(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電気エネルギー変換装置、かかる変換装置を含む動力系、および関連する輸送用電気車両
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231108BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20231108BHJP
【FI】
H02M7/48 M
B60L3/00 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019113793
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】313011906
【氏名又は名称】アルストム トランスポート テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール・ルパージュ
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189100(JP,A)
【文献】特表2017-534237(JP,A)
【文献】特開2015-019456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気エネルギーを第2の電気エネルギーに変換するように構成された電気エネルギー変換装置(30)であって、
- 前記第1の電気エネルギーに関連する2つの第1の端子(36)と、
- 前記第2の電気エネルギーに関連する少なくとも1つの第2の端子(38)と、
- 前記2つの第1の端子(36)の間に直列に接続されて互いの間を中間点(44)において連結された2つのスイッチングハーフアーム(42)を各々が含む少なくとも1つのスイッチングアーム(40)であって、前記中間点(44)はそれぞれの第2の端子(38)に連結され、各スイッチングハーフアーム(42)は少なくとも1つのスイッチ(48)を含み、各スイッチ(48)はシリコンカーバイド製の少なくとも1つのパワートランジスタ(66)を含む、スイッチングアームと、
- 前記スイッチングハーフアーム(42)のそれぞれの前記スイッチ(48)を制御するように各々が構成された2つの制御モジュール(50)であって、その各々が対応する前記スイッチングハーフアームに含まれる各パワートランジスタ(66)のゲート電極(72、G)に接続された制御段(80)を含む、制御モジュールと
を備え、
前記または各制御段(80)は、前記制御段が接続された前記または少なくとも1つの前記パワートランジスタ(66)を導通モードと阻止モードとの間で制御するように構成された制御トランジスタ(88)アセンブリ(86)を含み、
前記制御トランジスタ(88)アセンブリ(86)が、前記パワートランジスタ(66)の前記ゲート電極(72、G)に連結された主制御トランジスタ(100)と、前記主制御トランジスタ(100)のゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタ(102)とを含み、
前記制御トランジスタ(88)アセンブリ(86)の少なくとも1つのトランジスタが絶縁ゲート電界効果トランジスタである、電気エネルギー変換装置(30)において、
各制御モジュール(50)が、前記制御段(80)を駆動するように構成された駆動ユニット(82)を含み、前記駆動ユニット(82)が、前記パワートランジスタ(66)の動作不良時には、前記パワートランジスタ(66)のゲート電極(G)を抵抗(R5')とトランジスタ(Q5')の閉鎖とを通してグラウンド(M)に保持するように構成され
、
前記制御段(80)が、第1のインピーダンス(94)および第2のインピーダンス(96)をさらに含み、前記第2のインピーダンス(96)は前記第1のインピーダンス(94)とは別個のものであり、その値は前記第1のインピーダンス(94)の値を上回り、
前記制御トランジスタ(88)アセンブリ(86)が、前記パワートランジスタ(66)の阻止モードでの制御時に前記パワートランジスタ(66)の前記ゲート電極(72、G)からの電流が前記第1のインピーダンス(94)を通る前記パワートランジスタ(66)の第1の消滅構成と、前記パワートランジスタ(66)の阻止モードでの制御時に前記パワートランジスタ(66)の前記ゲート電極(72、G)からの電流が前記第2のインピーダンス(96)を通る前記パワートランジスタ(66)の第2の消滅構成との間でスイッチングを行うように構成されることを特徴とする、電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項2】
前記制御トランジスタ(88)アセンブリ(86)が、絶縁ゲート電界効果トランジスタによって構成されることを特徴とする、請求項1に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項3】
前記制御トランジスタ(88)アセンブリ(86)が、前記パワートランジスタ(66)の導通モードでの制御信号を生成するための第1のトランジスタサブアセンブリ(90)と、前記パワートランジスタ(66)の阻止モードでの制御信号を生成するための第2のトランジスタサブアセンブリ(92)を含み、
各トランジスタサブアセンブリ(90、92)が、前記パワートランジスタ(66)のゲート電極(72、G)に連結された主制御トランジスタ(100)と、前記主制御トランジスタ(100)のゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタ(102)とを含む、請求項1または2に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項4】
前記駆動ユニット(82)が、FPGAのようなプログラマブル論理部品の形で実現される、請求項1から
3のいずれか一項に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項5】
