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特許7381220電力市場における入札支援方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電力市場における入札支援方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231108BHJP
   G06Q 30/08 20120101ALI20231108BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/08
H02J3/00 180
H02J3/00 130
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019087997
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020184176
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】曹 民圭
(72)【発明者】
【氏名】根本 亮
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033801(JP,A)
【文献】特開2007-065954(JP,A)
【文献】特開2004-112869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、電力の市場におけるスポット取引の商品を特定する情報と、該電力スポット市場商品の現物が買われる地域の情報と、電力の現物取引が実施される日が週日か休日かといったことを区別するための日種情報とからなる過去の取引環境情報と、その電力スポット取引の市場全体としての約定量と現物が買われる地域毎の約定価格とからなる約定結果とを用いて、需要曲線の一部分と供給曲線の一部分の組を推定する手段と、
過去の取引環境情報と、推定された需要曲線の一部と供給曲線の一部の組との対応関係を記録・検索する手段と、
ゲートクローズしていない電力商品を特定する情報と、該電力商品の現物の受渡しが行われる日の日種情報とからなる将来の取引環境情報と、過去の取引環境情報との類似性を評価する手段と、
将来の取引環境情報と類似度が高い過去の取引環境情報について類似度が高い過去の取引環境情報に対応付けられた需要曲線の一部と供給曲線の一部の組を、少なくとも一組以上表示する手段と、を有し、
前記需要曲線の一部分は、購入量の変化点となる購入価格とその購入前後の購入量を含み、前記供給曲線の一部分は、販売量の変化点となる販売価格とその前後の販売量を含む電力市場における入札支援装置。
【請求項2】
請求項1の電力市場における入札支援装置であって、
取引環境情報に、対象となる電力商品の現物取引が実施される日の、最大需要予測値、最低気温予測値、最高気温予測値、日射量予測値、降水量予測値、降雪量予測値、計画停止予定発電設備容量、連系線計画利用量、燃料価格、風力発電量予測値のいずれか一つ以上を含む入札支援装置。
【請求項3】
請求項1の入札支援装置であって、
取引環境情報に、対象となる電力商品の現物取引が実施される期間の、需要予測値、気温予測値、日射量予測値、降水量予測値、降雪量予測値、計画停止予定発電設備容量、連系線計画利用料、燃料価格、風力発電量予測値のいずれか一つ以上を含む入札支援装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一の入札支援装置であって、
対象となる電力商品の約定結果に、当該商品に対する売りおよび買いの入札量の量も含み、約定価格とこの情報を用いて需要曲線の一部と供給曲線の一部の推定を行うことを特徴とする入札支援装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれか一の入札支援装置であって、
需要曲線の一部および供給曲線の一部の推定において、推定した曲線と、約定情報に含まれる情報の内、少なくとも約定価格を約定量とともに表示する入札支援装置。
【請求項6】
計算機を用いて実行される入札支援方法であって、
計算機は、少なくとも、電力の市場におけるスポット取引の商品を特定する情報と、該電力スポット市場商品の現物が買われる地域の情報と、電力の現物取引が実施される日が週日か休日かといったことを区別するための日種情報とからなる過去の取引環境情報と、その電力スポット取引の市場全体としての約定量と現物が買われる地域毎の約定価格とからなる約定結果とを用いて、需要曲線の一部分と供給曲線の一部分の組を推定するステップと、
過去の取引環境情報と、推定された需要曲線の一部と供給曲線の一部の組との対応関係を記録・検索するステップと、
ゲートクローズしていない電力商品を特定する情報と、該電力商品の現物の受渡しが行われる日の日種情報とからなる将来の取引環境情報と、過去の取引環境情報との類似性を評価するステップと、
将来の取引環境情報と類似度が高い過去の取引環境情報について類似度が高い過去の取引環境情報に対応付けられた需要曲線の一部と供給曲線の一部の組を、少なくとも一組以上表示するステップとを有し、
