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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】筋弛緩監視装置および医療機器システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/389 20210101AFI20231108BHJP
【FI】
A61B5/389
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019198591
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021069724
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 繁吉
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 和哉
(72)【発明者】
【氏名】岩田 俊治
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506245(JP,A)
【文献】特開2011-156194(JP,A)
【文献】特開2000-262483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/389
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の神経を刺激する刺激部と、
前記刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を、検出用電極で受信して検出する信号検出部と、
前記刺激部で生体の筋を予め刺激して前記検出用電極で受信して得られた電気信号のピーク位置情報に基づいて、前記信号検出部で検出される電気信号のピークの出現範囲を刺激からの経過時間として算出する出現範囲算出部と、
前記出現範囲算出部で算出されて設定された前記ピークの出現範囲に基づいて、前記検出用電極で受信して前記信号検出部で検出された電気信号のピーク位置を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部で検出された前記ピーク位置に基づいて、生体の筋弛緩度を算出する弛緩度算出部とを備える筋弛緩監視装置。
【請求項2】
前記出現範囲算出部は、筋弛緩剤を投与する前に生体の筋を前記刺激部で刺激して得られた電気信号のピーク位置に基づいて前記ピークの出現範囲を算出する請求項1に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項3】
前記ピーク検出部は、前記信号検出部で検出される電気信号のピーク位置を順次検出し、
前記出現範囲算出部は、前記ピーク検出部で前回までに検出されたピーク位置に基づいて前記ピークの出現範囲を算出する請求項1または2に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項4】
前記出現範囲算出部は、前記電気信号の正ピークに対して正ピーク出現範囲を算出すると共に、前記電気信号の負ピークに対して負ピーク出現範囲を前記正ピーク出現範囲より広い範囲で算出する請求項1~3のいずれか一項に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項5】
前記出現範囲算出部は、前記電気信号の正ピークに対して正ピーク出現範囲が所定値よりも低い場合、負ピークに対して負ピーク出現範囲を前記正ピーク出現範囲より広い範囲で算出する請求項4に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項6】
前記信号検出部で検出された電気信号の波形を表示する表示部と、
前記ピーク検出部で検出された前記ピーク位置に基づいて、前記表示部に表示される前記電気信号の波形に前記ピーク位置を示すピークマークを重畳して表示させる表示制御部とをさらに備える請求項1~5のいずれか一項に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項7】
生体の神経を刺激する刺激部と、
前記刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を、検出用電極で受信して検出する信号検出部と、
前記刺激部で生体の筋を予め刺激して前記検出用電極で受信して得られた電気信号のピーク位置情報に基づいて、前記信号検出部で検出される電気信号のピークの出現範囲を刺激からの経過時間として算出する出現範囲算出部と、
前記出現範囲算出部で算出されて設定された前記ピークの出現範囲に基づいて、前記検出用電極で受信して前記信号検出部で検出された電気信号のピーク位置を検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部で検出された前記ピーク位置に基づいて、生体の筋弛緩度を算出する弛緩度算出部と、
前記弛緩度算出部で算出された前記筋弛緩度に基づいて医療機器を制御する制御部とを備える医療機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筋弛緩監視装置および医療機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の所定の筋肉に繋がる神経を電気刺激して、その刺激に反応した筋の電気信号に基づいて筋肉の弛緩度を監視する、いわゆる筋電図方式の筋弛緩監視装置が提案されている。一方、医療現場では、加速度感知方式の筋弛緩監視装置が広く普及しており、筋肉の弛緩度の判定方法が確立されている。
