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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】回転型めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/22 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
C25D17/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019201062
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021075741
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 辰男
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-172495(JP,A)
【文献】特開平01-287300(JP,A)
【文献】特開2007-277676(JP,A)
【文献】特開2018-178181(JP,A)
【文献】特開2004-300469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直線軸を中心に正逆両方向へ回転可能な円板状の底板と、前記底板の外周側壁に一体的に設けられた円錐台形状の蓋体と、前記底板と前記蓋体とによって画成されためっき槽と、前記めっき槽内の略中央に配設された箱形状のアノード電極と、前記アノード電極の上端部を保持するアノードキャップと、前記めっき槽の内周側に露出すると共に前記外周側壁の一部を構成するカソード電極と、を備え、
前記アノードキャップに、前記アノード電極の外周面に沿ってエアーを吹き付けるエアー吹出部が設けられていることを特徴とする回転型めっき装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転型めっき装置において、
前記アノード電極がフィルター機能を有するアノードバッグによって包囲されており、前記エアー吹出部から前記アノードバッグの外周面に沿ってエアーが吹き付けられることを特徴とする回転型めっき装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転型めっき装置において、
前記アノードキャップは、前記アノード電極を保持するキャップベースと、前記キャップベースを覆うように接合・一体化されたキャップカバーとを備えており、前記キャップベースと前記キャップカバーとの間に、前記エアー吹出部に通じるエアー供給通路が設けられていることを特徴とする回転型めっき装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回転型めっき装置において、
前記キャップベースは前記アノードバッグよりも径方向外側に突出する突出部を有しており、前記突出部の下面に前記エアー吹出部が設けられていることを特徴とする回転型めっき装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回転型めっき装置において、
前記エアー吹出部が前記突出部の下面に周方向に所定間隔を存して複数設けられていることを特徴とする回転型めっき装置。
【請求項6】
請求項3に記載の回転型めっき装置において、
前記キャップベースは前記アノードバッグよりも外側に突出する突出部を有しており、前記エアー吹出部が前記突出部と前記キャップカバーとの間に円環状に設けられていることを特徴とする回転型めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチップ型電子部品の電極等にめっきを施すために使用される回転型めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型抵抗器等の小型電子部品は、回路基板へのはんだ付け性の向上や電気的導通を確保するため、電解めっきを施して外部電極を形成している。そのような外部電極を形成するめっき装置として、めっき槽内に被めっき物とめっき液を投入し、めっき槽を回転させて外周部に設けられたカソード電極に被めっき物を接触させることにより、被めっき物に電解めっきを行う回転型めっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された回転型めっき装置は、垂直な回転軸を中心に回転可能な円板状の底板と、底板の外周側壁に一体的に設けられた円錐台形状の蓋体と、これら底板と蓋体とによって画成されためっき槽と、めっき槽内の略中央に配設された箱形状のアノード電極と、底板の外周側壁に設けられたリング状のカソード電極とを備え、めっき槽内に被めっき物とめっき液が貯留されるようになっている。