前記需要曲線の一部分は、購入量の変化点となる購入価格とその購入前後の購入量を含み、前記供給曲線の一部分は、販売量の変化点となる販売価格とその前後の販売量を含む入札支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力取引市場における市場取引の支援装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現物電力の取引が自由化され、取引所取引が行われている。例えば日本においては、日本卸電力取引所(JEPX)が開設されており、一日前市場で卸電力の取引が行われる。この市場はブラインドオークション方式であり、市場取引が確定するゲートクローズのタイミング以降、約低価格と約定量、買い入札量、売り入札量などの結果が公開さている
一方、入札価格に対する入札量の関係が分かるような情報までは公開していない。このような課題に対して特許文献1では、JEPXが公開している情報と気象などの実績、曜日などの情報から、売り及び買いの約定率関数を生成し、これと総入札量を用いて入札価格に対する入札量の関係を推定する方法が示されている。
【0003】
もう少し詳しく解説すると、過去の取引実績として開示されている約定量を、その時の売り入札量で規格化した売り約定率、ならびに買い入札量で規格化した買い約定率と、約定価格の関係を表す約定率関数を、開示された過去データのスプライン回帰で生成し、これが、入札率と入札価格の関係を表す入札率曲線を良く近似するとの仮説に基づいて、約定率関数を入札率関数とみなして、入札総量の実績値、乃至別途推定した入札総量を用いて約定率関数を入札関数に写像し、売りおよび買い入札関数の交点である約定価格の推定を行う方式を示している。
【0004】
なお、入札率関数は、売り入札を表すものと、買い入札を表すものがあり、それぞれ供給率関数、需要率関数と呼んでいる。同様に入札関数は、売り買いそれぞれあり、売りの入札関数は供給関数、買いの入札関数は需要関数と呼んでいる。
【0005】
供給率関数は、入札率Rsを入力、その入札率Rs以下の割合の入札量が、供給率関数の出力である入札価格Ps以上なら販売するという関係を示している。需要率関数は、需要率Rdを入力、その入札率Rd以下の割合の入札量が、需要率関数の出力である入札価格Pd以下なら購入するという関係を示している。
【0006】
約定率関数は、月や曜日などのカレンダー情報や気象条件などもコントロールパラメータとして電力商品毎にスプライン回帰計算することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-033801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、約定率関数のスプライン回帰を電力商品毎に実施することやカレンダーや気象の要因を考慮した回帰を行うことが示されているが、連続性を仮定したスプライン回帰では、市場分断や稀な気象条件などに対するトレーダの心理要因などから生じる不連続な挙動をモデル化できない可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、市場分断などの不連続な挙動に対しても、需要曲線及び供給曲線の予測を与える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
確率的な分布を想定した部分的な需要曲線と、確率的な分布を想定した部分的な供給曲線の候補を定義する手段または、確率的な分布を想定した部分的な需要曲線と、確率的な分布を想定した部分的な供給曲線の候補を推定する手段と、気象予報データ乃至気象実績データ、需要予想量、計画停止設備容量、連系線空き容量、燃料価格、時刻、日種(曜日や平日、休日の区別)などの取引環境データを入力する手段と、地域毎の約定価格、地域毎乃至市場全体の約定量、地域毎乃至市場全体の売り入札量、地域毎乃至市場全体の買い入札量などの観測データを入力する手段を有し、入力または推定した部分的な需要曲線候補および部分的な供給曲線候補を前提とした場合に、観測された約定価格、約定量、売り買いの入札量が発生する尤度を計算し、需要関数および供給関数ならびにそれに対する観測データの尤度を観測された取引環境データと対応付けて記録する手段を有し、観測された取引環境データの値の組合せに対して、尤度の高い部分的な需要曲線および部分的な供給曲線を表示する。
【発明の効果】
【0011】
複数の部分的な需要曲線および供給曲線が市場の約定結果をどれだけうまく説明しているかを、市場価格に影響を与える因子と関連付けて記録し、それら因子の予測値に対して、最も約定価格や約定量の尤度が高い曲線を表示することで、価格の値動きの動向の把握を支援することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の入札支援装置のシステム構成図の一例
図2】部分需要曲線及び部分供給曲線の一実施形態を図で表現したもの
図3】部分需要曲線および部分供給曲線の管理の手順の一実施例
図4】部分需要曲線と部分供給曲線の交差形態
図5】部分供給曲線モデルと部分需要曲線モデルのパラメータ更新処理の一例の説明図
図6】部分供給曲線モデルと部分需要曲線モデルのパラメータ更新処理の一例の説明図
図7】データベースに格納するテーブル構成の位置実施例
