(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ガラス基材の搬送装置、積層ガラスの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 20/02 20060101AFI20231108BHJP
C03B 35/00 20060101ALI20231108BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B65H20/02 Z
C03B35/00
B65H27/00 Z
(21)【出願番号】P 2019138891
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】西森 才将
(72)【発明者】
【氏名】村上 尚史
(72)【発明者】
【氏名】梨木 智剛
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041840(JP,A)
【文献】特開2010-271619(JP,A)
【文献】特開2017-101270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151851(US,A1)
【文献】特開2019-116350(JP,A)
【文献】特開2013-14441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65H 20/00-20/40
23/00-23/16
23/24-23/34
27/00
C03B 23/00-35/26
40/00-40/04
C23C 14/00-14/58
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するガラス基材を繰り出すように構成される繰出ロールと、
保護材を繰り出すように構成される保護材繰出ロールと、
前記ガラス基材
と前記保護材とを備える搬送基材を巻き取るように構成される巻取ロールと、
前記ガラス基材の搬送方向における前記繰出ロールおよび前記巻取ロールの間に配置されており、前記ガラス基材を搬送するための動力が付与されるように構成される駆動ロール
である、第1駆動ロールおよび第2駆動ロールと、
前記第2駆動ロールと隣接して対向配置されるニップロールとを備え、
前記第1駆動ロールは、前記搬送方向における前記繰出ロールおよび前記第2駆動ロールの間に配置され、
前記第2駆動ロールは、前記搬送方向における前記第1駆動ロールおよび前記巻取ロールの間に配置され、
前記ガラス基材は、前記第1駆動ロールにより駆動されて、前記第2駆動ロールに搬送され、一方、前記保護材は、前記ガラス基材とは別に、前記第2駆動ロールに搬送され、
前記第2駆動ロールに搬送された前記ガラス基材および前記保護材は、前記第2駆動ロールおよび前記ニップロールとの間を通過し、前記ガラス基材と前記保護材とを備える前記搬送基材として、前記巻取ロールにより巻き取られ、
前記
第1駆動ロールは、前記ガラス基材および前記駆動ロールが接触している状態において、前記ガラス基材において前記駆動ロールの表面と接触する接触面に対して反対側の非接触面が、他の搬送部材と接触しないように構成されており、
前記
第1駆動ロールの前記表面は、0.8μm以下の最大高さ粗さRzを有
し、
前記第2駆動ロールの前記表面の最大高さ粗さRzは、第1駆動ロールの前記表面の最大高さ粗さRzを超過する
ことを特徴とする、ガラス基材の搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置と、
前記搬送方向における前記繰出ロールおよび前記巻取ロールの間に配置され、前記ガラス基材に機能層を真空下で設けるように構成される成膜装置と
を備えることを特徴とする、積層ガラスの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の積層ガラスの製造装置を用いて積層ガラスを製造する方法であり、
前記ガラス基材を前記繰出ロールから繰り出す工程と、
前記ガラス基材を前記
第1駆動ロールによって搬送する工程と、
前記成膜装置によって前記機能層を前記ガラス基材に真空下で設ける工程と、
前記ガラス基材および前記機能層を備える積層ガラスを前記巻取ロールによって巻き取る工程とを備えることを特徴とする、積層ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材の搬送装置、積層ガラスの製造装置および製造方法に関し、詳しくは、ガラス基材の搬送装置、これを備える積層ガラスの製造装置、および、これを用いる積層ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールトゥロール方式で基材を搬送しながら、かかる基材の上に、種々の機能層を形成する装置が知られている。
【0003】
例えば、基材を、ニップ機構を用いて、樹脂基材を搬送する装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1のニップ機構は、金属ロールからなる駆動ロールと、ゴムロールからなるニップロール(押圧ロール)とを備える。特許文献1のニップ機構では、駆動ロールおよびニップロールで基材を挟み込み、駆動ロールが回転し、ニップロールが基材を駆動ロールに対して押圧することによって、駆動ロールが空回りすることなく、基材を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、耐熱性に優れる基材として、樹脂基材に代えて、薄ガラス基材を用いることが検討される。
【0006】
しかし、薄ガラス基材は、樹脂基材と比較して、脆弱である。そのため、薄ガラス基材は、厚み方向両側から駆動ロールおよびニップロールに接触されると、破損するという不具合がある。薄ガラス基材が破損すると、薄ガラス基材をロールトゥロール方式で搬送できない。
