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特許7381194検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置と検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査方法並びに組立装置用可変治具と加工装置用可変治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置と検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査方法並びに組立装置用可変治具と加工装置用可変治具
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20231108BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01M3/04 H
G01M3/20 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018147849
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020024112
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(73)【特許権者】
【識別番号】518280848
【氏名又は名称】株式会社クレボ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】吉良 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 英司
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-050588(JP,U)
【文献】特開2005-059864(JP,A)
【文献】特開2003-181686(JP,A)
【文献】実公昭48-039279(JP,Y1)
【文献】特開2005-098858(JP,A)
【文献】特開2003-103427(JP,A)
【文献】特開2010-179449(JP,A)
【文献】特開平05-023939(JP,A)
【文献】中国実用新案第204471253(CN,U)
【文献】国際公開第2014/137115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
B23Q 3/00- 3/154
B23Q 3/16- 3/18
B23K 31/00- 31/02
B23K 31/10- 33/00
B23K 37/00- 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置用可変治具を用いてバルブなどの圧力機器よりなるワークを耐圧検査する圧力機器の耐圧検査装置であり、前記検査装置用可変治具は、前記ワークを支持する治具本体が備えられ、この治具本体の両側には、支持面を有する支持部が設けられ、一方側の前記支持部は、支点で軸支された一対のプレート状支持部材と、これら支持部材の間に配置されるピン部材とを有し、このピン部材は、モータを介して垂直方向に移動可能に設けられ、このピン部材の垂直動作が前記双方の支持部材の前記支点を中心とした回転による角度変化に変換され、前記支持面が成す略V字状のテーパ角度が前記ワークに形成された角形状の締付接合部の所定の傾斜角度に合わせて調節可能に設けられると共に、前記支持面同士の相互の高さや間隔が、前記ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じてそれぞれ設定可能に設けられ、前記ワークに形成された多角形状の締付接合部の傾斜角度に応じて前記支持面のテーパ角度を調節し、前記ワークを治具本体の同軸上に挟持した状態で耐圧検査可能に設けたことを特徴とする検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置。
【請求項2】
前記支持部の残りの一方側が、略Y字形に一体形成され、この支持部は、前記モータとは別のモータを介して垂直動作自在に設けられている請求項1に記載の検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置。
【請求項3】
前記支持部の何れか一方側が、モータを介して水平動作自在に設けられた請求項1又は2に記載の検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置。
【請求項4】
先方側にコ字形部を有する矯正保持具を備え、この矯正保持具がモータを介して垂直及び水平方向に移動自在に設けられると共に前記コ字形部の間隔が調整可能に設けられ、このコ字形部で前記ワークの遠心方向に形成された突出部を挟んでワークを回転不能に保持した請求項1乃至3の何れか1項に記載の検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置。
【請求項5】
バルブなどの圧力機器からなる前記ワークに付与された固有のデータを入力部から入力し、その入力データに応じて前記ワークの締付接合部の傾斜角度に対応して前記支持面のテーパ角度を調節すると共に、少なくとも一方側の前記支持面を垂直方向及び水平方向に移動させることにより、前記ワークを前記治具本体に同軸上に挟持し、この状態で耐圧検査を施すようにした請求項1乃至4の何れか1項に記載の検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査方法。
【請求項6】
各種組立装置で組立てられるワークを支持する治具本体が備えられ、この治具本体の両側には、支持面を有する支持部が設けられ、一方側の前記支持部は、支点で軸支された一対のプレート状支持部材と、これら支持部材の間に配置されるピン部材とを有し、このピン部材は、モータを介して垂直方向に移動可能に設けられ、このピン部材の垂直動作が前記双方の支持部材の前記支点を中心とした回転による角度変化に変換され、前記支持面が成す略V字状のテーパ角度が前記ワークに形成された角形状の締付接合部の所定の傾斜角度に合わせて調節可能に設けられると共に、前記支持面同士の相互の高さや間隔が、前記ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じてそれぞれ設定可能に設けられ、前記組立装置は、前記ワークに形成された軸装部に操作軸部を装入する装置であることを特徴とする組立装置用可変治具。
【請求項7】
