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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20231108BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01R1/073 D
G01R1/073 E
G01R1/067 C
H01L21/66 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019040144
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020143976
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】林▲崎▼ 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】赤平 明久
(72)【発明者】
【氏名】成田 寿男
(72)【発明者】
【氏名】今 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】須藤 賢一
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004260(JP,A)
【文献】特開2015-230314(JP,A)
【文献】特開2014-001997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0352460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286816(US,A1)
【文献】特表2017-521668(JP,A)
【文献】特開2014-044099(JP,A)
【文献】特開2005-292019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0171519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の電気的特性の測定に使用される電気的接続装置であって、
測定時に先端部が前記被検査体と接触する複数のプローブと、
前記プローブの基端部に近い領域が貫通するトップガイド板、前記トップガイド板よりも前記プローブの前記先端部に近い領域が貫通するボトムガイド板、及び前記トップガイド板と前記ボトムガイド板との間で前記ボトムガイド板に近く配置されて前記プローブが貫通するミドルガイド板を有するプローブヘッドと
を備え、
前記トップガイド板の主面の面法線方向からみて、前記トップガイド板と前記ミドルガイド板とでは前記プローブが貫通するガイド穴の位置がずらして設けられており、前記プローブが前記トップガイド板と前記ミドルガイド板の間で湾曲した状態で保持され、
前記プローブのそれぞれが、前記先端部が前記被検査体と接触することにより座屈した前記プローブにかかる応力が最大である最大応力箇所よりも、前記最大応力箇所を除いた領域において、前記先端部が前記被検査体と接触した際に湾曲し易い構造を前記トップガイド板と前記ミドルガイド板の間に有し、前記ミドルガイド板の前記ガイド穴の内部を、前記ガイド穴の中心線に沿って前記プローブが摺動し、
前記プローブの前記湾曲し易い構造の前記先端部からの位置が、複数の前記プローブのそれぞれにおいて同じである、
ことを特徴とする電気的接続装置。
【請求項2】
前記トップガイド板と前記ミドルガイド板の間で、前記最大応力箇所を除いた領域において前記プローブの側面に括れが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記プローブの全周に渡って前記括れが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記プローブが座屈する際に前記プローブの軸方向に伸縮する面に前記括れが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記プローブの機械的な硬度が、前記最大応力箇所を除いた領域よりも前記最大応力箇所において高いことを特徴とする請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項6】
前記プローブの軸方向と垂直な断面形状が矩形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項7】
前記トップガイド板と前記ボトムガイド板との間に配置される前記ミドルガイド板の枚数が1枚であることを特徴とする請求項6に記載の電気的接続装置。
【請求項8】
前記プローブに、前記ガイド穴の内径よりも外径が大きいストッパー領域が形成され、 前記被検査体の測定時に前記先端部が前記被検査体と接触することにより、前記ストッパー領域が前記トップガイド板、前記ボトムガイド板及び前記ミドルガイド板のいずれかに当接することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項9】