【0007】
なお、本明細書において、「破損」は、薄ガラス基材がその厚み方向全体にわたって引き裂かれることを意味し、後述する「擦傷」と区別される。
【0008】
本発明は、ガラス基材の破損を抑制できながら、ガラス基材を確実に搬送できるガラス基材の搬送装置、積層ガラスの製造装置および製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、可撓性を有するガラス基材を繰り出すように構成される繰出ロールと、前記ガラス基材を巻き取るように構成される巻取ロールと、前記ガラス基材の搬送方向における前記繰出ロールおよび前記巻取ロールの間に配置されており、前記ガラス基材を搬送するための動力が付与されるように構成される駆動ロールとを備え、前記駆動ロールは、前記ガラス基材および前記駆動ロールが接触している状態において、前記ガラス基材において前記駆動ロールの表面と接触する接触面に対して反対側の非接触面が、他の搬送部材と接触しないように構成されており、前記駆動ロールの前記表面は、0.8μm以下の最大高さ粗さRzを有する、ガラス基材の搬送装置を含む。
【0010】
このガラス基材の搬送装置では、駆動ロールは、ガラス基材および駆動ロールが接触している状態において、ガラス基材において駆動ロールの表面と接触する接触面に対して反対側の非接触面が、他の搬送部材と接触しない。そのため、駆動ロールに接触しているガラス基材の破損を抑制できる。従って、ガラス基材を、繰出ロールおよび巻取ロールの間を確実に搬送できる。
【0011】
しかも、駆動ロールの表面は、0.8μm以下と小さい最大高さ粗さRzを有するので、駆動ロールの表面が、ガラス基材に密着でき、ガラス基材に対して滑ること(駆動ロールの空回り)を抑制できる。そのため、ガラス基材にかかる張力を制御でき、駆動ロールの回転をガラス基材の搬送に確実に変換して、ガラス基材をより一層確実に搬送できる。
【0012】
本発明(2)は、(1)に記載の搬送装置と、前記搬送方向における前記繰出ロールおよび前記巻取ロールの間に配置され、前記ガラス基材に機能層を真空下で設けるように構成される成膜装置とを備える、積層ガラスの製造装置を含む。
【0013】
この積層ガラス基材の搬送装置は、上記した搬送装置と成膜装置とを備えるため、ガラス基材の破損を抑制しながら、ガラス基材に機能層を設けることができる。そのため、積層ガラスを確実に製造できる。
【0014】
本発明(3)は、(2)に記載の積層ガラスの製造装置を用いて積層ガラスを製造する方法であり、前記ガラス基材を前記繰出ロールから繰り出す工程と、前記ガラス基材を前記駆動ロールによって搬送する工程と、前記成膜装置によって前記機能層を前記ガラス基材に真空下で設ける工程と、前記ガラス基材および前記機能層を備える積層ガラスを前記巻取ロールによって巻き取る工程とを備える、積層ガラスの製造方法を含む。
【0015】
この積層ガラスの製造方法は、上記した積層ガラスの搬送装置を用いるので、ガラス基材の破損を抑制しながら、機能層をガラス基材に設けて、積層ガラスを確実に製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガラス基材の搬送装置は、ガラス基材の破損を抑制できながら、ガラス基材を確実に搬送できる。
【0017】
本発明の積層ガラスの製造装置および製造方法によれば、ガラス基材の破損を抑制しながら、ガラス基材に機能層を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の製造装置の一実施形態である搬送成膜装置を示す。
【
図2】
図2A~
図2Dは、
図1の搬送成膜装置で搬送されている搬送物の断面図であり、
図2Aが、繰出ロールから繰り出される第1保護材およびガラス基材、
図2Bが、第1駆動ロールに搬送されるガラス基材、
図2Cが、冷却装置に搬送されるガラス基材および透明導電層、
図2Dは、巻取ロールに巻き取られる第2保護材、透明導電層およびガラス基材を示す。
【
図4】
図4は、ガラス基材の屈曲試験で用いられる2つの治具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.搬送成膜装置
本発明の製造装置の一実施形態である搬送成膜装置を、
図1を参照して、説明する。
【0020】
図1に示す搬送成膜装置10は、ガラス基材1を搬送しながらその厚み方向一方面51に透明導電層(機能層の一例)2(
図2C参照)を設けて、透明導電性ガラス(積層ガラスの一例)3を製造する。具体的には、搬送成膜装置10は、ロール状の搬送基材4(後述)から第1保護材5を剥離してガラス基材1単体を搬送させ、次いで、ガラス基材1に透明導電層2を設けて透明導電性ガラス3を製造し、次いで、透明導電性ガラス3に第2保護材6を積層させてロール状に巻回する。
【0021】
搬送成膜装置10は、搬送装置11と、スパッタ装置(成膜装置の一例)12と、冷却装置13とを備える。さらに、搬送装置11は、繰出部14と、除電部15と、巻取部16とを備える。なお、除電部15は、第1除電部17と、第2除電部18とを備える。搬送成膜装置10は、繰出部14と、第1除電部17と、スパッタ装置12と、冷却装置13と、第2除電部18と、巻取部16とを搬送方向上流側(以下、「上流側」と省略する)から搬送方向下流側(以下、「下流側」と省略する)に向かってこの順で備える。以下、これらを詳述する。
【0022】
繰出部14は、搬送装置11の中で最上流側に配置されている。繰出部14は、長尺な搬送基材4を繰り出す。繰出部14は、繰出ロール21と、第1駆動ロール(駆動ロールの一例)22と、保護材巻取ロール23と、繰出ケーシング24とを備える。
【0023】
