(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ドレープ
(51)【国際特許分類】
A61B 46/10 20160101AFI20231108BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20231108BHJP
【FI】
A61B46/10
A61B34/30
(21)【出願番号】P 2023523046
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2021045105
(87)【国際公開番号】W WO2023105675
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-04-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】森田 直也
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-500606(JP,A)
【文献】国際公開第2021/199413(WO,A1)
【文献】特開2021-171345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202009(US,A1)
【文献】国際公開第2018/235151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 46/10
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ロボットを覆うドレープであって、
前記医療用ロボットの接続部に装着されるアタッチメントと、
前記アタッチメントと分離不能に設けられ、可撓性を有し、前記医療用ロボットを覆うシートと、
前記アタッチメントに設けられ、前記シートが前記アタッチメントと前記接続部との間に挟まれることを防ぐ挟み込み防止部と、
を備え
、
前記挟み込み防止部の外面の少なくとも一部に第1付着層が設けられ、前記シートと前記挟み込み防止部とは、前記第1付着層により分離不能に付着し、
前記シートにおける前記第1付着層が付着した側とは反対側に設けられる第2付着層を有し、前記シートは、前記第1付着層と前記第2付着層とに挟まれた挟持部分を有し、
前記第2付着層における前記シートに対向する側と反対側に前記アタッチメントが位置することを特徴とするドレープ。
【請求項2】
医療用ロボットを覆うドレープであって、
前記医療用ロボットの接続部に装着されるアタッチメントと、
前記アタッチメントと分離不能に設けられ、可撓性を有し、前記医療用ロボットを覆うシートと、
前記アタッチメントに設けられ、前記シートが前記アタッチメントと前記接続部との間に挟まれることを防ぐ挟み込み防止部と、
を備え、
前記挟み込み防止部の外面の少なくとも一部に第1付着層が設けられ、前記シートと前記挟み込み防止部とは、前記第1付着層により分離不能に付着し、
前記シートにおける前記第1付着層が付着した側とは反対側に設けられる第2付着層を有し、前記シートは、前記第1付着層と前記第2付着層とに挟まれた挟持部分を有し、
前記第2付着層における前記シートに対向する側と反対側には、前記第2付着層を保護するカバーフィルムが設けられることを特徴とするドレープ。
【請求項3】
前記挟み込み防止部は前記アタッチメントの外面から外方に延出した延出部分を有する板状体を備え、前記第1付着層は、前記板状体の一方の主面に設けられ、前記板状体の延出部分の端部まで延在する、
請求項1または請求項2に記載のドレープ。
【請求項4】
前記挟持部分は、前記シートの折り返し部分を含む、
請求項2に記載のドレープ。
【請求項5】
医療用ロボットを覆うドレープであって、
前記医療用ロボットの接続部に装着されるアタッチメントと、
前記アタッチメントと分離不能に設けられ、可撓性を有し、前記医療用ロボットを覆うシートと、
前記アタッチメントに設けられ、前記シートが前記アタッチメントと前記接続部との間に挟まれることを防ぐ挟み込み防止部と、
を備え、
前記アタッチメントは、患者への挿入部材を保持する前記医療用ロボットと前記挿入部材との間に配置されて前記挿入部材と前記医療用ロボットとを分離するとともに、前記挿入部材に設けられた可動部に前記医療用ロボットが備える動力伝達部からの進退方向の動力を伝達するセパレータを有し、
前記セパレータは、
前記動力伝達部に係合する第1係合部と、前記挿入部材の前記可動部に係合する第2係合部とを有して、前記動力伝達部から受けた前記動力を前記可動部に伝えるスライダと、
前記スライダの一部を挿通させる貫通孔を有し前記医療用ロボットに対して脱着可能に装着されるセパレータ本体と、を備え、
前記挟み込み防止部の前記セパレータ本体が対向する側に設けられた第1付着層と、前記セパレータ本体の前記挟み込み防止部が対向する側に設けられた第2付着層とを有し、
前記シートは、前記第1付着層と前記第2付着層とに挟まれた挟持部分を有する
ことを特徴とするドレープ。
【請求項6】
前記挟み込み防止部は開口部を有し、
前記シートは、前記開口部を覆わないように前記第1付着層に付着する、
請求項5に記載のドレープ。
【請求項7】
医療用ロボットを覆うドレープであって、
前記医療用ロボットの接続部に装着されるアタッチメントと、
前記アタッチメントと分離不能に設けられ、可撓性を有し、前記医療用ロボットを覆うシートと、
前記アタッチメントに設けられ、前記シートが前記アタッチメントと前記接続部との間に挟まれることを防ぐ挟み込み防止部と、
を備え、
前記アタッチメントは、患者への挿入部材を保持する前記医療用ロボットと前記挿入部材との間に配置されて前記挿入部材と前記医療用ロボットとを分離するとともに、前記挿入部材に設けられた可動部に前記医療用ロボットが備える動力伝達部からの進退方向の動力を伝達するセパレータを有し、
前記セパレータは、
前記動力伝達部に係合する第1係合部と、前記挿入部材の前記可動部に係合する第2係合部とを有して、前記動力伝達部から受けた前記動力を前記可動部に伝えるスライダと、
前記スライダの一部を挿通させる貫通孔を有し前記医療用ロボットに対して脱着可能に装着されるセパレータ本体と、を備え、