図8】本発明の入札支援装置の第二の実施例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の入札支援装置100のシステム構成図の一例である。入力装置101を通じて入力された部分的な需要曲線および供給曲線およびその確率分布パラメータは、データベース102に格納される。電力市場の各商品の約定情報データ103と、それと対応する時刻の取引環境情報データ104を入力として尤度計算手段105で、約定結果が発生する尤度の計算を実施する。この結果はデータベース102に、対応する需要曲線および供給曲線ならびに、取引環境データ104と関連付けて記録される。
【0015】
運用段階では将来の市場状況を予測するため、市場取引が確定していない商品と対応する取引環境データ106を入力として、要因類似性判定手段107で、該取引環境データ106との距離が近い取引環境データ104の値と関連付けられたデータベース上の需要曲線ならびに供給曲線を選択し、部分需給曲線表示手段108上に表示する。
【0016】
なお、入札支援装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、入力装置、出力装置、通信装置および記憶装置を備えたコンピュータ装置で構成される。
【0017】
記憶装置には、部分的な需要曲線および供給曲線およびその確率分布パラメータが格納されるデータベース102が構成される。また、記憶装置には、尤度計算手段105を実現するためのプログラム、要因類似性判定手段107を実現するためのプログラムが格納され、CPUがそれぞれのプログラムを読出し実行する。CPUは、読みだしたプログラムにより、尤度計算手段105を実行し、電力市場の各商品の約定情報データ103と、それと対応する時刻の取引環境情報データ104とを用いて、約定結果が発生する尤度の計算を実施する。CPUは計算結果を、記憶装置のデータベース102に、対応する需要曲線および供給曲線ならびに、取引環境データ104と関連付けて記録する。
【0018】
また、CPUは、要因類似性判定手段107を実行し、取引環境が類似しているものとして該取引環境データ106との距離が近い取引環境データ104の値と関連付けられたデータベース上の需要曲線ならびに供給曲線を選択し、部分需給曲線表示手段108上に表示する。部分需給曲線表示手段108は、例えば、ディスプレイなどの表示部を有する出力装置、通信機能とディスプレイを有する携帯端末やタブレットに向けてネットワークを介して出力する装置である。
【0019】
図2は部分的な需要曲線及び部分的な供給曲線とそれらの確率分布パラメータの表現形式の一例を示す。図は部分需要曲線モデル201と部分供給曲線モデル202をイメージとして示したものである。
【0020】
購入量の変化点となる購入価格Pdとのその購入前後の購入量DhおよびDl、並びにそれらを用いた約定価格及び約定量の尤度判定に用いるパラメータσpdおよびσdからなる。供給曲線についても同様に、販売量の変化点となる販売価格とその前後の販売量SlおよびSh、並びに、それらを用いた約定価格および約定量の尤度判定に用いるパラメータσps、σsなどからなる。σdは購入量の大きい側と小さい側で同じ値を持つとしてモデル化する場合、このような定義が一つの実施形態となるが、小さい側と大きい側で別の値を持つようにしてもよい。同様にσsについても図2の実施例では、供給量が多い側と少ない側で同じ値を用いることを前提に示したが、異なる値としてもよい。
【0021】
図1では、このようなモデルを、入力装置101を通じてデータベース102上に定義するように示したが、約定価格や約定量から自動的に生成するようにしても良い。
【0022】
図3は、入札支援装置100が行う部分需要曲線および部分供給曲線の管理の手順を示すフローチャートである。ステップ301からステップ315までの15ステップからなる。初めにエリアの約定価格を取得する(ステップ302)。次に約定量を取得し(ステップ303)、エリア毎の約定量の推定を行う(ステップ304)。これには広域機関が公開している電力需要予想値などを用いてエリア毎の需要量を決定し、市場の約定量を按分するなどの方法を用いる。次にデータベース102から部分需要曲線モデルを読み込む(ステップ305)。続いて部分供給曲線モデルを読み込む(ステップ306)。なおステップ305およびステップ306においては、ステップ302ならびにステップ304で得たエリア約定価格および約定量に対して、例えばDlとDhの間に約定量があり、Pdが約定価格の±30%の範囲にあるもの、SlとShの間に約定量があり、Psが約定価格の±30%の範囲にあるものなどのような形で、対象となる部分需要曲線モデルおよび部分供給曲線モデルを選別するようにしてもよい。
【0023】
このようにして選択したすべての部分供給曲線モデルと部分需要曲線モデルの組合せに対して、ステップ307からステップ312のループで観測された約定価格と、推定した約定量が発生する尤度を計算する(ステップ308)。尤度が所定値より小さければ次の組合せについてステップ308を実施する。尤度が所定値より大きい場合は、対象となった部分供給曲線モデルと部分需要曲線モデルのパラメータをエリア約定価格およびエリアの約定量推定値を用いて補正する(ステップ310)。また、補正を実施したことを記録する(ステップ311)。ステップ305およびステップ306で取得したすべての部分需要曲線モデルおよび部分供給曲線モデルの組合せについて、観測されたエリア約定価格とエリア約定量推定値の尤度判定が終了したら、補正の実施有無を確認する(ステップ313)。補正を行った記録がない場合は、観測されたエリア約定価格とエリア約定量の推定値を元に、部分供給曲線モデルと部分需要曲線モデルを生成し、データベース102に登録する。一つでも補正を行っている既登録の部分供給曲線モデルならびに部分需要曲線モデルがある場合は、新規の登録は実施しない。
