(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】部材間の運動学的関係の調整
(51)【国際特許分類】
H02K 49/10 20060101AFI20231108BHJP
H02K 49/02 20060101ALI20231108BHJP
F16D 59/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02K49/10 B
H02K49/02 B
F16D59/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022003307
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2020030622の分割
【原出願日】2015-08-18
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2014-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】515073551
【氏名又は名称】エディ・カーレント・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ディール, アンドリュー カール
(72)【発明者】
【氏名】アーリントン, クリストファー ジェームズ
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500264(JP,A)
【文献】特表2012-520655(JP,A)
【文献】特開平04-341624(JP,A)
【文献】特開2000-316272(JP,A)
【文献】特開2012-250828(JP,A)
【文献】特開2003-327369(JP,A)
【文献】特開平05-038128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/10
H02K 49/02
F16D 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材又はその部分及び第2の部材又はその部分であって、前記第1及び第2の部材は互いにほぼ隣接し且つ互いに制限された運動学的関係にある、第1の部材又はその部分及び第2の部材又はその部分と、
前記第1及び第2の部材又はその部分間に磁気誘導力を形成する、前記第1及び第2の部材間における磁気引力関係と、
前記第1及び第2の部材からは独立した第3の部材と、を備える装置であって、
前記磁気誘導力は、力閾値を提供し、前記力閾値は、当該力閾値を超える付勢力が加えられる前には前記第1及び第2の部材間の相対運動を阻止するものであり、
十分な大きさの付勢力が前記力閾値を超えた場合には、前記運動学的関係に従って前記第1及び第2の部材間に相対運動が生じ、
前記第1及び第2の部材間の相対運動の範囲が十分である場合には、前記第1及び第3の部材が
磁気引力関係を通して係合して、前記第2及び第3の部材間の更なる相対運動を阻止する、装置。
【請求項2】
前記第1の部材と第2の部材とはバネを介して連結される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記付勢力が前記第2の部材に加えられ、当該付勢力が前記力閾値を超過した場合に、慣性力により前記第1の部材が前記磁気誘導力に打ち勝つ、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記磁気誘導力は、前記第1の部材上及び/又は前記第1の部材内の強磁性領域と、前記第2の部材上及び/又は前記第2の部材内の磁性領域との間に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記磁気誘導力は、前記第2の部材上及び/又は前記第2の部材内の強磁性領域と、前記第1の部材上及び/又は前記第1の部材内の磁性要素との間に存在する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記付勢力が一旦、前記力閾値を超えると、前記第1の部材は、前記付勢力に直接的に起因して運動する、請求項
1に記載の装置。
【請求項7】
前記付勢力が一旦、前記力閾値を超えると、前記第1の部材は、前記付勢力に間接的に起因して運動し、付加的な機械的部分又は動力学的手段に、前記第1の部材の移動又は前記第1の部材との相互作用を生じさせ、それにより引き続き第1の部材の運動を生じさせる、請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
間接的な力の伝達は、継手、歯車、又は、別の部分に対する直接的な力によって前記第1の部材にかかる遠心力によって、生じる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記運動学的関係は、回転である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の部材は、つめであり、
前記第2の部材は、前記付勢力が加えられると回転するロータであり、
前記第3の部材は、前記第2の部材の周りに設けられた囲いである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記つめの一部は、前記力閾値が超えられた場合に、前記ロータによって画定された領域の外に移動する、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記つめは、前記ロータの軸からオフセットしたピボット軸の回りで前記ロータに枢動式に取り付けられている、
