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特許7381065姿勢検知を有した撮像システム及び撮影光学系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】姿勢検知を有した撮像システム及び撮影光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/34 20210101AFI20231108BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20231108BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20231108BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20231108BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20231108BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20231108BHJP
【FI】
G02B7/34
G02B7/36
G03B13/36
G03B17/14
G03B7/091
H04N23/67
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019204704
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076765
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 岳志
(72)【発明者】
【氏名】長江 理人
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184971(JP,A)
【文献】特開2011-027774(JP,A)
【文献】特開2017-122791(JP,A)
【文献】特開2003-222781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G03B 13/36
G03B 17/14
G03B 7/091
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系と撮像装置とを含む撮像システムにおいて、
前記撮像装置は、
前記撮影光学系を通過した光を信号に変換し出力する撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号に基づいて、前記撮影光学系を合焦状態に制御するための合焦評価値を検出する焦点検出部と、
前記合焦評価値を補正する補正部と
を有し、
前記撮影光学系の姿勢情報を検出する姿勢検知部と、
前記合焦評価値を補正する補正値を演算する補正値演算部と、
前記補正値演算部は、前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて前記補正値を演算し、
前記姿勢情報をもとに、前記補正式を補正する補正式補正部と、
を前記撮影光学系と前記撮像装置のいずれかに有し、
前記補正部は、前記補正式補正部に補正された補正式を用いて前記補正値演算部の演算結果である前記補正値をもとに前記合焦評価値を補正することを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
撮像装置と結合する撮影光学系において、
前記撮影光学系の姿勢情報を検知する姿勢検知部と、
前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて補正値を演算する補正値演算部と、
前記姿勢情報をもとに前記補正式を補正する補正式補正部と、
を有し、
前記補正値演算部は、前記補正式補正部に補正された補正式を用いて演算し、演算結果である補正値を前記撮像装置へ送信することを特徴とする撮影光学系。
【請求項3】
撮像装置と結合する撮影光学系において、
前記撮影光学系の姿勢情報を検知する姿勢検知部と、
前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて補正値を演算する補正値演算部と、
前記姿勢情報と合焦評価値の変動量の関係を記憶する記憶部と、
前記姿勢情報を取得し、前記姿勢情報に対応する変動量を前記記憶部より取得する変動量取得部と、
前記姿勢情報をもとに前記補正式を補正する補正式補正部と、
を有し、
