(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
(21)【出願番号】P 2019024560
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】立野井 秀哲
(72)【発明者】
【氏名】羽瀬 知樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰高
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 真実
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02554411(EP,A1)
【文献】特開2015-214308(JP,A)
【文献】特開2016-049915(JP,A)
【文献】特開2005-002983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧縮機と、第1熱交換器と、第1膨張弁と、第2熱交換器と、が第1冷媒流路で循環経路をなすように接続される第1ヒートポンプサイクルと、
第2圧縮機と、第3熱交換器と、第2膨張弁と、第4熱交換器と、が第2冷媒流路で循環経路をなすように接続される第2ヒートポンプサイクルと、
温度の調整が行われる空気が一方向に沿って流れる温調空気流路と、を備え、
前記第1ヒートポンプサイクルは、
前記第1熱交換器が第1蒸発器を、前記第2熱交換器が第1凝縮器を構成し、前記第1圧縮機で圧縮された冷媒が、前記第1凝縮器、前記第1膨張弁および前記第1蒸発器を通って前記第1圧縮機に戻る前記第1冷媒流路をなし、
前記第2ヒートポンプサイクルは、
前記第3熱交換器が第2凝縮器を、前記第4熱交換器が第2蒸発器を構成し、前記第2圧縮機で圧縮された冷媒が、前記第2凝縮器、前記第2膨張弁および前記第2蒸発器を通って前記第2圧縮機に戻る前記第2冷媒流路をなし、
前記第1熱交換器および前記第3熱交換器は、
前記温調空気流路において、前記第1熱交換器より前記第3熱交換器が前記空気の流れる向きの下流に配置され、
前記第2熱交換器および前記第4熱交換器は、
前記第2熱交換器より前記第4熱交換器が取り込まれる外気の流れる向きの下流に配置される、
空調システム。
【請求項2】
冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードを備え、
前記冷房モードにおいては、
前記第1ヒートポンプサイクルを動作させるが、前記第2ヒートポンプサイクルを停止させ、
前記再熱除湿モードにおいては、
前記第1ヒートポンプサイクルおよび前記第2ヒートポンプサイクルの双方を動作させ、
前記暖房モードにおいては、
前記第2ヒートポンプサイクルを動作させるが、前記第1ヒートポンプサイクルを停止させる、
請求項
1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第2ヒートポンプサイクルの前記第2凝縮器の代わりにヒータコアが前記温調空気流路に配置され、
前記ヒータコアには、前記温調空気流路の外部に配置される前記第2凝縮器との間で熱交換して得られる熱エネルギが供給される、
請求項
1または請求項
2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第1ヒートポンプサイクルは、
前記第1凝縮器を経た前記冷媒を前記第1圧縮機に向けて流すホットガスバイパス回路を備える、
請求項
1~請求項
3のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項5】
冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードを備え、
前記冷房モードにおいては、
前記第1ヒートポンプサイクルを動作させるが、前記第2ヒートポンプサイクルを停止させ、
前記再熱除湿モードにおいては、
前記第1ヒートポンプサイクルおよび前記第2ヒートポンプサイクルの双方を動作させ、
前記暖房モードにおいては、
前記第2ヒートポンプサイクルを動作させるとともに、前記第1ヒートポンプサイクルでは、前記ホットガスバイパス回路を介して前記第1凝縮器を経た前記冷媒を前記第1圧縮機に流し、かつ、前記第1蒸発器への前記冷媒が流れるのを停止させる、
請求項
4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記第1ヒートポンプサイクルおよび
前記第2ヒートポンプサイクルのそれぞれは、
冷媒が順方向および逆方向に循環可能に構成される、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項7】
冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードを備え、
前記冷房モードにおいては、
前記第1ヒートポンプサイクルにおける前記第1熱交換器を第1蒸発器として機能させ、かつ、
前記第2ヒートポンプサイクルにおける前記第3熱交換器を第2蒸発器として機能させる、
請求項
6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記再熱除湿モードにおいて、
前記第1ヒートポンプサイクルにおける前記第1熱交換器を第1蒸発器として機能させ、かつ、
前記第2ヒートポンプサイクルにおける前記第3熱交換器を第2凝縮器として機能させる、
請求項
7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記暖房モードにおいて、
前記第1ヒートポンプサイクルにおける前記第1熱交換器を第1凝縮器として機能させ、かつ、
前記第2ヒートポンプサイクルにおける前記第3熱交換器を第2凝縮器として機能させる、
請求項
7または請求項
8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記第1ヒートポンプサイクルには冷媒Aが用いられ、
前記第2ヒートポンプサイクルには冷媒Bが用いられ、
前記冷媒Aは前記冷媒Bよりも沸点が高い、