【0003】
特許文献1には、筋弛緩状態の確認および推移の予測を的確に行うことができる加速度感知方式の筋弛緩状態表示モニタ装置が開示されている。この筋弛緩状態表示モニタ装置は、筋弛緩パラメータとして、TOF比、TOFカウントおよびPTCなどを算出することで、筋肉の弛緩度を高精度に判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-326050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加速度感知方式と筋電図方式では、筋肉の弛緩度を算出する方法が異なるため、特許文献1の筋弛緩状態表示モニタ装置のような加速度感知方式の算出方法を筋電図方式に適用することが困難であった。このため、筋電図方式の筋弛緩監視装置において筋肉の弛緩度を高精度に算出することが求められている。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、筋電図方式で筋肉の弛緩度を高精度に算出する筋弛緩監視装置および医療機器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る筋弛緩監視装置は、生体の神経を刺激する刺激部と、刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する信号検出部と、刺激部で生体の筋を予め刺激して得られた電気信号のピーク位置情報に基づいて、信号検出部で検出される電気信号のピークの出現範囲を算出する出現範囲算出部と、出現範囲算出部で算出されたピークの出現範囲に基づいて、信号検出部で検出された電気信号のピーク位置を検出するピーク検出部と、ピーク検出部で検出されたピーク位置に基づいて、生体の筋弛緩度を算出する弛緩度算出部とを備えるものである。
【0008】
この発明に係る医療機器システムは、生体の神経を刺激する刺激部と、刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する信号検出部と、刺激部で生体の筋を予め刺激して得られた電気信号のピーク位置情報に基づいて、信号検出部で検出される電気信号のピークの出現範囲を算出する出現範囲算出部と、出現範囲算出部で算出されたピークの出現範囲に基づいて、信号検出部で検出された電気信号のピーク位置を検出するピーク検出部と、ピーク検出部で検出されたピーク位置に基づいて、生体の筋弛緩度を算出する弛緩度算出部と、弛緩度算出部で算出された筋弛緩度に基づいて医療機器を制御する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、出現範囲算出部が、刺激部で生体の筋を予め刺激して得られた電気信号のピーク位置情報に基づいて信号検出部で検出された電気信号のピークの出現範囲を算出するので、筋電図方式で筋の弛緩度を高精度に算出する筋弛緩監視装置および医療機器システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1に係る筋弛緩監視装置を備えた医療機器システムの構成を示すブロック図である。
図2】ピークの出現範囲を算出する様子を示す図である。
図3】電気信号の波形にピーク位置を示すピークマークを重畳して表示した様子を示す図である。
図4】TOF比を算出する様子を示す図である。
図5】実施の形態2に係る筋弛緩監視装置の要部を示すブロック図である。
図6】実施の形態3において使用者が電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を修正する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る筋弛緩監視装置を備えた医療機器システムの構成を示す。医療機器システムは、一対の刺激用電極1aおよび1bと、一対の検出用電極2aおよび2bと、筋弛緩監視装置3と、表示部4とを有する。
【0012】
刺激用電極1aおよび1bは、生体の所定の筋肉を支配する神経に対応して配置され、その神経に対して電気刺激を出力することにより所定の筋を刺激するものである。このため、刺激用電極1aおよび1bのうち、一方が陽極で他方が負極となる。刺激用電極1aおよび1bは、例えば、尺骨神経などに対応して配置することができる。
検出用電極2aおよび2bは、所定の筋肉に対応して配置され、刺激用電極1aおよび1bからの電気刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出するものである。このため、検出用電極2aおよび2bのうち、一方が陽極で他方が負極となる。検出用電極2aおよび2bは、例えば、母指内転筋および小指外転筋などに対応して配置することができる。
【0013】
筋弛緩監視装置3は、刺激部5および信号検出部6を有し、信号検出部6に出現範囲算出部7、ピーク検出部8および表示制御部9が順次接続されている。また、出現範囲算出部7およびピーク検出部8には、ピーク情報保存部10が接続されている。また、ピーク検出部8が弛緩度算出部11に接続され、この弛緩度算出部11が表示制御部9に接続されている。さらに、刺激部5、出現範囲算出部7、ピーク検出部8、表示制御部9および弛緩度算出部11に装置制御部12が接続され、この装置制御部12に操作部13および格納部14がそれぞれ接続されている。また、刺激部5は刺激用電極1aおよび1bに接続されると共に、信号検出部6は検出用電極2aおよび2bに接続され、表示制御部9は表示部4に接続されている。
【0014】
刺激部5は、刺激用電極1aおよび1bに電圧を印加して生体の所定の神経を電気刺激するものである。
