(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】空冷式電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/04 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
H02K9/04 A
(21)【出願番号】P 2019204126
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 毅
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-252447(JP,A)
【文献】実公平02-023081(JP,Y2)
【文献】特公昭36-002976(JP,B1)
【文献】特開2007-318919(JP,A)
【文献】特開平07-245913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式電動機であって、
電動機本体を冷却するための冷却ファンと、
前記冷却ファンによる前記空冷式電動機内の空気流を整流する仕切板と、
前記電動機本体を収容する電動機ハウジングに取り付けられ、前記冷却ファンを収容するファンカバーと、を備え、
前記仕切板は、板状の部材により形成され、該板状の部材の中央部に前記冷却ファンによる空気流を通過させる開口部を有すると共に、前記空冷式電動機内に配置された状態において前記電動機本体の軸方向に垂直な径方向外側の周縁部に前記径方向に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記ファンカバーは前記空冷式電動機の外壁部の一部を構成すると共に、前記ファンカバーの内壁面には前記軸方向に対して傾斜した傾斜面が形成され、
前記仕切板は、前記板状の部材の周辺部であって前記傾斜部より前記径方向内側の部分において前記ファンカバーに対して固定され、前記傾斜部が前記軸方向と前記径方向の双方において前記傾斜面に対して拘束されるように前記傾斜面に面接触して密接している、
空冷式電動機。
【請求項2】
前記内壁面には前記電動機本体の中心軸側に向かって突出する突起部が形成され、前記傾斜面は前記突起部に形成されている、請求項1に記載の空冷式電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空冷式電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸等に用いられる電動機の電動機本体の冷却には空冷方式が繁用されている。このような空冷式電動機では、冷却ファンを電動機後方側に取り付け冷却風の排気方向を電動機の軸方向と平行とし、また、電動機内に冷却ファンによる空気流を整流するための仕切板を設けるのが一般的である。電動機の冷却装置のファンカバー内に仕切板を設けた構成例が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仕切板は一般に板状の部材で形成されるため電動機内での仕切板の拘束が十分でない場合、電動機本体或いはファンモータからの振動が仕切板に伝わり仕切板が振動し、ファンカバー等の電動機の外壁部と接触して振動音を発生するおそれがある。仕切板を電動機の外壁部に対して確実に拘束し振動音の発生を防止することのできる空冷式電動機が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、空冷式電動機であって、電動機本体を冷却するための冷却ファンと、前記冷却ファンによる前記空冷式電動機内の空気流を整流する仕切板と、前記電動機本体を収容する電動機ハウジングに取り付けられ、前記冷却ファンを収容するファンカバーと、を備え、前記仕切板は、板状の部材により形成され、該板状の部材の中央部に前記冷却ファンによる空気流を通過させる開口部を有すると共に、前記空冷式電動機内に配置された状態において前記電動機本体の軸方向に垂直な径方向外側の周縁部に前記径方向に対して傾斜した傾斜部を有し、前記ファンカバーは前記空冷式電動機の外壁部の一部を構成すると共に、前記ファンカバーの内壁面には前記軸方向に対して傾斜した傾斜面が形成され、前記仕切板は、前記板状の部材の周辺部であって前記傾斜部より前記径方向内側の部分において前記ファンカバーに対して固定され、前記傾斜部が前記軸方向と前記径方向の双方において前記傾斜面に対して拘束されるように前記傾斜面に面接触して密接している、空冷式電動機である。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、仕切板を電動機の外壁部に対して確実に拘束し振動音の発生を防止することが可能となる。
【0007】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る電動機の構成を表す軸方向断面図である。
【
図5】仕切板の
図4中の矢印A方向でみた断面図である。
【
図7】ファンカバーの前方側から見た正面図である。
【
図8】ファンカバーの
図7中の矢印A方向でみた断面図である。
【
図9】本実施形態に係る電動機の他の構成例を示す軸方向断面図である。
【
図10】比較例の電動機の構成を示す軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は一実施形態に係る空冷式電動機10(以下、電動機10と記載する)の構成を表す軸方向断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、
