(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ケーブル固定具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/04 20060101AFI20231108BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20231108BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20231108BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16L3/04
H02G3/30
F16B2/12 Z
H01R4/64 A
(21)【出願番号】P 2019197280
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】金 光秀
(72)【発明者】
【氏名】大家 智樹
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-030123(JP,Y1)
【文献】特開2009-228881(JP,A)
【文献】実開昭59-021183(JP,U)
【文献】実開昭55-106425(JP,U)
【文献】特開2001-327050(JP,A)
【文献】実開平05-033584(JP,U)
【文献】特開平07-183670(JP,A)
【文献】実開昭59-090679(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/04
H02G 3/30
F16B 2/12
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを所定の被設置部に固定するケーブル固定具であって、
前記被設置部に装着されるフレームと、
前記被設置部に配置されるケーブルに対して進退自在の状態で前記フレームに支持され、進出状態で前記ケーブルを前記被設置部に押さえ付けるクランプ部と、
前記クランプ部に設けられ、前記クランプ部の進退方向に沿って配列される複数の突起を有する鋸歯状の第1係合部と、
前記フレームに設けられ、前記クランプ部の進出を許容し、かつ、退行を規制する状態に前記第1係合部と係合する第2係合部と、を備
え、
前記第2係合部は、少なくともその一部が、前記フレームが有する天板部から前記クランプ部の退行方向側の外部に突出している、ケーブル固定具。
【請求項2】
前記第2係合部は、前記第1係合部に弾性的に当接して前記第1係合部を係止する、請求項1に記載のケーブル固定具。
【請求項3】
前記第2係合部は、前記フレームに回動軸を介して回動可能に支持される係止部材と、
前記係止部材を前記第1係合部に係止させるように前記係止部材を前記第1係合部の方向に付勢する付勢部材と、を有する、請求項2に記載のケーブル固定具。
【請求項4】
前記第2係合部は、前記フレームに固定される固定部と、前記第1係合部に当接する当接部と、を有する弾性部と、前記弾性部に設けられた操作部と、を有し、
前記操作部は、操作されることにより、前記弾性部を弾性変形させて前記第1係合部への前記当接部の当接を解除させる、請求項2に記載のケーブル固定具。
【請求項5】
前記ケーブルはシールドを有する導電用のシールドケーブルであり、
前記被設置部は導電部材からなり、
前記クランプ部により前記被設置部に前記シールドを接地させる請求項1~4のいずれかに記載のケーブル固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源ケーブルや信号ケーブルとして、ノイズを防止するなどの目的でシールドケーブルが用いられている。この種のシールドケーブルにおいては、樹脂製の外周被覆部の一部を取り除いて露出させたメッシュ状のシールドを金属製のクランプで金属部材に押さえつけた状態とし、そのクランプを金属部材にネジ留めすることで、シールドを接地した状態に固定する使用形態が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のクランプにあっては、ネジ留め作業に手間が掛かるため、多数のケーブルを所定の被設置部に固定する場合には効率が悪かった。このため、所定の被設置部にケーブルを効率よく固定する構造が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るケーブル固定具は、ケーブルを所定の被設置部に固定するケーブル固定具であって、前記被設置部に装着されるフレームと、前記被設置部に配置されるケーブルに対して進退自在の状態で前記フレームに支持され、進出状態で前記ケーブルを前記被設置部に押さえ付けるクランプ部と、前記クランプ部に設けられ、前記クランプ部の進退方向に沿って配列される複数の突起を有する鋸歯状の第1係合部と、前記フレームに設けられ、前記クランプ部の進出を許容し、かつ、退行を規制する状態に前記第1係合部と係合する第2係合部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