繰出ロール21では、ロール状の搬送基材4がセットされている。すなわち、繰出ロール21の表面(周面)に、搬送方向に長尺な搬送基材4が巻回されている。繰出ロール21は、搬送方向に回転する回転軸を有し、幅方向に延びる円柱部材である。なお、本実施形態において、後述する各種のロール(繰出ロール21、第1~第2駆動ロール(22、40)、保護材巻取ロール23、第1~第4ガイドロール(26、28、31、38)、保護材ガイドロール43、第1~第2冷却ロール(34、35)、巻取ロール41、保護材繰出ロール42、ニップロール44)は、いずれも、搬送方向に回転する回転軸を有し、幅方向(搬送方向および厚み方向に直交する方向)に延びる円柱部材である。
【0024】
繰出ロール21は、外部動力などによって駆動して、
図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0025】
第1駆動ロール22は、繰出ロール21の下流側に配置されている。第1駆動ロール22は、ガラス基材1を搬送するための動力が外部から付与されるように構成されている。
これによって、第1駆動ロール22は、上記した外部の動力に基づいて、
図1に示す矢印方向に回転する。具体的には、第1駆動ロール22の回転軸の端部には、ギヤ(図示せず)が設けられており、ギヤには、第1駆動ロール22を矢印方向に回転させるためのモータ(図示せず)が接続されている。第1駆動ロール22は、モータの駆動力によって回転する。
【0026】
これにより、第1駆動ロール22は、繰出ロール21にセットされた搬送基材4のガラス基材1を第1除電部17に搬送する。
【0027】
また、この第1駆動ロール22は、ニップロール44に隣接して配置される第2駆動ロール40(後述)と異なり、ガラス基材1の厚み方向一方面(接触面)51(
図2B参照)と接触している状態において、ガラス基材1の厚み方向他方面(非接触面)52(
図2B参照)が、他の搬送部材(ニップロール44など)と接触しないように構成されている。
【0028】
第1駆動ロール22の材料としては、特に限定されず、例えば、金属、樹脂、セラミックスなどが挙げられ、好ましくは、金属が挙げられる。
【0029】
第1駆動ロール22の表面は、平坦であり、具体的には、0.8μm以下の最大高さ粗さRzを有する。
【0030】
なお、第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzは、JIS B 0601(2009)に基づいて測定される。
【0031】
第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzが0.8μmを越えれば、第1駆動ロール22の表面が、ガラス基材1に対して滑ることを抑制できず、つまり、第1駆動ロール22がガラス基材1に対して空回りする。そのため、ガラス基材1にかかる張力を制御できず、第1駆動ロール22の材料の回転をガラス基材1の搬送に確実に変換できず、ガラス基材1を搬送できない。
【0032】
また、第1駆動ロール22の表面は、好ましくは、0.5μm以下、より好ましくは、0.3μm以下の最大高さ粗さRzを有する。また、第1駆動ロール22の表面は、例えば、好ましくは、0.001μm以上の最大高さ粗さRzを有する。
【0033】
第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzが上記した上限以下であれば、第1駆動ロール22の表面が、ガラス基材1に対して滑ることを抑制でき、ガラス基材1にかかる張力を制御でき、第1駆動ロール22がガラス基材1に対して空回りすることを抑制できる。そのため、第1駆動ロール22の材料の回転をガラス基材1の搬送に確実に変換して、ガラス基材1をより一層確実に搬送できる。
【0034】
第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzが上記した下限以上であれば、ガラス基材1を確実に搬送できる。
【0035】
第1駆動ロール22の表面を上記した最大高さ粗さRzに設定するには、例えば、駆動ロール22の表面を平坦化処理する。平坦化処理としては、特に限定されず、例えば、電解めっき、無電解めっき、研磨などが挙げられる。または、上記した最大高さ粗さRzを有する表面の第1駆動ロール22を予め準備することもできる。
【0036】
保護材巻取ロール23は、繰出ロール21の近傍に配置される。保護材巻取ロール23は、搬送基材4から第1保護材5を剥離(離間)させるとともに、第1保護材5を巻き取る。保護材巻取ロール23は、外部動力などによって駆動して
図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0037】
繰出ケーシング24は、その内部に、繰出ロール21、第1駆動ロール22および保護材巻取ロール23を収容する。繰出ケーシング24は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。具体的には、繰出ケーシング24には、その内部の空気を外部に排出する真空ポンプ(図示せず)が接続されている。なお、本明細書において、真空状態とは、例えば、気圧が0.1Pa以下、好ましくは、1×10-3Pa以下である状態をいう。
【0038】
第1除電部17は、繰出部14の下流側に、繰出部14と隣接するように配置されている。第1除電部17は、ガラス基材1に対して除電する。第1除電部17は、第1除電機25と、第1ガイドロール26と、第1除電ケーシング27とを備える。
【0039】
第1除電機25は、ガラス基材1に帯電した電気を低減させる。第1除電機25は、第1駆動ロール22の下流側かつ第1ガイドロール26の上流側に配置されている。第1除電機25としては、例えば、コロナ放電式、電離放射線式除電機などが挙げられる。
【0040】
