(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】自律走行作業装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231108BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2019140604
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】長田 翔一
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112917(JP,A)
【文献】特開2011-217858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習走行作業を実行して走行データおよび作業データを記憶する学習モードと、前記走行データおよび前記作業データに基づいて自動走行作業を実行する自動モードとを切り替え可能な自律走行作業装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を作業エリア内で走行させる走行部と、
前記走行部が前記装置本体を走行させる走行経路上で作業を行う作業部と、
前記学習走行作業を実行する間、前記走行部の手動走行時の前記走行データおよび前記作業部の手動作業時の前記作業データを取得して記憶する学習制御部と、
前記学習走行作業を完了するとき、前記走行データおよび前記作業データからなる作業プランを作成するプラン作成部と、
前記自動走行作業を実行する間、前記作業プランの前記走行データおよび前記作業データに基づいて前記走行部および前記作業部を制御して自律走行および自動作業をそれぞれ行う再現制御部と、
前記学習モードの下位モードとして逆再現モードが設定された場合に、前記走行部を制御して
前記走行データの逆再現による前記装置本体の
逆走である逆再現走行を実行する逆再現制御部と、
前記学習走行作業の実行中に、前記走行経路上に1つ以上のセーブポイントを登録するセーブポイント登録部と、を備え、
前記学習制御部は、前記学習走行作業の実行中に、前記走行経路に沿った複数のステップで前記走行データおよび前記作業データを取得すると共に、前記ステップに関連付けて前記走行データおよび前記作業データを記憶し、
前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業の実行中に、前記学習制御部が前記走行データおよび前記作業データを記憶した所定の前記ステップであって、所定の登録条件を満たす前記走行経路上の前記ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録し、
前記学習制御部は、前記学習走行作業の実行中に、前記走行経路上の所定の中断位置で所定の中断条件を満たした場合に、前記学習走行作業を中断し、
前記逆再現制御部は、前記学習走行作業を中断している間、
1つ以上の前記セーブポイントのうち、何れかの前記セーブポイントが再開位置となるように、前記中断位置以前の前記走行データに基づいて前記装置本体の逆再現走行を実行し、
前記逆再現制御部が
1つ以上の前記セーブポイントのうち、何れかの前記セーブポイントで逆再現走行を完了した後、前記学習制御部は、前記学習走行作業を再開する場合、
前記セーブポイントから前記中断位置までの前記走行データに代えて、再開した前記学習走行作業によって取得した前記走行データを記憶することを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
前記学習制御部は、操作者による前記学習走行作業の中断操作を前記中断条件とすることを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
前記学習制御部は、前記学習走行作業における走行エラーまたは作業エラーの検出を前記中断条件とし、前記学習走行作業を中断した後、前記逆再現走行を実行可能な
前記逆再現モードを自動的に設定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記セーブポイント登録部は、
該自律走行作業装置の各種機能の操作や表示のためのタッチパネルからなる操作表示部に表示される、手動走行や手動作業に関するデータを設定操作可能なデータ設定画面のセーブポイント登録ボタンの登録操作を受け付けたときの該自律走行作業装置の位置に対応する前記ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録することを特徴とする請求項
1に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業における走行エラーまたは作業エラーの検出時の該自律走行作業装置の位置の直前の前記ステップ
を、前記登録条件を満たすと判定し、当該ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録することを特徴とする請求項
1に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業を開始してから、所定の時間間隔または所定の距離間隔を経過する毎の前記ステップを、前記登録条件を満たすと判定し、当該ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項7】
前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業を実行中の該自律走行作業装置の周囲の作業エリアの形状を遂次判断して、該自律走行作業装置がコーナーや分岐の入口の直前に到達したときの前記ステップを、前記登録条件を満たすと判定し、当該ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項8】
前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業の実行中に、所定の登録禁止条件を満たす場合には、前記セーブポイントの登録を規制することを特徴とする請求項
1ないし請求項
7の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項9】
前記逆再現制御部は、操作者による前記走行部の操舵操作を規制して前記学習走行作業の中断時の該自律走行作業装置の向きを維持しつつ、操作者による前記走行部の前進操作または後退操作に応じて前記走行部を前進または後退させることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項10】
前記逆再現制御部は、前記中断位置以前の前記走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、操作者による前記走行部の前進操作または後退操作に応じて前記走行部を前進または後退させると共に、前記逆再現データに応じて前記走行部を旋回させることを特徴とする請求項1ないし請求項
9の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項11】
前記逆再現制御部は、前記中断位置以前の前記走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、該自律走行作業装置の向きを前記学習走行作業の中断時の向きから方向転換して逆向きにした後、操作者による前記走行部の前進操作または後退操作に応じて前記走行部を前進または後退させると共に、前記逆再現データに応じて前記走行部を旋回させ、更に、該自律走行作業装置の向きを再度方向転換して前記学習走行作業の中断時の向きに戻すことを特徴とする請求項1ないし請求項
10の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項12】
前記学習制御部は、前記学習走行作業における前記作業エラーを検出して前記学習走行作業を中断した後、前記学習走行作業を再開する場合には、前記作業エラーを回避するように自動的に前記作業部を制御することを特徴とする請求項3に記載の自律走行作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行および自動作業を実行可能な自律走行作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行作業装置は、作業者の操作に応じた手動走行および手動作業(手動清掃)を含む学習走行清掃を実行して走行データおよび作業データ(清掃データ)を取得して記憶する学習モードと、予め記憶した走行データおよび作業データに基づいて自律走行および自動作業を含む自動走行清掃を実行する自動モード(再現モード)とを切り替えるように構成される。自律走行作業装置は、例えば、産業用(業務用)の清掃ロボット(自律走行清掃装置)として構成されて、ショッピングモール等の商業施設の床面の清掃作業を行うために用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1の自律走行台車(自律走行作業装置)は、操作者の操作により走行開始位置から走行終了位置まで走行した際の走行経路である予定走行経路を教示する教示走行モード(学習モード)と、予定走行経路を再現しながら自律的に走行する再現走行モード(自動モード)とを実行する。この自律走行台車は、教示走行モードの実行時に、走行開始位置から走行終了位置までに台車部が通過した走行環境における位置に関する情報であるサブゴール点を取得し、予定走行経路を表現する予定走行経路データをサブゴール点の集合体として記憶する。また、予定走行経路データに含まれる1のサブゴール点を注目サブゴール点とし、注目サブゴール点と、注目サブゴール点から見て予定走行経路データの前後に存在する所定の数のサブゴール点とにより形成される部分予定走行経路の、注目サブゴール点における曲率半径である注目曲率半径を算出する。そして、注目曲率半径が第1の値以下の場合に、注目曲率半径が第1の値より大きくなるように、サブゴール点を移動させる処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の自律走行作業装置は、学習モードで記憶したサブゴール点の集合体(予定走行経路データ)によって表現される予定走行経路に急曲線が含まれていても、予定走行経路から外れることなく自律走行させるために、曲率半径が大きくなるようにサブゴール点を移動し、即ち、予定走行経路データを修正している。しかしながら、学習モードにおいて、急曲線となるような走行経路で自律走行作業装置を走行させるとき、操作者が自律走行作業装置の手動操作を制御することは困難である。
【0006】
例えば、学習モードにおいて自律走行作業装置を旋回させる際に、操作者がハンドルを必要以上に切りすぎてしまうことで、操作者の意図していた走行経路よりも急な曲線の経路を通って走行データを取得してしまう。そのため、操作者の意図通りに手動走行および手動作業を行うことができず、操作者の意図通りの走行データおよび作業データを取得できないおそれがある。更に、学習モードでの手動走行が、操作者の意図していた走行経路から外れたまま継続されると、作業エリアに適切に対応した走行経路の走行データを取得することが困難である。また、上記のような自律走行作業装置では、急曲線になった走行経路を修正することができても、他のパターンの誤った走行経路を修正することができない。
【0007】
学習モードでは、広大な作業エリアで手動操作によって走行および作業を行うので、誤操作を完全になくすことは困難である。しかしながら、従来の自律走行作業装置では、意図していた走行経路から途中で誤操作によって部分的に外れた場合でも、開始位置から学習モードの実行をやり直す必要が生じる。