前記挟み込み防止部は板状体からなり、
前記板状体のうち、前記スライダの周囲に位置する部分は、当該部分を法線方向からみたときに、前記セパレータ本体よりも前記板状体の主面内方向に突出する部分を有しない
ことを特徴とするドレープ。
【請求項8】
前記挟み込み防止部の可撓性は、前記アタッチメントよりも高く、前記シートよりも低い、
請求項1、請求項2および請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のドレープ。
【請求項9】
前記挟み込み防止部は、透光性を有する、
請求項1、請求項2および請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のドレープ。
【請求項10】
前記挟み込み防止部は、前記アタッチメントの外面から外方に延出した延出部分を有する板状体を備える、
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のドレープ。
【請求項11】
前記板状体は、前記延出部分の端部を含む領域において、前記シートに分離不能に付着している、
請求項10に記載のドレープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ロボットと術具とを分離するドレープに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ロボットを用いた手術は、術者の負担軽減のみならず、高精度かつ安定した処置による患者への負担軽減や遠隔医療の可能性を高める技術として注目されている。患者に直接的に接触する術具は、一般的には、繰り返し使用を考慮し、滅菌可能な構成としているが、術具を動かす機構が設けられた医療用ロボット側は構成される電気電子部品に滅菌耐性がないため、滅菌されていないのが一般的である。そこで、医療用ロボットを用いた手術では、軟質で可撓性を有するシートを備えるドレープで医療用ロボット側を覆い、ドレープに覆われた内部(非清潔領域)とドレープから露出する術具が位置する領域(清潔領域)とを分離して、清潔領域および非清潔領域のそれぞれの環境を維持するようにしている。
【0003】
特許文献1には、外科用器具に駆動を提供するための駆動装置を備える外科用ロボットアームを覆うための外科用ロボットドレープが開示される。このドレープは、ロボットアームを覆ってその上に無菌境界を画定するためのカバーと、カバーに取り付けられたインターフェースエレメントと、を備える。
【0004】
また、特許文献2には、外科用ロボットの一部を覆うための外科用ロボットドレープが開示される。このドレープは、外科用ロボットの駆動装置を覆ってその上に無菌境界を画定するカバーと、複数のインターフェースエレメントと、を含んで構成される。
【0005】
また、特許文献3には、挿入部材の回転操作があった場合に、回転部材、固定部材、保持体、アーム部などを覆うドレープが破れる可能性を低減することができ、清潔領域と非清潔領域の分離を確実に維持することができるベアリング構造が開示される。
【0006】
また、特許文献4には、手術ロボットのジョイントを覆う手術ロボット用ドレープが開示される。このドレープは、ロボットのジョイントよりも基端側にある部位を覆う無菌バリアを形成し且つ当該部位と共に回転するように固定された基端側ドレープ材部と、ロボットのジョイントよりも先端側にある部位上に無菌バリアを形成し且つ当該部位と共に回転するように固定された先端側ドレープ材部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2018-515212号公報
【文献】特表2018-515213号公報
【文献】特許第6806407号公報
【文献】特表2021-511876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような清潔領域と非清潔領域とを分離するドレープには、医療用ロボットの駆動機構の動作を術具が設けられた部材に伝達するアタッチメントが設けられている場合がある。使用の際に、アタッチメントはロボットの所定の位置に取り付けられるが、この取り付けの際に、アタッチメントに連続する可撓性のシートがアタッチメントとロボットとの間に挟み込まれることが懸念される。このような挟み込みが生じると、アタッチメントの固定不良やドレープのシートの破損原因になる。
【0009】
本発明は、ドレープを医療用ロボットに取り付ける際にドレープのシートの挟み込みを回避して、アタッチメントの固定不良やドレープのシートの破損を防止することができるドレープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、医療用ロボットを覆うドレープであって、医療用ロボットの接続部に装着されるアタッチメントと、アタッチメントと分離不能に設けられ、可撓性を有し、医療用ロボットを覆うシートと、アタッチメントに設けられ、シートがアタッチメントと接続部との間に挟まれることを防ぐ挟み込み防止部と、を備える。
【0011】
このような挟み込み防止部を備えることで、ドレープで医療用ロボットを覆う際、可撓性を有するシートがアタッチメントと接続部との間に挟まれることを防止することができる。
【0012】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部の可撓性は、アタッチメントよりも高く、シートよりも低いことが好ましい。このように、挟み込み防止部に適度な可撓性を持たせることで、シートがアタッチメントに近づき過ぎることを抑制することができる。
【0013】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部は、透光性を有することが好ましい。これにより、挟み込み防止部を介してアタッチメントと接続部との装着状況を参照することができる。
【0014】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部は、アタッチメントの外面から外方に延出した延出部分を有する板状体を備えることが好ましい。このような板状体によって、アタッチメントの外面から外方の領域でのシートの挟み込みを防止することができる。
【0015】