請求項1
0に記載の装置。
【請求項13】
前記第3の部材は、ラッチを備え、
前記第1の部材又はその部分は、前記第3の部材の前記ラッチに係合する、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1及び第3の部材間の係合の結果として、前記第2の部材の運動が停止する、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記運動学的関係は、運動の範囲を定める前記第1の部材の開口を使用することによって制限され、前記運動の範囲は、前記力閾値が一旦超えられて前記第1の部材が前記第2の部材に対する相対的な移動をした際に前記第2の部材に取り付けられた留め具が当該開口を移動することがある範囲であり、
前記開口の大きさ及び前記留め具のその中での移動は、前記第2の部材に対して前記第1の部材が運動する可能性のある範囲を画定する、請求項
1に記載の装置。
【請求項16】
装置における、第1の部材、第2の部材、及び第3の部材間における相対運動のタイミング及び範囲を調整する方法であって、
請求項1~
15のいずれか一項に記載の装置を選ぶことと、
前記装置
への付勢力を前記第2の部材
に加えることと、を備え、
前記付勢力が前記力閾値より小さい場合には、前記第1及び第2の部材間には相対運動が生じず、
前記付勢力が前記力閾値を超える場合には、前記第1及び第2の部材は、互いに相対的に運動し、
前記付勢力が十分に大きい場合には、前記第1及び第3の部材が係合して、前記第2及び第3の部材間の相対運動を阻止する、方法。
【請求項17】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の装置が少なくとも1つ組み入れられたリニアガイド式命綱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、引用により本明細書に組み入れるニュージーランド特許出願番号第627630号に基づく優先権を有する。
本明細書では、運動学的関係にある部材を備えた装置が説明され、この運動学的関係は、力の閾値を導入する少なくとも1つの磁気誘導力によって少なくとも部分的に支配され、これは、事実上、閾値を提供し且つヒステリシス度を与えることができ、十分大きい付勢力が印加されるまで運動を阻止する。この効果は、少なくとも1つの更なる部材との付加的な磁気誘導力相互作用の使用によって更に変更することができ、ひとたび開始した運動を付勢し又は遅くし、及び/又はひとたび新たな位置に達すると運動を阻止する。
【背景技術】
【0002】
渦電流形成は、部材の回転速度を調節するために種々の方式で用いることができる。種々の装置が存在し、例えば懸垂降下においてクライマーの降下を制御し、又は例えば個人用保護具シナリオにおいて負傷の原因となる落下を防止する。渦電流発生を使用する他の用途は、列車、ケーブルカー、ジップライン装置及びローラコースタのロープの繰出しの制御である。
【0003】
1つの技術装置は、US2012/0055740として公開されている。この装置は、ロータに対して運動するアームを有するロータ組立体を利用する。アーム自体が伝導性若しくは磁性である場合もあり、又はアームに取り付けられた伝導性若しくは磁性部材を有する場合もある。ロータに回転力が印加されたとき、アームが遠心力によって中心軸から外方に移動して磁(又は伝導)界に入る。アームが界を通って移動するにつれて渦電流が発生し、その強度は回転速度に依存する。回転速度が低下すると、アームは、ばねにより及び/又はアームに作用する遠心力の低減により、回転軸に向かって引き戻される。この装置は広範に用いられており、部品の相対速度を変更する優れた手段を提供する。
【0004】
上記装置の1つの態様は、制動効果の作動と非作動との間に最小限のヒステリシスしか存在しないことである。この結果、「チャター」と呼ばれる制動効果の急速なオン-オフ切換えが生じる場合がある。チャターはある種の用途では特に望ましくないものである。例えば、落下安全用途では、落下の危険がある人間が装着するハーネスに自動ビレーを取り付ける場合がある。落下が起こると、装置は、落下を制動し及び/又は停止し、それにより負傷又は人命損失を防止する。チャターは、落下安全用途の障害になる。例えば、使用者が急に(しかし落下ではなく)動いたときに制動効果の不要な作動が起こる場合がある。誤作動は、使用者を疲労させる結果となる場合があり、使用者がバランスを失って落下する場合があり、又は誤作動は単に一般的に迷惑な要因となる。最悪の場合、チャターは、落下安全装置を使用する意欲を失わせ、深刻な負傷又は人命損失に至ることがある。
【0005】
装置の最終用途によっては、上記装置においてひとたび始動したアームの運動を更なる入力によって付勢し又は遅くすることもまた有用な場合がある。
【0006】
認識し得るように、意図しない制動を回避するように調整することができ且つ調整可能なヒステリシス度を誘導することができる手段における部品間の相対運動を遅くし及び/又は完全に停止する両方の手段を提供することは、有用な場合があり、又は少なくとも公衆に選択肢を与える。
【0007】
本装置の更なる態様及び利点は、例示のみの目的で与えられる以下の説明から明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、運動学的関係にある部材を備えた装置が説明され、この運動学的関係は、力の閾値を導入する少なくとも1つの磁気誘導力によって少なくとも部分的に支配され、これは、事実上、閾値を提供し且つヒステリシス度を与えることができ、十分大きい付勢力が印加されるまで運動を阻止する。この効果は、少なくとも1つの更なる部材との付加的な磁気誘導力相互作用の使用によって更に変更することができ、ひとたび開始した運動を付勢し又は遅くし、及び/又はひとたび新たな位置に達すると運動を阻止する。