【0004】
このように構成された回転型めっき装置では、めっき槽が回転軸を中心に正回転と逆回転を交互に繰り返し、その回転が維持されて遠心力により被めっき物がカソード電極へ押し付けられている短時間のみ、アノード電極とカソード電極間に通電されてめっき処理が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-178181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された回転型めっき装置のように、めっき槽を正転方向と逆転方向へ交互に回転してめっき処理を行うと、被めっき物やめっき液が撹拌され、被めっき物に均一なめっき層を形成することができる。しかし、めっき槽を正転方向と逆転方向へ交互に回転してめっき処理を行うとめっき液に泡が立ち、この泡立ちはめっき槽の回転方向を切り替える停止時にめっき槽の中央に集まる傾向があるため、めっき槽の中央部に配設されたアノード電極の周囲に多くの泡が集中し、被めっき物が泡で押し上げられてアノード電極に付着し易くなる。
【0007】
特に、外形寸法が小さい被めっき物である場合、アノード電極を布製のアノードバッグで包囲して被めっき物が流入しないようにしているため、泡で押し上げられた被めっき物がアノードバッグに絡み付いて分離しにくくなる。その結果、停止後に再びめっき槽を回転させても、アノードバッグに絡み付いた被めっき物がめっき液の流れに乗れなくなり、通電時に陰極に接触することができなくなるため、めっき未着や異常めっき等のめっき不良が多発する虞があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、めっき液に発生する泡立ちに起因するめっき不良を低減することができる回転型めっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の回転型めっき装置は、垂直線軸を中心に正逆両方向へ回転可能な円板状の底板と、前記底板の外周側壁に一体的に設けられた円錐台形状の蓋体と、前記底板と前記蓋体とによって画成されためっき槽と、前記めっき槽内の略中央に配設された箱形状のアノード電極と、前記アノード電極の上端部を保持するアノードキャップと、前記めっき槽の内周側に露出すると共に前記外周側壁の一部を構成するカソード電極と、を備え、前記アノードキャップに、前記アノード電極の外周面に沿ってエアーを吹き付けるエアー吹出部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された回転型めっき装置では、めっき液に泡が発生し、めっき槽の回転方向を切り替える停止時などに、この泡がアノード電極の周囲に集まったとしても、アノードキャップに設けられたエアー吹出部からアノード電極の外周面に沿ってエアーを吹き付けることで、泡で押し上げられた被めっき物がアノード電極に付着しにくくなるため、めっき未着や異常めっき等のめっき不良の発生を低減することができる。
【0011】
上記構成の回転型めっき装置において、アノード電極が布等のフィルター機能を有するアノードバッグによって包囲されており、このアノードバッグの外周面に沿ってエアー吹出部からエアーが吹き付けられるようにすると、アノードバッグによって被めっき物のアノード電極内への流入を防止しつつ、アノードバッグに被めっき物が絡み付いてしまうことを防止できる。
【0012】
また、上記構成の回転型めっき装置において、アノードキャップが、アノード電極を保持するキャップベースと、キャップベースを覆うように接合・一体化されたキャップカバーとを備えており、これらキャップベースとキャップカバーとの間に、エアー吹出部に通じるエアー供給通路が設けられていると、アノードキャップにエアー供給通路を容易に形成することができて好ましい。
【0013】
この場合において、キャップベースがアノードバッグよりも径方向外側に突出する突出部を有しており、この突出部の下面にエアー吹出部が設けられているという構成を採用すると、エアー吹出部から放射状に噴出されるエアーをアノード電極やアノードバッグの外周面に効率良く吹き付けることができる。
【0014】
なお、エアー吹出部の形状や大きさ等は特に限定されないが、エアー吹出部が突出部の下面に周方向に所定間隔を存して複数設けられていると、少ない供給量のエアーによって泡を効率良く吹き飛ばすことができる。
【0015】
