IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-テラヘルツ波遮蔽材料 図1
  • 特許-テラヘルツ波遮蔽材料 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】テラヘルツ波遮蔽材料
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20231108BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231108BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20231108BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20231108BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20231108BHJP
   C22C 5/06 20060101ALN20231108BHJP
   C22C 19/03 20060101ALN20231108BHJP
   C22C 19/07 20060101ALN20231108BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B22F1/00 M
B22F1/00 S
B22F1/054
B22F3/00 B
H01Q17/00
C22C5/06 Z
C22C19/03 D
C22C19/07 C
C22C38/00 303S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023507334
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2022031779
(87)【国際公開番号】W WO2023027085
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021137421
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021137422
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021198607
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021198605
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021198606
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022059533
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022059546
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022073506
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕孝
(72)【発明者】
【氏名】三代 真澄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 菜保
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/107136(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0385534(US,A1)
【文献】特開2020-167292(JP,A)
【文献】特開2015-095638(JP,A)
【文献】特開2020-100895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0068318(US,A1)
【文献】国際公開第2015/070184(WO,A1)
【文献】特開2007-247036(JP,A)
【文献】Liu, Jiu-rong,Enhanced electromagnetic wave absorption properties of Fe nanowire in gigaherz range,Appl. Phys.Lett.,AIP Publishing,2007年08月28日,91,093101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B22F 1/00
B22F 1/054
B22F 3/00
H01Q 17/00
C22C 5/06
C22C 19/03
C22C 19/07
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤーとバインダーを含むテラヘルツ波遮蔽材料であって、
ナノワイヤーが鉄を主成分とするナノワイヤーであり、
鉄を主成分とするナノワイヤーは、鉄の含有量がナノワイヤー全量に対して70質量%以上であって、該ナノワイヤーの含有量が1質量%以上、40質量%以下である、テラヘルツ波遮蔽材料。
【請求項2】
ナノワイヤーの平均長が5μm以上である、請求項1に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
【請求項3】
ナノワイヤーが複数の粒子が連結されたナノワイヤーである、請求項1に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
【請求項4】
287.5~312.5GHzの帯域幅の電磁波の反射率が50%未満である、請求項1に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
【請求項5】
287.5~312.5GHzの帯域幅の電磁波の透過減衰量の絶対値が20dB/mm以上である、請求項1に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
【請求項6】
ノワイヤーの含有量が20~40質量%である、請求項1に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