各種加工装置で加工されるワークを支持する治具本体が備えられ、この治具本体の両側には、支持面を有する支持部が設けられ、一方側の前記支持部は、支点で軸支された一対のプレート状支持部材と、これら支持部材の間に配置されるピン部材とを有し、このピン部材は、モータを介して垂直方向に移動可能に設けられ、このピン部材の垂直動作が前記双方の支持部材の前記支点を中心とした回転による角度変化に変換され、前記支持面が成す略V字状のテーパ角度が前記ワークに形成された角形状の締付接合部の所定の傾斜角度に合わせて調節可能に設けられると共に、前記支持面同士の相互の高さや間隔が、前記ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じてそれぞれ設定可能に設けられ、前記加工装置は、前記ワークに形成された軸装部の内周に雌螺子を形成する装置であることを特徴とする加工装置用可変治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、バルブの耐圧検査などに使用される検査装置用可変治具とこれを用いた圧力機器の耐圧検査装置及び耐圧検査方法並びに組立装置用可変治具と加工装置用可変治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、バルブなどの圧力機器の耐圧検査をおこなう場合には、一般に被検査体であるバルブのボデーを両側から支えた状態で、内部に流体圧を加えて外部への漏れの確認をおこなうようになっている。このように被検査体などの対象物をワークとして保持して耐圧検査などの各種検査を実施したり、或は組立や加工を施す場合には、呼び径や外形、大きさなどの異なる対象物を保持することもあり、この場合、これらの違いに対応できるような各種装置が用いられる。
【0003】
対象物を保持するために用いられる装置として、例えば、特許文献1のバルブ用耐圧検査装置が開示されている。この検査装置においては、保持される対象物である逆止弁の第1・第2ポートにそれぞれ連結される第1・第2パイプを有し、これら第1・第2パイプを支持する第1支持部と第2支持部とを有している。第1支持部と第2支持部とは、その間隔がガイド機構により調整可能に設けられ、これにより、面間寸法の異なる対象物であるバルブを取付けて検査するようになっている。
【0004】
一方、保持される対象物の外形が略円柱状或は略円筒状である場合には、その両側を下方から支持体で下方から支持し、支持体に形成された略V字状の溝に載置して保持しようとする装置が一般に知られている(例えば、特許文献2参照。)。このような装置では、対象物の両側で異なる形状や外径に対応させるために、支持体の一方或は双方が昇降動可能に設けられ、その両側の高さを合わせて芯出しした状態で載置できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-98858号公報
【文献】特開2005-313248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の特許文献1の検査装置は、主としてフランジ形の逆止弁が保持される対象物としており、フランジ形以外のバルブを取付けることは難しい。仮に、ねじ込み形等のフランジレス形のバルブを対象物とした場合、バルブが芯出しされない状態で両側が保持されることがあり、その結果、バルブが傾いて両端面と装置の取付け面とに隙間が発生して漏れが生じる可能性がある。このことから、フランジ形バルブが対象物である場合には耐圧検査用として適していない。
この検査装置は、逆止弁のフランジを両側から挟み込んで保持する構造であるため、装置全体がバルブの挟着方向である長さ方向に長くなり、大型化するという問題も有している。
【0007】
一方、後者の特許文献2の芯出し装置では、保持される対象物が円柱状部材であるときの芯出しを対象とし、その回転が許容された状態で支持されるようになっている。このため、仮に対象物がボデー外周に六角や八角などの角形部を有するねじ込み形バルブである場合、支持体に形成されたテーパ状の支持面では角形部の保持が難しくなり、流路を中心にバルブが回転してステム軸装部が垂直方向から傾いた状態で取付けられることがある。これにより、耐圧検査時にステム軸装部側の適切な位置への漏れ検知用のセンサの配置が難しくなり、漏れを正確に検知できなくなるおそれがある。
このように、特許文献2においては、対象物の回転を防いだ状態で取付けることはできない。
【0008】
これらに加え、一般的に対象物を保持するための装置では、対象物ごとに異なる両側の形状や両側部の間隔などに合わせるために、対象物保持用の治具を交換する必要が生じることがある。この場合、段取り工数が増加することで、例えば、多品種少量生産など、両側形状や両側部同士の間隔などの外形の異なるワークに頻繁に交換する場合には、その対応が難しくなる。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、全体のコンパクト化を図りつつ、傾きや回転を防いだ状態でワークを芯出し状態で保持可能とし、ワークの外形が頻繁に変わる場合にも交換を必要とすることなく対応可能な検査装置用可変治具と、これを用いたバルブなどの圧力機器の耐圧検査装置及び耐圧検査方法並びに組立装置用可変治具と加工装置用可変治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、検査装置用可変治具を用いてバルブなどの圧力機器よりなるワークを耐圧検査する圧力機器の耐圧検査装置であり、検査装置用可変治具は、ワークを支持する治具本体が備えられ、この治具本体の両側には、支持面を有する支持部が設けられ、一方側の支持部は、支点で軸支された一対のプレート状支持部材と、これら支持部材の間に配置されるピン部材とを有し、このピン部材は、モータを介して垂直方向に移動可能に設けられ、このピン部材の垂直動作が双方の支持部材の支点を中心とした回転による角度変化に変換され、支持面が成す略V字状のテーパ角度がワークに形成された角形状の締付接合部の所定の傾斜角度に合わせて調節可能に設けられると共に、支持面同士の相互の高さや間隔が、ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じてそれぞれ設定可能に設けられ、ワークに形成された多角形状の締付接合部の傾斜角度に応じて支持面のテーパ角度を調節し、ワークを治具本体の同軸上に挟持した状態で耐圧検査可能に設けた検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、支持部の残りの一方側が、略Y字形に一体形成され、この支持部は、モータとは別のモータを介して垂直動作自在に設けられている検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、支持部の何れか一方側が、モータを介して水平動作自在に設けられた検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、先方側にコ字形部を有する矯正保持具を備え、この矯正保持具がモータを介して垂直及び水平方向に移動自在に設けられると共にコ字形部の間隔が調整可能に設けられ、このコ字形部でワークの遠心方向に形成された突出部を挟んでワークを回転不能に保持した検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、バルブなどの圧力機器からなるワークに付与された固有のデータを入力部から入力し、その入力データに応じてワークの締付接合部の傾斜角度に対応して支持面のテーパ角度を調節すると共に、少なくとも一方側の支持面を垂直方向及び水平方向に移動させることにより、ワークを治具本体に同軸上に挟持し、この状態で耐圧検査を施すようにした検査装置用可変治具を用いた圧力機器の耐圧検査方法である。