信号検出部6は、検出用電極2aおよび2bを介して生体からの電気信号を順次受信し、刺激部5の電気刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する。具体的には、検出用電極2aおよび2bから受信される電気信号を差動処理し、これにより生じた電気信号の波形を筋肉で生じた電気信号として検出する。
【0015】
ピーク情報保存部10は、刺激部5で生体の神経を予め刺激して得られた筋肉の電気信号のピーク位置情報を保存するもので、具体的には、筋弛緩剤を投与する前に生体の神経を刺激部5で刺激して得られた筋肉の電気信号のピーク位置を保存する。
出現範囲算出部7は、ピーク情報保存部10に保存されたピーク位置情報に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号において推定されるピークの出現範囲を算出する。ここで、ピークの出現範囲は、電気信号のピークが出現する可能性が所定の閾値以上の範囲に設定されるもので、例えばピーク位置が変動する度合いなどに基づいて設定することができる。
【0016】
ピーク検出部8は、出現範囲算出部7で算出されたピークの出現範囲に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号のピーク位置を検出する。
弛緩度算出部11は、ピーク検出部8で検出されたピーク位置に基づいて、生体の筋弛緩度を算出する。具体的には、弛緩度算出部11は、ピーク位置に基づいて信号検出部6で検出された電気信号の振幅を算出し、その振幅に基づいて筋弛緩度を算出する。ここで、筋弛緩度は、筋肉の弛緩の度合いを示すものであり、例えば、四連反応比(TOF比)、四連反応数(TOFカウント)およびポストテタニックカウント(PTC)などが挙げられる。
【0017】
例えば、TOF比は、刺激部5で神経を0.5秒おきに4回連続して電気刺激したときに、1回目の刺激による電気信号の振幅に対する4回目の刺激による電気信号の振幅の比を示すものである。TOFカウントは、刺激部5で神経を0.5秒おきに4回連続して電気刺激したときに、4回の刺激でそれぞれ発生した電気信号のカウント数、すなわち波形のカウント数を示すものである。PTCは、刺激部5で50Hzの電気刺激を5秒間行うテタヌス刺激後に1Hz刺激して発生する電気信号のカウント数を示すものである。
【0018】
表示制御部9は、信号検出部6で検出された電気信号の波形を表示部4に表示させる。このとき、表示制御部9は、ピーク検出部8で検出されたピーク位置に基づいて、表示部4に表示される電気信号の波形にピーク位置を示すピークマークを重畳して表示させる。また、表示制御部9は、弛緩度算出部11で算出された筋弛緩度を表示部4に表示させる。すなわち、表示制御部9は、本発明における医療機器システムの制御部を構成するものである。
装置制御部12は、使用者により操作部13から入力される指示に基づいて筋弛緩監視装置3の各部の制御を行う。
【0019】
操作部13は、使用者からの指令を入力するためのもので、ボタン、タッチパネル、キーボード、マウス、トラックボール等から形成することができる。
格納部14は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD-ROM、DVD-ROM、SDカード、CFカード、USBメモリ等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
なお、出現範囲算出部7、ピーク検出部8、表示制御部9、弛緩度算出部11および装置制御部12は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0020】
表示部4は、ディスプレイ装置を含み、表示制御部9の制御の下で、信号検出部6で検出された電気信号の波形および弛緩度算出部11で算出された筋弛緩度を表示する。表示部4は、例えば、生体情報モニタおよび心電計などから構成することができる。
【0021】
次に、出現範囲算出部7におけるピークの出現範囲の算出方法について詳細に説明する。
図2に示すように、ピーク情報保存部10には、筋弛緩剤を投与する前に得られた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2が電気信号の波形Wと共に保存されている。なお、正ピーク位置P1は正の強度を有するピークの位置であり、負ピーク位置P2は負の強度を有するピークの位置である。
出現範囲算出部7は、ピーク情報保存部10に保存された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、信号検出部6で検出される電気信号の正ピークに対して正ピーク出現範囲R1を算出すると共に、電気信号の負ピークに対して負ピーク出現範囲R2を算出する。出現範囲算出部7は、例えば、正ピーク位置P1および負ピーク位置P2から前後約2msの範囲に正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2をそれぞれ設定することができる。
ここで、出現範囲算出部7は、負ピーク出現範囲R2を正ピーク出現範囲R1より広い範囲で設定することが好ましい。
【0022】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、図1に示すように、生体の表面に刺激用電極1aおよび1bと検出用電極2aおよび2bとが張り付けられる。例えば、尺骨神経に対応する位置に刺激用電極1aおよび1bを張り付け、この尺骨神経に支配される小指外転筋に対応する位置に検出用電極2aおよび2bを張り付けることができる。
【0023】
ここで、生体に筋弛緩剤を投与する前に、使用者により操作部13が操作されて、刺激部5から刺激用電極1aおよび1bを介して生体の尺骨神経に電気刺激が出力される。