図1の示す通り軸方向における出力軸側を前方側、反出力軸側(冷却ファン20がある側)を後方側とする。また、出力軸1の軸方向に垂直な方向を径方向とも記載する。電動機10は、空冷式であり、電動機本体2と、電動機本体2を取り囲む周壁状の電動機ハウジング3と、電動機ハウジング3の後端部に配置された冷却ファン20とを有する。冷却ファン20はファンカバー30に収容され、ファンカバー30の前端が電動機ハウジング3の後端部に取り付けられている。電動機ハウジング3とファンカバー30とが電動機10の外壁部を構成する。電動機本体2と電動機ハウジング3の内周面との間には、冷却ファン20による空気流が通る少なくとも一つの通気孔6が形成されている。通気孔6は、電動機10の出力軸1の軸方向に平行に伸び、軸方向に垂直な断面視においては、例えば、電動機ハウジング3が方形である場合には、4つのコーナー部分に設けられていても良く、或いは電動機本体2の周囲の全周にわたり形成されていても良い。
【0011】
ファンカバー30内部の後方端にファンモータ21が取り付けられている。ファンカバー30の前端部分には、通気孔6からの空気流(
図1中の矢印参照)を整流して冷却ファン20に導く仕切板50が取り付けられている。以下、仕切板50及びファンカバー30の詳細について説明する。
図2は、
図1中の破線で示した領域Fの拡大図である。
図3、
図4、
図5は、それぞれ仕切板50の斜視図、前方側から見た正面図、
図4中矢印Aで示した矢視方向の断面図である。
図6、
図7、
図8は、それぞれファンカバー30の斜視図、前方側から見た正面図、
図7中矢印Aで示した矢視方向の断面図である。
【0012】
図6-
図8に示すように、ファンカバー30は、軸方向に沿って見た状態において8角形の外形形状を有し、ファンモータ21を収容する筒状のファンモータ収容部32の前端側の開口部が前方に向かって末広がりになる、いわゆるベルマウス形状に形成されている。より詳細には、
図2に示すように、ファンモータ収容部32の前端からは前方に向かうに従って径方向外側に向かって広がるように軸方向に対して傾斜した傾斜壁31が形成され、傾斜壁31の前端からは軸方向において前方側に延びる周縁壁33が形成されている。
【0013】
図3-
図5に示すように、仕切板50は、軸方向に沿って見た状態において8角形の外径形状を有する板状の部材であり、中央部に冷却ファン20による空気流を通す円形の開口部52を有する。仕切板50の周縁部には径方向に対して前方側に傾斜する傾斜部51が形成されている。
図3及び
図4に示すよう、仕切板50の周辺部の4箇所にはネジ穴54が形成され、
図3に示す通り、仕切板50は4つのネジによりネジ穴54を通してファンカバー30側の4箇所のネジ穴34(
図6-7参照)に前方側よりネジ止め固定される。仕切板50が前方側よりネジ止め固定された状態で、仕切板50の周縁部の傾斜部51は、ファンカバー30側の傾斜壁31に面接触して密接する状態となる(
図2参照)。
【0014】
図2中左側には、仕切板50の傾斜部51とファンカバー30の傾斜壁31との密接部分(破線の円形で囲った部分)の拡大図を示している。ファンカバー30に軸方向に対して傾斜する傾斜壁31を設けると共に、仕切板50の周縁部に径方向に対して傾斜する傾斜部51を設けることで、仕切板50をファンカバー30にネジ止め固定した状態において、傾斜部51が軸方向及び径方向の双方において傾斜壁31に対して押し付けられる状態にすることができる。この状態で、傾斜部51の外周面51aと傾斜壁31の内周面側の傾斜面31aとは全周に亘り密接する。なお、
図2から分かる通り、ファンカバー30の傾斜壁31(傾斜面31a)は、仕切板50の傾斜部51(外周面51a)に対して十分に広い形状であり、傾斜部51の最外部の端面と周縁壁33との間には十分な間隔が確保される。
【0015】
このような構成によれば、ファンモータ21或いは電動機本体2からの振動が仕切板50に伝わり仕切板50が軸方向と軸方向に垂直な方向とに振動した場合でも、仕切板50の周縁部がファンカバー30の内壁面に当たり振動音が発生することが防止される。特に、上記構成によれば、仕切板50の傾斜部51を軸方向及び径方向双方において傾斜壁31に押し付けて密接させることが可能であるため、仕切板50の周縁部を軸方向及び径方向の双方において十分に拘束することが可能となる。
【0016】
また、上記構成によれば、仕切板50の周縁部をファンカバー30の内周面に対して確実に密接させることが可能となるため、仕切板50の周縁部からのエアの漏れを確実に防止することが可能となり、それにより冷却効率を向上させることも可能となる。ファンカバー30の傾斜壁31の軸方向に対する傾斜角aは、例えば45度としても良く、他の角度であっても良い。
【0017】
ここで、比較例として、ファンカバーが傾斜壁を有さず、仕切板が傾斜部を有しない電動機の構成を説明する。
図10は、このような比較例としての電動機200の構成を模式的に表す軸方向断面図である。