第1ガイドロール26は、第1駆動ロール22から第1除電機25を通過して搬送されるガラス基材1を、スパッタ装置12の第2ガイドロール28に案内(ガイド)する。第1ガイドロール26は、第1除電機25の下流側かつ第2ガイドロール28の上流側に配置されている。
【0041】
第1ガイドロール26の材料としては、特に限定されず、例えば、金属、樹脂、セラミックスなどが挙げられ、好ましくは、金属が挙げられる。
【0042】
第1ガイドロール26の表面は、例えば、1.0μm以上、好ましくは、2μm以上、より好ましくは、5μm以上、さらに好ましくは、10μm以上の最大高さ粗さRzを有し、また、例えば、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、30μm以下の最大高さ粗さRzを有する。
【0043】
第1ガイドロール26の表面が上記した下限以上であれば、ガラス基材1が第1ガイドロール26の表面にブロッキングすることを有効に抑制できる。そのため、搬送中のガラス基材1に大きな張力をかける必要がなく、そのため、第1ガイドロール26は、ガラス基材1を確実に案内することができる。
【0044】
一方、第1ガイドロール26の表面が上記した上限以下であれば、ガラス基材1の表面(厚み方向一方面および他方面)が擦傷することを抑制できる。
【0045】
第1ガイドロール26の表面における最大高さ粗さRzを設定するには、例えば、表面が平坦な第1ガイドロール26を準備し、その後、第1ガイドロール26の表面を粗化処理(粗面化)する。粗化処理としては、特に限定されない。粗化処理の具体例としては、例えば、溶射(例えば、特開2017-0665189号公報などに記載の溶射皮膜の形成)、無電解めっき(例えば、特開2016-103138号公報などに記載の溶射皮膜の形成)、ブラスト、エッチングなどが挙げられる。または、上記した最大高さ粗さRzの表面を予め有する第1ガイドロール26を準備することもできる。
【0046】
第1除電ケーシング27は、その内部に、第1除電機25および第1ガイドロール26を収容する。第1除電ケーシング27は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0047】
スパッタ装置12は、第1除電部17の下流側に、第1除電部17と隣接するように配置されている。スパッタ装置12は、成膜領域33において、ガラス基材1に対してスパッタリングを実施して、透明導電層2(
図2C参照)を形成する。
【0048】
スパッタ装置12は、第2ガイドロール28と、スパッタターゲット29と、加熱機30と、第3ガイドロール31と、スパッタケーシング32とを備える。
【0049】
第2ガイドロール28は、第1ガイドロール26から搬送されるガラス基材1を成膜領域33に案内(ガイド)する。第2ガイドロール28は、第1ガイドロール26の下流側かつスパッタターゲット29の上流側に配置されている。第2ガイドロール28の構成は、第1ガイドロール26の構成と同一である。
【0050】
スパッタターゲット29は、透明導電層2の原材料である。スパッタターゲット29は、第2ガイドロール28の下流側かつ第3ガイドロール31の上流側に、ガラス基材1と間隔を隔てて対向配置されている。スパッタターゲット29は、ガラス基材1の厚み方向一方面51に面する。
【0051】
スパッタターゲット29の材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Nb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられ、好ましくは、インジウム含有酸化物、より好ましくは、ITOが挙げられる。
【0052】
加熱機30は、ガラス基材1やそれから得られる透明導電性ガラス3を加熱する。第2ガイドロール28の下流側かつ第3ガイドロール31の上流側に、ガラス基材1と間隔を隔てて配置されている。また、加熱機30は、ガラス基材1を基準にして、スパッタターゲット29とは反対側に対向配置されている。加熱機30は、ガラス基材1の厚み方向他方面52に面する。
【0053】
成膜領域33は、第2ガイドロール28と第3ガイドロール31との搬送方向途中に区画される。成膜領域33には、スパッタターゲット29と、加熱機30とが配置されている。
【0054】
第3ガイドロール31は、成膜されたガラス基材1(具体的には、ガラス基材1および透明導電層2を厚み方向に備える透明導電性ガラス3)(
図2C参照)を、冷却装置13の第1冷却ロール34に案内(ガイド)する。第3ガイドロール31は、スパッタターゲット29の下流側かつ第1冷却ロール34(後述)の上流側に配置されている。第3ガイドロール31の構成は、第1ガイドロール26の構成と同一である。
【0055】
スパッタケーシング32は、第2ガイドロール28、スパッタターゲット29、加熱機30および第3ガイドロール31を収容する。スパッタケーシング32は、成膜領域33を含む成膜室を構成する。スパッタケーシング32は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。なお、スパッタ装置12は、図示しないが、スパッタを実施するための他の素子(アノード、カソード、Arガス導入手段など)を備える。スパッタ装置12としては、具体的には、例えば、2極型スパッタ装置、電子サイクロトロン共鳴型スパッタ装置、マグネトロン型スパッタ装置、イオンビーム型スパッタ装置などが挙げられる。
【0056】
冷却装置13は、スパッタ装置12の下流側に、スパッタ装置12と隣接するように配置されている。冷却装置13は、スパッタ装置12で加熱された透明導電性ガラス3を冷却する。冷却装置13は、第1冷却ロール34と、第2冷却ロール35と、冷却ケーシング36とを備える。
【0057】