各スイッチ(48)が、各パワートランジスタ(66)と逆並列に接続されたダイオード(68)を含む双方向スイッチであり、各パワートランジスタ(66)がシリコンカーバイド(SiC)で製作される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項6】
各スイッチングハーフアーム(42)が、並列に接続されたN個のスイッチングハーフブランチ(46)を含み、Nは2以上の整数であり、各スイッチングハーフブランチ(46)が少なくとも1つのスイッチ(48)を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項7】
P個のスイッチングアーム(40)と2×P個の制御モジュール(50)とを備え、Pは2以上の整数である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項8】
Pが整数で3である、請求項7に記載の電気エネルギー変換装置(30)。
【請求項9】
輸送用電気車両(10)のための動力系(12)であって、電動機(26)と、前記電動機(26)に連結された電気エネルギー変換装置(30)とを備える動力系(12)において、
前記電気エネルギー変換装置(30)が請求項1から
8のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、動力系(12)。
【請求項10】
鉄道車両のような輸送用電気車両(10)の移動をもたらすように構成された動力系(12)を備える車両(10)において、
前記動力系(12)が請求項9に記載のものであることを特徴とする車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の電気エネルギーを第2の電気エネルギーに変換するように構成された電気エネルギー変換装置に関する。
【0002】
本発明は、輸送用電気車両のための動力系であって、電動機と、その電動機に連結されたかかる電気エネルギー変換装置とを備える動力系にも関する。
【0003】
本発明はさらに、鉄道車両のような輸送用電気車両であって、車両の移動をもたらすように構成されたかかる動力系を備える車両にも関する。
【0004】
電気エネルギー変換装置は、第1の電気エネルギーに関連する2つの第1の端子と、第2の電気エネルギーに関連する少なくとも1つの第2の端子と、少なくとも1つのスイッチングアームとを備えており、各スイッチングアームは、2つの第1の端子の間に直列に接続されて互いの間を中間点において連結された2つのスイッチングハーフアームを含み、中間点はそれぞれの第2の端子に連結される。各スイッチングハーフアームは少なくとも1つのスイッチを含み、各スイッチはシリコンカーバイド製の少なくとも1つのパワートランジスタを含む。電気エネルギー変換装置は2つの制御モジュールを備えており、各制御モジュールはそれぞれのスイッチングハーフアームのスイッチを制御するように構成され、各制御モジュールは、対応するスイッチングハーフアームに含まれる各パワートランジスタのゲート電極に接続された制御段を含む。
【0005】
本発明は輸送分野、とりわけ鉄道輸送、特に機関車および電動車のような電気駆動車両に適用される。
【0006】
本発明は、SiCトランジスタ(SiCは英語のSilicon Carbideより)とも呼ばれるシリコンカーバイド製のパワートランジスタを電気エネルギーの変換のために備える電気エネルギー変換装置の分野に関する。
【背景技術】
【0007】
米国特許出願公開第2013/0039100A1号により上述のタイプの電気エネルギー変換装置が知られている。電気エネルギー変換装置は、三相電動機に給電するために直流エネルギーを三相交流エネルギーに変換することができるインバータである。
【0008】
電気エネルギー変換装置は、直流エネルギーに関連する2つの第1の端子と、三相交流エネルギーに関連する3つの第2の端子と、3つのスイッチングアームとを備えており、各スイッチングアームは、2つの第1の端子の間に直列に接続されて互いの間を中間点において連結された2つのスイッチングハーフアームを含み、その中間点はそれぞれの第2の端子に連結される。
【0009】
各スイッチングハーフアームは、当該の実施形態に応じて、並列に接続された2つのスイッチングハーフブランチを含むか、または3つのスイッチングハーフブランチをそれぞれ含み、各スイッチングハーフブランチはトランジスタおよびそのトランジスタに逆並列に接続されたダイオードによって形成されるスイッチを含む。
【0010】
電気エネルギー変換装置は3つのスイッチングアームの制御ユニットをさらに備え、制御ユニットはアームとアームの間でスイッチングの位相をずらすように構成され、それによって電気エネルギー変換装置の出力に三相交流エネルギーが供給される。
【0011】
しかし、スイッチングアームのスイッチングは必ずしも常に最適とは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2013/0039100A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、スイッチングのための電気エネルギーの消費を制限することによって、各スイッチングアームにおけるスイッチングを改善できる電気エネルギー変換装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため、本発明は、上述のタイプの電気エネルギー変換装置であって、制御段または各制御段が、制御段が接続されたそのパワートランジスタまたは少なくとも1つのパワートランジスタを導通モードと阻止モードとの間で制御するように構成された制御トランジスタアセンブリを含み、制御トランジスタアセンブリがパワートランジスタのゲート電極に連結された主制御トランジスタと、主制御トランジスタのゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタとを含み、制御トランジスタアセンブリの少なくとも1つのトランジスタが絶縁ゲート電界効果トランジスタである、電気エネルギー変換装置を対象とする。
