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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B25J17/00 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019013684
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020121355
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-06-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇樹
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特許第2624830(JP,B2)
【文献】特開2014-65097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0314949(US,A1)
【文献】特開2017-177275(JP,A)
【文献】特開2014-151412(JP,A)
【文献】特開2017-159425(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106239509(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リンク部材と、
第2リンク部材と、
第3リンク部材と、
前記第1リンク部材と前記第2リンク部材を相対的に動作させる第1の関節軸と、
前記第2リンク部材と前記第3リンク部材を相対的に動作させる第2の関節軸とを備え、
前記第1の関節軸が、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材との間に設けられた第1の減速機と、該第1の減速機に入力する回転駆動力を発生する第1のモータと、該第1のモータの回転角度を検出する入力側エンコーダと、前記第1の減速機の出力を検出する第1のエンコーダとを備え、
前記第2の関節軸が、前記第2リンク部材と前記第3リンク部材との間に設けられた中空の第2の減速機と、該第2の減速機の出力を検出する第2のエンコーダとを備え、
前記第1の関節軸の軸線が、前記第2の関節軸の軸線と略垂直になるように配置され、
前記第1リンク部材が、前記第1のエンコーダと前記第1の減速機との間に位置し、
前記第2リンク部材が、前記第2のエンコーダと前記第2の減速機との間に位置し、
前記第1の減速機が、前記第1リンク部材に固定された第1の出力軸部と、前記第2リンク部材に固定された第1の入力軸部とを備え、
前記第2の減速機が、前記第2リンク部材に固定された第2の入力軸部と、前記第3リンク部材に固定された第2の出力軸部と、一端が前記第2の入力軸部および前記第2の出力軸部の一方に固定され、他端が前記第2の入力軸部および前記第2の出力軸部の他方が固定される前記第2リンク部材または前記第3リンク部材の表面よりも突出して配置される筒状部材とを備え、
前記第1のエンコーダが、前記第1リンク部材の前記第2リンク部材とは反対側に位置する面に取り付けられ
前記第2のエンコーダが、センサによる角度検出用のパターンを有するスケール部材を備え、
該スケール部材が、前記筒状部材の前記他端に着脱可能に設けられているロボット。
【請求項2】
前記第1のエンコーダが、角度検出用の第1のパターンを有する第1のスケール部材と、該第1のスケール部材の前記第1のパターンを検出する第1のセンサとを備え、
前記第2のエンコーダが、該第2のエンコーダの前記スケール部材の前記パターンを検出するセサを備える請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第1リンク部材に設けられ、前記第1の関節軸の軸線に直交する方向に延びる取付面を備え、
前記第1のスケール部材が、前記取付面に板厚方向の一表面を密着させて着脱可能に固定され、
前記第1のセンサが、前記第2リンク部材に固定された固定部材に取り付けられている請求項に記載のロボット。
【請求項4】
前記第1のスケール部材の前記一表面に凹部が設けられ、前記取付面に凸部が設けられ、
前記凹部と前記凸部とが、前記第1の関節軸の軸線方向に嵌合可能に設けられている請求項に記載のロボット。
【請求項5】
前記凸部が、前記第1の関節軸の軸線を中心として該第1の関節軸の軸線に沿う方向に延びる円柱状に形成され、
前記第1のスケール部材がリング板状に形成され、
前記凹部が前記第1のスケール部材の中央孔である請求項に記載のロボット。