前記プローブの前記ボトムガイド板を貫通する領域よりも前記基端部の側に、前記ボトムガイド板の前記ガイド穴の内径よりも外径が大きい前記ストッパー領域が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の電気的特性の測定に使用される電気的接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などの被検査体の電気的特性をウェハから分離しない状態で測定するために、被検査体に接触させるプローブを有する電気的接続装置が用いられている。この電気的接続装置を用いる測定では、プローブの一方の端部を被検査体に接触させ、プローブの他方の端部をプリント基板などに配置された電極パッドに接触させる。電極パッドは、テスタなどの測定装置と電気的に接続されている。
【0003】
プローブは、ガイド板が配置されたプローブヘッドに、ガイド板に設けたガイド穴にプローブが貫通した状態で保持される。通常、プローブヘッドには、プローブの軸方向に沿って複数のガイド板が配置されている。例えば、最上段のガイド板と最下段のガイド板との間に、隣接するプローブ同士が接触しないように複数のガイド板を配置する構造が使用される。
【0004】
複数のガイド板を有するプローブヘッドにおいて、ガイド板のガイド穴の位置を相互にずらして配置することにより、プローブヘッドの内部でプローブが斜めに保持される(特許文献1参照。)。この構成により、プローブを被検査体に接触させたときにプローブが座屈し、プローブと被検査体を安定した圧力で接触させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-118064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被検査体に接触した状態と非接触の状態との間でプローブがガイド穴の内部を摺動することにより、プローブの側面がガイド穴の開口部で擦られる。その結果、プローブが損傷する問題が生じている。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、プローブヘッドのガイド板に設けたガイド穴でのプローブの摺動に起因するプローブの損傷を抑制できる電気的接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、測定時に先端部が被検査体と接触する複数のプローブと、プローブの基端部に近い領域が貫通するトップガイド板、トップガイド板よりもプローブの先端部に近い領域が貫通するボトムガイド板、及びトップガイド板とボトムガイド板との間でボトムガイド板に近く配置されてプローブが貫通するミドルガイド板を有するプローブヘッドとを備え、トップガイド板の主面の面法線方向からみてトップガイド板とミドルガイド板とではプローブが貫通するガイド穴の位置がずらして設けられており、プローブがトップガイド板とミドルガイド板の間で湾曲した状態で保持され、プローブのそれぞれが、先端部が被検査体と接触することにより座屈したプローブにかかる応力が最大である最大応力箇所よりも、最大応力箇所を除いた領域において、先端部が被検査体と接触した際に湾曲し易い構造をトップガイド板とミドルガイド板の間に有し、ミドルガイド板の前記ガイド穴の内部を、ガイド穴の中心線に沿ってプローブが摺動し、プローブの湾曲し易い構造の先端部からの位置が、複数のプローブのそれぞれにおいて同じである電気的接続装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プローブヘッドのガイド板に設けたガイド穴でのプローブの摺動に起因するプローブの損傷を抑制できる電気的接続装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置のプローブの構成を示す模式図である。
図3図2のIII-III方向に沿った断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置のプローブの湾曲した状態を示す模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置のプローブと比較例のプローブの座屈した状態を示す模式図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置のプローブの座屈した状態を示す模式図である。
図7図6のVII-VII方向に沿った断面図である。
図8】比較例のプローブヘッドの構成を示す模式図である。
図9】本発明の第1の実施形態の変形例に係る電気的接続装置の構成を示す模式図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る電気的接続装置のプローブの構成を示す模式図である。
図11】本発明のその他の実施形態に係る電気的接続装置のプローブの構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1に示す第1の実施形態に係る電気的接続装置1は、被検査体2の電気的特性の測定に使用される。電気的接続装置1は、プローブ10と、プローブ10を保持するプローブヘッド20を備える。
【0013】
図1では図示を省略しているが、図2に示すように、プローブ10の側面に括れ11が形成されている。図3に示すように、プローブ10の軸方向に垂直な断面の形状(以下、「断面形状」という。)が矩形状であり、図3に示した括れ11は、プローブ10の側面の全周に渡って形成されている。
【0014】
プローブヘッド20は、プローブ10の基端部に近い領域が貫通するトップガイド板21、トップガイド板21よりもプローブ10の先端部に近い領域が貫通するボトムガイド板22を有する。トップガイド板21とボトムガイド板22との間に、プローブ10が貫通するミドルガイド板23が配置されている。プローブ10の貫通している部分に、図1では図示を省略したガイド穴がトップガイド板21、ボトムガイド板22及びミドルガイド板23にそれぞれ形成されている。