あるいは、キャップベースがアノードバッグよりも外側に突出する突出部を有し、エアー吹出部が突出部とキャップカバーとの間に円環状に設けるという構成を採用することも可能であり、このようにすると、エアー吹出部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転型めっき装置によれば、めっき液に発生する泡立ちに起因するめっき不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態例に係る回転型めっき装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】該回転型めっき装置におけるめっき液等の循環ルートを模式的に示す説明図である。
図3】該回転型めっき装置に備えられるアノードキャップによるエアー供給経路を示す説明図である。
図4図3のA部を拡大して示す図である。
図5】該アノードキャップの裏面図である。
図6】該アノードキャップの断面図である。
図7】アノードキャップの変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は、本発明の実施形態例に係る回転型めっき装置の一部を破断して示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態例に係る回転型めっき装置100は、外形がほぼ円錐台形状形の蓋体1と、蓋体1の底面を塞ぐように配設された底板2と、これら蓋体1と底板2によって画成されためっき槽3と、めっき槽3内の略中央に配設されたアノード電極(陽極電極)4と、底板2の外周側に設けられたリング状のカソード電極(陰極電極)5と、を備えて構成されている。
【0020】
蓋体1は、傾斜する側面の最下方端の周縁部(最外周部)が外周方向に鍔状に突出した突起部1aを有し、その突起部1aは環状のリング部材6によって覆われている。また、蓋体1の傾斜側面の下方部には、めっき槽3に貯留されためっき液等を排出するための開口部1bが周方向に所定間隔を存して複数設けられている。
【0021】
底板2は、蓋体1の最外周部分の外径と同一の外径を有する円板形状のベース部材7と、ベース部材7の上面側の外周縁部に沿って配置された前記カソード電極5と、蓋体1の突起部1aの下部に位置してカソード電極5と同一径の環状部材であるスペーサリング8とを有して構成される。めっき槽3において、ベース部材7の外周縁部、カソード電極5、スペーサリング8、および突起部1aによって外周側壁が形成されている。
【0022】
リング部材6、突起部1a、スペーサリング8、およびカソード電極5には、その周方向に複数の貫通孔が設けられている。そして、これらを重ね合わせた状態で貫通孔にボルト9を挿通し、その先端部分に設けられた雄ネジ部とベース部材7に設けられた雌ネジ部とを螺着することで、蓋体1と底板2とが一体的に固定されるようになっている。なお、これら蓋体1と底板2とにより形成された内部空間がめっき槽3となる。
【0023】
めっき槽3の中心部には、金網からなる箱形状に形成されたアノード電極4が配置されており、このアノード電極4を保持するアノードキャップ10の中心部には、アノード電極4へ通電するための支持軸11が挿通・固定されている。また、アノードキャップ10には水洗水導入管12と処理液導入管13が挿通・固定されており、これら水洗水導入管12と処理液導入管13等により、めっき槽3に対する各種処理液の循環や排出を行うようにしている。
【0024】
さらに、アノードキャップ10の側方には液面センサ14が配置されており、液面センサ14とアノード電極4は蓋体1の頂部に設けられた上部開口部1cを貫いてめっき槽3の内部に達している。めっき槽3には、チップ型抵抗器等の被めっき物15およびめっき液(不図示)が貯留されるが、微細な被めっき物15がアノード電極4内へ流入するのを防止するために、アノード電極4は布等のフィルター機能を有するアノードバッグ16によって包囲されている。詳細については後述するが、このアノードバッグ16の外周側に向けてアノードキャップ10からエアーが吹き付けられるようになっている。
【0025】
底板2の下面側中心部には垂直方向に延びる回転軸17が結合されており、この回転軸17には、電解めっき用電源の負側から結線され、カソード電極5へ通電するための導通部材18が接触している。そして、回転軸17に対し不図示のモータ等から回転力を付与することにより、被めっき物15およびめっき液(不図示)が貯留されためっき槽3が、回転軸17を中心に水平方向に回転するようになっている。具体的には、図1において白抜き矢印で示すように、めっき槽3は時計方向と反時計方向(正逆方向)の回転により、所定速度で回転および停止を繰り返す。
【0026】
このようにめっき槽3が水平方向に正回転および逆回転を交互に繰り返し、その回転が維持されて、図1に示すように遠心力により被めっき物15がカソード電極5へ押し付けられている短時間のみ、アノード電極4とカソード電極5間に通電されてめっき処理が行われる。
【0027】