一態様によれば、所定の被設置部にケーブルを効率よく固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るケーブル固定具を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るケーブル固定具を示す側面図である。
【
図4】第1実施形態のクランプ部を示す側面図である。
【
図5】第1実施形態の第1係合部を示す一部拡大断面図である。
【
図7】第1実施形態のケーブル固定具によりシールドケーブルを固定した使用状態を示す正面図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係るケーブル固定具を示す正面断面図である。
【
図11】第2実施形態の第2係合部を示す横断面図である。
【
図12】本開示の第3実施形態に係るケーブル固定具を示す正面断面図である。
【
図14】第3実施形態の第2係合部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
図1~
図3は、第1実施形態に係るケーブル固定具1を示している。このケーブル固定具1は、フレーム10と、フレーム10に支持されるクランプ部20と、クランプ部20に設けられる第1係合部30と、フレーム10に設けられる第2係合部40と、を備える。なお、以下の説明では、
図1~
図3で示すX方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向ともいう。
【0009】
図3に示すように、フレーム10は、前方(
図2で左方)から見た正面視が略門型の形状を有するフレーム本体部11と、ガイド部16と、を有する。
【0010】
フレーム本体部11は、天板部12と、天板部12の両側の端部から下方に延在する左右一対の側板部13、13と、を有する。側板部13、13は互いに平行であり、天板部12に対しそれぞれ略直交している。
図2に示すように、各側板部13、13の下端部には、略L字状の装着部14がそれぞれ設けられている。装着部14は、後述する金属板200に装着される部分である。
【0011】
ガイド部16は、クランプ部20を上下方向Zに進退自在に支持する。
図3に示すように、ガイド部16は、フレーム10の天板部12の上面中央部に設けられた角筒状の凸部17を有する。凸部17の中空内部は、フレーム本体部11の内側の空間に連通する。
【0012】
図4に示すように、クランプ部20は、角柱状のロッド部21と、ヘッド部22と、押さえ板部23と、を有する。ロッド部21は、ガイド部16に摺動自在に挿入される。ヘッド部22は、ガイド部16から上方に突出するロッド部21の上端に一体に設けられる。押さえ板部23は、正面視で上方向に凸に湾曲した板材で構成され、凸側の面の中央部分がロッド部21の下端に固定される。
【0013】
クランプ部20は、
図3の矢印A-Bに示すように、押さえ板部23がフレーム10内において天板部12から離間する方向(下方向A)に進出したり、天板部12に接近する方向(上方向B)に退行したりするように、ガイド部16に支持される。
【0014】
図3および
図4に示すように、第1係合部30は、クランプ部20のロッド部21の一側面に一体に設けられている。第1係合部30は、ロッド部21の長手方向すなわちクランプ部20の進退方向に沿って配列される複数の突起31を有する。第1係合部30は、ロッド部21のほぼ全長にわたり、複数の突起31が連続する鋸歯状に設けられている。
【0015】
図5に示すように、突起31は、断面三角形状であって、上方に面する係止面31aと、係止面31aの下方の傾斜面31bと、係止面31aと傾斜面31bとの境界である頂部31cと、を有する。係止面31aは、クランプ部20の進退方向に略直交する面で構成される。傾斜面31bは、頂部31cから下方に向かうにしたがってロッド部21の奥の方向(
図5で左方)に斜めに入り込む面で構成される。
【0016】
図3に示すように、第2係合部40は、フレーム本体部11の天板部12に設けられる。
図6に示すように、第2係合部40は、天板部12に設けられた孔12aの内壁部12bに取り付けられる。第2係合部40は、矩形板状の係止部材41と、コイルばね42と、を有する。コイルばね42は本開示の付勢部材の一例であって、この実施形態では、ねじりコイルばねで構成される。
【0017】
係止部材41は、回動軸45を介して、
図6に示す矢印C-D方向に回動可能な状態に内壁部12bに支持される。コイルばね42は、係止部材41を矢印C方向に付勢するように回動軸45に装着される。係止部材41は、コイルばね42によってその下端部が第1係合部30に常に弾性的に当接するように付勢される。
【0018】
フレーム10に対しクランプ部20を上方にスライドさせると、
図6に示すように係止部材41の下端が突起31の係止面31a側に当接することにより、クランプ部20はそれ以上の上方へのスライド(退行)が規制される。また、コイルばね42の付勢力に抗して係止部材41を矢印D方向に回動させると、