【0015】
プローブヘッド20では、トップガイド板21とボトムガイド板22との間に中空領域200を構成するために、トップガイド板21の外縁領域とボトムガイド板22の外縁領域との間にスペーサ24が配置されている。中空領域200の内部におけるボトムガイド板22に近い側に、板状のミドルガイド板23が配置されている。
【0016】
トップガイド板21の主面の面法線方向からみて(以下、「平面視」という)、同一のプローブ10が貫通するトップガイド板21のガイド穴とミドルガイド板23のガイド穴の位置は、主面と平行にずらして配置されている(以下において「オフセット配置」という。)。一方、ボトムガイド板22のガイド穴とミドルガイド板23のガイド穴の位置は、平面視で略一致している。図1に示した例では、トップガイド板21のガイド穴に対して、ミドルガイド板23及びボトムガイド板22のガイド穴が紙面の左側にずらして配置されている。オフセット配置により、中空領域200の内部でトップガイド板21とミドルガイド板23の間で、プローブ10は弾性変形によって湾曲している。
【0017】
被検査体2の測定時に、プローブヘッド20のボトムガイド板22の下面に露出したプローブ10の先端部が、電気的接続装置1の下方に配置された被検査体2の検査用パッド(図示略)と接触する。図1では、プローブ10が被検査体2に接触していない状態を示している。電気的接続装置1は垂直動作式プローブカードであり、例えば被検査体2を搭載したチャック3が上昇して、プローブ10の先端部が被検査体2に接触する。
【0018】
図1に示す電気的接続装置1は、電極基板30を更に備える。プローブヘッド20のトップガイド板21の上面に突出したプローブ10の基端部が、プローブヘッド20に対向する電極基板30の下面に配置された電極パッド31と接続する。
【0019】
電極基板30の電極パッド31は、電極基板30の内部に配置された配線(図示略)によって、電極基板30の上面に配置された接続パッド32と電気的に接続されている。接続パッド32は、図示を省略するICテスタなどの検査装置と電気的に接続される。プローブ10を介して、検査装置によって被検査体2に所定の電圧や電流が印加される。そして、被検査体2から出力される信号がプローブ10を介して検査装置に送られ、被検査体2の特性が検査される。
【0020】
トップガイド板21のガイド穴とミドルガイド板23のガイド穴とがオフセット配置されていることにより、基端部が電極パッド31に接続されたプローブ10の先端部が被検査体2と接触すると、中空領域200においてプローブ10が座屈する。即ち、トップガイド板21とミドルガイド板23との間で、たわみ変形によりプローブ10が更に大きく湾曲する。このとき、プローブ10のそれぞれがミドルガイド板23に保持されていることにより、中空領域200で隣接するプローブ10が相互に接触することが防止される。
【0021】
上記のように、プローブ10が被検査体2に接触していない非接触状態における湾曲形状から、プローブ10が被検査体2に接触した状態における更に湾曲した形状にプローブ10が座屈することにより、所定の圧力でプローブ10が被検査体2に接触する。即ち、オフセット配置により、プローブ10を用いて被検査体2の電気的特性を安定して測定することができる。被検査体2の電気的特性を測定した後、被検査体2を搭載したチャック3が下降することにより、プローブ10と被検査体2とは非接触状態になる。
【0022】
プローブ10は、プローブ10と被検査体2とが非接触状態になると、被検査体2に接触する前の形状に復帰する弾性を有する。プローブ10の材料には、タングステン(W)などが使用される。或いは、銅(Cu)合金、パラジウム(Pd)合金、ニッケル(Ni)合金、W合金などがプローブ10の材料に使用される。
【0023】
図4に示すように、プローブ10は、トップガイド板21のガイド穴210、ミドルガイド板23のガイド穴230、ボトムガイド板22のガイド穴220を貫通して、プローブヘッド20に保持されている。プローブ10と被検査体2が接触した場合に、プローブ10は先端部から軸方向に押圧を受ける。このとき、図4に示すトップガイド板21に近い領域A、トップガイド板21とミドルガイド板23の中間に近い領域B、ミドルガイド板23に近い領域Cの3箇所に、プローブ10の歪みが集中する。このときにプローブ10にかかる応力が最大の箇所(以下において、「最大応力箇所」という。)は、領域Bである。
【0024】
プローブ10の側面に形成されている括れ11は、プローブ10と被検査体2が接触した状態における最大応力箇所を除いた残余の領域に形成される。このように括れ11を最大応力箇所以外の領域に形成することにより、プローブ10と被検査体2が接触した状態において、プローブ10の最も湾曲する位置が基端部の側(紙面の上方)に移動する。
【0025】
図5に、第1の実施形態に係る電気的接続装置1のプローブ10の座屈した状態と、括れ11を形成していない比較例のプローブ10Aの座屈した状態を示した。図5に示すように、破線で示した比較例のプローブ10Aに対して、プローブ10では、最も湾曲する位置がミドルガイド板23から離れる方向に移動している。
【0026】