【請求項7】
請求項1~いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料が含まれる無線通信のアンテナユニット。
【請求項8】
請求項1~いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料が含まれるセンシングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波遮蔽材料に関するものである。
【技術背景】
【0002】
近年、次世代無線通信(6G、Beyond 5G)として、「高速化」、「大容量化」、「低遅延化」および/または「高信頼性化」を目的としたテラヘルツ波の利用が検討されている。また、自動運転の重要技術である自動車内外のセンシングを行うレーダーもテラヘルツ波を用いることにより、高精細かつ3次元的な追跡が期待されている。
【0003】
テラヘルツ波等の高周波数を扱う無線通信ユニットやセンシングユニットは、伝送損失低減の観点からアンテナモジュール、電源ユニットモジュール、RFフロントエンドモジュール、MMICモジュール等を一体化させたAiP(Antenna in Package)が主流である。そのため、ユニット内部で、テラヘルツ波の干渉、発振等より各モジュールの誤作動や特性低下を起こさないようにテラヘルツ波を遮蔽できる材料が求められている。
【0004】
テラヘルツ波のような高周波は波長が短いため、遮蔽には、遮蔽性のフィラーを高充填し隙間を埋める必要があり、可撓性が欠如しやすい。そのため、充填率の低減が可能なε型酸化鉄などのフェライト系のフィラーと樹脂による遮蔽材料が用いられている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の遮蔽材料は、フェライト系のフィラーでもまだ30体積%(=約67質量%)以上の高い充填率で配合する必要がある。そのため、加工に耐える可撓性を付与するにはガラス転移温度の低い柔軟な樹脂を用いる必要があり、柔軟な樹脂を用いるため、耐熱性が悪く使用環境が制限されたり、熱により遮蔽性が低下したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-071426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、耐熱性、可撓性およびテラヘルツ波に対する遮蔽性いずれにも優れた遮蔽材料を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、耐熱性、可撓性ならびにテラヘルツ波に対する遮蔽性および耐反射性のいずれにも優れた遮蔽材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ナノワイヤーを含む材料が、上記目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
<1> ナノワイヤーとバインダーを含むテラヘルツ波遮蔽材料。
<2> ナノワイヤーが、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれた1種以上の金属を主成分とするナノワイヤーである、<1>に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<3> ナノワイヤーの平均長が5μm以上である、<1>または<2>に記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<4> ナノワイヤーが複数の粒子が連結されたナノワイヤーである、<1>~<3>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<5> 287.5~312.5GHzの帯域幅の電磁波の透過減衰量の絶対値が20dB/mm以上である、<1>~<4>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<6> 287.5~312.5GHzの帯域幅の電磁波の反射率が50%未満である、<1>~<5>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<7> ナノワイヤーの含有量が67質量%未満である、<1>~<6>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<8> ナノワイヤーの含有量が0.5質量%以上である、<1>~<7>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<9> ナノワイヤーが鉄またはニッケルを主成分とするナノワイヤーであり、
ナノワイヤーの含有量が8質量%以上、67質量%未満である、<1>~<8>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<10> ナノワイヤーが鉄を主成分とするナノワイヤーであり、
ナノワイヤーの含有量が20~50質量%である、<1>~<9>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料。
<11> <1>~<10>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料が含まれる無線通信のアンテナユニット。
<12> <1>~<10>いずれかに記載のテラヘルツ波遮蔽材料が含まれるセンシングユニット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性、可撓性、テラヘルツ波に対する遮蔽性いずれにも優れた遮蔽材料を提供することができる。
本発明の遮蔽材料は、少ない配合量でも十分なテラヘルツ波に対する遮蔽性を有するため、優れた加工性を有し、1mm未満の薄厚の材料に成型した場合であっても十分な遮蔽性を発現することができ、無線通信のアンテナユニットやセンシングユニット等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例2の遮蔽材料の0.2~2THz間における電磁波の透過減衰量を示した図である。