【0015】
本発明による電気エネルギー変換装置を用いることで、MOSFET(英語のMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)より)とも呼ばれる少なくとも1つの絶縁ゲート電界効果トランジスタを含む制御トランジスタアセンブリは、所与の状態の維持に電流の常時消費を必要としないようにできる。そうすることで、SiCパワートランジスタのスイッチングのための制御は消費電流の少ないパルス制御と変わらないものとなる。このように、MOS技術をベースとした制御段はSiCパワートランジスタのスイッチングのための電気エネルギー消費を抑えることができる。これは、バイポーラトランジスタに基づく技術などのように電流源を必要とする技術とは対照的である。
【0016】
また、パワートランジスタのゲート電極に連結された主制御トランジスタと、主制御トランジスタのゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタとを含む制御トランジスタアセンブリは、より素早い主制御トランジスタのスイッチングを行えるようにすることで、SiCパワートランジスタのスイッチングのための電気エネルギーの消費をさらに抑えることができる。
【0017】
加えて、当業者であれば、このような電気エネルギー変換装置の電力消費に関して、2とおりの電力消費について考慮する必要があることがわかるであろう。第1の電力消費は、各スイッチングアームによるそのスイッチングの際の消費であり、その大きさはRMSで表わされ、一般に少なくともkWのオーダーである。第2の電力消費は、イグナイタとも呼ばれる制御モジュールそのものによる消費であるが、こちらは一般に全体で5W未満と、第1の電力消費とは比較にならない。しかし、だからと言って軽んじられてよいということにはならない。制御モジュールに対する給電の規模がそれによって決まってくるためである。本発明による電気エネルギー変換装置はその第1の電力消費と第2の電力消費の各々を減らすことができる。
【0018】
本発明のその他の有利な態様によれば、電気エネルギー変換装置は、以下の特徴の1つまたは複数を、独立した形で、または技術的に可能なあらゆる組合せで含む。
- 制御トランジスタアセンブリは絶縁ゲート電界効果トランジスタによって構成される。
- 制御トランジスタアセンブリは、パワートランジスタの導通モードでの制御信号を生成するための第1のトランジスタサブアセンブリと、パワートランジスタの阻止モードでの制御信号を生成するための第2のトランジスタサブアセンブリを含み、
各トランジスタサブアセンブリは、パワートランジスタのゲート電極に連結された主制御トランジスタと、主制御トランジスタのゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタとを含む。
- 制御段は第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスをさらに含み、第2のインピーダンスは第1のインピーダンスとは別個のものであり、その値は第1のインピーダンスの値を上回り、制御トランジスタアセンブリは、パワートランジスタの阻止モードでの制御時にパワートランジスタのゲート電極からの電流が第1のインピーダンスを通るパワートランジスタの第1の消滅構成(configuration d'extinction)と、パワートランジスタの阻止モードでの制御時にパワートランジスタのゲート電極からの電流が第2のインピーダンスを通るパワートランジスタの第2の消滅構成との間でスイッチングを行うように構成される。
- 各制御モジュールは制御段を駆動するように構成された駆動ユニットを含み、
駆動ユニットはFPGAのようなプログラマブル論理部品の形で実現されることが好ましい。
- 各スイッチは各パワートランジスタと逆並列に接続されたダイオードを含む双方向スイッチであり、各パワートランジスタはシリコンカーバイドで製作される。
- 各スイッチングハーフアームは並列に接続されたN個のスイッチングハーフブランチを含み、Nは2以上の整数であり、各スイッチングハーフブランチは少なくとも1つのスイッチを含む。
- 電気エネルギー変換装置はP個のスイッチングアームと2×P個の制御モジュールとを備え、Pは2以上の整数で、好ましくは3である。
【0019】
本発明は、輸送用電気車両のための動力系であって、その動力系が電動機と、その電動機に連結された上記定義のとおりの電気エネルギー変換装置とを備える動力系も対象とする。
【0020】
本発明はさらに、鉄道車両のような輸送用電気車両であって、車両の移動をもたらすように構成された動力系を備え、動力系が上記定義のとおりである車両も対象とする。
【0021】
本発明のこうした特徴および利点は、添付の図面を参照しながら限定的でない例としてのみ行う以下の説明を読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】電動機と、その電動機に連結された電気エネルギー変換装置とを含む動力系を備える、鉄道車両のような輸送用電気車両の概略図である。
【
図2】
図1の電気エネルギー変換装置であって、変換装置が第1の電気エネルギーを第2の電気エネルギーに変換するように構成され、第1の電気エネルギーに関連する2つの第1の端子と、第2の電気エネルギーに関連する3つの第2の端子と、2つの第1の端子の間に並列に接続された3つのスイッチングアームとを備える変換装置の概略図である。
【
図3】
図2のスイッチングアームのうちの1つと制御モジュールの概略図であって、スイッチングアームは、2つの第1の端子の間に直列に接続されて互いの間をそれぞれの第2の端子に接続された中間点において連結された2つのスイッチングハーフアームを含み、制御モジュールはそれぞれのハーフアームの1つまたは複数のスイッチを制御するように構成され、各スイッチは少なくとも1つのパワートランジスタを含み、制御モジュールは各パワートランジスタのゲート電極に接続された制御段を含む、概略図である。
【
図4】