請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両へ適用されるのが好適な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン高効率化や電気駆動化により、暖房熱源が不足するため、従来のエンジン排熱温水ヒータに加え、または置き換えて、電気ヒータやヒートポンプが用いられている。
ヒートポンプ(例えば特許文献1)は冷凍サイクル成績係数COP(Coefficient Of Performance)が1以上あるため、電気ヒータよりも消費電力を抑えられ、電気自動車やプラグインハイブリッド車の電動モータにより走行する距離、つまりEV走行距離を延ばすことができる。
車両用の空調システムにおいては、車室の窓の曇りを防止するため、一般的な家庭用や業務用空調機と異なり、除湿暖房機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用のヒートポンプで汲み取る熱源は車外の空気である。空気よりも冷媒の温度を低くすることで、空気の熱を冷媒で吸い取る。ところが、寒冷地では、温度低下に伴いR134aやR1234yfのガス密度が低下して冷媒の質量流量が減少し、空気からの吸熱量が低減するため暖房能力が不足する。
以上より、本発明は、除湿暖房機能を有していながら、高い暖房能力を発揮できる車両用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の空調システムは、第1ヒートポンプサイクルと、第2ヒートポンプサイクルと、温調空気流路と、を備える。
第1ヒートポンプサイクルは、第1圧縮機と、第1熱交換器と、第1膨張弁と、第2熱交換器と、が第1冷媒流路で循環経路をなすように接続される。
第2ヒートポンプサイクルは、第2圧縮機と、第3熱交換器と、第2膨張弁と、第4熱交換器と、が第2冷媒流路で循環経路をなすように接続される。
温調空気流路は、温度の調整が行われる空気が一方向に沿って流れる。
本発明の空調システムにおいて、第1熱交換器および第3熱交換器は、温調空気流路において、第1熱交換器より第3熱交換器が空気の流れる向きの下流に配置される。
【0006】
本発明の空調システムにおいて、好ましくは、第2熱交換器より第4熱交換器が空気の流れる向きの下流に配置される。
【0007】
本発明の空調システムにおいて、好ましくは、第1ヒートポンプサイクルは、第1熱交換器が第1蒸発器を、第2熱交換器が第1凝縮器を構成する。この第1ヒートポンプサイクルは、第1圧縮機で圧縮された冷媒が、第1凝縮器、第1膨張弁および第1蒸発器を通って第1圧縮機に戻る第1冷媒流路をなす。
本発明の空調システムにおいて、好ましくは、第2ヒートポンプサイクルは、第3熱交換器が第2凝縮器を、第4熱交換器が第2蒸発器を構成する。この第2ヒートポンプサイクルは、第2圧縮機で圧縮された冷媒が、第2凝縮器、第2膨張弁25および第2蒸発器を通って第2圧縮機に戻る第2冷媒流路をなす。
【0008】
本発明の空調システムは、好ましくは、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードを備える。
冷房モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルを動作させるが、第2ヒートポンプサイクルを停止させる。
再熱除湿モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルおよび第2ヒートポンプサイクルの双方を動作させる。
暖房モードにおいては、第2ヒートポンプサイクルを動作させるが、第1ヒートポンプサイクルを停止させる。
【0009】
本発明の空調システムにおいて、第2ヒートポンプサイクルの第2凝縮器の代わりにヒータコアを温調空気流路に配置できる。このヒータコアは、好ましくは、温調空気流路の外部に配置される第2凝縮器との間で熱交換して得られる熱エネルギが供給される。
【0010】
本発明の空調システムにおいて、第1ヒートポンプサイクルは、好ましくは、第1凝縮器を経た冷媒を第1圧縮機に向けて流すホットガスバイパス回路を備える。
【0011】
ホットガスバイパス回路を備える本発明の空調システムにおいても、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードを備えることができる。
冷房モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルを動作させるが、第2ヒートポンプサイクルを停止させる。
再熱除湿モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルおよび第2ヒートポンプサイクルの双方を動作させる。
暖房モードにおいては、第2ヒートポンプサイクルを動作させるとともに、第1ヒートポンプサイクルでは、ホットガスバイパス回路を介して第1凝縮器を経た冷媒を第1圧縮機に流し、かつ、第1蒸発器への冷媒が流れるのを停止させる。
【0012】
本発明の空調システムにおいて、第1ヒートポンプサイクルおよび第2ヒートポンプサイクルのそれぞれは、好ましくは、冷媒が順方向および逆方向に循環可能に構成される。
【0013】
冷媒が順方向および逆方向に循環可能な本発明の空調システムにおいても、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードを備えることができる。
冷房モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルにおける第1熱交換器を第1蒸発器として機能させ、かつ、第2ヒートポンプサイクルにおける第3熱交換器を第2蒸発器として機能させることができる。
【0014】
再熱除湿モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルにおける第1熱交換器を第1蒸発器として機能させ、かつ、第2ヒートポンプサイクルにおける第3熱交換器を第2凝縮器として機能させることができる。
【0015】
暖房モードにおいては、第1ヒートポンプサイクルにおける第1熱交換器を第1凝縮器として機能させ、かつ、第2ヒートポンプサイクルにおける第3熱交換器を第2凝縮器として機能させることができる。
【0016】