図2】実施例2の遮蔽材料の0.2~2THz間における電磁波の反射率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、ナノワイヤーとバインダーを含む。遮蔽材料中におけるナノワイヤーの含有量は特に限定されず、必要な遮蔽能力と機械物性や熱物性により、適宜設定すればよい。通常、遮蔽性能はフィラーの添加量が多いほど高くなるが、材料の可撓性などが低下し扱いにくくなる。ナノワイヤーは他のフィラーと異なり、少ない含有量でも遮蔽効果が発現するのが特徴であり、ナノワイヤーの含有量は0.5質量%以上であれば、形状(厚み)にもよるが十分な遮蔽性能を得ることができる。ナノワイヤーの含有量は、遮蔽性のさらなる向上の観点から、1質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることが十分に好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。一方、少ない含有量でも効果が得られるため、材料強度および扱いやすさに優れるとともに、反射波の発生が少ない遮蔽材料とすることもできる。そのため、ナノワイヤーの含有量は、可撓性、耐熱性および反射性の観点から、67質量%未満であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが十分に好ましく、30質量%以下であることがより十分に好ましい。
【0012】
特に、後述する鉄、ニッケルまたはコバルトの卑金属を主成分とするナノワイヤーの含有量は、高い遮蔽効果を期待する場合は、20~50質量%、耐反射性(低い反射率)を期待する場合は、1~20質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0013】
本明細書中、遮蔽性は、テラヘルツ波の0.1~10THzを対象として、特に287.5~312.5GHzの透過を十分に抑制する特性である。
耐熱性は、高温環境下(例えば200℃)においても、形状を保持し得る特性のことである。
可撓性は、割れを生じることなく、折り曲げし得る特性のことである。
耐反射性は、テラヘルツ波の0.1~10THzを対象として、特に287.5~312.5GHzの反射を十分に抑制する特性である。
遮蔽性、耐熱性および可撓性は、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料が有する特性である。
耐反射性は、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料が必ずしも有さなければならない特性というわけではなく、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料が有することが好ましい特性である。
【0014】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料の作製方法は特に限定されないが、例えば、溶融・押出成型したり、インクやペーストにしたのちコーティングしたりする方法が挙げられる。
【0015】
テラヘルツ波の帯域は、一般に0.1THz~10THz程度とされており、次世代無線通信には287.5~312.5GHzの帯域が使用される見込みである。
【0016】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、テラヘルツ波を遮蔽する。その遮蔽性は、THz-TDS(テラヘルツ時間領域分光法)により透過減衰量で評価することができる。透過減衰量の絶対値が大きいほど、遮蔽性は優れている。テラヘルツ波の透過減衰量の絶対値は20dB/mm以上であることが好ましく、50dB/mm以上であることがより好ましく、100dB/mm以上であることがさらに好ましい。前記透過減衰量の絶対値が20dB/mm以上であれば、1mm未満の薄厚の材料に成型した場合であっても遮蔽材料として用いることができる。特に、透過減衰量の絶対値は、次世代無線通信に使用される可能性のある287.5GHz~312.5GHzの帯域において、絶対値の最小値が20dB/mm以上であることがより好ましく、50dB/mm以上であることがより好ましく、100dB/mm以上であることがさらに好ましい。
【0017】
透過減衰量は、厚み0.4~1.8mmのシート形状を有するテラヘルツ波遮蔽材料をTHz-TDS(テラヘルツ時間領域分光法)に供することにより得られた値を用いている。
【0018】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、テラヘルツ波の反射率が低いことが好ましい。反射率が低く、透過減衰量の絶対値が大きい材料ほど、電磁波を吸収する能力に優れていることになる。テラヘルツ波の吸収に優れていれば、反射波のカップリング等によるノイズの増幅等を抑制することができる。テラヘルツ波の反射率は、50%未満であることが好ましく、30%未満であることがより好ましく、20%未満であることがさらに好ましい。特に反射率は、287.5~312.5GHzの帯域において、最高値が50%未満であることが好ましく、30%未満であることがより好ましく、20%未満であることがさらに好ましい。
【0019】
反射率は、厚み0.4~1.8mmのシート形状を有するテラヘルツ波遮蔽材料をTHz-TDS(テラヘルツ時間領域分光法)に供することにより得られた値を用いている。反射率は、金薄膜の反射量を100%とし、サンプルの反射量/金薄膜の反射量で算出した値である。
【0020】
本発明に用いるナノワイヤーとは、直径がナノスケールの繊維状物質のことをいう。ナノワイヤーは、当該ナノワイヤーを含むバインダー材料の誘電率および誘電正接を高くし、電波を熱に変換する観点から、金属を主成分とするナノワイヤーであることが好ましい。ナノワイヤーを主成分として構成する金属は、当該ナノワイヤーを含むバインダー材料の界面インピーダンスが空間と差が広がらないように、卑金属であることが好ましい。ナノワイヤーを主成分として構成する金属は鉄、ニッケル、コバルトからなる群より選ばれた1種以上の金属であることが好ましい。ナノワイヤーを含むバインダー材料の透磁率を高くするため、ナノワイヤーは、磁性金属である鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群(以下、「群A」という)より選ばれた1種以上(特に1種)の金属を含むナノワイヤーであることがさらに好ましく、上記群Aより選ばれた1種以上(特に1種)の金属を主成分とするナノワイヤーであることが十分に好ましく、鉄またはニッケルを主成分とするナノワイヤーであることがより十分に好ましい。本発明において、「主成分とする」とは、ナノワイヤー中において、40質量%以上の含有量で含むこと、特に最多の含有量で含むことを示す。また、磁性金属の鉄、コバルト、およびニッケルを含む卑金属を主成分とすることにより、表面の不働態層により、テラヘルツ波の反射をより十分に抑制しながら透過もより十分に抑制可能な遮蔽材料とすることができる。不働態層の形成は、X線光電子分光法やラマン分光法で判断可能である。