前記補正値演算部は、前記補正式補正部に補正された補正式を用いて演算し、演算結果である補正値と前記変動量取得部の取得した変動量を前記撮像装置へ送信することを特徴とする撮影光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢検知を有した撮像システム及び用いた撮影光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置の撮像素子を焦点検出用センサとして用いる焦点調節方法として、コントラストAFと像面位相差AFとが一般的である。これらのコントラストAFと像面位相差AF(以下、位相差AF)は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラで多く用いられているAF方式である。
【0003】
これらのAF方式では、光学系の諸収差により、焦点検出結果に誤差が生じる場合がある。そのためこの誤差を低減するための方法が、提案されている。
【0004】
引用文献1では、像面倒れ量を取得し、焦点検出補正値を算出して合焦ズレ量を補正することが可能となるレンズ鏡筒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-21971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載のレンズ鏡筒は、製造段階で点像分布データテーブルが書き込まれてある。初回の電源投入時に撮像装置との通信にてレンズ鏡筒より、撮像装置のメモリに点像分布データテーブルを送る。撮像装置は、予め点像分布データテーブル生成装置のメモリに撮影光学系(各種交換レンズ)の光学設計情報と焦点検出光学系(マイクロレンズなど)の光学設計情報などが格納されている。点像分布データテーブル生成装置は、レンズ種別識別情報に対応した交換レンズの光学設計情報と焦点検出光学系の光学設計情報に基づき、絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の組み合わせに応じた点像分布データを算出する。最終的には、撮像装置の点像分布データテーブル生成装置で生成された点像分布データテーブルは、レンズ鏡筒に送られ内部メモリに格納される。
【0007】
レンズ鏡筒は、撮影時に設定された絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置の情報に基づき、撮影光学系の状態に応じた点像分布データを点像分布データテーブルより選択し、撮像装置へ送る。点像分布データを受け取った撮像装置は、オフセット量を算出した後、像ズレ量を補正することが開示されている。
【0008】
しかし、引用文献1に記載のレンズ鏡筒は、撮影時の絞りF値、フォーカスレンズ位置、ズームレンズ位置のデータをもとに製造段階で書き込まれた点像分布でデータテーブルをもとに補正値を算出するため、製造誤差によるレンズの個体差を補正するために有効であるが、絞りF値、スケール位置、ズーム位置以外の要因による像面位置の変化に対応できないという課題を有する。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、撮影時に時々刻々と変化する撮影光学系の姿勢に応じた光学素子の倒れ(傾き)成分に応じて焦点検出を補正することで精度向上したAFを可能とした撮像システム及び撮影光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段である第1の発明は、撮影光学系と撮像装置とを含む撮像システムにおいて、前記撮像装置は、前記撮影光学系を通過した光を信号に変換し出力する撮像素子と、前記撮像素子から出力された信号に基づいて、前記撮影光学系を合焦状態に制御するための合焦評価値を検出する焦点検出部と、前記合焦評価値を補正する補正部とを有し、前記撮影光学系の姿勢情報を検出する姿勢検知部と、前記合焦評価値を補正する補正値を演算する補正値演算部と、前記補正値演算部は、前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて前記補正値を演算し、前記姿勢情報をもとに、前記補正式を補正する補正式補正部と、を前記撮影光学系と前記撮像装置のいずれかに有し、前記補正部は、前記補正式補正部に補正された補正式を用いて前記補正値演算部の演算結果である前記補正値をもとに前記合焦評価値を補正することを特徴とする撮像システム。
【0011】
また、上述の課題を解決するための手段である第2の発明は、撮影光学系と撮像装置とを含む撮像システムにおいて、前記撮像装置は、前記撮影光学系を通過した光を信号に変換し出力する撮像素子と、前記撮像素子から出力された信号にもとづいて、前記撮影光学系を合焦状態に制御するための合焦評価値を検出する焦点検出部と、前記合焦評価値を補正する補正部と、を有し、前記撮影光学系の姿勢情報を検知する姿勢検知部と、前記合焦評価値を補正する補正値を演算する補正値演算部と、前記補正値演算部は、前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて前記補正値を演算し、前記姿勢情報と前記合焦評価値の変動量の関係を記憶する記憶部と、前記姿勢情報を取得し、前記姿勢情報に対応する変動量を前記記憶部より取得する変動量取得部と、を前記撮影光学系と前記撮像装置のいずれかに有し、前記補正部は、前記補正値演算部の演算結果である前記補正値と前記変動量取得部の取得した前記変動量をもとに前記合焦評価値を補正することを特徴とする撮像システム。