図10に示されるように、比較例の電動機200は、上述の実施形態に係る電動機10と同様に、電動機本体の後端側に冷却ファン220を収容するファンカバー230が取り付けられた構成である。ファンカバー230の前方側には仕切板250がネジ止め固定されている。仕切板250の周縁部は径方向に沿って伸びるように形成されている。すなわち、仕切板250の周縁部には径方向に対して傾斜する傾斜部は形成されていない。ファンカバー230の前方側の内壁面には、電動機本体の中心軸に向かって突出する突起部231が形成されている。突起部231は、軸線方向から見た径方向断面視においてはファンカバー230の内壁面全周に亘り形成され、
図10の軸方向断面視においては、前方側及び後方側の側面が軸方向に垂直な矩形状に形成されている。
【0018】
ファンカバー230の寸法誤差等を考慮して、
図10に示すように仕切板250の周縁部の端面とファンカバー230の内壁面との間には隙間が確保されるように仕切板250の寸法が設定される。突起部231は、この隙間を塞ぐ役割を担う。上記構成において、仕切板250は、その周縁部が突起部231の前方側の側面231aと接触するように、ファンカバー230に対してねじ止め固定される。ネジ止めの箇所は上述の実施形態の仕切板50の場合と同様に4箇所である。
図10のような構成では、仕切板250の周縁部の軸方向と垂直な径方向における拘束が十分でないため、電動機本体或いはファンモータの振動に伴う仕切板250の振動により、仕切板250の周縁部がファンカバー230の内壁面に当たることによる振動音が発生し得る。
【0019】
また、
図10の構成では、特に周方向における仕切板250とファンカバー230とのネジ止め箇所の間の部分では、仕切板250のファンカバー230に対する拘束が不十分であることを要因としてエアの漏れも発生し得る。
【0020】
したがって、上述した実施形態に係る電動機10の構成は、振動音の防止、及び、冷却効率の面で
図10の比較例の電動機200と比較して有利であることが理解できる。
【0021】
次に、上述の実施形態に係る電動機10の変形例について説明する。
図9は、電動機10の変形例としての電動機10Aの構成を模式的に表す軸方向断面図である。
図9に示されるように、電動機10Aは、上述の実施形態に係る電動機10と同様に、電動機本体の後端側に冷却ファン120を収容するファンカバー130が取り付けられた構成である。ファンカバー130の前方側には仕切板150がネジ止め固定されている。仕切板150は仕切板50と同様の構成を有し、仕切板150の周縁部は径方向に対して傾斜した傾斜部151として形成されている。ファンカバー130の寸法誤差等を考慮し、
図9に示すように仕切板150の周縁部の端面(径方向最外部の端面)とファンカバー130の内壁面との間には隙間が確保されるように仕切板150の寸法が設定される。
【0022】
ファンカバー130の前方側の内周面には、中心軸に向かって突出する突起部131が形成されている。突起部131は、軸線方向から見た径方向断面視においてはファンカバー130の内面全周に亘り形成され、
図10の軸方向断面視においては三角形状に形成され、前方側の側面が軸方向に対して傾斜した傾斜面131aとして形成されている。
【0023】
この構成により、上述した電動機10の場合と同様に、仕切板150をファンカバー130にネジ止め固定した状態において、傾斜部151が軸方向及び径方向の双方において傾斜面131aに対して押し付けられる状態とすることができる。この状態で、傾斜部151と傾斜面131aとは全周に亘り密接する。このような構成によれば、ファンモータ121或いは電動機本体からの振動が仕切板150に伝わり仕切板150が振動する状況において、仕切板150の周縁部がファンカバー130の内壁面に当たり振動音が発生することが防止される。特に、上記構成によれば、仕切板150の傾斜部151を軸方向及び径方向双方において傾斜面131aに押し付けて密接させることが可能であるため、仕切板150の周縁部を軸方向及び径方向の双方において十分に拘束することが可能となる。
【0024】
以上説明したように本実施形態によれば、仕切板を電動機の外壁部に対して確実に拘束し振動音の発生を防止することが可能となる。
【0025】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0026】
上述の実施形態に示した電動機の構成は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において仕切板50及びファンカバー30の軸方向に沿ってみた外形は8角形に形成されているが、他の形状(例えば円形)であっても良い。また、仕切板とファンカバーとのネジ止め箇所の数も、4箇所以外の数であっても良い。仕切板をファンカバーに対して固定する手段としてネジ止め以外の固定手段が用いられても良い。仕切板の材料は例えば金属であるが、他の材料(例えば樹脂)が用いられても良い。
【0027】
仕切板の周縁部に径方向に対して傾斜する傾斜部を形成し、電動機の外壁部の内面側に軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、これら傾斜部と傾斜面とを面接触させる上述の実施形態の構成は、各種タイプの空冷式電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10、10A 空冷式電動機
1 出力軸
2 電動機本体
3 電動機ハウジング
6 通気孔
20、120 冷却ファン
30、130 ファンカバー
31 傾斜壁
31a、131a 傾斜面
50、150 仕切板
51、151 傾斜部
52 開口部
131 突起部