上記ドレープにおいて、板状体は、延出部分の端部を含む領域において、シートに分離不能に付着していることが好ましい。これにより、板状体とシートとの間で、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0016】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部の外面の少なくとも一部に第1付着層が設けられ、シートと挟み込み防止部とは、第1付着層により分離不能に付着することが好ましい。このように、シートと挟み込み防止部との間が第1付着層によって分離不能に付着していることで、シートと挟み込み防止部との間で、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0017】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部はアタッチメントの外面から外方に延出した延出部分を有する板状体を備え、第1付着層は、板状体の一方の主面に設けられ、板状体の延出部分の端部まで延在することが好ましい。これにより、第1付着層によるシートと板状体との付着が延出部分の端部まで行われ、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0018】
上記ドレープにおいて、シートにおける第1付着層が付着した側とは反対側に設けられる第2付着層を有し、シートは、第1付着層と第2付着層とに挟まれた挟持部分を有することが好ましい。このように、挟持部分によってシートが第1付着層と第2付着層との間で挟持されることで、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0019】
上記ドレープにおいて、第2付着層におけるシートに対向する側と反対側にアタッチメントが位置することが好ましい。これにより、第2付着層によってアタッチメントが接着され、アタッチメントとシートとの間で、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0020】
上記ドレープにおいて、第2付着層におけるシートに対向する側と反対側には、第2付着層を保護するカバーフィルムが設けられることが好ましい。これにより、シートをアタッチメントに接着する前の段階で第2付着層が意図しない箇所に付着してしまうことを防止することができる。
【0021】
上記ドレープにおいて、挟持部分は、シートの折り返し部分を含んでいてもよい。これにより、シートの折り返し部分を含めてシートが第1付着層と第2付着層との間で挟持され、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0022】
上記ドレープは、患者への挿入部材を脱着可能かつ回転可能に保持するホルダをアームの先に備える医療用ロボットを覆うものであって、アタッチメントは、ホルダが内部に挿通した状態で、アームに対して取り付けられるリング状の固定部材と、ホルダが内部に挿通した状態で、固定部材に対して摺動回転可能に取り付けられ、ホルダとともに回転可能な、リング状の回転部材とを備えるベアリング構造を有し、シートは、固定部材に装着され、アームを覆う第1シートと、回転部材に装着され、ホルダを覆い、回転部材とともに回転可能な第2シートとを備える。これにより、医療用ロボットのアームを覆う第1シートと、ホルダを覆い、回転可能な第2シートとを有するシートにおいて、ドレープを医療用ロボットに被せる際にシートの噛み込みを防止することができる。
【0023】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部は、固定部材の外周に設けられることが好ましい。これにより、医療用ロボットのアームの先に備えられるホルダに第1シートを被せる際、挟み込み防止部によって固定部材の外周でのシートの噛み込みを防止することができる。
【0024】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部は回転部材から離れる方向に延出する板状体からなることが好ましい。このような板状体によって、回転部材の周囲の領域でのシートの噛み込みを防止することができる。
【0025】
上記ドレープにおいて、回転部材は、その外周に、回転部材と第2シートとを分離不能に付着させる付着層が配置される凹部を有することが好ましい。このような凹部に付着層が配置されることで、回転部材と第2シートとの接着部分において、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0026】
上記ドレープにおいて、アタッチメントは、患者への挿入部材を保持する医療用ロボットと挿入部材との間に配置されて挿入部材と医療用ロボットとを分離するとともに、挿入部材に設けられた可動部に医療用ロボットが備える動力伝達部からの進退方向の動力を伝達するセパレータを有し、セパレータは、動力伝達部に係合する第1係合部と、挿入部材の可動部に係合する第2係合部とを有して、動力伝達部から受けた動力を可動部に伝えるスライダと、スライダの一部を挿通させる貫通孔を有し医療用ロボットに対して脱着可能に装着されるセパレータ本体と、を備える。このように、アタッチメントとしてセパレータを有する構成において、ドレープで医療用ロボットを覆う際、挟み込み防止部によって可撓性を有するシートがアタッチメントと接続部との間に挟まれることを防止することができる。
【0027】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部のセパレータ本体が対向する側に設けられた第1付着層と、セパレータ本体の挟み込み防止部が対向する側に設けられた第2付着層とを有し、シートは、第1付着層と第2付着層とに挟まれた挟持部分を有することが好ましい。このように、挟持部分によってシートが第1付着層と第2付着層との間で挟持されることで、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0028】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部は開口部を有し、シートは、開口部を覆わないように第1付着層に付着することが好ましい。これにより、挟み込み防止部の貫通孔を覆わないようにシートが付着される。