【0021】
鉄を主成分とするナノワイヤーは、例えば、鉄の含有量がナノワイヤー全量に対して40質量%以上であり、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは70~90質量%である。鉄を主成分とするナノワイヤーは、鉄以外の原子を含んでもよい。鉄以外の原子は、例えば、ニッケル、コバルトおよび銀からなる群から選択される1種以上原子であってもよい。鉄以外の原子の合計含有量は通常、50質量%以下であり、特に20質量%以下であってもよい。
【0022】
コバルトを主成分とするナノワイヤーにおいて、例えば、コバルトの含有量はナノワイヤー全量に対して40質量%以上であり、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。コバルトを主成分とするナノワイヤーは、コバルト以外の原子を含んでもよい。コバルト以外の原子は、例えば、鉄、ニッケル、および銀からなる群から選択される1種以上原子であってもよい。コバルト以外の原子の合計含有量は通常、50質量%以下であり、特に20質量%以下であってもよい。
【0023】
ニッケルを主成分とするナノワイヤーにおいて、例えば、ニッケルの含有量はナノワイヤー全量に対して40質量%以上であり、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。ニッケルを主成分とするナノワイヤーは、ニッケル以外の原子を含んでもよい。ニッケル以外の原子は、例えば、鉄、コバルトおよび銀からなる群から選択される1種以上原子であってもよい。ニッケル以外の原子の合計含有量は通常、50質量%以下であり、特に20質量%以下であってもよい。
【0024】
銀を主成分とするナノワイヤーにおいて、例えば、銀の含有量はナノワイヤー全量に対して40質量%以上であり、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。銀を主成分とするナノワイヤーは、銀以外の原子を含んでもよい。銀以外の原子は、例えば、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択される1種以上原子であってもよい。銀以外の原子の合計含有量は通常、50質量%以下であり、特に20質量%以下であってもよい。
【0025】
本明細書中、ナノワイヤー中の金属の含有量は、ナノワイヤー全量に対する値(質量%)で表されている。当該金属原子の含有量は、ナノワイヤーが溶解された溶液を、ICP-AES法に基づく多元素同時分析法および検量線法に供することにより測定された値を用いている。
【0026】
本発明に用いるナノワイヤーは、その高い形状の異方性により材料中において網目構造のクラスターを容易に形成することができるため、配合量を抑えることができる。配合量の抑制はナノワイヤーの平均長が長いほど有効であり、ナノワイヤーの平均長は、5μm以上が好ましく、さらに10μm以上が好ましい。一方ナノワイヤー長が長くなると加工性が低下するため、平均長は50μm以下が好ましく、さらに30μm以下が好ましい。
【0027】
本明細書中、ナノワイヤーの平均長は、走査型電子顕微鏡(SEM)による撮影に基づく、任意の100本の平均値を用いている。
【0028】
本発明の軟磁性ナノワイヤーの平均径は特に限定されないが、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、20~500nmであることが好ましく、50~400nmであることがより好ましく、50~300nmであることがさらに好ましく、50~200nmであることが十分に好ましく、50~150nmであることがより十分に好ましい。ナノワイヤーのアスペクト比は特に限定されないが、低いとナノワイヤーの効果を得られず、例えば、20~500であってもよく、ナノワイヤーが少量でも十分に材料中に分布する観点から、好ましくは40~300であり、ナノワイヤー内部の反磁界を抑制する観点から、より好ましくは50~200である。
【0029】
本明細書中、ナノワイヤーの平均径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による撮影に基づく、任意の100点での平均値を用いている。また、ナノワイヤーが後述する粒子連結形状を有する場合、当該ナノワイヤーの平均径は、後述する直径の最大値の平均値Aを平均径とした。
【0030】
本発明に用いるナノワイヤーは、繊維状を有する限り、あらゆる形状を有していてもよい。繊維状とは、ナノワイヤー1本が全体として線状を有するという意味であり、粒子が一次元的に連結された「粒子連結形状」および単なる「棒形状」を包含する。
【0031】
本発明に用いるナノワイヤーは耐反射性の向上の観点から、粒子連結形状を有していることが好ましい。ナノワイヤーが粒子連結形状を有することにより、ナノワイヤー表面に凹凸ができ、進入する電磁波の拡散を促し、その結果、テラヘルツ波が吸収されやすくなり、反射を抑制し遮蔽性を高くすることができる。粒子連結形状を有するナノワイヤーかどうかはSEMにより判断することが可能である。
【0032】
粒子連結形状とは、詳しくは、複数の粒子が直列かつ連続的に連結されてなる、全体として線状の形状のことである。両端の粒子はそれぞれ隣接する1つの粒子と連結され、その他の各粒子は隣接する両側の2つの粒子と連結されている。このような粒子連結形状においては通常、連結部分(2つの粒子間の境界部分)で凹部を形成し、粒子部分で凸部を形成し、粒子の連結方向(ナノワイヤーの長手方向)において凹部と凸部とが連続的に繰り返されている。ナノワイヤーを構成する各粒子は略球形状を有する。略球形状とは円形断面を有する球形状だけでなく、三角形以上の多角形、楕円形またはそれらの複合形状の断面を有する立体形状を包含して意味するものとする。