【0012】
また、上述の問題を解決するための手段である第3の発明は、撮像装置と結合する撮影光学系において、前記撮影光学系の姿勢情報を検知する姿勢検知部と、前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて補正値を演算する補正値演算部と、前記姿勢情報をもとに前記補正式を補正する補正式補正部と、を有し、前記補正値演算部は、前記補正式補正部に補正された補正式を用いて演算し、演算結果である補正値を前記撮像装置へ送信することを特徴とする撮影光学系。
【0013】
また、前述の課題を解決するための手段である第4の発明は、撮像装置と結合する撮影光学系において、前記撮影光学系の姿勢情報を検知する姿勢検知部と、前記撮影光学系と前記撮像装置の撮影条件をもとに補正式を用いて補正値を演算する補正値演算部と、前記姿勢情報と合焦評価値の変動量の関係を記憶する記憶部と、前記姿勢情報を取得し、前記姿勢情報に対応する変動量を前記記憶部より取得する変動量取得部と、前記姿勢情報をもとに前記補正式を補正する補正式補正部と、を有し、前記補正値演算部は、前記補正式補正部に補正された補正式を用いて演算し、演算結果である補正値と前記変動量取得部の取得した変動量を前記撮像装置へ送信することを特徴とする撮影光学系。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影時に時々刻々と変化する撮影光学系の姿勢に応じた光学素子の倒れ(傾き)成分に応じて焦点検出を補正することで精度向上したAFを可能とした撮像システム及び撮影光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る撮像システムのブロック図
図2】本発明の実施例に係る受光画素を撮影光学系側から見た平面図
図3】本発明の実施例に係る処理例を示すフローチャート
図4】本発明の実施例に係る焦点検出領域の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。尚、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
例えば、以下の実施例では撮影光学系を交換可能な撮像装置を用いた実施形態について説明するが、本発明は撮影光学系の交換できない撮像装置すなわちデジタルカメラやビデオカメラに対しても適用可能である。
【0018】
図1は、本実施例の撮影光学系と撮像装置からなる撮像システムのブロック図である。尚、各図面は、本発明の説明を簡単にするために簡略化されている。また、特に説明がない場合、各図面は、左側が被写体側、右側が像側となり、上下方向をラジアル方向、左右方向をスラスト方向とする。
【0019】
本実施例において、100は撮影光学系、101はズームレンズ群、102は絞り、103はフォーカスレンズ、111はズーム駆動部、112は絞り駆動部、113はフォーカス駆動部、114は姿勢検知部、115はレンズCPU、116はレンズメモリとする。
【0020】
撮影光学系100は、撮像装置200に脱着可能であり、図1中央の撮影光学系100と撮像装置200が互いに接する撮影光学系100のマウント部と撮像装置200のマウント部とがバヨネット機構などにより結合される。尚、本実施例にて用いる撮影光学系100は、ズームレンズであるので焦点距離を変更することが可能である。しかし、焦点距離が固定である所謂単焦点レンズでも構わないことは言うまでもない。
【0021】
また、本実施例の撮影光学系100の有するズームレンズ群101、絞り102、フォーカスレンズ103と撮像素子201の光軸は一致するように調整済みであることは言うまでもない。図1のスラスト方向に描かれている一点鎖線は光軸を表す。
【0022】
ズームレンズ群101は、光軸に沿った方向であるスラスト方向に移動可能に保持されたレンズ群であり、ズームレンズ群101の位置によって撮影距離が変化する。
【0023】
絞り102は、撮影光学系100を通過し、撮像素子201に入射する光量を調整する機能を有する。また、静止画撮影時にはメカニカルシャッタとしても機能する。但し、メカニカルシャッタを単体として撮影光学系100内に配置する構成としても問題ない。
【0024】
フォーカスレンズ103は、ズームレンズ群101と同様にスラスト方向へ移動可能である。フォーカスレンズ103のレンズ位置によって、合焦する合焦距離が変化する。
【0025】
ズーム駆動部111は、ズームレンズ群101を駆動するためのアクチュエータや駆動回路を有する。