尺骨神経が刺激部5により電気刺激されると、尺骨神経に支配される小指外転筋が反応して電気信号を発生し、この電気信号が検出用電極2aおよび2bで受信される。そして、信号検出部6が、検出用電極2aおよび2bで受信された電気信号を差動処理し、これにより生じる波形を小指外転筋で生じた電気信号として検出する。信号検出部6は、検出された電気信号を出現範囲算出部7を介してピーク検出部8に出力する。
【0024】
信号検出部6で検出された電気信号がピーク検出部8に入力されると、ピーク検出部8は、図2に示すように、電気信号の波形Wに基づいて正ピーク位置P1および負ピーク位置P2をそれぞれ算出する。ピーク検出部8は、例えば、電気信号の波形Wの微分値および電気信号の強度などに基づいて正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を算出することができる。ピーク検出部8は、算出された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を電気信号の波形Wと共にピーク情報保存部10に保存する。また、ピーク検出部8は、算出された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を弛緩度算出部11にも出力する。
弛緩度算出部11は、ピーク検出部8で検出された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて電気信号の振幅を算出し、その振幅からTOF比などの筋弛緩度を算出する。
【0025】
続いて、生体に筋弛緩剤が投与されると、使用者により操作部13が操作されて、刺激部5から刺激用電極1aおよび1bを介して生体の尺骨神経に電気刺激が出力される。刺激部5は、例えば、0.5秒おきに4回連続して電気刺激する四連刺激(TOF刺激)を15秒間隔で繰り返すことができる。
【0026】
尺骨神経が電気刺激されると、尺骨神経に支配される小指外転筋が反応して電気信号を発生し、この電気信号が検出用電極2aおよび2bで受信される。そして、信号検出部6が、検出用電極2aおよび2bで受信された電気信号を差動処理し、これにより生じる波形を小指外転筋で生じた電気信号として検出する。信号検出部6は、その検出結果を出現範囲算出部7に出力する。
【0027】
ここで、出現範囲算出部7は、ピーク情報保存部10に保存された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出する。正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2は、例えば、電気刺激からの経過時間に基づいて設定することができる。
このとき、出現範囲算出部7は、負ピーク出現範囲R2を正ピーク出現範囲R1より広い範囲で算出することが好ましい。
【0028】
なお、出現範囲算出部7は、表示制御部9を介して正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を電気信号の波形と共に表示部4に表示させることもできる。これにより、使用者は、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を明確に確認することができ、その位置および範囲などを修正したい場合には操作部13を操作して正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を修正することができる。
【0029】
このようにして、正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2が設定された電気信号は、出現範囲算出部7からピーク検出部8に出力される。ピーク検出部8は、正ピーク出現範囲R1に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク位置を検出すると共に、負ピーク出現範囲R2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の負ピーク位置を検出する。
ピーク検出部8は、例えば、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に限定して正ピーク位置および負ピーク位置をそれぞれ検出することができる。また、ピーク検出部8は、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて検出の優先順位を設定して、その優先順位に従って正ピーク位置および負ピーク位置を検出することもできる。
【0030】
このように、ピーク検出部8は、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて正ピーク位置および負ピーク位置を検出する。一般的に、信号検出部6で検出される電気信号にはノイズなどが混入するおそれがある。また、複数のピークが出現している場合に、例えば負ピーク位置Paなどを誤検出するおそれもある。そこで、ピーク検出部8は、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて正ピーク位置および負ピーク位置を検出することで誤検出を抑制し、正ピーク位置および負ピーク位置を高精度に検出することができる。
また、ピーク検出部8は、正ピーク出現範囲R1より広い範囲に設定された負ピーク出現範囲R2に基づいて負ピーク位置P2を検出する。一般的に、電気信号の負ピークは、正ピークと比較して位置の変動が大きいため、広い範囲に設定された負ピーク出現範囲R2に基づいて検出することにより、負ピーク位置を確実に検出することができる。