【0009】
第1の態様において、
少なくとも1つの第1の部材又はその部分及び少なくとも1つの第2の部材又はその部分を備える装置であって、前記第1及び第2の部材は互いにほぼ隣接し且つ互いに制限された運動学的関係にあり、
装置は、少なくとも1つの第1及び第2の部材又はその部分間に磁気誘導力を形成する、部材間における少なくとも1つの磁気引力関係を備え、
磁気誘導力は、部材間の運動を阻止する力閾値をもたらし、付勢力の印加によってこの閾値を超えたときに、少なくとも1つの第1の部材と少なくとも1つの第2の部材との間に運動学的関係に従う動的システムによって相対運動が生じる、
装置が提供される。
【0010】
第2の態様において、
第2の部材に結合された少なくとも1つの第1の部材又はその部分と、少なくとも1つの第3の部材又はその部分とを備える装置であって、第1及び第3の部材は互いにほぼ隣接し且つ互いに制限された運動学的関係にあり、
装置は、少なくとも1つの第1及び第3の部材又はその部分間に磁気誘導力を形成する、部材間における少なくとも1つの磁気引力関係を備え、
磁気誘導力は、少なくとも前記第1及び第3の部材間の運動に抵抗する力閾値に打ち勝つ相補力をもたらし、その結果、付勢力の印加によってこの閾値を超えたときに、
(a)少なくとも1つの第1及び第3の部材間に運動学的関係に従う動的システムによって相対運動が生じ、
(b)誘導力は、第3の部材に対する第1の部材の運動を加速し、
(c)誘導力は、相対運動の反転に抵抗する保持力をもたらす、
装置が提供される。
【0011】
第3の態様において、
実質的に上で説明したような装置を備えたブレーキであって、
少なくとも1つの第1の部材又はその部分は、少なくとも部分的に電気伝導性であり、且つ独立した磁界と更なる運動学的関係にあり、その結果、
(a)十分な付勢力より前には、少なくとも1つの第1の部材と少なくとも1つの第2の部材とが磁気的に結合したままであり、第1の無又は低誘導渦電流制動効果が生じ、
(b)磁気誘導力に打ち勝つのに十分な付勢力が印加されると、少なくとも1つの第1の部材は、磁界内に移動し、それにより磁界に対する少なくとも1つの第1の部材又はその部分の運動に対する渦電流制動効果を誘導する、
ブレーキが提供される。
【0012】
第4の態様において、実質的に上で説明したような少なくとも1つの装置を組み込んだロープ繰出し装置(line dispensing device)が提供される。
【0013】
第5の態様において、実質的に上で説明したような少なくとも1つの装置を組み込んだ乗客座席拘束装置が提供される。
【0014】
第6の態様において、実質的に上で説明したような回転駆動装置に係合する少なくとも1つの装置を組み込んだ変速機駆動装置が提供される。
【0015】
第7の態様において、実質的に上で説明したような少なくとも1つの装置を組み込んだリニアガイド式命綱(linear guided lifeline)が提供される。
【0016】
更に以下の説明で概説するように、その他の多くの装置の用途もまた可能であり得る。
【0017】
上記装置の1つの利点は、運動学的関係によって規定された運動が生じる時点を制御する能力を含むことである。加えて、装置の更なる利点は、ひとたび運動が始まってからも運動力学的関係に影響を及ぼすこととである。慣性効果の大きさは、運動に対する高抵抗から運動に対する低抵抗までの両極端間で調整することができる。加えて、付加的な磁性部材を使用することで、運動学的関係による閾値及び運動速度に、より大きい又は小さい影響を及ぼすこともできる。このようにして調整することは、オン/オフチャターを回避する効果を有することができ、且つ、装置の作用におけるヒステリシス度を与えることができる。第3の部材により、例えばラッチからの偶発的な解放を回避するように非作動を調整することもできる。上記装置の別の更なる利点は、運動学的関係によって運動を制御し且つ変更する広範な能力であり、このことは該装置が、広範な異なる方式及び用途で用いることが可能であること、及び、誤作動の可能性を最小限にすることができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
装置の更なる態様は、例示のみの目的で与えられ且つ添付図面を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【
図1】磁気引力関係にある装置の1つの実施形態の側面図を示す。
【
図2】磁気引力とつめ又は第1の部材の運動との間の関係を示したグラフを示す。
【
図3】回転する第2の部材、及び2つの磁気関係を伴う第1の部材を組み込んだ代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図4】回転する第2部材、及び2つの磁気関係を伴う第1の部材を組み込んだ代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図5】
図3及び
図4で用いられる配置で生じる修正された関係を示したグラフを示す。
【
図6】ロッド形の第1の部材を組み込んだ代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図7】回転する第3の部材及び固定された第2の部材並びに相対運動する第1の部材を組み込んだ代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図8】ロッド形の第1の部材を組み込んだ、