被検査体2に接触した状態と非接触の状態との間で、プローブ10やプローブ10Aはトップガイド板21のガイド穴210、ボトムガイド板22のガイド穴220、ミドルガイド板23のガイド穴230の内部を摺動する。基端部が電極パッド31に押し当てられているため、プローブ10やプローブ10Aのトップガイド板21のガイド穴210の内部を摺動する距離は短い。一方、プローブ10やプローブ10Aのボトムガイド板22のガイド穴220やミドルガイド板23のガイド穴230の内部を摺動する距離は長い。
【0027】
このとき、図5に示すように、比較例のプローブ10Aは、領域Cでのプローブ10Aの歪みの影響により、ミドルガイド板23の主面に対して斜めにガイド穴230を貫通する。このため、プローブ10Aがミドルガイド板23のガイド穴230の内部を摺動することにより、プローブ10Aの側面がガイド穴230の開口部で擦られる。その結果、プローブ10Aが損傷する。
【0028】
一方、プローブ10は、図5に示すように、ミドルガイド板23の主面に対して垂直に近い方向に沿ってミドルガイド板23のガイド穴230を貫通する。つまり、ガイド穴230の中心線と略平行に、プローブ10がガイド穴230の内部を摺動する。したがって、プローブ10がガイド穴230の内部を摺動した場合にも、プローブ10の側面がガイド穴230の開口部で擦られて損傷することが抑制される。
【0029】
括れ11は、座屈したプローブ10の最も湾曲する位置が基端部の側に移動するように、プローブ10に形成される。例えば、プローブ10の材料や、被検査体2の検査用パッドや電極パッド31とプローブ10との間の安定した接触に必要な圧力の大きさなどに応じて、括れ11の幅や深さなどのサイズ、プローブ10における位置、形成される個数などが設定される。
【0030】
例えば、図4に示した領域Bと領域Cとの間に位置するように、括れ11をプローブ10に形成する。更に、領域Bと領域Aとの間にも括れ11を形成してもよい。また、複数の括れ11をプローブ10の軸方向に沿って配置してもよい。
【0031】
なお、図3ではプローブ10の全周に渡って括れ11が形成される例を示した。しかし、ミドルガイド板23のガイド穴230の中心線と略平行にプローブ10が貫通するのであれば、括れ11を形成する範囲は任意に設定可能である。例えば、図6に示すようにプローブ10が座屈する際に、プローブ10の軸方向に伸縮する図7に示す面に括れ11を形成してもよい。図7では、紙面の上方と下方に向いたプローブ10の面に括れ11が形成されている。
【0032】
ところで、プローブ10の側面がミドルガイド板23のガイド穴230で擦られる場合には、ミドルガイド板23の材料にセラミックなどの硬度の高い材料を使用するとプローブ10が損傷しやすい。このため、ミドルガイド板23の材料に、セラミックよりも硬度の低い材料である樹脂などのフィルムが使用されてきた。
【0033】
しかし、樹脂などのフィルムはセラミックに比べて放熱性が低く、プローブ10に発生した熱を外部に放出させることが難しい。また、プローブヘッド20でプローブ10を交換する場合などに、プローブヘッド20を構成する各ガイド板のガイド穴を平面視で一致させる必要があるが、柔軟で変形しやすいフィルムをガイド板に使用するとガイド穴の位置合わせが困難である。
【0034】
これに対し、第1の実施形態に係る電気的接続装置1では、プローブ10の側面がミドルガイド板23のガイド穴230で擦られることが抑制される。このため、ミドルガイド板23の材料にセラミックを使用することができる。その結果、熱が発生したプローブ10からの放熱が容易である。更に、硬度の高いセラミックを使用することにより、ガイド穴の位置合わせが容易であり、電気的接続装置1のメンテナンス性が向上する。
【0035】
また、比較例のプローブ10Aを用いた電気的接続装置では、トップガイド板21とボトムガイド板22との間に複数のミドルガイド板を配置する必要がある。これは、断面形状が円形状のプローブを使用した場合などに、隣接するプローブ間の接触をプローブのたわみ方向を揃えることにより抑制する必要があるためである。
【0036】
このため、例えば図8に示す比較例のプローブヘッド20Aのように、中空領域200の内部におけるトップガイド板21に近い側に第1ミドルガイド板231を配置し、ボトムガイド板22に近い側に第2ミドルガイド板232を配置する。
【0037】
これに対し、第1の実施形態に係る電気的接続装置1では、プローブ10の断面形状が矩形状であるため、プローブヘッド20に保持される複数のプローブ10のたわみ方向が同一方向に統一される。このため、トップガイド板21とボトムガイド板22との間に配置するガイド板を、ミドルガイド板23の1枚にすることができる。したがって、電気的接続装置1によれば、ミドルガイド板の枚数を減らし、プローブヘッド20の構成部品の個数を減少させることができる。
【0038】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る電気的接続装置1では、プローブ10が湾曲する部分の、最大応力箇所を除いた領域に括れ11が形成されている。このため、ミドルガイド板23のガイド穴230の内部を、ガイド穴230の中心線と略平行にプローブ10が摺動する。これにより、プローブ10がガイド穴230の開口部と点接触することが防止される。したがって、図1に示した電気的接続装置1によれば、プローブヘッド20に設けたガイド穴でのプローブ10の摺動に起因するプローブ10の損傷を抑制できる。
【0039】
<変形例>
