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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20231108BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
F01N3/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019144792
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021025331
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友昭
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031160(JP,A)
【文献】特開2016-151133(JP,A)
【文献】米国特許第04323166(US,A)
【文献】再公表特許第2018/179342(JP,A1)
【文献】特開2001-163069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、
前記上部旋回体の一部を構成する旋回フレームと、
前記旋回フレームに搭載される液体還元剤用タンクと、
前記液体還元剤用タンクの上部に取り付けられるフィラーと、
前記フィラーの下方に位置する液面規制部材と
を備え、
前記フィラーは、前記液体還元剤用タンクの外部に設けられるとともに、筒状の本体部と、前記本体部の下端部の外周縁部から外側に拡大して設けられるベース部と、を有し、
前記液面規制部材は、弾性体であり、前記液体還元剤用タンクの内部に設けられる筒部と、前記筒部の上端部の外周縁部から外側に拡大して設けられるつば部と、を有し、
前記ベース部は、前記つば部と密着した状態で前記液体還元剤用タンクの外面に取り付けられ、
前記液面規制部材は、前記液体還元剤用タンクと前記フィラーとの設置面をシールする、
ショベル。
【請求項2】
記ベース部が、前記設置面に固定され、
記つば部が、前記設置面と前記ベース部との間に挟持されることにより、前記設置面をシールする、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記液面規制部材は、当該液面規制部材が傾斜した際に弾性変形しない、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記ベース部の外径は、前記つば部の外径よりも大きい、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記フィラーの前記本体部は、前記液面規制部材の前記筒部の延在方向と同じ方向に延在する第1の部分と、前記液面規制部材の前記筒部の延在方向とは異なる方向に延在する第2の部分とを有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項6】
前記液面規制部材の前記筒部の延在方向は、前記液体還元剤用タンク内の液体還元剤の液面に対して垂直な方向である、
請求項5に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショベルが備える液体還元剤用タンクの上部には、尿素水などの液体還元剤を液体還元剤用タンク内に導くためのフィラーが取り付けられている。従来のフィラーは、液体還元剤用タンク内に突出した筒状の凸部が一体的に形成されており、当該凸部の下端部によって、液体還元剤用タンク内における液体還元剤の液面の高さ位置を規制できるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-541588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィラーの凸部の下端部まで液体還元剤が給水されている状態で、液体還元剤が凍結した場合、液体還元剤が膨張することにより、液体還元剤の凍結した液面によってフィラーの凸部の下端部が押し上げられる。この場合、フィラーが液体還元剤用タンクの上面にネジ止め固定されているため、フィラーのネジ止め固定部に荷重が集中して、当該ネジ止め固定部に亀裂が生じる虞がある。また、この場合、フィラーが押し上げられることにより、フィラーの設置面と液体還元剤用タンクの上面との隙間が増大し、当該隙間におけるOリングによるシール性が低下して、当該隙間から液体還元剤が漏れ出す虞がある。
【0005】
本開示は、尿素水等の液体還元剤の凍結によってフィラーが押し上げられてしまうことを抑制できるショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るショベルは、上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記上部旋回体の一部を構成する旋回フレームと、前記旋回フレームに搭載される液体還元剤用タンクと、前記液体還元剤用タンクの上部に取り付けられるフィラーと、前記フィラーの下方に位置する液面規制部材とを備え、前記フィラーは、前記液体還元剤用タンクの外部に設けられ、筒状の本体部と、前記本体部の下端部の外周縁部から外側に拡大して設けられるベース部と、を有し、前記液面規制部材は、弾性体であり、前記液体還元剤用タンクの内部に設けられる筒部と、前記筒部の上端部の外周縁部から外側に拡大して設けられるつば部と、を有し、前記ベース部は、前記つば部と密着した状態で前記液体還元剤用タンクの外面に取り付けられ、前記液面規制部材は、前記液体還元剤用タンクと前記フィラーとの設置面をシールする。