【請求項6】
前記第1のスケール部材が平板状であり、前記第2のエンコーダの記スケール部材がリング状である請求項から請求項のいずれかに記載のロボット。
【請求項7】
前記第1のスケール部材または前記第2のエンコーダの記スケール部材が円筒面を有し、
該円筒面に、前記第1のパターンまたは前記第2のエンコーダの記パターンが設けられ、
前記第1のセンサまたは前記第2のエンコーダの記センサが、前記円筒面に対して径方向に間隔をあけて配置されている請求項から請求項のいずれかに記載のロボット。
【請求項8】
前記第2のエンコーダの記スケール部材が、カバーによって覆われている請求項から請求項のいずれかに記載のロボット。
【請求項9】
前記第1のエンコーダの少なくとも一部が、前記第1リンク部材の表面に設けられ、
前記第2のエンコーダの少なくとも一部が、前記第2リンク部材の表面に設けられている請求項1から請求項のいずれかに記載のロボット。
【請求項10】
前記筒状部材が、前記第2の減速機と略同軸に配置され、中空構造を有する請求項1から請求項9のいずれかに記載のロボット。
【請求項11】
前記筒状部材が、前記第2の関節軸の軸線に沿う方向に配線を挿通可能である請求項1から請求項10のいずれかに記載のロボット。
【請求項12】
前記第2の関節軸が、前記第2リンク部材と前記第3リンク部材を相対駆動させる第2のモータを備え、
該第2のモータが、前記第2の関節軸の軸線から離間した位置に設けられている請求項1から請求項11のいずれかに記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機の内部機構が剛性不足で撓み変形やがたつきが生じることがあるため、モータの回転軸の回転角度を検出する入力側エンコーダに加えて、減速機の出力軸の回転角度を検出する出力側エンコーダを備えるロボットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このロボットは、ベアリングによって回転可能に連結された2つのリンクを備え、モータが固定される減速機の入力部が一方のリンクに固定され、減速機の出力軸が他方のリンクに固定されている。出力側エンコーダは、光学式のエンコーダであり、2つのリンクの回転軸線方向に隣接する隣接面の一方に設けられたスケールと他方に設けられた検出ヘッドとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-27951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出力側エンコーダを交換する場合に、ロボットの機構部を分解することなく交換することができる構造であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1リンク部材と、第2リンク部材と、第3リンク部材と、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材を相対的に動作させる第1の関節軸と、前記第2リンク部材と前記第3リンク部材を相対的に動作させる第2の関節軸とを備え、前記第1の関節軸が、前記第1のリンク部材と前記第2リンク部材との間に設けられた第1の減速機と、該第1の減速機に入力する回転駆動力を発生する第1のモータと、該第1のモータの回転角度を検出する入力側エンコーダと、該第1の減速機の出力を検出する第1のエンコーダとを備え、前記第2の関節軸が、前記第2リンク部材と前記第3リンク部材との間に設けられた中空の第2の減速機と、該第2の減速機の出力を検出する第2のエンコーダとを備え、前記第1の関節軸の軸線が、前記第2の関節軸の軸線と略垂直になるように配置され、前記第1リンク部材が、前記第1のエンコーダと前記第1の減速機との間に位置し、前記第2リンク部材が、前記第2のエンコーダと前記第2の減速機との間に位置し、前記第1の減速機が、前記第1リンク部材に固定された第1の出力軸部と、前記第2リンク部材に固定された第1の入力軸部とを備え、前記第2の減速機が、前記第2リンク部材に固定された第2の入力軸部と、前記第3リンク部材に固定された第2の出力軸部と、一端が前記第2の入力軸部および前記第2の出力軸部の一方に固定され、他端が前記第2の入力軸部および前記第2の出力軸部の他方が固定される前記第2リンク部材または前記第3リンク部材の表面よりも突出して配置される筒状部材とを備え、前記第1のエンコーダが、前記第1リンク部材の前記第2リンク部材とは反対側に位置する面に取り付けられ、前記第2のエンコーダが、センサによる角度検出用のパターンを有するスケール部材を備え、該スケール部材が、前記筒状部材の前記他端に着脱可能に設けられているロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係るロボットを示す側面図である。