図7に対する代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図9】摺動する第2の部材及び枢動する第1の部材のつめを組み込んだ代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図10】ロッド形の第1の部材を組み込んだ、
図9に対する代替的な実施形態の側面図を示す。
【
図11】固定された第2の部材及び運動する第3の部材を有する更なる代案の側面図を示す。
【
図12】ロッド形の第1の部材を用いた、
図11に対する更なる代案の側面図を示す。
【
図13】更なる代替的な形状の装置の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、本明細書では、運動学的関係にある部材を備えた装置が説明され、この運動学的関係は、力の閾値を導入する少なくとも1つの磁気誘導力によって少なくとも部分的に支配され、これは、事実上、閾値を提供し且つヒステリシス度を与えることができ、十分大きい付勢力が印加されるまで運動を阻止する。この効果は、少なくとも1つの更なる部材との付加的な磁気誘導力相互作用の使用によって更に変更することができ、ひとたび開始した運動を付勢し又は遅くし、及び/又はひとたび新たな位置に達すると運動を阻止する。
【0020】
本明細書の目的に関して、用語「約」又は「ほぼ」及びそれらの文法的変形は、基準の分量、レベル、度、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して高々30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%だけ変動する分量、レベル、度、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0021】
用語「実質的に」又はその文法的変形は、少なくとも約50%、例えば75%、85%、95%又は98%を指す。
【0022】
用語「含む、備える」及びその文法的変形は、包括的な意味を有するものとし、すなわち、それが直接言及する列挙された構成要素のみならず、他の特定されていない構成要素又は要素もまた含むことを意味するものとして解釈される。
【0023】
用語「付勢力(energizingforce)」及びその文法的変形は、物体に運動速度を与えるように作用する力を指す。
【0024】
用語「動的」及びその文法的変形は、装置又は装置部分の運動の文脈において、機械的手段によって誘導される力を指し、本明細書の目的に関して、液体流体運動又は圧力から生じ得る力を除外する。
【0025】
第1の態様において、
少なくとも1つの第1の部材又はその部分及び少なくとも1つの第2の部材又はその部分を備える装置であって、第1及び第2の部材は互いにほぼ隣接し且つ互いに制限された運動学的関係にあり、
装置は、少なくとも1つの第1及び第2の部材又はその部分間に磁気誘導力を形成する、部材間における少なくとも1つの磁気引力関係を備え、
磁気誘導力は、部材間の運動を阻止する力閾値をもたらし、付勢力の印加によってこの閾値を超えたときに、少なくとも1つの第1の部材と少なくとも1つの第2の部材との間の運動学的関係に従う動的システムによって相対運動が生じる、
装置が提供される。
【0026】
上記態様における少なくとも1つの第1の部材と少なくとも1つの第2の部材との間の相対運動は、上記装置によって初期状態では阻止することができ、装置は、
第3の部材と少なくとも1つの第1の部材及び/又は少なくとも1つの第2の部材との間に少なくとも1つの更なる磁気引力関係をさらに備え、少なくとも1つの第3の部材又はその部分と1つ又は複数の第1及び/又は第2の部材又はその部分との間に第2の磁気誘導力を形成し、
第2の磁気誘導力は、部材間の運動に抵抗する力閾値に打ち勝つ相補力をもたらし、その結果、付勢力の印加によってこの閾値を超えたときに、
(a)少なくとも1つの第1及び第2の部材間の運動学的関係によって相対運動が生じ、
(b)第2の誘導力は、1つ又は複数の第3の部材に対する第1及び/又は第2の部材の運動を加速し、
(c)第2の誘導力は、相対運動の反転に抵抗する保持力をもたらす。
【0027】
第1及び第2の部材は、一緒に結合されることができる。結合は、直接的又は間接的とすることができ、例えばばね又は他の部材を介する。
【0028】
第2の態様において、
第2の部材に結合された少なくとも1つの第1の部材又はその部分と、少なくとも1つの第3の部材又はその部分とを備える装置であって、第1及び第3の部材は互いにほぼ隣接し且つ互いに制限された運動学的関係にあり、
装置は、少なくとも1つの第1及び第3の部材又はその部分間に磁気誘導力を形成する、部材間における少なくとも1つの磁気引力関係を備え、
磁気誘導力は、少なくとも前記第1及び第3の部材間の運動に抵抗する力閾値に打ち勝つ相補力をもたらし、その結果、付勢力の印加によってこの閾値を超えたときに、
(a)少なくとも1つの第1及び第3の部材間の運動学的関係によって相対運動が生じ、
(b)誘導力は、第3の部材に対する第1の部材の運動を加速し、
(c)誘導力は、相対運動の反転に抵抗する保持力をもたらす、
装置が提供される。
【0029】
上記相補力は、慣性力と共に1つ又は複数の第1の部材に対して作用して初期磁気引力関係に打ち勝つことができ、それにより装置の運動特性を変更する。
【0030】
上記態様で説明した磁気誘導力は、少なくとも1つの第1の部材上及び/又は内の少なくとも1つの強磁性要素及び/又は領域と、少なくとも1つの第2の部材上及び/又は内の少なくとも1つの磁性要素及び/又は領域との間に存在することができる。
【0031】