第1冷却ロール34は、冷却装置13において上流側に配置されている。第2冷却ロール35は、第1冷却ロール34の下流側に配置されている。第1冷却ロール34および第2冷却ロール35は、それぞれ、外部動力などによって駆動して
図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0058】
第1冷却ロール34および第2冷却ロール35の表面温度は、例えば、280℃以下、好ましくは、150℃以下であり、また、例えば、40℃以上、好ましくは、100℃以上に維持するように構成されている。
【0059】
冷却ケーシング36は、その内部に、第1冷却ロール34および第2冷却ロール35を収容する。冷却ケーシング36は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0060】
第2除電部18は、冷却装置13の下流側に、冷却装置13と隣接するように配置されている。第2除電部18は、透明導電性ガラス3に対して除電する。第2除電部18は、第2除電機37と、第4ガイドロール38と、第2除電ケーシング39とを備える。
【0061】
第2除電機37は、ガラス基材1に帯電した電気を低減させる。第2除電機37は、第2冷却ロール35の下流側かつ第4ガイドロール38の上流側に配置されている。第2除電機37の構成は、第1除電機25の構成と同一である。
【0062】
第4ガイドロール38は、第2冷却ロール35から第2除電機37を通過して搬送される透明導電性ガラス3を、巻取部16の第2駆動ロール40に案内(ガイド)する。第4ガイドロール38は、第2除電機37の下流側かつ第2駆動ロール40の上流側に配置されている。第4ガイドロール38の構成は、第1ガイドロール26の構成と同一である。
【0063】
第2除電ケーシング39は、その内部に、第2除電機37および第4ガイドロール38を収容する。第2除電ケーシング39は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0064】
巻取部16は、搬送装置11の中で最下流側に配置されており、第2除電機37の下流側に、第2除電機37と隣接するように配置されている。巻取部16は、透明導電性ガラス3を第2保護材6(
図2D参照)とともに巻き取る。巻取部16は、第2駆動ロール40と、巻取ロール41と、保護材繰出ロール42と、保護材ガイドロール43と、ニップロール44と、巻取ケーシング45とを備える。
【0065】
第2駆動ロール40は、第4ガイドロール38の下流側かつ巻取ロール41の上流側に配置されている。第2駆動ロール40は、ガラス基材1を含む透明導電性ガラス3を搬送するための動力が外部から付与されるように構成されている。これによって、第2駆動ロール40は、上記した外部の動力に基づいて、
図1に示す矢印方向に回転する。これにより、第2駆動ロール40は、透明導電性ガラス3を巻取ロール41に搬送する。
【0066】
但し、第2駆動ロール40は、透明導電性ガラス3の厚み方向一方面53と接触している状態において、第2保護材6の厚み方向他方面54がニップロール44と接触するように構成されている。つまり、第2駆動ロール40およびニップロール44は、ニップ機構を構成する。
【0067】
第2駆動ロール40の表面の最大高さ粗さRzは、特に限定されない。第2駆動ロール40の表面の最大高さ粗さRzは、例えば、第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzより、大きく、具体的には、0.8μmを越える。
【0068】
巻取ロール41は、保護材ガイドロール43とニップロール44との間から搬送される透明導電性ガラス3および第2保護材6の積層体7(後述)を巻き取る。巻取ロール41は、外部動力などによって駆動して、
図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0069】
保護材繰出ロール42は、巻取ロール41の近傍に配置されている。保護材繰出ロール42では、ロール状の第2保護材6がセットされている。すなわち、保護材繰出ロール42の表面に、搬送方向に長尺な第2保護材6が巻回されている。保護材繰出ロール42は、外部動力などによって駆動して、
図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。保護材繰出ロール42は、第2保護材6を保護材ガイドロール43に繰り出す。
【0070】
保護材ガイドロール43は、保護材繰出ロール42から繰り出される第2保護材6を、ニップロール44に案内する。保護材ガイドロール43は、保護材繰出ロール42とニップロール44との搬送方向途中に配置されている。
【0071】
ニップロール44は、第2駆動ロール40とともに、第2保護材6を透明導電性ガラス3に積層させる。ニップロール44は、第2駆動ロール40と対向配置されている。ニップロール44は、その表面が透明導電性ガラス3および第2保護材6を第2駆動ロール40の表面とで挟みながらラミネート可能に構成されている。ニップロール44の材料は、例えば、ゴムなどの弾性体が挙げられる。
【0072】
巻取ケーシング45は、その内部に、第2駆動ロール40、巻取ロール41、保護材繰出ロール42、保護材ガイドロール43およびニップロール44を収容する。巻取ケーシング45は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0073】
2.透明導電性ガラスの製造方法
図1および
図2A~