【発明の効果】
【0007】
尿素水等の液体還元剤の凍結によってフィラーが押し上げられてしまうことを抑制できるショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るショベルの側面図である。
図2図1のショベルの上部旋回体を概略的に示す上面図である。
図3図1のショベルに搭載される排気ガス処理装置の構成例を示す図である。
図4】ショベルの右側前部を左斜め上方から見た斜視図である。
図5】上部旋回体の右側前部を右側から見た側面図である。
図6】尿素水タンクの縦断面図である。
図7】フィラーおよび液面規制部材の分解斜視図である。
図8】尿素水タンクにおけるフィラーの取り付け部の拡大断面図である。
図9】変形例のショベルにおける尿素水タンクの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
なお、以下の説明において、X軸正方向およびX軸負方向は、ショベル100の前方および後方である。また、Y軸正方向およびY軸負方向は、ショベル100の左方および右方である。また、Z軸正方向およびZ軸負方向は、ショベル100の上方および下方である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るショベル100の側面図である。図1に示すように、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体2、キャビン3、ブーム4、アーム5、およびバケット6を備える。
【0012】
上部旋回体2は、旋回機構(図示せず)を介して、下部走行体1に搭載される。キャビン3は、上部旋回体2の左側前部に設けられている。キャビン3は、内部に運転席が設けられている。ブーム4は、上部旋回体2の前部中央に回動可能に設けられている。アーム5は、ブーム4の先端部に回動可能に設けられている。バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端部に回動可能に設けられている。
【0013】
図2は、図1のショベル100の上部旋回体2を概略的に示す上面図である。図2に示すように、上部旋回体2には、エンジンルーム7が形成されている。エンジンルーム7内には、ディーゼルエンジン8(「エンジン」の一例)が設置されている。また、ディーゼルエンジン8の左側(Y軸正側)には、冷却ファン12が設置されている。また、冷却ファン12の左側(Y軸正側)には、ラジエータ等を含む熱交換機ユニット13が設置されている。
【0014】
また、ディーゼルエンジン8は、エンジンルーム7の外部に設置されたエアフィルタ9aおよび吸気管9bを通じて、外気を吸入する。さらに、ディーゼルエンジン8には、排気管9cが接続されている。排気管9cの下流側には、ディーゼルエンジン8から排出される排気ガス中の窒素酸化物(以下、NOxという)を浄化する排気ガス処理装置10が設置されている。
【0015】
本実施形態では、排気ガス処理装置10は、還元剤として尿素水を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置である。排気ガス処理装置10は、排気管9cに備えられた還元触媒(図示せず)の上流側に尿素水を噴射して排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を還元し、この還元反応を還元触媒により促進してNOxを無害化する。
【0016】
上部旋回体2の右側且つエンジンルーム7の前側には、前側から順に、尿素水タンク20、燃料タンク19、および作動油タンク18が並べて設けられている。尿素水タンク20(「液体還元剤用タンク」の一例)は、尿素水を蓄えるための容器である。尿素水タンク20は、尿素水ホース69および尿素水供給ポンプ70を介して、排気ガス処理装置10に接続されている。
【0017】
図3は、図1のショベル100に搭載される排気ガス処理装置10の構成例を示す図である。ディーゼルエンジン8は、エンジンコントロールモジュール(以下、「ECM」とする)60により制御される。
【0018】
エアフィルタ9aを通じて吸気管9b内に導入された空気は、ターボチャージャ61及びインタークーラ65等を通過してディーゼルエンジン8に供給される。そして、ディーゼルエンジン8からの排気ガスは、ターボチャージャ61を経た後にその下流の排気管9cに至り、排気ガス処理装置10により浄化処理が行われた後で大気中に排出される。
【0019】
排気管9cには、排気ガス中の粒子状物質を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ66と、排気ガス中のNOxを還元除去する選択還元触媒67とが直列に設けられている。
【0020】
選択還元触媒67は、還元剤の供給を受けて排気ガス中のNOxを連続的に還元除去する。本実施形態では取扱いの容易さから還元剤として尿素水(尿素水溶液)が用いられる。
【0021】
排気管9cにおける選択還元触媒67の上流側には、選択還元触媒67に尿素水を供給するための尿素水噴射装置68が設けられている。尿素水噴射装置68は、尿素水ホース69を介して尿素水タンク20に接続されている。
【0022】
また、尿素水ホース69の中間にはサプライモジュールSMが設けられる。サプライモジュールSMは、尿素水供給ポンプ70及びフィルタ71を含む。本実施形態では、サプライモジュールSMは、尿素水タンク20と尿素水供給ポンプ70との間にフィルタ71が配置されるように構成される。