本発明の空調システムにおいて、好ましくは、第1ヒートポンプサイクルには冷媒Aが用いられ、第2ヒートポンプサイクルには冷媒Bが用いられ、冷媒Aは媒Bよりも沸点が高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空調システムによれば、第1ヒートポンプサイクルにおいて、冷房におけるCOPがよい冷媒を用いることで、冷房における効率の低下を抑えることができる。一方で、空調システムは、第2ヒートポンプサイクルにおいて、暖房能力が大きい冷媒を用いることで、暖房能力を確保できる。仮に電気ヒータを組み合わせたとしても、電気ヒータの使用電力の低減を通じて省電力化できる。
また、空調システム1は、第1熱交換器よりも第3熱交換器を下流側に設けることで、除湿暖房を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用の空調システムの回路構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る空調システムの運転モードごとの動作を示す図であり、(a)は冷房モードを示し、(b)は再熱除湿モードを示し、(c)は暖房モードを示している。
【
図3】第1実施形態に係る空調システムの制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る空調システムの温度目標値と運転モードの関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る車両用の空調システムの回路構成を示す図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る車両用の空調システムの回路構成を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係る車両用の空調システムの運転モードごとの動作を示す図であり、(a)は冷房モードを示し、(b)は再熱除湿モードを示し、(c)は暖房モードを示している。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る車両用の空調システムの回路構成を示す図である。
【
図9】第4実施形態に係る車両用の空調システムの運転モードごとの動作を示す図であり、(a)は冷房モードを示し、(b)は再熱除湿モードを示し、(c)は暖房モードを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について説明する。
本実施形態に係る空調システムは、2系統のヒートポンプサイクルを備える。一方のヒートポンプサイクルに冷房のCOPが良い冷媒(R134a,R1234yf)を用い、このヒートポンプサイクルを冷房専用に使うことで、冷房能力を担保できる。一方のヒートポンプサイクルは、冷房機能および除湿機能を担うことができる。他方のヒートポンプサイクルに暖房能力が大きい冷媒(R454C等)を用い、このヒートポンプサイクルを暖房専用に使うことで、暖房能力を確保できる。他方のヒートポンプサイクルは、暖房機能に加えて再熱機能を担うことができる。よって、本実施形態に係る空調システムは、除湿暖房機能を奏することができる。
以下、第1実施形態~第5実施形態に係る空調システムを順に説明する。
【0020】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る車両用の空調システム1は、
図1に示すように、第1ヒートポンプサイクル10と、第2ヒートポンプサイクル20と、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニット30とを備えている。空調システム1において、第1ヒートポンプサイクル10に相対的に沸点の高い冷媒Aが用いられることで、第1ヒートポンプサイクル10が冷房機能と除湿機能を担う。また、空調システム1において、第2ヒートポンプサイクル20に相対的に沸点の低い冷媒Bが用いられることで、第2ヒートポンプサイクル20が暖房機能および再熱機能を担う。
空調システム1において、除湿暖房機能は、第2ヒートポンプサイクル20の第3熱交換器23を、第1ヒートポンプサイクル10の第1熱交換器13よりも下流に配置することで実現される。ここで、第1熱交換器13および第3熱交換器23の上流および下流との位置関係は、HVACユニット30を流れる流入空気IAが流れる向きを基準にして定められる。
【0021】
[第1ヒートポンプサイクル10]
第1ヒートポンプサイクル10は、
図1に示すように、第1熱交換器13を除いて、車室外Outに配置される。
第1ヒートポンプサイクル10は、冷媒Aを圧縮する第1圧縮機11と、第1圧縮機11で圧縮された高温・高圧のガス冷媒Aと外気OAとの間の熱交換を行う第2熱交換器17とを備える。第2熱交換器17では高温・高圧となったガス冷媒Aが外気OAと熱交換され凝縮される。このとき、ガス冷媒Aは凝縮熱を放出するため、冷却に使われた外気OAの温度が上昇する。この凝縮により冷媒Aは気体から液体に状態が変化し、高温・高圧の液体となる。この液冷媒Aは、第1受液器19に流入する。
【0022】
第1ヒートポンプサイクル10は、
図1に示すように、第1受液器19から流出する冷媒Aを減圧する第1膨張弁15と、第1膨張弁15で減圧された冷媒AとHVACユニット30への流入空気IAとの間の熱交換を行う第1熱交換器13とを備える。
第1膨張弁15において、高温・高圧の液冷媒Aの流れを制限したのちに冷媒Aを開放するため、冷媒Aの圧力が急激に下がる。このとき、一部の冷媒が蒸発し、その気化熱で残り大部分の液体の温度も低下する。こうして低温・低圧の液体へと状態が変化した冷媒Aは、第1熱交換器13における蒸発が容易になる。この蒸発のときに、冷媒Aは流入空気IAから蒸発熱を奪って蒸発する。このため、流入空気IAの温度は低下する。このとき、冷媒は液体から気体に状態変化するため温度変化はなく、低温・低圧のガス冷媒Aとなる。低温・低圧のガス冷媒Aは第1圧縮機11に流入し、高温・高圧のガス冷媒Aに圧縮される。以後は、前述したのと同様に、第2熱交換器17による凝縮、第1膨張弁15による減圧、第1熱交換器13による蒸発というサイクルが繰り返される。
【0023】