【0029】
上記ドレープにおいて、挟み込み防止部は板状体からなることが好ましい。これにより、板状体によってシートの挟み込みを防止することができる。
【0030】
上記ドレープにおいて、板状体のうち、スライダの周囲に位置する部分は、当該部分を法線方向からみたときに、セパレータ本体よりも板状体の主面内方向に突出する部分を有しないことが好ましい。これにより、板状体を必要以上に延出させずにシートの挟み込み防止効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ドレープを医療用ロボットに取り付ける際にドレープのシートの挟み込みを回避して、アタッチメントの固定不良やドレープの破損を防止することができるドレープを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】医療用ロボットの構成を例示する斜視図である。
【
図2】挿入部材の装着状態を例示する斜視図である。
【
図3】医療用ロボットの駆動部分を例示する平面図である。
【
図4】セパレータを介した接続構成を例示する断面図である。
【
図5】医療用ロボットのアーム先端側の概略構成を例示する分解斜視図である。
【
図6】ベアリング構造の構成を例示する分解斜視図である。
【
図7】(a)および(b)は、ドレープの構成を例示する図である。
【
図9】(a)および(b)は、挟み込み防止部を例示する模式断面図である。
【
図10】第2シートと回転部材との接続部分を例示する模式断面図である。
【
図11】第2シートの開口と挟み込み防止部とを例示する平面図である。
【
図12】第2シートとセパレータとの接着前の状態について例示する斜視図である。
【
図13】第2シートとセパレータとの接着後の状態について例示する斜視図である。
【
図14】第1シートと第2シートとの連結について例示する模式図である。
【
図15】第1シートの取り付け部分を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。また、各図には、基準座標としてX-Y-Z座標を示している。以下の説明において、Z1-Z2方向を上下方向、X1-X2方向を前後方向、Y1-Y2方向を左右方向と称する。X1-X2方向とY1-Y2方向は互いに垂直であり、これらを含むX-Y平面はZ1-Z2方向に垂直である。また、上側(Z1側)から下側(Z2側)を見た状態を平面視と言うことがある。
【0034】
(医療用ロボットの構成)
図1は、医療用ロボットの構成を例示する斜視図である。
図2は、挿入部材の装着状態を例示する斜視図である。
図3は、医療用ロボットの駆動部分を例示する平面図である。
図4は、セパレータを介した接続構成を例示する断面図である。
【0035】
図1に示すように、医療用ロボット500は、遠隔操作可能なマニピュレータであって向きや角度を変更可能なアーム部510を有する。アーム部510の先端にはホルダ21が設けられる。ホルダ21の前端からは、ホルダ21と、ホルダ21を覆うように配置されたアタッチメント20のセパレータ22とが前方へ延出している。医療用ロボット500による施術の対象となる患者の体内へ挿入される挿入部材100(
図2参照)は、セパレータ22によってホルダ21に対して脱着可能に装着される。挿入部材100は、アーム部510の向きや角度の変更にしたがって姿勢が変更される。挿入部材100としては、施術のために用いる処置具や、内視鏡が挙げられる。
【0036】
図2に示すように、挿入部材100は、本体110と、本体110から延在するシャフト120と、シャフト120の先端(本体110とは反対側の端部)に設けられる処置部130とを備える、処置部130は例えば鉗子である。なお、
図2では、挿入部材100にアタッチメント20のセパレータ22が装着された状態が示されているが、実際の施術時には、
図1に示されるように、医療用ロボット500のホルダ21にまずセパレータ22を装着し、装着状態のセパレータ22に挿入部材100が取り付けられる。
【0037】
医療用ロボット500に取り付けられる挿入部材100は滅菌処理されており、施術室側である清潔領域に配置される。一方、医療用ロボット500は挿入部材100ほど清潔ではない非清潔領域に配置される。このため、施術の際には医療用ロボット500にドレープ1のシート50(
図1の破線参照)を被せて清潔領域と非清潔領域とを区画する。ドレープ1も滅菌処理されている。
【0038】
ここで、ドレープ1は、セパレータ22を有するアタッチメント20と、可撓性を有するシート50と、を有する。シートはアタッチメント20と分離不能に設けられる。ドレープ1の詳細については後述する。
【0039】
図3に示すように、医療用ロボット500には、アクチュエータ部511と、制御部512と、が設けられている。アクチュエータ部511は、挿入部材100を動作させる駆動力を発生させるものである。アクチュエータ部511には、アタッチメント20に対して前後方向(X1-X2方向)の駆動力を伝達する動力伝達部550が接続されている。
【0040】
本実施形態では、アクチュエータ部511が空気などの気体や、流体を用いて駆動力を発生させるものである例に適用して説明する。なお、アクチュエータ部511としては、電動モータを用いたものであってもよく、その動力を発生させる形式を限定するものではない。また、アクチュエータ部511としては、ピストンおよびシリンダを用いた構成を有するものであってもよいし、その他の公知の流体から駆動力を発生させる構成を有するものであってもよく、その具体的な構成を限定するものではない。
【0041】
制御部512は、アクチュエータ部511における駆動力の発生を制御するものである。また、動力伝達部550(
図2参照)におけるX方向の移動や、動力伝達部550の配置位置を制御するものである。本実施形態では、アクチュエータ部511に対する空気などの気体の供給を制御部512が制御する例に適用して説明する。
【0042】
挿入部材100をホルダ21に取り付けるには、ホルダ21に取り付けられたセパレータ22に、挿入部材100の本体110を例えばY方向にスライドさせるようにして嵌め込む。