【0023】
尿素水タンク20内に貯留された尿素水は、尿素水供給ポンプ70により尿素水噴射装置68に供給され、尿素水噴射装置68から排気管9cにおける選択還元触媒67の上流位置に噴射される。
【0024】
尿素水噴射装置68から噴射された尿素水は選択還元触媒67に供給される。供給された尿素水は、選択還元触媒67内において加水分解されてアンモニアを生成する。このアンモニアが選択還元触媒67内で排気ガスに含まれるNOxを還元する。このようにして排気ガスの浄化が行われる。
【0025】
第1NOxセンサ72及び第2NOxセンサ73は、排気ガス内のNOx濃度を検出するセンサである。本実施形態では、第1NOxセンサ72は尿素水噴射装置68の上流側に配置され、第2NOxセンサ73は選択還元触媒67の下流側に配置される。
【0026】
尿素水残量センサ74は、尿素水タンク20内の尿素水残量を検出するセンサである。本実施形態では、尿素水残量センサ74は、タンク内部で上下方向に移動可能に設置され液面に浮かぶフロートの位置に基づいて尿素水残量を検出する所謂フロート式のセンサであるが、他の方式のものを用いてもよい。尿素水残量センサ74は、排気ガスコントローラ75に尿素水残量の情報を出力する。
【0027】
尿素品質センサ25は、尿素水タンク20内の尿素水の品質を検出するセンサである。尿素品質センサ25は、排気ガスコントローラ75に尿素品質の情報を出力する。
【0028】
第1NOxセンサ72、第2NOxセンサ73、尿素水残量センサ74、尿素品質センサ25、尿素水噴射装置68、及び尿素水供給ポンプ70は、排気ガスコントローラ75に接続されている。排気ガスコントローラ75は、第1NOxセンサ72及び第2NOxセンサ73のそれぞれで検出されるNOx濃度に基づき、尿素水噴射装置68及び尿素水供給ポンプ70を制御して適正量の尿素水が噴射されるようにする。
【0029】
また、排気ガスコントローラ75は、尿素水残量センサ74から出力される尿素水残量に基づき、尿素水タンク20の全容積に対する尿素水残量の割合を算出する。本実施形態では、尿素水タンク20の全容積に対する尿素水残量の割合を尿素水残量比とする。例えば、尿素水残量比50%は、尿素水タンク20の容量の半分の尿素水が尿素水タンク20内に残存していることを表す。
【0030】
排気ガスコントローラ75は通信手段を介してECM60と接続されている。また、ECM60は通信手段を介してショベルコントローラ76に接続され、ショベルコントローラ76は通信手段を介してモニター77に接続されている。モニター77には、警告、運転状態等が表示される。
【0031】
なお、排気ガスコントローラ75はDCU(Dosing Control Unit)、ECM60はECU(Engine Control Unit)、ショベルコントローラ76はMCU(Main Control Unit)とも呼ぶことができる。
【0032】
排気ガスコントローラ75が有している排気ガス処理装置10に関する各種情報は、ショベルコントローラ76が共有し得る構成となっている。なお、ECM60、排気ガスコントローラ75、及びショベルコントローラ76はそれぞれ、CPU、RAM、ROM、入出力ポート、記憶装置等を含む演算装置である。
【0033】
また、排気ガス処理装置10は、尿素水タンク20及び尿素水ホース69に熱を供給する熱供給機能を有する。熱供給機能は、例えば、寒冷地での尿素水の凍結を防止するため、或いは、凍結した尿素水を溶解するために実行される。本実施形態では、冷却水ホース80を通過するディーゼルエンジン8のエンジン冷却水(例えばロング・ライフ・クーラント)を利用する。
【0034】
具体的には、ディーゼルエンジン8を冷却した直後のエンジン冷却水は、比較的高い温度を維持しながら、冷却水ホース80の第1部分81を通って第2部分82に至る。第2部分82は尿素水タンク20の外面に接する冷却水ホース80の一部である。尿素水より高温のエンジン冷却水は第2部分82を流れるときに尿素水タンク20及びその内部にある尿素水に熱を供給する。
【0035】
その後、エンジン冷却水は第3部分83及びサプライモジュールSMに至る。第3部分83は尿素水ホース69に密着する冷却水ホース80の一部である。尿素水より高温のエンジン冷却水は尿素水ホース69に沿う冷却水ホース80の第3部分83を流れるときに尿素水ホース69及びその内部にある尿素水に熱を供給する。また、尿素水より高温のエンジン冷却水は、サプライモジュールSM内に形成された流路を流れるときにサプライモジュールSM(尿素水供給ポンプ70及びフィルタ71を含む)並びにその内部にある尿素水に熱を供給する。
【0036】
その後、第2部分82及び第3部分83での熱の供給を終えて比較的低い温度となったエンジン冷却水は冷却水ホース80の第4部分84を通って熱交換機ユニット13(図2参照)に至る。第4部分84は第3部分83及び第5部分85と熱交換機ユニット13との間に配索される冷却水ホース80の一部であり、尿素水ホース69には密着しない。
【0037】
なお、第5部分85は、尿素水噴射装置68を冷却するために用いられる冷却水ホース80の一部である。高温状態の尿素水噴射装置68よりも低温のエンジン冷却水は第5部分85を流れるときに高温状態の尿素水噴射装置68から熱を奪い尿素水噴射装置68を冷却してその過熱を防止する。その後、熱の供給を受けて比較的高い温度となった(尿素水より高温の)エンジン冷却水は、尿素水ホース69に沿う部分85aを流れるときに尿素水ホース69及びその内部にある尿素水に熱を供給する。尿素水噴射装置68が低温状態にある場合には、低温状態の尿素水噴射装置68よりも高温のエンジン冷却水は第5部分85を流れるときに尿素水噴射装置68及びその内部にある尿素水に熱を供給する。その後、部分85aでの熱の供給を終えて比較的低い温度となったエンジン冷却水は、第3部分83を流れてきたエンジン冷却水と合流した後で第4部分84を通って熱交換機ユニット13に至る。