【0008】
本発明は、上記したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、操作者の手間をかけることなく、学習モードのやり直しを簡易に行い、操作者の意図する走行データおよび作業データを取得することができる自律走行作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業装置は、学習走行作業を実行して走行データおよび作業データを記憶する学習モードと、前記走行データおよび前記作業データに基づいて自動走行作業を実行する自動モードとを切り替え可能な自律走行作業装置であって、装置本体と、前記装置本体を作業エリア内で走行させる走行部と、前記走行部が前記装置本体を走行させる走行経路上で作業を行う作業部と、前記学習走行作業を実行する間、前記走行部の手動走行時の前記走行データおよび前記作業部の手動作業時の前記作業データを取得して記憶する学習制御部と、前記学習走行作業を完了するとき、前記走行データおよび前記作業データからなる作業プランを作成するプラン作成部と、前記自動走行作業を実行する間、前記作業プランの前記走行データおよび前記作業データに基づいて前記走行部および前記作業部を制御して自律走行および自動作業をそれぞれ行う再現制御部と、前記学習モードの下位モードとして逆再現モードが設定された場合に、前記走行部を制御して前記走行データの逆再現による前記装置本体の逆走である逆再現走行を実行する逆再現制御部と、前記学習走行作業の実行中に、前記走行経路上に1つ以上のセーブポイントを登録するセーブポイント登録部と、を備え、前記学習制御部は、前記学習走行作業の実行中に、前記走行経路に沿った複数のステップで前記走行データおよび前記作業データを取得すると共に、前記ステップに関連付けて前記走行データおよび前記作業データを記憶し、前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業の実行中に、前記学習制御部が前記走行データおよび前記作業データを記憶した所定の前記ステップであって、所定の登録条件を満たす前記走行経路上の前記ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録し、前記学習制御部は、前記学習走行作業の実行中に、前記走行経路上の所定の中断位置で所定の中断条件を満たした場合に、前記学習走行作業を中断し、前記逆再現制御部は、前記学習走行作業を中断している間、1つ以上の前記セーブポイントのうち、何れかの前記セーブポイントが再開位置となるように、前記中断位置以前の前記走行データに基づいて前記装置本体の逆再現走行を実行し、前記逆再現制御部が1つ以上の前記セーブポイントのうち、何れかの前記セーブポイントで逆再現走行を完了した後、前記学習制御部は、前記学習走行作業を再開する場合、前記セーブポイントから前記中断位置までの前記走行データに代えて、再開した前記学習走行作業によって取得した前記走行データを記憶することを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の自律走行作業装置によれば、学習走行作業の途中で、操作者の意図に合わない走行データを取得してしまった場合には、簡易な手法で学習走行作業を部分的にやり直すことができ、学習走行作業を開始位置からやり直す必要がなく、操作者の手間を省くことができる。そのため、自律走行作業装置では、簡易な手法で、操作者の意図する走行データおよび作業データを適切に取得することができる。
また、本発明の第1の自律走行作業装置によれば、学習走行作業を進める上で操作者に複数の選択肢がある箇所では、予めセーブポイントを登録しておくことにより、学習走行作業のやり直しによって選択肢を選択し直すことができる。これにより、操作者に手間をかけることなく、最適な走行経路を実現する学習走行作業を行うことができる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第2の自律走行作業装置において、前記学習制御部は、操作者による前記学習走行作業の中断操作を前記中断条件としてよい。
【0012】
本発明の第2の自律走行作業装置によれば、操作者が学習走行作業のやり直しを所望する場合には、簡易な手法で学習走行作業を中断して、速やかに逆再現走行に移行することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第3の自律走行作業装置において、前記学習制御部は、前記学習走行作業における走行エラーまたは作業エラーの検出を前記中断条件とし、前記学習走行作業を中断した後、前記逆再現走行を実行可能な逆再現モードを自動的に設定してよい
【0014】
本発明の第3の自律走行作業装置によれば、走行エラーや作業エラーを回避するために学習走行作業のやり直しが必要な場合には、操作者に手間をかけることなく学習走行作業を中断して、速やかに逆再現走行に移行することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第4の自律走行作業装置において、前記セーブポイント登録部は、該自律走行作業装置の各種機能の操作や表示のためのタッチパネルからなる操作表示部に表示される、手動走行や手動作業に関するデータを設定操作可能なデータ設定画面のセーブポイント登録ボタンの登録操作を受け付けたときの該自律走行作業装置の位置に対応する前記ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録してよい。
【0018】
本発明の第4の自律走行作業装置によれば、操作者に手間をかけることなく、簡易な手法でセーブポイントを登録することができ、セーブポイントの利用を促進することで、より最適な走行経路を実現する学習走行作業を行うことができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第5の自律走行作業装置において、前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業における走行エラーまたは作業エラーの検出時の該自律走行作業装置の位置の直前の前記ステップを、前記登録条件を満たすと判定し、当該ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録してよい。
また、本発明の第6の自律走行作業装置において、前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業を開始してから、所定の時間間隔または所定の距離間隔を経過する毎の前記ステップを、前記登録条件を満たすと判定し、当該ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録してもよい。
また、本発明の第7の自律走行作業装置において、前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業を実行中の該自律走行作業装置の周囲の作業エリアの形状を遂次判断して、該自律走行作業装置がコーナーや分岐の入口の直前に到達したときの前記ステップを、前記登録条件を満たすと判定し、当該ステップに関連付けて、前記セーブポイントを登録してもよい。
【0020】
本発明の第5の自律走行作業装置によれば、走行エラーや作業エラーを回避するために学習走行作業のやり直しが必要な場合には、操作者に手間をかけることなく、走行エラーや作業エラーの発生する前の位置にセーブポイントを設定するので、セーブポイントを利用することで、走行エラーや作業エラーが発生しない最適な走行経路を実現する学習走行作業を行うことができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第8の自律走行作業装置において、前記セーブポイント登録部は、前記学習走行作業の実行中に、所定の登録禁止条件を満たす場合には、セーブポイントの登録を規制してよい。
【0022】
本発明の第8の自律走行作業装置によれば、例えば、自律走行作業装置の周囲環境が、計測し難い環境であったり、自律走行作業装置が旋回走行や回避走行を行っていたり、操作によって走行動作や作業動作を変更していたりする場合には、自己位置を正確に推定できない可能性があるため、セーブポイントの登録を規制するとよい。これにより、操作者の意図から外れてセーブポイントが登録されることがないので、セーブポイントの利用上の不具合を抑制することができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第9の自律走行作業装置において、前記逆再現制御部は、操作者による前記走行部の操舵操作を規制して前記学習走行作業の中断時の該自律走行作業装置の向きを維持しつつ、操作者による前記走行部の前進操作または後退操作に応じて前記走行部を前進または後退させるとよい。
【0024】
本発明の第9の自律走行作業装置によれば、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの走行データに基づく走行経路が直線である場合に、より簡易に逆再現走行を行うことができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の第10の自律走行作業装置において、前記逆再現制御部は、前記中断位置以前の前記走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、操作者による前記走行部の前進操作または後退操作に応じて前記走行部を前進または後退させると共に、前記逆再現データに応じて前記走行部を旋回させるとよい。
【0026】
本発明の第10の自律走行作業装置によれば、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの走行データに基づく走行経路が長距離であったり、コーナーや分岐等に沿った曲線を含む場合、即ち、走行データの旋回速度が変化する場合に、操作者の手間をかけることなく、逆再現走行を行うことができる。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の第11の自律走行作業装置において、前記逆再現制御部は、前記中断位置以前の前記走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、該自律走行作業装置の向きを前記学習走行作業の中断時の向きから方向転換して逆向きにした後、操作者による前記走行部の前進操作または後退操作に応じて前記走行部を前進または後退させると共に、前記逆再現データに応じて前記走行部を旋回させ、更に、該自律走行作業装置の向きを再度方向転換して前記学習走行作業の中断時の向きに戻すとよい。
【0028】
本発明の第11の自律走行作業装置によれば、自律走行作業装置の前進によって逆再現走行を行うので、逆再現走行を操作する操作者の危険を低減することができる。また、中断位置から再開位置までの走行データに基づく走行経路が長距離であったり、コーナーや分岐等に沿った曲線を含む場合、即ち、走行データの旋回速度が変化する場合に、操作者の手間をかけることなく、逆再現走行を行うことができる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の第12の自律走行作業装置は、前記学習制御部は、前記学習走行作業における前記作業エラーを検出して前記学習走行作業を中断した後、前記学習走行作業を再開する場合には、前記作業エラーを回避するように自動的に前記作業部を制御してよい。