第1ヒートポンプサイクル10に適用される冷媒Aとしては、R134a、R1234yfが例示される。標準大気圧(101.3kPa)におけるR134a、R1234yfの沸点は以下の通りであり、沸点が-35℃以上ということで後述される冷媒Bと区分される。冷媒Bとして例示されるR290(プロパン)、R454C、CO2の標準大気圧における沸点も併せて以下に示すが、いずれも-35℃以下である。
冷媒A:
R134a;-26.1℃ R1234yf;-29.5℃
冷媒B:
R290;-42.1℃、R454C:-45.6℃、CO2:-51.7℃
【0024】
第1ヒートポンプサイクル10において、第1圧縮機11は一例として電動モータを内蔵した電動圧縮機を用いることができる。また、第1膨張弁15として電子膨張弁を用いることができる。第2ヒートポンプサイクル20についても同様である。
第1ヒートポンプサイクル10における構成要素である第1圧縮機11、第1熱交換器13、第1膨張弁15、第2熱交換器17および第1受液器19は配管によって接続され、本発明における第1循環経路を構成する。
第1ヒートポンプサイクル10は、外気OAを第2熱交換器17に取り込むためのファンを備えているが、図示が省略されている。このファンは、第2熱交換器27に対しても適用される。
【0025】
[第2ヒートポンプサイクル20]
第2ヒートポンプサイクル20は、
図1に示すように、第3熱交換器23を除いて、車室外Outに配置される。
第2ヒートポンプサイクル20は、冷媒Bを圧縮する第2圧縮機21と、第2圧縮機21で圧縮された高温・高圧のガス冷媒BとHVACユニット30における流入空気IAとの間の熱交換を行う第3熱交換器23と、を備える。第3熱交換器23では高温・高圧となったガス冷媒Aが流入空気IAと熱交換され凝縮される。このとき、ガス冷媒Bは凝縮熱を放出するため、冷却に使われた流入空気IAの温度が上昇する。この凝縮により冷媒Bは気体から液体に状態が変化し、高温・高圧の液冷媒Bとなる。
【0026】
第2ヒートポンプサイクル20は、
図1に示すように、第3熱交換器23から流出する冷媒Bを減圧する第2膨張弁25と、第2膨張弁25で減圧された冷媒Bと外気OAとの間の熱交換を行う第4熱交換器27とを有する。
第2膨張弁25において、高温・高圧の液冷媒Bは圧力が急激に下がる。このとき、一部の冷媒が蒸発し、その気化熱で残り大部分の液体の温度も低下する。こうして低温・低圧の液体へと状態が変化した冷媒Bは、第4熱交換器27における蒸発が容易になる。この蒸発のときに、冷媒Bは流入空気IAから蒸発熱を奪って蒸発する。このため、第4熱交換器27を通過した外気OAの温度は低くなる。このとき、冷媒は液体から気体に状態変化するため温度変化はなく、低温・低圧のガス冷媒Bとなる。低温・低圧のガス冷媒Aは第2受液器29を通過したのちに第2圧縮機21に流入し、高温・高圧のガス冷媒Bに圧縮される。以後は、前述したのと同様に、第3熱交換器23による凝縮、第2膨張弁25による減圧、第4熱交換器27による蒸発というサイクルが繰り返される。
【0027】
図1に示すように、冷媒Bを用いる第2ヒートポンプサイクル20において蒸発器として機能する第4熱交換器27は、冷媒Bを用いる第1ヒートポンプサイクル10において凝縮器として機能する第2熱交換器17の下流側に配置される。ここで、第2熱交換器17および第4熱交換器27の上流および下流との位置関係は、両者を流れる外気OAの向きを基準にして定められる。
【0028】
第2ヒートポンプサイクル20における構成要素である第2圧縮機21、第2熱交換器17、第2膨張弁25、第4熱交換器27および第2受液器29は配管によって接続され、本発明における第2循環経路を構成する。
【0029】
[HVACユニット30]
HVACユニット30は、
図1に示すように、車両の室内Inに配置される。HVACユニット30は、通常、ダッシュボードの内部に配置される。
HVACユニット30は、吸込口31Aおよび吹出口31Bを有するダクト31と、ダクト31の内部に設けられる第1熱交換器13と、ダクト31の内部に設けられる第3熱交換器23と、を備える。第1熱交換器13は第1ヒートポンプサイクル10の構成要素をなし、冷房機能および除湿機能を担う。第3熱交換器23は第2ヒートポンプサイクル20の構成要素をなし、暖房機能および再熱機能を担う。第3熱交換器23が占有していないダクト31の領域は、バイパス流路35をなす。
【0030】
本実施形態において、流入空気IAが流れる向きを基準にして、第1熱交換器13よりも第3熱交換器23が下流に配置される。この第1熱交換器13と第3熱交換器23の位置関係が、空調システム1における除湿暖房を実現する。
【0031】
HVACユニット30は、第1熱交換器13を通過した温調空気TCAの第3熱交換器23への流入を制御するダンパ33を備える。ダンパ33は、運転モードに応じて、第1位置(
図2(a))、第2位置(
図2(b))および第3位置(
図2(c))のいずれかの位置が選択される。第1位置にあるダンパ33は第3熱交換器23の上流側を塞ぎ、第3位置にあるダンパ33はバイパス流路35を塞ぐ。第2位置にあるダンパ33は、第3熱交換器23の上流側およびバイパス流路35のいずれも塞いでおらず、第3熱交換器23およびバイパス流路35は解放されている。
HVACユニット30は、ダクト31に流入空気IAを取り込むためのブロアを備えているが、この図示は省略されている。
【0032】
本実施形態において、上流側に位置する第1熱交換器13はダクト31における流路の幅の全域を占めるのに対して、第3熱交換器23は第1熱交換器13に比べて幅が狭い。したがって、ダンパ33の第1位置、第2位置および第3位置に対応して、以下の第1流路、第2流路および第3流路が形成される。
第1流路:第1熱交換器13を通過した流入空気IAは、第3熱交換器23を通過することなく、バイパス流路35を下流に向けて流れる。
第2流路:第1熱交換器13を通過した流入空気IAは、第3熱交換器23を通過するとともに、バイパス流路35を下流に向けて流れる。
第3流路:第1熱交換器13を通過した流入空気IAは、第3熱交換器23だけを通過して下流に向けて流れる。
【0033】
[空調システム1の運転モード]
次に、運転モードごとの空調システム1における動作を
図2に基づいて説明する。
空調システム1は、
図2に示すように、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードの3つのモードのいずれかで動作する。以下、この順に説明する。