【0038】
このようにして、熱供給機能は、エンジン冷却水を利用して尿素水タンク20、尿素水ホース69、サプライモジュールSM、及び尿素水噴射装置68に熱を供給し、それらの内部にある尿素水の凍結を防止し、或いは、凍結した尿素水を溶解する。
【0039】
次に、図4及び図5を参照し、上部旋回体2の右側前部の詳細について説明する。図4はショベル100の右側前部を左斜め上方から見た斜視図である。図5は上部旋回体2の右側前部を右側から見た側面図である。なお、図5は昇降設備30の内部を透過的に示す。
【0040】
昇降設備30は、作業者が上部旋回体2を昇降する際に用いる構造物である。本実施形態では、昇降設備30は燃料タンク19の前方に配置され、尿素水タンク20及び収納部21を覆う。
【0041】
燃料タンク19はディーゼルエンジン8の燃料が貯留されるタンクであり、上部旋回体2の一部(底板)を構成する旋回フレーム31に強固に固定されている。また、燃料タンク19の下には燃料タンク用アンダーカバー31vが取り付けられる。燃料タンク用アンダーカバー31vは外側(底側)からアクセス可能なボルト等の締結部材によって旋回フレーム31に締結固定される。
【0042】
尿素水タンク20は、SCRシステム(選択還元触媒システム)で用いられる液体還元剤としての尿素水溶液が貯留されるタンクであり、旋回フレーム31に強固に固定されている。また、尿素水タンク20の下には尿素水タンク用アンダーカバー31wが取り付けられる。尿素水タンク用アンダーカバー31wは、燃料タンク用アンダーカバー31vと同様、外側(底側)からアクセス可能なボルト等の締結部材によって旋回フレーム31に締結固定される。なお、エンジンの下に取り付けられるエンジン用アンダーカバー(図示せず)、ラジエータの下に取り付けられるラジエータ用アンダーカバー(図示せず)等も同様に外側(底側)からアクセス可能なボルト等の締結部材によって旋回フレーム31に締結固定される。
【0043】
収納部21は収納スペースを区切る部材の集合であり、例えば、集合して箱、容器、仕切り等の形をとる。本実施形態では、収納部21は上部旋回体2においてブーム4を挟んでキャビン3の反対側に配置される。また、収納部21は昇降設備30と旋回フレーム31によって区切られる収納スペース21aを有する。収納スペース21aには、例えば、メンテナンス時に使用される工具類、給油用ポンプ等の収納物21bが収納される。また、収納部21の下には底板32が取り付けられる。ここで、収納スペース21aと尿素水タンク20が配置される空間との間は、板によって区切られてもよいし、板を設けずに空間が繋がっていてもよい。
【0044】
図4に示すように、上部旋回体2の旋回フレーム31の前方には左右一対のブーム取り付け用の支持ブラケット17が立設される。また、支持ブラケット17の右側には燃料タンク19及び昇降設備30が配置される。また、昇降設備30の外側には作業者が昇降設備30を昇降する際に把持する手摺33が設けられる。
【0045】
昇降設備30は、第1昇降部30Aと第2昇降部30Bを有する。第1昇降部30Aは、作業者が昇降するステップとして機能すると共に、尿素水タンク20を覆うカバー、及び収納部21の一部としても機能する。第2昇降部30Bは昇降設備30の最下段に位置する。第2昇降部30Bは金属製であり、旋回フレーム31に固定される。また、第2昇降部30Bは旋回フレーム31の前端部分から前方に突出した構成を有する。
【0046】
また、昇降設備30は第1昇降部30Aにおける2つの踏板部44、45及び2つの蹴込板部48、49と第2昇降部30Bとを含む3段構造を有する。なお、第1昇降部30Aに設ける踏板部の数は2つに限定されるものではない。
【0047】
また、踏板部44は開閉可能な開閉部として構成される。本実施形態では踏板部44は図5で示すように上開きとなるように構成される。作業者は、踏板部44を開くことで収納部21に対して工具等を出し入れできる。また、踏板部44は鍵44aで施錠可能である。
【0048】
また、蹴込板部49は開閉可能な開閉部として構成される。本実施形態では蹴込板部49は横開きとなるように構成される。作業者は、蹴込板部49を開くことで尿素水タンク20のフィラー22にアクセスできる。
【0049】
次に、図6を参照し、尿素水タンク20の構造の詳細について説明する。図6は、尿素水タンク20の縦断面図である。
【0050】
尿素水タンク20は樹脂製であり、略直方体形状を有する。尿素水タンク20は、タンク上面20a、タンク底面20b、タンク前面20c、タンク後面20d、および一対のタンク側面(図示省略)を有して構成されている。
【0051】