図3の制御モジュールのうち、制御段の一部分だけを示した概略図である。図示した部分はパワートランジスタの導通モードでの制御専用の部分の図であり、パワートランジスタの阻止モードでの制御専用である制御段のもう一方の部分は
図5に示されており、図面を単純化するためにこの図には示していない。
【
図5】
図4の図と同様の図で、制御段の一部分だけを示した概略図である。図示した部分はパワートランジスタの阻止モードでの制御専用の部分の図であり、パワートランジスタの導通モードでの制御専用である制御段のもう一方の部分は
図4に示されており、図面を単純化するためにこの図には示していない。
【
図6】パワートランジスタの導通モードでの制御時の時系列グラフの概略図である。
【
図7】導通モードから阻止モードへのスイッチング時のパワートランジスタのゲート電極における電流の流れの概略図であって、パワートランジスタの通常動作時における流れの概略図である。
【
図8】
図7の図と同様の図で、パワートランジスタの故障時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、「ほぼ同じ」という表現はプラスマイナス10%の等値関係、さらに好ましくはプラスマイナス5%の等値関係を規定するものである。
【0024】
図1では、鉄道車両のような輸送用電気車両10は、吊架線(図示せず)に接続することができるパンタグラフ14を含む動力系12を備える。
【0025】
動力系12は、パンタグラフ14に接続される電気スイッチ16および電気スイッチ16に接続される電気遮断器18を備える。動力系12は、任意の補完的要素として、電気スイッチ16と電気遮断器18との間に電気遮断器18から分岐する形で接続された補助装置20を備える。
【0026】
電気スイッチ16、電気遮断器18および補助装置20は自明のものであり、これらについてさらに詳しい説明はしない。補助装置20はたとえば静的変換器である。
【0027】
動力アセンブリ22は直流バス24を介して電気遮断器18に接続される。動力アセンブリ22は電動機26、その電動機26に連結された電気エネルギー変換装置30を含む。
図1の例では、電気エネルギー変換装置30は直流バス24からの直流電圧をもとに電動機26に交流電圧を供給するためのものである。
【0028】
補完的要素として、動力アセンブリ22は、フィルタリングコンデンサ34を特に含むフィルタリング装置32を備える。
【0029】
任意の補完的要素として、動力アセンブリ22は電気エネルギー貯蔵装置(図示せず)を含むが、自立エネルギーユニットとも呼ばれる電気エネルギー貯蔵装置は、補助電源として働く一方、輸送電気車両10の制動時に電気エネルギーを回収する役割を果たす。電気エネルギー貯蔵装置は、電気遮断器18とフィルタリングコンデンサ34との間に分岐させるなどの形で接続する。
【0030】
電動機26は三相モータのような交流モータなどである。
【0031】
電気エネルギー変換装置30は、第1の電気エネルギーを第2の電気エネルギーに変換するように構成される。
【0032】
図2の例では、電気エネルギー変換装置30は、直流バス24に関連する直流エネルギーを電動機26に関連する三相エネルギーのような交流エネルギーに変換するように構成されている。この場合、第1の電気エネルギーは直流エネルギーであり、第2の電気エネルギーは、三相エネルギーのような交流エネルギーである。
【0033】
電気エネルギー変換装置30は、第1の電気エネルギーに関連する2つの第1の端子36と、第2の電気エネルギーに関連する少なくとも1つの第2の端子38と、P個のスイッチングアーム40とを備え、Pは1以上の整数である。
【0034】
図2の例では、電気エネルギー変換装置30は直流エネルギーから三相交流エネルギーへの変換装置であり、そのため、3つの第2の端子38と3つのスイッチングアーム40、すなわち三相エネルギーの各相のための第2の端子38とスイッチングアーム40を1つずつ備える。すなわち、ここではスイッチングアーム40の数Pは3である。
【0035】
各スイッチングアーム40は、2つの第1の端子36の間に直列に接続されて互いの間を中間点44において連結されたスイッチングハーフアーム42を含み、中間点44はそれぞれの第2の端子38に連結される。
【0036】
各スイッチングハーフアーム42は並列に接続されたN個のスイッチングハーフブランチ46を含み、Nは2以上の整数であり、各スイッチングハーフブランチ46は
図3に示すように少なくとも1つのスイッチ48を含む。その場合、各スイッチングハーフアーム42は少なくともN個のスイッチ48を含む。
【0037】
図3の例では、各スイッチングハーフアーム42は3つのスイッチングハーフブランチ46を並列に含んでおり、その場合、数Nは3である。
【0038】
電気エネルギー変換装置30は2×P個の制御モジュール50をさらに備えており、各制御モジュール50はそれぞれのスイッチングハーフアーム42のスイッチ48を制御するように構成されている。
図2の例では、電気エネルギー変換装置30は6つの制御モジュール50を備えているため、ここではPは3で、各スイッチングハーフアーム42のために制御モジュール50を1つずつ備える。
【0039】
電気エネルギー変換装置30は、第2の電気エネルギーに関する少なくとも1つの電気的な大きさを測定するように構成された測定デバイス54(
図2に示すもの)と、個々の制御モジュール50を駆動するように、特に測定デバイス54によって測定された大きさに応じて駆動するように構成された駆動デバイス56とを備える。
【0040】
図3の例では、各スイッチングハーフブランチ46は1つのみのスイッチ48を含んでいる。
【0041】
図示しない変形形態では、各スイッチングハーフブランチ46は対応する第2の端子36とそれぞれの中間点44との間に直列に接続された複数のスイッチ48を含む。それにより、より高い電圧の電気エネルギーを変換することが可能となる。
【0042】
少なくとも1つのスイッチ48はたとえば双方向スイッチである。好ましくは各スイッチ48が双方向スイッチである。
【0043】