【0043】
本体110のセパレータ22への嵌め込みによって、動力伝達部550からの動力がセパレータ22のスライダ223を介して本体110に伝達可能となる。本体110内には、処置部130とワイヤ160で連結されて所定の動作(例えば前後方向の動作)が可能な可動部150が設けられ、動力伝達部550の動作(例えば前後方向の動作)がセパレータ22のスライダ223から挿入部材100の可動部150に伝わり、ワイヤ160を通じて処置部130を動作させる(例えば鉗子の開閉動作)ことができる。すなわち、セパレータ22は、挿入部材100に設けられた可動部150に医療用ロボット500が備える動力伝達部550からの進退方向の動力を伝達する。
【0044】
図4に示すように、セパレータ22は、セパレータ本体221と、スライダ223と、を有する。セパレータ本体221には、スライダ223の一部を挿通させる貫通孔20hが設けられ、医療用ロボット500に対して脱着可能に装着される。スライダ223はセパレータ本体221に対して前後方向(X1-X2方向)にスライド移動可能に設けられる。スライダ223は、動力伝達部550に係合する第1係合部11と、挿入部材100の可動部150に係合する第2係合部12とを有し、動力伝達部550から受けた動力を可動部150に伝える。
【0045】
セパレータ22の第1係合部11には動力伝達部550の突起部(動力側突起部550a)が嵌合する凹部11aが設けられる。セパレータ22をアーム部510のホルダ21に取り付けると、動力伝達部550の動力側突起部550aがスライダ223の第1係合部11の凹部11aに嵌め込まれる。これにより、動力伝達部550が進退動作した際の動力が第1係合部11に伝達され、スライダ223の前後動作が可能となる。
【0046】
また、第2係合部12には、挿入部材100の可動部150の突起部(挿入側突起部150a)が嵌合する凹部12aが設けられる。挿入部材100の本体110をセパレータ22に取り付けると、本体110の裏面から突出する挿入側突起部150aが第2係合部12の凹部12aに嵌め込まれる。これにより、スライダ223と挿入部材100の可動部150とが係合状態となり、動力伝達部550の前後動作がスライダ223から挿入部材100の可動部150に伝達可能となる。すなわち、動力伝達部550を前後動作させると、その動力がスライダ223から可動部150に伝えられ、可動部150の前後動作がワイヤ160に伝わり、ワイヤ160を介して処置部130を動作させることができる。
【0047】
(ドレープのベアリング構造)
図5は、医療用ロボットのアーム先端側の概略構成を例示する分解斜視図である。
図6は、ベアリング構造の構成を例示する分解斜視図である。
図5に示すように、ホルダ21とセパレータ22は、前方から後方へ順に配置された、スイッチユニット31、ベアリング構造40、および軸受部材32を介してアーム部510に取り付けられる。軸受部材32は、円環状のベアリングプレート33を介してアーム部510に固定される。ホルダ21はスイッチユニット31と一体に設けられる。このホルダ21にセパレータ22が着脱自在に取り付けられる。軸受部材32は、例えば、外輪がアーム部510に固定され、内輪が外輪に対して相対回転可能な転がり軸受である。
【0048】
図5と
図6に示すように、ベアリング構造40は、いずれもリング状の、回転部材41と、固定部材であるジョイント部材42と、ベース部材43とを備える。ホルダ21とセパレータ22とは、その後部が、ベアリング構造40の各部材の内部に挿通され、回転部材41と一体に設けられる。
【0049】
ジョイント部材42とベース部材43は、嵌合によって互いに脱着可能に取り付けられ、固定部材44を構成する。ベース部材43は、アーム部510に対して取り付けられる。回転部材41は、固定部材44のジョイント部材42に対して、周方向Cに沿って摺動可能に取り付けられる。
【0050】
ベース部材43は、ジョイント部材42との脱着に対する耐久性の点から金属で構成することが好ましく、例えばアルミニウムやジュラルミンが用いられる。
【0051】
ジョイント部材42および回転部材41は、摺動性や、滅菌に対する耐久性の点から樹脂材料で構成することが好ましく、例えばABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタールが好適である。
【0052】
回転部材41と固定部材44をこのような材料で構成することにより、摺動性を長期間確保することを可能とし、かつ、長期間に渡る摺動による損傷を低減することができる。
【0053】
ホルダ21、セパレータ22、スイッチユニット31、および回転部材41は、軸受部材32によって回転可能に支持され、不図示のモータの駆動にしたがって、前後方向(X1-X2方向)に沿った回転軸AXを中心として回転する。
【0054】
ドレープ1は、アタッチメント20を介してシート50の着脱が行われる。ベース部材43はアーム部510側に固定され、ジョイント部材42から先端側の部材(回転部材41およびセパレータ22)はベース部材43に対して着脱可能となっている。したがって、本実施形態では、アタッチメント20にセパレータ22、回転部材41およびジョイント部材42が含まれる構成であってもよい。
【0055】
(ドレープの構成)
次に、ドレープ1の詳細について説明する。
図7(a)および(b)は、ドレープの構成を例示する図である。
図7(a)にはドレープ1を取り付ける前の状態を示す側面図が表され、
図7(b)にはドレープ1をホルダ21およびアーム部510側に取り付けた状態を示す側面図が表される。
図7(a)および(b)に示すように、施術の際、医療用ロボット500は複数の開口部を有する筒状の概形を有するドレープ1で覆われる。医療用ロボット500がドレープ1で覆われた状態であっても、挿入部材100をホルダ21に脱着できるとともに、挿入部材100が装着されたホルダ21を回転させることができる。
【0056】
本実施形態に係るドレープ1は、アタッチメント20と、シート50と、挟み込み防止部70と、を備える。アタッチメント20は、先に説明したセパレータ22を有する。すなわち、セパレータ22は、医療用ロボット500と挿入部材100との間に配置されて挿入部材100と医療用ロボット500とを分離するとともに、挿入部材100に設けられた可動部150(
