IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の自動搬送車 図1
  • 特許-車両の自動搬送車 図2
  • 特許-車両の自動搬送車 図3
  • 特許-車両の自動搬送車 図4
  • 特許-車両の自動搬送車 図5
  • 特許-車両の自動搬送車 図6
  • 特許-車両の自動搬送車 図7
  • 特許-車両の自動搬送車 図8
  • 特許-車両の自動搬送車 図9
  • 特許-車両の自動搬送車 図10
  • 特許-車両の自動搬送車 図11
  • 特許-車両の自動搬送車 図12
  • 特許-車両の自動搬送車 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両の自動搬送車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20231108BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20231108BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20231108BHJP
   B60P 3/075 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B62D61/12
B60K1/02
B60K7/00
B60P3/075
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020062997
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160485
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】金棒 司朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 宣行
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04856814(US,A)
【文献】特開2019-038326(JP,A)
【文献】特開2016-215679(JP,A)
【文献】実開昭62-065374(JP,U)
【文献】特開昭55-083656(JP,A)
【文献】実開平02-130828(JP,U)
【文献】特表2019-535577(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04426519(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062128(US,A1)
【文献】ZipsTruckEquip,*SOLD*2016 Century 1140 Heavy Duty Wrecker With RXP Side Puller Peterbilt 567,[online][video],2015年07月21日,インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=PypAK3PawNM>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/12
B60K 1/02
B60K 7/00
B60P 3/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三個以上の車輪と、
前記三個以上の車輪の一部に動力を付与する動力付与部と、
車両の一部の車輪を搭載可能な搭載部とを備え、
前記三個以上の車輪は、前記動力付与部に動力を付与されることにより回転駆動する二個の駆動輪と、一個以上の補助輪であって、
前記補助輪が、前記車両が前記搭載部上に搭載された状態で浮上状態となり、前記車両が搭載されていない状態で走行する際に接地状態となるように、前記駆動輪の鉛直方向軸線まわりの所定の回転動作に伴って、前記接地状態と前記浮上状態とを切替え可能に構成されている車両の自動搬送車。
【請求項2】
三個以上の車輪と、
前記三個以上の車輪の一部に動力を付与する動力付与部と、
車両の一部の車輪を搭載可能な搭載部とを備え、
前記三個以上の車輪は、前記動力付与部に動力を付与されることにより回転駆動する二個の駆動輪と、一個以上の補助輪であって、
前記補助輪が、前記車両が前記搭載部上に搭載された状態では浮上状態となり、前記車両が搭載されていない状態で走行する際に接地状態となるように、前記車両の前記搭載部への搭載動作に伴って、前記接地状態と前記浮上状態とを切替え可能に構成されている車両の自動搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造業界においても、来る高齢化社会に向けて、人手不足を補うための対策を講じる必要性が益々高まってきている。例えば工場で量産された自動車などの完成車両を出荷地など所定の場所まで効率よく輸送するための手段として、コンテナなどの積載容器に複数台の完成車両を積載した状態で、当該積載容器を大型トラックなどの輸送車両で目的地近傍の港まで陸上輸送し、然る後、積載容器を輸送用船舶に積み替えて目的地まで水上輸送を行う方法が一般的に採られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2には、無人自動運転による牽引車両により複数の台車を牽引して限定されたエリア内における所定の走行ルート上を走行する形式の搬送移動車両が、搬送対象である完成車両を台車上に搭載した状態で目的地まで搬送するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-123258号公報