【0030】
本発明の第12の自律走行作業装置によれば、作業エラーが繰り返し発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、自律走行作業装置は、操作者の手間をかけることなく、学習モードのやり直しを簡易に行い、操作者の意図する走行データおよび作業データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示す概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部およびモード選択画面の例を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示されるデータ設定画面の例を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成される清掃プランの例を示す表である。
【
図6】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成される清掃プランの例を示す表である。
【
図7】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成される清掃プランの例を示す表である。
【
図8】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成される清掃プランの例を示す表である。
【
図9】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示される逆再現画面の例を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示される逆再現画面の例を示す正面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示される、エラー発生時のデータ設定画面および逆再現画面の例を示す正面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部に表示されるデータ設定画面の例を示す正面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において逆再現走行を伴う学習走行清掃の動作例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃、逆再現走行および学習走行清掃の再開の推移の例を示す概要図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置においてセーブポイントの登録および逆再現走行を伴う学習走行清掃の動作例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃および学習走行清掃の再開の推移の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0034】
本発明の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。
図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作を受け付ける走行操作部4とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面FLの清掃作業を実行する清掃部5を作業部として備えて、自律走行清掃装置として機能する。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモール等の商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場等の全部または一部の領域を清掃エリア(作業エリア)として、清掃エリアの床面FLを清掃の対象とする。
【0035】
また、自律走行作業装置1は、装置本体2と周囲の壁や障害物(例えば、置物等)等の非作業対象との位置関係を計測する計測部6と、所定距離内の壁や障害物を検知する障害物検知部7とを備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のためのタッチパネル18(
図3および
図4参照)からなる操作表示部8と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、バッテリー(図示せず)の残量監視や充電を制御するための電源部9とを備える。更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測等)を統括制御する制御部10と、走行部3の走行データや清掃部5の清掃データ(作業データ)からなる清掃プラン(作業プラン)を記憶する記憶部11とを備える(
図2参照)。
【0036】
次に、自律走行作業装置1の動作の概要を説明する。
【0037】
自律走行作業装置1は、手動操作に応じた走行(手動走行)および自動操作に応じた自律的な走行(自律走行)が可能な車両であって、学習モード、自動モード(再現モード)および手動モードの何れかの動作モードに切り替えられて動作する。
【0038】
自律走行作業装置1は、学習モードおよび手動モードでは、学習走行清掃(学習走行作業)および手動走行清掃(手動走行作業)をそれぞれ行って、操作者による走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて手動走行や手動清掃(手動作業)を実行する。学習走行清掃では、更に、手動走行に伴って清掃エリアの環境地図を作成して記憶すると共に、手動走行時の走行経路や走行状態を示す走行データと、手動清掃時の清掃状態を示す清掃データとを取得して、走行データおよび清掃データを含む清掃プランを記憶する。清掃プランには、手動走行時の環境地図や、手動清掃時の清掃部5の清掃部材12の種類が関連付けられて記憶される。また、学習走行清掃では、走行経路上の所定の位置(ステップ)でセーブポイントが登録されると、その位置に対応する走行データおよび清掃データに関連付けてセーブポイントが記憶される。
【0039】
自律走行作業装置1は、自動モードでは、自動走行清掃(自動走行作業)を行って、学習走行清掃で記憶された清掃プランのうちで、操作者に選択された清掃プランを再現するように、清掃プランおよび対応する環境地図に基づいて、制御部10による自動操作に応じて自律走行および自動清掃(自動作業)を実行する。
【0040】
また、自律走行作業装置1は、学習モードを開始してから完了するまでに、一時的に学習走行清掃を中断している間には、中断中の学習モードの下位モードとして逆再現モードを設定して動作することができる。自律走行作業装置1は、逆再現モードでは、学習走行清掃を中断するまでに記憶した走行データの逆再現による装置本体2の逆走、即ち、逆再現走行を実行可能となる。
【0041】
清掃プラン(作業プラン)の例を
図5~
図8に示す。
図5(1)は、学習走行清掃を中断した場合の清掃プランの例を示し、
図5(2)は、逆再現走行を実行した場合の清掃プランの例を示す。
図6は、セーブポイントを登録しつつ学習走行清掃を中断した場合の清掃プランの例を示し、
図7は、セーブポイントを再開位置として逆再現走行を実行した場合の清掃プランの例を示す。
図8(1)は、学習走行清掃を中断した場合の清掃プランの例を示し、
図8(2)は、パッド圧を調整しつつ逆再現走行を実行した場合の清掃プランの例を示す。
【0042】
図5~
図8に示すように、清掃プランは、走行データおよび清掃データを走行経路に沿った複数のステップ毎に関連付けて構成される。清掃プランを構成するステップは、学習走行清掃を行う際に、所定の時間間隔毎(例えば、25msec毎)に設定されてもよく、あるいは、自律走行作業装置1の所定の移動距離(例えば、0.3m毎)に設定されてもよい。
【0043】
走行データは、例えば、走行部3の走行経路上の自己位置データ(環境地図上の自己位置を示すX座標およびY座標、開始位置の向きに対する角度)、操舵フラグ(直進、左折、右折)、進行方向への走行速度[m/s]および旋回速度[deg/s]を含み、走行データに基づいて走行経路を図化することができる。あるいは、走行速度は、複数段階の速度の何れかに切り替えられてよく、走行データは、走行速度の段階的な速度を数字(例えば、0~7の8段階)に換算して記憶するとよい。
【0044】
清掃データは、例えば、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量および吸引部14の吸引量を含む。パッド圧は、清掃部材12を床面FLに押し付ける力であり、供給水量は、洗浄液供給部13によって床面FLに供給される洗浄液(作業液)の量であり、吸引量は、吸引部14によって床面FLから洗浄後の汚水を吸引する際の吸引ブロア(図示せず)の稼働強度である。なお、パッド圧、供給水量および吸引量は、複数段階の強度の何れかに切り替えられてよく、清掃データは、パッド圧、供給水量および吸引量の段階的な強度を数字(例えば、0~2の3段階や、0~4の5段階等)に換算して記憶するとよい。なお、清掃データは、清掃部材12の作動/停止、回転速度を含んでもよい。
【0045】
清掃プランは、走行データおよび清掃データに加えて、ステップ毎に、自律走行作業装置1から最も近い障害物(最短障害物)の方向および距離を示す最短障害物情報を含む。最短障害物情報は、清掃プランの走行データや環境地図に基づいて、制御部10(清掃プラン作成部24)によって作成されてよい。
【0046】
また、清掃プランは、
図5や
図8に示すように、ステップ毎に備考データを含んでよく、備考データには、例えば、学習モードの手動走行または手動清掃において非作業対象との接触や清掃の不具合を検出したエラー情報や、学習モード中断時の逆再現モードの逆再現走行で決定した再開位置情報等が設定される。
【0047】
更に、清掃プランは、
図6や
図7に示すように、ステップ毎にセーブポイントデータを含んでよく、セーブポイントデータには、セーブポイントを登録されたステップに対してセーブポイント情報が設定される。各セーブポイントは、例えば、異なるアルファベット等をセーブポイント情報に設定することで識別される。なお、学習走行清掃では、セーブポイントの登録数に上限(例えば、20)を設けてよく、セーブポイントを登録する際に登録数が上限を超える場合には、最古のセーブポイントに対してセーブポイント情報の設定を解除してよい。
【0048】
また、清掃プランは、各ステップが走行部3の旋回走行区間か否かをそれぞれ1または0で示す操舵フラグや、各ステップが障害物を回避する区間か否かを1または0で示す障害物回避フラグ等のフラグ情報、学習走行清掃開始からの経過時間を、ステップ毎に関連付けて含んでもよい。
【0049】
次に、自律走行作業装置1の各部を説明する。
【0050】
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、駆動輪として1つの前輪3aを備え、補助輪として一対の後輪3bを備える。前輪3aは、進行方向前側で装置幅方向中央に設けられ、走行駆動用モータ(図示せず)と前輪回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、走行駆動用モータを駆動して前輪3aを回転させることで装置本体2を前進させ、前輪3aの回転を停止させることで装置本体2を停止させる。走行駆動用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度が調整(加減速)される。更に、走行部3は、走行駆動用モータが前輪3aを逆転させることで装置本体2を後退させる。