【0031】
なお、出現範囲算出部7は、ピーク情報保存部10に保存された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2が中心になるように正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出する必要はなく、正ピーク位置P1および負ピーク位置P2が中心からずれるように正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出してもよい。例えば、出現範囲算出部7は、複数の負ピークが検出された場合に、最も大きな負の強度を示す負ピーク位置P2以外の負ピーク位置を除くように、負ピーク位置P2を中心からずらして負ピーク出現範囲R2を算出することができる。これにより、ピーク検出部8は、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をより高精度に検出することができる。
【0032】
また、出現範囲算出部7は、ピーク情報保存部10に保存された電気信号の波形Wの形状に基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を修正することもできる。例えば、出現範囲算出部7は、電気信号の波形Wにおいて正ピークおよび負ピークの幅(ピークの広がり)が所定の閾値より大きい場合には正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2が広くなるように算出することができる。また、出現範囲算出部7は、正ピークの高さがキャリブレーション時の正ピークの高さに比べ所定値(例えば半分)よりも低い場合、負ピーク出現範囲R2を広くなるように算出することができる。これにより、ピーク検出部8は、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をより高精度に検出することができる。
【0033】
続いて、ピーク検出部8は、検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を電気信号の波形と共に表示制御部9に出力する。例えば、表示制御部9は、図3に示すように、TOF刺激で得られる電気信号の波形W1~W4を表示部4に表示させる。このとき、表示制御部9は、電気信号の波形W1~W4に重畳して、ピーク検出部8で検出された正ピーク位置にピークマークMaを表示させると共に、負ピーク位置にピークマークMbを表示させることができる。
これにより、使用者は、波形W1~W4のピークマークMaおよびMbを明確に確認することができ、その位置を修正したい場合には操作部13を操作してピークマークMaおよびMbを容易に修正することができる。このとき、表示制御部9は、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を超えてピークマークMaおよびMbの位置を修正するように制御してもよく、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に限定してピークマークMaおよびMbの位置を修正するように制御してもよい。
【0034】
このようにして、ピーク検出部8で検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置が、ピーク検出部8から弛緩度算出部11に出力されると共に、使用者により修正された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置が、装置制御部12から弛緩度算出部11に出力される。
弛緩度算出部11は、ピーク検出部8および装置制御部12から正ピーク位置および負ピーク位置を入力すると、その正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて電気信号の振幅を算出し、その振幅に基づいて筋弛緩度を算出する。
【0035】
例えば、弛緩度算出部11は、電気信号の波形W1~W4の正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて、波形W1~W4の振幅を算出する。図4に示すように、波形W1~W4の振幅f1~f4は、一般的に、生体の筋弛緩状態が深くなると、振幅f4、振幅f3、振幅f2、振幅f1の順に小さくなる。そこで、弛緩度算出部11は、波形W1の振幅f1対する波形W4の振幅f4の比を求めてTOF比を算出することで、小指外転筋の弛緩度を求めることができる。
【0036】
また、弛緩度算出部11は、弛緩度が大きくなると、波形W1~W4の数をカウントしてTOFカウントを算出する。TOFカウントは、筋弛緩状態の深度に応じて順次低下するため、TOFカウントの大きさに基づいて小指外転筋の弛緩度を算出することができる。
さらに、使用者が操作部13を操作して刺激部5によりテタヌス刺激した後にさらに1Hz刺激を行い、弛緩度算出部11が、1Hz刺激により小指外転筋から生じる電気信号の数、すなわちPTCを小指外転筋の弛緩度として算出する。このPTCは、筋弛緩状態の回復に応じてカウント数が増加するもので、PTCの大きさに基づいてTOF比が0%以上になるまでの時間などを推測することができる。
【0037】
ここで、筋弛緩度は、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて算出される。特に、TOF比は、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて振幅f1~f4を算出する必要がある。そこで、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を正確に検出することにより、筋弛緩度を高精度に算出することができる。