【0033】
粒子連結形状を有するナノワイヤーは、具体的には、ナノワイヤーにおける直径の最大値の平均値をA(nm)、ナノワイヤーにおける直径の最小値の平均値をB(nm)とした場合に、下記式(1-1)を満たし、耐反射性を向上させ、かつ折れにくくするために、下記式(1-1’)を満たすことが好ましく、下記式(1-1’’)を満たすことがより好ましい。
1.1≦A/B≦2.5 (1-1)
1.1≦A/B≦2 (1-1’)
1.1≦A/B≦1.75 (1-1’’)
【0034】
粒子連結形状を有するナノワイヤーにおいて直径は、ナノワイヤーの長手方向に対する垂直断面における直径を意味し、直径の最大値および最小値はナノワイヤーのSEM画像において読み取ることができる。粒子連結形状を有するナノワイヤーは、ナノワイヤーにおいて端部ではないところで直径の最大値を提供する。端部とはナノワイヤーの端から100nm以内のところである。直径の最大値の平均値Aとは、任意の100本のナノワイヤーについての直径の最大値の平均値である。直径の最小値の平均値Bとは、任意の100本のナノワイヤーについての直径の最小値の平均値である。これらの値に基づいて、A/Bが算出される。
【0035】
粒子連結形状を有するナノワイヤーにおいて、直径の最大値の平均値Aは通常、50~500nm、特に50~400nmであり、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、好ましくは50~300nm、より好ましくは50~200nm、さらに好ましくは60~200nm、最も好ましくは60~150nmである。
【0036】
粒子連結形状を有するナノワイヤーにおいて、直径の最小値の平均値Bは通常、10~200nm、特に20~200nmであり、可撓性、耐熱性および遮蔽性のさらなる向上および耐反射性の向上の観点から、好ましくは30~150nm、より好ましくは30~100nm、さらに好ましくは40~100nm、十分に好ましくは40~90nmである。
【0037】
本発明に用いるナノワイヤーの作製方法は特に限定されないが、溶液中で特定条件にて金属イオンを還元することで得ることができる。特に好ましいとする粒子連結形状を有し、かつ、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択される1種の金属を主成分とするナノワイヤーの製造方法を以下に示す。
【0038】
ナノワイヤーの原料となる金属イオンは、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの金属塩として供給される。例えば、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケルなどを挙げることができる。これらは、水和物であっても問題がない。
【0039】
原料の金属塩は溶液として反応系に供給される。金属塩を溶液にするためには、極性の高いモノアルコール、グリコール、NMP、DMSOなどの有機溶媒あるいは水が必要となる。これらは、単溶媒、混合溶媒のいずれでも問題がない。
【0040】
金属塩の溶液には、反応上の必要に応じて、EDTA、クエン酸などの錯化剤を添加してもよい。通常錯化剤を添加すると反応活性が低下するため、反応の制御が容易になり、それが形状制御に影響する。
【0041】
溶液中の金属イオンを還元することでナノワイヤーを得ることができる。還元方法としては、無電解めっき法において一般的な還元剤であるヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウムなどを使い、各還元剤と還元する金属イオンに推奨される条件で行えばよい。
【0042】
反応系への還元剤の供給方法は、還元剤の状態、反応系の条件により、都合よく選択すればよい。例えば、ヒドラジンのような液状のものであれば、そのまま反応系に供給することができる。水素化ホウ素ナトリウムのような固体の場合、溶液化して供給するのが好ましい。
【0043】
還元剤を供給後の反応は各還元条件に従えばよい。例えば、中程度の還元力のヒドラジンの場合、水酸化ナトリウムなどでpHをアルカリ性に調整し、90℃程度で還元反応をおこなう。高い還元力の水素化ホウ素ナトリウムの場合、還元反応は室温(例えば20℃)でおこなう。
【0044】
還元反応は、バッチ法で行ってもよいし、フロー法で行ってもよい。
【0045】
粒子連結状のナノワイヤーを作製するには、バッチ法、フロー法いずれの場合であっても、還元反応中に100~150mT程度の磁場を印加する。磁場の印加方法は、反応容器や反応流路のサイズで適切な方法を選択すればよい。
【0046】
各材料の濃度は反応系の容量や各原材料の混合方法などで適切に選択すればよい。数L程度の反応容量の場合、原料の金属塩を50mmol/L程度の濃度に調整すればよく、その濃度より高濃度で還元剤を添加すればよい。
【0047】
本発明の趣旨の1つにおいては、テラヘルツ電波の遮蔽性を付与するナノワイヤーは、その混合比率が低くても優れた遮蔽効果を発揮する。このため、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、バインダー自体が有する耐熱性、可撓性などを損なわない。
【0048】
バインダーは、特に限定されず、有機物、無機物いずれであってもよい。有機物とは通常、ポリマーのことであり、その具体例として、例えば、ポリアクリル樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;フッ素樹脂;シリコーンゴムなどの各種ゴム等が挙げられる。無機物として、水ガラス、シリカ等が挙げられる。
【0049】
有機物として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴムなどの各種ゴムなどを使えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、可撓性に優れ、加工しやすい材料になる。
また例えば、エポキシ樹脂を使えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、接着性に優れる材料となる。