【0051】
また、前輪3aは、操舵軸(図示せず)と操舵用モータ(図示せず)と操舵回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、操舵用モータを駆動して操舵軸を回転させることで前輪3aの向きを変えて装置本体2を操舵し、前輪3aの向きを変えながら装置本体2を前進または後退させることで、自律走行作業装置1(走行部3)を左折(左旋回)や右折(右旋回)させる。操舵用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角の調整が行われる。
【0052】
一対の後輪3bは、進行方向後側で装置幅方向(左右方向)に間隔を空けて設けられ、それぞれ走行距離を回転量から把握するためのエンコーダ(図示せず)を備える。一対の後輪3bは、前輪3aの駆動による装置本体2の移動に応じて従動回転する。自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)と操舵は、後輪3bに備えられたエンコーダを用いて後輪3bの各々の回転量をフィードバックしながら走行駆動用モータと操舵用モータを制御することで行われてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、駆動輪の前輪3aと補助輪の後輪3bとを備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、他の実施形態では、補助輪の前輪3aと一対の駆動輪の後輪3bとを備えてもよい。
【0054】
走行部3は、動作モードが学習モードまたは手動モードに設定されている場合、操作者による走行操作部4の手動操作に応じて動作する。また、走行部3は、動作モードが自動モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの走行データおよび環境地図に基づく制御部10(再現制御部26)の制御に応じて動作する。
【0055】
走行操作部4は、装置本体2の後上側に設けられ、操作者が手動操作可能なハンドル(図示せず)およびスロットル(図示せず)を備える。なお、走行操作部4は、動作モードが学習モードまたは手動モードに設定されている間は、操作者による手動操作を受け付けるが、自動モードに設定されている間は、緊急停止ボタン17の操作以外の操作者による手動操作を受け付けないように構成される。
【0056】
走行操作部4は、操作者によるハンドルの操舵量を電気信号に変換し、電気信号を操舵用モータに出力して駆動させることで、前輪3aの操舵軸を回転させて装置本体2を左折(左旋回)または右折(右旋回)させる。走行操作部4のハンドルの操舵量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。具体的には、ハンドル操作時の操舵回転用エンコーダのパルス数をカウントすることで、ハンドルの操舵量をパルス数に置き換え、このパルス数に合わせて操舵用モータを制御することで自律走行作業装置1の操舵角を調整することができる。操舵角(deg)は、走行部3の進行方向を基準(0度)にして、進行方向に対して左旋回をプラスの角度で示し、進行方向に対して右旋回をマイナスの角度で示す。なお、操舵角は、可変抵抗器を用いて電気信号に変換して検出してもよい。
【0057】
また、走行操作部4は、操作者によるスロットルの回動量(開度)を電気信号に変換し、電気信号を走行駆動用モータに出力して駆動させることで、前輪3aを回転させて装置本体2を進行方向に前進または後退させる。走行操作部4のスロットルの回動量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度が調整される。
【0058】
清掃部5は、装置本体2の下部に設けられ、装置本体2の下方の床面FLを清掃するように構成される。清掃部5は、動作モードが学習モードまたは手動モードに設定されている場合、操作者による操作表示部8の手動操作に応じて動作する。また、清掃部5は、動作モードが自動モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの清掃データに基づく制御部10(再現制御部26)の制御(自動操作)に応じて動作する。
【0059】
清掃部5は、例えば、洗浄液を用いて床面FLを清掃する湿式の清掃機構で構成され、床面FLに接触して床面FLを清掃する清掃部材12と、洗浄液を床面FLに供給する洗浄液供給部13と、床面FLを清掃した使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部14とを備える。また、清掃部5は、清掃部材12を床面FL上で回転させる清掃部材用モータ(図示せず)と、清掃部材12を床面FLに対して上下方向に移動させる清掃部材用アクチュエータ(図示せず)とを備える。更に、清掃部5は、吸引部14で吸引された汚水を回収する汚水回収部(図示せず)を備える。
【0060】
清掃部材12は、装置本体2の内部から下方に突出した清掃シャフト(図示せず)に対して着脱可能に取り付けられる。清掃部材用モータが清掃シャフトを回転させると、清掃部材12は清掃シャフトを回転軸として回転し、清掃部材用アクチュエータが清掃シャフトを上下方向に移動させると、清掃部材12も上下方向に移動する。
【0061】
清掃部材12は、一対の洗浄パッドや一対の洗浄ブラシ等で構成され、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシは、進行方向略中央で装置幅方向(左右方向)に並んで取り付けられる。左側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視時計回りに回転し、右側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視反時計回りに回転して、幅方向中央側で前方から後方へ向かうように回転する。これにより、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシの前方の汚水や塵埃を幅方向中央側に収集しつつ後方へ排出する。
【0062】
洗浄液供給部13は、洗浄液を収容する洗浄液タンクや、この洗浄液タンクに接続された供給ポンプを備えていて、供給ポンプを用いて洗浄液タンクから床面FLに洗浄液を供給して散布する。洗浄液供給部13は、例えば、供給ポンプに電圧を印加して供給ポンプのインペラ(羽根車)を回転させることで洗浄液を供給する。この電圧を変更してインペラの回転数を調整することで、洗浄液の供給水量が調整される。例えば、電圧と洗浄液の供給水量との相関データを予め記憶部11に記憶しておくことで、所定の供給水量を要求された場合に、この供給水量に対応する電圧を供給水ポンプに印加することで、要求された供給水量に調整する。
【0063】
吸引部14は、吸引ブロアで構成される。汚水回収部は、スキージ15と、汚水ダクト(図示せず)と、汚水タンク(図示せず)とを備えていて、スキージ15は、清掃部材12より後方で床面FLに接地して設けられる。汚水回収部は、清掃部材12から後方に排出される汚水をスキージ15で受け止めて収集し、吸引部14は、汚水ダクトに接続されていて、スキージ15が収集した汚水を汚水ダクトへ吸引する。汚水回収部において、汚水ダクトへ吸引された汚水は、汚水ダクトに接続された汚水タンクへ回収される。
【0064】
このような清掃部5は、洗浄液供給部13が床面FLに洗浄液を散布しながら、清掃部材12の洗浄パッドまたは洗浄ブラシを清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FLを洗浄し、洗浄後の汚水を汚水回収部が回収する。
【0065】
計測部6は、装置本体2と周囲の壁や障害物等の非作業対象との位置情報(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)6a等を備える。計測部6は、装置本体2が走行している間、例えば、所定のタイミング毎(例えば、25msec毎)に非作業対象との位置情報を計測する。
【0066】
障害物検知部7は、装置本体2から所定距離内の壁や障害物の有無を検知する超音波センサや装置本体2付近の床面FLの段差を検知する赤外線センサ等の障害物センサ7aを備える。また、障害物検知部7は、装置本体2のバンパー2a等と非作業対象との衝突(接触)を検知する接触センサ7bを備える。障害物検知部7は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。
【0067】
操作表示部8は、装置本体2の後上側で走行操作部4の近傍に設けられ、
図3に示すように、キースイッチ16と、緊急停止ボタン17と、タッチパネル18とを備え、操作表示部8の各部は、制御部10に接続されている。操作表示部8は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネル等で構成されてよく、あるいは、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末等で構成されてもよい。なお、タブレット端末等で構成される操作表示部8は、無線通信を介して制御部10に接続されて、自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
【0068】
キースイッチ16は、オン、オフを切替可能に構成されている。キースイッチ16をオンに切り替えることで、電源部9から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、キースイッチ16をオフに切り替えることで、電源部9から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタン17は、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、自動モードでの自動走行清掃)を強制的に停止(制動)する。
【0069】
タッチパネル18は、制御部10からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部10へと送信する。例えば、キースイッチ16をオンにして自律走行作業装置1を稼働すると、タッチパネル18は、
図3に示すように、動作モードを選択可能なモード選択画面30を表示する。
【0070】
モード選択画面30には、清掃部材12の着脱を行うためのパッド装着ボタン31や、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34が操作可能に表示される。
【0071】
学習ボタン32および手動ボタン34が操作されると、動作モードが学習モードおよび手動モードに切り替えられて、タッチパネル18は、
図4、
図11(1)、
図12(1)、
図12(2)に示すように、手動走行や手動清掃に関するデータを設定操作可能なデータ設定画面40を表示する。また、自動ボタン33が操作されると、動作モードが自動モードに切り替えられて、タッチパネル18は、自動走行清掃の対象の清掃プランを選択操作可能な清掃プラン選択画面(図示せず)を表示する。
【0072】
清掃プラン選択画面は、記憶部11に記憶されている各清掃プランを選択可能に構成され、また、選択された清掃プランの自動走行清掃の開始、一時停止、中止等を操作可能に構成される。なお、選択された清掃プランの自動走行清掃が開始されると、タッチパネル18は、自動走行清掃の実行中を示す画面を表示する。
【0073】