図9に示すように、プローブ10にストッパー領域100を形成してもよい。ストッパー領域100は、プローブ10のボトムガイド板22を貫通する領域よりも基端部の側に設けられた領域であり、ストッパー領域100の外径はボトムガイド板22のガイド穴220の内径よりも大きい。
【0040】
図9に示したプローブ10では、被検査体2の測定時にストッパー領域100がボトムガイド板22に突き当たる。このため、プローブ10の基端部を電極パッド31に強く押し当てるプリロードが可能である。これにより、プローブ10と電極パッド31との接触を安定させることができる。したがって、プローブ10にストッパー領域100を形成することにより、プローブ10の先端部を被検査体2の検査用パッドに必要以上に強く押し当てることなく、プリロードが可能である。
【0041】
なお、ストッパー領域100がミドルガイド板23に衝突してプローブ10の摺動が阻害されないようにする。例えば、ミドルガイド板23のガイド穴230の内径をストッパー領域100の外径よりも大きくして、ミドルガイド板23のガイド穴230の内部でストッパー領域100が移動するようにしてもよい。
【0042】
図9には、ボトムガイド板22を貫通する領域よりも基端部の側にストッパー領域100を形成したプローブ10の例を示した。しかし、ストッパー領域100を形成する位置は図9に示した位置に限られず、被検査体2の測定時にトップガイド板21、ボトムガイド板22及びミドルガイド板23のいずれかに当接する位置にストッパー領域100を形成してもよい。例えば、トップガイド板21を貫通する領域の近傍の、トップガイド板21を貫通する領域よりも基端部の側でプローブ10にストッパー領域100を形成してもよい。この場合、被検査体2の測定時にトップガイド板21にストッパー領域100が当接し、プリロードを確実にすることができる。或いは、ミドルガイド板23を貫通する領域の近傍の、ミドルガイド板23を貫通する領域よりも基端部の側でプローブ10にストッパー領域100を形成してもよい。この場合、被検査体2の測定時にミドルガイド板23にストッパー領域100が当接し、プリロードを確実にすることができる。
【0043】
プローブ10は、フォトリソグラフィ技術、めっき、エッチング技術を用いたMEMSプロセスにより製作される。ストッパー領域100は、ガラス製のマスクを使用するなどして、プローブ10の本体と一体成形される。
【0044】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電気的接続装置1では、プローブ10の機械的な硬度が、最大応力箇所を除いた領域よりも最大応力箇所において高い。このため、プローブ10は、最大応力箇所よりも、最大応力箇所を除いた領域において、先端部が被検査体2と接触した際に湾曲し易い構造を有する。これにより、プローブ10の全体が均一な硬度である場合に比べて、座屈したプローブ10の最も湾曲する位置が基端部の側に移動する。その結果、第2の実施形態に係る電気的接続装置1によれば、ミドルガイド板23のガイド穴230の内部を、ガイド穴230の中心線と略平行にプローブ10が摺動する。
【0045】
これに対し、第1の実施形態では、最大応力箇所を除いた領域でプローブ10の側面に括れ11を形成することにより、座屈したプローブ10の最も湾曲する位置が基端部の側に移動する。つまり、側面に括れ11を形成することにより、プローブ10の構造を最大応力箇所よりも最大応力箇所を除いた領域において湾曲し易くしている。一方、第2の実施形態では、プローブ10の硬度を最大応力箇所において他の領域よりも高くすることにより、最大応力箇所を除いた領域においてプローブ10を湾曲し易くしている。このように、第2の実施形態では、プローブ10の最も湾曲する位置を移動させるためのプローブ10の構造が第1の実施形態と異なる。その他の構成については、第2の実施形態に係る電気的接続装置1と第1の実施形態は同様である。
【0046】
図10に示した第2の実施形態に係る電気的接続装置1のプローブ10では、最大応力箇所の領域Bを含む一定の範囲の高硬度領域150において、プローブ10の他の領域よりも硬度を高くしている。図10に示したプローブ10によれば、プローブ10と被検査体2が接触した状態において、プローブ10の最も湾曲する位置が、プローブ10の全体を同じ硬度にした場合に比べてミドルガイド板23から離れる方向に移動する。これにより、ガイド穴230の中心線と略平行に、プローブ10がガイド穴230の内部を摺動する。したがって、プローブ10がガイド穴230の内部を摺動した場合にも、プローブ10の側面がガイド穴230の開口部で擦られて損傷することが抑制される。
【0047】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0048】
例えば、図11に示すように、プローブ10の表面に絶縁コート材15をコーティングしてもよい。これにより、隣接するプローブ10同士が接触した場合にも、プローブ10間での短絡を防止できる。絶縁コート材15は、例えば樹脂などである。
【0049】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0050】
1…電気的接続装置
2…被検査体
10…プローブ
11…括れ
20…プローブヘッド
21…トップガイド板
22…ボトムガイド板
23…ミドルガイド板
30…電極基板
31…電極パッド
100…ストッパー領域
150…高硬度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11