値OUTx及び基準出力値OUTc)、すなわち、電気抵抗糸2rxの静電容量値CRx及び導電性糸2cの静電容量値Ccを含んでいても良い。好ましくは、出力値OUTx及びOUTcを更新するために、容量値CRx及びCcは、リフレッシュ周期(例えば、数ミリ秒)の所定のリズムで検知され更新された値である。
【0055】
基準出力値OUTcを使用して、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxの直接的又は間接的な測定値と、導電性糸2cの静電容量値Ccの直接的又は間接的な測定値との比率である、CRx/Ccを計算できる。
幾つかの実施形態では、検出装置5が、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値の直接的又は間接的な測定値と、導電性糸2cの静電容量値Ccの直接的又は間接的な測定値との比率CRx/Ccを、(例えば、マイクロコントローラ5bによって)計算するように構成しても良い。これらの実施形態では、第1の出力値OUTxは、比率CRx/Ccであることが好ましい場合がある。より好ましくは、検出装置5は、第1の出力値OUTxのみを含む出力信号S_OUTを提供するように構成しても良い。
【0056】
これらの実施形態では、検出装置5は、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxの測定値と、導電性糸2cの静電容量値Ccの測定値との比率である、CRx/Cc、すなわち第1の出力値OUTxを含む、出力信号S_OUTを提供するように構成されることが好ましい。好ましくは、出力値OUTxを更新するために、リフレッシュ周期(例えば、数ミリ秒)を有する所定のリズムで容量値CRx及びCcが検知、更新され、比率CRx/Ccが再計算される。
【0057】
その結果、容量性タッチセンサ10は、第1の共通ノードNxに対して、(スワイプ方向に加えて)、第1の方向Xに沿ったタッチイベントの位置を検出するのに使用できる。
上記したように、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRxの変化は、次の2つの主な様相の関数である:
電気抵抗糸2rxとそれに接触する物体との間の、寄生容量結合、及び
共通ノードNxに対する電気抵抗糸の長さに沿った、タッチイベントが発生した、場所。
さらに、静電容量値Ccの変化は、実質的に導電性糸とそれらに接触する物体との間の容量結合のみに依存する。つまり、Ccの値の変化は、タッチイベントが発生した場所までの導電性糸2cの長さに実質的に依存しない。
【0058】
その結果、物体が感知領域3に触れると、静電容量値及びCcの値の変化が生じる。比率CRx/Ccの値は、第1の方向Xに沿ったタッチイベントの位置を示すものであり、電気抵抗糸2rxとそれらに接触する物体との間の容量結合に関しては依存性を無視できる。
言い換えれば、比率CRx/Ccの値は、電気抵抗糸とそれらに接触する物体との間の容量結合気がどれだけ強いかに関係なく、共通ノードNxから第1の方向Xに沿ったタッチイベントが生じた位置を示している。
【0059】
したがって、感知領域3上でタッチイベントが発生すると、比率CRx/Ccは、所定の閾値を越え、下限値と上限値との間に含まれる規定範囲内の値になる。
このような下限値と上限値は、第1の方向Xに平行に配置された1次元空間内の2つの点と見なすことができる。例えば、低い値は1次元空間の原点と見なすことができる。
【0060】
もし、比率CRx/Ccが上限値をとる場合、共通ノードNxに電気的に接続された電気抵抗糸2rxの終端部で、タッチイベントが発生したことを意味する。
同様に、比率CRx/Ccの値が小さい場合は、電気抵抗糸2rxの反対側の端でタッチイベントが発生したことを示している。
比率CRx/Ccの値は、どの電気抵抗糸2rxがタッチされたかについての情報を与えることなく、第1のX方向に沿って感知領域3で発生したタッチイベントのスワイプ方向を取得するのに使用できる。言い換えれば、第1の方向Xに直交する第2の方向Yに沿ってタッチイベントがスワイプしても、比率CRx/Ccの値は変化しない。
幾つかの実施形態では、比率CRx/Ccの下限値と上限値との間に含まれる複数のサブ範囲を定義することにより、感知領域3内の異なる複数の領域を、タッチイベントのスワイプ方向の検出に使用することができる。
【実施例3】
【0061】
図3は、本発明による容量性タッチセンサ10のさらなる実施例を示すしている。図3に示す静電容量式タッチセンサ10は、図1に示す実施例の電気抵抗糸2rと同じ第1のセット2rx、及び、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxから電気的に絶縁された電気抵抗糸2rの第2のセット2ryを含んでいる。第2のセット2ryの電気抵抗糸は、検出装置5の第2の入力ポートINyに電気的に接続されるように構成された、1個の第2の共通ノードNyに電気的に接続されている。