【0034】
[冷房モード]
冷房モードは、
図2の上段に示すように、第1ヒートポンプサイクル10は動作するが、第2ヒートポンプサイクル20は動作せず、停止している。具体的には第2ヒートポンプサイクル20の第2圧縮機21の運転が停止される。動作しない第2ヒートポンプサイクル20の構成要素は破線で示されている。以下も同様である。冷房モードにおいて、ダンパ33は第1位置において第3熱交換器23を塞いでいる。
【0035】
冷房モードにおいては、上述した第1ヒートポンプサイクル10における冷凍サイクルが実行されることで、第1熱交換器13において、流入空気IAは冷却される。冷却された温調空気TCAは、バイパス流路35だけを通って吹出口31Bから車室内Inに噴出される。
【0036】
[再熱除湿モード]
再熱除湿モードは、
図2の中段に示すように、第1熱交換器13において流入空気IAを除湿するとともに、第1熱交換器13を通過した温調空気TCAの一部を第3熱交換器23で加熱する。つまり、再熱除湿モードは、除湿暖房を行うモードである。ダンパ33は第2位置におかれるので、第3熱交換器23およびバイパス流路35は解放されている。
【0037】
再熱除湿モードにおいては、上述した第1ヒートポンプサイクル10および第2ヒートポンプサイクル20の双方における冷凍サイクルが実行される。したがって、第1熱交換器13において流入空気IAは冷却される。第1熱交換器13を通過した温調空気TCAの一部は第3熱交換器23で加熱され、温調空気TCAの他部はバイパス流路35を流れ、両者は第3熱交換器23よりも下流側で混合され、吹出口31Bから車室内Inに噴出される。
【0038】
[暖房モード]
暖房モードは、
図2の下段に示すように、第1ヒートポンプサイクル10は動作せず停止しているが、第2ヒートポンプサイクル20は動作する。具体的には第1ヒートポンプサイクル10の第1圧縮機11の運転が停止される。ダンパ33は、第3位置においてバイパス流路35を塞いでいる。
【0039】
暖房モードにおいては、上述した第2ヒートポンプサイクル20における冷凍サイクルが実行されることで、第3熱交換器23において、流入空気IAは加熱される。加熱された温調空気TCAは、第3熱交換器23を通過した後にバイパス流路35を通って吹出口31Bから車室内Inに噴出される。
第3熱交換器23よりも上流において、流入空気IAは第1熱交換器13を通過するが、第1熱交換器13は蒸発器として機能していないので、流入空気IAは熱交換さることなく単に通過するだけである。
【0040】
[制御手順]
次に、
図3および
図4を参照して、空調システム1の制御手順を説明する。
本実施形態における制御手順は、
図3に示すように、温調指令値の検出ステップ(S101)、温調負荷の検出ステップ(S103)、温調目標値の算出ステップ(S105)、現状状態の検出ステップ(S107)および機器動作指令ステップ(S109)が繰り返される。以下、各ステップについて説明する。なお、この制御手順は、コントローラ70により実行される。
【0041】
[温調指令値の検出ステップ(S101)]
コントローラ70は、空調システム1の制御手順として、温調指令値の検出ステップから始まる。このステップは、HVACユニット30の図示を省略するブロアに関するON信号の有無、および、バッテリの冷却に関するON信号の有無を検出する。双方のON信号を検出すれば、温度調整の指令があるものとみなして、温調負荷の検出ステップ(S103)以降の手順に進む。一方のON信号しか検出しないか、双方のON信号を検出しなければ、機器停止指令ステップに進み、
図3に示される各機器の動作の停止を指令する。
図3において、圧縮機A,B、蒸発器A,B、凝縮器A,Bおよび膨張弁A,Bは、以下を定義する。
圧縮機A:第1圧縮機11 圧縮機B:第2圧縮機21
蒸発器A:第1熱交換器13 蒸発器B:第4熱交換器27
凝縮器A:第2熱交換器17 凝縮器B:第3熱交換器23
膨張弁A:第1膨張弁15 凝縮器B:第2膨張弁25
【0042】
[温調負荷の検出ステップ(S103)]
次に、コントローラ70は、は、温調負荷の検出を行う。温調負荷としては、
図3に示される外気温度、日射量、…、車速、バッテリ温度が例示される。これらの温調負荷によって、次のステップにおける温調目標値が変動する。
【0043】
[温調目標値の算出ステップ(S105)]
次に、コントローラ70は、温調目標値を算出する。
温調目標値は、先に検出した温調負荷を考慮したうえで、温調指令値を達成するために算出される。温調目標値としては、
図3に示すように、運転モードの選択、蒸発器A,Bの目標温度、凝縮器A,Bの目標温度などである。
【0044】
[現状状態の検出ステップ(S107)]
次に、コントローラ70は、現状状態を検出する。
現状状態は、温調目標値に対して各機器の動作設定値を算出する際に参照される。
現状状態としては、
図3に示すように、蒸発器A,Bの目標温度、凝縮器A,Bなどである。
【0045】
[機器動作指令ステップ(S109)]
次に、コントローラ70は、算出された機器動作設定値に基づいて、車外ファンの運転、圧縮機A,Bの運転、膨張弁A,Bの開度を指示する。
【0046】
空調システム1は、温調指令値の検出ステップ(S101)~機器動作指令ステップ(S109)の手順を繰り返しながら、要求される温度指令値に対応する運転モードで運転される。
【0047】
次に、空調システム1は、
図4に示すように、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードの順に運転モードを変更し、逆に、暖房モード、再熱除湿モードおよび冷房モードの順に運転モードを変更する。空調システム1は、このように運転モードを順番に変更するヒステリシス性を備えている。
また、空調システム1において
図4に示すように、外温の高低、湿度の高低、日射の多少車、室内の寒暖などの要因によって運転モードが変更される。
【0048】
[空調システム1が奏する効果]
以下、空調システム1が奏する効果を説明する。