このとき、筋弛緩度は、小指外転筋で生じた電気信号に基づいて算出されるため、生体の所定の部位の加速度に基づいて算出される加速度感知方式の筋弛緩度と比較して、小指外転筋の僅かな反応も反映されると共にその反映速度も速く、小指外転筋の弛緩度をより高精度に算出することができる。
【0038】
続いて、弛緩度算出部11で算出された筋弛緩度が表示制御部9に出力されて、表示制御部9が筋弛緩度を表示部4に表示させる。
【0039】
本実施の形態によれば、出現範囲算出部7が、筋弛緩剤投与前に刺激部5で生体の小指外転筋を刺激して得られた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて信号検出部6で検出される電気信号の正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出するため、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を確実に検出することができ、その正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて生体の筋弛緩度を高精度に算出することができる。
【0040】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、出現範囲算出部7は、筋弛緩剤投与前に刺激部5で生体の小指外転筋を刺激して得られた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出したが、生体の小指外転筋を予め刺激して得られた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置 P2に基づいて算出すればよく、筋弛緩剤投与前に限られるものではない。
【0041】
例えば、図5に示すように、実施の形態1の出現範囲算出部7およびピーク検出部8に換えて、出現範囲算出部21およびピーク検出部22を配置することができる。
ピーク検出部22は、筋弛緩剤の投与後に信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を順次算出し、その正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を表示制御部9および弛緩度算出部11に出力すると共にピーク情報保存部10にも出力する。
出現範囲算出部21は、ピーク検出部22からピーク情報保存部10に順次保存される正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、その後に信号検出部6で検出される電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出する。
【0042】
次に、実施の形態2の動作について説明する。
実施の形態1と同様に、生体に筋弛緩剤が投与されると、刺激部5により尺骨神経が電気刺激されて、小指外転筋で生じた電気信号が信号検出部6で検出される。続いて、出現範囲算出部21が、例えば筋弛緩剤が投与される前に尺骨神経を電気刺激して得られた正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出する。そして、ピーク検出部22が、正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を検出する。ピーク検出部22は、検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を表示制御部9および弛緩度算出部11に出力すると共に、ピーク情報保存部10にも出力する。
【0043】
同様に、刺激部5により尺骨神経が電気刺激されて、小指外転筋で生じた電気信号が信号検出部6で検出される。ここで、出現範囲算出部21は、ピーク検出部22によりピーク情報保存部10に保存された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2、すなわち前回の電気刺激で生じた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出する。そして、ピーク検出部22が、出現範囲算出部21で算出された正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を検出する。
【0044】
ここで、ピーク検出部22は、検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を表示制御部9および弛緩度算出部11に出力すると共にピーク情報保存部10に出力する。このようにして、ピーク検出部22により検出される正ピーク位置および負ピーク位置がピーク情報保存部10に順次保存され、出現範囲算出部21が、ピーク情報保存部10に保存された前回の電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、今回の電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出する。
【0045】
このように、出現範囲算出部21が、前回の電気刺激で生じた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を順次算出し、ピーク検出部22が、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を順次検出する。
【0046】