磁気誘導力は、少なくとも1つの第2の部材上及び/又は内の少なくとも1つの強磁性要素及び/又は領域と、少なくとも1つの第1の部材上及び/又は内の少なくとも1つの磁性要素及び/又は領域との間に存在することができる。
【0032】
磁気誘導力は、第1の極性の少なくとも1つの第1の部材上及び/又は内の少なくとも1つの磁性要素及び/又は領域と、第1の極性とは反対の第2の極性の少なくとも1つの第2の部材上及び/又は内の少なくとも1つの磁性要素及び/又は領域との間に存在することができる。
【0033】
上記の例から認識されるように、磁気誘導力が生じる方式は、隣接する磁石の組合せ、又は強磁性要素及び磁性要素とそれぞれの部材との順序若しくは配置に限定されず、変更することができる。そのうえ、磁気引力材料は強磁性材料に限定する必要はなく、常磁性材料に拡張することができること、従って、用語「強磁性」又はその文法的変形は、常磁性材料を含むが限定されない他の磁気引力材料をも包含することを認識されたい。
【0034】
ひとたび磁気誘導力に打ち勝ったときの第1の部材の運動は、直接的なもの、すなわち第1の部材が付勢力に直接的に起因して運動するものとすることができる。第1の部材は、その代わりに、少なくとも部分的に付勢力に間接的に起因して又は代理で運動することができ、該付勢力は、少なくとも1つの付加的な機械的部分又は動力学的手段に、第1の部材の移動又は第1の部材との相互作用を生じさせ、それにより引き続き第1の部材の運動を生じさせる。間接的手段は、継手又は歯車といった別の部分を介した動的な力伝達、又は別の部分に対する直接的な力によって第1の部材にかかる遠心力とすることができる。間接的な又は代理の力伝達は、付勢力を増幅することができるという利点を有することができる。
【0035】
磁気誘導力の作用点の静的若しくは動的な位置及び/又は強度の調節はまた、
(a)第1の部材又は第2の部材が動くにつれて少なくとも1つの第1の部材又はその部分上の磁性要素又は伝導性領域の位置を調節すること、及び/又は
(b)少なくとも1つの第1の部材又は第2の部材が動くにつれて少なくとも1つの第2の部材上の磁性要素又は伝導性領域の位置を調節すること
によって完成させることができる。
【0036】
例として、第1の部材は、スロットを備えることができ、磁性要素又は伝導性領域を備えた第1の部材の一部は、付勢力が印加されて第1の部材が全体として動くにつれて該スロット内を移動する。運動を調節するこの付加的手段は、力の動力学を、従って部品が相互作用する方式を更に変更し、従って力閾値を更に変化させるのに有用であり得る。
【0037】
第1の部材と1つ又は複数の付加的な部材との間の相対運動は、摩擦のない運動とすることができる。上記の誘導力のような磁気力及びそれに続く第1の部材に作用するいずれの力も、摩擦接触を回避することができる。これは、部品に対する機械的摩耗を最小限にするのに有用であり得る。
【0038】
1つの実施形態において、部品間の運動は、主として動的力によって支配される。装置は、液体流体を伴わないものとすることができ、部品間の全ての運動が動的力に起因する。代替的に、装置は、存在するある程度の液体流体を有することができるが、装置部材に対する主な付勢力は動的力である。磁気学を利用して運動学的関係を変更する液体ベースのシステムも存在するが、これらの装置は、しばしば双安定、すなわち部品が2つの位置でのみ安定である点で、本明細書において説明する装置とは異なる。加えて、運動は、動的力とは対照的に、主として又は完全に液体流体から蓄積される力又は圧力に依拠する。液体ベースの装置はまた、液体の封止に関連した固有の難点を有し、信頼性のある運用を保証するにはより定期的な保守が必要である。
【0039】
運動学的関係は、回転又は線形とすることができる。
【0040】
回転関係に関して、
・少なくとも1つの第1の部材は、1つ又は複数のつめ形又はアーム形部材とすることができ、これは付勢力が印加されると回転するロータとすることができる第2の部材に機械的に連結することができる。及び/又は
・少なくとも1つの第1の部材は、ロータに隣接して配置することができ、少なくとも1つの第1の部材の一部は、磁気誘導力に打ち勝つ十分に大きい付勢力が印加されると、ロータによって画定された領域の外部に移動することができる。及び/又は
・少なくとも1つの第1の部材は、ロータ軸からオフセットしたピボット軸の周りでロータに枢動式に取り付けることができる。
【0041】
線形関係に関して、
・少なくとも1つの第1の部材は、1つ又は複数のつめ形又はアーム形部材とすることができ、これは付勢力が印加されると並進するキャリッジとすることができる第2の部材に機械的に連結することができる。及び/又は
・少なくとも1つの第1の部材は、キャリッジの運動方向からオフセットしたピボット軸の周りでキャリッジに線形に取り付けることができる。
【0042】
少なくとも1つの第1の部材又はその部分は、付勢力が印加されたときに少なくとも1つの第1の部材及び少なくとも1つの第2の部材が動くと少なくとも1つのラッチ部材に係合するように配置することができる。少なくとも1つの第1の部材と少なくとも1つのラッチ部材との係合の結果として、少なくとも1つの第2の部材と少なくとも1つのラッチ部材との間で相対運動が生じないようにすることができる。
【0043】
第3の部材は、付勢力が印加されたときに少なくとも1つの第1の部材が動くと少なくとも1つの第1の部材と係合するように配置された、少なくとも1つのラッチ部材とすることができる。
【0044】
少なくとも1つの第1の部材又はその部分は、電気伝導性とすることができ、閾値に打ち勝った後の相対運動は、少なくとも1つの第1の部材を磁界内に移動させ、そこでは、少なくとも1つの第1の部材が動くと渦電流誘導抗力効果が生じる。