図2参照)に医療用ロボット500が備える動力伝達部550からの前後方向の動力を伝達する役目を果たす。
【0057】
シート50は、ベアリング構造40のジョイント部材42に固定される第1シート51と、ベアリング構造40の回転部材41に沿うように固定される第2シート52とを有する。
【0058】
具体的には、ジョイント部材42の後側の外周面142dに沿うように筒状の第1シート51の前方(X1-X2方向X1側)の開口部である第1開口部51aが固定される。第1シート51は、ジョイント部材42から後方へ延び、アーム部510を備えた手術用ロボットを覆う。
【0059】
ここで、固定部材44(
図5参照)が、アーム部510に固定されたベース部材43と、ベース部材43に脱着可能なジョイント部材42と、の2部品で構成されるため、ジョイント部材42に第1シート51を装着することで、第1シート51をアーム部510に対して容易に着脱可能となる。
【0060】
セパレータ22には、その前端部22aから後端部22bにかけて、筒状の第2シート52の前方開口部52aが固定されるように連設される。これにより、セパレータ22と第2シート52が一体化され、セパレータ22の下面が第2シート52内に配置される。
【0061】
一方、第2シート52の後方開口部52bは、回転部材41の外周面141に沿うように固定される。
【0062】
以上のように第2シート52を装着した状態から、アーム部510に対して、セパレータ22および回転部材41を取り付ける。このとき、回転部材41内にホルダ21とスイッチユニット31が挿通され、さらに、ホルダ21の上面21b上にセパレータ22が取り付けられる。この工程により、
図7(b)に示すように、ホルダ21は、セパレータ22の前端部22aよりも前側に位置する前端部21aから、前面および下面が第2シート52によって覆われるとともに、上面21bがセパレータ22によって覆われる。第2シート52は、固定部材44に対して回転部材41が相対回転したときに、回転部材41、セパレータ22、およびホルダ21と一体となって回転する。
【0063】
(挟み込み防止部)
挟み込み防止部70はアタッチメント20と分離不能に設けられ、可撓性を有している。上記のように、医療用ロボット500をドレープ1で覆う際、可撓性を有するシート50がアタッチメント20と接続部との間に挟まれやすい。本実施形態に係る挟み込み防止部70は、医療用ロボット500をドレープ1で覆う際、可撓性を有するシート50がアタッチメント20と接続部との間に挟まれることを効果的に防止する。
【0064】
図8は、挟み込み防止部を例示する斜視図である。
図9(a)および(b)は、挟み込み防止部を例示する模式断面図である。
図9(a)には
図8のA部をY1向きにみた断面図が示され、
図9(b)には
図8のB部をX2向きにみた断面図が示される。
【0065】
挟み込み防止部70は、アーム部510とドレープ1との接続部分と対応する位置に設けられる。本実施形態では、第1シート51が接続されるジョイント部材42に第1挟み込み防止部71が設けられる。また、本実施形態では、第2シート52が接続されるセパレータ22に第2挟み込み防止部72が設けられる。
【0066】
すなわち、第1シート51をアーム部510に被せる際、第1シート51が接続されたジョイント部材42をベース部材43に嵌合させる。この際の第1シート51がジョイント部材42とベース部材43との間に挟み込まれることを第1挟み込み防止部71によって防止する。また、第2シート52をホルダ21に被せてセパレータ22をホルダ21に装着する際、第2シート52がセパレータ22とホルダ21との間、および第2シート52がセパレータ22とスイッチユニット31との間に挟み込まれることを第2挟み込み防止部72によって防止する。
【0067】
第1挟み込み防止部71および第2挟み込み防止部72は両方設けられていることが望ましいが、いずれか一方であってもよい。
【0068】
(第2挟み込み防止部)
第2挟み込み防止部72は、セパレータ22の外面から外方に延出する延出部分を有する板状体721を備えている。例えば、セパレータ22はホルダ21と当接するセパレータ本体221と、セパレータ本体221の後端側においてセパレータ本体221から立ち上がるように設けられた立設部分222とを有する。第2挟み込み防止部72は、このセパレータ本体221から外方に延出する第1板状体7211と、立設部分222から外方に延出する第2板状体7212とを有する。
【0069】
板状体721の材料は、例えばPET(polyethylene terephthalate)である。平板状の板状体721の一部を折り曲げることで、セパレータ本体221に対向する第1板状体7211と、立設部分222に対向する第2板状体7212とが構成される。第2挟み込み防止部72の可撓性は、アタッチメント20よりも高く、シート50(第2シート52)よりも低い。このように、第1板状体7211がセパレータ本体221の縁から外方へ延出し、第2板状体7212が立設部分222の縁から外方へ延出することで、第1板状体7211および第2板状体7212の延出部分が羽根のような支えとなり、第2シート52のセパレータ22への接近を抑制する。
【0070】
したがって、シート50を医療用ロボット500に被せた状態でセパレータ22をホルダ21に装着する際、柔らかい第2シート52がセパレータ22の縁に接近したり、セパレータ22とホルダ21との間やセパレータ22とスイッチユニット31との間に挟み込まれたりすることを抑制できる。
【0071】
すなわち、第1板状体7211は、セパレータ22をホルダ21に装着する際、第2シート52のセパレータ本体221の縁への接近を抑制し、第2シート52がセパレータ本体221とホルダ21との間に挟み込まれることを防止する。
【0072】
また、第2板状体7212は、セパレータ22をスイッチユニット31と連結する際、第2シート52の立設部分222の縁への接近を抑制し、第2シート52が立設部分222とスイッチユニット31との間に挟み込まれることを防止する。さらに、セパレータ22をスイッチユニット31に連結した状態では、第2板状体7212は回転部材41から離れる方向に延出することから、ホルダ21およびアタッチメント20が回転する際、回転部材41の周囲の領域での第2シート52の噛み込みを防止することができる。