タンク上面20aには、給液口20hが形成されている。この給液口20hには、フィラー22が上方に突出して設けられている。また、この給液口20hには、液面規制部材24が尿素水タンク20内に突出して設けられている。フィラー22は、尿素水を尿素水タンク20に補給する際に、尿素水を尿素水タンク20の給液口20hに導く。フィラー22は、固定ネジ22cによって、タンク上面20aにネジ止め固定されている。フィラー22の上端部には、ストレーナ28が、固定ネジ28aによってネジ止め固定されている。ストレーナ28の上部開口には、フィラーキャップ23が着脱可能に設けられる。ストレーナ28は、フィルタ28Aを有する。フィルタ28Aは、フィラー22の内径より小さい外径の略円筒形状を有し、フィラー22の筒内に配置される。フィルタ28Aは、ストレーナ28の上部開口から注入された尿素水に含まれる異物を除去する。これにより、フィルタ28Aは、尿素水タンク20の内部への異物の混入を抑制することができる。液面規制部材24は、尿素水を尿素水タンク20内に導くとともに、尿素水タンク20内に補充された尿素水の液面の高さ位置を規制する。尿素水は、フィラー22および液面規制部材24を介して、給液口20hから尿素水タンク20内に補給される。なお、フィラー22および液面規制部材24の詳細については、図7および図8を用いて後述する。
【0052】
また、尿素水タンク20のタンク底面20bには、ドレインプラグ27が設けられている。ドレインプラグ27は、尿素水タンク20内に残留する尿素水を排水する際に取り外される。
【0053】
また、尿素水タンク20のタンク上面20aには、配管取付け口20i1,20i2が設けられている。配管取付け口20i1は、尿素水タンク20内の尿素水ホース69と繋がっており、尿素水タンク20外の尿素水ホース69が接続される。なお、実際には、タンク上面20aには、2つの配管取付け口20i1が設けられており、一方の配管取付け口20i1には、尿素水を尿素水タンク20から取り出すための尿素水ホース69が接続され、他方の配管取付け口20i1には、尿素水を尿素水タンク20に戻すための尿素水ホース69が接続される。配管取付け口20i2は、尿素水タンク20内の冷却水ホース80と繋がっており、尿素水タンク20外の冷却水ホース80が接続される。なお、実際には、タンク上面20aには、2つの配管取付け口20i2が設けられており、一方の配管取付け口20i2は、尿素水タンク20内の冷却水ホース80から尿素水タンク20内を循環した冷却水を排出するために用いられ、他方の配管取付け口20i2は、尿素水タンク20内の冷却水ホース80に尿素水タンク20内を循環する冷却水を送り込むために用いられる。
【0054】
尿素水残量センサ74は、配管取付け口20i1の直下の液面の位置を検出する。尿素水ホース69は、配管取付け口20i1から直下に延び、底部20bの中央で尿素水を吸い上げる。尿素水残量センサ74には配線74aが接続され、この配線74aが尿素水タンク20のタンク上面20aから外部に引き出されて、燃料タンク19の前面に固定された中継用ブラケット78(図5参照)を介して、排気ガスコントローラ75に接続される。
【0055】
冷却水ホース80の第2部分82は、配管取付け口20i1,20i2から直下に延び、タンク底面20b近傍で略直角に曲がり、タンク底面20bに沿って延びる。
【0056】
尿素品質センサ25は、冷却水ホース80の第2部分82における、タンク底面20bの近傍の部分に設置される。尿素品質センサ25には配線25aが接続され、この配線25aが尿素水タンク20のタンク上面20aから外部に引き出されて、燃料タンク19の前面に固定された中継用ブラケット78(図5参照)を介して、排気ガスコントローラ75に接続される。
【0057】
本実施形態では、尿素品質センサ25は、尿素水タンク20の内部の尿素水を解凍するための不凍液を通す配管(冷却水ホース80の第2部分82)の端部に配置される。これにより、尿素品質センサ25の周囲には常に液化した尿素水が存在する状態にできるので、尿素水の品質計測を安定して行うことができる。
【0058】
なお、図6(および後述する図8および図9)に示すように、尿素水残量センサ74およびレベルゲージ26において満水とされる満水位置A2は、図8を用いて後述する液面規制位置A1よりも僅かに下方にある。これにより、尿素水が液面規制位置A1に達する前に、尿素水残量センサ74およびレベルゲージ26によって満水を検知することができ、したがって、いつまでたっても満水を検知できないといった不具合を回避することができる。なお、満水位置A2は、液面規制位置A1と同位置であってもよい。
【0059】
次に、図7および図8を参照し、フィラー22および液面規制部材24の詳細について説明する。図7は、フィラー22および液面規制部材24の分解斜視図である。図8は、尿素水タンク20におけるフィラー22および液面規制部材24の取り付け部の拡大断面図である。図7および図8に示すように、フィラー22は、尿素水タンク20のタンク上面20aに形成されている給液口20hから、上方に突出して設けられる筒状の部材である。また、液面規制部材24は、給液口20hからタンク内に突出して設けられる筒状の部材である。
【0060】
フィラー22は、比較的硬質な材料(例えば、金属、樹脂等)が用いられて形成される。例えば、本実施形態では、フィラー22は、PA66+GF30(ポリアミド樹脂66%、グラスファイバ30%、その他4%)が用いられて形成されている。これにより、フィラー22は、尿素水タンク20よりも強度が高められている。例えば、尿素水タンク20は、フィラー22よりも低強度の、MDPE(中密度ポリエチレン)が用いられて形成される。また、図7に示すように、本体部22aの外周面の前部、左側部、右側部の各々には、本体部22aの強度を高めるためのリブ22eが設けられている。各リブ22eは、ベース部22bの上面から立設された板状の部分である。このように、フィラー22は、補給作業を行う作業者が直接触れる箇所であるため、より高強度となる形状および材質を有する。
【0061】