【0045】
装置は、第1の部材の運動と相互作用する磁界を含むことができ、それにより第1の部材上に渦電流抗力が誘導され、渦電流誘導抗力の作用線からそれぞれ傾いた又はオフセットした線又は点の周りで少なくとも1つの第1の部材の線形及び/又は回転並進を生じさせる。
【0046】
少なくとも1つの第1の部材は、付勢力が印加されると、運動学的関係によって定められた第2の部材の運動方向に対して少なくとも部分的に直交して運動することができ、及び/又は磁界に対して枢動することができる。
【0047】
運動学的関係は、運動の範囲を定める少なくとも1つの第1の部材内の開口部、及び開口部の1以上の遠位点を定める止め部の使用によって制限することができる。磁気引力関係は、開口部の各遠位点の近くに存在することができる。
【0048】
磁界は、少なくとも1つの第1の部材に対して静止し又は異なる相対速度で動くことができる。
【0049】
少なくとも1つの第1及び第2の部材が互いに相対運動する速度は、
(a)磁性表面積、
(b)磁気力強度、
(c)少なくとも1つの磁性要素及び/又は領域が少なくとも1つの磁気若しくは強磁性要素及び/又は領域に隣接する近接度、
(d)少なくとも1つの磁性要素の幾何学的形状及び/又は磁気特性、
(e)少なくとも1つの強磁性要素及び/又は領域の強磁性含有量、
(f)強磁性材料の磁化率、
のうちの少なくとも1つを変更することによって更に調整することができる。
【0050】
上記のことから認識されるように、部材は、ひとたび運動が始動した1つ又は複数の部材の作動及び/又は運動速度に影響を及ぼす要因である、種々の形状又は重量を取ることができる。磁気相互作用は、例えば第1の部材の長さにわたって連続的なもの又は離間したもの又は寸法が変化するものとすることができ、それにより磁束発生を調節する。第1の又は他の部材の磁気相互作用部分は、部材全体又はその一部分のみとすることができる。部材の一部分のみが磁気相互作用する場合、部材の外部、内部又は部分上のいずれかにある相互作用部分の位置は、変更することができる。
【0051】
第3の態様において、
実質的に上で説明したような装置を備えたブレーキであって、
少なくとも1つの第1の部材又はその部分は、少なくとも部分的に電気伝導性であり、且つ独立した磁界と運動学的関係にあり、その結果、
(a)付勢力が十分となる以前には、前記少なくとも1つの第1の部材と少なくとも1つの第2の部材とが磁気的に結合したままであり、第1の誘導渦電流制動効果が生じないか又は第1の低い誘導渦電流制動効果が生じ、
(b)磁気誘導力に打ち勝つのに十分な付勢力が印加されると、少なくとも1つの第1の部材は、磁界内に移動し、それにより磁界に対する少なくとも1つの第1の部材又はその部分の運動に対して渦電流制動効果を誘導する、
ブレーキが提供される。
【0052】
第4の態様において、実質的に上で説明したような少なくとも1つの装置を組み込んだロープ繰出し装置が提供される。自動ビレー装置などのロープ繰出し装置は、レクリエーション用途及び工業的用途の両方で落下を防止するために広範に用いられる。場合によっては、磁気引力関係は、自動ビレー装置の特性を調整するのに有用であり得る。
【0053】
第5の態様において、引き延ばされ且つ引き込まれる帯ひもを組み込んだ乗客座席拘束装置が提供され、帯ひもは、実質的に上で説明したような少なくとも1つの装置に動作可能に結合される。乗客座席拘束装置の一例は、自動車などの車両に用いられるシートベルトであり得る。シートベルトは極めて重要な安全機能であり、上述の装置は、特に上記の多様な方式で応答を調整する能力を前提として、既存の設計に対する有用な代替手段を提供することができる。
【0054】
第6の実施形態において、実質的に上で説明したような回転駆動装置に係合する少なくとも1つの装置を組み込んだ変速機駆動装置が提供される。
【0055】
第7の実施形態において、実質的に上で説明したような少なくとも1つの装置を組み込んだリニアガイド式命綱(linear guided lifeline)が提供される。
【0056】
説明した装置はその他の多様な用途で用いることができるので、上記の例は限定的なものとみなすべきではなく、非限定的な例は、
・回転式タービンのロータ
・運動器具、例えばローイングマシン、エピサイクリックトレーナー
・ローラコースタ及び他の遊具乗り物
・エレベータ及びエスカレータシステム
・避難用降下装置及び火災避難装置
・コンベヤシステム
・工場生産設備内の回転駆動装置
・コンベヤベルトなどの材料搬送装置又はシュート内の制動装置
・回転式サインの変化速度を制御する動的ディスプレイ看板
・路側安全システム、例えば渦電流ブレーキをシステムに接続して、ブレーキによるエネルギー散逸によって衝突の減衰を提供することができる。
・車両内のシートベルト
・トロリー及びキャリッジ用の制動機構
の速度制御を含む。
【0057】
上記のように、上記装置の1つの利点は、運動学的関係によって規定された運動が生じる時点を制御する能力を含む。加えて、装置の更なる利点は、ひとたび運動が始まってからも運動力学的関係に影響を及ぼすこととである。慣性効果の大きさは、運動に対する高抵抗から運動に対する低抵抗までの両極端間で調整することができる。加えて、付加的な磁性部材を使用することで、運動学的関係による閾値及び運動速度に、より大きい又は小さい影響を及ぼすこともできる。このようにして調整することは、オン/オフチャターを回避する効果を有することができ、且つ、装置の作用におけるヒステリシス度を与えることができる。第3の部材により、例えばラッチからの偶発的な解放を回避するように非作動を調整することもできる。上記装置の別の更なる利点は、運動学的関係によって運動を制御し且つ変更する広範な能力であり、このことは該装置が、広範な異なる方式及び用途で用いることが可能であること、及び、誤作動の可能性を最小限にすることを意味する。