すべてのスイッチ48が双方向スイッチであるとき、電気エネルギー変換装置30は、第1の端子36から第2の端子38の方へ電流が流れる場合は第1の電気エネルギーを第2の電気エネルギーに変換するように構成され、反対に第2の端子38から第1の端子36の方へ電流が流れる場合には第2の電気エネルギーを第1の電気エネルギーに変換するように構成された双方向変換装置である。
【0044】
第2の電気エネルギーを第1の電気エネルギーへと変換する電気エネルギー変換装置30のこの逆の動作は、輸送用電気車両10の制動時にエネルギーを回収するには特に有益である。
【0045】
各双方向スイッチ48は、たとえばパワートランジスタ66およびパワートランジスタ66と逆並列に接続されたダイオード68を含む。自明であるように、各パワートランジスタ66は2つの導体電極70と1つの制御電極72とを含んでおり、各パワートランジスタ66は、電流が導体電極70の間を流れる導通状態と、電流が導体電極70の間を流れない阻止状態との間でその制御電極72を通して制御可能である。その場合、ダイオード68は導体電極70の間に接続される。
【0046】
各スイッチ48は少なくとも1つのシリコンカーバイド(英語のSilicon CarbideよりSiCとも記される)製パワートランジスタ66を含み、導体電極70はそれぞれソース電極(
図4~
図7ではSとも記されている)、ドレイン電極(
図4および
図6~
図7ではDとも記されている)と呼ばれ、制御電極72はゲート電極(
図4~
図7ではGとも記されている)と呼ばれる。各パワートランジスタ66はシリコンカーバイドで製作されることが好ましい。
【0047】
各制御モジュール50は各パワートランジスタ66のゲート電極Gに接続された制御段80を含む。制御モジュール50は、
図3に示すように、各スイッチ48のための制御段80をそれぞれ備える。
【0048】
各制御モジュール50は各制御段80を駆動するように構成された駆動ユニット82を含む。駆動ユニット82はそれぞれのスイッチ48のための出力端子84を含み、各出力端子84は制御段80に対してそれぞれ制御信号を供給するように構成される。
【0049】
任意の補完的要素として、少なくとも1つの制御モジュール50は、たとえばそれぞれのスイッチングハーフアーム42のスイッチ48のスイッチングを同期するようにも構成される。各制御モジュール50は、それぞれが関連するスイッチングハーフアーム42のスイッチ48のスイッチングを同期するように構成されることが好ましい。
【0050】
この任意の補完的要素によれば、それぞれのスイッチングハーフアーム42のスイッチ48のスイッチングを同期することができる各制御モジュール50は、前記スイッチ48の制御信号の供給を所定のスイッチングラグに応じて駆動するように構成され、その所定のスイッチングラグは前記スイッチングハーフアーム42のスイッチ48の各々に関連づけられたものである。換言すれば、その場合、各駆動ユニット82は、スイッチ48の特徴に応じて、とりわけそれぞれに関連づけられた所定のスイッチングラグに応じて、制御段80ごとに時間差をつけてそれぞれの制御段80に対して制御信号を供給することができる。
【0051】
当業者であれば、この場合、各制御モジュール50は、当該のスイッチングハーフアーム42の個々のスイッチ48の中で最も素早くスイッチングを行う傾向を持つスイッチ48のスイッチングを遅らせ、逆にそのスイッチングハーフアーム42の前記個々のスイッチ48の中で最もスイッチングが緩慢となる傾向のあるスイッチ48のスイッチングをできるだけ早く制御することを目指すことが理解されよう。
【0052】
こうした所定のスイッチングラグはたとえば、スイッチ48に対して、とりわけパワートランジスタ66に対して行われる予備試験の際に決定される。実際、こうしたスイッチングラグまたは時間は各スイッチ48に、とりわけ各パワートランジスタ66に固有のものであるが、それは、スイッチングラグがそれら部品に特有の特徴に依存し、その特徴は個々の部品ごとに、とりわけ個々のパワートランジスタ66ごとに異なり得るものであり、それぞれの製造に由来するものである。
【0053】
当業者であれば、
図3では、図をわかりやすくするために当該のスイッチングアーム40の2つのスイッチングハーフアーム42の一方に関連する駆動ユニット82および制御段80のみが示されており、図示された駆動ユニット82および制御段80は上側のスイッチングハーフアーム42に関連したものであることがわかるであろう。したがって、下側のスイッチングハーフアーム42に関連した駆動ユニット82および制御段80は
図3には示されていない。
【0054】
測定デバイス54は、たとえば、それぞれの第2の端子38を通る各電流の強さおよび/またはその第2の端子38における電圧、すなわち対応する中間点44を通過する電流および/またはその中間点44における電圧を測定するように構成される。
【0055】
駆動デバイス56は、個々の制御モジュール50を駆動し、それによって個々のスイッチングハーフアーム42を制御することでエネルギー変換を果たすように構成される。制御モジュール50の駆動は特に測定デバイス54によって測定された大きさに応じて行われる。
【0056】
各制御段80は対応するスイッチ48と出力端子84との間に接続され、パワートランジスタ66を導通モードと阻止モードとの間で制御するように構成された制御トランジスタ88アセンブリ86を含む。制御トランジスタ88アセンブリ86は、
図4に示すように、パワートランジスタ66の導通モードでの制御信号生成のための第1のトランジスタサブアセンブリ90と、
図5に示すように、パワートランジスタ66の阻止モードでの制御信号生成のための第2のトランジスタサブアセンブリ92とを含む。
【0057】
各制御段80はさらに、
図5で見ることができるように、第1のインピーダンス94および第2のインピーダンス96を含み、第2のインピーダンス96は第1のインピーダンス94とは別個のもので、その値は第1のインピーダンス94の値を上回る。この場合、制御トランジスタ88アセンブリ86は、電圧値V