【0062】
電気抵抗糸2rの第1のセット2rxと第2のセット2ryは重なり合って、電気抵抗糸2rのグリッドを形成している。第2のセット2ryの電気抵抗糸は、好ましくは、第1の方向Xに実質的に直交する第2の方向Yに沿って互いに平行に配置されている。
検出装置5は、それぞれ、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRx及び第2のセット2ryの静電容量値CRyの関数である、第1の出力値OUTxと第2の出力値OUTyを含む、出力信号S_OUTを提供するように構成されている。
検出装置5は、好ましくは、上記したのと同じ技術により、電気抵抗糸の第1のセット2rxの静電容量値CRx及び第2のセット2ryの静電容量値CRyを求めるように構成されている。特に、出力値OUTx及びOUTyは、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値及び第2のセット2ryの静電容量CRyの直接的又は間接的な測定値である。
【0063】
この実施例では、静電容量式タッチセンサ10が、二次元スワイプセンサ(すなわち、直交平面X-Y上のタッチイベントのスワイプ方向を検出できる静電容量式タッチセンサ)を実装している。つまり、出力値OUTx及びOUTyは、タッチイベントのスワイプ方向を示すデ、カルト平面上のベクトルの成分と見なすことができる。
この実施例によれば、容量性タッチセンサ10は、広い感知領域及び/又は多数の感知糸を有する場合でも、タッチイベントのスワイプ方向の検出のために、2つの入力ポートINx、INyのみを必要とする。
【実施例4】
【0064】
図4に、本発明による容量性タッチセンサ10のさらなる実施例を示す。図4に示した静電容量式タッチセンサ10は、図3に示した実施例と同じ、電気抵抗糸2rの第1のセット2rx及び第2のセット2ryを含んでいる。電気抵抗糸2rによって画定される感知領域3は、点線の長方形として象徴的に示している。
図4において、感知糸2は、さらに、感知領域3内に少なくとも部分的に配置され、電気抵抗糸2rから電気的に絶縁された、複数の導電性糸2cを含んでいる。
【0065】
好ましくは、各導電性糸2cは、各々、対応する電気抵抗糸2rに関連付けられており、逆もまた同様である。言い換えれば、図4に示す実施例では、導電性糸2cの数が電気抵抗性糸2rの数に等しく、各電気抵抗性糸2rに対して導電性糸2cが関連付けられている。
しかし、上記したように、さらなる実施形態として、導電性糸2cが、図4に示す実施例とは異なる数及び/又は異なる配置を有する場合も、本発明の保護範囲内にある。
【0066】
本発明の一態様によれば、導電性糸2cの数及び配置は、電気抵抗性糸2rによって画定される感知領域3内でタッチイベントが発生すると、少なくとも1本の導電性糸2cがタッチされるように選定される。言い換えれば、使用目的の対象物(例えば、ユーザの指、タッチペンの先端)によってタッチされる感知領域部分の平均サイズを知っている当業者は、対象物が感知領域3に触れると、少なくとも1本の電気抵抗糸と少なくとも1本の導電性糸(存在する場合)がタッチされるように、電気抵抗糸及び/又は導電性糸の数と配置を選択することができる。
【0067】
好ましくは、図4に示す実施例において、感知領域3でタッチイベントが発生すると、第1のセット2rxの少なくとも1本の電気抵抗糸2r、第2のセット2ryの少なくとも1本の電気抵抗糸2r、及び、少なくとも1本の導電性糸2cがタッチされるように、感知糸2が配置されている。
【0068】
図4において、導電性糸2cは、この導電性糸2cの静電容量値Ccを検出するための検出装置5の基準入力ポートINcに電気的に接続されるように構成された、1個の基準共通ノードNcに電気的に接続されている。
電気抵抗糸2rxは、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの容量値CRxを求めるために検出装置5の第1の入力ポートINxに電気的に接続されるように構成された、第1の共通ノードNxに電気的に接続されている。電気抵抗糸2ryは、電気抵抗糸2rの第2のセット2ryの容量値CRyを検出するために検出装置5の第2の入力ポートINyに電気的に接続されるように構成された、第2の共通ノードNyに電気的に接続されている。
検出装置5は、好ましくは、上記したのと同じ手法により、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値CRx及び第2のセット2ryの静電容量値CRy、及び導電性糸2cの静電容量値Ccを検出するように構成されている。
【0069】
幾つかの実施形態では、出力信号S_OUTが、次の3つの出力値を含んでいる:
電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値の直接的又は間接的な測定値である、第1の出力値OUTx、
電気抵抗糸2rの第2のセット2ryの静電容量CRyの直接的又は間接的な測定値である、第2の出力値OUTy、及び、
導電性糸2cの静電容量Ccの直接的又は間接的な測定値である、基準出力値OUTc。
【0070】
幾つかの実施形態では、検出装置5が比率の値CRx/Cc及びCRy/Ccを(例えばマイクロコントローラ5bによって)計算するように構成しても良い。
特に、CRx/Ccは、電気抵抗糸2rの第1のセット2rxの静電容量値の直接的又は間接的な測定値と、導電性糸2cの静電容量Ccの直接的又は間接的な測定値との比率である。CRy/Ccは、電気抵抗糸2rの第2のセット2ryの静電容量CRyの直接的又は間接的な測定値と、導電性糸2cの静電容量Ccの直接的又は間接的な測定値との比率である。
【0071】
これらの実施形態では、第1の出力値OUTx及び第2の出力値OUTyは、それぞれ比率CRx/Cc及び比率CRy/Ccであることが好ましい。より好ましくは、検出装置5は、第1の出力値OUTx及び第2の出力値OUTyのみを含む出力信号S_OUTを提供するように構成しても良い。
上記したように、比率CRx/Ccの値は、電気抵抗糸2rxとそれらに接触する物体との間の容量結合の値は無視できる、第1の方向Xに沿ったタッチイベントの位置を示している。同様に、比率CRy/Ccは、電気抵抗糸2ryとそれらに接触する物体との間の容量結合の値は無視できる、第2の方向Yに沿ったタッチイベントの位置を示している。
【0072】
言い換えれば、比率CRx/Cc及びCRy/Ccの値は、電気抵抗糸2rx、2ryとそれらに接触する物体との間の容量結合がどの程度強いかに関係なく、共通ノードNx及びNyの位置に対する第1の方向X及び第2の方向Yに沿ったタッチイベントの位置を示している。比率CRx/Cc及びCRy/Ccの値は、第1の方向Xに平行な横座標及び第2の方向Yに平行な縦座標を有する、デカルト平面X-Yの座標と考えることができる。
したがって、感知領域3でタッチイベントが発生すると、比率の値CRx/Cc及びCRy/Ccは、対応する閾値を超えて、感知領域3上におけるタッチイベントの位置を示す2つの値をとる。特に、CRx/Ccは、第1の低い値と第1の高い値の間に含まれる範囲内の値を想定している。CRy/Ccは、第2の低い値と第2の高い値の間に含まれる範囲内の値を想定している。例えば、第1の低い値と2番目の低い値は、デカルト平面X-Yの原点と見なすことができる。
【0073】
この実施形態によれば、容量性タッチセンサ10は、広い感知領域3及び/又は多数の感知糸2が存在する場合にも、感知領域3のタッチイベントの位置を検出するために、3つの入力ポートINx、INy及びINcのみを必要とする。
感知糸2(又は一般に、感知細長要素2)は、当技術分野でそれ自体知られている様々な結合技術によって、支持層1に結合することができる。
【0074】
例えば、幾つかの実施形態では、感知細長要素2が電気抵抗材料のトレース(電気抵抗細長要素2rとして)を備え、及び/又は実質的に直線経路に沿って配置された導電材料のトレース(導電性細長要素2cとして)を備えている。
そのようなトレースは、例えば、(好ましくは活性炭、高表面積炭素、グラフェン、グラファイト、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、活性炭繊維、グラファイト繊維、グラファイトナノファイバー、カーボンブラック及び混合物からなる群から選択される炭素質材料などの)導電性材料を含む、(微生物セルロース、微生物コラーゲン、セルロース/キチン共重合体、微生物絹、又はそれらの混合物などの)生体高分子を含むようにして生成されても良い。
1つの好ましい実施形態によれば、生体高分子は微生物セルロースである。例えば、導電性材料は、印刷(例えば、スクリーン印刷及び/又はデジタル印刷)によって、又は局所的な含浸によって、バイオポリマー(例えば、バイオポリマー層又はトレース)に提供されても良い。
【0075】
1つの実施形態によれば、バイオポリマー産生微生物を含む培養物は、導電性材料を含んでいる。例えば、支持層を、生体高分子産生微生物及び導電性材料を含む培養物と接触させても良い。微生物を培養して、導電性材料を含むバイオポリマーを生成することができ、その結果、支持層には、導電性材料を含むバイオポリマー製の電気抵抗性材料のトレースが提供される。
【0076】
生体高分子によって電気抵抗材料のパターン又はトレースを生成するための適切なプロセスは、本願の出願人の名義に係る欧州特許出願EP18197348.8号、発明の名称:「電気伝導性を備えた繊維を提供するプロセス」に記載されている。その内容は、その全体が記載されているとおりに参照して本明細書に組み込まれる。