【文献】特開2019-36036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、完成車両の輸送に際しては、工場ヤードに整列配置した完成車両を所定の積み替え用ヤードまで搬送した後、積み替えのために完成車両を一旦荷下ろしして、当該積み替え用ヤードに整列配置し直す必要が生じることがある。この際、各ヤードでは、限られたスペースにできる限り多くの完成車両を待機させるために、当該多くの完成車両が密集して整列配置されており、車体前後方向に隣接する完成車両同士の間隔又は車体幅方向に隣接する完成車両同士の間隔は非常に小さい。例えば特許文献1に記載の輸送手段だと、ヤード内で荷下ろしを行うためには、当該ヤードに輸送用トラックの停止スペースとコンテナの停止スペースと完成車両の荷下ろしスペースがそれぞれ必要になる。しかしながら、輸送用トラックやコンテナは非常に巨大であるため、荷下ろしスペースに加えて各々の停止スペースを設けるとなると、その分待機可能な完成車両の数を減らさざるを得ない。そのため、現実的にヤード内での荷下ろしは難しい。例えば特許文献2に記載の輸送手段では、無人搬送車両が、完成車両を搭載し互いに連結された複数の台車を牽引搬送するため、ヤード内で荷下ろしを行うためには、当該ヤードに牽引車両や複数の台車分の停止スペースがそれぞれ必要になる。しかしながら、この場合も、荷下ろしスペースに加えて各々の停止スペースを設けるとなると、その分待機可能な完成車両の数を減らさざるを得ないため、現実的にヤード内での荷下ろしは難しい。
【0006】
例えばヤード内での荷下ろしスペースを確保するために搬送車を小型化することも考えられるが、その場合には、車輪の小径化や車輪数の減少、車輪間隔の縮小等によって搬送車の重心が不安定となり、走行時の姿勢、特に完成車両を搭載していない状態での走行時(空荷走行時)の姿勢が安定しないおそれが生じる。これでは、空荷走行時の走行速度を低く設定せざるを得ず、一連の輸送サイクルに要する時間の増加、ひいては完成車両の輸送効率の低下を招きかねない。
【0007】
以上に述べた問題は何も車両に限ったことではなく、例えば軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない架装前車両を輸送する場合にも同様に起こり得る。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、搬送車の安定した姿勢での走行を可能としつつ車両の搭載及び荷下ろしをヤード内で可能とし、これにより多数の車両を短時間で効率よく輸送可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る車両の自動搬送車によって達成される。すなわち、この自動搬送車は、三個以上の車輪と、三個以上の車輪の一部に動力を付与する動力付与部と、車両の一部の車輪を搭載可能な搭載部とを備え、三個以上の車輪は、動力付与部に動力を付与されることにより回転駆動する二個の駆動輪と、一個以上の補助輪であって、補助輪が、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成されている点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明に係る自動搬送車では、三個以上の車輪のうち二個を駆動輪とし、残りの車輪を補助輪とした。駆動輪が二個であれば、従来のように駆動輪が四個の搬送車両と比べて駆動に関わる構造を簡素化できるので、その分だけ自動搬送車の小型化を図ることができる。よって、荷下ろしに必要なスペースを小さくすることができる。また、補助輪があることで、二輪駆動の場合に問題となる走行時の姿勢、特に車両を搭載していない状態で走行する際(空荷走行時)の姿勢を安定させることができる。これにより、空荷走行時の速度を落とさずに済むので、車両の搬送後、短時間で搬送車を搬送元の場所に戻すことが可能となる。また、本発明に係る自動搬送車では、補助輪を、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成した。このようにすれば、上述した空荷走行時には、補助輪を接地状態とすることで、四個の車輪で自動搬送車の走行を図ることができるので、走行時の姿勢を安定させることができる。一方で、車両を搭載した状態では、補助輪を浮上状態とすることで、補助輪が路面の凹凸と干渉して円滑な走行を阻害する事態を可及的に回避することができる。また、車両の一部の車輪(例えば後輪)を接地状態とすることで、補助輪が浮上した状態にあっても、四論が接地した状態で自動搬送車と車両を走行させることができる。そのため、車両を搬送する際の姿勢に特に問題は生じない。以上より、本発明に係る自動搬送車によれば、車両の搭載時と非搭載時(空荷時)の何れにおいても安定した姿勢で走行することができるので、車両の輸送(搬送)を開始してから搬送元に帰還するまでの一連の動作(輸送サイクル)に要する時間を短縮することができる。従って、多数の車両を効率よく輸送することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る自動搬送車において、補助輪が、駆動輪の鉛直方向軸線まわりの所定の回転動作に伴って、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成されてもよい。
【0012】
このように、駆動輪の鉛直方向軸線まわりの回転動作を利用して、補助輪の接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成することによって、自動搬送車の走行モードの切替え動作に伴って自動的に補助輪の鉛直方向位置を制御することができる。すなわち、上記構成の自動搬送車によれば、駆動輪を鉛直方向軸線まわりに90度回転させて駆動輪の向きを車体幅方向から車体前後方向に変更するのに伴い、自動的に補助輪を接地状態から浮上状態へと切替えることができる。また、駆動輪を鉛直方向軸線まわりに90度回転させて駆動輪の向きを車体前後方向から車体幅方向に変更するのに伴い、自動的に補助輪を浮上状態から接地状態へと切替えることができる。よって、補助輪を鉛直方向に移動させるための駆動源を別途設けることなく、低コストにかつ適切なタイミングで補助輪の接地状態と浮上状態とを切替えることが可能となる。