DSに応じて、可能な2つの別々の構成、すなわち、パワートランジスタの阻止モードでの制御の際にパワートランジスタ66のゲート電極Gからの電流が第1のインピーダンス94を通るパワートランジスタ66の第1の消滅構成と、パワートランジスタの阻止モードでの制御の際にパワートランジスタ66のゲート電極Gからの電流が第2のインピーダンス96を通るパワートランジスタ66の第2の消滅構成のいずれかの構成で制御されるように構成される。パワートランジスタ66の阻止モードでの制御信号の生成をもっぱら行う第2のトランジスタサブアセンブリ92は、より詳細には、パワートランジスタ66の第1の消滅構成と第2の消滅構成との間でスイッチングを行うように構成される。
【0058】
駆動ユニット82はたとえば、FPGA(英語のField-Programmable Gate Arrayより)のようなプログラマブル論理部品の形で実現される。電気エネルギー変換装置30は、たとえば、各々がそれぞれ駆動ユニット82を形成する2×P個のプログラマブル論理部品を備える。変形形態では、少なくとも2つの駆動ユニット82は、各制御段80のための出力端子84を特別に備えた別個のものでありながら、単一のプログラマブル論理部品上に実現される。
【0059】
制御トランジスタ88アセンブリ86は、パワートランジスタ66のゲート電極Gに連結された主制御トランジスタ100と、主制御トランジスタ100のゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタ102とを含む。たとえば、各トランジスタサブアセンブリ90、92は、パワートランジスタ66のゲート電極Gに連結されたそれぞれの主制御トランジスタ100と、主制御トランジスタ100のゲート電極に連結された少なくとも1つの副制御トランジスタ102とを含む。
【0060】
図4の例では、パワートランジスタ66の導通モードでの制御信号の生成のため、第1のトランジスタサブアセンブリ90は、1つだけの主制御トランジスタ100、すなわちそのドレイン電極が抵抗R1を介してパワートランジスタ66のゲート電極Gに連結されたトランジスタQ1と、3つの副制御トランジスタ102、すなわちトランジスタQ2、Q3およびQ4とを含み、トランジスタQ2のドレイン電極が主制御トランジスタ100、すなわちトランジスタQ1のゲート電極に抵抗R2を介して連結されており、トランジスタQ3のドレイン電極がトランジスタQ1のゲート電極に直接接続されている。一方、トランジスタQ4のドレイン電極はトランジスタQ3のゲート電極に直接接続されている。
【0061】
図4の例では、パワートランジスタ66の導通モードでの制御信号の生成のため、制御段80は、トランジスタQ1のゲート電極とソース電極との間に接続された抵抗R3、およびトランジスタQ3のゲート電極とソース電極との間に接続された抵抗R4をさらに含む。トランジスタQ1およびQ3の各々のソース電極は、ほぼ+20Vなどの正電位(V+の記号で示す)に接続される。トランジスタQ2のゲート電極は駆動ユニット82の出力端子84に接続され、その出力端子はC_On(英語のClose_Onより)の記号で記され、トランジスタQ4のゲート電極は、駆動ユニット82の別の出力端子84であって、O_On(英語のOpen_Onより)で示した出力端子に接続される。トランジスタQ2およびQ4の各々のソース電極は電位がほぼゼロのグラウンドMに接続される。
【0062】
図5の例では、パワートランジスタ66の阻止モードでの制御信号の生成のため、第2のトランジスタサブアセンブリ92は、3つの主制御トランジスタ100、すなわちドレイン電極がパワートランジスタ66のゲート電極Gに連結されたトランジスタQ5、Q5'およびQ6を含む。トランジスタQ5のドレイン電極は第1のインピーダンス94(R5の記号でも示されている)を介してパワートランジスタ66のゲート電極Gに連結され、トランジスタQ5'のドレイン電極は第2のインピーダンス96(R5'の記号でも示されている)を介してパワートランジスタ66のゲート電極Gに連結され、第1のインピーダンス94および第2のインピーダンス96は、トランジスタQ5とトランジスタQ5'との間でいずれのトランジスタが導通モードで駆動されるかに応じてゲート電極Gからのみの電流を第1のインピーダンス94または第2のインピーダンス96の方向に通すように逆向きに接続されたダイオードD1を介してパワートランジスタ66のゲート電極Gに連結される。
【0063】
図5の例では、第2のトランジスタサブアセンブリ92は、3つの副制御トランジスタ102、すなわちトランジスタQ7、Q8およびQ9を含み、トランジスタQ7およびQ8の各々のドレイン電極はトランジスタQ6のゲート電極に直接接続されている。一方、トランジスタQ9のドレイン電極はトランジスタQ7のゲート電極に直接接続されている。
【0064】
図5の例では、パワートランジスタ66の阻止モードでの制御信号の生成のため、制御段80は、トランジスタQ7のドレイン電極とソース電極との間に接続された抵抗R6、およびトランジスタQ7のゲート電極とソース電極との間に接続された抵抗R7、ならびにトランジスタQ8のゲート電極とソース電極との間に接続された抵抗R8をさらに含む。トランジスタQ5およびQ5'の各々のソース電極は、バランス抵抗R
Sを介して対応するパワートランジスタ66のソース電極Sに接続される。このバランス抵抗R
Sは、少なくとも2つのパワートランジスタ66が互いに並行して制御されるとき、特にパワートランジスタ66の制御のバランスを取ることを可能にする。
【0065】
トランジスタQ5のゲート電極はC_Off(英語のClose_Offより)の記号で示した駆動ユニット82の出力端子84に接続され、トランジスタQ5'のゲート電極はC_Emcy(英語のClose_Emergencyより)の記号で示した駆動ユニット82の別の出力端子84に接続される。トランジスタQ8のゲート電極は、駆動ユニット82の出力端子84であって、C_Lock(英語のClose_Lockより)の記号で示した出力端子に接続され、トランジスタQ9のゲート電極は、駆動ユニット82の別の出力端子84であって、O_Lock(英語のOpen_Lockより)の記号で示した出力端子に接続される。トランジスタQ6のソース電極は、ほぼ-6Vなどの負電位(V-の記号で示す)に接続される。トランジスタQ8およびQ9の各々のソース電極は、たとえばほぼ3.3Vである電位Vccに関して、その電位V+の値未満の正電位(Vccの記号で示す)に接続される。