データ設定画面40には、走行部3の走行速度を変更する速度変更ボタン41が表示される。速度変更ボタン41は、例えば、操作する度に走行速度を段階的に上げる上ボタンと、操作する度に走行速度を段階的に下げる下ボタンとを備える。
【0074】
データ設定画面40には、清掃部5の清掃部材12の清掃スイッチ42および清掃部材12のパッド圧を調整するパッド圧調整ボタン43が表示される。清掃スイッチ42は、操作する度に清掃部材12による清掃の稼働/停止を切り替える。パッド圧調整ボタン43は、操作する度に清掃部材12のパッド圧を段階的かつ循環的に切り替える。
【0075】
データ設定画面40には、清掃部5の洗浄液供給部13の供給スイッチ44および洗浄液供給部13の供給水量を調整する供給水量調整ボタン45が表示される。供給スイッチ44は、操作する度に洗浄液供給部13による洗浄液供給の稼働/停止を切り替える。供給水量調整ボタン45は、操作する度に洗浄液供給部13の供給水量を段階的かつ循環的に切り替える。
【0076】
データ設定画面40には、清掃部5の吸引部14の吸引スイッチ46および吸引部14の吸引量を調整する吸引量調整ボタン47が表示される。吸引スイッチ46は、操作する度に吸引部14による吸引の稼働/停止を切り替える。吸引量調整ボタン47は、操作する度に吸引部14の吸引量を段階的かつ循環的に切り替える。
【0077】
更に、データ設定画面40には、学習モードにおいて、学習走行清掃を開始する学習開始ボタン48、学習走行清掃を中断する学習中断ボタン49、学習走行清掃を完了する学習完了ボタン50、学習走行清掃の結果を清掃プランとして記憶する記憶ボタン51、学習走行清掃中に走行経路上のセーブポイントの登録操作を受け付けるセーブポイント登録ボタン52が操作可能に表示される。なお、学習中断ボタン49、学習完了ボタン50およびセーブポイント登録ボタン52は、学習走行清掃の実行中のみ表示するようにしてもよく、記憶ボタン51は、学習走行清掃の完了後のみ表示するようにしてもよい。
【0078】
また、データ設定画面40には、学習走行清掃の中断中に、逆再現ボタン53が操作可能に表示される。即ち、データ設定画面40において学習中断ボタン49が操作されると、逆再現ボタン53が操作可能となる。逆再現ボタン53が操作されると、中断中の学習モードの下位モードとして逆再現モードが設定されて、タッチパネル18は、
図9に示すように、逆再現走行の状態を表示すると共に、逆再現走行を操作可能な逆再現画面60を表示する。
【0079】
逆再現画面60には、走行データの逆再現による装置本体2の逆走、即ち、逆再現走行を開始する逆再現走行ボタン61や、逆再現走行を完了する逆再現完了ボタン62が操作可能に表示される。逆再現走行ボタン61には、逆再現走行の状態を文字表示してよい。
【0080】
また、逆再現画面60には、学習走行清掃を中断するまでにセーブポイントが登録されていた場合には、セーブポイント表示ボタン63が操作可能に表示される。セーブポイント表示ボタン63を操作すると、逆再現画面60には、
図10に示すように、登録されたセーブポイント毎にセーブポイント項目64が一覧表示される。セーブポイント項目64は、自律走行作業装置1の現在の自己位置とセーブポイントとの距離が近い順に表示されるとよい。セーブポイント項目64には、アルファベット等のセーブポイント情報と共に、自律走行作業装置1の現在の自己位置からセーブポイントまでの残り距離が、「A:10m戻り」、「B:13m戻り」等のように表示されてよい。残り距離は、逆再現走行の開始時に算出した距離を固定して表示してもよく、あるいは、自律走行作業装置1の逆再現走行によって変化する自己位置に応じて変更しながら表示してもよい。
【0081】
電源部9は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)および充電回路を備え、外部電源に接続することでバッテリーが充電され、また、自律走行作業装置1の各部へと電力を供給する。電源部9は、バッテリーの残量を示す信号を制御部10へと出力してもよい。
【0082】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータで構成され、
図2に示すように、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等を含む記憶部11に接続されている。また、制御部10は、上記の走行部3、走行操作部4、清掃部5、計測部6、障害物検知部7、操作表示部8および電源部9等の自律走行作業装置1の各部に接続されている。
【0083】
記憶部11は、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御部10が、記憶部11に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各部および各種機能を統括制御する。例えば、制御部10は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、モード切替部20、学習制御部21、地図作成部22、セーブポイント登録部23、清掃プラン作成部24(プラン作成部)、逆再現制御部25および再現制御部26として動作する。これにより、自律走行作業装置1は、事前に記憶されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業することができる。また、記憶部11は、1つ以上の清掃プランを記憶すると共に、各清掃プランに対応する環境地図も記憶する。
【0084】
モード切替部20は、動作モードを学習モード、自動モードおよび手動モードの何れかに切り替える。モード切替部20は、例えば、上記したモード選択画面30において、学習ボタン32、自動ボタン33および手動ボタン34の操作に応じて動作モードを学習モード、自動モードおよび手動モードにそれぞれ切り替える。また、モード切替部20は、動作モードが学習モードであって、学習走行清掃が一時的に中断している間には、学習モードの下位モードとして逆再現モードを設定することができる。モード切替部20は、例えば、上記したデータ設定画面40において、逆再現ボタン53の操作に応じて逆再現モードを設定する。
【0085】
学習制御部21は、学習モードにおいて、データ設定画面40の学習開始ボタン48の操作に応じて学習走行清掃を開始して、走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データの取得を開始する。学習制御部21は、学習走行清掃が行われる間、所定のステップ間隔毎に、走行データおよび清掃データを取得して記憶部11に一時的に記憶しておく。
【0086】
学習制御部21は、例えば、走行データとして、計測部6が計測した位置情報に基づいて自己位置データ(X座標およびY座標、角度)を取得する。また、走行部3の前輪3aの前輪回転用エンコーダで前輪3aの走行回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の走行速度を取得する。更に、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダで前輪3aの操舵回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の旋回速度を取得する。
【0087】
なお、学習制御部21は、各ステップで学習走行清掃の走行上のエラー、即ち、走行エラーが検出された場合、その走行エラーの内容をそのステップの備考データとして記憶部11に記憶する。例えば、障害物検知部7の障害物センサ7aが装置本体2と非作業対象との接近を検知した場合、学習制御部21は、障害物センサ7aから接近の検知結果を入力し、走行エラーとして接近エラーを検出する。また、障害物検知部7の接触センサ7bが装置本体2のバンパー2a等と非作業対象との衝突(接触)を検知した場合、学習制御部21は、接触センサ7bから接触の検知結果を入力し、走行エラーとして接触エラーを検出する。
【0088】
学習制御部21は、例えば、清掃データとして、清掃部5の清掃部材12のパッド圧、洗浄液供給部13の供給水量および吸引部14の吸引量について、データ設定画面40を介して設定されていた段階的な強度を取得する。
【0089】
なお、学習制御部21は、各ステップで学習走行清掃の清掃上のエラー、即ち、清掃エラー(作業エラー)を検出した場合に、その清掃エラーの内容をそのステップの備考データとして記憶部11に記憶する。例えば、清掃部5の清掃部材12の回転がロックして清掃部材12を回転させる清掃部材用モータを制御する制御電流に異常が生じた場合、清掃部5は、清掃部材12の回転不具合を検知し、学習制御部21は、清掃部5から清掃部材12の回転不具合の検知結果を入力し、清掃エラーとして清掃部エラーを検出する。
【0090】
また、学習制御部21は、データ設定画面40の学習中断ボタン49の操作(学習走行清掃の中断操作)に応じて学習走行清掃を中断し、学習モードでの手動走行および手動清掃を強制的に停止すると共に、走行データおよび清掃データの取得を停止する。
【0091】
更に、学習制御部21は、上記のような学習走行清掃の走行エラーや清掃エラーが検出された場合、データ設定画面40の学習中断ボタン49の操作に拘らず、自動的に学習走行清掃を中断する。このとき、モード切替部20は、自動的に学習モードを中断して逆再現モードを設定する。このように、走行エラーや清掃エラーに応じて自動的に学習走行清掃を中断する場合、データ設定画面40には、
図11(1)に示すように、走行エラーや清掃エラーの内容を文字表示してよい。また、走行エラーや清掃エラーに応じて自動的に逆再現モードを設定する場合、タッチパネル18には、
図11(2)に示すように、データ設定画面40に代えて逆再現画面60を表示してもよい。
【0092】
学習制御部21は、学習走行清掃を中断した位置(中断位置)を記憶部11に記憶しておく。なお、学習制御部21は、中断位置が学習走行清掃時の何れのステップにも合致しない場合には、中断位置に対応する新たなステップを生成して中断時の走行データや清掃データを記憶してもよい。学習制御部21は、学習走行清掃を中断している間に、逆再現モードが設定されて中断位置から所定の再開位置までの自律走行作業装置1の逆再現走行が完了したとき、中断位置から再開位置までの各ステップ(中断位置のステップを含むが、再開位置のステップを含まない)の走行データおよび清掃データを記憶部11から削除し、あるいは、中断区間データとして記憶部11の別の記憶領域に記憶してもよい。
【0093】
また、学習制御部21は、学習走行清掃を中断した後、データ設定画面40の学習開始ボタン48の操作に応じて学習走行清掃を再開し、学習モードでの手動走行および手動清掃を再開すると共に、走行データおよび清掃データの取得を再開する。なお、学習制御部21は、学習走行清掃の中断時に自律走行作業装置1の逆再現走行が行われた場合、再開した学習走行清掃がやり直しであることを明確にするために、
図12(1)に示すように、データ設定画面40に学習モードがやり直しであることを文字表示してもよく、あるいは、学習開始ボタン48の表記を「学習再開」に変更してもよい。
【0094】
学習走行清掃が中断されて逆再現走行の後で再開された場合でも、中断位置から再開位置までの走行データおよび清掃データに代えて、再開位置から取得される走行データおよび清掃データが記憶部11に記憶されるので、記憶部11には連続した走行データおよび清掃データが記憶されることになる。例えば、
図5(1)のステップ番号「30」~「36」の走行データおよび清掃データは、
図5(2)のステップ番号「30」~「36」の走行データおよび清掃データに置き換えられる。
図6のステップ番号「27」~「45」の走行データおよび清掃データは、