図2Dを参照して、搬送成膜装置10を用いて透明導電性ガラス3を製造する方法を説明する。透明導電性ガラス3の製造方法は、搬送基材4を用意する用意工程と、ガラス基材1から第1保護材5を剥離する剥離工程と、ガラス基材1を第1~第2駆動ロール(22、40)によって搬送する搬送工程と、ガラス基材1を第1~第4ガイドロール(26、28、31、38)によって案内する案内工程と、ガラス基材1に、透明導電層2を真空下で設ける成膜工程と、透明導電性ガラス3を冷却する冷却工程と、透明導電性ガラス3を巻取ロール41に巻き取る巻取工程とを備える。以下、各工程を詳述する。
【0074】
まず、搬送基材4を繰出ロール21に用意する(用意工程)。具体的には、搬送基材4を用意し、繰出ロール21にセットする。
【0075】
搬送基材4は、保護材付きガラス基材であって、具体的には、ガラス基材1と第1保護材5とを厚み方向他方側に向かって順に備える(
図2A参照)。搬送基材4は、搬送方向に長尺であり、ロール状に巻回されている。このようなロール状の搬送基材4は、公知または市販のものを用いることができる。
【0076】
ガラス基材1は、フィルム形状(シート形状を含む)を有し、透明なガラスから形成されている。ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0077】
ガラス基材1は、可撓性を有する。
【0078】
一方、ガラス基材1の機械強度は、通常低く(脆弱であり)、下記で測定される屈曲試験における破断時の両端部間距離Lが、例えば、15mm以下、または、20mm以下である。
【0079】
図4に示すように、具体的には、ガラス基材1を長さ120mmに切断加工し、これの長手方向両端部を、間隔を対向配置される2つの治具81のそれぞれの引っ掛け部82に引っ掛ける。続いて、2つの治具81を互いにゆっくりと近づけ、ガラス基材1が破断した時における2つの引っ掛け部82間の長さLを、破断時の両端部間距離Lとして得る。
【0080】
ガラス基材1の厚み方向他方面52は、平坦である。具体的には、ガラス基材1の厚み方向他方面52は、例えば、1μm以下、さらには、0.1μm以下、さらには、0.01μm以下の最大高さ粗さRzであって、また、例えば、0.0001μm以上の最大高さ粗さRzを有する。ガラス基材1の厚み方向一方面51は、上記した他方面52と同様に平坦であり、上記した最大高さ粗さRzを有する。
【0081】
ガラス基材1の厚みは、例えば、250μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下、さらに好ましくは、100μm以下であり、また、例えば、10μm以上、好ましくは、40μm以上である。
【0082】
このようなガラス基材1は、市販品を用いることができ、例えば、G-leafシリーズ(日本電気硝子社製)などが用いられる。
【0083】
第1保護材5は、ロール状のガラス基材1を繰り出す際に、ガラス基材1同士の接触による破損を防止する。第1保護材5は、フィルム形状を有し、ガラス基材1の厚み方向他方面52に配置されている。
【0084】
第1保護材5としては、例えば、粘着剤付きフィルム、合紙などが挙げられる。
【0085】
粘着剤付きフィルムは、高分子フィルムと粘着剤層とを厚み方向に備える。
【0086】
高分子フィルムとしては、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなど)、ポリカーボネート系フィルム、オレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロオレフィンフィルムなど)、アクリル系フィルム、ポリエーテルスルフォン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、メラミン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、セルロース系フィルム、ポリスチレン系フィルムが挙げられる。
【0087】
粘着剤層は、感圧接着剤層であり、例えば、アクリル系粘着剤層、ゴム系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ポリエステル系粘着剤層、ポリウレタン系粘着剤層、ポリアミド系粘着剤層、エポキシ系粘着剤層、ビニルアルキルエーテル系粘着剤層、フッ素系粘着剤層などが挙げられる。
【0088】
合紙としては、例えば、上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙などが挙げられる。
【0089】
第1保護材5の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0090】
次いで、搬送成膜装置10を作動させる。具体的には、ケーシングの全て(繰出ケーシング24、第1除電ケーシング27、スパッタケーシング32、冷却ケーシング36、第2除電ケーシング39、巻取ケーシング45)を真空にするとともに、駆動ロールの全て(繰出ロール21、第1~第2駆動ロール(22、40)、保護材巻取ロール23、第1~第2冷却ロール(34、35)、巻取ロール41、保護材繰出ロール42)を回転駆動させる。また、除電部15(第1除電機25および第2除電機37)、冷却装置13、スパッタ装置12なども作動させる。これにより、搬送基材4が下流側に搬送される(搬送工程)とともに、剥離工程、成膜工程、冷却工程、および、巻取工程が順に実施される。
また、ガイドロールの全て(第1ガイドロール26、第2ガイドロール28、第3ガイドロール31、第4ガイドロール38)、保護材巻取ロール23、保護材繰出ロール42、保護材ガイドロール43、ニップロール44の回転によって、案内工程が実施される。
【0091】
具体的には、繰出部14において、搬送基材4は、繰出ロール21から繰り出される。その際、第1保護材5がガラス基材1から剥離される(剥離工程)。第1保護材5は、保護材巻取ロール23に巻き取られる。他方、ガラス基材1は、単独で、第1駆動ロール22によって第1除電部17に搬送される(