【0024】
なお、ステップ308の尤度の計算においては、部分需要曲線と部分供給曲線のペアが決まると、図4に示すような4つの交差形態のいずれかであるかが決まるため、これらの場合に対応して、部分供給曲線および部分需要曲線のパラメータを参照し、観測されたエリア約定価格と推定したエリア約定量の尤度を評価する。
【0025】
第一の交差形態401は約定価格を部分供給曲線が決定し、約定量を部分需要曲線の低需要量側が決定するケースであるため、パラメータとして約定価格の尤度評価ではPsとσpsを用い、約定量の尤度評価にはDlとσdを用いる。
【0026】
第二の交差形態402は約定価格を部分供給曲線が決定し、約定量を部分需要曲線の高需要側が決定するケースである。この場合は、パラメータとして、約定価格の尤度評価にはPsとσpsを、約定量の評価にはDhとσdを用いる。
【0027】
第三の交差形態403は、部分需要曲線が約定価格を決定し、部分供給曲線の高供給量側が約定量を決定する。この場合は、パラメータとして、Pdとσpdで約定価格の尤度を評価し、Shとσsで約定量の尤度を評価する。第四の交差形態は、部分需要曲線が約定価格を決定し、部分供給曲線の低供給量側が約定量を決定するケースである。この場合はパラメータとして、Pdとσpdで約定価格の尤度を評価し、slとσsで約定量を評価する
例えば、パラメータとしてPdとσpdを用いた第三の交差形態403における約定価格の尤度評価の場合に、正規分布を想定して評価する場合には、平均Pd、標準偏差σpdの正規分布を仮定して、観測された約定価格の発生する確率を計算する。同様に、約定量についても平均Sh、標準偏差σsの正規分布を仮定して、観測された約定量の発生する確率を計算し、それらの同時確率を評価することで、対象となる部分供給曲線と部分需要曲線の組合せに対する観測された約定価格と約定量の尤度を計算する。
【0028】
尤度の計算において仮定する確率密度関数は、必ずしも正規分布に限定されない。また約定価格と約定量を独立な確率変数とみなした評価について説明したが、σpdとσdや、σpsとσsだけでなく、価格及び量の共分散を現すσdpd及びσspsのようなパラメータを導入し、2次元正規分布と仮定して約定量と約定価格の同時確率を求めるようにしても良い。
【0029】
ステップ310における部分供給曲線モデルおよび部分需要曲線モデルの補正について説明する。尤度が所定値以上となる部分供給曲線と部分需要曲線に関して、既に過去に観測されたエリア約定価格とそれに対して推定したエリア約定量が幾つか対応している場合、それらの2つの値からなるベクトルをデータベース102から取得する。新たに評価したエリア約定価格とエリア約定量の2つの値からなるベクトルもあわせた複数の二次元ベクトルの重心を求める。この値を用いて、対応する部分供給曲線モデルのパラメータと部分需要曲線モデルのパラメータを更新する。更新処理のイメージを、図5を用いて説明する。図5では、得られたベクトルが新たに評価したエリア約定価格とエリア約定量のベクトルも合せて点501、502、503、504、505の5つのベクトルだったとして説明する。重心が点500だった場合に、重心を原点とした座標軸591、592を考える。縦軸591は需要量ないし供給量の軸であり、横軸592は価格の軸である。
【0030】
部分供給曲線モデルの補正および部分需要曲線モデルの補正に当っては、それらが一定の確率で上ぶれしたケースと下振れしたーケースの2つの場合を考え、その中心部分に部分需要曲線ないし部分供給曲線の期待値に対応するモデルがあると考える。対応付けられたベクトルが、すべて一定の確率の範囲に収まるような部分供給曲線および部分需要曲線を求め、そのパラメータで、モデルを更新すればよい。
【0031】
このような例を図5に示した。上ぶれした部分供給曲線としては、522および542のケースがあり、これらに対応する下振れした部分供給曲線は、それぞれ521および541となる。また、対応する部分需要曲線は上ぶれしたものがそれぞれ511、531、下振れしたものが512、532となる。
【0032】
まず部分需要曲線511、512、部分供給曲線521、522の求め方について図5の枠550に示した図を用いて説明する。
【0033】
なお、横軸592から最もずれた約定量を持つベクトルを見つけ、重心500の縦軸の値(対象となるベクトルの平均約定量)との差を計算し、横軸と並行で、その値の分だけ横軸より約定量が大きい直線をyp(594)、小さい直線をym(593)とする。
【0034】
このケースは、縦軸591から最も遠いベクトル(重心の価格からの乖離が一番大きいベクトル505)の供給量を部分供給曲線の供給量で、価格を部分需要曲線の需要量変化点の価格Pdが決定するケースである。縦軸591から最も価格の乖離が大きいベクトルの約定量と約定価格が第一象限または第三象限にある場合は、このケースだけを想定する。部分需要曲線の需要変化点と部分供給曲線の供給量によって約定価格と約定量が決まるエリアを斜線でハッチングし、部分供給曲線の供給量変化点の価格と部分需要曲線の需要量で約定価格と約定量が決まっても良いエリアを波線でハッチングして示した。