【0013】
あるいは、本発明に係る自動搬送車においては、補助輪が、車両の搭載部への搭載動作に伴って、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成されてもよい。
【0014】
このように、車両の搭載部への搭載動作を利用して、補助輪の接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成することによっても、自動搬送車の走行モードの切替えに際して必須となる動作に伴って自動的に補助輪の鉛直方向位置を制御することができる。すなわち、自動搬送車の走行モードを例えば空荷走行モードから搬送モードに切り替える際には、その前に車両を搭載部に搭載する動作が必要となる。ここで、上記構成の自動搬送車によれば、車両を搭載部に搭載するのに伴い、補助輪を接地状態から浮上状態に切り替えることができるので、走行モードを空荷走行モードから搬送モードに切り替える時点で、確実に補助輪を浮上状態にすることができる。そのため、搭載後、自動搬送車が搬送モードで走行する際には、二個の駆動輪と車両の二輪とが接地状態となっており、安定した姿勢で走行することが可能となる。また、上記構成の自動搬送車によれば、車両を荷下ろしすべく搭載部から降ろすのに伴い、自動的に補助輪を浮上状態から接地状態に切替えることができる。そのため、荷下ろし後、自動搬送車が空荷走行モードで走行しても特に支障なく、二個の駆動輪と補助輪とが接地した状態で安定した姿勢で走行することが可能となる。よって、補助輪を鉛直方向に移動させるための駆動源を別途設けることなく、低コストにかつ確実に補助輪の接地状態と浮上状態とを切替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、搬送車の安定した姿勢での走行を可能としつつ車両の搭載及び荷下ろしをヤード内で可能とし、これにより多数の車両を短時間で効率よく輸送可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る車両の自動搬送システムの全体構成を示す図である。
図2図1に示す自動搬送車の平面図である。
図3図2中のA-A切断線に沿った自動搬送車の要部断面図である。
図4図1に示す自動搬送車に車両を搭載した状態を側面視した図である。
図5図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、車両を搭載した状態の自動搬送車がヤード内の所定位置に向けて移動している状態を示す図である。
図6図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、車両を搭載した自動搬送車がヤード内の所定位置で停止した状態を示す図である。
図7図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、自動搬送車から車両を荷下ろしした状態を示す図である。
図8図1に示す自動搬送車の荷下ろし後における駆動輪の姿勢を示す平面図である。
図9図8に示す状態の自動搬送車を側面視した図である。
図10図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、荷下ろし後の自動搬送車の動作を説明するための図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る自動搬送車の平面図である。
図12図11中のB-B切断線に沿った自動搬送車の要部断面図で、空荷状態における自動搬送車の要部断面図である。
図13図11中のB-B切断線に沿った自動搬送車の要部断面図で、車両が搭載された状態における自動搬送車の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一実施形態に係る車両の自動搬送システムの内容を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両の自動搬送システムの全体構成を示している。図1に示すように、本実施形態に係る自動搬送システム10は、自動搬送車11と、衛星測位システムの受信部12と、自動搬送車11の周囲の空間情報を検知する検知部13と、自動搬送車11の駆動を制御する制御部14とを備える。以下、自動搬送車11の構成を中心に各要素の詳細を説明する。
【0019】
自動搬送車11は、図2に示すように、二個の駆動輪15と、各駆動輪15に動力を付与する動力付与部16と、車両1を搭載可能な搭載部17とを有する。本実施形態では、搭載部17は、車両1の前輪2と後輪3(後述する図4を参照)のうち何れか一方の車輪(ここでは駆動側の車輪となる前輪2)のみを搭載可能に構成されている。各駆動輪15はそれぞれケーシング18に収容されている。また、これら二個のケーシング18は連結部19により互いに連結されている。この場合、連結部19上の幅方向所定位置、すなわち、搭載すべき車両1の前輪2に対応した二箇所の幅方向位置に搭載部17がそれぞれ設けられている。よって、この場合、搭載部17は、二個の駆動輪15の間に配設される。言い換えると、搭載部17は、二個の駆動輪15と車体前後方向で重複する位置に配設される(後述する図4を参照)。なお、ここでいう幅方向とは、車両1を搭載した状態において車体前後方向に直交する向きを意味し、自動搬送車11でいえば二個の駆動輪15が互いに離れている向きに相当する。また、ここでいう車両1には、最終的に消費者が購入可能な状態にある完成車両のみならず、例えば量産される車両であって、軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない、言い換えると架装されていない状態の車両(架装前車両)などが含まれる。