図2B参照)(搬送工程)。ガラス基材1の厚み方向一方面51が第1駆動ロール22と接触する状態において、ガラス基材1の厚み方向他方面52(非接触面52)は、他の部材と接触しない。ガラス基材1は、第1駆動ロール22と接触して帯電しても、第1除電部17における第1除電機25の作動によって除電される。
【0092】
続いて、ガラス基材1は、第1ガイドロール26によって、スパッタ装置12に案内される(案内工程)。
【0093】
続いて、スパッタ装置12において、ガラス基材1は、第2ガイドロール28によって、成膜領域33に案内される(案内工程)。成膜領域33では、ガラス基材1に対して、スパッタリングが実施される。スパッタリングとしては、具体的には、2極スパッタリング法、電子サイクロトロン共鳴スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが挙げられる。スパッタリング時の気圧(すなわち、成膜領域33の気圧)は、真空であり、好ましくは、1.0Pa未満、より好ましくは、0.5Pa以下である。
【0094】
これにより、成膜領域33において、ガラス基材1の厚み方向一方面51に透明導電層2が成膜されて、ガラス基材1と、透明導電層2とを厚み方向一方側に向かって順に備える透明導電性ガラス3が製造される(
図2C参照)(成膜工程)。
【0095】
また、スパッタリングと同時に、透明導電性ガラス3は、加熱機30によって加熱される。
【0096】
加熱機30によって加熱される透明導電性ガラス3の表面温度としては、例えば、200℃以上、好ましくは、300℃以上、より好ましくは、400℃以上であり、また、例えば、800℃以下、好ましくは、600℃以下である。これにより、例えば、透明導電層2の材料がITOである場合には、透明導電層2の成膜と同時に、透明導電層2を高温で結晶化させることができ、透明導電層2の導電性を向上できる。
【0097】
その後、透明導電性ガラス3は、第3ガイドロール31によって、冷却装置13に案内される(案内工程)。
【0098】
冷却装置13において、透明導電性ガラス3は、第1冷却ロール34および第2冷却ロール35に順に接触して、冷却される(冷却工程)。
【0099】
各冷却ロール(34、35)の表面温度は、例えば、280℃以下、好ましくは、150℃以下であり、また、例えば、40℃以上である。
【0100】
この際、透明導電性ガラス3と冷却ロール34、35との接触面積の拡大(ひいては、冷却効率の向上)の観点から、第1冷却ロール34の回転軸と第2冷却ロール35の回転軸とを結ぶ線分を横切るように、透明導電性ガラス3は搬送される。
【0101】
このとき、透明導電性ガラス3のガラス基材1は、その厚み方向他方面52が第2冷却ロール35に直接接触する。一方、透明導電性ガラス3の透明導電層2は、その厚み方向一方面53が第1冷却ロール34に直接接触する。その後、透明導電性ガラス3は、冷却装置13から第2除電部18に搬送される。
【0102】
この際、透明導電性ガラス3の厚み方向他方面52(ガラス基材1の厚み方向他方面52)では、第2冷却ロール35との摩擦により、帯電が発生しても、第2除電部18の第2除電機37の作動によって除電される。なお、透明導電性ガラス3の厚み方向一方面53(透明導電層2の厚み方向一方面53)では、透明導電層2が導電性であることから、第1冷却ロール34と摩擦しても、通常、帯電しない。
【0103】
その後、透明導電性ガラス3は、第4ガイドロール38によって、巻取部16に案内される(案内工程)。
【0104】
巻取部16において、第2保護材6は、保護材繰出ロール42から繰り出され、保護材ガイドロール43に案内され、ニップロール44に搬送される。
【0105】
一方、透明導電性ガラス3は、第2保護材6とともに、第2駆動ロール40とニップロール44との間を通過して、透明導電性ガラス3の厚み方向他方面52に第2保護材6がラミネートされる。
【0106】
積層体7の透明導電性ガラス3の厚み方向一方面53が第2駆動ロール40に接触している状態において、積層体7における第2保護材6の厚み方向他方面54(接触面54)は、ニップロール44に接触する(プレスされる)。
【0107】
その後、透明導電性ガラス3は、第2保護材6とともに巻取ロール41に巻き取られる(巻取工程)。具体的には、透明導電性ガラス3と、その厚み方向他方面52(透明導電層2と反対側の表面52)に配置される第2保護材6とを備える積層体7(
図2D参照)がロール状に巻回される。積層体7は、第2保護材6、ガラス基材1および透明導電層2を厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0108】
3.透明導電性ガラスの用途
透明導電性ガラス3は、例えば、画像表示装置などの光学装置に用いられる。透明導電性ガラス3を画像表示装置(具体的には、LCDモジュール、有機ELモジュールなどの画像表示素子を有する画像表示装置)に備える場合には、透明導電性ガラス3は、例えば、タッチパネル用基材、反射防止基材などとして用いられ、好ましくは、タッチパネル用基材として用いられる。タッチパネルの形式としては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種方式が挙げられ、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【0109】
4.一実施形態の作用効果
そして、この搬送装置11では、第1駆動ロール22は、ガラス基材1および第1駆動ロール22が接触している状態において、ガラス基材1において第1駆動ロール22の表面と接触する接触面51に対して反対側の非接触面52が、他の搬送部材(ニップロール44など)と接触しない。つまり、第1駆動ロール22は、ニップ機構を構成しない。そのため、第1駆動ロール22に接触しているガラス基材1の破損を抑制できる。従って、ガラス基材1を、繰出ロール21および巻取ロール41の間を確実に搬送できる。