【0026】
絞り駆動部112は、絞り102を駆動するためのアクチュエータや駆動回路を有する。
【0027】
フォーカス駆動部113は、フォーカスレンズ103をスラスト方向に駆動するためのアクチュエータや駆動回路を有する。
【0028】
姿勢検知部114は、フォーカスレンズ103の姿勢を検知するためのセンサである。本実施例では、加速度センサを用いる。フォーカスレンズ103の姿勢を検知するセンサであれば、問題ないことは言うまでもない。
【0029】
また、本実施例では、フォーカスレンズ103の姿勢を検知しているが、撮影光学系100内の他のレンズ、または撮影光学系やカメラ筐体の姿勢情報など撮影光学系100に対する重力方向の姿勢情報が取得可能であれば、本願発明の姿勢検知部114に用いることが可能である。
【0030】
レンズCPU115は、ズーム駆動部111、絞り駆動部112、フォーカス駆動部113と接続されており、各部を制御することが可能となっている。さらには、レンズCPU115は、マウント部を通じてカメラCPU204と接続される。接続されることでコマンドやデータのやり取りが可能となる。レンズCPU115は、ズームレンズ群101や絞り102やフォーカスレンズ103の位置を取得し、カメラCPU204の要求に応じて位置情報や姿勢情報を取得し送信する。
【0031】
また、レンズCPU115は、カメラCPU204の要求に応じて、ズーム駆動部111、絞り駆動部112、フォーカス駆動部113を通じて各部を制御する。
【0032】
レンズメモリ116は、自動焦点検出の際に用いる光学情報が記憶されている。また、補正値を求める際に用いる補正テーブルが記憶されている。具体的には、ズームレンズ群101の位置、絞り102の位置、フォーカスレンズ103の位置に応じたデータをテーブルとして記憶しておく。本実施例では、、撮影条件に対応した補正式の係数がテーブルとして記憶されている。
【0033】
また、レンズメモリ116は、撮影光学系100の光学設計情報を記憶しておいてもよい。光学設計情報を用いて収差補正などに用いることが可能である。
【0034】
次に、本実施例の撮像装置200は、撮像素子201、信号処理部202、画像処理部203、カメラCPU204、表示部205、操作部206、記憶部207、焦点検出部208、補正部209、補正値演算部210、補正値補正部211、変動量取得部212を有する。
【0035】
本実施例にて用いる撮像素子201は、CMOSイメージセンサである。位相差AFに必要な画素は、瞳分割されているため、画像データを用いた位相差AFが可能となっている。尚、すべての画素が瞳分割されていても問題ない。
【0036】
信号処理部202は、不図示のA/D変換コンバータやゲイン可変アンプを備えており、撮像素子201を制御し取得した画像信号に対して、各処理を行った後、カメラCPU204へ送信する。
【0037】
画像処理部203は、撮像素子201が検知した光から変換した画像信号を位相差AF用の信号と表示、記憶する画像信号を生成する。また、画像信号に対し、ホワイトバランス調整、色再現処理、JPEG形式などの画像データへの現像処理といったデジタルカメラにて行われる一般的な画像信号処理を行う。
【0038】
カメラCPU204は、撮像装置200に係るすべての演算制御を行う。具体的には、信号処理部202、画像処理部203、表示部205、操作部206、記憶部207、焦点検出部208、補正部209、補正値演算部210、補正式補正部211、変動量取得部212と接続されているので制御することが可能である。また、マウント部を介してレンズCPU115と電気的に接続されているので、コマンドやデータを通信のやり取りを行うことが可能である。レンズCPU115に対して、各種レンズや絞り位置の取得要求やズームレンズ群101、フォーカスレンズ103、絞り102などに対する駆動要求や撮影光学系固有の光学情報の取得を要求するコマンドを発行することで各種撮影条件の取得が可能となっている。
【0039】
表示部205は、LCDやこれを制御する回路などを有し、撮影光学系100や撮像装置200の撮影条件や撮影モードに関する情報収集や撮影時のライブビュー、焦点検出時の合焦状態の表示、撮影後の確認のための撮影画像などを表示する。
【0040】
操作部206は、電源スイッチ、レリーズ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチなどの操作部材であり、使用者がこれら操作部材を操作することで、カメラCPU204は所定の動作を行うコマンドを発行する。
【0041】
記憶部207は、姿勢検知部114が検知した姿勢情報やフォーカスレンズ103の位置、ズームレンズ群101の位置、焦点検出領域の座標などを記憶したり、姿勢情報と補正式の係数や変動量の関係をテーブルとして保持している。
【0042】