フィラー22は、本体部22aおよびベース部22bを有する。本体部22aは、尿素水を給液口20hに導く円筒状の部分である。本体部22aは、給液口20hから上方に垂直に延在する第1の部分22a1と、第1の部分の上端部から上方且つ前方に斜めに延在する第2の部分22a2とを有する。すなわち、フィラー22は、前方にある蹴込板部49を開いた状態で尿素水を給水し易くするために、前方に折れ曲がった形状を有している。
【0062】
また、図7に示すように、本体部22aの外周面の後部には、外側に突出した通気口22fが設けられている。通気口22fには、ホース(図示省略)が接続され、当該ホースを介して、ブリーザーフィルタ(図示省略)が接続される。これにより、通気口22fは、尿素水タンク20の内部を大気開放することができるとともに、尿素水タンク20の内部への異物混入を抑制することができる。
【0063】
ベース部22bは、本体部22aの下端部において、本体部22aの外周縁部から外側に拡大して設けられた部分である。ベース部22bには、当該ベース部22bを上下方向に貫通する複数の貫通孔22baが形成されている。ベース部22bの複数の貫通孔22baの各々に固定ネジ22cを上方から貫通させて、フィラー22は、当該固定ネジ22cによって、タンク上面20aに対してネジ止め固定される。
【0064】
ベース部22bの底面において、本体部22aの下部開口22gの周囲には、円環状に上方に凹んで形成された凹み部22dが形成されている。凹み部22dは、液面規制部材24のつば部24bが収容できるように、つば部24bの外径よりも大きい内径を有する。これにより、凹み部22dは、フィラー22が尿素水タンク20のタンク上面20aに取り付けられたときに、フィラー22のベース部22bの底面と、尿素水タンク20のタンク上面20aとの間に、液面規制部材24のつば部24bを収容するための空間を形成する。
【0065】
ベース部22bの底面において、凹み部22dの周囲には、複数の肉抜き部22kが、同一円周上に並べて形成されている。複数の肉抜き部22kの各々は、ベース部22bの底面に対し、上方に凹んで形成された部分である。複数の肉抜き部22kの各々は、主に、フィラー22を製造する際に、ベース部22bにおけるヒケ(材料の収縮による凹み、窪み等)の発生を抑制するために設けられている。すなわち、ベース部22bは、複数の肉抜き部22kが形成されることによって、ヒケの発生が抑制されることにより、ベース部22bと尿素水タンク20のタンク上面20aとの接合部における、水漏れ等の不具合の発生を抑制できるものとなっている。
【0066】
本体部22aの上端部には、フランジ22hが設けられている。フランジ22hは、本体部22aの外周縁部から外側に拡大して設けられた板状の部分である。フランジ22hには、複数の収容部22jが設けられている。各収容部22jは、上部が開口した空間であり、当該空間内にナットが収容される。すなわち、フランジ22hには、複数のナットが埋め込まれる。
【0067】
フィラー22の上端部にストレーナ28を取り付ける際には、フランジ22hの表面にストレーナ28の下端部に設けられたフランジ部の底面を密着させた状態で、フランジ22hに埋め込まれた複数のナットの各々に対して、ストレーナ28のフランジ部を貫通する複数の固定ネジ28aの各々を螺合させる。これにより、フランジ22hに対して、ストレーナ28がネジ止め固定される。
【0068】
フランジ22hの底面には、複数のリブ22iが設けられている。複数のリブ22iの各々は、フランジ22hの底面と、本体部22aまたはリブ22eとを連結する板状の部分である。複数のリブ22iの各々は、主に、フランジ22hの平面度を高めるために設けられている。
【0069】
液面規制部材24は、給液口20hから尿素水タンク20内に下方に突出して設けられる。液面規制部材24は、筒部24aおよびつば部24bを有する。筒部24aは、給液口20hを貫通して設けられる、円筒状の部分である。筒部24aは、尿素水を尿素水タンク20の内部に導くとともに、尿素水タンク20内に補充された尿素水の液面の高さ位置を規制する。
【0070】
つば部24bは、筒部24aの上端部において、筒部24aの外周縁部から外側に拡大して設けられた円環状且つ板状の部分である。つば部24bは、尿素水タンク20のタンク上面20aにおいて、給液口20hの周縁部に沿って配置される。つば部24bは、フィラー22がタンク上面20aに取り付けられたとき、フィラー22のベース部22bの底面に形成された凹み部22d内に収容される。ここで、つば部24bの厚さは、凹み部22dの深さよりも大きくなっている。また、後述するように、液面規制部材24が弾性体であるため、つば部24bは、弾力性を有する。これにより、つば部24bは、凹み部22d内において、ベース部22bにおける凹み部22dの上側の壁面と、尿素水タンク20のタンク上面20aとによって適度に押し潰される。その結果、つば部24bは、ベース部22bにおける凹み部22dの上側の壁面と、尿素水タンク20のタンク上面20aとにより強固に密着し、給液口20hの周囲から尿素水タンク20の外部に尿素水が漏れ出さないように、給液口20hの周囲をより確実にシールすることができる。
【0071】
作業者は、フィラーキャップ23をフィラー22から取り外し、フィラー22の上部開口から尿素水を注入する。これにより、尿素水は、フィラー22および液面規制部材24を介して、尿素水タンク20内に補充される。
【0072】
尿素水タンク20内における尿素水の液面の高さ位置は、液面規制部材24によって、所定の液面規制位置A1(図8参照)に規制される。これにより、例えば、尿素水タンク20内の尿素水が凍結して膨張した場合であっても、この膨張による尿素水タンク20の破損を防止できる。具体的には、尿素水タンク20内に空気が存在しない場合、尿素水が凍ると体積が膨張し、尿素水タンク20も膨張するため、尿素水タンク20が破損する虞がある。そこで、尿素水の液面の高さ位置を規制して、尿素水が膨張する分を考慮した十分な上部空間を確保しておくことで、尿素水が凍結して膨張した場合であっても、上部空間に尿素水が膨張するため、尿素水タンク20が膨張および破損しないようにすることができる。