空調システム1は、第1ヒートポンプサイクル10と第2ヒートポンプサイクル20の2つのヒートポンプサイクルを備えているので、それぞれ物性が異なる冷媒を用いることができる。したがって、空調システム1は、第1ヒートポンプサイクル10において、冷房におけるCOPが高い冷媒Aを用いることで、冷房における効率の低下を抑えることができる。一方で、空調システム1は、第2ヒートポンプサイクル20において、暖房能力が大きい冷媒Bを用いることで、暖房能力を確保できる。仮に電気ヒータを組み合わせたとしても、電気ヒータの使用電力の低減を通じて省電力化できる。
また、空調システム1は、第1熱交換器13よりも第3熱交換器23を下流側に設けることで、
図2(b)に示すように、除湿暖房を実現する。
【0049】
次に、空調システム1は、第2ヒートポンプサイクル20における第4熱交換器27は、第1ヒートポンプサイクル10における第2熱交換器17より下流に配置される。つまり、空調システム1は、第2熱交換器17で加熱された外気OAを冷媒Bが流れ蒸発器として機能する第4熱交換器27に流入させる。
これにより、車室内Inの空気から吸熱した熱エネルギを第4熱交換器27における蒸発に有効活用できる。また、蒸発器として機能する第4熱交換器27への着霜を遅らせ暖房運転できる時間を延ばすことができる。さらに、蒸発器として機能する第4熱交換器27の温度・圧力を高めにでき、第2圧縮機21の圧力比を小さくできることで、第2圧縮機21の省動力化に寄与する。
【0050】
また、暖房については第2ヒートポンプサイクル20が担うので、暖房能力を考慮して押し退け量を増やすために第1圧縮機11を大型化しなくてもよい。
さらに、圧力が高い冷媒Bを用いる第2ヒートポンプサイクル20の第4熱交換器27は凝縮器として機能しない。したがって、第2ヒートポンプサイクル20を冷房でも使用する場合と比べて設計圧力を低くできる。
【0051】
次に、空調システム1は、第1ヒートポンプサイクル10が冷房を担い、第2ヒートポンプサイクル20が暖房を担う。したがって、空調システム1によれば冷房の回路と暖房の回路とを切り替える弁を設ける必要がない。ここで、この回路の切替弁を冷媒が流れると流動音が発生し、この冷媒流動音は乗員に不快感を与える要因になる。しかし、空調システム1はそもそも回路の切替弁を備えていないので、冷媒流動音が発生しない。
【0052】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る空調システム2について
図5を参照して説明する。
なお、空調システム2は、空調システム1と基本的な構成が一致するので、以下では空調システム1との相違点を中心に説明する。また、
図5において、空調システム1と同じ要素については、
図1と同じ符号を付けている。
【0053】
[空調システム2の構成]
空調システム2は、第2ヒートポンプサイクル20の第3熱交換器23が、HVACユニット30ではなく車室外Outに配置される。空調システム2は、第3熱交換器23に生ずる凝縮熱をHVACユニット30の内部に伝える伝熱回路40を備える。
【0054】
伝熱回路40は、一例として水を伝熱媒体として用い、凝縮器として機能する第3熱交換器23との間の熱交換で加熱された水を用いて暖房・再熱を実現する。
以上の機能を担う伝熱回路40は、伝熱媒体である水を送給するポンプ41と、第3熱交換器23に併設され、第3熱交換器23で凝縮される冷媒Bと水との間で熱交換して水を加熱する第5熱交換器43とを備える。また、伝熱回路40は、第3熱交換器23で加熱された水が供給されるヒータコア45を、HVACユニット30のダクト31の内部に備えている。ヒータコア45は、第1ヒートポンプサイクル10の第1熱交換器13よりも下流側に設けられている。ヒータコア45は、ヒータコア45の内部を流れる加熱水とヒータコア45を通過する流入空気IAとの間で熱交換させる熱交換器である。
【0055】
[空調システム2の動作]
伝熱回路40に係る空調システム2の動作について、以下説明する。
第2ヒートポンプサイクル20が動作しており、第3熱交換器23において冷媒Bが連続的に凝縮されることで凝縮熱を生じさせる。第5熱交換器43を流れる伝熱媒体である水は、併設される第3熱交換器23で生じる凝縮熱との熱交換により加熱される。加熱された水は、ポンプ41の送給動作により、HVACユニット30に設けられるヒータコア45に送られる。ヒータコア45の内部を流れる加熱水とヒータコア45を通過する流入空気IAとの間で熱交換され、流入空気IAは加熱された温調空気TCAとなる。
【0056】
[第2実施形態の効果]
空調システム2は、空調システム1が奏する効果に加え、以下の効果を奏する。
空調システム2において、高圧、可燃性という特性を有する冷媒Bを使用する第2ヒートポンプサイクル20は、第3熱交換器23を含めて車室外Outに配置される。したがって、空調システム2によれば、第2ヒートポンプサイクル20の第3熱交換器23において、仮に冷媒漏洩が発生したとしても、車室内Inにいる乗員に与える健康上のリスクを低減できる。
【0057】
次に、温度すべりがある冷媒Bの場合、凝縮器として機能する第3熱交換器23を第5熱交換器43との間でローレンツサイクル(対向流)で使うことができる。したがって、空調システム2における第3熱交換器23は、熱交換の効率向上や熱交換器の小型化に寄与する。
【0058】
また、空調システム2によれば、第5熱交換器43とヒータコア45の間の流路に、 加熱機構44を加えることで暖房能力を増強したり、車両機器を適切な温度にしたりすることができる。加熱機構44としては、電気ヒータが例示される。他の加熱機構44としては、エンジンやモータ、バッテリ等の排熱を回収する排熱回収機構が例示される。なお、加熱機構44は空調システム2における選択的な要素である。
【0059】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る空調システム3について
図6および
図7を参照して説明する。
なお、空調システム3は、空調システム1と基本的な構成が一致するので、以下では空調システム1との相違点を中心に説明する。また、
図6において、空調システム1と同じ要素については、
図1と同じ符号を付けている。
【0060】
[空調システム3の構成]
空調システム3は、除湿をしない低外気温度時の暖房運転の能力を増強できる。
つまり、空調システム3は、