【0035】
波線でハッチングして示した領域の上下は、ym(593)とyp(594)で規定される。幅は任意に取りえるが、例えば、第二象限と第四象限のうち、原点から二番目に遠いベクトル(503)と縦軸591との距離を、縦軸を中心として二倍にした範囲とするといった方法が考えられる。これ以外に、対象となるベクトルの密度の高さや、対象ベクトル全体に対して所定の割合までを含む範囲などとしても良い。縦軸からみてこの範囲の外側は、供給の供給量と需要曲線の需要量が変わる価格で約定量と約定価格が決定されるエリアとなる。上振れした供給曲線522の低供給量側の値Sl(上)と、下振れした供給曲線521の高供給量側の値Sh(下)は、第二象限または第四象限上にあり波線でハッチングしたエリアの境界または外にあるベクトル(505、503)のうち、線ym(593)か線yp(594)の近い方までの距離のうち、最短の値(ベクトル503と線ymが近い)を求め、ypからこの値を引いたものをSl(上)に、ymにこの値を足したものをSh(下)とする。
【0036】
なお、この手順は、重心の周りに分布を想定している場合であり、重心とは関係なく、分布の中心を再定義する場合には、横軸から最も遠いベクトルと、横軸との距離に基づいてymとypを決めるのではなく、約定量が最大のベクトルの約定量(縦軸の値)をyp、約定量が最小のベクトルの約定量(縦軸の値)をymとしてよい。波線でハッチングした部分も必ずしも重心周りに対象である必要はない。波線でハッチングしたエリアの外、またはそのエリアの線ymおよび線yp以外の境界上のベクトルのうち、第二象限にあって、ypに一番近い約定量を持つベクトルの約定量(縦軸の値)をSl(上)とし、第四象限にあって、ymに一番近い約定量を持つベクトルの約定量(縦軸の値)をSh(下)とするようにしてもよい。
【0037】
対象となるベクトルをすべて含むように部分需要曲線を決めるには、縦軸から一番遠いベクトル(図の例では505)と縦軸との距離を計算(重心の約定価格と縦軸から一番遠いベクトルの約定価格との価格差)し、重心の約定価格(横軸の値)からこれを引いた値を下振れした需要曲線512の需要量変化点の価格に、重心の約定価格(横軸の値)にこれを足した値を上振れした需要曲線511の需要量変化点の価格にすればよい。上振れした需要曲線511の高需要量側の値Dh(上)はypとする。上振れした需要曲線511の低需要側の値Dl(上)はymから、次の値のまでの任意の値としてよい。
【0038】
前述した次の値とは、第一象限で、波線でハッチングしたエリアの外、又は線yp(594)以外の境界上にあって、線yp(594)に一番近いベクトルの約定量(縦軸の値)と線yp(594)の距離(以下、説明他のためy1とする)、および第三象限で、波線でハッチングしたエリアの外、または線ym(593)以外の境界上にあって、線ym(593)に一番近いベクトルの約定量(縦軸の値)と線ym(593)との距離(以下、説明のためy2とする)を求め、y1とy2のうち小さい方の値をypから引いた値である。
【0039】
下振れした需要曲線512の低需要側の値Dl(下)はymとする。下振れした需要曲線512の高需要側の値Dh(下)は、ypから次の値までの任意の値としてよい。ここで次の値とは、前述したy1とy2の小さい方をymに足した値である。
【0040】
なお、対象となるベクトル群の重心から対象な分布を想定しない方式としても良い。この場合、この場合例えば、下振れした需要曲線512の低需要側の需要量Dl(下)は、対象となるベクトルのうち、約定量が最も少ないベクトルの値とし、下振れした需要曲線の高需要側の需要量Dh(下)は、対称なるベクトルのうち最も需要が多いベクトルの値から、第二象限また第三象限で、波線でハッチングした部分の外または、上下の境界以外の境界上のベクトルのうち、最小の需要値を持つベクトルの需要値までの任意の値としてよい。上振れした需要曲線511の高需要側の需要量Dh(上)は、対象となるベクトルのうち、最も需要の大きいベクトルの需要値とし、低需要側の需要量Dl(上)は、需要が最も少ないベクトルの需要値から、第一象限又は第四象限に合って、波線でハッチングしたエリアの外または、上下以外の境界上にあるベクトルのうち最大の需要を持つベクトルの需要値までの任意の値としてよい。
【0041】
次に部分需要曲線531、532、部分供給曲線541、542の求め方について図5の枠560に示した図を用いて説明する。
【0042】
このケースは、縦軸から最も遠いベクトル(重心の価格からの乖離が最も大きいベクトル)の価格を供給曲線の供給量変化点の価格が決定し、供給量を部分需要曲線が決定するケースである。縦軸591から最も価格の乖離が大きいベクトルの約定価格と約定量が第二象限または第四象限にある場合は、このケースだけを想定する。部分供給曲線の供給量変化点と部分需要曲線の需要量によって約定価格と約定量が決まるエリアを斜線でハッチングし、部分需要曲線の供給量変化点の価格と部分供給曲線の供給量で約定価格と約定量が決まっても良いエリアを波線でハッチングして示した。
【0043】