【0110】
しかも、第1駆動ロール22の表面は、0.8μm以下と小さい最大高さ粗さRzを有するので、第1駆動ロール22の表面が、ガラス基材1に密着でき、ガラス基材1に対して滑ることを抑制、具体的には、第1駆動ロール22の空回りを抑制できる。そのため、ガラス基材1にかかる張力を制御でき、第1駆動ロール22の回転をガラス基材1の搬送に確実に変換して、ガラス基材1をより一層確実に搬送できる。
【0111】
この搬送成膜装置10は、上記した搬送装置11とスパッタ装置12とを備えるため、スパッタ装置12の破損を抑制しながら、スパッタ装置12に透明導電層2を設けることができる。そのため、透明導電性ガラス3を確実に製造できる。
【0112】
この透明導電性ガラス3の製造方法は、搬送成膜装置10を用いるので、ガラス基材1の破損を抑制しながら、透明導電層2をガラス基材1に設けて、透明導電性ガラス3を確実に製造できる。
【0113】
4.変形例
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0114】
一実施形態では、第1駆動ロール22は、ガラス基材1の厚み方向一方面51に接触しているが、例えば、図示しないが、ガラス基材1の厚み方向他方面52に接触することもできる。なお、この場合には、ガラス基材1の厚み方向一方面51が、他の搬送部材(ニップロール44など)と接触しない。
【0115】
また、第1駆動ロール22の数は、複数であってもよい。
【0116】
また、
図3に示すように、本発明の搬送装置の一例として、スパッタ装置12および第1~第4ガイドロール(26、28、31、38)(
図1参照)を備えず、繰出ロール21と、巻取ロール41と、それらの間に配置される第1駆動ロール22とを備える搬送装置8を例示することもできる。
【0117】
また、
図1および
図2に示す実施形態では、機能層として、透明導電層2を例示しているが、例えば、図示しないが、機能層としては、例えば、ハードコート層、光学調整層、金属層(例えば、銅層などの非透明導電層)などとすることもできる。また、機能層としては、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0118】
図1に示す実施形態では、成膜装置として、スパッタ装置12を例示しているが、例えば、図示しないが、真空蒸着装置、化学蒸着装置などの真空成膜装置などが挙げられる。
【実施例】
【0119】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0120】
実施例1
一実施形態で説明した搬送成膜装置10を準備した。
【0121】
第1駆動ロール22の最大高さ粗さRzを、JIS B 0601(2009)に基づいて測定したところ、0.2μmであった。
【0122】
続いて、ガラス基材1として、厚み50μm、厚み方向他方面52の最大高さ粗さRzが0.001μmのG-leaf(日本電気硝子社製)と、その厚み方向他方面52に配置される第1保護材5とを備える搬送基材4を繰出ロール21にセットした(用意工程)。
【0123】
続いて、剥離工程、成膜工程、冷却工程、および、巻取工程を順に実施した。また、搬送工程を第1駆動ロール22により実施し、案内工程を第1~第4ガイドロール(26、28、31、38)により実施した。
【0124】
成膜工程では、材料がITOであり、厚み130nmである透明導電層2を、ガラス基材1の厚み方向一方面51に形成した。
【0125】
実施例2
表1に従って、第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzを変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
【0126】
比較例1~比較例3
表1に従って、第1駆動ロール22の表面の最大高さ粗さRzを変更した以外は、実施例1と同様に処理し、ガラス基材1の搬送を試みた。
【0127】
しかし、ガラス基材1が第1駆動ロール22に密着せず、第1駆動ロール22が空回りし、ガラス基材1にかかる張力を制御できず、そのため、ガラス基材1を搬送できなかった。結局、透明導電層2を形成できず、ひいては、積層体7を得ることもできず、さらには、巻取ロール41によって積層体7を巻き取ることもできなかった。
【0128】
比較例4
第1駆動ロール22の近傍に、ニップロールを配置して、それらから、ニップ機構を構成した以外は、実施例1と同様に処理した。このニップ機構では、ガラス基材1を、第1駆動ロール22およびニップロールが厚み方向両側から挟み込んだ。
【0129】
しかし、ガラス基材1は、上記した挟み込みによって、破損した。
【0130】
[評価]
<ガラス基材の搬送>
実施例1~比較例3のそれぞれのガラス基材の搬送を、以下の基準に従って評価した。○:第1駆動ロール22がガラス基材1に対して滑ることが抑制され、ガラス基材1を、それにかかる張力を制御した状態で、搬送できた。
×:第1駆動ロール22がガラス基材1に対して滑った。ガラス基材1にかかる張力を制御できず、ガラス基材1を正確に搬送できなかった。
【0131】
<ガラス基材の破損>
実施例1~比較例4のそれぞれのガラス基材1の破損を、以下の基準に従って評価した。
○:ガラス基材1が破損しなかった。
×:ガラス基材1が破損した。
【0132】
【符号の説明】
【0133】
1 ガラス基材
2 透明導電層
3 透明導電性ガラス
10 搬送成膜装置
11 搬送装置
12 スパッタ装置
21 繰出ロール
22 第1駆動ロール
41 巻取ロール
51 厚み方向一方面(ガラス基材)(接触面の一例)
52 厚み方向他方面(ガラス基材)(非接触面の一例)