【0020】
次に、駆動輪15の詳細を説明する。本実施形態では、二個の駆動輪15はそれぞれ、図2及び図3に示すように、互いに並列に配置された二個の車輪20で構成されている。各車輪20は、互いに独立して回転可能に構成されると共に、車輪20間に配設された回転軸21に回転可能に支持されている。回転軸21は、自動搬送車11の走行時において、その長手方向を鉛直方向に一致させた状態で配設され、これにより、例えば二個の車輪20を互いに逆方向に回転させることで、あるいは一方の車輪20のみを回転駆動させることで、二個の車輪20を有する駆動輪15が回転軸21まわりに回転し、自動搬送車11としての操舵が可能となる(操舵角を付与することができる)。なお、本実施形態では、二個の車輪20(駆動輪15)は、回転軸21まわりに360度回転可能とされているので、例えば後述する図8に示すように、各駆動輪15(二個の車輪20)をそれぞれ90度回転させた状態で回転駆動することにより、自動搬送車11をその幅方向に移動することが可能となる。
【0021】
本実施形態では、動力付与部16は、図3に示すように、車輪20と同じ数だけ設けられ、各車輪20に回転駆動力を付与する複数のインホイールモータ22で構成されている。各インホイールモータ22は、ステータ23とロータ24とを有する。この場合、ステータ23が回転軸21に固定され、ロータ24は車輪20のホイール25に連結されている。これにより、インホイールモータ22を回転駆動してロータ24を軸回転させることで、ロータ24に連結されたホイール25及びタイヤ26がロータ24と共に回転可能となる。また、後述するように、各インホイールモータ22は独立して電気的に制御可能であるから、上述のように動力付与部16を構成することによって、並列して配設された二個の車輪20をそれぞれ独立して回転駆動できると共に、駆動輪15としてもそれぞれ独立して鉛直方向軸線まわりに回転し、かつ水平方向軸線まわりに回転駆動することが可能となる。
【0022】
自動搬送車11は、一個以上の補助輪27を有する。本実施形態では、二個の補助輪27が自動搬送車11に設けられている。また、これら二個の補助輪27は、自動搬送車11の幅方向に離れて配設されると共に、二個の駆動輪15よりも車両1の車体前後方向の前方側(図2でいえば下方向)に配設されている。よって、この場合、二個の補助輪27は、搭載部17よりも自動搬送車11の車体前方側に位置している。詳述すると、連結部19の車体前方側に板状の支持部28が延長して設けられると共に、支持部28上の所定位置に二個の補助輪27と各補助輪27の回転支持機構29が配設されている。
【0023】
ここで、補助輪27の回転支持機構29は、例えば補助輪27を水平方向軸線まわりにかつ鉛直方向軸線まわりに回転支持するように構成される。この場合、回転支持機構29の構成は原則として任意であり、例えば図示は省略するが、補助輪27の中心を通り補助輪27と一体に軸回転する回転軸と、回転軸を水平方向軸線まわりに回転支持するラジアルベアリングと、ラジアルベアリングを鉛直方向軸線まわりに回転支持するスラストベアリングとで構成してもよい。
【0024】
上述した二個の補助輪27は、切替え装置30により、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成される。本実施形態では、切替え装置30は、駆動輪15の鉛直方向軸線まわりの回転動作に伴って、補助輪27の自動搬送車11本体(例えば支持部28)に対する鉛直方向位置を変更可能に構成されており、例えば図2及び図4に示すように、支持部28上に配設され補助輪27及び回転支持機構29が取付けられた浮上板31と、浮上板31と支持部28との間に挿入可能な挿入板32と、挿入板32を駆動輪15の回転軸21に連結する連結部33とを有する。切替え装置30が上記構成をなす場合、回転軸21を鉛直方向軸線まわりに回転させることで、駆動輪15と連動して挿入板32が駆動輪15と同じ鉛直方向軸線まわりに回転するようになっている。ここで、挿入板32は、駆動輪15の向きが車体前後方向に一致している状態(図2に示す状態)では、浮上板31と支持部28との間に位置するように、挿入板32の回転軸21に対する連結時の位相が調整される。また、挿入板32は、駆動輪15の向きが幅方向に一致している状態(図8に示す状態)では、浮上板31と支持部28との間から外れた位置、ここでは搭載部17の直下に位置するように、挿入板32の回転軸21に対する連結時の位相が調整される。挿入板32が支持部28と浮上板31との間に挿入されることによって、浮上板31が持ち上げられるので、浮上板31に取付けられた補助輪27(及び回転支持機構29)が浮上板31と共に上方に移動するようになっている。また、挿入板32が支持部28と浮上板31との間から外れることによって、浮上板31が自重で下降するので、浮上板31に取付けられた補助輪27(及び回転支持機構29)が浮上板31と共に下方に移動するようになっている。
【0025】
切替え装置30が上述した動作を行う場合、駆動輪15の回転位相に応じて、補助輪27の浮上位置(鉛直方向位置)が調整される。すなわち、図8に示す状態では、補助輪27の鉛直方向位置が最も低く(すなわち補助輪27が接地し)、図2に示す状態では、補助輪27の鉛直方向位置が最も高くなるように、駆動輪15が回転軸21まわりに回転するにつれて、補助輪27が鉛直方向に移動するように構成されている。例えば二個の駆動輪15が、図2に示す状態から図8に示す状態となるようにそれぞれ時計回りと反時計回りに回転するのに伴って、二個の補助輪27は浮上板31と共に下方向に移動し、図8に示す状態まで回転した状態では、二個の補助輪27が接地する。また、二個の駆動輪15が、図8に示す状態から図2に示す状態となるようにそれぞれ反時計回りと時計回りに回転するのに伴って、二個の補助輪27が浮上板31と共に上方向に移動するようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、浮上板31に、挿入板32の挿入を案内する案内面31aが設けられている。また、図示は省略するが、浮上板31の鉛直方向に沿った向きのスライドを案内するためのガイド部を支持部28に設けてもよい。