【0016】
請求項6に係る発明は、各種組立装置で組立てられるワークを支持する治具本体が備えられ、この治具本体の両側には、支持面を有する支持部が設けられ、一方側の支持部は、支点で軸支された一対のプレート状支持部材と、これら支持部材の間に配置されるピン部材とを有し、このピン部材は、モータを介して垂直方向に移動可能に設けられ、このピン部材の垂直動作が双方の支持部材の支点を中心とした回転による角度変化に変換され、支持面が成す略V字状のテーパ角度がワークに形成された角形状の締付接合部の所定の傾斜角度に合わせて調節可能に設けられると共に、支持面同士の相互の高さや間隔が、ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じてそれぞれ設定可能に設けられ、組立装置は、ワークに形成された軸装部に操作軸部を装入する装置である組立装置用可変治具である。
【0018】
請求項7に係る発明は、各種加工装置で加工されるワークを支持する治具本体が備えられ、この治具本体の両側には、支持面を有する支持部が設けられ、一方側の支持部は、支点で軸支された一対のプレート状支持部材と、これら支持部材の間に配置されるピン部材とを有し、このピン部材は、モータを介して垂直方向に移動可能に設けられ、このピン部材の垂直動作が双方の支持部材の支点を中心とした回転による角度変化に変換され、支持面が成す略V字状のテーパ角度がワークに形成された角形状の締付接合部の所定の傾斜角度に合わせて調節可能に設けられると共に、支持面同士の相互の高さや間隔が、ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じてそれぞれ設定可能に設けられ、加工装置は、ワークに形成された軸装部の内周に雌螺子を形成する装置である加工装置用可変治具である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、ワークを支持する治具本体を備え、この治具本体の両側の支持部の支持面で下方からワークを支持する構造であることにより、長さ方向の寸法を短くして全体のコンパクト化を図ることができる。支持部材の間にピン部材を配置し、このピン部材をモータを介して垂直方向に移動可能に設け、一方側の支持部の支持面が成すテーパ角度を、ワークの角形状の締付接合部の傾斜角度に合わせて調節可能としていることにより、モータの動作により簡便に支持面のテーパ角度を調整し、自動化を図ることで連続して迅速に検査可能としつつ、支持面に締付接合部を面接触状態で密接させて載置方向の軸を中心とした回転を防ぐ。しかも、支持面同士の相互の高さや間隔を、ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じて設定可能に設けていることで、ワークの軸方向の傾きを防いで芯出し状態で支持することができ、これによってワークを保持した状態で、このワークに対して各種の検査装置による検査が可能となる。しかも、多品種のワークを少量ずつ検査する際に、頻繁にワークの両側形状や両側部同士の間隔などの外形が変わる場合であっても、治具本体の交換を必要とすることなくあらゆる形状のワークを保持可能であるため、検査時における段取り工数を減少させることができる。
長さ方向の寸法の短い治具本体を用いて縦型のコンパクトな耐圧検査装置を提供できる。ワークがねじ込み形のバルブなどのフランジレス形バルブ等の圧力機器である場合、このワークの流路軸を中心とする回転を防いだ状態で、流路軸方向の傾きを防いで芯出し状態で位置ずれを防止しながら支持可能になる。これにより、バルブの完成品や、組立て途中の半完成品がワークであって、このワークの両側の形状や面間距離が異なる場合であっても、自動化を図りつつ簡便に耐圧検査することも可能となる。
【0022】
請求項2に係る発明によると、支持部の残りの一方側の構造を簡略化しつつ、ワークに設けられた円筒部などの円形部位のずれを防いだ状態で支持可能であり、この支持部とテーパ角度調節側の支持部との両側でワークを芯出し状態で位置決めできる。支持部の残りの一方側を、別のモータを介して垂直動作自在に設けたことで、支持面同士の高さを揃えて芯出し状態でワークを支持できる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、支持部の一方側をモータを介して水平動作自在に設けていることで、支持部の相互の間隔を設定し、面間距離の異なるワークに対しても両側付近を支持して安定状態に取付可能となる。
【0025】
請求項4に係る発明によると、ワークの突出部の位置や大きさに合わせてこの突出部を矯正保持具のコ字形部で挟んでワークを回転不能に保持することで、突出部のずれを防止しつつその向きを保持し、この突出部を介して各種の検査を実施することが可能になる。
【0027】
請求項5に係る発明によると、バルブなどの圧力機器からなるワーク固有のデータを入力することで、この入力データに応じてワークごとに異なる締付接合部の傾斜角度、ワーク両側の形状、面間距離に応じて支持面のテーパ角度、支持面の垂直方向及び水平方向への移動量を設定し、ワークを治具本体の所定位置に同軸上に挟持して、自動化を図りつつ簡便に耐圧検査することが可能になる。
【0028】
請求項6に係る発明によると、ワークを支持する治具本体を備え、この治具本体の両側の支持部の支持面で下方からワークを支持する構造であることにより、長さ方向の寸法を短くして全体のコンパクト化を図ることができる。支持部材の間にピン部材を配置し、このピン部材をモータを介して垂直方向に移動可能に設け、一方側の支持部の支持面が成すテーパ角度を、ワークの角形状の締付接合部の傾斜角度に合わせて調節可能としていることにより、モータの動作により簡便に支持面のテーパ角度を調整し、自動化を図ることで連続して迅速に組立可能としつつ、支持面に締付接合部を面接触状態で密接させて載置方向の軸を中心とした回転を防ぐ。しかも、支持面同士の相互の高さや間隔を、ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じて設定可能に設けていることで、ワークの軸方向の傾きを防いで芯出し状態で支持することができ、これによってワークを保持した状態で、このワークに対して各種の組立装置による組立てが可能となる。しかも、多品種少量生産する際に、頻繁にワークの両側形状や両側部同士の間隔などの外形が変わる場合であっても、交換を必要とすることなくあらゆる形状のワークを保持可能であるため、組立時における段取り工数を減少させることができる。