【0073】
第2挟み込み防止部72の少なくとも板状体721の延出部分は透光性を有することが好ましい。これにより、セパレータ22をホルダ21に装着する際、透光性を有する第2挟み込み防止部72を介して装着状況を参照しやすくなる。
【0074】
図9(a)および(b)に示すように、板状体721は、延出部分の端部を含む領域において第2シート52に分離不能に付着している。本実施形態では、板状体721は第2シート52と第1付着層81によって付着される。第1付着層81は例えば両面テープである。第1付着層81は、第2挟み込み防止部72の板状体721における外面の少なくとも一部に設けられる。この第1付着層81によって第2シート52と第2挟み込み防止部72とが分離不能に付着していることで、第2シート52と第2挟み込み防止部72との間で、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0075】
ここで、第1付着層81は、板状体721の一方の主面に設けられ、板状体721の延出部分の内側の端部まで延在していることが望ましい。これにより、第1付着層81による第2シート52と板状体721との付着が延出部分の端部まで行われ、清潔領域と非清潔領域との分離をより確実に行うことができる。
【0076】
また、第2シート52の第1付着層81に付着した部分の少なくとも一部を覆うように第2付着層82が設けられる。すなわち、第2付着層82は、第2シート52における第1付着層81が設けられた側とは反対側に設けられる。第2付着層82は例えば両面テープである。これにより、第2シート52は、第1付着層81と第2付着層82との間に挟持される挟持部分521(
図9(b)参照)を有する。そして、第2シート52は挟持部分521において第2付着層82によりアタッチメント20のセパレータ22に付着される。
【0077】
つまり、第2付着層82における第2シート52と対向する側と反対側にアタッチメント20のセパレータ22が接着される。これにより、挟持部分521によって第2シート52が第1付着層81と第2付着層82との間で挟持されることで、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0078】
この挟持部分521は、第2シート52の折り返し部分を含んでいてもよい。第2シート52はセパレータ22のセパレータ本体221から立設部分222にかけて折り返し部分を有する。挟持部分521は、立設部分222と対向する第2シート52の折り返し部分にも設けられていることが好ましい。これにより、第2シート52の折り返し部分を含めて第2シート52が第1付着層81と第2付着層82との間で挟持され、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0079】
また、
図9(b)に示すように、板状体721のうち、セパレータ22のスライダ223(
図4参照)の周囲に位置する部分は、この部分の法線方向(Z1-Z2方向、Z2向き)にみたときに、セパレータ本体221よりも板状体721の主面内方向(XY面内方向)に突出する部分を有しないことが好ましい。
【0080】
すなわち、セパレータ本体221の下面221b(ホルダ21との接触面)は、セパレータ本体221の上面221a(ホルダ21との接触面とは反対側の面)よりも狭く設けられる。板状体721は、セパレータ本体221の下面221bの縁よりも外方に延出しているが、セパレータ本体221の上面221aの縁よりも外方には延出していない。したがって、セパレータ22をZ1-Z2方向のZ2向きにみたとき、板状体721はセパレータ本体221に隠れて見えない。一方、セパレータ22をZ1-Z2方向のZ1向きにみたとき、板状体721はセパレータ本体221の下面221bよりも外方に延出している状態となる。これにより、板状体721を必要以上に延出させずに第2シート52の挟み込み防止効果を得ることができる。
【0081】
図10は、第2シートと回転部材との接続部分を例示する模式断面図である。
図10には、
図8のC部をY1向きにみた断面図が示される。
図10に示すように、第2シート52の端部はベアリング構造40の回転部材41の外周面141に設けられた凹部41bに両面テープ91によって接続される。凹部41bは回転部材41の周方向全体に設けられる。したがって、第2シート52の端部は回転部材41の凹部41bの周方向全体に両面テープ91によって接続される。また、第2シート52の端部は上から押さえ用のテープ92によって固定される。これにより、第2シート52と回転部材41との間は隙間なく接続され、清潔領域と非清潔領域との分離を確実に行うことができる。
【0082】
図11は、第2シートの開口と挟み込み防止部とを例示する平面図である。
図11には、第2シート52にセパレータ22を付着する前の状態が示される。
袋状の第2シート52の表面側の中央部分には前方開口部52aが設けられ、この前方開口部52aに被せるようにセパレータ22が取り付けられる。第2挟み込み防止部72は、前方開口部52aの縁から外方に延出する形状の板状体721を有する。第2挟み込み防止部72は第2シート52の袋の内側に付着している。すなわち、第2挟み込み防止部72は開口部72aを有し、開口部72aと前方開口部52aとを合わせるようにして第2シート52の袋の内側に第1付着層81によって付着している。これにより、第2シート52が第2挟み込み防止部72の開口部72aを覆わないように第2シート52と第2挟み込み防止部72とが接続される。また、第2シート52の袋の外側には、第2シート52の前方開口部52aを縁取るように第2付着層82が付着している。この第2付着層82によってセパレータ22が第2シート52の前方開口部52aの上に取り付けられる。
【0083】
第2付着層82によってセパレータ22を取り付ける前の状態では、第2付着層82における第2シート52と対向する側と反対側には、第2付着層82を保護するカバーフィルム821が設けられていることが好ましい。これにより、セパレータ22と第2シート52とを接着する前の段階で第2付着層82が意図しない箇所に付着してしまうことを防止することができる。