また例えば、ポリイミド樹脂を使えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、耐熱性に優れる材料となる。
また例えば、フッ素樹脂を使えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、耐汚性に優れた材料になる。
【0050】
無機物として、例えば、水ガラス、シリカなどを使用すれば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、熱膨張率を低くでき、セラミックや金属と合わせることに適した材料になる。
【0051】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を加えてもよい。
【0052】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料の形状は特に限定されないが、例えば、板状、シート状、塗膜、箱型が挙げられる。詳しくは、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、いわゆるペレット形態を有していてもよいし、またはあらゆる形状を有する成型加工品形態を有していてもよい。例えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、ナノワイヤーおよびバインダーを溶融混練してなる、いわゆるペレット形態を有していてもよい。また例えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、当該ペレットを成型加工してなる成型加工品形態を有していてもよい。また例えば、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、ナノワイヤーおよびバインダーを直接的に成型加工してなる成型加工品形態を有していてもよい。成形加工方法としては、特に限定されず、例えば、圧縮成形法、射出成型法、キャスト法、溶融混練法、塗布法等が挙げられる。
【0053】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、耐熱性、可撓性ならびにテラヘルツ波に対する遮蔽性(好ましくはさらに耐反射性)いずれにも優れているため、無線通信のアンテナユニットやセンシングユニットに用いることができる。具体的には、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、アンテナユニット、センシングユニットの送受信部以外を覆うように使用し、ノイズのカップリング等を抑制する。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0055】
A.各種評価
(1)ナノワイヤーの金属種の定性、定量
十分に真空乾燥したナノワイヤーをICP‐AESにより、定性および定量をおこなった。
【0056】
(2)ナノワイヤーの平均長
(1)と同様に十分に真空乾燥したナノワイヤーをSEMにて2000倍で撮影した。任意の100本のナノワイヤー長さを計測し、平均値を算出した。
【0057】
(3)ナノワイヤーの形状
ナノワイヤーをSEMにて10万倍で撮影し、形状を評価した。
ナノワイヤーが粒子連結形状を有する場合、以下の測定を行った。
ナノワイヤーの分散液を支持膜付きグリッド上で乾燥し、得られたナノワイヤーを、透過型電子顕微鏡にて10万~100万倍程度でナノワイヤーを撮影し、ナノワイヤー1本における直径の最大値、最小値を任意の100本について計測した。それらの値の平均値からナノワイヤーのA値、B値およびA/B値を算出した。
【0058】
(4)耐熱性
成型したシートを2cm×2cmに切り出し、200℃に加熱したオーブンに5分間静置した。
静置後、形状を観察し、以下の基準で評価した。
○:形状を保っていた。
×:形状を保つことができなかった。
【0059】
(5)可撓性
成型したシートを2cm×10cmに切り出し、10cm方向の5cmのところで、90°方向に折り曲げた。
折り曲げた状態で折り曲げ部を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:割れが生じていなかった。
×:割れが生じていた。
【0060】
(6)透過減衰量(遮蔽性)
成型したシートを2cm×2cmに切り出し、THz-TDS(テラヘルツ時間領域分光法)で透過減衰量を測定した。
測定結果から287.5~312.5GHzの帯域の透過減衰量の絶対値の最小値を最低透過減衰量とした。
最低透過減衰量を、以下の基準で評価した。
◎◎:100dB/mm以上(最良);
◎:50dB/mm以上、100dB/mm未満(優良);
○:20dB/mm以上、50dB/未満(良);
×:20dB/mm未満(実用上問題あり)。
【0061】
(7)反射率(耐反射性)
成型したシートを2cm×2cmに切り出し、THz-TDSで測定した。ブランクとして金薄膜を使用し、その反射率を100%とした。
測定結果から287.5~312.5GHzの帯域の最高値を最高反射率とした。
最高反射率を、以下の基準で評価した。
◎◎:20%未満(最良);
◎:20%以上、30%未満(優良);
○:30%以上、50%未満(良);
×:50%以上(実用上問題あり)。
【0062】
B.原料
B-1.ナノワイヤーまたは粒子
(1)Fe20NW
塩化ニッケル六水和物9.21質量部(38.4モル部)、クエン酸三ナトリウム二水和物0.100質量部(0.340モル部)をエチレングリコールに溶解し、400質量部に調製した。
水酸化ナトリウム1.50質量部(37.5モル部)をエチレングリコールに溶解し、410質量部に調製した。
塩化鉄(II)四水和物2.22質量部(11.2モル部)をエチレングリコールに溶解し、100質量部に調製した。
3つの液を混合し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、28%アンモニア水75.0質量部(1230モル部)、ヒドラジン一水和物15.0質量部(300モル部)の順で添加し、90~95℃で45分間加熱した。