本実施の形態によれば、出現範囲算出部21が、前回の電気刺激で生じた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を順次算出するため、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を正確に算出することができ、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をより高精度に検出することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、出現範囲算出部21が、前回の電気刺激で生じた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出したが、生体の小指外転筋を予め刺激して得られた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて算出すればよく、前回の電気刺激に限られるものではない。
例えば、出現範囲算出部21は、生体に筋弛緩剤を投与した後において前回までの電気刺激で生じた複数の電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をそれぞれ平均化し、その平均化された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出することもできる。
また、出現範囲算出部21は、複数の被験者を予め電気刺激して得られた電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出することもできる。
【0048】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2において、ピーク検出部で検出された電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置は、使用者が操作部13を介して修正可能に設定することが好ましい。
【0049】
例えば、実施の形態1において、生体に筋弛緩剤を投与する前に、ピーク検出部8が、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク位置P1および負ピーク位置P2をそれぞれ算出すると、その正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を電気信号の波形Wと共に表示制御部9に出力する。そして、表示制御部9が、図6に示すように、電気信号の波形Wに重畳して、ピーク検出部8で検出された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2を示すピークマークMaおよびMbを表示部4に表示させる。
【0050】
ここで、ピークマークMaおよびMbの位置が正ピーク位置P1および負ピーク位置P2からずれている場合には、使用者は、操作部13を操作してピークマークMaおよびMbの位置を修正することができる。例えば、ピークマークMbの位置が正ピーク位置P1側にずれている場合には、ピークマークMbを負ピーク位置P2に移動させることができる。
このようにして、使用者により修正されたピークマークMaおよびMbに対応する正ピーク位置P1および負ピーク位置P2が、装置制御部12によりピーク情報保存部10に保存される。
【0051】
続いて、生体に筋弛緩剤が投与されると、刺激部5により電気刺激されて生じた電気信号が信号検出部6で検出される。ここで、出現範囲算出部7は、ピーク情報保存部10を参照して、使用者により修正された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて、信号検出部6で検出された電気信号の正ピーク出現範囲R1と負ピーク出現範囲R2を算出する。
【0052】
このように、出現範囲算出部7が、使用者により修正された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出するため、ノイズなどの影響により正ピーク位置P1および負ピーク位置P2が誤検出された場合でも正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を正確に算出することができる。使用者により修正された正ピーク位置P1および負のピーク位置P2に基づき正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出する際、キャリブレーション時の正ピークの立ち上がり時間からゼロクロス時間を出現範囲R1とし、ゼロクロス時間から次のゼロクロス時間を負のピークの出現範囲R2とする。あるいは、出現範囲算出部7に予め正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を設定しておきそれを利用するものとしてもよい。これにより、ピーク検出部8が、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をより高精度に検出することができる。
【0053】
なお、使用者は、筋弛緩剤を投与後に、ピーク検出部8で検出される電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置を修正することもできる。この修正された正ピーク位置および負ピーク位置は装置制御部12によりピーク情報保存部10に保存され、出現範囲算出部7が、修正された正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出する。これにより、ピーク検出部8は、修正された正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて、電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をさらに高精度に検出することができる。