図7のステップ番号「0」~「70」の走行データおよび清掃データに置き換えられる。
図8(1)のステップ番号「30」~「36」の走行データおよび清掃データは、
図8(2)のステップ番号「30」~「36」の走行データおよび清掃データに置き換えられる。なお、再開位置がセーブポイントか否かに拘わらず、走行データの自己位置データは、学習走行清掃の開始位置を基準として取得される。
【0095】
そして、学習制御部21は、データ設定画面40の学習完了ボタン50の操作に応じて学習走行清掃を完了し、走行データおよび清掃データの取得を停止する。
【0096】
地図作成部22は、学習モードにおいて学習制御部21が学習走行清掃を行う間、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行う。
【0097】
具体的には、地図作成部22は、所定の清掃エリアの学習走行清掃の間に、計測部6の計測結果である装置本体2と非作業対象との位置情報に基づいて、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、装置本体2の周囲の局所地図を作成する。また、地図作成部22は、局所地図と走行部3の各エンコーダによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置(座標)を推定する。
【0098】
そして、地図作成部22は、学習制御部21が学習走行清掃を完了する際に、各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで清掃エリアの環境地図を作成する。また、地図作成部22は、局所地図中の自己位置(計測部6が計測した各位置情報)をつなぎ合わせる(合成する)ことで走行経路を作成する。
【0099】
セーブポイント登録部23は、学習モードにおいて学習制御部21が学習走行清掃を行う間、所定の登録条件を満たす走行経路上の位置にセーブポイントを登録する。具体的には、学習制御部21が走行データおよび作業データを記憶する走行経路上のステップが所定の登録条件を満たす場合、そのステップに関連付けてセーブポイントを登録して記憶部11に記憶する。
【0100】
例えば、セーブポイント登録部23は、データ設定画面40のセーブポイント登録ボタン52の操作(登録操作)を受け付けたときのステップを、登録条件を満たすと判定する。この場合、セーブポイント登録部23は、セーブポイント登録ボタン52が操作されたときの走行経路上の位置に最も近いステップに関連付けてセーブポイントを登録してよい。即ち、セーブポイント登録部23は、セーブポイント登録ボタン52の操作に応じて手動でセーブポイントを登録する。
【0101】
セーブポイント登録部23は、学習走行清掃を開始してから、所定の時間間隔または所定の距離間隔を経過する毎のステップを、登録条件を満たすと判定し、セーブポイントを自動で登録する。この場合、セーブポイント登録部23は、所定の時間間隔または所定の距離間隔の経過時点の走行経路上の位置に最も近いステップに関連付けてセーブポイントを登録してよい。
【0102】
セーブポイント登録部23は、学習走行清掃を実行中の自律走行作業装置1の周囲の清掃エリアの形状を遂次判断して、自律走行作業装置1がコーナーや分岐の入口の直前に到達したときのステップを、登録条件を満たすと判定し、セーブポイントを自動で登録する。なお、コーナーや分岐の入口の直前とは、コーナーや分岐の入口から、数ステップ~数十ステップ手前でもよく、数十cm~数m手前でもよく、数秒~数十秒手前でもよい。この場合、セーブポイント登録部23は、コーナーや分岐の入口直前の走行経路上の位置に最も近いステップに関連付けてセーブポイントを登録してよい。セーブポイント登録部23は、例えば、計測部6の計測結果等に基づいて自律走行作業装置1の周囲の清掃エリアの形状(例えば、局所地図内で区分される領域のうち、自律走行作業装置1の存在する領域の形状)を判断してよい。あるいは、セーブポイント登録部23は、カメラ(図示せず)によって自律走行作業装置1の周囲の画像を撮像し、その画像に基づいて自律走行作業装置1の周囲の清掃エリアの形状を判断してもよい。
【0103】
セーブポイント登録部23は、上記したように学習走行清掃の走行エラーや清掃エラーが検出される場合、エラー検出時の直前のステップを、登録条件を満たすと判定し、セーブポイントを自動で登録する。なお、エラー検出時の直前とは、エラー検出時から、数ステップ~数十ステップ手前でもよく、数十cm~数m手前でもよく、数秒~数十秒手前でもよい。セーブポイント登録部23は、例えば、走行エラーまたは清掃エラーが検出されたとき、エラー検出時のステップから遡ったステップに関連付けてセーブポイントを登録してよい。
【0104】
また、セーブポイント登録部23は、学習走行清掃の実行中に所定の登録禁止条件を満たす場合には、上記の登録条件に拘らず、セーブポイントの登録を規制し、例えば、
図12(2)に示すように、セーブポイント登録ボタン52を操作不能にして、登録条件を満たす場合でもセーブポイントを登録しない。
【0105】
例えば、セーブポイント登録部23は、自律走行作業装置1の周囲環境の変動割合を検出し、周囲環境の変動割合が所定の範囲外である場合(例えば、周囲環境の変動が著しく激しい場合や著しく少ない場合、同じ周囲環境が繰り返される場合等)に、自己位置を正常に推定できないと考えられるため、登録禁止条件を満たすと判定する。このとき、セーブポイント登録部23は、計測部6の計測結果等に基づいて判断される自律走行作業装置1の周囲の清掃エリアの形状の変化を判断することで、周囲環境の変動割合を検出してよい。
【0106】
また、セーブポイント登録部23は、走行部3が旋回走行や障害物の回避走行を行っている場合や、走行操作部4やデータ設定画面40の操作によって自己位置データ以外の走行データや清掃データの変更中の場合、走行動作や清掃動作の変更の影響を受けて、安定して正確なセーブポイントを登録できなくなるので、登録禁止条件を満たすと判定する。
【0107】
清掃プラン作成部24は、データ設定画面40の学習完了ボタン50の操作に応じて学習走行清掃が完了すると、学習制御部21が記憶部11に一時的に記憶していた走行データおよび清掃データをステップ毎に関連付けて清掃プラン(作業プラン)を作成する。なお、清掃プラン作成部24は、学習走行清掃が中断されて逆再現走行の後で再開された場合でも、上記したように、記憶部11には連続した走行データおよび清掃データが記憶されているので、清掃プラン作成部24は、連続した一連のステップからなる清掃プランを作成することができる。清掃プラン作成部24は、作成した清掃プランについてプラン名の入力を操作者に問い合わせる問合せ画面をタッチパネル18に表示させ、操作者によって入力されたプラン名を、作成した清掃プランに付加する。清掃プラン作成部24は、プラン名の入力後、データ設定画面40の記憶ボタン51の操作に応じて、作成した清掃プランを、同じ学習走行清掃で地図作成部22が作成した環境地図と関連付けて記憶部11に記憶する。
【0108】
また、清掃プラン作成部24は、作成した清掃プランの走行データおよび環境地図に基づいて、ステップ毎に、自律走行作業装置1から最も近い障害物(最短障害物)を検出し、最短障害物の方向を検出すると共に最短障害物の最短距離を算出する。例えば、最短障害物は、自律走行作業装置1の進行方向に対して左側または右側に存在する壁等の障害物である。清掃プラン作成部24は、ステップ毎の最短障害物の方向および最短距離を最短障害物情報として清掃プランに記憶する。
【0109】
更に、清掃プラン作成部24は、操舵フラグ等のフラグ情報を作成して清掃プランに記憶してよい。例えば、清掃プラン作成部24は、作成した清掃プランの走行データに基づいて、走行部3の走行経路(走行軌跡)を算出し、この走行軌跡において曲率半径が所定の曲率半径閾値以下の区間を旋回走行区間として判定し、この区間に対応するステップの操舵フラグを1に設定する。または、清掃プラン作成部24は、作成した清掃プランの走行データに基づいて、走行操作部4(ハンドル)の操舵角を検出し、この操舵角が所定の操舵角閾値(例えば、30度)以上の区間を旋回走行区間として判定し、この区間に対応するステップの操舵フラグを1に設定する。なお、操舵角を計測する場合、例えば、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダや、走行操作部4(ハンドル)の旋回軸に設けたエンコーダによって、走行操作部4を操舵したときの各エンコーダのパルス数値を計測し、パルス数値を角度(deg)に換算すればよい。
【0110】
逆再現制御部25は、動作モードが学習モードであって、学習走行清掃が一時的に中断している間に、学習モードの下位モードとして逆再現モードが設定された場合に、走行操作部4の操作やタッチパネル18に表示された逆再現画面60の操作に応じて、走行データの逆再現による装置本体2の逆走、即ち、逆再現走行を制御する。このとき、逆再現制御部25は、学習走行清掃の中断位置から、学習走行清掃で記憶した走行データに基づく走行経路上の所定の再開位置までの逆再現区間の走行データに基づいて、装置本体2を逆再現走行させる。なお、逆再現制御部25は、中断位置から再開位置までの走行データに基づいて、自動的に装置本体2を逆再現走行させてもよい。
【0111】
逆再現制御部25は、逆再現画面60の逆再現完了ボタン62が操作されたとき、自律走行作業装置1の自己位置を再開位置として確定して、逆再現走行を完了し、逆再現モードを解除して、逆再現画面60に代えてデータ設定画面40をタッチパネル18に表示させる。また、逆再現制御部25は、逆再現走行を実行するための走行操作部4の操作や逆再現画面60の操作が終了したときに、自律走行作業装置1の自己位置を再開位置として再開位置を確定してもよい。逆再現制御部25は、再開位置に対応するステップの備考データとして再開位置情報を記憶部11に記憶する。
【0112】
なお、逆再現制御部25は、再開位置が学習走行清掃時の何れのステップにも合致しない場合には、再開位置の前後のステップの走行データおよび清掃データに基づいて、再開位置に対応する走行データおよび清掃データを含む新たなステップ(例えば、再開位置の前後のステップの中間や平均となるようなステップ)を作成して記憶部11に記憶するとよい。
【0113】
逆再現制御部25は、様々な逆再現手法で逆再現走行を制御することができる。例えば、逆再現制御部25は、第1の逆再現手法として、学習走行清掃の中断時の装置本体2の進行方向の向きを維持して、走行部3を左右に操舵(旋回)させることなく、走行操作部4のスロットルの後退操作に応じて装置本体2(走行部3)を直線的に後退させる。逆再現制御部25は、中断位置以前の連続するステップにおいて、走行データの旋回速度が0であれば、走行経路を外れることなく、第1の逆再現手法を行うことができる。なお、逆再現制御部25は、中断位置以前のステップにおいて、走行データの旋回速度が0以外であれば、そのステップへ後退することなく、第1の逆再現手法を終了してよい。第1の逆再現手法は、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの逆再現区間の走行データに基づく走行経路が直線である場合に、有効に使用することができる。
【0114】