図2図1のロボットを示す正面図である。
図3図1のロボットの第1の関節軸を部分的に示す縦断面図である。
図4図1のロボットの第2の関節軸を部分的に示す正面図である。
図5図4の第2の関節軸を部分的に示す側面図である。
図6図5の第1アームの側面へのスケール部材の着脱を説明する部分的な縦断面図である。
図7図6の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るロボット1について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット1は、図1および図2に示されるように、例えば、6軸多関節型ロボットである。
【0009】
ロボット1は、6個の関節軸J1,J2,J3,J4,J5,J6を備えている。
第1の関節軸J1は、被設置面である床面に設置されるベース(第1リンク部材)2と旋回胴(第2リンク部材)3との間に設けられ、ベース2に対して旋回胴3を、鉛直な第1軸線(回転軸線)A回りに回転させることができる。
【0010】
第2の関節軸J2は、旋回胴(第1リンク部材)3と第1アーム(第2リンク部材)4との間に設けられ、旋回胴3に対して第1アーム4を水平な第2軸線(回転軸線)B回りに回転させることができる。
第3の関節軸J3は、第1アーム(第1リンク部材)4と第2アーム(第2リンク部材)5との間に設けられ、第1アーム4に対して第2アーム5を、第2軸線Bに平行な第3軸線(回転軸線)C回りに回転させることができる。
【0011】
第4の関節軸J4は、第2アーム(第1リンク部材)5と手首ユニット(第2リンク部材)6との間に設けられ、第2アーム5に対して手首ユニット6を、第3軸線Cとねじれの位置関係にある第4軸線(回転軸線)D回りに回転させることができる。第5および第6の関節軸J5,J6は、手首ユニット6の先端に配置されている。
【0012】
まず、第1の関節軸J1の構成について説明する。
第1の関節軸J1は、図3に示されるように、第1軸線A回りに相対回転可能に連結されたベース2および旋回胴3と、回転駆動力を発生するモータ7と、モータ7の回転軸7aの回転を減速する減速機8とを備えている。
モータ7は、第1軸線Aから離間した位置に配置されている。モータ7と減速機8との間には、モータ7の回転軸7aの回転を減速機8に伝達する一対の歯車9,10が設けられている。
【0013】
一方の歯車9はモータ7の回転軸7aに固定され、他方の歯車10は図示しないベアリングによって、第1軸線A回りに回転可能に支持されている。他方の歯車10はシャフト10bの長手軸に沿って貫通する中央孔10aを有している。
【0014】
減速機8は、旋回胴3に固定される入力軸部12と、ベース2に固定される出力軸部13とを備えている。減速機8は、一対の歯車9,10を経由してモータ7の回転駆動力が入力されると、内部機構によって回転を減速することにより、入力軸部12に対する出力軸部13の回転として増幅されたトルクを出力することができる。
【0015】
減速機8は第1軸線Aを含む位置に第1軸線Aに沿う方向に貫通する中空部8Aを備えている。また、旋回胴3にも、減速機8の中空部8Aに対応する位置に上下方向に貫通する貫通孔14が設けられている。
【0016】
そして、減速機8の中空部8Aおよび旋回胴3の貫通孔14には、これらの中空部8Aおよび貫通孔14を第1軸線A方向全長にわたって貫通して、円柱状のガイド管15が配置されている。ガイド管15は、下端が減速機8の出力軸部13に固定され、上端が旋回胴3の上方に突出して延びている。図中符号11は、旋回胴3の貫通孔14とガイド管15との隙間を第1軸線A回りの回転を許容しつつ密封するシール部材である。
【0017】
ガイド管15の内径は、内部にロボット1の機構部のケーブルを含む線条体16を貫通させるのに十分な大きさを有している。また、ガイド管15は、内部に貫通させる線条体16との間の摩擦を低減する材料により構成され、あるいは、少なくとも内面に摩擦を低減させる処理が施されている。
【0018】
本実施形態においては、第1の関節軸J1には、モータ7の回転軸7aの回転角度を検出する入力側エンコーダ17Aと、ベース2に対する旋回胴3の回転角度を検出する出力側エンコーダ17Bとが設けられている。入力側エンコーダ17Aは、例えば、モータ7に備えられ、モータ7の回転軸7aに固定された図示しないスケール部材と、スケール部材に設けられた角度検出用のパターンを光学式に読み取る図示しないセンサとを備えている。
【0019】