ワークを適切に保持した状態でこのワークに形成された軸装部に操作軸部を装入することができ、各種形状のワークに対応して操作軸部を軸装部の所定位置に正確に装着できる。
【0030】
請求項7に係る発明によると、ワークを支持する治具本体を備え、この治具本体の両側の支持部の支持面で下方からワークを支持する構造であることにより、長さ方向の寸法を短くして全体のコンパクト化を図ることができる。支持部材の間にピン部材を配置し、このピン部材をモータを介して垂直方向に移動可能に設け、一方側の支持部の支持面が成すテーパ角度を、ワークの角形状の締付接合部の傾斜角度に合わせて調節可能としていることにより、モータの動作により簡便に支持面のテーパ角度を調整し、自動化を図ることで連続して迅速に加工可能としつつ、支持面に締付接合部を面接触状態で密接させて載置方向の軸を中心とした回転を防ぐ。しかも、支持面同士の相互の高さや間隔を、ワークの両側の形状の違いや面間距離に応じて設定可能に設けていることで、ワークの軸方向の傾きを防いで芯出し状態で支持することができ、これによってワークを保持した状態で、このワークに対して各種の加工装置による加工が可能となる。しかも、多品種少量生産する際に、頻繁にワークの両側形状や両側部同士の間隔などの外形が変わる場合であっても、交換を必要とすることなくあらゆる形状のワークを保持可能であるため、加工時における段取り工数を減少させることができる。
ワークを適切に保持した状態でこのワークに形成された軸装部の内周に雌螺子を加工することができ、各種形状のワークに対応して雌螺子を軸装部の所定位置に正確に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】圧力機器の耐圧検査装置を示す概略断面図である。
図2】本発明の検査装置用可変治具の使用状態の一例を示す斜視図である。
図3図2の側面図である。
図4】(a)は、図2の一部省略正面図である。(b)は、図2の一部省略背面図である。
図5】(a)は、図4(a)の一部拡大正面図である。(b)は、(a)の軸部材付近を示す模式図である。
図6】耐圧予備検査における検査ラインを示すブロック図である。
図7】(a)は、検査装置用可変治具の使用状態の他例を示す斜視図である。(b)は、(a)の一部拡大正面図である。
図8】(a)は、検査装置用可変治具の使用状態の更に他例を示す斜視図である。(b)は、(a)の一部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明における検査装置用可変治具とこれを用いたバルブなどの圧力機器の耐圧検査装置及び耐圧検査方法並びに組立装置用可変治具と加工装置用可変治具を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1においては、圧力機器の耐圧検査装置の概略断面図、図2においては、検査装置用可変治具の使用状態の一例を示している。
【0034】
図1に示した圧力機器の耐圧検査用の装置本体1は、保持されるワーク2を被検査物とし、このワーク2にサーチガスを供給し、ワーク2の耐圧検査、より具体的には後述する耐圧本検査前の耐圧予備検査を実施可能としたものであり、この装置本体1の後述の枠体10内に本発明の検査装置用可変治具(以下、治具本体81という)が設けられる。
【0035】
治具本体81は、支持部82、83、モータ84、85、86、87を有し、支持部82、83によりワーク2が所定の状態に支えられ、このワーク2に耐圧検査が施される。さらに、治具本体81には矯正保持具88が備えられている。
【0036】
ワーク2は、例えばバルブなどの圧力機器類よりなり、各種の検査装置で検査可能に設けられる。本実施形態では、ボールバルブにより構成されて耐圧検査用として検査され、特にボールバルブの構成部品の一部を組立てた半完成品が検査用として使用される。この例ではワーク2として半完成品を用いているが、完成品や部品をワークとしてもよく、実施に応じて任意のワークを使用できる。
【0037】
ワークであるボールバルブ2は、例えば呼び径2インチに設けられ、そのボデー40が鋳物部品により形成され、このボデー40の一側に多角形状である正八角形状の締付接合部90が形成される。締付接合部90は、上下位置にそれぞれ角部位が位置する向きに設けられ、この場合、締付接合部90の一つの内角α1が140°となる。ここで、後述する「締付接合部の傾斜角度」とは、治具本体81でワーク2を支持するときにこの治具本体81に載置する面同士が成す角度をいい、締付接合部90が正八角形である場合、この締付接合部90の傾斜角度βは内角α1の大きさと同じ140°となる。締付接合部90は、正六角形状などの正八角形状以外の多角形状であってもよい。
ワーク2の締付接合部90との他側には、所定の外径の円筒部92が形成されている。
【0038】
ボデー40の上部には遠心方向に形成された突出部である軸装部41が形成され、この軸装部41には回転操作用の操作軸部であるステム42が挿着され、この上からパッキン押え43が取付けられてステム42が位置決め状態で回転可能に設けられる。
ステム42の外周にはOリング45が2箇所に装着され、これらOリング45によりシール部位46が設けられる。本実施形態では、ワーク2がボールバルブであることから、このシール部位46はバルブのステム軸シール部位となる。
【0039】
図2図5において、ワーク2を支持する治具本体81は、装置本体1の枠体10の内部に設けられ、この治具本体81には、ワーク2の両側付近を下方から支持する前記支持部82、83が両側に備えられる。支持部82、83にはワーク2を支持する支持面100、101がそれぞれ設けられ、これら支持面100、101にワーク2の両側付近が載置されてこのワーク2が下方側から支持される。
【0040】
両側の支持部100、101のうち、少なくとも一方側の支持部100は、プレート状の一対の支持部材102、103と、ピン部材104とを有している。
支持部材102、103は、略対称形状に設けられ、各支持部材102、103のワーク2を支持する上面側にテーパ状の支持面100が設けられ、この支持面100にワーク2の締付接合部90が保持される。支持部材102、103は、それぞれ支点となる軸部材105により垂直方向に設けられた取付用の縦板106に回転可能に、その一部が重なった状態で軸支される。この支持部材102、103の重なり部分には、切欠き部107、107がそれぞれ形成され、この切欠き部107にピン部材104が配置可能に設けられる。
【0041】