また、逆再現制御部25は、第2の逆再現手法として、逆再現画面60の逆再現走行ボタン61が操作された場合に、中断位置以前の走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、走行操作部4のスロットルの後退操作に応じて装置本体2(走行部3)を後退させると共に、逆再現データに応じて走行部3(前輪3a)を操舵(旋回)させる。例えば、逆再現制御部25は、連続する2つのステップの走行データの自己位置データや旋回速度に基づいて、これら2つのステップを逆走する場合の旋回速度を算出して逆再現データとして作成する。逆再現制御部25は、逆再現走行で後退している間、逆再現画面60の逆再現走行ボタン61上に「逆走中」の文字を表示する。第2の逆再現手法は、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの逆再現区間の走行データに基づく走行経路が長距離であったり、コーナーや分岐等に沿った曲線を含む場合、即ち、逆再現区間の走行データの旋回速度が変化する場合に、有効に使用することができる。
【0115】
第1の逆再現手法および第2の逆再現手法において、逆再現制御部25は、走行操作部4のハンドルの操舵操作(旋回操作)を受け付けない。逆再現制御部25は、装置本体2を後退のみさせるように、走行操作部4のスロットルの後退操作のみ受け付ける一方、走行操作部4のスロットルの前進操作を受け付けなくてもよく、あるいは、前進および後退を微調整できるように、走行操作部4のスロットルの前進操作および後退操作の両方を受け付けてもよい。なお、逆再現制御部25は、走行部3の走行速度を低速に制限してもよい。
【0116】
また、逆再現制御部25は、第3の逆再現手法として、中断位置以前の走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、装置本体2を学習走行清掃時の進行方向から180度旋回(方向転換)させて逆方向の向き(逆向き)にし、走行操作部4のスロットルの前進操作に応じて装置本体2(走行部3)を前進させると共に、逆再現データに応じて走行部3(前輪3a)を操舵(旋回)させ、更に、装置本体2を再度180度旋回(方向転換)させて学習走行清掃時の進行方向の向きにする。例えば、逆再現制御部25は、連続する2つのステップの走行データの自己位置データや旋回速度に基づいて、これら2つのステップを逆走する場合の旋回速度を算出して逆再現データとして作成する。逆再現制御部25は、逆再現走行で前進している間、逆再現画面60の逆再現走行ボタン61上に「前進走行中」の文字を表示する。
【0117】
第3の逆再現手法は、第2の逆再現手法と同様に、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの逆再現区間の走行データに基づく走行経路が長距離であったり、コーナーや分岐等に沿った曲線を含む場合、即ち、逆再現区間の走行データの旋回速度が変化する場合に、有効に使用することができる。
【0118】
逆再現制御部25は、逆再現画面60に180度旋回ボタン(図示せず)を設けて、180度旋回ボタンの操作に応じて、装置本体2を180度旋回させてもよく、あるいは、走行操作部4のハンドル操作に応じて装置本体2を180度旋回させてもよい。なお、逆再現制御部25は、装置本体2を学習走行清掃時の進行方向から逆向きにしている場合、逆向きフラグを設定するとよく、逆向きフラグの設定中は、逆再現画面60の逆再現完了ボタン62を操作不能にするとよい。
【0119】
第3の逆再現手法において、逆再現制御部25は、走行操作部4のスロットルの前進操作をしている間、走行操作部4のハンドルの操舵操作(旋回操作)を受け付けない。逆再現制御部25は、装置本体2を前進のみさせるように、走行操作部4のスロットルの前進操作のみ受け付ける一方、走行操作部4のスロットルの後退操作を受け付けなくてもよく、あるいは、前進および後退を微調整できるように、走行操作部4のスロットルの前進操作および後退操作の両方を受け付けてもよい。なお、逆再現制御部25は、走行部3の走行速度を低速に制限してもよい。
【0120】
なお、逆再現制御部25は、上記した第1の逆再現手法、第2の逆再現手法および第3の逆再現手法を、何れか1つだけ行ってもよく、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。また、逆再現制御部25は、上記した第1の逆再現手法、第2の逆再現手法および第3の逆再現手法以外の他の逆再現手法を行ってもよい。
【0121】
また、逆再現制御部25は、学習走行清掃を中断するまでにセーブポイントが登録されていた場合、逆再現画面60のセーブポイント表示ボタン63の操作に応じて、登録されたセーブポイント毎のセーブポイント項目64を逆再現画面60に一覧表示する。このとき、逆再現制御部25は、何れかのセーブポイントが再開位置になるように逆再現走行を制御する。なお、逆再現制御部25は、セーブポイントを再開位置にする場合でも、上記した第1の逆再現手法、第2の逆再現手法または第3の逆再現手法、あるいは他の逆再現手法を用いて逆再現走行を行ってよい。
【0122】
逆再現制御部25は、自律走行作業装置1を逆再現走行させてセーブポイントで停止させることにより、セーブポイントを再開位置にする。例えば、逆再現制御部25は、逆再現走行中の自律走行作業装置1が、セーブポイントに接近した場合や、セーブポイント上に配置している場合に、そのセーブポイントに対応するセーブポイント項目64の表示色の変更や点滅、音声等のアナウンス出力によって、セーブポイントへの接近やセーブポイント上の配置を操作者へ報知する。操作者は、このような報知に基づいて自律走行作業装置1を所望のセーブポイント上に停止(配置)させると共に、逆再現完了ボタン62を操作することで、所望のセーブポイントを再開位置にすることができる。なお、逆再現制御部25は、2つ以上のセーブポイントが登録されていれば、自律走行作業装置1が各セーブポイントに接近または配置する毎に、上記のような報知を行う。このとき、操作者は、自律走行作業装置1が接近または配置するセーブポイントを再開位置として所望してなければ、そのセーブポイントを通過(スルー)して逆再現走行を継続し、所望のセーブポイントに到達するまで逆再現走行を行えばよい。
【0123】
また、何れかのセーブポイント項目64が選択操作された場合、逆再現制御部25は、逆再現走行中の自律走行作業装置1が、選択されたセーブポイント項目64に対応するセーブポイントに接近した場合や、そのセーブポイント上に配置している場合のみ、上記のような報知を行うとよい。この場合、逆再現制御部25は、選択されたセーブポイント項目64に対して表示色の変更や点滅を行うことで選択操作を報知するとよく、また、自律走行作業装置1が選択されたセーブポイント項目64に対応するセーブポイントから所定距離以上離れた場合、その旨の報知を行うとよい。
【0124】
再現制御部26は、動作モードが自動モードの場合に、タッチパネル18に表示された清掃プラン選択画面の操作に応じて清掃プランが選択されると、選択された清掃プランを記憶部11から読み出し、この清掃プランの走行データおよび清掃データに基づいて、走行部3および清掃部5を制御して自動走行清掃を行う。このとき、再現制御部26は、清掃プランに対応する環境地図上の自律走行作業装置1の自己位置を推定しながら自動走行清掃を実行する。例えば、再現制御部26は、地図作成部22を利用してSLAM等の技術を用いて局所地図を作成し、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定して、局所地図を環境地図にマッチングさせることで、環境地図上の自己位置を推定する。そして、再現制御部26は、清掃プランの走行データのステップ毎の自己位置データと、環境地図上で推定される自己位置を合わせて走行部3を制御しつつ、清掃部5の清掃データに基づいてステップ毎に清掃作業を制御する。
【0125】
上記のような自律走行作業装置1において、逆再現走行を伴う学習走行清掃の第1動作例を、
図13のフローチャートおよび
図14を参照しながら説明する。
【0126】
先ず、操作者が操作表示部8のキースイッチ16をオンにすると、自律走行作業装置1が稼働し、タッチパネル18にモード選択画面30が表示される。モード選択画面30の学習ボタン32が操作されると、モード切替部20は、動作モードを学習モードに切り替え、タッチパネル18にデータ設定画面40が表示される。そして、データ設定画面40の学習開始ボタン48が操作されると、学習制御部21は、学習走行清掃を開始する(ステップS1)。
【0127】
学習走行清掃を実行している間、学習制御部21は、ステップ間隔毎に、走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データを取得して記憶部11に記憶する(ステップS2)。また、学習走行清掃を実行している間に、所定の中断条件を満たした場合、例えば、データ設定画面40の学習中断ボタン49が操作された場合や、
図14(1)に示すように、自律走行作業装置1が障害物に接触して接触センサ7bが接触を検知して走行エラーが検出された場合、学習制御部21は、学習走行清掃を中断する(ステップS3:Yes)。なお、学習走行清掃の中断時に、自律走行作業装置1は所定の中断位置に配置されている。
【0128】
学習走行清掃を中断している間、データ設定画面40の逆再現ボタン53が操作されると、逆再現モードが設定されて、タッチパネル18に逆再現画面60が表示される。逆再現モードにおいて、逆再現制御部25は、走行操作部4や逆再現画面60の操作に応じて、
図14(2)に示すように、逆再現走行を実行する(ステップS4)。
【0129】
逆再現走行を実行して自律走行作業装置1が所定の再開位置に配置されているときに、逆再現画面60の逆再現完了ボタン62が操作されると、逆再現制御部25は、逆再現走行を完了し、逆再現モードが解除されて、タッチパネル18にデータ設定画面40が表示される。
【0130】
そして、データ設定画面40の学習開始ボタン48が操作されると、学習制御部21は、学習走行清掃を再開し(ステップS5)、操作者は、
図14(3)に示すように、障害物を回避するように学習走行清掃を行う。学習走行清掃の再開後は、学習制御部21は、上記と同様に、走行データおよび清掃データの取得および記憶を行う。なお、学習走行清掃の再開後、所定の時間または所定の距離の間、走行データのみの取得および記憶を行って、逆再現走行前の清掃データを採用してもよい。これは、例えば、清掃すべき清掃エリアに清掃を含まない走行のみの箇所が含まれる場合もあり、走行のみの箇所を修正したい場合に有効となる。
【0131】
その後、学習走行清掃が中断されずに、データ設定画面40の学習完了ボタン50が操作されると、学習制御部21は、学習走行清掃を完了する(ステップS6:Yes)。そして、清掃プラン作成部24は、記憶部11に記憶された走行データおよび清掃データからなる清掃プランを作成して、操作者によって入力されたプラン名を付加し、この清掃プランを記憶部11に記憶する(ステップS7)。更にこのとき、学習モードが解除されて、タッチパネル18にモード選択画面30が表示される。
【0132】
また、上記のような自律走行作業装置1において、セーブポイントの登録および逆再現走行を伴う学習走行清掃の第2動作例を、
図15のフローチャートおよび
図16を参照しながら説明する。
【0133】
第2動作例でも、第1動作例と同様にして、自律走行作業装置1が稼働し、
図16(1)に示すように所定の開始位置から学習走行清掃が開始される(ステップS11)。そして、学習走行清掃の実行中に、学習制御部21は、ステップ間隔毎に、走行データおよび清掃データを取得して記憶部11に記憶する(ステップS12)。
【0134】
また、学習走行清掃の実行中に、所定の登録条件を満たした場合、例えば、データ設定画面40のセーブポイント登録ボタン52が操作された場合や、