出力側エンコーダ17Bも入力側エンコーダ17Aと同様に、スケール部材18とセンサ19とを備えている。出力側エンコーダ17Bのスケール部材18は、中央孔(凹部)20を有するリング状に形成され、円筒面18aからなる外周面にパターンが設けられている。スケール部材18は、中央孔20にガイド管15の上端を嵌合させることにより、ガイド管15に固定されている。図中符号21はスケール部材を覆うカバーである。
【0020】
出力側エンコーダ17Bのセンサ19は、スケール部材18の円筒面18aの径方向外方に隙間をあけて対向して配置されている。センサ19は、図示しない発光部と受光部とを備え、発光部から発せられスケール部材18の円筒面18aにおいて反射して戻る光が受光部によって受光されることにより、受光された光の強度変化によって、円筒面18aに付されているパターンを読み取ることができる。
【0021】
次に、第2の関節軸J2の構成について説明する。
第2の関節軸J2は、図4および図5に示されるように、第2軸線(回転軸線)B回りに相対回転可能に連結された旋回胴(第1リンク部材)3および第1アーム(第2リンク部材)4と、回転駆動力を発生するモータ22と、モータ22の回転軸22aの回転を減速する減速機23とを備えている。
【0022】
減速機23は、旋回胴3に固定される入力軸部24と、第1アーム4に固定される出力軸部25とを備えている。減速機23は、モータ22の回転駆動力が入力されると、内部機構によって回転を減速することにより、入力軸部24に対する出力軸部25の回転として増幅されたトルクを出力することができる。
【0023】
本実施形態においては、第2の関節軸J2には、モータ22の回転軸22aの回転角度を検出する入力側エンコーダ26Aと、旋回胴3に対する第1アーム4の回転角度を検出する出力側エンコーダ26Bとが設けられている。入力側エンコーダ26Aは、例えば、モータ22に備えられ、モータ22の回転軸22aに固定された図示しないスケール部材と、スケール部材に設けられた角度検出用のパターンを光学式に読み取る図示しないセンサとを備えている。
【0024】
出力側エンコーダ26Bも入力側エンコーダ26Aと同様に、スケール部材27とセンサ28とを備えている。出力側エンコーダ26Bのスケール部材27は、図4および図5に示されるように、中央孔29を有するリング状に形成され、円筒面27aからなる外周面にパターンが設けられている。スケール部材27は、第1アーム4の減速機23が固定されている面とは反対側の側面に設けられた取付面4aに着脱可能に固定される。
【0025】
取付面4aは、図6に示されるように、第2軸線Bに直交する方向に延び、第2軸線Bを中心軸とする円柱状の突起(凸部)30を備えている。スケール部材27の中央孔29に突起30を嵌合させることにより、スケール部材27を第1アーム4に対して第2軸線Bに直交する方向に精度よく位置決めすることができる。
【0026】
また、スケール部材27を取付面4aに突き当てることにより、スケール部材27を第1アーム4に対して第2軸線B方向に精度よく位置決めすることができる。スケール部材27は、例えば、取付面4aに設けられた図示しないネジ孔に図示しないボルトを締結することにより、第1アーム4に着脱可能に取り付けられる。
【0027】
第2の関節軸J2の出力側エンコーダ26Bのセンサ28は、図4に示されるように、旋回胴3に固定された固定部材31に固定されている。センサ28は固定部材31に対して、第2軸線Bに直交する方向に位置調整可能に取り付けられている。センサ28の構造は第1の関節軸J1のセンサ19と同様である。
【0028】
第3の関節軸J3は、第2の関節軸J2の旋回胴3を第2アーム5に置き換えただけの、第2の関節軸J2と同等の構造を有しているので、説明を省略する。
第4の関節軸J4は、第1の関節軸J1のベース2を手首ユニット6、旋回胴3を第2アーム5に置き換えただけの、第1の関節軸J1と同等の構造を有しているので説明を省略する。
図1および図2には、第1の関節軸J1と第4の関節軸J4の構成には同一の符号を付し、第2の関節軸J2と第3の関節軸J3の構成にも同一の符号を付している。
【0029】
このように構成された本実施形態に係るロボット1の作用について説明する。
本実施形態に係るロボット1によれば、モータ7,22により発生した回転駆動力が減速機に入力されると、モータ7,22の回転軸7a,22aの回転が減速機8,23によって減速させられて、減速機8,23の入力軸部12,24と出力軸部13,25とが相対回転させられる。
【0030】