なお、本実施形態例に係る回転型めっき装置100によるめっき対象は、チップ型抵抗器に限定されず、例えば、チップ型インダクタ、チップ型コンデンサ、これらの複合部品、多連抵抗器等、電極端子を有する電子部品のめっき処理にも使用できる。
【0028】
図2は、本実施形態例に係る回転型めっき装置100におけるめっき液等の循環ルートを模式的に示す説明図である。
【0029】
図2に示すように、回転型めっき装置100において、めっき槽3の回転に伴って蓋体1に設けた開口部1bからめっき液が排出されると、それと同時にめっき液母槽19内の新しいめっき液が処理液導入管13を経由してめっき槽3に供給される。また、開口部1bから排出されためっき液は、めっき槽3の外部全体を覆う容器20によって受けられ、処理液導出管21を経由してめっき液母槽19に至るようになっている。
【0030】
なお、回転型めっき装置100におけるめっき種の変更に伴う処理液の排出時には、めっき槽3を所定方向に高速回転させ、そのときの遠心力を利用して開口部1bからめっき液等を排出して容器20で受けるようにしている。
【0031】
めっき物の水洗工程では、水洗水槽22から水洗水導入管12を介してめっき槽3内へ水洗水が供給され、水洗後の水洗水の排出も、上記処理液の排出時と同様に、めっき槽3を高速回転してその遠心力を利用して行われる。そして、容器20で受けた水洗水は、水洗水導出管23を介して水洗水槽22に戻される。
【0032】
図3は前記アノードキャップ10からアノードバッグ16に吹き付けられるエアーの供給経路を示す説明図、図4図3のA部を拡大して示す図、図5はアノードキャップ10の裏面図、図6はアノードキャップ10の断面図である。
【0033】
図3図6に示すように、アノードキャップ10は、アノード電極4とアノードバッグ16の上端部を保持するキャップベース24と、このキャップベース24を覆うキャップカバー25とで構成されており、これらキャップベース24とキャップカバー25は、支持軸11と水洗水導入管12および処理液導入管13の固定用締結具を用いて接合・一体化されている。
【0034】
キャップベース24は、その上方端の周縁部に外周方向へ鍔状に突出する突出部24aを有しており、この突出部24aの下面にエアー吹出部26が形成されている。エアー吹出部26は突出部24aの周方向に一定間隔を置いて多数形成されており、本実施形態例では、突出部24aの周方向に10度の等間隔を保って36個のエアー吹出部26が形成されている。キャップベース24の外周寄りの上面には円環状に延びる凹溝24bが形成されており、この凹溝24bはキャップベース24の上面とキャップカバー25の下面に確保された隙間Gを介して各エアー吹出部26に連通している。
【0035】
キャップカバー25は、その周縁部に上方へ突出する環状壁25aを有しており、この環状壁25aで囲まれた内底面には、キャップベース24の凹溝24bに連通する複数のエアー供給部27が設けられている。各エアー供給部27にはチューブ28が連結されており、これらチューブ28からエアー供給部27を介して凹溝24b内にエアーが供給されるようになっている。その際、各エアー供給部27が凹溝24bの周方向に沿う等間隔な位置に配置されていると、凹溝24b内にエアーを満遍なく均一に供給することができるため、本実施形態例では、凹溝24bの周方向に90度の等間隔を保って4個のエアー供給部27が配設されている。
【0036】
なお、キャップベース24とキャップカバー25には複数の貫通孔29が設けられており、これら貫通孔29に支持軸11と水洗水導入管12および処理液導入管13がそれぞれ挿通されるようになっている。さらに、キャップベース24とキャップカバー25の対向面には、凹部と凸部の組み合わせからなる位置決め部30が形成されており、この位置決め部30によりキャップベース24とキャップカバー25の相対位置を容易に位置合わせできるようにしている。
【0037】
前述したように、めっき槽3に貯留された被めっき物15にめっき処理を行う場合、被めっき物15が撹拌されるようにめっき槽3を正転方向と逆転方向へ交互に回転するため、めっき液に泡が発生する。そして、めっき槽3の回転方向を切り替える停止時に、この泡はめっき槽3の中央に集まる傾向があるため、めっき槽3の中央部に配設されたアノード電極4とアノードバッグ16の周囲に多くの泡が集中し、泡で押し上げられた被めっき物15がアノードバッグ16に絡み付いて、めっき未着や異常めっき等のめっき不良を生じる虞がある。
【0038】