図4図5(a)、図5(b)において、ピン部材104は、モータ84で昇降動するロッド110の上端面に、双方の支持部材102、103の切欠き部107の間に水平方向に配置された状態で取付けられる。ピン部材104は、モータ84を介してロッド110で垂直方向に移動可能に設けられ、その垂直方向への動作により切欠き部107を介して双方の支持部材102、103が押され、これら支持部材102、103の支点105を中心とした回転による角度変化に変換される。モータ84は、縦板106の所定位置に固定状態で取付けられる。
【0042】
支持部材102、103は、ピン部材104の移動量に応じて相反する回転方向に所定角度回転し、支持面100が成す略V字状のテーパ角度θが、ワーク2の締付接合部90の所定の傾斜角度βに合わせて調節可能に設けられ、支持面100により面接触状態でワーク2の締付接合部90を支持可能になっている。図5(a)では、テーパ角度θを、正八角形の内角である140°に設定した状態を示している。
【0043】
図4(b)において、支持部83は、略Y字形状に一体形成される。この支持部83は、モータ85により昇降動するロッド111を介して垂直動作自在に取付けられ、このモータ85は、縦板106に直交方向に取付けられた横板112の上面に配置され、さらに、横板112の上に固定されたモータ86のロッド113を介して水平動作自在に設けられている。
【0044】
このように、支持部83は、テーパ角度調節用のモータ84とは別のモータ85、86を介して垂直動作及び水平動作自在に設けられている。固定状態の支持部82に対して、支持部83が垂直方向及び水平方向に移動することで、ワーク2の両側の形状の違いや面間寸法に応じて、支持部82、83同士の相互の高さや間隔がそれぞれ設定可能に設けられている。
【0045】
横板112の下部にはモータ87により昇降動するロッド115が設けられ、このロッドを介してモータ87により横板112が昇降動自在に設けられている。この横板112の昇降動により、支持部材102、103が同時に昇降動するようになっている。
【0046】
装置本体1に上記の治具本体81を用いることで、ワーク2の一方側である締付接合部90側を支持部材102、103で支持し、他方側の円筒部92側を垂直・水平方向に調節した支持部材103で支持することで、ワーク2を治具本体81により同軸上に挟持した状態とし、これによって耐圧検査できるようになる。
【0047】
図2図4において、矯正保持具88は、治具本体81の上部付近に位置するように装置本体1内に設けられ、その先方側の治具本体側にはコ字形部120が設けられる。矯正保持具88は、モータ121に設けられたロッド122を介して垂直方向に移動自在に設けられている。
【0048】
コ字形部120は、治具本体81側が開口して設けられ、その先方側の両側に設けられた保持片123同士の間隔が手動或は自動により調整可能に設けられている。保持片123の間隔をワーク2の軸装部41に合わせて挟むようにすれば、ワーク2全体の流路軸を中心とした回転を不能とし、軸装部41のずれや回転を防止した状態でワーク2を保持できる。
【0049】
続いて、図1の装置本体1を説明する。装置本体1において、枠体10は、ワーク2を内側に装着可能な枠状に形成され、その内部にはワーク2の耐圧検査をおこなうための検査スペースRが設けられる。枠体10の一部には開放部20が設けられ、この開放部20を介して、ワーク2が、図1における枠体10の右側あるいは手前側から脱着される。枠体10の内部には、治具本体81以外にも、チャンバ11、ガスセンサ12、クランプ治具14が取付けられている。
【0050】
チャンバ11は、内部にワーク2の検査対象部位である軸装部41の上部付近を収容可能な大きさの略矩形状のカバー部23、このカバー部23の上面側に一体に設けられる吊下げ部24を有し、この吊下げ部24を介して検査スペースR内を前進・後退及び上昇・下降移動可能に設けられる。チャンバ11は、底部が開放された半開放型になっており、この底部側からワーク2の軸装部41を内部に案内可能になっている。チャンバ11内には、所定の容積の検査空間Sが設けられ、この検査空間Sに軸装部41を包囲した状態で耐圧検査可能になっている。チャンバ11には、ガスセンサ12、排気ファン26が取付けられる。
【0051】
ガスセンサ12は、チャンバ11内部の所定の複数箇所、本例ではチャンバ11内側面の2箇所、チャンバ11内上面の1箇所にそれぞれ設けられ、これらガスセンサ12により、ワーク2内に供給される軸装部41からのサーチガスの漏れをチャンバ11内で検知可能になっている。ガスセンサ12の個数は任意に設定可能であり、その数を増やすようにすれば、検出能力を向上させて検出時間の短縮が可能になる。
【0052】
ガスセンサ12は、チャンバ11の移動とともに軸装部41から側方に退避可能に設けられる。耐圧検査後には、ガスセンサ12の退避状態で検査スペースRの残留ガスが排出され、次のワーク2を速く正確に検査可能となる。
【0053】
本実施形態におけるガスセンサ12は水素センサであり、ワーク2内に供給されるサーチガスである後述の水素ガスを検出可能になっている。水素センサ12を用いることにより、拡散性の気体である、後述する水素と窒素との混合気体中の水素の漏れを確実に検出する。ガスセンサ12は、チャンバ11に固定されているが、位置を調整するために移動可能に取付けられていてもよい。
【0054】
排気ファン26は、チャンバ11におけるガスセンサ12からサーチガスが退避する空間側に設けられる。この排気ファン26により、チャンバ11内の検査空間Sに残留する水素ガスを外部に排出可能になる。排気ファン26と、検査空間Sとの間には、流路を絞るための絞り部27が設けられ、排気ファン26による排気時には、この絞り部27を介して排気速度が早まりチャンバ11内の残留ガスが効率的にパージされる。
【0055】
クランプ治具14は、固定クランプ治具30、可動クランプ治具31を有している。
固定クランプ治具30は、ワーク2の一次側となる位置に固定用保持具32を介して配置され、この固定クランプ治具30の中央付近にはワーク2内部にサーチガスを供給するための一次側流路33が形成されている。固定クランプ治具30のワーク2の一次側との対向面には、リング状のガスケットからなるシール部材34が装着され、このガスケット34により、治具本体で保持したワーク2との圧接部分からの漏れが防がれる。
【0056】
一方、可動クランプ治具31は、ワーク2の二次側に配置され、前記固定クランプ治具30とにより、ワーク2を保持可能に締付け方向に進退自在に取付けられる。
前述したチャンバ11の進退方向と、ワーク2のクランプ治具である可動クランプ治具31の進退方向とは、同一方向になるように配置されている。可動クランプ部材31の内部にはパージ流路である二次側流路35が設けられ、ワーク2の耐圧検査後には、このパージ流路35を介してワーク2内のサーチガスが空気圧でパージされ、検査空間S及び検査スペースRの外部に排出される。
【0057】
可動クランプ治具31のワーク2の二次側との対向面には、固定クランプ治具30と同様にリング状のガスケットからなるシール部材34が装着される。このガスケット34により、治具本体で保持したワーク2の可動クランプ治具31との圧接部分からの漏れが防がれる。