【0027】
搭載部17は、搭載すべき車両1の車輪(ここでは前輪2)を保持可能な限りにおいて任意の構成をとることができる。例えば本実施形態では、図1及び図2に示すように、輪止め34が搭載部17の車体前方側に設けられており、自動搬送車11の車体後方側から搭載される車両1の前輪2の車体前方側への移動を規制すると共に、車体前後方向への位置決めを図っている。なお、図示は省略するが、前輪2を搭載していない状態では、前輪2の搭載部17上への移動を許容するよう下方に位置し、前輪2が搭載部17上の所定位置に搭載された状態では、相対的に上方に位置し、前輪2の車体後方側への移動を規制する可動式の規制部を設けてもよい。もちろん、前輪2が搭載部17上の所定位置に搭載された時点で、作業者が前輪2の後方側に輪止めを配置してもよい。
【0028】
衛星測位システムの受信部12は、例えばGPS等の衛星測位システム用の衛星(測位衛星)との円滑な通信のために、ポール35の先端に設けるなど、搭載される車両1が通信に与える影響も考慮して、適切な高さ位置に設置するのがよい。
【0029】
検知部13は、例えば光センサなどの物体検出装置36と、カメラ37とを有する。本実施形態では、自動搬送車11の前方側にそれぞれ左右二個の物体検出装置36とカメラ37とが設けられている。なお、これら検知部13の構成は一例に過ぎず、必要に応じて、検知部13を構成する要素の種類、数、配置などを任意に設定することが可能である。
【0030】
制御部14は、二個の駆動輪15と動力付与部16を制御することで、自動搬送車11の操舵を伴う自動走行を可能としている。本実施形態では、制御部14は、複数の自動搬送車11(図1では1台の自動搬送車11のみを示している。)の駆動輪15と動力付与部16の制御をそれぞれ行うことで、各自動搬送車11の操舵を伴う自動走行を可能としている。この場合、制御部14は、統括制御部38と、各自動搬送車11に設けられ統括制御部38との通信内容に基づいて、各自動搬送車11の駆動輪15及び動力付与部16を制御する端末制御部39とで構成される。各端末制御部39は、統括制御部38からの指令と、受信部12を通じて衛星測位システムにより得られた対応する自動搬送車11の位置情報と、検知部13により得られた対応する自動搬送車11の周囲の空間情報とに基づき、対応する自動搬送車11の駆動輪15と動力付与部16とを制御することで、各自動搬送車11の操舵を伴う自動走行を可能としている。
【0031】
次に、上記構成の自動搬送車11を備えた自動搬送システム10の動作の一例を、主に図4図10に基づいて説明する。
【0032】
まず、統括制御部38は、所定の自動搬送車11に指令を送り、自動搬送車11による車両1の搭載動作を開始する。指令を受けた自動搬送車11は、端末制御部39により駆動輪15と動力付与部16を制御して、図示しない搬送元エリア(例えば工場ヤード)に整列配置されている車両1に向けて移動し、前輪2と後輪3のうち何れか一方の車輪に隣接した位置(ここでは前輪2の車体前方側に隣接した位置)で停止する。然る後、自動搬送車11の搭載部17上に車両1の前輪2を搭載する。本実施形態では、車両1が前進することで、前輪2を自動搬送車11の連結部19上に移動する。これにより、連結部19上の幅方向所定位置に配設された搭載部17上に車両1の前輪2が搭載されると共に、車両1の後輪3は接地した状態となる(図4を参照)。この状態において、二個の駆動輪15が図2及び図4に示すように車体前後方向を向いているとき、駆動輪15の向きに対応して挿入板32が所定の位相(連結部33に対して挿入板32が車体前後方向)に位置し、浮上板31と支持部28との間に挿入板32が挿入された状態となる。そのため、挿入板32により浮上板31が押し上げられることで、二個の補助輪27が浮上板31と共に上昇し、路面から離れた状態となる。よって、自動搬送車11が車両1を搭載した搬送モードの状態では、自動搬送車11の車輪のうち二個の駆動輪15のみが接地し、かつ車両1の車輪のうち後輪3のみが接地した状態にある。
【0033】
次に、自動搬送車11は、車両1の一部(前輪2)を搭載した状態で目的地(例えば港の積み替え用ヤード)に向けて移動を開始する。この間の走行は、端末制御部39により、受信部12を通じて衛星測位システムにより得られた自動搬送車11の位置情報と、検知部13(物体検出装置36、カメラ37)により得られた自動搬送車11の周囲の空間情報とに基づき、自動搬送車11の駆動輪15及び動力付与部16を制御することによって自動的に行われる。また、この間の自動搬送車11の走行は、自動搬送車11の二個の駆動輪15と車両1の後輪3とが接地した状態で行われる。二個の補助輪27は何れも浮上した状態にあり、路面から離れた状態にある。
【0034】
そして、車両1を搭載した自動搬送車11が目的地に到着すると、次に、目的地内の所定位置、ここでは図5に示すように、ヤード40内の所定位置(搬送中の車両1の荷下ろしスペースP1)に向けて車両1を搬送する。ここで車両1の一部は、平面視した状態で自動搬送車11と重複した位置にある。そのため、例えば図6に示すように、本来荷下ろしすべき位置(荷下ろしスペースP1と完全に重複する位置)よりも重複している分だけ車体前方側で車両1を停止させる。そして、この状態から車両1を後退させて、搭載部17上から車両1の前輪2を地面に降ろす(図7に示す状態)。これにより、車両1の荷下ろしスペースP1への荷下ろしが完了する。
【0035】