その後、磁場の印加を停止し、生じた黒色の固体をT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、24時間真空乾燥してナノワイヤーを得た。
【0063】
(2)Fe80NW
塩化鉄(II)四水和物26.0質量部(131モル部)、塩化ニッケル六水和物7.78質量部(32.7モル部)を水1556.22質量部に溶解し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、窒素ガスのバブリングを開始した。バブリング開始から10分経過後、水素化ホウ素ナトリウム12.4質量部(327モル部)を水に溶解した水溶液310質量部の滴下を開始した。15分かけて室温で滴下後、さらに10分間静置した。
その後、磁場の印加と窒素ガスのバブリングを停止し、反応液を1000質量部の水に注いで希釈した。生じた黒色の固体をT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、24時間真空乾燥してナノワイヤーを得た。
【0064】
(3)FeNW
塩化鉄(II)四水和物34.2質量部(172モル部)を水1195.8質量部に溶解し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、窒素ガスのバブリングを開始した。バブリング開始から10分経過後、水素化ホウ素ナトリウム28.0質量部(740モル部)を水に溶解した水溶液730質量部の滴下を開始した。15分かけて室温で滴下後、さらに10分間静置した。
その後、磁場の印加と窒素ガスのバブリングを停止し、反応液を1000質量部の水に注いで希釈した。磁場の印加と窒素ガスのバブリングを停止し、生じた黒色の固体をT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、24時間真空乾燥してナノワイヤーを得た。
【0065】
(4)NiNW
塩化ニッケル六水和物10.0質量部(42.1モル部)、クエン酸三ナトリウム二水和物0.935質量部(3.18モル部)をエチレングリコールに溶解し、500質量部に調製した。
水酸化ナトリウム2.50質量部(62.5モル部)をエチレングリコールに溶解し、442質量部に調製した。
2つの液を混合し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、28%アンモニア水55.0質量部(904モル部)、ヒドラジン一水和物2.50質量部(49.9モル部)の順で添加し、90~95℃で15分間加熱した。
その後、磁場の印加を停止し、生じた黒色の固体をT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、24時間真空乾燥してナノワイヤーを得た。
【0066】
(5)AgNW
Sigma-Aldrich社製Agナノワイヤー分散液から、T100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収し、続いて、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、24時間真空乾燥してナノワイヤーを得た。
【0067】
(6)NiP
Sigma-Aldrich社製Ni粒子(直径1μm以下)
【0068】
用いるナノワイヤーおよび粒子の特性値を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1中、NiPの平均長は粒子の最大長である。
NiPのアスペクト比は粒子の最大長/最小長である。
なお、粒子の最大長および最小長は、SEM画像において粒子の重心を通る直径についての最大長および最小長である。重心とは、等質の材料(例えば、紙)を当該粒子の輪郭で切り取り、均衡をとって点で支えたときの当該点である。
【0071】
B-2.バインダー
(1)シリコーン混合樹脂
モメンティブ社TSE3450/モメンティブ社TSE3450=10/1(質量比率)で混合した樹脂
(2)エポキシ樹脂
DIC社EXA-4850-150/トリエチレンテトラミン=12/1(質量比率)で混合した樹脂
(3)フッ素樹脂
AGC社EA-2000。本発明ではトルエンに懸濁したものを使用
【0072】
実施例1
Fe20NW 65.0質量部と、シリコーン混合樹脂35.0質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.5mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0073】
実施例2
Fe20NW 3.00質量部と、シリコーン混合樹脂7.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機(ノダ社製、RC-2000)にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0074】
実施例3
Fe20NW 1.00質量部と、シリコーン混合樹脂9.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.7mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0075】
実施例4
Fe20NW 0.500質量部と、シリコーン混合樹脂9.50質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0076】
実施例5
Fe20NW 0.100質量部と、シリコーン混合樹脂9.90質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0077】
実施例6
Fe80NW 3.00質量部と、シリコーン混合樹脂7.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0078】
実施例7
Fe80NW 1.00質量部と、シリコーン混合樹脂9.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み1.8mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0079】
実施例8