【0054】
本実施の形態によれば、出現範囲算出部7が、使用者により修正された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出するため、その正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2に基づいて電気信号の正ピーク位置および負ピーク位置をより高精度に検出することができる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1~3では、出現範囲算出部は、ピーク検出部8で検出された正ピーク位置P1および負ピーク位置P2に基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出したが、電気信号のピーク位置情報に基づいて算出できればよく、ピーク位置に限られるものではない。例えば、出現範囲算出部は、正ピーク波形および負ピーク波形の立ち上がりおよび立ち下がりなどに基づいて正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出することができる。
【0056】
また、上記の実施の形態1~3では、出現範囲算出部は、正ピーク出現範囲R1および負ピーク出現範囲R2を算出したが、電気信号のピークの出現範囲を算出すればよく、これに限られるものではない。例えば、出現範囲算出部は、正ピーク出現範囲R1のみを算出することができる。これにより、ピーク検出部は、正ピーク出現範囲R1に基づいて電気信号の正ピーク位置を検出すると共に、電気信号全体から負ピーク位置を検出する。
【0057】
また、上記の実施の形態1~3では、弛緩度算出部11は、ピーク検出部で検出された正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて電気信号の振幅f1~f4を算出し、その振幅f1~f4に基づいて筋弛緩度を算出したが、ピーク検出部で検出されたピーク位置に基づいて筋弛緩度を算出できればよく、これに限られるものではない。例えば、弛緩度算出部11は、ピーク検出部で検出された正ピーク位置および負ピーク位置に基づいて電気信号の強度変化を算出し、その強度変化に基づいて筋弛緩度を算出することもできる。
【0058】
また、上記の実施の形態1~3では、表示部4は、筋弛緩監視装置3で取得した筋弛緩度を接続先となる生体情報モニタや心電計等、他の医療機器の画面上に表示する形態で説明したが、これに限定されるものではなく、例えば筋弛緩監視装置3に内蔵することもできる。さらに、表示部4は、筋弛緩監視装置3とは別体の表示機器、例えば有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイおよび液晶ディスプレイのような表示機器、スマートフォン又はタブレット端末のような携帯端末などとしてもよい。
【0059】
また、上記の実施の形態1~3では、刺激用電極1aおよび1bを尺骨神経に対応する位置に貼り付け、検出用電極2a及び2bを小指外転筋に対応する位置に貼り付けるものとしたが、検出用電極2a及び2bは、刺激用電極1aおよび1bからの尺骨神経の電気刺激に反応する筋に対応して配置すればよく、これに限られるものではない。例えば、検出用電極2a及び2bは、短母指屈筋、母指内転筋、短小指屈筋、小指対立筋、短掌筋、深指屈筋、虫様筋、尺側手根屈筋、背側骨間筋および掌側骨間筋などに対応して配置することができる。
また、刺激用電極1aおよび1bは、生体の所定の神経に対応して配置すればよく、尺骨神経に限られるものではない。刺激用電極1aおよび1bは、例えば、顔面神経系に属するその支配筋、坐骨神経系に属するその支配筋、および他の神経に対応する位置に配置することができる。また、検出用電極2a及び2bは、刺激用電極1aおよび1bが配置された神経に支配される筋肉に対応して配置することができる。
【0060】
また、上記の実施の形態1~3では、本発明における医療機器システムの制御部として表示制御部9が表示部4を制御したが、弛緩度算出部11で算出される筋弛緩度に基づいて医療機器を制御できればよく、表示部4に限られるものではない。例えば、本発明における医療機器システムの制御部は、弛緩度算出部11で算出される筋弛緩度に基づいて生体の筋弛緩度の状態を報知する報知部を制御することができる。
【0061】
また、上記の実施の形態1~3では、本発明における医療機器システムの制御部は、表示制御部9から構成されたが、弛緩度算出部11で算出される筋弛緩度に基づいて医療機器を制御できればよく、表示制御部9に限られるものではない。例えば、本発明における制御部は、筋弛緩監視装置3の外部に配置された医療機器に内蔵されて医療機器を直接的に制御するものから構成することもできる。また、本発明における制御部は、複数の医療機器を統括的に制御するものから構成することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1a,1b 刺激用電極、2a,2b 検出用電極、3 筋弛緩監視装置、4 表示部、5 刺激部、6 信号検出部、7,21 出現範囲算出部、8,22 ピーク検出部、9 表示制御部、10 ピーク情報保存部、11 弛緩度算出部、12 装置制御部、13 操作部、14 格納部、W,W1,W2,W3,W4 波形、P1 正ピーク位置、P2 負ピーク位置、R1 正ピーク出現範囲、R2 負ピーク出現範囲、f1,f2,f3,f4 振幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6