【0073】
液面規制部材24は、尿素水タンク20内において、尿素水が液面規制位置A1まで給水されたとき、液面規制部材24の筒部24aの下端部24cが尿素水で塞がれる。これにより、尿素水タンク20内の空気が液面規制部材24を介して外部に逃げることができなくなるため、尿素水の液面は、液面規制位置A1以上上昇しなくなる。したがって、液面規制部材24を製造する際、液面規制部材24の筒部24aの長さ寸法は、給液口20hから液面規制位置A1までの距離に応じたものとする必要がある。なお、尿素水の液面が液面規制位置A1に達しているにも関わらず、尿素水をさらに補充した場合、尿素水の液面は、液面規制部材24の筒部24aの筒内で上昇する。
【0074】
ここで、液面規制部材24は、弾性素材が用いられて形成されている。例えば、本実施形態では、液面規制部材24は、弾性素材の一例として、尿素水に対する耐性を有する、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)が用いられて形成されている。但し、これに限らず、液面規制部材24は、他の弾性素材が用いられて形成されてもよい。この場合も、液面規制部材24は、少なくとも尿素水の凍結した液面によって突き上げられたときに弾性変形可能であり、且つ、尿素水に対する耐性を有する素材が用いられることが好ましい。
【0075】
これにより、液面規制部材24は、尿素水タンク20内で尿素水が凍結および膨張し、尿素水の凍結した液面によって下端部が突き上げられたとき、例えば、上下方向に押し潰されて中腹部分が外側に広がるように弾性変形する。これにより、液面規制部材24は、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重を吸収することができる。このため、液面規制部材24は、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重が、当該液面規制部材24を介してフィラー22に加わることを抑制することができ、したがって、フィラー22の破損を抑制したり、フィラー22の設置面のシール性の低下を抑制したりすることができる。なお、液面規制部材24は、尿素水の凍結した液面による突き上げが解消したとき、自身の弾性力により、元の弾性変形していない状態(すなわち、下端位置が液面規制位置A1にある状態)に復帰して、尿素水の液面を液面規制位置A1に規制することができる。
【0076】
なお、図8に示すように、フィラー22の本体部22aの下部開口22gの内径は、液面規制部材24の筒部24aの上部開口の内径よりも小さくなっている。これにより、フィラー22が尿素水タンク20の上部に取り付けられたとき、貫通孔22baの内径が固定ネジ22cのネジ径よりも大きいことに起因して、フィラー22の取り付け誤差が生じた場合であっても、フィラー22の本体部22aの下部開口22gが、液面規制部材24の筒部24aの上部開口の範囲内に収まるようになっている。
【0077】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るショベル100は、上部旋回体2と、上部旋回体2に搭載されるディーゼルエンジン8と、上部旋回体2の一部を構成する旋回フレーム31と、旋回フレーム31に搭載される尿素水タンク20と、尿素水タンク20の上部に取り付けられるフィラー22と、フィラー22の下方に位置する液面規制部材24とを備え、液面規制部材24は、弾性素材が用いられて形成されている。
【0078】
これにより、本発明の一実施形態に係るショベル100は、尿素水の凍結した液面によって液面規制部材24の下端部が突き上げられたとき、当該液面規制部材24が弾性変形することによって、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重を吸収することができる。したがって、本発明の一実施形態に係るショベル100によれば、尿素水等の液体還元剤の凍結によってフィラー22が押し上げられてしまうことを抑制できる。
【0079】
また、本発明の一実施形態に係るショベル100において、液面規制部材24は、上端部に尿素水タンク20とフィラー22との設置面をシールするつば部24bを有する。
【0080】
これにより、本発明の一実施形態に係るショベル100は、Oリングなどのシール部材を別に設けることなく、尿素水タンク20とフィラー22との設置面をシールすることができる。したがって、本発明の一実施形態に係るショベル100によれば、フィラー22の設置容易性を高めたり、フィラー22の設置部のコストを削減したりすることができる。
【0081】
また、本発明の一実施形態に係るショベル100において、液面規制部材24の下端位置が、液面規制位置A1である。
【0082】
これにより、本発明の一実施形態に係るショベル100は、尿素水タンク20内の尿素水の凍結時に、尿素水の凍結した液面によって液面規制部材24が押し上げられる可能性が高い。したがって、本発明の一実施形態に係るショベル100は、液面規制部材24が弾性変形可能である構成が、特に有用である。
【0083】
また、本発明の一実施形態に係るショベル100は、尿素水残量センサ74をさらに備え、レベルゲージ26における満水位置は、液面規制位置A1と同一、または、液面規制位置A1よりも下方である。