縦軸に近い側の波線でハッチングした領域を規定するのが需要曲線である点は、前述の領域550に関する説明とは異なるが、同様の方法で、対象となるベクトルを含む部分需要曲線の範囲と部分供給曲線の範囲を決定することが出来る。
【0044】
以上のようにして部分供給曲線と部分需要曲線の上振れ範囲と下振れ範囲をそれぞれ二本の線として決定することができるので、これらを用いて、一本の部分需要曲線と部分供給曲線ならびに、尤度計算のためのパラメータを計算する。たとえば上振れと下振れの二本の部分供給曲線の丁度中間になるように、部分供給曲線を決定し、上振れした曲線ならびに下振れした曲線と中間線との距離が、中間線からの標準偏差など、一定の確率での部分供給曲線モデルのズレの範囲としてσsやσd、σpd、σpsを計算すればよい。たとえば、モデルのズレは正規分布で表現できると仮定し、上振れした曲線または下振れした曲線と中間線との差が標準偏差に相当すると仮定するなどすればよい。
【0045】
ここまでの説明では、対象となるベクトルがすべて包含されるように部分需要曲線と部部供給曲線の上振れと下振れの範囲ならびに部分需要曲線の上振れと下振れの範囲を決めたが、例えば図6のようにしても良い。この例では、図5の領域550と同様、供給曲線がハッチング領域と接するように供給曲線の上振れ範囲と下振れ範囲を設定しているが、需要曲線の需要量変化点の値を縦軸から最遠のベクトル601を考慮せずに設定している。この場合、ベクトル601や、このケースではベクトル611、612も調整した部分需要曲線及び部分供給曲線の所定の上振れ、下振れ範囲には含まれないことになるが、これらのベクトルについて、新たに需要曲線と供給曲線を設定したり、他の需要曲線、供給曲線お組合せの対象に編入するようにしたりすれば良い。
【0046】
次に、ステップ314や、図6の説明で示した対象から漏れたベクトルに対応する部分需要曲線モデルおよび部分供給曲線モデルの登録について説明する。約定価格と約定量が一組しかない場合、図4に示したどのような形での約定形態になっているかは決めることが出来ない。図5および図6を用いて示したように、複数の約定価格と約定量のベクトルを一組の部分需要曲線と部分供給曲線およびのその上振れ及び下振れ範囲を表すパラメータを用いて表現するように修整してゆくため、図4の4つの形態を循環的に使用する方法でもよい。また、σsやσd、σpdやσpsの初期値は固定値や所定範囲の乱数で設定し、DhやDl、ShやSl、Ps、Pdに付いても、登録対象となった約定量と約定価格に対して、図4のどの形態とするかに応じて、予め決めたオフセットを加えるなどして設定すればよい。
【0047】
図7にデータベース102上の情報の格納形態の一実施例を示す。約定情報を格納するテーブル701、取引環境情報を格納するテーブル702、需要曲線-供給曲線組合せテーブル703、部分供給曲線テーブル705、部分需要曲線テーブル704からなる。
【0048】
これらは、電力の市場におけるスポット取引の商品を特定する情報と、該電力スポット市場商品の現物が買われる地域の情報と、電力の現物取引が実施される日が週日か休日かといったことを区別するための日種情報とからなる過去の取引環境情報と、その電力スポット取引の市場全体としての約定量と現物が買われる地域毎の約定価格とからなる約定結果に対応する。また、取引環境情報は、対象となる電力商品の現物取引が実施される日の、最大需要予測値、最低気温予測値、最高気温予測値、日射量予測値、降水量予測値、降雪量予測値、計画停止予定発電設備容量、連系線計画利用量、燃料価格、風力発電量予測値のいずれか一つ以上を含んでもよい。また、取引環境情報は、対象となる電力商品の現物取引が実施される期間の、需要予測値、気温予測値、日射量予測値、降水量予測値、降雪量予測値、計画停止予定発電設備容量、連系線計画利用料、燃料価格、風力発電量予測値のいずれか一つ以上をんでもよい。
【0049】
初めに市場取引の開始時点までに取引環境情報テーブル702のレコードが登録され、これに対応する約定情報テーブル701のレコードが、市場のゲートクローズ後に登録され、1:1で取引環境情報と紐付けされる。登録時点では、需要曲線-供給曲線組合せテーブル703のレコードとの紐付けは行わず、参照先需要供給組合せIndexには無効値を設定しておく。
【0050】
本実施例の入札支援方法および装置は、はじめに過去の市場データやそれに関連する取引環境情報を登録し、部分供給曲線モデルおよび部分需要曲線モデルの生成を行う。なお、入札支援方法および装置は、このタイミングで約定情報レコードから自動で需要曲線-供給曲線組合せテーブル703のレコードと、部分供給供給曲線テーブル705のレコードおよび部分需要曲線テーブル704のレコードを同時に生成するようにしても良いし、手動での入力を受け、定義するようにしても良い。自動で生成する場合は、入札支援方法および装置は、例えば約定情報テーブル701のレコードを分析し、需要曲線-供給曲線組合せインデックスが無効なものを選択し、これらを約定価格-約定量空間にプロットしたとして、約定情報レコードが存在する空間を所定個に分割する部分空間を考え、各部分空間に含まれるレコードに関して、図5を用いて説明した方法を用いて部分需要曲線レコードと部分供給曲線レコードを生成し、更に、その組合せを表す需要曲線-供給曲線組合せレコードも生成して、そのIndexを前述した部分空間に含まれる約定情報レコードの参照先需要供給組合せIndex属性に設定する。