【0066】
各制御トランジスタ88は、MOSFET(英語のMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)より)とも呼ばれる絶縁ゲート電界効果トランジスタであることが好ましい。換言すれば、その場合、制御トランジスタ88アセンブリ86は絶縁ゲート電界効果トランジスタによって構成される。
【0067】
図4の例では、トランジスタQ1およびQ3はP型MOSFETであり、トランジスタQ2およびQ4はN型MOSFETである。
図5の例では、トランジスタQ5、Q5'、Q6およびQ7はN型MOSFETであり、トランジスタQ8およびQ9はP型MOSFETである。
【0068】
ここからは、本発明による電気エネルギー変換装置30の動作について、とりわけ制御モジュール50を介したパワートランジスタ66の制御について説明する。
【0069】
自明なように、パワートランジスタ66の制御は、そのゲート電極Gとソース電極Sとの間の電圧VGSをコントロールすることにある。
【0070】
制御トランジスタQ1、Q2、Q3およびQ4が当初開いているとき、すなわち阻止モードにあるときは、トランジスタQ2の閉鎖を操作する、すなわち阻止モードから導通モードへのスイッチングを操作することによってパワートランジスタ66の導通モードへの制御が得られる。このトランジスタQ2の閉鎖は、それに相当する命令を駆動ユニット82からC_Onの記号で示したその出力端子84に出すことを通して操作される。すると、そのトランジスタQ2の閉鎖がトランジスタQ1のゲート電極にグラウンドMと電位V+との間のR2およびR3の分割ブリッジに相当する電位差が生まれ、それによってトランジスタQ1の閉鎖が操作されることで結果としてパワートランジスタ66のゲート電極Gに電位V+がもたらされる。すると、パワートランジスタ66は導通モードになる。
【0071】
当業者であれば、パワートランジスタ66の導通モードへの制御では、制御トランジスタQ3およびQ4は開いたままであることがわかろう。
【0072】
駆動ユニット82が導通モードから阻止モードへのパワートランジスタ66のスイッチングを操作しようとするときは、駆動ユニット82は、O_Onの記号で示したその出力端子84に、トランジスタQ2の開放命令とトランジスタQ4の閉鎖命令とを出す。
【0073】
トランジスタQ4が閉じると、トランジスタQ3が閉じる。トランジスタQ3が閉じると、抵抗R3の短絡、すなわち分流が起こり、それによって主トランジスタQ1が開くことでパワートランジスタ66のゲート電極Gの電位はV+でなくなる。この短いシーケンスの後、駆動ユニット82は、トランジスタQ4の開放命令をO_Onの記号で示したその出力端子84に出す。トランジスタQ4が開くと、トランジスタQ3が開く。トランジスタQ3が開くと、抵抗R3の短絡、すなわち分流が遮断され、それによって電位V+に対するパワートランジスタ66のゲート電極Gの切断を安定化させることができる。この場合、導通モードから阻止モードへのパワートランジスタ66のスイッチングは、トランジスタQ4に対する駆動ユニット82による
図6に見ることができるようなパルス制御によってもたらされる。
【0074】
抵抗R3は、10kΩ超の値のような高い値のものを選ぶことが好ましく、そうすることで、トランジスタQ2が導通状態にあるときの制御段80の電力消費を抑えることができる。
【0075】
抵抗R4はたとえば1kΩから5kΩの値を有するものであり、抵抗R2は1kΩ未満の値のような低い値のものを選ぶことが好ましい。
【0076】
トランジスタQ4に対してパルス波形で制御を行うことも制御段80の電力消費を減らすことにつながる。
【0077】
この場合、パワートランジスタ66の阻止シーケンスは、正の値V+で閾値VGS_th超の電圧VGSをその閾値VGS_th未満の値に持って行くことからなる。
【0078】
パワートランジスタ66の阻止時、駆動ユニット82は、パワートランジスタ66に特別な動作不良や故障を検出しなければ、C_Offの記号で示したその出力端子84にトランジスタQ5の閉鎖命令を出し、それによって、
図7に示すように矢印F1の後のパワートランジスタ66の中間状態でパワートランジスタ66のゲート電極Gから出た電流をR5の記号でも示す第1のインピーダンス94を通して放流することができる。
図7には、電流が通る経路、特に矢印F1の後のパワートランジスタ66の中間状態においてゲート電極Gから出た電流がグラウンドMに向かう放流経路が太線で示されている。
【0079】
パワートランジスタ66のゲート電極Gからの電流が第1のインピーダンス94を通して放流されるために必要な時間に相当する所定の時間の経過後、駆動ユニット82は、
図7で太線で示したように、矢印F2後のパワートランジスタ66の最終状態でパワートランジスタ66のゲート電極Gを閾値V
GS_th未満の電位V-にするためにトランジスタQ6の閉鎖を操作する。このトランジスタQ6の閉鎖は、それに相当する命令が駆動ユニット82からC_LockおよびO_Lockの記号で示したその出力端子84にトランジスタQ8およびQ9のゲート電極に向けて出されることを通して操作される。
【0080】
パワートランジスタ66の阻止時、駆動ユニット82は、ドレイン電極Dとソース電極Sとの間の過電圧や、パワートランジスタ66のゲート電極Gとソース電極Sとの間の短絡など、パワートランジスタ66の動作不良や故障を検出した場合には、C_Emcyの記号で示したその出力端子84にトランジスタQ5の閉鎖命令を出し、それによって、
図8に示すように矢印F3の後のパワートランジスタ66の中間状態でパワートランジスタ66のゲート電極Gから出た電流をR5'の記号でも示す第2のインピーダンス94を通して放流することができる。