図6に示すように、第1受液器19から第1圧縮機11へ連なるホットガスバイパス回路50を備える。ホットガスバイパス回路50は、第1受液器19および第1熱交換器13を繋ぐ配管と第1圧縮機11および第1熱交換器13とを繋ぐ配管12とを繋ぐバイパス管51と、バイパス管51に設けられる絞り53と、を備える。絞り53は、冷媒Aが流れる開口の径を変更できる可変式の機構を備えるものとする。
【0061】
[空調システム3の動作]
次に、空調システム3の動作を
図7に基づいて説明する。
空調システム3は、
図7に示すように、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードの3つのモードのいずれかで動作する。
図7に示す冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードの3つのモードの内容は、
図2に基づいて説明した空調システム1の冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードと基本的な点では一致する。そこで、以下では空調システム1との相違点を中心に説明する。
【0062】
[冷房モード]
冷房モードは、
図7の上段に示すように、第1ヒートポンプサイクル10は動作するが、第2ヒートポンプサイクル20は動作しない。
ホットガスバイパス回路50は、絞り53の開口を閉じる。こうすることにより、第1受液器19を通過する冷媒Aは第1膨張弁15を通って第1熱交換器13に至り、蒸発熱を奪って蒸発する。
【0063】
空調システム3においては、絞り53の開口を所定の開度に開くこともてきる。そうすれば、絞り53で低温・低圧とされた冷媒Aが第1熱交換器13を通過した冷媒Aに混合されてから第1圧縮機11に供給される。これにより、絞り53で低温・低圧とされた冷媒Aの分だけ、第1圧縮機11を冷却できる。
【0064】
[再熱除湿モード]
再熱除湿モードは、
図7の中段に示すように、第1熱交換器13において流入空気IAを除湿するとともに、第1熱交換器13を通過した温調空気TCAの一部を第3熱交換器23で加熱する。
再熱除湿モードにおいても、ホットガスバイパス回路50は、絞り53の開口を閉じる。こうすることにより、第1受液器19を通過する冷媒Aは第1膨張弁15を通って第1熱交換器13に至り、蒸発熱を奪って蒸発する。
【0065】
[暖房モード]
暖房モードは、
図7の下段に示すように、第1ヒートポンプサイクル10は第1熱交換器13への冷媒Aの供給を行わないが、ホットガスバイパス回路50への冷媒Aの供給を行う。
供給された冷媒Aは、絞り53において低温・低圧の液冷媒Aとなって第1圧縮機11に供給され。第1圧縮機11においてこの液冷媒Aは高温・高圧のガス冷媒Aとなって第2熱交換器17に供給され、第2熱交換器17ではこのガス冷媒Aが外気OAと熱交換され凝縮される。このとき、ガス冷媒Aは凝縮熱を放出するため、第2熱交換器17よりも下流に配置される第4熱交換器27に凝縮熱に相当する熱エネルギを付与できる。
【0066】
[空調システム3の効果]
空調システム3によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
除湿を伴わない暖房運転において、冷媒Aを用いる第1ヒートポンプサイクル10をホットガスバイパス運転する。これにより、第1圧縮機11の動力分の熱エネルギが冷媒Bを用いる第2ヒートポンプサイクル20の第4熱交換器27に付与されるので、空調システム3によれば暖房能力を増強できる。
【0067】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る空調システム4について
図8および
図9を参照して説明する。
なお、空調システム4は、空調システム1と基本的な構成が一致するので、以下では空調システム1との相違点を中心に説明する。また、
図8および
図9において、空調システム1と同じ要素については、
図1と同じ符号を付けている。
【0068】
[空調システム4の構成]
空調システム4は、除湿をしない低外気温度時の暖房運転において、第1ヒートポンプサイクル10をこれまでとは逆サイクルとなる暖房運転することで、暖房能力を増強できる。また、空調システム4は、冷房運転において、第2ヒートポンプサイクル20をこれまでとは逆サイクルとなる冷房運転することで、冷房能力を増強できる。第1ヒートポンプサイクル10および第2ヒートポンプサイクル20のそれぞれは、逆サイクル運転ができるようにするために、四方弁(14,24)を搭載する。
【0069】
図8に示すように、第1ヒートポンプサイクル10には第1四方弁14が設けられ、第2ヒートポンプサイクル20には第2四方弁24が設けられている。なお、
図8は第1ヒートポンプサイクル10および第2ヒートポンプサイクル20の双方が暖房運転を行っているモードを示している。
【0070】
第1ヒートポンプサイクル10において、第1四方弁14は、ポートP11、ポートP12、ポートP13およびポートP14と4つのポートを備えている。4つのポートP11~ポートP14の中で互いに隣接するポートP11とポートP12が、ポートP12とポートP13が、ポートP13とポートP14が、
図8に示すように内部の流路で繋がっている。空調システム4の冷房運転、暖房運転に応じて、内部の流路が切り替えられる。
【0071】
第1四方弁14のポートP11は、一端が第1圧縮機11に接続される冷媒配管L11の他端が接続される。
第1四方弁14のポートP12は、一端が第1熱交換器13に接続される冷媒配管L12の他端が接続される。
第1四方弁14のポートP13は、一端が第1受液器19に接続される冷媒配管L13の他端が接続される。
第1四方弁14のポートP14は、一端が第2熱交換器17に接続される冷媒配管L14の他端が接続される。
【0072】
第2ヒートポンプサイクル20において、第2四方弁24は、ポートP21、ポートP22、ポートP23およびポートP24と4つのポートを備えている。4つのポートP21~ポートP24の中で互いに隣接するポートP21とポートP22が、ポートP22とポートP23が、ポートP23とポートP24が、
図8に示すように内部の流路で繋がっている。空調システム4の冷房運転、暖房運転に応じて、内部の流路が切り替えられる。
【0073】
第2四方弁24のポートP21は、一端が第2圧縮機21に接続される冷媒配管L21の他端が接続される。
第2四方弁24のポートP22は、一端が第4熱交換器27に接続される冷媒配管L22の他端が接続される。