【0051】
一旦部分供給曲線レコードと部分需要曲線レコードの登録がおわった場合は、例えばい一日毎などのタイミングで、新規に登録された約定情報レコードに対して、図5ないし図6で説明した処理を行うようにして、部分需要曲線レコードおよび部分供給曲線レコードのメンテナンス(更新)を実施すればよい。
【0052】
なお。部分供給曲線テーブル705、部分需要曲線テーブル704、取引環境情報レコード702の属性は一例を示したもので、実施形態によっては、使用しなくても良い。たとえば、括弧で囲って示したσsh、σsl、σdh、σdlは、実施形態により、使用しなくてもよい場合がある。
【0053】
また、約定情報レコードを約定価格-約定量空間上にプロットすることに相当する処理において、第三乃至は第四以降の軸として、取引環境情報の日種や月日、時刻、連系線容量、計画停止設備容量、燃料価格、日射量、予報気温、予報需要などの値も考慮してこれらが一定の範囲に入る約定情報レコードだけを対象に図5を用いた説明した部分供給曲線レコードや部分需要曲線レコードの新規登録およびメンテナンスをするようにしてもよい。
【0054】
また、図7の実施例では、約定情報レコードは、高々1つの需要曲線-供給曲線組合せレコードにしか紐付けられないような形態を示したが、必ずしもこの限りではない。参照先需要供給組合せIndex属性を最大10個にするとか、曲線-供給曲線組合せレコードのインデックスと、自身のテーブルの別のレコードのインデックスへの参照と、当該レコードのインデックス(主キー)の3つの属性を持つ、リンクリスト構造のテーブルを追加し、この先頭要素を参照先需要供給組合せIndexの代わりに参照させるようにするといった方法を取れば、一つの約定情報レコードを複数の部分需要曲線レコードならびに部分供給曲線レコードの組み合わせてと紐付けて管理することが出来るようになる。
【0055】
運用段階ではゲートクローズ前の市場状況を予測するため、要因類似性判定手段107は、市場取引が確定していない商品と対応する取引環境情報レコードの入力を受け処理を開始する要因類似性判定手段107は、これと類似性の高い取引環境情報を参照する約定情報を約定情報テーブル701から取得し、それが参照する需要曲線-供給曲線組合せ情報から、部分供給曲線レコードと部分需要曲線レコードを取得する。以上が、要因類似性判定手段107は、過去の取引環境情報と、推定された需要曲線の一部と供給曲線の一部の組との対応関係を記録・検索し、ゲートクローズしていない電力商品を特定する情報と、該電力商品の現物の受渡しが行われる日の日種情報とからなる将来の取引環境情報と、過去の取引環境情報との類似性を評価する手段と過去の取引環境情報に対応付けられた需要曲線の一部と供給曲線の一部とを、将来の取引環境情報と過去の取引環境情報との類似度が高いものを少なくとも一組以上表示する例を説明である。
【0056】
なお、要因類似性判定手段107は、ゲートクローズしていない電力現物取引に対応する取引環境情報レコードとの類似性が高い過去の約定情報レコードが紐付いた取引環境情報レコードを探索するので、複数の約定情報レコード見つかる可能性があり、部分供給曲線レコードおよび部分需要曲線レコードも複数見つかる可能性がある。前述したように。一つの約定情報に複数の参照先需要供給組合せIndexを参照できるようにした場合は、なおさらそのような可能性があるが、たとえば、最も取引環境情報レコードの類似性が高い過去取引環境情報と紐付いた部分需要曲線と部分供給曲線以外に、見つかった部分供給曲線と部分需要曲線の組合せのなかから、約定価格が小さいもの、大きいものをそれぞれ1つ以上探索し、大きい側と小さい側のそれぞれで、最も類似性が高い取引環境情報と紐付くものを合せて表示するようにしても良い。
【0057】
なお、尤度計算手段105または要因類似性判定手段107は、対象となる電力商品の約定結果に、当該商品に対する売りおよび買いの入札量の量も含み、約定価格とこの情報を用いて需要曲線の一部と供給曲線の一部の推定を行ってもよい。また、需要曲線の一部および供給曲線の一部の推定において、推定した曲線と、約定情報に含まれる情報の内、少なくとも約定価格を約定量とともに表示してもよい。
【実施例2】
【0058】
図8は、本発明の入札支援装置100のシステム構成図の一例である。本実施例は、図1から図7で説明した構成を、深層ニューラルネットワークを用いて実現する場合の実施例である。
【0059】
はじめに、入札支援装置100は、約定情報テーブル701のレコード801について、ランダムに生成した図2のような部分需要曲線と部分供給曲線の組(部分需給関数ペアと呼ぶ)802の尤度を評価する(811)。入札支援装置100は、一つの約定情報レコードに対して、複数の部分需給関数ペアの評価を行うので、そのうち、最も高い尤度を持つ部分需給関数ペアに対する尤度を約定情報レコードに紐付ける。このような処理を行なった結果(803)を、すべての約定情報レコードの尤度の合計を計算し(812)、これが高まる方向で、部分需給関数ペアのパラメータをランダムないしタブーサーチのような方法で探索を行う(804)。このような探索で全体の尤度が所定値以上または一定回数実施した段階で、部分需給関数ペアのパラメータを固定する。
【0060】