【0058】
上記ワーク2に対して、弁座検査及び耐圧検査時に供給されるサーチガスとしては、例えば水素を含む気体が用いられ、このうち、拡散性を有するガスとして、5%水素と、不活性のガスとして95%窒素をそれぞれ含有する混合気体である水素ガスが用いられる。この混合気体は、耐圧試験時に外部漏れがある場合には、ボデー40の軸装部41とパッキン押え43との螺着部付近から漏れ出す性質を有している。
【0059】
サーチガスである5%水素と95%窒素の混合気体は不燃性の高圧ガスであるため、安全に使用可能となる。サーチガスは、水素を含む気体以外のガスであってもよく、例えば、ヘリウムガス、メタンガスなどの各種ガスを用いることができる。サーチガスとしてヘリウムガスを用いた場合には、ガスセンサとして気体熱伝導式センサを用いるようにすればよく、水素含有の混合気体と同様に拡散性が高くなっている。
【0060】
図6においては、ワーク2がボールバルブであるときの装置本体1を備えた検査ライン50の一例を示している。この検査ライン50においては、治具本体を省略した状態を示しており、水素ガス供給側から装置本体1の一次側までの流路を第一流路51、装置本体1の二次側以降の流路を第二流路52とする。
検査ライン50は、前述した装置本体1に加えて、水素ガス供給源53、レギュレータ54、パージエア供給源55、電磁弁56、57、58、59、圧力ゲージ60、圧力センサ61を有している。
【0061】
水素ガス供給源53は、検査ライン50の第一流路51からワーク2に水素ガスを供給可能に設けられ、レギュレータ54を介して、0.2MPa程度に調整された水素ガスが電磁弁56に供給される。電磁弁56は、その開閉操作により耐圧検査時にワーク2内に水素ガスを供給可能に設けられる。パージエア供給源55は、第一流路51からワーク2に0.6MPa程度の圧力のパージエアを供給可能に設けられ、電磁弁57の開閉操作により耐圧検査終了後にワーク2内にパージエアが供給される。電磁弁56、57と固定クランプ金具30との間にはバキューム流路62が設けられ、このバキューム流路62を介して電磁弁58の開閉操作により第一流路51内の水素ガスが外部に排出可能に設けられる。
【0062】
第二流路52には、排気流路63が設けられ、この排気流路63は電磁弁59により開閉可能に設けられる。排気流路63内には、圧力ゲージ60、圧力センサ61が設けられ、これらを介してワーク2内の水素ガスの圧力が測定可能になっている。第二流路52にもバキューム流路64が設けられ、パージエア供給源55に接続された補助流路67を介して、この補助流路67に設けられた電磁弁68の弁開動作によりパージエアがバキューム流路64側に供給され、このバキューム流路64を介して第二流路52内の水素ガスが外部に排出可能に設けられる。第一流路51、第二流路52からの水素ガスのバキューム流路62、64を介して排出は、電磁弁の切換えにより何れか一方側、或は双方側より任意に実施できる。
【0063】
検査ライン60は、CPU(中央処理装置)からなる制御部65により制御可能に設けられ、この制御部65には、ガスセンサ12、各電磁弁56~59、水素ガス供給源53、パージエア供給源55などの各素子が電気的に接続されている。制御部65には、ワーク2の呼び圧力、呼び径、弁種等に基づいて設定されたワーク固有のテーブル(設置データ)が多数格納されている。
【0064】
制御部65には、一次元コードや二次元コードの読み取り部である入力部66が接続され、この入力部66を介してワーク2に固有のデータが入力可能に設けられている。入力部66を介して入力されたワーク2の固有データは、制御部65内のテーブルと比較されて、該当するテーブルが選択されるようになっている。入力部66は、コードの読み取り部に限らず、キーボード等の各種の態様に設けることが可能になっている。
治具本体81は、テーブルに基づいて支持面100のテーパ角度θ、及び垂直方向及び水平方向の移動量が制御される。
【0065】
図示しないが、制御部65にはデジタル表示部が設けられているとよく、この場合、ワーク2から水素漏れが生じたときに、制御部65に設けられた信号処理部を介して水素ガス濃度に応じた電圧としてこのデジタル表示部に出力される。デジタル表示部は、LCD(液晶ディスプレイ)を有し、このLCDに各ガスセンサ12の出力電圧がインジケータ表示される。
【0066】
なお、上記実施形態の治具本体において、テーパ角度θを調整しない側の支持部83が垂直動作自在、及び水平動作自在に設けられているが、支持部82、83のうちの何れか一方側或は双方が、垂直動作自在、及び水平動作自在に設けられていてもよい。
【0067】
装置本体1は、治具本体81でワーク2を同軸上に挟持して耐圧検査可能であれば、前述した構造以外であってもよく、枠体10やチャンバ11、クランプ治具14の構造や取付け位置などを適宜設定できる。
【0068】
上記実施形態では、モータ87で横板112全体を昇降動させることで、支持部82、83の昇降を兼用しているが、このモータ87を支持部材110側のモータ84の下部に取り付け、支持部82側のみを昇降させるようにしてもよい。
【0069】
ワーク2は、一側に多角形状の締付接合部90を有する形状としているが、この締付接合部90は、例えば、一部にテーパ部を有するなど、支持面100に対向する側が面接触状態で支持可能であれば、多角形状以外であってもよい。
【0070】
次に、前述した治具本体81を、図6の検査ライン50に接続したときの耐圧検査方法を説明する。本実施形態における耐圧検査方法は、例えば、JIS B 2003(バルブの検査通則)に規定される弁箱耐圧検査の各空気圧試験に準じるものとする。
【0071】
本例の耐圧検査方法の工程としては、ワーク2の構成部品の部分的な検査をおこなう耐圧予備検査と、ワーク2全体や各シール部分の全体的な検査をおこなう耐圧本検査とがあり、これらを続けて実施するようにしたが、これらの何れか一方の検査をおこなうようにしてもよい。
【0072】
耐圧予備検査の前には、予め、ボールバルブからなるワーク2の構成部品の一部である前述のボデー40、ステム42、Oリング45、パッキン押え43を一体に組立てて半完成状態としておく。
【0073】
検査時には、先ず、ワーク2に付与された固有のデータである二次元コードを入力部である読み取り部66で読み取り、制御部65に入力させるようにする。この入力された固有データは、制御部65内に予め格納されている複数のテーブルと比較され、該当するテーブルが選択される。
【0074】
そして、図4図5(a)において、ワーク2に固有の入力データに応じて、モータ84の回転によりロッド110が昇降動し、このロッド110の動作に応じてピン部材104が垂直方向に移動する。ピン部材104の移動により、切欠き部107を介して双方の支持部材102、103が押され、各支持部材102、103が支点105を中心として所定の角度で均等に回転し、ワーク2の締付接合部90の傾斜角度βである140°に対応して、支持面100のテーパ角度θが140°の状態に調節される。