このようにして荷下ろしが完了した後、自動搬送車11は、作業者からの指示(スイッチ等による何らかの操作)を受けて、又は搭載部17に作用する負荷の低下など車両1が荷下ろしされたことを各種センサ等により自ら検知して、ヤード40内からの退避を開始する。本実施形態のように、荷下ろしスペースP1のまわりに、ヤード40内に既に荷下ろしされた複数の車両1’が存在する場合、これら複数の車両1’は車体前後方向及び幅方向に所定の間隔を空けた状態で整列配置されている(図5等を参照)。そのため、自動搬送車11は、荷下ろしを終えた状態において、二個の駆動輪15を共に回転軸21まわりに90度回転させる(図8を参照)。然る後、駆動輪15を動力付与部16により回転駆動させて、自動搬送車11の荷下ろし時の姿勢を維持した状態で幅方向に移動を開始する(図10を参照)。
【0036】
また、本実施形態では、上述のように二個の駆動輪15を共に回転軸21まわりに90度回転させることによって、回転軸21に連結された挿入板32が駆動輪15と連動して回転軸21まわりに駆動輪15と同じ角度(ここでは90度)だけ回転する。これにより、図8及び図9に示すように、浮上板31と支持部28との間から挿入板32が外れて、浮上板31が自重で下降する。その結果、浮上板31に取付けられた補助輪27が下方向に移動して、接地した状態となる。よって、上述のように、自動搬送車11が幅方向に移動を開始した際、自動搬送車11の走行は、二個の駆動輪15だけでなく二個の補助輪27を接地させた状態で行われる。
【0037】
なお、上述した駆動輪15の回転は、本実施形態のようにインホイールモータ22によって各車輪20が独立駆動する場合、互いに逆向きに回転させることによって、又は一方の車輪20のみを回転駆動することによって可能となる。
【0038】
以上のようにして自動搬送車11のヤード40内からの退避が行われる。退避した自動搬送車11は、空荷状態(車両1を搭載していない状態)で操舵を伴う自動走行を行い、搬送元の場所に戻る。この際の走行は、それぞれ二個の駆動輪15と補助輪27が接地した状態で行われるので、走行時の姿勢を問わず、安定的な継続走行が可能となる。以上述べた一連の動作を繰り返し行うことで、繰り返した回数分の車両1が目的地に向けて自動搬送される。また、上述した一連の動作を他の自動搬送車11に対しても同時又は順次に行わせることで、使用した自動搬送車11の数と同数の車両1が順次目的地に向けて自動搬送される。この場合、複数の自動搬送車11の制御は、各自動搬送車11に設けられた端末制御部39と、統括制御部38との(無線)通信により行われる。
【0039】
以上述べたように、本実施形態に係る自動搬送車11及びこの自動搬送車11を用いた自動搬送システム10によれば、自動搬送車11に操舵を伴う自動走行機能を設けたので、車両1の輸送を無人で行うことができる。また、無人で自動搬送車11を走行させることができるので、従来の輸送用車両にあったキャビンの分だけ自動搬送車11の小型化を図ることができる。また、本実施形態に係る自動搬送車11では、三個以上の車輪のうち二個を駆動輪15とし、残りの車輪を補助輪27とした。駆動輪15が二個であれば、従来のように駆動輪15が四個の搬送車両と比べて駆動に関わる構造を簡素化できるので、その分だけ自動搬送車11の小型化を図ることができる。よって、荷下ろしに必要なスペースを小さくすることができる。また、補助輪27があることで、二輪駆動の場合に問題となる走行時の姿勢、特に車両1を搭載していない状態で走行する際(空荷走行時)の姿勢を安定させることができる。これにより、空荷走行時の速度を落とさずに済むので、車両1の搬送後、短時間で自動搬送車11を搬送元の場所にまで戻すことが可能となる。また、本実施形態に係る自動搬送車11では、補助輪27を、切替え装置30により、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成した。このようにすれば、上述した空荷走行時には、補助輪27を接地状態とすることで、四個の車輪(それぞれ二個の駆動輪15と補助輪27)で自動搬送車11の走行を図ることができるので、走行時の姿勢を安定させることができる。一方で、車両1を搭載した状態では、補助輪27を浮上状態とすることで、補助輪27が路面の凹凸と干渉して円滑な走行を阻害する事態を可及的に回避することができる。また、車両1の車輪の一部(例えば後輪3)を接地状態とすることで、補助輪27が浮上した状態にあっても、四論が接地した状態で自動搬送車11と車両1を走行させることができる。そのため、車両1を搬送する際の姿勢に特に問題は生じない。以上より、本実施形態に係る自動搬送車11によれば、車両1の搭載時と非搭載時(空荷時)の何れにおいても安定した姿勢で走行することができるので、車両1の輸送(搬送)を開始してから搬送元に帰還するまでの一連の動作(輸送サイクル)に要する時間を短縮することができる。従って、多数の車両1を効率よく輸送することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、駆動輪15の回転軸21に挿入板32を連結して、駆動輪15の鉛直方向軸線まわりの回転動作に連動して挿入板32が回転して浮上板31と支持部28との間を出し入れすることによって、浮上板31に取付けられた補助輪27の接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成した。この構成によれば、例えば自動搬送車11の走行モードの切替え動作に伴って自動的に補助輪27の鉛直方向位置を制御することができる。すなわち、図2に示すように、車両1を搭載した状態での走行モード、すなわち搬送モードでは、自動搬送車11の駆動輪15は車両1の車体前後方向を指向した状態で回転駆動を行う。そのため、駆動輪15が車体前後方向を向いた状態で、挿入板32が浮上板31と支持部28との間に位置するように、挿入板32を回転軸21に連結することにより、駆動輪15の向きを幅方向から車体前後方向に90度変更するのに伴い、自動的に補助輪27が接地状態から浮上状態へと切替わる。また、駆動輪15が幅方向を向いた状態で、挿入板32が浮上板31と支持部28との間から外れるように、その連結位置を設定することにより、駆動輪15の向きを車体前後方向から幅方向に90度変更するのに伴い、自動的に補助輪27が浮上状態から接地状態へと切替わる。よって、補助輪27を鉛直方向に移動させるための駆動源を別途設けることなく、低コストにかつ適切なタイミングで自動的に補助輪27の接地状態と浮上状態とを切替えることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の第一実施形態について述べたが、本発明に係る自動搬送車は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0042】