取引環境情報のうち、利用可能な情報項目を入力として、その時の約定状況が各部分需給関数ペアでどれくらいの確率で説明できるかを出力とする深層ニューラルネットワーク807を考える。
【0061】
図7で示した取引環境情報テーブル702の各項目のうち、利用可能な項目に対応する入力ノード(810)を持つようにする。3層以上のニューラルネットワークとする。出力層(809)は、部分需給関数ペアの数だけのノードを設け、各約定情報レコードと、すべての部分需給関数ペアとの間の尤度を計算してこれを教師信号(805)とし、回帰問題として出力層は恒等写像とする。なお、取引間環境情報レコードと尤度計算に使う約定情報は約定情報のインデックス(808)で紐付け、入力(806)と対応する教師信号(805)のペアとしてニューラルネットワーク(807)に入力する。またはそのうち、一番大きな値を1、それ以外を0とするような値を教師信号とし、クラスタ分類問題として出力層をソフトマックス関数として実装する。
【0062】
なお、はじめに部分需給関数ペアを学習する際、約定情報レコードだけを使うのではなく、予め取引情報レコードをクラスタリングし、各クラスタに含まれる取引情報レコードに対応した約定情報レコードだけについてだけ、部分需給関数ペアを生成し、この尤度を高める処理を811、812、804のループで実施し、すべての取引環境情報レコードのクラスタに対して生成した部分供給関数ペアを総合して、ニューラルネットワーク807を学習するようにしても良い。
【0063】
第一の実施例で説明したように、運用段階ではゲートクローズ前の電力取引商品に対応した取引環境情報レコードを学習済みのニューラルネットワークに入力し、出力層に現れた尤度判定結果を元に、対応する部分需給関数ペアの情報を参照し、表示する。
【0064】
図7に示した約定情報テーブル701や部分需要曲線テーブル、部分供給曲線テーブルの構造は、現状のJEPXで公開されている情報を前提としているが、本発明は、このような市場にだけ限定するものではない。例えば、エリア毎の買い(需要)入札量や売り(供給)入札量などの情報が開示される場合には、このような情報を追加しても良い。また、前述したように、地域毎の需要予測値や設備容量で、市場全体の売り買い入札量を按分して、エリア毎の売り入札量の推定値や買い入札量の推定値を求め、これを約定情報とともに記録するようにしても良い。この場合、部分供給曲線のSh、部分需要曲線のDhの尤度をこれらの値で評価するようにしてもよい。また、ここまでの説明では、部分需要曲線モデルや部分供給曲線モデルを階段状の関数としてモデル化したが、売り入札量推定値と約定価格、買い入札量推定値と約定価格を通るそれぞれ下に凸な多項式でモデル化し、対象となる約定情報とモデルの二乗誤差が最小となるようなパラメータを決め、対象となる約定情報のモデルからの誤差の総和が小さくなるように、モデルを分割するような方法をとっても良い。
【0065】
部分需要曲線モデルと部分供給曲線モデルの修正や新規定義の際に、ユーザがその妥当性を確認できるように、モデルを表示するようにしても良い。これは、実施例2の場合も同様であり、部分需給関数ペアの更新の終了前に、ユーザに結果を表示して確認を促すようにしても良い。
【0066】
なお、価格の高精度な予測に関しては、本発明や特許文献1のように需要曲線や供給曲線を求める方法以外の方法もあるが、需要曲線や供給曲線の形状に関する予測を示すことは、たとえば、売り入札量の上限に近いところで、買い入札曲線と交差し、買い入札曲線の価格に対する需要量の感度が低い場合は、わずかな需要の変化で、約定価格が大きく変化することがあることが分かる。
【0067】
このような情報があれば、気象情報などにおいて需要増加要因が多いと考えられる場合、入札者は卸市場での買い調達より、DR市場等で需要抑制を選ぶなど、別の選択肢を含んだ対応を選ぶべきかどうかの判断が容易になる。
【0068】
以上の実施例により、電力スポット取引において、市場分断などの不連続な挙動に対しても、需要曲線および供給曲線を予測するために、本発明の態様である入札支援装置または方法は、例えば、市場の約定結果から部分的な需要曲線および供給曲線を推定し、取引環境情報と紐付けて管理し、将来の取引に関する環境情報と過去の取引環境情報の類似性から、想定約定状況を示す部分需要曲線と部分供給曲線を表示する。
【0069】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0070】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録して置くことができる。
【符号の説明】
【0071】
101・・・入力装置、102・・・データベース、103・・・約定情報データ、104・・・取引環境データ、105・・・尤度計算手段、106・・・取引環境データ、107・・・要因類似性判定手段、108・・・部分需給曲線表示手段、201・・・部分需要曲線モデルのイメージ、202・・・部分供給曲線モデルのイメージ、701・・・約定情報テーブル、702・・・取引環境情報テーブル、703・・・需要曲線-供給曲線組合せテーブル、704・・・部分需要曲線テーブル、705・・・部分供給曲線テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8