これにより、第1の関節軸J1においては、ベース2に対して旋回胴3、第2の関節軸J2においては、旋回胴3に対して第1アーム4、第3の関節軸J3においては、第1アーム4に対して第2アーム5、そして、第4の関節軸J4においては、第2アーム5に対して手首ユニット6が、それぞれの減速機8,23によって増幅された高いトルクにより回転駆動される。また、第5、第6の関節軸J5,J6も同様である。
【0031】
この場合において、本実施形態に係るロボット1によれば、手首先端の3次元空間上の位置に影響する第1から第3の関節軸J1,J2,J3および第4の関節軸J4には、モータ7,22の回転軸7a,22aの回転角度を検出する入力側エンコーダ17A,26Aに加えて、出力側エンコーダ17B,26Bが設けられている。これにより、減速機8,23の内部機構の剛性不足に基づく撓み変形やがたつきが発生したとしても、入力側エンコーダ17A,26Aにより検出された回転角度および出力側エンコーダ17B,26Bにより検出された回転角度の両方を利用することによって、各関節軸J1.J2,J3,J4の回転角度の精度が向上し、手首先端の位置決め精度および軌跡精度を向上することができるという利点がある。
【0032】
また、第1の関節軸J1および第4の関節軸J4においては、減速機8を中空構造として、中空部8Aを貫通するガイド管15を設置し、動力伝達部材である一対の歯車9,10によってモータ7を回転軸線A,Dから離れた位置に配置している。これにより、中空部8Aの延長上のスペースを確保し、ガイド管15の内部に線条体16を通過させ、線条体16を回転軸線A,Dの近傍に、回転軸線A,Dに沿ってほぼ真っ直ぐに配置することができる。このようにすることで、ベース2に対して旋回胴3、第2アーム5に対して手首ユニット6をそれぞれ第1軸線Aまたは第4軸線D回りに大きな動作角度範囲にわたって回転させても、線条体16に大きな曲げが作用せず、線条体16の健全性を維持することができる。
【0033】
線条体16を貫通させているガイド管15の一端を減速機8の出力軸部13に固定しているので、モータ7を駆動すると、入力軸部12に対して出力軸部13が相対回転し、出力軸部13に固定されているガイド管15も入力軸部12に対して相対回転させられる。
そして、スケール部材18がガイド管15に固定され、センサ19が旋回胴3あるいは第2アーム5を挟んで間接的に入力軸部12に固定されているので、センサ19とスケール部材18との間に、入力軸部12と出力軸部13との相対回転に等しい相対回転が発生する。これにより、出力側エンコーダ17Bによって、入力軸部12と出力軸部13との相対回転角度を精度よく検出することができる。
【0034】
また、第2の関節軸J2および第3の関節軸J3においては、減速機23の出力軸部25が固定されたリンク部材4,5の出力軸部25とは反対側の側面に設けた取付面4aに、スケール部材27を直接取り付けている。そして、センサ28が旋回胴3あるいは第1アーム4に固定された固定部材31によって、入力軸部24に間接的に固定されている。これにより、第2の関節軸J2および第3の関節軸J3においても、出力側エンコーダ26Bによって、入力軸部24と出力軸部25との相対回転角度を精度よく検出することができる。
【0035】
この場合において、本実施形態によれば、第1および第4の関節軸J1,J2,J3,J4においては、線条体16を貫通状態にガイドするための減速機8,23の中空部8Aを貫通しているガイド管15を利用して、出力軸部13の回転を、入力軸部12を挟んで出力軸部13とは反対側において取り出している。
また、第2および第3の関節軸J2,J3においては、出力軸部25が固定されたリンク部材4,5の出力軸部25とは反対側の側面に設けた取付面4aに、スケール部材27を直接取り付けている。
【0036】
これにより、第1から第4の関節軸J1,J2,J3,J4においては、いずれも、出力側エンコーダ17B,26Bを、2つのリンク部材2,3,4,5,6の間ではなく、2つのリンク部材2,3,4,5,6の外側に配置できている。
その結果、出力側エンコーダ17B,26Bへの外部からのアクセスを容易にし、ロボット1を分解しなくても、スケール部材18,27およびセンサ19,28の交換および調整を行うことができるという利点がある。
【0037】
さらに、第2、第3の関節軸J2,J3においては、スケール部材27をリング板状に構成し、第1アーム4または第2アーム5の側面に設けられ、回転軸線B,Cに直交する方向に延びる取付面4aに取り付けているので、取り付けられたスケール部材27が第1アーム4または第2アーム5の外表面から大きく突出することが防止され、ロボット1が動作する際の出力側エンコーダ26Bと周辺物体との干渉を回避することができる。すなわち、スケール部材27をロボット1の外側からアクセスし易い位置に配置しつつ、ロボット1稼働時の干渉の発生を極力抑えることができるという利点がある。