例えば上記実施形態では、切替え装置30として、浮上板31と挿入板32、及び連結部33とを有するものを例示したが、もちろんこれには限定されない。駆動輪15の鉛直方向軸線まわりの回転動作に連動して、補助輪27の接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成される限りにおいて、切替え装置30は、任意の構成をとることが可能である。例えば図示は省略するが、浮上板31を省略して、回転軸21と連動して回転ないし回転以外の動作を行う機構を設けて、当該動作部が補助輪27を直接的に上下動させる構成としてもよい。
【0043】
もちろん、本発明に係る切替え装置は、駆動輪15の鉛直方向軸線まわりの回転動作によって補助輪27を接地状態と浮上状態とに切替え可能に構成されるものには限定されない。すなわち、本発明に係る切替え装置は、上述した駆動輪15の回転動作に限らず自動搬送車11の要素が生じる何らの動作又は所定の状態への変化をスイッチとして、補助輪27を接地状態と浮上状態とに切替え可能に構成するものであってもよい。図11は、その一例(本発明の第二実施形態)に係る自動搬送車41を平面視した図である。また、図12は、自動搬送車41の要部である切替え装置42の断面図を示している。図11及び図12に示すように、本実施形態に係る自動搬送車41は、切替え装置42の構成において、図2等に示す第一実施形態と相違している。すなわち、この切替え装置42は、補助輪27が、車両1の搭載部17への搭載動作に伴って、接地状態と前記浮上状態とを切替え可能に構成されている点において、第一実施形態のそれと相違している。
【0044】
詳述すると、この切替え装置42は、例えば互いに噛み合うラック44,46,47,49と、ピニオン45,48とで構成される。ここで、第一ラック44は、可動式の載置台43に設けられている。この可動式の載置台43は車両1の搭載部17に配置されており、第一ラック44と共に鉛直方向に移動可能とされている。また、第二ラック46及び第三ラック47は、ともに回転支持機構29の外側部に設けられており、補助輪27及び回転支持機構29と共に鉛直方向に移動可能とされている。第一ラック44と第二ラック46との間には、各ラック44,46とそれぞれ噛み合う第一ピニオン45が配設されている。言い換えると、第二ラック46は、回転支持機構29の外側部のうち第一ピニオン45と噛み合い可能な位置に設けられている。また、第三ラック47は、回転支持機構29のうち第二ピニオン48と噛み合い可能な位置に設けられている。第四ラック49は、支持部28に設けられており、第三ラック47と共に第二ピニオン48と噛み合い可能な位置に設けられている。本実施形態では、図11に示すように、車体前後方向に沿って、その後方側から第一ラック44、第一ピニオン45、第二ラック46、第三ラック47、第二ピニオン48、第四ラック49の順に配設されている。
【0045】
また、載置台43は、その下方をばね等の弾性体50で支持されており、載置台43に車両1の一部(前輪2)が搭載された状態では下方に移動し(図13を参照)、車両1が載置台43上から降ろされた状態では、弾性体50の復元力により車両1を搭載していないときの鉛直方向位置まで戻る(上昇する)ようになっている(図12を参照)。
【0046】
上記構成の切替え装置42は、例えば以下のように動作する。すなわち、車両1の前輪2が載置台43上に載置されると、車両1の自重で載置台43が押し下げられる。この押し下げ動作に伴い、第一ラック44が載置台43と共に下方に移動する。これに伴い、第一ラック44と共に第一ピニオン45と噛み合い状態にある第二ラック46が上方に移動する向きの力を受ける。ここで、第二ラック46は回転支持機構29に設けられ、回転支持機構29は鉛直方向に移動可能に構成されている。また、回転支持機構29には第三ラック47が設けられ、この第三ラック47は、支持部28に固定された第四ラック49と共に第二ピニオン48と噛み合った状態にある。よって、第二ラック46が上方に移動する向きの力を受けることで、補助輪27及び回転支持機構29が上方に移動する。これにより、補助輪27が浮上した状態となる(図13に示す状態)。
【0047】
また、車両1が載置台43上から降ろされて、載置台43に作用していた下向きの力(車両1の自重)が取り除かれることで、載置台43は弾性体50により非搭載時の鉛直方向位置(図12に示す位置)に戻る。この移動に伴い、第一ラック44が載置台43と共に上方に移動し、第一ラック44と共に第一ピニオン45と噛み合い状態にある第二ラック46が下方に移動する向きの力を受ける。よって、この場合には、補助輪27及び回転支持機構29が第二ラック46と共に下方に移動する。これにより、補助輪27が接地した状態となる(図12に示す状態)。
【0048】