FeNW 1.00質量部と、シリコーン混合樹脂9.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み1.6mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0080】
実施例9
NiNW 1.00質量部と、シリコーン混合樹脂9.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み1.6mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0081】
実施例10
AgNW 3.00質量部と、シリコーン混合樹脂7.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0082】
実施例11
Fe20NW 3.00質量部と、エポキシ樹脂7.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0083】
実施例12
AgNW 3.00質量部と、エポキシ樹脂7.00質量部を混合し、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0084】
実施例13
Fe20NW 3.00質量部と、フッ素樹脂7.00質量部を混合し、10cm×10cmの金型で乾燥(トルエン除去)、350℃で熱キュアを行い、厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0085】
実施例14
Fe20NW 1.00質量部と、フッ素樹脂9.00質量部を混合し、10cm×10cmの金型で乾燥(トルエン除去)、350℃で熱キュアを行い、厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0086】
実施例15
NiNW 3.00質量部と、フッ素樹脂7.00質量部を混合し、10cm×10cmの金型で乾燥(トルエン除去)、350℃で熱キュアを行い、厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0087】
実施例16
NiNW 1.00質量部と、フッ素樹脂9.00質量部を混合し、10cm×10cmの金型で乾燥(トルエン除去)、350℃で熱キュアを行い、厚み0.4mmのシート(遮蔽材料)を作製した。
【0088】
比較例1
シリコーン混合樹脂を、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.6mmのシートを作製した。
【0089】
比較例2
NiP1.00質量部とシリコーン混合樹脂9.00質量部を、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.6mmのシートを作製した。
【0090】
比較例3
NiP3.00質量部とシリコーン混合樹脂7.00質量部を、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシートを作製した。
【0091】
比較例4
NiP8.00質量部とシリコーン樹脂2.00質量部を、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシートを作製した。
【0092】
比較例5
NiP3.00質量部とエポキシ樹脂7.00質量部を、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシートを作製した。
【0093】
比較例6
NiP8.00質量部とエポキシ樹脂2.00質量部を、卓上ハンドプレス機にて成型し12cm×12cm×厚み0.4mmのシートを作製した。
【0094】
得られたシートの構成および評価を表2および表3に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
実施例1~16のシート(遮蔽材料)は、ナノワイヤーとバインダーを含んだ遮蔽材料であったため、テラヘルツ波の減衰性(すなわち遮蔽性)いずれにも優れていた。また、ナノワイヤーの添加量が低くても遮蔽性能が高いため、材料としての可撓性および耐熱性にも優れていた。
さらに、実施例1~9,11および13~16のシート(遮蔽材料)は、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群より選ばれた金属を主成分とするナノワイヤーを用いたため、反射率が低く、テラヘルツ波を成型体内部でより十分に減衰することができた。
【0099】
比較例1~5のシートは、ナノワイヤーを含んでいなかったため、テラヘルツ波減衰性が不良であった。
比較例4および6はテラヘルツ波を遮蔽するために、Ni粒子の添加量を増やしたため、可撓性に乏しくなり、さらに添加量が多いため、反射率が高い材料となった。
【0100】
実施例1~3,6~9,11および13~16と、実施例4~5,10および12との比較より、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、以下の条件(A1)および(A2)を満たすことにより、より優れた遮蔽性および耐反射性(いずれも「優良」レベル以上)を有することが明らかである:
(A1)ナノワイヤーが鉄またはニッケルを主成分とするナノワイヤーである;
(A2)ナノワイヤーの含有量が8質量%以上、67質量%未満である。
【0101】
実施例6と、実施例1~5,7~12および13~16との比較より、本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、以下の条件(B1)および(B2)を満たすことにより、より一層、優れた遮蔽性および耐反射性(いずれも「最良」レベル)を有することが明らかである:
(B1)ナノワイヤーが鉄を主成分とするナノワイヤーである;
(B2)ナノワイヤーの含有量が20~50質量%である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のテラヘルツ波遮蔽材料は、耐熱性、可撓性ならびにテラヘルツ波に対する遮蔽性および耐反射性のうちの少なくとも1つの特性(好ましくは全ての特性)が要求される、あらゆる用途に有用である。そのような用途として、例えば、無線通信のアンテナユニット;センシングユニット;高周波向けの磁界シールド;電磁波吸収材が挙げられる。
図1
図2