【0058】
上述の実施形態は、大まかに言って、本出願の明細書において個別に又は集合的に言及された又は示された部分、要素及び特徴、並びに2以上の該部分、要素又は特徴のいずれか又は全ての組合せに存するものと言うこともでき、また、実施形態が関連する技術分野において既知の均等範囲を有する特定の整数が本明細書において言及される場合、かかる既知の均等範囲は、あたかも個別に述べられているかの如くに本明細書に組み入れられるものとみなされる。
【0059】
本発明が関連する技術分野において既知の均等範囲を有する特定の整数が本明細書において言及される場合、かかる既知の均等範囲は、あたかも個別に述べられているかの如くに本明細書に組み入れられるものとみなされる。
【実施例】
【0060】
上述の装置をここで、特定の例を参照して説明する。
【0061】
例における説明を容易にするために、単一の第1の部材のみを典型的に示すが、複数の第1の部材を用いることができることを認識されたい。
【0062】
第1の部材がその中を移動する磁界、及び第3の部材又はラッチ部材は、冗長になるので連続領域として概略的に示す。磁界(少しでも存在する場合)は、例えば一連の離散的な磁石とすることができ、又は単に1つの磁石であってもよい。同様に、第3の部材(存在する場合)は、種々の形状又は表面輪郭を呈することができ、分かりやすくするために限られた数の例のみを示す。
【0063】
例においては、例えば第1の部材の特定の運動を示している場合があるが、存在する場合の磁界、第2の部材及び/又は第3の部材もまた動く場合があり、又は、他の部材が動く一方で第1の部材が固定されたままである場合もあることを認識されたい。
【0064】
例1
図1の模式図に示すように、図示した実施形態の装置1は、この図示した例では回転軸6の周りで方向Aに回転するロータである第2の部材5に対して相対運動する第1の部材2を備える。第3の部材4もまた示す。
【0065】
図示した第1の部材2は、第2の部材5に取り付けられており、第1の部材のピボット軸7、第3の部材4の位置及び第2の部材5の回転速度によって制限された部分間に運動学的関係が存在する。
【0066】
第1の部材2と第2の部材5との間の所定位置に、第2の部材5に連結したこの図ではブロック形として示される1つ又は複数の磁石8による磁気誘導力が存在する。第1の部材2は、磁石8に磁気的に引き寄せられる部分9を含むか又は全体として引き寄せられる。磁気誘導力は、付勢力Eが閾値力Fを超えるまで、第1の部材2と第2の部材5との間の相対運動を阻止する。
図1の実施形態において、付勢力は十分に速い第2の部材5の回転によって生じ、遠心力及び慣性作用により閾値力Fに打ち勝ち、第1の部材2がピボット軸7の周りで回転する。
【0067】
図2は、この作用を、印加された力Fに対して第1の部材2(
図2においてつめと呼ぶ)の運動を比較して示す。付勢力に達する(
図2中、F triggerとして示される)まで運動は全く生じないか又は最小限の運動しか生じず、その時点の後、第1の部材2が第2の部材5から遠ざかるにつれて磁気誘導力は急速に消散する。認識されるように、閾値力の入力を導入することで第1の部材2の作動が遅くなり、従って第1の部材2の運動によって起こるその後のあらゆる事象のタイミングが調節される。
【0068】
部材2、5間の運動学的関係は、種々の方式で変更することができ、一例は、第1の部材2の伝導性を変えることにより、又は磁石8の寸法及び/又は位置を変える(例えば第2の部材5の中に凹ませる)ことにより、閾値力を変更することである。
【0069】
例2
図3は、例1の装置に対する追加を示す。この例において、第3の部材4が追加され、第3の部材4は、第1の部材2に対して磁気誘導力を印加し、これにより種々の部材2、4、5間の運動学的関係をさらに変化させる。図示した実施形態において、磁石は第3の部材4上に置かれ、これが第1の部材2の部分9又は全体を引き寄せる。第3の部材4に対する誘導力は、閾値力に打ち勝つのに十分な付勢力が印加される(例えば、軸6の周りの第2の部材5の回転による)までは、第1の部材2と第2の部材5との間の誘導力に打ち勝つのに十分なほど強くない。第1の部材2の運動が起こり始めると、第3の部材4上の磁石は、第3の部材4に対する第1の部材2の運動を付勢する。第3の部材4上の磁石8もまた、第1の部材2を第3の部材4に対して保持するのに十分な力をもたらすことができる。磁界3は、第1の部材2に隣接して位置することができ、磁気誘導渦電流効果に起因して第1の部材2の運動に対する制動力を印加することもできる。
【0070】
図4は、上記相互作用を達成するために用いることができる代替的な実施形態を示す。この場合、第1の部材2は、ジョーを有するように形作られ、第2の部材5に接続された止め部がジョー領域内に位置する。第1の部材2は、第2の部材5と運動学的関係にあり、第2の部材5が回転すると、第1の部材2上に遠心力が生じて、第1の部材をそのピボット軸7の周りで第2の部材5の回転軸に対して外方に動かす。第1の部材2のジョーは、最大運動を定めるように作用する。止め部は、磁石8とすることができ、これは第1の部材2のジョーの側部9又は全部を磁気的に引き寄せる。この実施形態は、第1の部材のジョーが、磁気誘導力が作用する別個の点として作用するにもかかわらず、
図3の実施形態と同様の効果を有する。
【0071】
図5は、
図3又は