本発明の一態様によれば、支持体1層は織物であっても良い。感知糸2は、縫製、編み、製織、又は当技術分野で知られている他の任意の結合技術によって、織物1に結合されても良い。
【実施例5】
【0077】
図5は、本発明による静電容量式タッチセンサ10の好ましい実施例を示す。図5に示した実施例では、図4に示した実施例と同じ感知糸2、又は一般的に同じ感知細長要素2を有し、その支持層1は織布であり、これらの感知糸2は、織布1の緯糸7及び経糸8の少なくとも一部を構成している。
【0078】
さらなる実施形態では、例えば図1及び図2に示されるような一次元スワイプセンサを実装する静電容量式タッチセンサ10の場合、感知糸2が織布1の緯糸又は経糸の少なくとも一部を構成しても良く、これも、本発明の保護範囲内にある。一般に、感知糸2は、織布1の緯糸及び/又は経糸の少なくとも一部を構成することが好ましい。
【0079】
好ましくは、感知糸2は、複合糸の検知コアとして、例えば非導電性糸によって形成されたシースを使用することができ、この非導電性糸は、例えば、長さRnの単位当たりの電気抵抗が100MΩ/mよりも大きく、より好ましくは1GΩ/mよりも大きいものである。
本発明の一態様によれば、複合糸のシースは、非導電性材料製のステープルファイバーを含んでおり、この非導電性材料は、好ましくは10Ωmよりも大きい、より好ましくは10Ωmよりも大きい、電気抵抗率を有する。
感知糸2は、好ましくは、上記シースのステープルファイバーを有するコアスパンでも良い。幾つかの実施形態では、感知糸2が、その周りを上記シースのステープルファイバーで刺繍されるか、又は当該技術分野で既知の他の被覆プロセスによって覆われていても良い。このステープルファイバーは、好ましくは、綿、羊毛、絹などの天然繊維である。幾つかの実施形態では、複合糸のシースに、例えばインジゴ染料による染色を施しても良い。
【0080】
幾つかの実施形態は、各導電性糸2cが対応する電気抵抗糸2rに結合されて複合糸を形成しても良く、逆もまた同様である。適切な複合糸として、本願の出願人の名義に係る欧州特許出願EP18172676.1号、発明の名称:「電気伝導性を備えた繊維を提供するプロセス」に記載されているものが好ましい(特に、9~15頁)。その内容は、その全体が記載されているとおりに参照して本明細書に組み込まれる。
【0081】
図5において、検出装置5は、出力信号S_OUTを外部装置6に送信するように構成された通信モジュール4に接続されるのが好ましい。
本発明の静電容量式タッチセンサ10は、外部装置6を制御するために、又は外部装置6へ制御コマンドを送信するために使用しても良い。好ましくは、通信モジュール4は、無線通信モジュール(例えば、ブルートゥース(登録商標)モジュール、WiFiモジュール、赤外線モジュールなど)である。
静電容量式タッチセンサ10は、ユーザが簡単かつ信頼できる方法で外部装置6を制御できるような感知領域を提供するために、物品の織物1に結合されても良い。
【0082】
幾つかの実施例では、タッチセンサ10は、衣服の着用者が外部装置6(スマートフォン、音楽プレーヤーなど)を容易に制御できるようにするために、衣服、好ましくはシャツ、ジャケット又はズボンの、織物1の感知領域(例えば、シャツの袖口、ジャケットの袖、又はズボンの脚など)に結合されても良い。
幾つかの実施形態では、タッチセンサ10は、着座したユーザが外部装置(スマートテレビ、ステレオなど)6を容易に制御できるようにするために、座席家具(望ましくはソファ又はアームチェア)を裏打ちする織物1の感知領域(例:座席の家具の腕)に結合されても良い。
【0083】
要約すると、支持層1のタッチイベントを検出する方法は、次の手順を含んでいる。
(a)上述の実施形態のいずれかによる静電容量式タッチセンサ10を提供する。
(b)感知細長要素2の静電容量値CRx、CRy、Ccの1つ以上を求める。
(c)上記ステップ(b)で求められた静電容量値CRx、CRy、Ccの関数である1つ以上の出力値OUTx、OUTy、OUTcを含む出力信号S_OUTを出力する。
好ましくは、この方法は、出力信号S_OUTを、外部装置6に送信するステップも含んでいる。
【符号の説明】
【0084】
1 支持層
2 感知糸(感知細長要素)
2c 導電性糸(導電性細長要素)
2r 電気抵抗糸(電気抵抗細長要素)
2rx 電気抵抗糸の第1のセット
2ry 電気抵抗糸の第2のセット
3 感知領域
4 通信モジュール
5 検出装置
5a フロントエンド回路
5b マイクロコントローラ
6 外部装置
7 織布の緯糸
8 織布の経糸
10 静電容量式タッチセンサ
Nc 基準共通ノード
Nx 第1の共通ノード
Ny 第2の共通ノード
INc 基準入力ポート
INx 第1の入力ポート
INy 第2の入力ポート
S_OUT 出力信号
図1
図2
図3
図4
図5