図6の二点鎖線で示すように係止部材41は突起31から離間し、クランプ部20を上方にスライドさせることができる。
【0019】
一方、フレーム10に対しクランプ部20を下方にスライドさせると、係止部材41の下端部が傾斜面31bに接触しながら複数の突起31の頂部31cを順次乗り越えることにより、クランプ部20は第2係合部40による規制を受けず、下方へのスライド(進出)が可能である。
【0020】
以上の構成を備える第1実施形態のケーブル固定具1によれば、
図7および
図8に示すように、導電用のシールドケーブル100を金属板200の上面に固定することができる。シールドケーブル100、本開示のケーブルの一例を構成する。また、金属板200は、本開示の被設置部および導電部材の一例を構成する。
【0021】
シールドケーブル100は、メッシュ状の金属で構成されるシールド101により内部の電線(不図示)が被覆され、さらにそのシールド101が絶縁性の外皮102で覆われた構成を有する。シールドケーブル100は、外皮102の一部が取り除かれてシールド101が露出され、その露出するシールド101の部分がケーブル固定具1で金属板200に固定されるとともに、接地される。
【0022】
第1実施形態に係るシールド固定具1でシールドケーブル100を金属板200に固定するには、シールド固定具1の前後方向をシールドケーブル100の延在方向に合わせ、フレーム10の装着部14を金属板200に設けられている孔200aに挿入する。そして、金属板200に載せたシールドケーブル100の露出するシールド101の部分を、クランプ部20の押さえ板部23の下方に位置付ける。次いで、ヘッド部22を利用してクランプ部20をシールドケーブル100側に押し込み、押さえ板部23でシールド101をある程度の圧力が掛かる程度に金属板200に押さえ付ける。
【0023】
この状態で、第1係合部30の1つの突起31に第2係合部40の係止部材41が係止することによりクランプ部20は上方へのスライドが規制される。これにより、シールドケーブル100が押さえ板部23と金属板200との間に挟まれて固定された状態は保持される。シールドケーブル100のシールド101は、金属板200に接地される。
【0024】
金属板200に対するシールドケーブル100の固定を解除する場合には、第2係合部40の係止部材41を回動させて第1係合部30の突起31に対する係止部材41の係止状態を解除し、クランプ部20を上方にスライドさせて押さえ板部23をシールドケーブル100から離間させる。
【0025】
本開示の第1実施形態は、金属板200に装着されるフレーム10と、金属板200に配置されるシールドケーブル100に対して進退自在の状態でフレーム10に支持され、進出状態でシールドケーブル100を金属板200に押さえ付けるクランプ部20と、クランプ部20に設けられ、クランプ部20の進退方向に沿って配列される複数の突起31を有する鋸歯状の第1係合部30と、フレーム10に設けられ、クランプ部20の進出を許容し、かつ、退行を規制する状態に第1係合部30と係合する第2係合部40と、を備える。
【0026】
本開示の第1実施形態によれば、クランプ部20をシールドケーブル100の方向に進出するようにスライドさせるという操作により、シールドケーブル100を金属板200に固定することができる。その固定状態は、第1係合部30に第2係合部40が係合することにより保持される。したがって、シールドケーブル100の固定作業を手間が掛からず効率よく行うことができる。例えば多数のシールドケーブル100を固定する場合には、作業時間を大幅に短縮することができるため、特に有効である。
【0027】
また、第1係合部30に対する第2係合部40の係合を解除してクランプ部20をシールドケーブル100から離間させることにより、金属板200に対するシールドケーブル100の固定を容易に解除することができる。
【0028】
本開示の第1実施形態において、第2係合部40は、第1係合部30に弾性的に当接して第1係合部30を係止する。
【0029】
これにより、第2係合部40は第1係合部30に確実に係合する。また、クランプ部20がシールドケーブル100の方向に進出する際、第2係合部40に変形や破損が生じにくく、クランプ部20の進出動作や第1係合部30に対する第2係合部40の係合動作が安定して行われる。
【0030】
本開示の第1実施形態において、第2係合部40は、フレーム10に回動軸45を介して回動可能に支持される係止部材41と、係止部材41を第1係合部30に係止させるように係止部材41を第1係合部30の方向に付勢するコイルばね42と、を有する。
【0031】
これにより、第1係合部30に弾性的に当接して第1係合部30を係止するという機能を持つ第2係合部40を、簡素でありながら確実に動作するように構成することができる。
【0032】
本開示の第1実施形態においては、導電用のシールドケーブル100のシールド101を、クランプ部20により金属板200に接地させている。