本実施例では、レンズメモリ116に撮影条件に対応した補正式の係数がテーブルとして記憶されているが、このテーブルを記憶部207に記憶しておいても問題ない。さらには、姿勢情報と補正式の係数や変動量をテーブルとして記憶部207に記憶しているが、これらをレンズメモリ116に記憶しても問題ない。
【0043】
焦点検出部208は、画像処理部203により生成された焦点検出用信号を用いて焦点検出処理を行う。具体的には、位相差AF方式であれば、撮像素子201を通過した光束は、後述するような構造から一対の像データを生成することが可能である。生成した一対の像データからなる画像信号を焦点検出用信号とし、焦点検出用信号をもとに焦点評価値を算出し、最も高い焦点評価値である合焦評価値となった際のフォーカスレンズ103の位置、つまり焦点検出位置を求める。
【0044】
補正部209は、焦点検出部208が焦点検出用信号を用いた焦点評価値から求めた合焦評価値に補正値演算部210が演算した補正値を適用することで、合焦評価値を補正する。
【0045】
補正値演算部210は、補正式や変動量をもとに合焦評価値に適用する補正値を演算する。
【0046】
補正式補正部211は、姿勢検知部114の検出した姿勢情報を用いて補正式の係数を補正する。
【0047】
変動量取得部212は、姿勢検知部114の検知した姿勢情報をもとに記憶部207から変動量を取得する。取得した変動量を補正値演算部へ送信する。
【0048】
以下に、焦点検出動作の説明を行う。図2は、本実施例にて用いる撮像素子201であり、CMOSセンサの1画素を抜き出して撮影光学系100側より見た状態である。撮像素子201は、この画素が行方向と列方向つまりY軸方向とX軸方向とに配置され集合したものである。
【0049】
本願実施例のカラーフィルタの配置は、ベイヤー配列とする。従って、奇数行の画素は、左から順に緑(G)と赤(R)のカラーフィルタが交互に並び、偶数行の画素には左から順に青(B)と緑(G)のカラーフィルタが交互に並ぶ。本願実施例では、一般的なベイヤー配列のカラーフィルタ配置としたが、変形フィルター配列などでも本願発明を適用することが可能である。
【0050】
次に、図中の円300iは、マイクロレンズを表す。また、本実施例にて用いる撮像素子201のすべての画素の光電変換部は、列方向に2分割されている。図中の矩形の300aと300bはそれぞれ光電変換部を表す。この300aと300bの光電変換部に出力する画像信号が一対の像データである。
【0051】
分割された片側の光電変換部の出力する画像信号と2つの光電変換部の画像信号の和とは、互いに独立して読み出すことができるよう信号処理部202を制御する。また、2つの光電変換部の画像信号の和から分割された片側の光電変換部の画像信号の差分を取ることで、分割された他方の光電変換部の画像信号を得ることができる。
【0052】
上記方法にて取得した個々撮像素子201の片側の光電変換部の画像信号は、位相差AF用の画像信号として用いる。また、光電変換部の和の画像信号は、通常の撮影画像の画像信号として用いることができる。
【0053】
次に、位相差AFを行う画像信号について説明する。本実施例では、同一画素行に配置された複数の画素300について、各画素300の光電変換部300aの出力する画像信号をつなぎ合わせたものをAF用L像とし、同様に光電変換部300bの出力する画像信号をつなぎ合わせたものをAF用R像とする。
【0054】
このようにして生成したAF用L像とAF用R像から相対的な像ズレ量を求め、求めた像ズレ量を検出することで、所定領域の焦点のズレ量であるデフォーカス量を検出することができる。
【0055】
また、カメラCPU204は、画像処理部203へ焦点検出領域の情報を送信し、焦点検出領域内に含まれる画素の出力から、AF用L像とAF用R像の画像信号を生成し、焦点検出部208へ出力する。
【0056】
本実施例における画像信号の読み出しについて説明する。一般的には、合焦までの時間が短いことが望まれる。従って、すべての画素の画像信号を読み出して、デフォーカス量を算出するのでは、合焦までに時間を要してしまう。そこで、位相差AFなど画像信号を用いた合焦地点の探索やライブビュー動画を表示する際には、すべての画素の画像信号を読み出して信号処理を行うのではなく、撮像素子201のX軸方向とY軸方向ともに一定の比率で間引いた画素からのみ画像信号を読み出す、いわゆる間引き信号処理をすることが一般的である。
【0057】
以下に、本実施例の撮像装置200における自動焦点検出(AF)について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
ステップ#1は、カメラCPU204が、焦点検出領域を設定する。本ステップにて設定する焦点検出領域とは、図4に示すように横軸をX軸とし、縦軸をY軸として中央の被写体400に対して焦点検出領域401を設定し、焦点検出領域401を代表する座標を先ほどのX軸とY軸を用いて(X1,Y1)と設定する。なお、(X1,Y1)は図4の焦点検出領域301の中心などで構わない。