【0075】
このとき、図1において、同時にモータ85が回転してロッド111が垂直方向に所定量伸縮し、モータ86が回転してロッド113が水平方向に所定の長さ伸縮することで、他方側の支持部83の支持面101を垂直方向及び水平方向に所定距離移動する。
【0076】
上記の支持面100のテーパ角度θの調節と、支持面101の移動とにより、ワーク2に固有の締付接合部90、及び円筒部92の形状の違いや面間距離に応じて、ワーク2を支持部82、83により同軸上に挟持させることが可能となる。
これら支持部82、83に対して、自動或は手動により、シール部位46を含む半完成状態のワーク2の一次側を固定クランプ治具30のガスケット34に当接させつつ、所定の向きで支持部82、83に載置する。
【0077】
続いて、図2図3において、入力データに応じてモータ87が回転し、ロッド115が垂直方向に所定量伸縮して横板112が垂直方向に所定量移動し、この移動によりワーク2の軸装部41が矯正保持具88と略同じ水平位置まで移動する。この状態でモータ12が回転してロッド122が伸長し、このロッド122先端側に設けたコ字形部120が軸装部41を両側から挟む位置まで移動して軸装部41を保持する。このとき、コ字形部120の2つの保持片123が、軸装部41の外径に応じて適宜の間隔に調整される。
コ字形部120で軸装部41を保持することで、治具本体81によりワーク2の適正状態に支持し、ワーク2の回転を防ぎ、位置決めされた軸装部41より耐圧検査が可能となる。
【0078】
その後、可動クランプ治具31をワーク2の二次側から保持方向に移動させ、ワーク2を所定位置にクランプする。このとき、ワーク2の一次、二次側端部にそれぞれガスケット34、34がシールし、漏れを防いだ状態で、ワーク2の一次、二次側開口側に、固定クランプ治具30の一次側流路33、可動クランプ治具31のパージ流路35が連通される。
【0079】
耐圧予備検査の実施時には、図1における全てのガスセンサ12をゼロアジャストし、これらガスセンサ12の合否判定基準をCPU(制御部)65に記憶させる。この状態が検査開始前の待機状態となり、検査スタート信号の入力により耐圧予備検査がスタートする。
【0080】
続いて、この直後にチャンバ11を前進・下降させて、ワーク2のOリング45による軸シール部位46を耐圧検査するために、軸装部41の上部をチャンバ11で覆う。このとき、軸装部41をチャンバー11の検査空間Sの容積で包囲した状態となる。
この状態で、ワーク2内にサーチガスである水素ガスを供給し、このワーク2内に水素ガスを封入して加圧し、チャンバ11内の検査空間Sにおける水素ガスの漏れの有無を検出する。これにより、ワーク2の欠陥や加工不良を早期に検出可能になる。
【0081】
このときの耐圧予備検査のCPU65による制御の一例を以下に示す。
図3の検査ライン50の圧力センサ61により測定された圧力値(ワーク2内の圧力値)が、規定の圧力よりも小さい場合にはエンド(NG)となり、NG信号を出力して初期状態に戻る。一方、測定された圧力値が規定の圧力以上のときには、次の圧力降下検出ステップに進む。このとき、水素ガスの供給が停止される。
【0082】
圧力降下検出ステップは、規定検出時間の間、圧力センサ61の測定値が初期値の97%以下になるまで続けられ、97%以下になったときには、ワーク2内が検査に適さない圧力値まで圧力降下したものとみなされ、エンド(NG)となり、NG信号を出力して初期状態に戻る。この場合、ワーク2は耐圧予備検査に対して不合格となる。このように、圧力降下検出ステップでは、規定検出時間内に圧力が初期値の97%以下にならなければ継続される。
【0083】
耐圧漏れ検出ステップは、ガスセンサ12による測定値が漏れの発生と判断する閾値よりも小さいか否かを判断し、小さい場合には次の検出時間測定ステップに進む。ガスセンサ12の測定値が、漏れの閾値以上になったときには、ワーク2から耐圧漏れを検出したものとみなされ、エンド(NG)となり、NG信号を出力して初期状態に戻る。この場合、ワーク2は耐圧予備検査に対して不合格となる。これにより、耐圧漏れ検出ステップでは、規定検出時間の間の漏れ量が基準以下であれば合格となる。
【0084】
検出時間測定ステップは、予め設定した検出時間を経過したか否かを測定し、所定の検出時間に達していない場合には、前記の圧力降下検出ステップにフィードバックされる。
圧力降下検出ステップから検出時間測定ステップまでの工程は、この検出時間測定ステップの検出時間が所定時間に達するまで繰り返しループされる。所定時間に達するまで圧力降下検出ステップ並びに耐圧漏れ検出ステップでNGが発生しなかった場合、所定圧力下における水素ガスの漏れが基準値以下を維持したことになり、ワーク2は耐圧予備検査に対して合格となる。
【0085】
所定時間経過後には、チャンバ11を軸装部41に対して上昇・後退させ、ワーク2内にパージエアを供給しつつバキューム流路62からバキュームをおこなうことにより、密封状態のワーク2内のフラッシングを実施する。その後、治具本体81をワーク2から離す方向に移動させるアンクランプにより、ワーク2を装置本体1から取り外す。
続いて、次のワーク2の耐圧予備検査をおこなう場合には、前記検査方法と同様の手順により実施するようにすればよい。
【0086】
上記耐圧予備検査の後には、一部組み立て状態のワーク2に、図示しない弁体、ボールシート、キャップなどの圧力が加わる全ての構成部品を組み込んで一体化する。ステム42の上部には、図示しない座金、ナットを介してハンドルを固定し、製品として使用する状態のワーク(バルブ)を設ける。このワークを、図示しない大検査装置内の大検査空間にクランプ治具で保持し、大検査空間でワーク全体が覆われた状態で耐圧本検査を実施するようにする。
【0087】
この場合、ハンドルを介してステム42を回動し、バルブを半開状態にした後に、このワーク内に水素ガスからなるサーチガスをバルブキャビティも含めて封入し、このサーチガスの漏れの有無をガスセンサで検出することにより、各ワークの耐圧本検査の合格又は不合格を判定する。このハンドル回動の際にも治具本体81は有用であり、この治具本体81でワーク2を支持していることでハンドルを回転操作しやすくなっている。
【0088】
前述した耐圧予備検査と、この耐圧本検査との双方に合格したワークが、耐圧検査の合格品となる。耐圧本検査において不合格と判定された場合には、その原因箇所は、耐圧予備検査で合格したシール部位を除いて確認すればよく、早く原因箇所を特定することができる。耐圧検査後には、ワーク内部をパージして残留ガスを排出し、その後、クランプ治具を緩めてワークを取り外すようにする。
【0089】