図4のいずれかの実施形態において、第1の部材2が動くにつれて力がこれとどのように相互作用するかのグラフを示す。磁気誘導力は、第1の部材2の運動の両極端で高く且つ中間で低い。ひとたび付勢力がグラフ上で「trigger」及び「hold」という語で示される閾値力に打ち勝つと、磁気誘導力に打ち勝つ。
【0072】
例3
図6は、第1の部材2がロッドの形態を取る更なる実施形態を示し、ロッド2は、XXで示された並進線に沿って並進して第2の部材5内の開口部(図示せず)に出入りする。軸Aの周りの第2の部材5の回転は、付勢力を誘導し、これはひとたび磁石8と第2の部材5との間の磁気誘導力に打ち勝つと、ロッド2を並進させて開口部から出し、ロッド2の一端は、更なる磁石(図示せず)を介して第3の部材4と相互作用することができる。この例は、第1の部材2がどのように異なる形状及び形態を呈することができるのかということ、並びに、第1の部材2の運動は、前の例の場合のように回転軸によるもの又はこの例の場合のように並進によるものとすることができることを例証する。
【0073】
例4
図7は、ラッチ装置1の更なる実施形態を示す。この実施形態において、第2の部材5及び第1の部材2は、回転軸がアイテム6であり且つ運動方向が時計回り方向である、回転する磁界3及び第3の部材4の外周に置かれる。第1の部材2は、付勢力が印加されると、第2の部材5に連結された磁石8と第1の部材2との間の磁気誘導力に打ち勝ち、次いで回転軸7の周りで運動して、第1の部材2の少なくとも一部が磁界3の中へ移動する。図示した実施形態において、渦電流抗力(図示せず)が誘導され、第1の部材2が第3の部材4と係合して第3の部材4及び磁界3の相対回転を停止させるまで第1の部材2の回転を付勢する。第3の部材4は、必ずしも存在する必要はなく、又はその代わりに、第3の部材4は、第1の部材2の更なる回転に対してラッチではなく止め部として単に作用することができる。
【0074】
例5
図8に示すように、
図7に示すのと同じ原理を、上記
図3で最初に論じたロッド形の第1の部材2を用いて適用することができる。この例において、第2の部材5及び第1の部材ロッド2は、装置1の周縁の一部の上の所定位置に固定され、磁界3及び第3の部材4は、軸6の周りで方向Aに回転する。第1の部材ロッド2は回転方向に対して傾斜した方向にオフセットされ、慣性効果の影響下でロッド2が並進運動して第2の部材5から出る(及び中に戻る)ことを可能にするようになっていることに留意されたい。
【0075】
例6
図9を参照すると、上記実施形態で例証した回転運動とは対照的に線形運動が用いられる代替的な実施形態が示される。
【0076】
第2の部材5は、方向YYで平面に沿って動く。第1の部材2は、この場合にはピボット軸7に取り付けられた一端が第2の部材5に固定された、つめとして示されている。磁石8は、第2の部材5上に配置され、これが第1の部材2と共に磁気誘導力を作り出す。第2の部材5が線形方向YYに動くと、第1の部材2は、閾値力に打ち勝ち、次いで磁界3内へ移動して渦電流抗力及び慣性力によって付勢され、第1の部材2又はその一部が第3の部材4に当接してこれと係合するまで軸7の周りを回転する。
【0077】
例7
図10は、
図6の実施形態と類似の実施形態を示し、今回は第1の部材2としてロッドを用い、これは軸の周りで回転する代わりに線XXに沿って並進する。ロッド2は、第2の部材5上に配置された磁石8と相互作用する。第2の部材5が線形方向YYに動くと、第1の部材ロッド2は、磁界3の中でロッド2が運動することに起因する渦電流誘導抗力及び慣性力に起因して、第2の部材5から外へ引き出される。
【0078】
例8
図11は、例6で説明した実施形態と類似の実施形態を示すが、
図11では、磁界3及び第3の部材4が線形方向YYに運動し、つめ形の第1の部材2及び第2の部材5は、方向YYの運動に対して静止したままである。磁界3の運動は、磁石8と第1の部材2の側部又は全てとの間の磁気誘導力に打ち勝ち、これにより軸7の周りでの伝導性の第1の部材2の運動を第1の部材2が第3の部材4と係合するまで付勢し、その時点で相対運動が停止される。
【0079】
例9
図12は、例8の実施形態を示すが、今回は以前の実施形態で説明したロッド形の第1の部材2を用いる。認識されるように、第1の部材2の形状は、固定された第2の部材5並びに運動する磁界3及びラッチ部材4のこのシナリオにおいても変更することができる。
【0080】
例10
図13は、装置1の更なる変形を示す。この実施形態において、第1の部材2は管として形成される。第1の部材管2は、方向Bを巡って回転運動することができ、且つ回転軸に沿って線形方向Aに並進することができる。第1の部材管2は、並進方向Aで動かされて、第2の部材の中に入ることができ、これは磁石又は磁化シリンダ3とすることができる。並進運動は、回転軸に連結された磁石8の使用によって抑制することができる。磁石8は、付勢力によって十分な閾値力に達するまで、磁石8と第1の部材2との間で磁気誘導力を形成する。閾値に達すると、第1の部材2は、第2の部材3の中へと並進する。第1の部材2と第2の部材3との間の運動の相対的な変動は、渦電流抗力を誘導し、これが磁化シリンダ3に対する管2の回転を遅くする。随意に、つめ20が、第3の部材、この場合にはラッチ4と係合することができ、この例において、ラッチ4は、第2の部材3の内部の嵌合凹みとすることができ、そこにつめ20が噛み合う。更なる磁石(図示せず)を第3の部材4の上又は中に組み入れて部品間に磁気誘導力を作り出すことができる。管2の並進運動は、ねじ付きシャフト30などの駆動機構によって付勢することができる。
【0081】
装置の態様を例示のみの目的で説明してきたが、本明細書における請求項の範囲から逸脱することなく修正及び付加を行うことができることを認識されたい。