【0084】
これにより、本発明の一実施形態に係るショベル100は、尿素水が液面規制位置A1に達する前に、レベルゲージ26によって満水を検知することができ、したがって、いつまでたっても満水を検知できないといった不具合を回避することができる。
【0085】
(変形例)
次に、図9を参照してショベル100の変形例を説明する。図9は、変形例のショベル100における尿素水タンク20の縦断面図である。図9に示すように、本変形例のショベル100が備える尿素水タンク20Aは、図6に示す尿素水タンク20と形状が異なる。具体的には、尿素水タンク20Aは、傾斜面20gを有する点、および、傾斜面20gに給液口20h、フィラー22、および液面規制部材24が設けられている点で、図6に示す尿素水タンク20と異なる。フィラー22は、固定ネジ22cによって、傾斜面20gにネジ止め固定されている。傾斜面20gは、尿素水タンク20Aの前方上部に形成されている。この傾斜面20gは、上方(Z軸正方向)に向かうにつれて後方(X軸負方向)に倒れるよう傾斜している。
【0086】
また、傾斜面20gには、レベルゲージ26(「液面ゲージ」の一例)が設けられている。レベルゲージ26は、尿素水タンク20A内の尿素水のレベル(液面高さ)を表示する。よって、作業者がレベルゲージ26を見ながら尿素水の補給を行うことにより、尿素水の溢れ出しを防止できる。
【0087】
図9に示すように、フィラー22および液面規制部材24は、傾斜面20gに設けられることにより、傾斜面20gの垂線方向に延在する状態(すなわち、傾斜した状態)となる。このため、図9に示すように、液面規制部材24の筒部24aは、尿素水タンク20A内の尿素水の液面に対して傾斜した状態となる。この場合、液面規制位置A1は、図9に示すように、液面規制部材24の筒部24aの下端部24cにおける最も高い位置となる。
【0088】
本変形例においても、液面規制部材24は、弾性素材が用いられて形成されている。これにより、本変形例においても、液面規制部材24は、尿素水タンク20A内で尿素水が凍結および膨張し、尿素水の凍結した液面によって下端部が突き上げられたとき、例えば、上方に撓ったり上方に折れ曲がったりするように弾性変形する。これにより、液面規制部材24は、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重を吸収することができる。このため、液面規制部材24は、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重が、当該液面規制部材24を介してフィラー22に加わることを抑制することができ、したがって、フィラー22の破損を抑制したり、フィラー22の設置面のシール性の低下を抑制したりすることができる。なお、液面規制部材24は、尿素水の凍結した液面による突き上げが解消したとき、自身の弾性力により、元の弾性変形していない状態(すなわち、直線状の状態)に復帰して、尿素水の液面を液面規制位置A1に規制することができる。
【0089】
なお、図9に示すように、本変形例においても、フィラー22の下部開口の内径は、液面規制部材24の筒部24aの上部開口の内径よりも小さくなっているため、フィラー22の取り付け誤差が生じた場合であっても、フィラー22の下部開口が、液面規制部材24の筒部24aの上部開口の範囲内に収まるようになっている。
【0090】
このように、本発明の実施形態に係る液面規制部材24は、尿素水タンク20Aのタンク上面20aおよび傾斜面20gのいずれに設けられた場合であっても、尿素水タンク20Aの尿素水の液面の高さ位置を規制することができ、且つ、尿素水タンク20A内の尿素水が凍結した際には、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重を吸収することができる。
【0091】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0092】
例えば、液面規制部材24の筒部24aの形状は、実施形態で示した円筒形状に限らない。例えば、筒部24aは、下方に行くにつれて開口径が小さくなる錐台形状を有してもよい。これにより、筒部24aは、凍結した液面との接触面積を小さくすることができ、液面から加わる荷重をより小さくすることができる。また、例えば、筒部24aは、下方に行くにつれて開口径が大きくなる錐台形状を有してもよい。この場合、筒部24aは、傾斜面が上方に撓るように弾性変形することができ、この撓りにより、尿素水の凍結した液面から加えられた荷重をより吸収することができる。また、この場合、液面規制部材24は、少なくとも、弾性変形可能であれば、比較的強度の高い弾性素材(例えば、薄厚の金属素材や樹脂素材等)を用いて形成することもできる。
【0093】
なお、本発明において、「弾性体」は、弾性素材を用いて形成されたものに限らず、弾性変形可能な構造を有するものを含む。
【符号の説明】
【0094】
100 ショベル
1 下部走行体
2 上部旋回体
8 ディーゼルエンジン(エンジン)
20 尿素水タンク(液体還元剤用タンク)
20a タンク上面
20h 給液口
20g 傾斜面
22 フィラー
22a 本体部
22b ベース部
22c 固定ネジ
22d 凹み部
22e リブ
22f 通気口
23 フィラーキャップ
24 液面規制部材
24a 筒部
24b つば部
24c 下端部
26 レベルゲージ(液面ゲージ)
31 旋回フレーム
74 尿素水残量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9