本実施形態例に係る回転型めっき装置100では、このようなめっき不良を防止するために、アノードキャップ10のキャップカバー25に設けたエアー供給部27にチューブ28を介してエアーを供給し、このエアーをキャップベース24とキャップカバー25間に形成されたエアー供給通路(凹溝24bと隙間G)を経由して、キャップベース24の突出部24aに形成した各エアー吹出部26からアノードバッグ16の外周側に向けて吹き付けるようしている。これにより、泡で押し上げられた被めっき物15がアノードバッグ16の周囲に近づいてきても、当該被めっき物15は泡とともにアノードバッグ16から離れる方向にエアーで吹き飛ばされるため、被めっき物15がアノードバッグ16に絡み付きにくくなり、めっき未着や異常めっき等のめっき不良の発生を低減することができる。
【0039】
その際、エアー吹出部26がキャップベース24の突出部24aの下面に孔形状に形成されているため、図4において矢印で示すように、エアー吹出部26から放射状に噴出されるエアーをアノードバッグ16の外周面に吹き付けることができる。しかも、エアー吹出部26は突出部24aの下面に周方向に一定間隔を置いて多数(例えば36個)形成されているため、少ない供給量のエアーによって泡を効率良く吹き飛ばすことができる。なお、エアー吹出部26の個数は特に限定されないが、エアー吹出部26の個数が多くなるほど泡を効率良く吹き飛ばすことができるが、その反面エアーの供給量が増加するため、これらの点を考慮して適宜の個数に設定すれば良い。
【0040】
以上説明したように、本実施形態例に係る回転型めっき装置100では、めっき槽3の回転方向を切り替える停止時などにめっき液に泡が発生し、この泡がアノード電極4を包囲するアノードバッグ16の周囲に集まってきても、アノードキャップ10に設けたエアー吹出部26からアノードバッグ16の外周面に沿ってエアーが吹き付けられるようになっているため、泡で押し上げられた被めっき物15がアノードバッグ16に付着しにくくなり、めっき未着や異常めっき等のめっき不良の発生を低減することができる。
【0041】
また、本実施形態例に係る回転型めっき装置100では、アノードキャップ10が、アノード電極4とアノードバッグ16を保持するキャップベース24と、キャップベース24を覆うように接合・一体化されたキャップカバー25とで構成されており、これらキャップベース24とキャップカバー25との間に、エアー吹出部26に通じる凹溝24bと隙間G(エアー供給通路)が設けられているため、アノードキャップ10にエアー供給通路を容易に形成することができる。
【0042】
また、キャップベース24がアノードバッグ16よりも径方向外側に突出する突出部24aを有しており、この突出部24aの下面に孔形状のエアー吹出部26が設けられているため、エアー吹出部26から放射状に噴出されるエアーをアノードバッグ16の外周面に効率良く吹き付けることができる。しかも、エアー吹出部26が突出部24aの下面に周方向に所定間隔を存して多数設けられているため、少ない供給量のエアーによって泡を効率良く吹き飛ばすことができる。
【0043】
なお、本実施形態例に係る回転型めっき装置100では、布等のフィルター機能を有するアノードバッグ16でアノード電極4を包囲し、このアノードバッグ16の外周側に向けてエアー吹出部26からエアーを吹き付けるようにしているため、微細な被めっき物15がアノード電極4内へ流入してしまうことを防止しつつ、アノードバッグ16に被めっき物15が絡み付いてしまうことを防止できる。ただし、アノードバッグ16を省略して網目の細かな金網にてアノード電極4を形成し、このようなアノード電極4の外周側に向けてエアー吹出部26からエアーを吹き付けるようにしても良い。
【0044】
図7はアノードキャップ10の変形例を示す要部断面図であり、図4に対応する部分には同一符号をふしてある。
【0045】
図7に示すように、キャップベース24が有する突出部24aの外周縁に下向きのテーパを付け、この突出部24aの外周縁とキャップベース24の下部外周縁との間にスリットを確保することにより、アノードキャップ10に円環状に延びるエアー吹出部26が設けられている。このような構成を採用すると、キャップベース24とキャップカバー25との間に存するスリットによってエアー吹出部26が形成されるため、キャップベース24に複雑な穴開け加工を施す必要がなくなり、エアー吹出部26を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 蓋体
2 底板
3 めっき槽
4 アノード電極
5 カソード電極
10 アノードキャップ
15 被めっき物
16 アノードバッグ
17 回転軸
24 キャップベース
24a 突出部
24b 凹溝(エアー供給通路)
25 キャップカバー
25a 環状壁
26 エアー吹出部
27 エアー供給部
28 チューブ
29 貫通孔
30 位置決め部
G 隙間(エアー供給通路)
100 回転型めっき装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7