第2四方弁24のポートP23は、一端が第2受液器29に接続される冷媒配管L23の他端が接続される。
第2四方弁24のポートP24は、一端が第3熱交換器23に接続される冷媒配管L24の他端が接続される。
【0074】
[空調システム4の動作]
次に、空調システム4の動作を
図9に基づいて説明する。
空調システム4は、
図9に示すように、冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードの3つのモードのいずれかで動作する。
図9に示す冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードの3つのモードの内容は、
図2に基づいて説明した空調システム1の冷房モード、再熱除湿モードおよび暖房モードと基本的な点では一致する。そこで、以下では空調システム1との相違点を中心に説明する。
【0075】
[冷房モード]
冷房モードは、
図9の上段に示すように、第1ヒートポンプサイクル10および第2ヒートポンプサイクル20の双方が冷房運転を行う。
【0076】
第1ヒートポンプサイクル10においては、第1四方弁14がポートP11とポートP14が繋がり、ポートP12とポートP13が繋がっている。よって、第1圧縮機11で圧縮された冷媒Aは、凝縮器として機能する第2熱交換器17、第1膨張弁15を通って第1熱交換器13に流れる、という前述した第1実施形態における冷房運転と同じように動作する。第1熱交換器13で蒸発熱を奪った冷媒Aは、冷媒配管L12、第1四方弁14、冷媒配管L14および第1受液器19を通って、第1圧縮機11に吸入され高温・高圧に圧縮される。以後は、以上と同じ冷凍サイクルが継続して行われる。
【0077】
第2ヒートポンプサイクル20においては、第2四方弁24がポートP21とポートP24が繋がり、ポートP22とポートP23が繋がっている。よって、第2圧縮機21で圧縮された冷媒Bは、凝縮器として機能する第4熱交換器27、第2膨張弁25を通って第3熱交換器23に流れる、という冷房運転の動作をする。第3熱交換器23で蒸発熱を奪った冷媒Bは、冷媒配管L24、第2四方弁24および第2受液器29を通って、第2圧縮機21に吸入され高温・高圧に圧縮される。以後は、以上と同じ冷凍サイクルが継続して行われる。
【0078】
[再熱除湿モード]
再熱除湿モードは、
図9の中段に示すように、第1熱交換器13において流入空気IAを除湿するとともに、第1熱交換器13を通過した温調空気TCAの一部を第3熱交換器23で加熱するものであって、第1実施形態と本質的な差異はない。
【0079】
[暖房モード]
冷房モードは、
図9の下段に示すように、第1ヒートポンプサイクル10および第2ヒートポンプサイクル20の双方が暖房運転を行う。
【0080】
第1ヒートポンプサイクル10においては、第1四方弁14がポートP11とポートP12が繋がり、ポートP13とポートP14が繋がっている。よって、第1圧縮機11で圧縮された冷媒Aは、第1四方弁14を通って凝縮器として機能する第1熱交換器13、第1膨張弁15を通って第2熱交換器17に流れる、という暖房運転の動作をする。第2熱交換器17で蒸発熱を奪った冷媒Aは、冷媒配管L14、第1四方弁14、冷媒配管L13および第1受液器19を通って、第1圧縮機11に吸入され高温・高圧に圧縮される。以後は、以上と同じ冷凍サイクルが継続して行われる。
【0081】
第2ヒートポンプサイクル20においては、第2四方弁24がポートP21とポートP22が繋がり、第3熱交換器23と第2四方弁24が繋がっている。よって、第2圧縮機21で圧縮された冷媒Bは、第2四方弁24、凝縮器として機能する第3熱交換器23、第2膨張弁25を通って第4熱交換器27に流れる、という暖房運転の動作をする。第4熱交換器27で蒸発熱を奪った冷媒Bは、冷媒配管L21、第2四方弁24および第2受液器29を通って、第2圧縮機21に吸入され高温・高圧に圧縮される。以後は、以上と同じ冷凍サイクルが継続して行われる。
【0082】
[空調システム4の効果]
空調システム4によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
除湿をしない低外気温度時の暖房運転において、冷媒Aを用いる第1ヒートポンプサイクル10についても暖房運転する。しかも、冷房運転において、冷媒Bを用いる第2ヒートポンプサイクル20についても冷房運転する。したがって、空調システム4によれば、第2ヒートポンプサイクル20だけで暖房運転するよりも暖房能力を増強できるのに加えて、第1ヒートポンプサイクル10だけで冷房運転するよりも冷房能力を増強できる。
【0083】
[付記]
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、第1実施形態~第4実施形態は、HVACユニット30を一つだけ備えている。しかし、本発明に係る空調システムは、複数のHVACユニットを備える空調システムとすることもできる。例えば、2つのHVACユニットを備える場合、一方が車両の前部座席の温調を担い、他方が車両の後部座席の温調を担うことができる。また例えば、2つのHVACユニットを備える場合、一方が車両の右側の温調を担い、他方が車両の左側の温調を担う、左右独立して温調ができる空調システムにできる。
【符号の説明】
【0084】
1,2,3,4, 空調システム
10 第1ヒートポンプサイクル
11 第1圧縮機
13 第1熱交換器(第1蒸発器)
14 第1四方弁
15 第1膨張弁
17 第2熱交換器(第1凝縮器)
19 第1受液器
20 第2ヒートポンプサイクル
21 第2圧縮機
23 第3熱交換器(第2凝縮器)
24 第2四方弁
25 第2膨張弁
27 第4熱交換器(第2蒸発器)
29 第2受液器
30 HVACユニット
31 ダクト(温調空気流路)
31A 吸込口
31B 吹出口
33 ダンパ
35 バイパス流路
40 伝熱回路
41 ポンプ
43 第5熱交換器
44 加熱機構
45 ヒータコア
50 ホットガスバイパス回路
51 バイパス管
53 絞り
L11,L12,L13,L14 冷媒配管
L21,L22,L23,L24 冷媒配管
P11,P12,P13,P14 ポート
P21,P22,P23,P24 ポート
In 車室内
Out 車室外