【0038】
また、角度検出用のパターンをスケール部材27の円筒面27aに形成し、センサ28を円筒面27aの径方向外方に隙間をあけて対向して配置することにより、平板状のスケール部材27の厚さ方向にセンサ28が配置されることを防止している。これにより、出力側エンコーダ26Bの回転軸線B,Cに沿う方向の厚さ寸法の増加を抑えて、ロボット1稼働時の干渉の発生をさらに抑制することができるという利点がある。
【0039】
なお、本実施形態においては、第1アーム4の側面または第2アーム5の側面に円柱状の突起30を設け、突起30をリング状のスケール部材27の中央孔29に嵌合させることとしたが、これに代えて、図7に示されるように、スケール部材27を平板状に構成して厚さ方向に突出する円柱状の突起32を設け、第1アーム4または第2アーム5の取付面4aに突起32を嵌合させる凹部33を設けることにしてもよい。
【0040】
また、スケール部材27をリング状に構成したが、第2の関節軸J2および第3の関節軸J3は360°よりも小さい角度範囲に動作角度範囲が制限されているので、パターンが形成された円筒面27aが周方向に部分的に設けられていてもよい。円筒面27a以外の部分は任意の形状でよい。
【0041】
また、入力側エンコーダ17A,26Aおよび出力側エンコーダ17B,26Bとして光学式のものを例示したが、これに限定されるものではなく、光学式あるいは磁気式等の任意の非接触式のエンコーダあるいは接触式のエンコーダを採用してもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、例えば、第1の関節軸J1において、床面に設置されるベース2にモータ7および減速機8の出力軸部13が固定され、ベース2に対して回転駆動される旋回胴3に入力軸部12が固定され、固定された出力軸部13に対して入力軸部12が回転する場合を例示したが、逆でもよい。すなわち、ベース2にモータ7および入力軸部12が固定され、旋回胴3に出力軸部13が固定され、固定された入力軸部12に対して出力軸部13が回転することにしてもよい。
この場合には、ガイド管15が入力軸部12に固定されればよい。
【0043】
また、例えば、第2の関節軸J2において、旋回胴3にモータ22および減速機23の入力軸部24が固定され、第1アーム4に出力軸部25が固定され、入力軸部24に対して出力軸部25が回転する場合を例示したが、逆でもよい。すなわち、旋回胴3に出力軸部25を固定し、第1アーム4にモータ22および入力軸部24を固定して、固定された出力軸部25に対して入力軸部24が回転することにしてもよい。この場合には、スケール部材27の取付面4aは旋回胴3に設けられていればよい。
【0044】
また、図3において、ガイド管15が出力軸部13に直接固定されている場合を例示したが、これに代えて、ベース2に固定されることにより、間接的に出力軸部13に固定されていてもよい。
【0045】
また、本実施形態において第1の関節軸J1および第4の関節軸J4に用いている構造は、他の関節軸J2,J3,J5,J6のいずれにおいても採用することが可能であるため、その形態を採用してもよい。
【0046】
また、本実施形態において第1、第2、第3および第4の関節軸J1,J2,J3,J4として、出力側エンコーダ17B,26Bを備える構造のものを用いて説明したが、第1、第2、第3および第4の関節軸J1,J2,J3,J4のうち、少なくとも1つが出力側エンコーダ17B,26Bを備え、その他の関節軸が出力側エンコーダ17B,26Bを備えていない構造のものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ロボット
2 ベース(第1リンク部材)
3 旋回胴(第1リンク部材、第2リンク部材)
4 第1アーム(第1リンク部材、第2リンク部材)
4a 取付面
5 第2アーム(第1リンク部材、第2リンク部材)
6 手首ユニット(第2リンク部材)
7,22 モータ
7a,22a 回転軸
8,23 減速機
12,24 入力軸部
13,25 出力軸部
17A,26A 入力側エンコーダ
17B,26B 出力側エンコーダ
18,27 スケール部材
18a,27a 円筒面
19,28 センサ
20,29 中央孔(凹部)
30,32 突起(凸部)
31 固定部材
33 凹部
A 第1軸線(回転軸線)
B 第2軸線(回転軸線)
C 第3軸線(回転軸線)
D 第4軸線(回転軸線)
J1,J2,J3,J4,J5,J6 関節軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7