図16(1)に示すように、学習走行清掃する自律走行作業装置1が分岐の入口の直前に到達した場合、セーブポイント登録部23は、走行データおよび清掃データを記憶する所定のステップに関連付けてセーブポイント情報を記憶する(ステップS13)。例えば、
図16(1)に示す例では、セーブポイントとしてA点とB点が登録される。
【0135】
また、学習走行清掃を実行している間に、所定の中断条件を満たした場合、例えば、データ設定画面40の学習中断ボタン49が操作された場合や、
図14(1)に示すように、自律走行作業装置1が壁面に接近して障害物センサ7aが接近を検知して走行エラーが検出された場合、学習制御部21は、学習走行清掃を中断する(ステップS14)。なお、学習走行清掃の中断時に、自律走行作業装置1は所定の中断位置に配置されている。
【0136】
学習走行清掃を中断した後、第1動作例と同様にして、逆再現制御部25は逆再現走行を実行する。この第2動作例では、セーブポイントとしてA点とB点が登録されているので、逆再現画面60には、セーブポイント表示ボタン63が表示される。このセーブポイント表示ボタン63が操作されると、逆再現画面60には、
図10(1)、
図10(2)に示すように、A点とB点のセーブポイントに対応するセーブポイント項目64が一覧表示される。ここで、A点のセーブポイント項目64が再開位置として選択操作されると(ステップS15)、A点のセーブポイント項目64が強調表示される。
【0137】
逆再現走行を実行して自律走行作業装置1がA点のセーブポイントに接近や配置すると、逆再現制御部25は、その旨を操作者に報知することで、自律走行作業装置1がA点のセーブポイントにされるように、逆再現走行を案内する(ステップS16)。自律走行作業装置1がA点のセーブポイントを再開位置として配置されているときに、逆再現画面60の逆再現完了ボタン62が操作されると、逆再現制御部25は、逆再現走行を完了する。
【0138】
そして、第1動作例と同様にして、A点のセーブポイントを再開位置として、学習走行清掃が再開され(ステップS17)、操作者は、
図16(2)に示すように、A点のセーブポイントから、前回と異なる分岐に進行するように学習走行清掃を行う。また、学習走行清掃が中断されずに、学習走行清掃を完了すると(ステップS18:Yes)、清掃プラン作成部24が清掃プランを作成して記憶部11に記憶する(ステップS19)。
【0139】
上記のように、本実施形態によれば、学習走行清掃(学習走行作業)を実行して走行データおよび清掃データ(作業データ)を記憶する学習モードと、走行データおよび清掃データに基づいて自動走行清掃(自動走行作業)を実行する自動モードとを切り替え可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を清掃エリア(作業エリア)内で走行させる走行部3と、走行部3が装置本体2を走行させる走行経路上で清掃(作業)を行う清掃部5(作業部)とを備える。また、自律走行作業装置1は、学習走行清掃を実行する間、走行部3の手動走行時の走行データおよび清掃部5の手動清掃時(手動作業時)の清掃データを取得して記憶する学習制御部21と、学習走行清掃を完了するとき、走行データおよび清掃データからなる清掃プラン(作業プラン)を作成する清掃プラン作成部24(プラン作成部)と、自動走行清掃を実行する間、清掃プランの走行データおよび清掃データに基づいて走行部3および清掃部5を制御して自律走行および自動清掃(自動作業)をそれぞれ行う再現制御部26と、走行部3を制御して装置本体2の逆再現走行を実行する逆再現制御部25とを備える。学習制御部21は、学習走行清掃の実行中に、走行経路上の所定の中断位置で所定の中断条件を満たした場合に、学習走行清掃を中断する。逆再現制御部25は、学習走行清掃を中断している間、中断位置以前の走行データに基づいて装置本体2の逆再現走行を実行する。逆再現制御部25が所定の再開位置で逆再現走行を完了した後、学習制御部21は、学習走行清掃を再開する場合、再開位置から中断位置までの走行データ、または走行データおよび清掃データに代えて、再開した学習走行清掃によって取得した走行データ、または走行データおよび清掃データを記憶する。
【0140】
このような構成により、自律走行作業装置1では、学習走行清掃の途中で、操作者の意図に合わない走行データや清掃データを取得してしまった場合には、簡易な手法で学習走行清掃を部分的にやり直すことができ、学習走行清掃を開始位置からやり直す必要がなく、操作者の手間を省くことができる。そのため、自律走行作業装置1では、簡易な手法で、操作者の意図する走行データおよび清掃データを適切に取得することができる。
【0141】
本実施形態では、学習制御部21は、操作者によるデータ設定画面40の学習中断ボタン49の操作(学習走行清掃の中断操作)を中断条件とするとよい。
【0142】
このような構成により、操作者が学習走行清掃のやり直しを所望する場合には、簡易な手法で学習走行清掃を中断して、速やかに逆再現走行に移行することができる。
【0143】
また、本実施形態では、学習制御部21は、学習走行清掃における走行エラーまたは清掃エラー(作業エラー)の検出を中断条件とし、学習走行清掃を中断した後、逆再現走行を実行可能な逆再現モードを自動的に設定するするとよい。
【0144】
このような構成により、走行エラーや清掃エラーを回避するために学習走行清掃のやり直しが必要な場合には、操作者に手間をかけることなく学習走行清掃を中断して、速やかに逆再現走行に移行することができる。
【0145】
本実施形態では、学習制御部21は、学習走行清掃の実行中に、走行経路に沿った複数のステップで走行データおよび清掃データを取得すると共に、ステップに関連付けて走行データおよび清掃データを記憶する。自律走行作業装置1は、学習走行清掃の実行中に、学習制御部21が走行データおよび清掃データを記憶した所定のステップに関連付けて、セーブポイントを登録するセーブポイント登録部23を備える。そして、逆再現制御部25は、セーブポイントが再開位置となるように装置本体2を逆再現走行させるとよい。
【0146】
このような構成により、学習走行清掃を進める上で操作者に複数の選択肢がある箇所では、予めセーブポイントを登録しておくことにより、学習走行清掃のやり直しによって選択肢を選択し直すことができる。これにより、操作者に手間をかけることなく、最適な走行経路を実現する学習走行清掃を行うことができる。
【0147】
本実施形態では、セーブポイント登録部23は、操作者によるセーブポイント登録ボタン52の操作(セーブポイントの登録操作)を受け付けたときの自律走行作業装置1の位置に対応するステップに関連付けて、セーブポイントを登録するとよい。
【0148】
このような構成により、操作者に手間をかけることなく、簡易な手法でセーブポイントを登録することができ、セーブポイントの利用を促進することで、より最適な走行経路を実現する学習走行清掃を行うことができる。
【0149】
また、本実施形態では、セーブポイント登録部23は、学習走行清掃における走行エラーまたは清掃エラーの検出時の該自律走行作業装置1の位置の直前のステップに関連付けて、セーブポイントを登録するとよい。
【0150】
このような構成により、走行エラーや清掃エラーを回避するために学習走行清掃のやり直しが必要な場合には、操作者に手間をかけることなく、走行エラーや清掃エラーの発生する前の位置にセーブポイントを設定するので、セーブポイントを利用することで、走行エラーや清掃エラーが発生しない最適な走行経路を実現する学習走行清掃を行うことができる。
【0151】
本実施形態では、セーブポイント登録部23は、学習走行清掃の実行中に、所定の登録禁止条件を満たす場合には、セーブポイントの登録を規制するとよい。
【0152】
このような構成により、例えば、自律走行作業装置1の周囲環境が、計測部6によって計測し難い環境であったり、自律走行作業装置1が旋回走行や回避走行を行っていたり、走行操作部4やデータ設定画面40の操作によって走行動作や清掃動作を変更していたりする場合には、自己位置を正確に推定できない可能性があるため、セーブポイントの登録を規制するとよい。これにより、操作者の意図から外れてセーブポイントが登録されることがないので、セーブポイントの利用上の不具合を抑制することができる。
【0153】
本実施形態では、逆再現制御部25は、操作者による走行部3の操舵操作を規制して学習走行清掃の中断時の自律走行作業装置1の向きを維持しつつ、操作者による走行部3の前進操作または後退操作に応じて走行部3を前進または後退させるとよい。
【0154】
このような構成により、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの走行データに基づく走行経路が直線である場合に、より簡易に逆再現走行を行うことができる。
【0155】
また、本実施形態では、逆再現制御部25は、中断位置以前の走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、操作者による走行部3の前進操作または後退操作に応じて走行部3を前進または後退させると共に、逆再現データに応じて走行部3を旋回させるとよい。
【0156】
このような構成により、逆再現走行を行う中断位置から再開位置までの走行データに基づく走行経路が長距離であったり、コーナーや分岐等に沿った曲線を含む場合、即ち、走行データの旋回速度が変化する場合に、操作者の手間をかけることなく、逆再現走行を行うことができる。
【0157】
また、本実施形態では、逆再現制御部25は、中断位置以前の走行データを逆に辿る逆再現データを作成し、自律走行作業装置1の向きを学習走行清掃の中断時の向きから方向転換して逆向きにした後、操作者による走行部3の前進操作または後退操作に応じて走行部3を前進または後退させると共に、逆再現データに応じて走行部3を旋回させ、更に、自律走行作業装置1の向きを再度方向転換して学習走行清掃の中断時の向きに戻すとよい。
【0158】
このような構成により、自律走行作業装置1の前進によって逆再現走行を行うので、逆再現走行を操作する操作者の危険を低減することができる。また、中断位置から再開位置までの走行データに基づく走行経路が長距離であったり、コーナーや分岐等に沿った曲線を含む場合、即ち、走行データの旋回速度が変化する場合に、操作者の手間をかけることなく、逆再現走行を行うことができる。
【0159】
また、本実施形態では、学習制御部21は、学習走行清掃における清掃エラーを検出して学習走行清掃を中断した後、学習走行清掃を再開する場合には、清掃エラーを回避するように自動的に清掃部5を制御する。
【0160】
このような構成により、清掃エラーが繰り返し発生することを抑制することができる。
【0161】
本発明は、自律走行作業装置1の中断位置から再開位置までの走行データに必ずしも作業データが対応して記録されておらず、逆再現走行後に走行データのみを記録し直す構成であっても、本発明の権利範囲に含まれることは言うまでもない。
【0162】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、自律的に走行し自動で作業することが可能な自律走行作業装置とそれと一体的に構成した業務用の自動床面洗浄・清掃装置等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0164】
1 自律走行作業装置
2 装置本体
3 走行部
5 清掃部(作業部)
10 制御部
11 記憶部
12 清掃部材
13 洗浄液供給部
14 吸引部
20 モード切替部
21 学習制御部
22 地図作成部
23 セーブポイント登録部
24 清掃プラン作成部
25 逆再現制御部
26 再現制御部