【0033】
これにより、シールドケーブル100の固定とともにシールド101の接地を同時に行うことができる。
【0034】
次に、上記第1実施形態の説明を援用しつつ、上記第2係合部40を変更した本開示の第2および第3実施形態を説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0035】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る第2係合部40を備えたケーブル固定具1を示している。第2実施形態の第2係合部40は、
図10に示すようにガイド部16の凸部17に設けられた孔17aの内壁部17bに取り付けられる。第2係合部40は、矩形板状の係止部材41と、コイルばね43と、を有する。コイルばね43は本開示の回動軸および付勢部材の一例であって、第2実施形態ではトーションコイルばねで構成される。
【0036】
係止部材41は、コイルばね43を介して、
図10に示す矢印E-F方向に回動可能な状態に内壁部17bに支持される。コイルばね43は、
図10および
図11に示すように、係止部材41に係合されるアーム部43aの両側に右巻き部43bおよび左巻き部43cがそれぞれ設けられ、係止部材41を矢印E方向に付勢するように右巻き部43bおよび左巻き部43cが内壁部17bに固定される。係止部材41は、コイルばね43によってその下端部が第1係合部30に常に弾性的に当接するように付勢される。
【0037】
第2実施形態の第2係合部40は、第1実施形態と同様に、係止部材41の下端が第1係合部30の突起31の係止面31a側に弾性的に当接することにより、クランプ部20の上方へのスライド(退行)を規制し、下方へのスライド(進出)を許容するように機能する。
【0038】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係る第2係合部40を備えたケーブル固定具1を示している。第3実施形態の第2係合部40は、
図13に示すように、ガイド部16の凸部17に設けられた孔17aの内壁部17cに固定される。第2係合部40は、内壁部17cに固定される固定部46aと、第1係合部30の突起31に当接する矩形板状の当接部46bと、を有する弾性部46と、当接部46bに一体に設けられた操作部47と、を有する。
【0039】
第2係合部40は、弾性を有する材料により一体に設けられている。第2係合部40の当接部46bは、その下端部において、第1係合部30に常に弾性的に当接する。
図14に示すように、操作部47は略L字状に屈曲しており、当接部46bから側方に突出している。
【0040】
第3実施形態の第2係合部40においては、操作部47を上方に動かすことにより、
図13の二点鎖線に示すように弾性部46が弾性変形して、当接部46bが第1係合部30の突起31への当接する状態を解除することができるようになっている。すなわち操作部47は、操作されることにより、弾性部46を弾性変形させて第1係合部30への当接部46bの当接を解除させる。
【0041】
第3実施形態の第2係合部40は、当接部46bの下端が第1係合部30の突起31の係止面31a側に弾性的に当接することにより、クランプ部20の上方へのスライド(退行)を規制し、下方へのスライド(進出)を許容するように機能する。
【0042】
第3実施形態によれば、弾性部46が有する弾性によって第1係合部30に当接部46bが弾性的に係合する。その係合を解除するには、操作部47を操作して弾性部46を弾性変形させることで可能である。したがって、上記第1および第2実施形態のようにコイルばね等の付勢部材がなくても、第2係合部40を第1係合部30に係合させたり、その係合を解除したりすることができる。よって上記第1および第2実施形態に比べて簡素な構成となり、部品点数を少なくすることができる。
【0043】
上記第1~第3実施形態においては、クランプ部20を上下方向にスライドさせるものとしてその構成を説明したが、クランプ部20のスライド方向はケーブル固定具1の設置状況に応じたものとなり、限定はされない。
第1係合部30に係合する第2係合部40は、上記第1~第3実施形態の態様に限定されず、クランプ部20の進出を許容し、かつ、退行を規制する状態に第1係合部30と係合するものであれば、いかなる態様であってよい。
また、本開示のケーブル固定具は、シールドケーブルのシールドを接地して固定するものに限定されず、他の種類のケーブルを被設置部に固定するものとして使用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ケーブル固定具
10 フレーム
20 クランプ部
30 第1係合部
31 突起
40 第2係合部
41 係止部材
42 コイルばね(付勢部材)
43 コイルばね(付勢部材、回動軸)
45 回動軸
46 弾性部
46a 固定部
46b 当接部
47 操作部
100 シールドケーブル(ケーブル)
101 シールド
200 金属板(被設置部)