【0084】
図12は、第2シートとセパレータとの接着前の状態について例示する斜視図である。第2シート52にセパレータ22を接着するには、第2挟み込み防止部72を第2シート52の袋内に付着した状態で、第2挟み込み防止部72の後端側の一部を略垂直に折り曲げる。第2挟み込み防止部72はPETによって形成されているため、PETの折り曲げの癖によって第2挟み込み防止部72の折り曲げ形状が維持される。この折り曲げ部分は、セパレータ22の立設部分222と対向することになる。
【0085】
この状態で第2付着層82のカバーフィルム821を剥がし、第2付着層82によってセパレータ22を第2シート52に付着する。これにより、第2シート52の前方開口部52aの位置にセパレータ22が取り付けられる。
【0086】
図13は、第2シートとセパレータとの接着後の状態について例示する斜視図である。
第2シート52にセパレータ22が取り付けられた状態では、可撓性を有する第2シート52が第2挟み込み防止部72によって支えられ、セパレータ22の裏側へ巻き込まれにくくなっている。
【0087】
第2シート52の後方開口部52bにはリング状の回転部材41が取り付けられる。袋状の第2シート52の表面側の前方開口部52aの位置においては、袋の内外の間にセパレータ22が配置され、袋の内側からセパレータ22を介して袋の外側に医療用ロボット500からの動作を伝えることができる。
【0088】
図14は、第1シートと第2シートとの連結について例示する模式図である。
第2シート52の後方開口部52bに取り付けられた回転部材41は、第1シート51のジョイント部材42と連結される。先に説明したように、回転部材41はジョイント部材42に対して回転自在に連結される。これにより、第1シート51と第2シート52とが一体になっていても第2シート52側は回転自在になっており、医療用ロボット500のアーム部510の先端に設けられたホルダ21部分が回転した場合、セパレータ22とともに第2シート52も回転して、ドレープ1の捩れの発生を防止できる。
【0089】
(第1挟み込み防止部)
図15は、第1シートの取り付け部分を例示する斜視図である。
第1シート51の第1開口部51aはジョイント部材42の外周面142dに沿うように固定される。第1シート51とジョイント部材42の外周面142dとの間には第1挟み込み防止部71が設けられる。
【0090】
第1挟み込み防止部71は、ジョイント部材42の外周面142dに沿って設けられ、後方に延出するように(略筒状に)設けられる。これにより、医療用ロボット500のアーム部510の先に備えられるホルダ21に第1シート51を被せる際、第1挟み込み防止部71によってジョイント部材42の外周での第1シート51の噛み込みを防止することができる。
【0091】
すなわち、第1シート51はアーム部510を覆う大きさに設けられているため、ジョイント部材42から後方に大きく袋状に設けられる。この袋状の第1シート51をアーム部510に被せた状態でジョイント部材42をベース部材43に嵌合させる。この際、ジョイント部材42とベース部材43との間に第1シート51を噛み込みやすい。本実施形態では、ジョイント部材42に第1挟み込み防止部71が設けられているため、ジョイント部材42とベース部材43との間が第1挟み込み防止部71でカバーされ、第1シート51がジョイント部材42とベース部材43との間に挟み込まれることを抑制することができる。
【0092】
ここで、第1挟み込み防止部71の可撓性は、ジョイント部材42よりも高く、シート50(第1シート51)よりも低い。これにより、第1挟み込み防止部71の延出部分が支えとなり、第1シート51のジョイント部材42への接近を抑制する。したがって、シート50を医療用ロボット500に被せた状態でジョイント部材42をベース部材43に嵌合させる際、柔らかい第1シート51がジョイント部材42の縁に接近したり、ジョイント部材42とベース部材43との間に挟み込まれたりすることを抑制できる。
【0093】
また、第1挟み込み防止部71の少なくとも延出部分は透光性を有することが好ましい。これにより、ジョイント部材42をベース部材43に嵌合させる際、透光性を有する第1挟み込み防止部71を介して嵌合状況を参照しやすくなる。
【0094】
このように、本実施形態によれば、清潔領域と不潔領域とを十分に分離できるとともに、ドレープ1を医療用ロボット500に取り付ける際にドレープ1のシート50の挟み込みを回避して、アタッチメント20の固定不良やドレープ1の破損を防止することができる。
【0095】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。例えば、挿入部材100は内視鏡の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…ドレープ
11…第1係合部
11a…凹部
12…第2係合部
12a…凹部
20…アタッチメント
20h…貫通孔
21…ホルダ
21a…前端部
21b…上面
22…セパレータ
22a…前端部
22b…後端部
31…スイッチユニット
32…軸受部材
33…ベアリングプレート
40…ベアリング構造
41…回転部材
41b…凹部
42…ジョイント部材
43…ベース部材
44…固定部材
50…シート
51…第1シート
51a…第1開口部
52…第2シート
52a…前方開口部
52b…後方開口部
70…挟み込み防止部
71…第1挟み込み防止部
72…第2挟み込み防止部
72a…開口部
81…第1付着層
82…第2付着層
91…両面テープ
92…テープ
100…挿入部材
110…本体
120…シャフト
130…処置部
141…外周面
142d…外周面
150…可動部
150a…挿入側突起部
160…ワイヤ
221…セパレータ本体
221a…上面
221b…下面
222…立設部分
223…スライダ
500…医療用ロボット
510…アーム部
511…アクチュエータ部
512…制御部
521…挟持部分
550…動力伝達部
550a…動力側突起部
721…板状体
821…カバーフィルム
7211…第1板状体
7212…第2板状体
AX…回転軸
C…周方向