次に、本発明の検査装置用可変治具とこれを用いたバルブなどの圧力機器の耐圧検査装置及び耐圧検査方法の上記実施形態における作用を述べる。
治具本体81は、支持部82側の支持部材102の支持面100が成す略V字状のテーパ角度θをワーク2の締付接合部90の傾斜角度βである140°に調節することで、この締付接合部90を支持面100に面接触状態で密接させ、ワーク2の傾きを防止した状態で保持できる。
【0090】
このとき、矯正保持具88のコ字形部120でワーク2の軸装部41を挟み、ワーク2を回転不能に保持しているので、軸装部41の位置ずれを防ぎつつその向きを保持し、仮に外力等によりワーク2に回転方向の力が加わったとしても、軸装部41の位置ずれを防ぎ、その垂直方向の向きを保持する。このため、チャンバ11をワーク2ごとに異なる軸装部41の位置に対応して正確に配置させ、ガスセンサ12を適切な位置に配設した状態で検査することで誤差を抑える。
【0091】
支持部82に対し、支持部83側をモータ85、86で垂直、水平方向に所定移動させ、ワーク2の両側の形状の違いによる高さの差異や面間距離に応じて、支持面100、101同士の相互の高さや間隔を設定可能としていることで、ワーク2の傾きを防ぎつつ芯出し状態で支持部82、83により支持し、この状態を維持しつつクランプ治具14によりワーク2を両端から固定できる。これにより、ワーク2をX方向、Y方向、Z方向の三方向から固定し、クランプ治具14のガスケット34とワーク端面との隙間の発生を確実に防いだ状態で耐圧検査できる。このため、正確な耐圧検査の結果が得られる。
【0092】
上記治具本体81を装置本体1に設けることで、ワーク2が完成品又は半完成品の何れの場合であっても、その形状や面間距離に対応しつつ強固に保持でき、自動化を図ることで連続して迅速に耐圧検査可能となる。
【0093】
ワーク2に付与された固有のデータを入力部66から入力することで、ワーク2の締付接合部90の傾斜角度βやワーク2両側の形状の差異、面間距離等に応じて、予め制御部65に格納された固有のテーブルを選択し、このテーブルに基づいてワーク2ごとに支持面100のテーパ角度θ、支持面100の垂直、水平方向の移動量を自動的に設定し、態様の異なるワーク2の場合にも自動化を図って短時間で耐圧検査可能になる。
【0094】
図7(a)においては、治具本体81の使用状態の他例を示している。この場合、図7(b)において、ワーク130であるボールバルブは呼び径3/4インチであり、その締付接合部131が正六角形に設けられる。これにより、締付接合部131の一つの内角α2が120°となり、このときの締付接合部131の傾斜角度βも120°となる。
【0095】
図7(a)、図7(b)において、ワーク130を前述の治具本体81で支持する場合、ワーク130に応じた二次元コードを入力部66で読み取って制御部65に入力するようにすれば、支持部材102の支持面100のテーパ角度θが120°の状態まで回転するように自動的に調節され、この支持面100にワーク130の締付接合部131を載置した状態で保持することが可能となる。その際、前述したワーク(ボールバルブ)2に比較して面間が短いことから、モータ86によりロッド113が伸長し、支持部材103が支持部材102側に移動することで、この短い面間に対応可能となる。
【0096】
図8(a)においては、治具本体の使用状態の更に他例を示している。この場合、図8(b)において、ワーク140であるボールバルブは呼び径3/4インチであり、その締付接合部141が、上下位置にそれぞれ辺部が位置する向きの正八角形に設けられる。この場合、締付接合部131の一つの内角α3は120°となるが、正八角形の向きにより締付接合部141の傾斜角度βは90°となる。
【0097】
図8(a)、図8(b)において、ワーク140を治具本体81で支持する場合、二次元コードの読み取りにより、支持部材102の支持面100のテーパ角度θが90°の状態まで回転するように自動的に調節され、この支持面100にワーク140の締付接合部141を載置した状態で保持することが可能となる。本例のように、治具本体の軸装部41が短い場合には、図7では使用した矯正保持具88を省略することもできる。
【0098】
前述の治具本体81は、検査以外の用途にも使用することができ、例えば、ワーク2の組立てを施す場合に利用することもできる。この場合、図1において、治具本体81によりワーク2を構成するボデー40のみをクランプし、装置本体1を組立装置として使用して組立てをおこなう。
【0099】
装置本体1で組立てを実施する場合、例えば、装置本体1は、治具本体81で保持した状態のワーク2の軸装部41に操作軸部であるステム42を装入するための装置として用いられる。この場合、治具本体81で所定位置に保持したワーク2の軸装部41に対し、装置本体1の自動化が容易になり、この自動化により確実かつ正確にステム42を組付け可能になる。
装置本体1を組立装置として使用する場合、軸装部に操作軸部を装入する組立て工程以外の組立て工程に用いることも可能である。
【0100】
また、図1の治具本体81は、ワーク2に対して加工を施す場合に利用することもできる。この場合、図1において、治具本体81によりボデー40のみをクランプし、装置本体1を加工装置として使用して加工をおこなう。
【0101】
装置本体1で加工を実施する場合、例えば、装置本体1は、ワーク2の軸装部41の内周にパッキン押え43螺合用の雌螺子95を形成するための装置として用いられる。この場合、上記の組付けの場合と同様に、装置本体1の自動化が容易になり、この自動化により確実かつ正確な位置に雌螺子部95を形成できる。
装置本体1を加工装置として使用する場合、軸装部41の内周に雌螺子95を形成する加工工程以外の加工工程に用いることも可能である。
上記のように、治具本体81は、検査以外の用途である、組立、加工を施す装置にも用いることができ、さらにはこれら以外の各種の装置に用いることもできる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。例えば、本発明の検査装置用可変治具は、グローブバルブやゲートバルブなどのボールバルブ以外のバルブや、バルブ以外の配管機器を含む、例えば空気圧式アクチュエータなどの各種の圧力機器に適用することもできる。さらには、圧力機器以外の各種機器や器材などにも適用でき、一方、検査装置を耐圧検査以外の様々な検査に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 装置本体
2 ボールバルブ(ワーク)
41 軸装部(突出部)
66 入力部
82、83 支持部
84、85、86、87、121 モータ
88 矯正保持具
90 締付接合部
100、101 支持面
102、103 支持部材
104 ピン部材
105 軸部材(支点)
120 コ字形部
θ テーパ角度
β 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8