【0059】
ステップ#2は、焦点検出部208が位相差AFに用いる焦点検出信号を取得する。同一画素行に配置された所定範囲内の画素300について、光電変換部300aの出力をつなぎ合わせたAF用L像、光電変換部300bの出力をつなぎ合わせたAF用R像をそれぞれ取得する。
【0060】
ステップ#3は、ステップ#2にて取得した焦点検出信号を用いて焦点検出部208は、焦点評価値をもとに位相差AFの処理に基づいて焦点となる合焦評価値の検出を行う。この時、焦点評価値を用いて合焦か否かを判断し、最も高い評価値を合焦評価値とする。また、合焦評価値を取得した際のフォーカスレンズ位置を焦点検出位置とする。さらに、合焦評価値を取得した際のフォーカスレンズ103の位置、ズーム状態を示すズームレンズ群101の位置、焦点検出領域の座標(X1,Y1)などの情報を記憶部207に記憶しておく。
【0061】
また、位相差AFにて検出した焦点評価値が最良となる合焦評価値を取得したフォーカスレンズ位置と、実際に撮影した画像における最良のピントとなるフォーカスレンズ位置とでは、レンズの光学特性や前述したように位相差AF時には画像信号を間引き読み出しした画像信号をもとに合焦評価値を算出していることなどの要因により、差が生じることがある。この差を補正するのが補正値である。
【0062】
加えて、撮影光学系100内のレンズが重力により、レンズの姿勢が変化することで、収差も変化する。その結果、前述して求めた合焦評価値を補正する補正値に姿勢変化の影響も加味する必要がある。
【0063】
ステップ#4は、カメラCPU204は、補正値の算出に必要な補正値算出条件を取得する。補正値は、フォーカスレンズ103の位置、ズーム状態を示すズームレンズ群101の位置、絞り102の絞り値、焦点検出領域の位置座標(X1,Y1)など、撮影光学系の変化や焦点検出光学系の変化に伴って変化する。また、カメラCPU204は、姿勢検知部114が検知したフォーカスレンズ103の姿勢情報を取得し、記憶部207に記憶しておく。従って、カメラCPU204は、ステップ#3で記憶部207に記憶したフォーカスレンズ103の位置、ズーム状態を示すズームレンズ群101の位置、焦点検出領域の座標(X1,Y1)などの情報を取得しておく。
【0064】
ステップ#5は、カメラCPU204が、ステップ#4にて姿勢検知部114が検出したフォーカスレンズ103の姿勢をもとに、補正式補正部211が補正式を補正した補正後の補正式を用いて焦点検出位置の補正をするための補正値を補正値演算部210が演算し、カメラCPU204へ演算結果である補正値を送信する。
【0065】
ステップ#6は、補正値演算部210が、ステップ#5にて演算した補正値を用いて、ステップ#3にて取得した焦点検出の結果である合焦評価値に補正部209が補正値を適用して補正する。
【0066】
以下に、具体的な補正方法の説明を行う。
【0067】
ステップ#5では、カメラCPU204から要求を受けたレンズCPU115は、ステップ#4にて取得したフォーカスレンズ103の位置、ズームレンズ群101の位置、および絞り102の位置に応じたデータを基にレンズメモリ116に記憶した補正データテーブルから、補正データを算出する。その後、マウント部を通じてカメラCPU204に送信する。これらのデータを受信したカメラCPU204は、像高r=√(X1^2+Y1^2)において、補正値は下記多項式(以下、補正式)にて表すことが可能である。
【0068】
下記補正式は画面中心即ち光軸に関して対称な0次項(定数),2次項,および4次項(6次以上も同様、以下偶数次項とする)は、光学特性による収差を補正し、画面中心に関して符号が逆転する1次項と3次項(5次以上も同様、以下奇数次項とする)については製造誤差による個体差とレンズを構成する光学素子の倒れ(傾き)や偏芯といったレンズの姿勢が主な要因とする収差を補正し、光学特性および個体差やレンズ姿勢による収差の補正は、撮影時の焦点距離や撮影距離や絞り値を基にレンズメモリ116に記憶したテーブルを用いて補正式の係数が決定する。さらに姿勢検知部114が検知したレンズ姿勢から補正式補正部211が、記憶部207に記憶されているテーブルより係数を読みだすことで、奇数次項の係数を算出し、下記補正式に反映させることで、レンズ姿勢により合焦評価値のズレを補正するが可能となる。
【0069】
説明を補足すると、レンズ姿勢や倒れ(傾き)や偏芯といった影響は軸対称ではなく重力に依存した方向性がある。従って、奇数次項が支配的になる。本実施例の補正式は、補正値の精度と計算量のバランスからrの4乗までとなっているが、rの乗数を増やしても問題ないことは言うまでもない。また、奇数次項におけるrの符号は、重力方向(図1及び図2の下方向)を正、反対方向(図1及び図2の上方向)を負とする。尚、逆でも構わない。