図8には、電流が通る経路、特に、矢印F3の後のパワートランジスタ66の中間状態においてゲート電極Gから出た電流がグラウンドMに向かう放流経路が同じく太線で示されている。
【0081】
当業者であれば、第2のインピーダンス96の値は第1のインピーダンス94の値よりも大きいため、抵抗R5'の値はたとえば抵抗R5の値の2倍、特に8倍から30倍であり、それによってパワートランジスタ66の切断をより緩慢に行うことも、パワートランジスタ66のゲート電極Gからの電流の放流をより緩慢に行うこともでき、それがパワートランジスタ66に動作不良が検出された場合のパワートランジスタ66の保護に一段と資するものであることがわかろう。
【0082】
換言すれば、パワートランジスタ66の導通モードから阻止モードへのスイッチング時に、パワートランジスタ66のゲート電極Gからの電流の放流はパワートランジスタ66の正常動作時には第1のインピーダンス94を通して行われ、パワートランジスタ66の動作不良時には第2のインピーダンス96を通して行われる。
【0083】
また、パワートランジスタ66のゲート電極Gとソース電極Sとの間の短絡など、パワートランジスタ66の動作不良時には、駆動ユニット82は、
図8に太線で示すようにパワートランジスタ66のゲート電極Gを抵抗R5'とトランジスタQ5'の閉鎖とを通してグラウンドMに保持し、さらにその場合、パワートランジスタ66のゲート電極GをトランジスタQ6の閉鎖を介して電位V-としないことが有利であるが、これは、制御トランジスタQ6~Q9に作用を及ぼさないためであり、上述の短絡によってそれら制御トランジスタQ6~Q9を破損させる危険を冒さないためである。これは、その場合の制御トランジスタQ6~Q9の過剰な電力消費を防ぐことにもつながる。
【0084】
そのため、各制御段80はMOS技術を用いて実現されることが好ましく、各制御トランジスタ88は好ましくは絶縁ゲート電界効果トランジスタであり、その技術は所与の状態を維持するために常時電流を消費することを必要としない利点を有するという点において、電流源が必要なバイポーラトランジスタ技術などとは異なる。
【0085】
そのほか、FPGAのようなプログラマブル論理部品などの形で実現された駆動ユニット82の出力端子84を対応する制御トランジスタ88のゲート電極に対して、とりわけトランジスタQ2、Q4、Q5、Q5'、Q8およびQ9のゲート電極に対して直接接続することで、静的な電力消費なしに迅速に命令を伝達することができる。
【0086】
パワートランジスタ66がシリコンカーバイド製のトランジスタであるときには、スイッチングは一段と素早く行われ、本発明による電気エネルギー変換装置30の動作をさらに改善することができる。
【0087】
一例として、シリコンカーバイド製のパワートランジスタ66のスイッチングは一般に70~100nsのタイムラグで行われ、それは一般に500ns~1μs程度のタイムラグで行われるシリコン製のパワートランジスタによるスイッチングのおよそ5~10倍の速さである。
【0088】
この電力消費の低減は各種部品の実装を一段と容易にすることもできる。ロスの低減は実装部品のサイズおよび数の低減を可能にする。この電力消費の低減は、特に電気エネルギー消費の少ない、したがって放出される熱エネルギーが少なく、各パワートランジスタ66に最大限接近した各制御段80を設けることを可能にするものであり、そのことはパワートランジスタ66がシリコンカーバイドで製作される場合には特に重要となる。
【0089】
さらに、当業者であれば、このような電気エネルギー変換装置30の電力消費に関して、2とおりの電力消費について考慮する必要があることがわかるであろう。第1の電力消費は、各スイッチングアーム40によるそのスイッチングの際の消費であり、その大きさはRMSで表わされ、一般に1kWのオーダー以上である。第2の電力消費は、制御モジュール50そのものによる消費であるが、こちらは一般に全体で5W未満と、第1の電力消費とは比較にならない。しかし、だからと言って軽んじられてよいわけではない。制御モジュール50に対する給電の規模がそれによって決まってくるためである。本発明による電気エネルギー変換装置30はその第1の電力消費と第2の電力消費の各々を減らすことができる。
【0090】
第2の電力消費の低減については上に詳しく説明した。当業者であれば、本発明による電気エネルギー変換装置30はパワートランジスタ66の各々のゲート電極Gのより正確な制御も提供できるものであり、それによって電気エネルギー変換装置30のkW損に影響する寄生導電を減らす効果もあることもまた理解されよう。その際、第1の電力消費も減ることになる。
【0091】
こうして、本発明による電気エネルギー変換装置30により、各スイッチングアーム40におけるスイッチングを、そのスイッチングのための電気エネルギー消費を制限することによって改善できるという構想が得られる。
【符号の説明】
【0092】
10 輸送用電気車両
12 動力系
14 パンタグラフ
16 電気スイッチ
18 電気遮断器
20 補助装置
22 動力アセンブリ
24 直流バス
26 電動機
30 電気エネルギー変換装置
32 フィルタリング装置
34 フィルタリングコンデンサ
36 第1の端子
38 第2の端子
40 スイッチングアーム
42 スイッチングハーフアーム
44 中間点
46 スイッチングハーフブランチ
48 スイッチ
50 制御モジュール
54 測定デバイス
56 駆動デバイス
66 パワートランジスタ
68 ダイオード
70 導体電極
72 制御電極
80 制御段
82 駆動ユニット
84 出力端子
86 制御トランジスタアセンブリ
88 制御トランジスタ
90 第1のトランジスタサブアセンブリ
92 第2のトランジスタサブアセンブリ
94 第1のインピーダンス
96 第2のインピーダンス
100 主制御トランジスタ
102 副制御トランジスタ
D ダイオード
G ゲート
M グラウンド
Q トランジスタ
R 抵抗
S ソース
V 電位