このように、本実施形態に係る自動搬送車41では、切替え装置42を、車両1の搭載部17への搭載動作を利用して、補助輪27の接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成した。このように切替え装置42を構成することによっても、自動搬送車41の走行モードの切替え動作に伴って自動的にかつ容易に補助輪27の鉛直方向位置を制御することができる。すなわち、本実施形態に係る切替え装置42を備えた自動搬送車41によれば、車両1を搭載部17に搭載するのに伴い、自動的に補助輪27が接地状態から浮上状態へと切替わる。そのため、車両1の搭載後、自動搬送車41が搬送モードで走行しても特に支障なく、二個の駆動輪15と車両1の二輪(ここでは後輪3)とで安定した姿勢で走行することが可能となる。また、車両1を荷下ろしすべく搭載部17から降ろすのに伴い、自動的に補助輪27が浮上状態から接地状態へと切替わる。そのため、荷下ろし後、自動搬送車41が空荷走行モードで走行しても特に支障なく、二個の駆動輪15と補助輪27とで安定した姿勢で走行することが可能となる。また、本実施形態では、複数のラック44,46,47,49とピニオン45,48とによって載置台43と補助輪27とが互いに鉛直方向で逆向きに移動するように構成したので、低コストにかつ自動的に補助輪27の接地状態と浮上状態とを切替えることが可能となる。また、本実施形態に係る構成によれば、駆動輪15の操舵角とは独立して補助輪27の接地状態と浮上状態とを切替えることができるので、例えば自動走行中に操舵角を大きくとることがあっても、補助輪27の鉛直方向位置を一定に保って安定した走行が可能となる。
【0049】
なお、上記構成は切替え装置42の一例に過ぎない。車両1の載置動作を利用して補助輪27の鉛直方向位置を制御可能な限りにおいて、切替え装置42は図示以外の構成をとることも可能である。例えば補助輪27を鉛直方向に移動可能に構成すると共に、車両1が搭載部17上に搭載されたことを各種センサで検知して、モータ、油圧シリンダなどの駆動装置により補助輪27に上向きの移動力を付与してもよい。あるいは、車両1が搭載部17上に搭載されるのに伴い搭載部17に作用する車両1の自重を液圧に変換して、変換した液圧を動力として上述した駆動装置により補助輪27に上向きの移動力を付与してもよい。
【0050】
また、以上の説明では、自動搬送車11,41の車体前後方向の一方側に二個の補助輪27を幅方向に並べて配設した構成を例示したが、補助輪27の数並びに構成は任意である。すなわち、何れも図示は省略するが、一個又は三個以上の補助輪27を幅方向に並べて配設してもよい。また、自動搬送車11,41の車体前後方向の両側にそれぞれ一又は複数個の補助輪27を配設してもよい。あるいは、自動搬送車11,41の駆動輪15よりも幅方向外側にそれぞれ一個以上の補助輪27を配設してもよい。
【0051】
また、自動搬送車11,41に補助輪27が複数設けられる場合、必ずしも全ての補助輪27が、接地状態と浮上状態とを切替え可能に構成される必要はない。補助輪27の位置及びサイズ等を勘案して、必要とされる一部の補助輪27についてのみ、本発明に係る切替え装置30,42を適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、統括制御部38からの指令を受けて端末制御部39が自動搬送車11,41の駆動輪15及び動力付与部16を制御する場合を例示したが、例えば統括制御部38を省略し、端末制御部39のみで自動搬送車11,41の自動走行を制御してもかまわない。この場合、例えば予め搭載及び荷下ろしを伴う自動搬送に関するプログラムを端末制御部39に記憶させておき、作業者の所定の操作により上記プログラムに基づいて、駆動輪15及び動力付与部16を駆動制御するようにしてもよい。
【0053】
また、図1に示す自動搬送システム10では、車両1の前輪2のみを搭載部17に搭載可能とした場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、車両1の前輪2と後輪3のうち後輪3のみを搭載部17に搭載可能に構成することも可能である。
【0054】
また、以上の説明では、各駆動輪15を並列配置された二個の車輪20で構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成をとることも可能である。一例として、駆動輪15を一個の車輪20で構成する場合を挙げることができる。
【0055】
また、以上の説明では、動力付与部16として、複数のインホイールモータ22を設けた場合を例示したが、もちろんこれには限られない。駆動輪15に所定の動力(回転駆動力)を付与可能な限りにおいて、任意の構成の駆動源を動力付与部16として自動搬送車11,41に設けることが可能である。
【0056】
また、以上の説明では、自動搬送車11,41は、車両1の前輪2又は後輪3のみを搭載可能とした場合を例示したが、本発明は、前輪2と後輪3以外の部分を自動搬送車11,41と非接触の状態で車両1を搭載する形態には限定されない。必要に応じて、例えば自動搬送車11,41に車両1の一部を上昇させるリフトアップ機構を設ける場合、このリフトアップ機構により車両1の前輪2と後輪3以外の部分を下方から支持して上昇させ得る構成をとることも可能である。もちろん、自動搬送車11,41にリフトダウン機構を設ける場合、このリフトダウン機構により車両1の前輪2と後輪3以外の部分を下方から支持した状態で下降させ得る構成をとることも可能である。また、この場合、リフトアップ機構はリフトダウン機構を兼ねるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
2 前輪
3 後輪
10 自動搬送システム
11,41 自動搬送車
12 受信部
13 検知部
14 制御部
15 駆動輪
16 動力付与部
17 搭載部
18 ケーシング
19 連結部
20 車輪
21 回転軸
22 インホイールモータ
26 タイヤ
27 補助輪
28 支持部
29 回転支持機構
30,42 切替え装置
31 浮上板
31a 案内面
32 挿入板
33 連結部
36 物体検出装置
37 カメラ
38 統括制御部
39 端末制御部
40 ヤード
43 載置台
44,46,47,49 ラック
45,48 ピニオン
50 弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13