【0070】
補正式=C0+C1r+C2r^2+C3r^3+C4r^4
(C0,C1,C2,C3,C4は係数)
【0071】
以上の説明したように、ステップ#5では上記補正式を用いて焦点検出結果をレンズCPU115が補正演算した後、演算結果をカメラCPU204へ送信する。ステップ#6へ進む。
【0072】
ステップ#7は、カメラCPU204が、フォーカス駆動部113を介して、補正後の焦点検出結果である焦点検出位置へフォーカスレンズ103を駆動する。
【0073】
ステップ#8は、カメラCPU204が、合焦判定を行う。合焦したと判定した場合、AF処理が終了し、合焦したと判定されなかった場合、ステップ#1へ戻る。
【0074】
また、以下に実施例2を説明する。ステップ#1~ステップ#4とステップ#7以降は、実施例1と同様なので、説明を省略する。
【0075】
実施例1では、ステップ#5にてレンズの姿勢を加味するために、姿勢検知部114の検出した姿勢情報をもとに補正式補正部211が補正式の係数を補正し、補正後の補正式より補正値演算部210が、補正値を求め、ステップ#6にてステップ#3にて求めた合焦評価値に補正部209が、補正後の補正値を適用し、演算を行うことで合焦評価値の補正を行っていた。その結果、補正後の合焦評価値は、レンズの姿勢によるズレが考慮されたものとなっていた。
【0076】
一方、実施例2のステップ#5では、撮影時の焦点距離や撮影距離や絞り値を基にレンズメモリ116のテーブルから上記補正式の係数が決定するので、補正式を用いて補正値を求めるとともに、姿勢検知部114が検知したレンズの姿勢による合焦評価値への影響の補正は、記憶部207へ姿勢情報と変動量の関係をテーブルとして記憶させておき、変動量取得部212が、変動量を取得することで、姿勢検知部114が検知したレンズ姿勢から変動量を求めることが可能となる。先ほどの補正値と変動量をカメラCPU204へ送信し、ステップ#6へ進む。
【0077】
ステップ#6では、受信した補正値と変動量をもとに、補正値演算部210が補正値を演算し、演算結果を受けて補正部209が、ステップ#3にて取得した位相差AFの結果である合焦評価値に適用して補正することで実施例1と同様にレンズ姿勢による影響も補正した合焦評価値とすることが可能となる。ステップ#7以降の処理は、実施例1と同様であるので省略する。
【0078】
本実施例1と実施例2は、撮影光学系100に姿勢検知部114を配置し、撮像装置200に撮像素子201と焦点検出部208と補正部209と補正値演算部210と補正式補正部211と変動量取得部212を配置している。こうすることで、これは、レンズCPU115よりもカメラCPU204の方が処理能力が高いことが一般的であるので、補正値を求めるまでの演算をカメラCPU204にて行わせることで高速化を目的とした。レンズCPU115とカメラCPU204の処理能力や両CPU間の通信速度次第で、各部の配置を変更させても問題ない。
【0079】
撮影光学系100に姿勢検知部114と補正値演算部210と補正式補正部211と変動量取得部212とを配置し、撮像装置200に撮像素子201と焦点検出部208と補正部209とを配置することとしても問題ない。この場合、それぞれの撮影光学系100に依存する収差補正に用いるデータなどをレンズメモリ116に記憶しておくことで、結合する撮影光学系100ごとの補正データを撮像装置200が保持する必要がなくなる。
【0080】
つまり、撮像装置200は結合した撮影光学系100に対応する補正データを保持していない場合、撮像装置200のアップデートなどでインストールする必要がある。しかし、前段落のように各部を配置することで、撮像装置のアップデートが不要となる利点がある。
【0081】
一例として、実施例1と実施例2は、撮影光学系に姿勢情報と撮影条件を取得することで補正値を算出するまでの演算を撮影光学系内で完結することが可能である。その結果、演算した補正値及び変動量を撮像装置へ転送し、受信した撮像装置は合焦評価値へ適用することも可能である。
【0082】
本実施例では、AFとして瞳分割がなされた撮像素子201を用いることで位相差AFを採用して説明したが、コントラストAFを用いても本願発明を実現することができる。
【符号の説明】
【0083】
100 撮影光学系
101 ズームレンズ群
102 絞り
103 フォーカスレンズ
111 ズーム駆動部
112 絞り駆動部
113 フォーカス駆動部
114 姿勢検知部
115 レンズCPU
116 レンズメモリ
200 撮像装置
201 撮像素子
202 信号処理部
203 画像処理部
204 カメラCPU
205 表示部
206 操作部
207 記憶部
208 焦点検出部
209 補正部
210 補正値演算部
211 補正式補正部
212 変動量取得部
図1
図2
図3
図4